〈翻 訳〉
テイラー「複合企業の会計1企業集団会計
およびセグメント会計」*
ランカスター大学助教授ポール・A・テイラー
酒 居 叡 二 虚
円 複合企業会計の発展 本章は複数の法的実体から構成されるか,あるいは,複数の事業を営む企業の会計実務 を検討するものである。連結会計は個々の法的実体の成果を結合することによって統一的 な支配の下にある企業の全体的な姿を把握しようとする。セグメント報告は企業の全般的 な姿を分析,または分解することにあるがJ連結会計と逆の開係にあるのではない。連結 会計においては企業集団の採用する法的構造によって全般的な概観がゆがめられることの ないように会計手続を工夫している。セグメント報告においては,経済的な意味があると 考えられる要素に企業の全般的な概観を分解する。したがって,従属会社のない会社にお いても,異なる種類の事業を営む場合にはセグメント情報を表示することができるであろ う。 本章においては,企業集団会計の発展を簡単に跡づけ,ついで企業集団の定義・企業集 団の形成(買収対持分プーリング論争).イギリスにおける企業集団の情報開示,在外従 属会社の外貨換算問題をとりあげ,最後にセグメント報告を考察する。 綜合計算書類を最初に作成した企業の1つにUSスチール社(1901年)がある。1910年 代には,ニューヨーク証券取引所は従属会社の個別計算書類を要求していたが,その後間 もなく連結計算書類の提出を要求するにいたっている。また,同じ時期に,アメリカ連邦 準備制度理事会は信用を供与するか否かを決定するために,一定の条件のもとでは綜合計 ・本稿は,本学大矢知浩司教授を中心とする共同研究rイギリス会計実務とその論拠』の一部と して執筆された Paul A. Taylor,“Accounting for Complex Enterprises:Groups anq Segments”(未肇表)を翻訳したものであるg72 算書類が必要であると提案していた。このような経緯をたどって,アメリカの舞台では 1920年代中頃から煮頃までに企業集団会計手続が確立された会計手続の1つとなっていた 1) のである。 これに対してイギリスにおける発展はアメリカに比べて遅々たるものがあった。1922 年,プライス・ウォーターハウス会計事務所の幹部サー・ギルバート・ガーンジーは,イ ングランド・ウェールズ勅許会計士協会において「支配会社およびその公表計算書類」と 題して講演した。しかし,当時の保守主義からこの講演は時期尚早としてそのままに終っ てしまったのである。第一次世界大戦後,企業合同が盛んに行なわれたにもかかわらず, 1930・40年代になっても,ほとんどの会社は単に自社の貸借対照表のみを作成し,貸借対 照表上従属会社に対する投資をその他の取引投資と合算して取得価額で表示しつづけてい 2) たものである。当時の会社法改正はこの問題を避けていた。 会社法の改正を討議するコ一蓋ン委員会が設けられたのは1943年であり,その審議の結 果として1948年会社法が一定の条件のもとに連結計算書類の公表を強制するにいたったの である。1944年までには,勅許会計士協会において,協会の勧告書の中で連結計算書類が 「最良の会計慣行」であると指摘するにすぎなかった。 後に述べるように,その後の会社法改正では1948年会社法をわずかに修正するにとどめ て,セグメント報告の問題にとりくんできている。 イギリス会計職業団体における展開 1960年代後半は倒産と企業聖画につづいて,情 1)会計実務基準書第16号「現在原価会計」は大会社のすべてに対して現在原価基準にもとつく連 結財務諸表(主たる計算書類として,あるいは,補足情報として)を要求している。このことに ついて本章では深く論じないが第7章で考察する。ここで論じている連結規走の多くは現在原価 にもとつく計算書類に適用できるであろう。また,本章のはじめで述べた歴史的展開の多くは キッチンの論交にもとつくものである。Kitchen, J.,“The Accounts of British Holding Company Groups: Development and Attitudes to Disclosure in the Early Years”, in The Evolzation of CorPorate Financial RePorting, edited by Lee, T. A. & Parker, R H,, Nelson, 1979, pp, 86−124. 2)連結計算書類を作成した最初のイギリス企業は1933年目ソロップ社であった。ウィルキンズ r綜合計算書類=基本原則,様式および内容』によって,われわれはその後の歴史的展開を概観 することができるであろう。彼は企業集団の綜合計算書類に関する本章のテーマの多くを巧み に,また,非常に詳細に論じている。彼の著書は第1版(1975年)以来大幅に改訂されてはいな いが,さらに深く企業集団の計算書類について研究したい読者には推薦しうる著書である。ただ し,ウィルキンズはセグメント報告について論じていないし,また,外貨換算についても簡単に 述べているにすぎない。WilkinS, R. M., GrouP∠Accounts:The Fundamenlal PrinciPles. Form and Content, 2nd Edition, ICAEW, 1979,
報開示にも不満が増大した時期であった。1971年に会計基準制定委員会が設立されて間も なく,当委員会は会計実務基準書第1号「関連会社の業績に関する会計1を公表して,過 半数所有ではないが会社間に重要な関連がある場合にはその関係についての表示を強化し たのである。また,当委員会は1971年にジェンキンズ委員会勧告に従いつつ修正した「買 収対持分プーリング」論争に関する会計実務基準書公開草案第3号を示している。会計実 務基準書公開草案第3号の公表前には,イギリス企業の大半は「買収」基準を用いてい た。アメリカにおげる非常に熱のこもった1960年代の問題も,イギリスにおいてはそれ程 議論の的になるものではなかったのである。会計実務基準書三目草案第3号は「持分プー リング」が適切と考えられる条件を明示したが,かなりの反対にあい,また,株式取得日 以前の利益の分配(「持分プーリング」では可能である)がイギリスにおいて合法である か否かに関しても疑念をひきおこした。「買収」基準はいまもイギリスにおける支配的な 実務であるがiユ980年までのところ,この問題に関する会計実務基準書は公表されるにい たっていない。 ⊥970年代に入っても企業集団会計の分野では重要な進展をあまり見ないまま今日にいた っている。1978年,国際会計基準第3号にこたえて会計実務基準書第14号「綜合計算書 劇が公表された。この会計実務基準書については後に述べるが,現行の実務を成文化し たにすぎないものであり,また,「買収対持分プーリング」についても事実上言及してい ない。王979年9月に会計実務基準書公開草案第21号「外貨取引に関する会計」が公表され たが,アメリカ財務会計基準審議会基準書第8号に比べて厳格さに欠けるものであった。 すなわち財務会計基準書第8号はテンポラル法(属性法)による換算を要求しているのに 対し,会計実務基準書公開草案第21号はテンポラル法か現在為替レート法かのいずれかを 用いればよいとしている。1979年.会計実務基準書公開草案第25号は関連会社に関する会 計実務基準書第1号の修正を提案している。アメリカにおいては,会計原則審議会意見書 毛7号が暖簾の耐用年数を最長40年と規定しているのに対し,イギリスにおいては「買収 刈持分プーリング」というような重要な問題をいまだ解決しておらず,したがって,暖簾 会計に関する公式見解を公表していない。 国際会計墓準その他 会計実務基準書第/4号「綜合計算書類」は国際会計基準第3号 「連結財務諸表」に直接こたえて公表されたものである。綜合計算書類に関するEECの 提案(第7指令案)はいまだ討議の段階にあり,また疑問が提出されているが,1980年ユ2
74 3) 月までに問題点の解決が期待されている。後に検討するように,このような国際的な基準 はイギリスにおける財務報告に密接な関係をもつであろう。 セグメント報告 この領域におけ’る展開は遅々たるものであった。1967年会社法第17 条第1項は,「会社が2種類以上の事業を遂行し,それらが相互に相当程度異なると取締 役が判断する」場合には一定のセグメント別開示を要求している。また,イギリスの証券 取引所は1972年以来上場会社に対して,地域的基準にもとつくセグメント別情報を求め, その要件を定期的に改訂してきている。この点については後に一層詳細に論じるが,イギ リスにおける規定はアメリカに比してかなり遅れていることが明らかになるであろう。 4) 1[[企業集団の定義およびその会計測定に与える影響 支配の程度 ある会社(支配会社または親会社)が他の会社を支配する場合には,そ の支配の程度が綜合計算書類における測定と開示にとって中心的な問題である。イギリス 5) においては支配を3段階に区分している。すなわち,他の会社の過半数支配(従属会社), 他の会社に相当程度の影響を与える少数支配(関連会社)および単純な少数支配(取引投 資)である。本節の後半では「支配」の定義がなぜ単刀直入にいかないのかを明らかにす る。イギリスの実務はアメリカの規定およびEECの提案とも異なるものである。以上の ことを明らかにする前に,われわれは支配の程度が開示の性質および範囲に与える影響に ついて概観してみる。 イギリスにおいては.1948年会社法は開示の性質および範囲について,つぎのような影 響を与えている。すなわち,従属会社(通常は関連会社も)を有する会社は連結計算書類 (貸借対照表,損益計算書および,会計実務基準書第10号以降は連結資金計算書)を作成 .しなければならない。しかし,支配会社が連結損益を告示し,かつ,支配会社の個別貸借 対照表を提出している場合には,支配会社の個別損益計算書および個別資金計算書を必要 3)“Accountancy News”, Accozantancy, March 1980, p.4,を参照されたい。 4)前半の各章で論じているように,これらの規定のもとtrこは以下に示す3つの主要な規定がある ことに,読者は注目すべきである。その3つの規定とは,すなわち,すべての有限責任会社に適 用され,その裏付けとなる会社法の規定,上場会社の基本原則となる証券取引所の規定,および 会計職業団体の要件(会計実務基準書)がそれである。最後の会計職業団体の要件は法的な要件 を補足・解釈するものであり,一般にすべての有限責任会社に適用されるものであるが,会計職 業団体の会則による拘束があるのみである。 5)狭義においては,会社法もまた10%支配に言及している。このことは後に論じるが・全体から みればこの規準は重要なものとは考えられないg
としない(第149条第5項)。支配会社の貸借対照表においては,投資は取得価額で表示さ れる。まず,われわれは綜合(または連結)計算書類における所有投資有価証券の会計処 理について考察する。簡単にいえば,綜合計算書類における開示の程度は,つぎの通りで ある。 取引投資一支配会社の投資は取得価額(麦配会社Q投資が一時的なものである場合には 取得価額または正味実現可能価額のいずれか低い価額)にて表示する。通常,投資先 の会社が配当金の支払いを発表した時点で収益を計上する。 関連会社一支配会社の投資は取得価額プラス株式取得日以後の利益の支配会社に帰すべ 6) き比例持分(帰属利益)にて表示する。関連会社とは親会社が相当程度影響力を行使 する会社をいうのであるから,この手続の1つの目的は関連会社からの配当金の流れ を操作することによって生ずるかもしれない(投資が取引投資として処理されるなら ば)粉飾を防止することにある。関連会社に発生した利益をこのように綜合計算書類 で認識する手続をイギリスにおいては「持分法」と称している。 従属会社一従属会社の資産,負債および持分は親会社の資産負債および持分と連結す る。親会社の投資をその構成要素である資産,負債,暖簾に区分し,これらを親会社 の資産,負債,持分と統合するという点を除けば,従属会社に関する会計手続は関連 会社に関する会計手続に類似している。若干のヨーPッパ諸国においては親会社の所 有している割合の資産および負債部分だけを連結または統合するという実務を採用し ている。この方法はイギリスの実務ではない。イギリスにおいては(会計実務基準書 第14号の要求しているように)全資産および負債を結合し,企業集団以外の株主が所 有している部分は「少数株主持分」として綜合計算書類に表示している。有償取得暖 簾の処理については後に論ずる。 つぎに,われわれは投資を上記3分類する規準を検討し,これらの規準とアメリカの規 準およびヨーロッパの提案とを比較して,イギリスにおける支配の定義を検討する。 従属会社 1948年会社法第150条から第153条までの規定は支配会社(以下に論ずる若 干の事例を除く)による綜合(通常は連結)計算書類の公表を要求している。ag 154条は 「従属会社」をつぎのように定義する。すなわち 6) この点についてはイギリスの現行実務の改正案(会計実務基準書公開草案第25号)を検討する 部分でさらに論じることにしよう。関連会社の開示する清報の総量は改正案においても変化はな いo
76 1(a).他の会社(支配会社)がその会社の社員で,かつ,その取締役会の構成を支配し ている場合,もしくは (b)。他の会社(支配会社)がその会社の持分株式資本の券面額の過半数を保有する場 合のいずれかのとき,会社は他の会社の従属会社であり,または 2.支配会社の従属会社の従属会社である会社も従属会社である。 会社法は上記要件(a)によって経済的な支配下にある従属会社を規定しようとしているの である。ショーは1977年,支配についての興味深い議論を展開して,2つの会社がジョイ ント・ベンチャー(合弁会社)におのおの50%の利害関係をもつ場合には,イギリスの定 義では連結が必要ではなくなるということを示し,また,この定義から生ずるその他の多 7) くの矛盾を明らかにしている。 イギリスにおける「支配」の定義はアメリカの立場(証券取引委員会財務諸表規則第1 条)とは異なるものである。すなわち,証券取引委員会財務諸表規則第1条のいう支配と は「議決権株式の所有によって,契約,あるいはその他の方法によって,直接あるいは間 接に(すなわち中間機関を通じて)ある老(すなわち会社)の経営および政策を指揮し, または指揮させる権限を所有すること」である。このように定義は異なるが,しかし,証 券取引委員会は過半数所有にいたっていない従属会社の連結を認めていないのである(ア メリカ公認会計士協会会計原則審議会意見漁戸4号に一致する)。 会社法にいう「支配」の定義のもとでは,議決権なき持分資本が存在する場合には会社 は半数以下の議決権をもって過半数の持分資本を所有することができ,したがって,従属 会社を「支配」しているものとみなすのである。これはアメリカにおけるよりも形式主義 のように思われる。しかしながら,この多少融通のきかない「麦配」の定義を事実上修正 8) して,議決権なき持分株式を発行している場合,あるいは,取締役を選任する権限に関し 7)Wilkins, R. M, oP. cit., pp.1−2, Shaw, J.“Criteria for Consolidation”, Accozanting and Business Resea7ch, Winter 1976, pp,71−78.を参照されたい。 8)厳密にいえば,会計実務基準書目14号は会社法の規定を修正するものでなく,その認めている 代替案を狭めるだけにすぎない。後で示すように,連結計算書類とは異った方式が望ましいと取 締役が判断する場合を除いて会社法は連結を求めているのである。会計実務基準書第14号の公表 前セこは,企業がここで論じた種類の従属会社を連結したのも不思議なことではない。いまや,こ れらの従属会社は明確に連結されるべきではなく,関連会社として事実上処理されるべきである と会計実務基準書第14号は述べている。会社法の規定は多くの代替案のなかで,このような解釈 を認めている。それゆえに,会社法をこのように解釈することはその方向にわずかに変化させる 効果しかないが,厳密な意味では以上のような会社法の解釈は現行法の定義を変更し狭くしてい るのである。
て契約上またはその他の制約がある場合には連結を要しない旨,会計実務基準心血14号 (第21節)は定めている。 EEC第7指令案は「友配」を広く定義して,一般的規準は統一的基準にもとつく経営 (たとえ支配企業が有限責任会社でない場合においても)であると提案している。すなわ ち,つぎの要件を満たす場合には統一的基準にもとつく経営と推定されるのである。 1.引受済資本の過半数を所有する場合,または 2,議決権の過半数を支配する場合Jまたは 3.企業の経営管理,経営もしくは監督機関の構成員の過半数を選任できる場合のいず れかに該当する場合である。 全体的にみれば広く解釈される可能性があるけれども,このEECの要件はイギリスの 要件と非常に類似したものである。さらに支配会社(したがって統一された経営)が欧州 共同体域内に住所を有しない場合にも欧州共同体域内にある従属企業が他のグループ企業 を明確に支配している場合には,欧州共同体域内にある企業の部分連結財務情報をEEC 第7指令案は要求している。このような規定の目的は,多分,欧州共同体域内における多 国籍企業の活動に関する情報を欧州共同体諸国に提供することであろう。もしEECの提 案が修正されるのでなければ,イギリスにおいてはさらに重要な展開が期待されるであろ う。連結の例外規定および除外規定の詳細については後に論じることにしたい。 関連会社 関連会社という用語は法的な定義ではないが会計実務基準面第1号第6節 に定義がある。相当程度の影響力とは基本的には2つの規準にもとづいて決定される。す なわち,利害関係の程度と政策決定および利益の分配に関して実際に経営参加(通常,取 締役会に代表を派遣)しているかどうかという規準である。ジョイント・ベンチャーまた はコンソーシアム(共同企業体)の結果である場合,または,投資会社が20%以上の持分 議決権を有し,その利害関係が長期的なものであって,投資によって相当程度の影響力 (その他の株式の処分に関して)を行使できる場合には,利害関係の程度は十分大きいと みなされる。 !979年,会計実務基準書公開草案第25号において20%という固定的な下限を除くための 修正案が提案された(イギリスにおいても国際会計基準第3号,アメリカ会計原則審議会 意見書第18号に一致することとなる)。関連性の有無を判別する規準としては「相当程度 の影響力」をより一層経済的に解釈しなければならないであろう。20%以上という持分は 指針として保持されている。議決権株式を20%以上保有する場合には,その持分は「相当
78 程度の影響力」を行使するものと推定され,そのように表示されなければならない。もし このような持分を関連会社として処理しない場合には,会社はその理由を開示しなければ ならない。20%未満の場合には,持分は相当程度の影響力を行使しないと推定されるであ の ろう。より詳細な議論はマッカスカーの論文にみられる。この立場は,また,1980年末ま でに議会によって批准されなければならないEEC第4指令とも一致している。 会計実務基準書公開草案第25号,および会社法による従属会社の定義を(事実上)修正 お する会計実務基準書芸14号によって,イギリスはアメリカのような過半数所有ではなく, EECの要件にしたがって一層経済的な定義へとゆっくり動いているのである。 その他の投資 その他の投資については1967年会社法に規定されており,本書の付録 を参照されたい。その他の投資の会計処理は,投資が長期のものであるか短期のものであ るかに左右される。また,その他の投資に関する情報としては市場価額,その他「同様 な」統計値が追加的に要求されている。 皿:企業集団の変化 買収対持分プー一 Uング論争 企業合同に関するイギリスの立場を議論する前に合併会 計に内在するいくつかの論点を概説することは有用である。これらの論点には以下のもの がある。すなわち 1.株式のテーク・オーバーに際して,その対価は交付される株式の市場価額で評価す べきであるのか,あるいは,受入正味資産価額で評価すべぎであるのか。 2.個々の資産および負債を再評価すべきであるのか,あるいは,被合併会社の取得原 価で企業集団の財務諸表に組み入れるべきであるのか。 3。従属会社の株式取得日前の利益を凍結するか,あるいは,その利益を合併会社の株 主に分配可能なものとするために相殺消去プロセスが立案されているのか。 上記の問題について第1の代替案をとる場合には,一般にいわれている「買収」ないし 「取得」会計ということになり,第2の代替案をとる場合には,「プーリング」ないしは 「合併」会計ということになる。イギリスの実務は伝統的に(!)および(3)の問題については 第1の代替案を採用してきているが,公開買付による取得資産を再評価すべきかどうかと いう問題に関しては意見のわかれるところである(主として「買収」基準である)。会計 実務基準書記14号は「買収」とは何かを定義せずに,従属会社を買収する場合には資産お g) Mccusker, 1,, “Does ED24 overreach itself”, Accozantaney, March 1980, pp, 98−102.
よび負債の再評価を要求して,実務を規制しようと試みているのである(第29節)。「買 収」会計においては,相殺消去プロセスにおいて生じる差額(通常は「暖簾」ないし「連 結差額」と称される)をどのように処理すべきかという問題があるが,これについては本 節の後半で検討しよう。 1971年の会計実務基準書公開草案第3号「取得および合併に関する会計」では,取得お よびプーリング(公開草案ではそれぞれ「取得会計」,「合併会計」と称している)がどの ような場合に適切な手続であるのかその指針を定めようと試みている。基本的な規準は, 合併当事会社の人格を承継する(プーリング)か,あるいは,承継しない(買収)かとい うことである。 合併当事会社の人格は多くの条件を満たす場合にかぎって承継するものと考えられてい る。その条件には,つぎのものがある。すなわち,合併当事会社の主たる事業内容の継 続,各合併当事会社の株主が結合会社に相当程度の影響力をもつこと(一方の合併当事会 社の株主の所有する議決権は他方の合併当事会社の株主の所有する議決権の少くとも3分 の1以上であること),交付価額の少くとも90%は議決権株であること,合併申込会社の 少くとも90%の株主が合併申込みを承認すると同様に,合併被申込会社の少くとも90%の 株主によって受理されなければならないこと,である。これらの条件はアメリカ会計原則 審議会意見書第!6号にいう条件と類似している。しかしながら,もとの事業内容が継続し うると仮定することにどのような現実性があるのか,アメリカ公認会計士協会の公刊した 2冊の会計研究叢書は疑問を提起している。 「プーリング」会計の魅力の1つは,「承継する」会社の株主に,「買収」会計のもと では凍結される株式取得日前の被合併会社の利益を分配でぎるということである。アメリ カにおいては,この魅力が濫用されてi美顔術となるにいたったが,イギリスにおいても現 ユの 行会社法のもとで,このような利益分配の合法性が重要な問題となるであろう。会計実務 19)一見ささいな税務上の1事件であるシィアラー・(税務調査官)対バァーケイソ社(Shearer v。 Bercain Ltd.)事件の最:近の判決(1980年3月7日)は,イギリスにおける「プーリング」会 計の問題を解決したように思われる。1948年会社法の関係条丈は株式取得日前の利益の分配を禁 止しており,また,取得した株式を市場価額にて評価するように取締役に要求しているものと解 釈さるべき旨ウォルトソ判事は裁定した。したがって,この判決に照らせば,「プーリソグ」会 計はイギリス会社法に相いれなく,1948年会社法制定時から上記判決のみられた期間中に「プー リング」会計を採用した企業の法的状況について疑問が生じることになるであろう。興味のある 読者はWyld, R.,“Merger Accounting−1egally dead but will it lie down?”,.Accozantancy, August lg80, pp.49−50を参照されたい。かくして,会計実務基準書公開草案第3号は潜在的 に重要性を失っているように思われる。
80 基準書公開草案第3号は1980年にいたるまで破棄されていない。 コ コ る 暖簾 合併から生じる暖簾は取得した純資産額をこえる支配会社の投資超過額を反映 したものと考えるべきであるのか,あるいは,少数株主持分を再評価した上で純資産総額 をこえる被合併会社の価値の反映と考えるべきであるのか,という問題が「買収」会計で は未解決である。ペンドルペリーは国際会計実務を比較して,上に指摘した問題および, i1) さらに一歩進めた問題を論じている。イギリスにおいては,ほとんどすべての場合,支配 会社の株式のみにもとづいて暖簾を計算しており,また1967年会社法は,暖簾を償却しな い場合に暖簾の開示を求めている。 暖簾の償却に関しては,イギリスの会計実務はきわめて多様である。アメリカ会計原則 審議会意見書第17号は,暖簾を見積耐用年数にわたって償却し,その償却期間は40年をこ えてはならないとしている。イギリスにおいては,会計実務基準書第2号「会計方針の開 示」が会社の採用する会社方針の開示を要求している他にはいかなる指針も示されていな い。驚くなかれ,『1979年度公表計算書類の調査』によれば,トップ企業300社のうち,取 得原価にて暖簾を表示している会社77社,長期にわたって償却している会社29社,取得年 度内に全額償却している会社125社であって,69社は会計方針を明らかにしていない。E EC第4指令は暖簾を5年以上の期間にわたって償却する場合には(1980年8月!4日まで にイギリス会社法に導入されることが要求されている),その償却期間およびその根拠を 開示しなけれぽならないと述べている(第37条第2項)。 IV 企業集団の開示規定 以下に,イギリスにおける企業集団の主要な情報開示要素を要約しよう。ただし,本章 の他のところで論じたものを除くことにする。より詳細な議論については,読者は,会計 実務基準書第1号,第14号とともにG・A・リー『近代財務会計論」第16章第2節を参照 12) されたい。ここではつぎの領域,すなわち,従属会社:連結計算書類および連結範囲から の除外,関連会社,支配会社および従属会社の個別計算書類における開示,にわけて論じ ることにする。 従属会社=連結計算書類および連結範囲からの除外 1948年会社法第151条は典型的 11) Pendlebury, M. lnternalional ComParison of GTouP Accounting, Research Com− mittee Occasional Paper No. 16, ICAEW, 1979. 12) Lee, G. A,, Modern Finacial Accozanting, 2nd Edition, Nelson, 1975.
な企業集団会計として連結計算書類一連結貸借対照表および連結損益計算書一を規定して いる(現在,会計実務基準書第10号は追加的な計算書類として連結資金計算書を要求して いる)。しかしながら,取締役が理解の助けになると信じる場含には,連結計算書類とは 異なった表示様式(たとえば,従属会社毎の個別計算書類を作成するとか,事業種類別の 連結計算書類を作成する)を選択することができる。これらの計算書類は支配会社の株主 に「真実かつ公正な概観」を与えなければならない(第152条第1項および第3項)。会計 実務基準皆野14号は第15節につぎのように規定して,利用可能な代替的表示様式を限定し ている。すなわち,連結除外のところで述べる状況の場合を除いて,「支配会社は単一の 連結財務諸表形式の綜合計算書類を作成しなければならない」。 連結計算書類は企業集団構成会社の個別財務諸表を結合する(支配会社の取締役が必要 と考える調整を加えて)ことを要する,また,その他の点では(2つの除外事項を除い て)単一の会社に対する会社法の規定に従うことを要するとある(1967年会社法附則第 2,第17条から第19条までの規定)。会計実務基準書第14号は,従属会社の財務諸表にお いて統一的な会計方針を実際に採用するか,あるいは,実際に採用しない場合には連結に 際して修正するか,いずれかにより統一的な企業集団会計実務を要求している。上記の統 一ができない例外的な場合には,「採用された異なる」会計方針の開示J影響をうける資 産および負債額の表示,企業集団の業績と純資産に与える効果,異なる会計処理を採用す る理由を示さなければならない(会計実務基準無暗!4号第16節)。 もし従属会社の事業年度終了日が企業集団の他の会社の事業年度終了日と一致しない場 合には,その理由を示さなければならない。また,このような同一会計期日を採用しない 従属会社名(会計実務基準書第14号による)とともにその事業年度終了日を開示しなけれ ばならない。 連結からの除外規定 1948年会社法は,以下に示す3つの主要な理由のいずれかに該 当する場合には,従属会社を連結計算書類に含めないことを認めている。 !.重要性 実行不可能なこと,金額が僅少であること,あるいは,便益に比べて費用 もしくは時間が過大にかかること 2.事業に及ぼす不利益一その情報公開が企業にとり有害であるか,あるいは,誤解を 招くものであること 3.支配会社の事業と従属会社の事業との著しい相違。ただし②および③に該当する場 合には,商務省の承認が必要である。
82 会計実務基準書記!4号は上記の⑧の条件をさらに拡張して,従属会社聞の事業の相違も 除外条件に含めている(後に論じる事業種類別分析を事実上認めている)。さらに会計実 務基準書第14号は支配に関する会社法の硬直的な定義に弾力性をもたせ,従属会社の持分 株式資本の過半数を所有しているが議決権株式の過半数を所有していない場合,あるいは 取締役を選任する権限に契約上の制限がある場合には連結から除外することを認めている のである。ある意味では,この規定は従属会社についての会社法の定義を事実上修正し 8) て,アメリカにおける定義およびEECの提案に同調させるものといえよう。さらに連結 から除外しなければならない2つの範囲が規定されている。すなわち,支配が一時的な場 合,および,従属会社の資産ならびに事業活動にきびしい制約がある場合である。このう ち後者は不安定な海外の経済情勢および政治情勢に間接的に言及しているのであろう。会 社法は単に除外を認めるものであるのに対して,会計実務基準書第14号では,その定める 規準に該当するときは除外を要求していることに注目されたい(ここでも,会社法の規定 を拡張したり縮小したりしているのである)。 アメリカ公認会計士協会・会計研究公報第43号および第51号は連結除外の規準として, 一時的な支配,事業活動の著しい制約および事業活動の異質性をあげているが,その他に も,会社更生および破産手続中にて株主の支配が失われている場合,親会社の有する持分 に比して少数株主持分が大きい場合をあげている。現在のアメリカは連結からの除外を認 める範囲を縮小する傾向にあるが,アメリカ財務会計基準審議会の基準は討議資料の段階 でとどまり,「財務諸表の目的」に関する今後の作業の進展をまっている。 もし連結除外規定を利用して連結を実施しない場合には,連結に代わる開示を行なわな ければならない。会計実務基準書第14号は従属会社を連結計算書類から除外した理由に応 じた情報の開示を求めているが,会社法はすべての場合に従わなければならな:い基本的な 要件,すなわち,連結から除外した理由,連結から除外した従属会社の現事業年度の利益 もしくは損失および株式取得日以後の過年度の利益もしくは損失の総額(綜合計算書類の 中で取扱われた上記の利益もしくは損失と綜合計算書類の中で取扱われていない利益もし くは損失に区別した上で),企業集団間の債権・債務の詳細,除外した従属会社の計算書 類に関する監査報告書の重要な限定事項の表示を規定している。 一時的な支配の場合には,投資を流動資産として(取得価額または正味実現可能価額の いずれか低い価額にて)連結貸借対照表に計上する。また, 「支配」についての会社法の 定義を修正するような場合,すなわち持分資本の過半数を所有していても議決権の過半数
を所有していないため,あるいは,取締役を選任する権限に制約があるため連結から除外 した場合には,非連結会社を関連会社に対する投資として(会計実務基準書癖1号の規準 を満たすとき)計上し,また会計実務基準良匠!号の規準を満たさないときは取引投資と して計上することが必要である。このような場合には過半数「麦配」が現実には行使され えないという事実に気づいたものであろう。つぎに述べる他の2つの場合は一層複雑であ る。事業活動の異質性という規準は,会社法の上記開示要件のほかに,除外した従属会社 の個別財務諸表(あるは事業種類別財務諸表),除外会社と企業集団の他の構成会社との 取引の性質に関する説明を要求している。さらにまた,連結財務諸表には除外した従属会 社に対する投資額を関連会社に対する投資として計上しJ個別財務諸表には,連結財務諸 表に計上された額との調整に関する情報を表示しなければならない。第4の除外条件,す なわち,著しい財務的制約という条件に該当する場合にも持分(関連会社)法による報告 を求めている。ただし,制約の実施された日に持分法を適用したとすれば計上されたであ ろう金額に限定すべきものとしている。さらに,以下に示す情報を注記に開示することを 要求している。すなわち,純資産額,当該期間の利益または損失,受取配当金,制約実施 以後に行なった投資評価減である。直観的な意味で,制約の実施された日から投資危険は 大きくなり,投資額を従属会社に対する投資として,あるいは,関連会社に対する投資と して計上することさえむずかしくなる。したがって,その時点から取引投資として処理さ れるのである。 さらに,会計実務基準書第14号は会社法の規定に加えて.除外が認められる場合にはす べて,除外された従属会社名を開示し,また,その従属会社の取得に際して生じた取得資 産の取得価額と公正価額との差額が未償却の場合には,その開示を規定している。 関連会社 会計実務基準書第1号は,連結貸借対照表における関連会社に対する投資 に関して持分法(取得価額プラス株式取得日以後の企業集団に帰属する利益一評価減を控 除一にて投資を表示する)の適用を要求する。会計実務基準書公開草案第25号は関連会社 に対する投資総額をつぎのように区分することを求めている。すなわち 13) 1.関連会社の純資産現在高(暖簾を除く)の占める割合 2 関連会社の計上している暖簾の投資会社に帰属する割合 3.関連会社の取得に際して生じた取得資産の取得価額と公正価額との差額,ただし, 項目②と③とは合算することができる。 13)(1)については純資産に株式取得日現在の公正価額を付した衡ご決定すべきである。
84 とくに,多額のプレミアムにて関連会社を取得する場合には関連会社の純資産額が有用な 情報であると考えられる。 会計実務基準重鉢1号は追加情報として,つぎの事項の開示を規定する。すなわち,そ の他の準備金(たとえば固定資産再評価準備金)の変動,関連会社の留保利益,企業集団 の事業年度終了日と異なる関連会社の事業年度終了日の詳細,企業集団問の取引から生じ る重要な影響の除去である。関連会社の業績の開示を省略できる条件は連結の場合に比べ てはるかに狭く,便益に比べて費用または時間がかかりすぎる場合,あるいは,関連会社 の業績を連結計算書類に計上すれば誤解を招くことになる場合に限って認められるのであ る。そして,開示を省略した理由を述べなければならない。さらに会計実務基準書公開草 案第25号は,多くの情報,たとえば,関連会社間の貸付金の個別表示,また,金額が重要 な場合には流動資産および流動負債の表示を要求している。また.配当の制限および関連 会社の変動に関する多くのその他の事項の開示を規定することにもなるであろう。 支配会社の個別計算書類における開示 会社の法的構造は経済的業績に相当の影響力 をもっているようである。そこで!967年会社法第3条は主要な従属会社の詳細,すなわ ち,従属会社の名称,登記または設立された国名および親会社の株式保有の詳細を麦配会 社の個別計算書類に表示することを規定する(また,その他の大規模な株式所有の場合, すなわち,他の会社のいずれかの種類の株式を10%をこえて保有する場合,または,その 保有する株式の総額が支配会社自体の純資産額の10%をこえる場合には,上記の従属会社 に関する事項と同様の情報を表示しなければならない)。さらに,保有する従属会社株式 および従属会社に対する債権・債務の総額を開示しなければならない。 証券取引所上場認可規程は上記会社法の規定を拡張して,従属会社の主たる営業国名の 開示を要求している。さらに会計実務基準書第14号は主要な従属会社の事業の性質の開示 を要求している。 会計実務基準書第1号によれば,関連会社として計上した会社と関連会社として計上し ていない会社とを区別して,持分議決権の20%以上の株式を保有する会社の名称およびそ の株式保有の詳細を記載しなければならない。この会計実務基準書第1号の規定は10%規 準よりも強力な要件である。というのはJここでいう20%は従属会社による保有株式を含 むのに対して,10%は従属会社による保有株式を含まず,全く親会社のみによる保有を考 えているからである。 律属会社の個別計算書類における開示 従属会社は,取締役により最終的な支配会社
であると考えられる会社の名称.および,その会社の設立された国名を計算書類に記載し なければならない(取締役が知っている場合には)。また,従属会社は,支配会社および 姉妹従属会社に対する債権・債務の総額(社債とその他の債権・債務とを区別して),お よび,保有する姉妹従属会社株式の金額を記載しなければならない。 V 在外従属会社に関する外貨換算 1977年9月に公表された会計実務基準面公開草案第21号「外貨取引に関する会計」は決 14) 算日レート法(貸借対照表については貸借対照表N現在の為替レートで換算する),およ び,テンポラル法(その項目の金額が計算書類に計上された時点における為替レートで換 算する)の両面を認めている。外貨換算は問題のある領域であって改正が予定されている ところであるが,アメリカ財務会計基準審議会基準墨第8号はテンポラル法を要求してい る。イギリスの会計実務基準書公開草案は,アメリカとは異なり,為替変動をヘヅジする 先物為替契約については言及していない。 固定資産に関する為替差損益を準備金の変動として処理する以外には(固定資産に関す る為替差損を準備金に直接計上すれば準備金勘定が借方残高となる場合,および過年度に 損益計算書に計上した為替差損の回復である場合を除く),一般に為替官僚益は損益計算 書に司.しすることが要求されている。さらに,現金または現金に相当する勘定残高を控除 した純外貨表示借入金の為替差損益は,固定資産の為替差損益と相殺し,差額があればそ の差額を損益計算書に計上できる。為替差損益は通常の事業活動から生ずる差損益と異常 項目から生ずる差損益とに区分しなければならない。 この領域には若干の意見の相違があり,1980年3月現在いかなる基準も公表されていな い。 「外国取引および外国財務諸表の換算に関する会計」と題する国際会計基準公開草案 第11号は1977年12月に公表されたが,この公開草案もまた決算日レート法およびテンポラ ル法の両者を認めている。国際会計基準委員会はアメリカ財務会計基準審議会基準書案第 8号の改訂をまって,その作業を見合わせているもようである。 「!979年度公表計算書類の調査』によれば,調査対象の大会社300社のうち245社が決算 目レート法を採用しており,テソポラル法を採用している会社は14社にすぎない。固定資 産および長期借入金に関する為替差損益の処理を開示している会社140社のうち107社は上 記為替差損益を準備金の変動として処理している。 !4)なお,損益計算書の換算にはその年度の平均レートが用いられるg
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VIセグメント報告
本章のはじめで述べたように,一般に連結が法的構造にもとつくものであり,セグメン ト報告は経済的な構成要素にもとつくものであるので,連結とセグメント報告とは必ずし も逆の手続ではない。 セグメント報告における基本的な問題にはつぎのものがある。すなわち 1.報告すべきセグメントの定義 2.セグメント情報の測定(これにはトーマスが1969年および1974年に論じている非常 15) にむずかしい配分問題が含まれている) 3.開示範囲の決定。 この領域におけるイギリスの会計実務はアメリカに比べ劣っており,一般にヨーロッパ の実務は(若干の大会社を除いて)なお一層劣っている。以下,イギリスの会計実務につ いて論じ,アメリカの会計実務と対比しよう。 会社法および上場認可規程 セグメント情報の開示を要求する主要な規定に,取締役 の報告書(主たる計算書類に添付する)のなかに一定の記載事項を要求する1967年会社法 とロンドン証券取引所上場認可規程(!979年改訂版)がある。この問題に関して会計基準 は存在しない。会社法の規定は法的強制であり,上場認可規程は証券取引所全上場会社に 強弔するものである。 報告すべきセグメントに関する会社法の定義はかなりあいまいで,「2種類以上の事業 を遂行し,それらが相互に相当程度異なると取締役が判断するときは,」会社または企業 集団はセグメント情報を報告することを要する(第17条第1項および第2項)とある。証 券取引所の定義は会社法に比べて明確であり,イギリス以外で遂行した事業活動について 地域的基準にもとつくセグメント情報を要求している。しかしながら,セグメントの定義 はアメリカほどには明瞭なものでない。 財務会計墓準との比較 アメリカ財務会計基準審議会基準書第14号は重要な産業種類 別の報告(イギリス会社法の要件に相当する)に重点をおき,2つの区分が重複してもよ いとしている。報告すべき(すなわち重要な)産業セグメントとは以下に示すいずれかの 15) Thomas, A, L. The Allocation Problem: Part 1, Studies in Accounting Research No.3, AAA,1969およびThe A〃ocatiQn Problem:1)art 2, Studiesミn Accounting Research. No. 9, AAA, 1974,〈翻訳〉テイラー「複合企業の会計=企業集団会計およびセグメント会計」 基準をこえるセグメントであると上記基準書第14号は定義する。 1.産業セグメント収益合計額の1Q%(セグメント間の振替を含む) 2.営業利益を計上している産業セグメントの営業利益合計額の10% 3.営業損失を計上している産業セグメントの営業損失合計額の10% 4.産業セグメントの識別可能な資産合計額の10% さらに,報告すべきセグメントの数は10をこえてはならない。また,その報告すべきセ グメント間でセグメント収益合計額の75%を占めなければならない。このようなアメリカ 財務会計基準審議会基準玉壷!4号は前に述べたイギリス会社法の規定よりはるかに明瞭で ある。 海外事業活動に関する情報について,アメリカ財務会計基準審議会基準書第!4号は,外 部の顧客に対する企業の総売上高の10%をこえる売上があり,あるいは,企業集団の識別 可能な資産の10%をこえる資産を所有している本国以外の重要な地域別セグメントの報告 を要求している。これに対して,イギリスにおいては,証券取引所上場認可規程は1979年 7月1日から地域別セグメントの定義を厳格にしているので,アメリカ財務会計基準審議 会基準書第14号の売上高基準に一致するが.資産基準には一致するにいたっていない。証 券取引所上場認可規程は大陸別分析を要求し,さらに,海外事業活動の50%以上が一大陸 に関連する場合には国別分析を求めている。 イギリスの規定はセグメントに収益および利益を配分する測定問題をほとんど論じてい ない。セグメントが高虜こ相互依存的であり,また,グループの利益を自得するため相互 作用のある場合にはむずかしい問題が生じる。前記トマスが著書に示しているように, このような場合には項目を各セグメントに配分してみても,その配分だけが正しいわけで はないのである。このような理由から,比較可能性をうるためセこは明確に配分できない結 台費用を処理する何らかの認められた方法を定めることが必要である。しかし,イギリス においては,このような方法を定めてはいない。 アメリカ財務会計基準審議会基準書誌14号(証券取引委員会財務諸表規則の裏付けがあ る)においては,企業は若干の結合費用をセグメントに配分すべきであると決める一方, 一般的なグループ収益および費用(本部管理費を含む),利子および異常項目など,セグ メントに配分すべきでない結合費用をあげ,また,配分可能な費用に関する原価計算基準 審議会の見解に言及している。ここでもまた.イギリスの規定が幅の広い「認められた」 実務を許しているのは,大きな弱点である。しかしながら,証券取引所上場認可規程は売
88 上高の定義を厳格にしょうと試み,たとえぽ企業集団間売上高の控除を規定している。た だ原価配分の問題については無視しているのである。 開示に関していえば,イギリスの要件はアメリカに比べて一層明確である。すなわち. 1967年会社法は売上高および各種類の事業が会社(企業集団)の税引前損益に貢献してい る程度(取締役の判断した程度)の開示を要求している(第17条第1項および第2項)。 証券取引所上場認可規程(1979年)は海外における売上高の表示(数字あるいはパーセン トによる。また,企業集団間の売上高を除外する)を要求するものであるが,事業成績に ついては,特定の領域の損益に対する貢献度が「異常な」性質のものである場含にのみ開 示を要求しているにすぎない。セグメントの売上利益率が正常な率と相当程度異なる場合 には「異常な」と定義されている。これに対して,財務会計基準審議会基準書第14号の要 件は,上記に加えて,つぎのような産業セグメントに関する詳細を規定している。すなわ ち,損益計算書,識別可能な資産の詳細,減価償却,工場設備の増設,会計方針変更の影 響について規定している。また国別セグメントについては,すべてのセグメントについて 営業利益などの利益項目のうちの1項目の表示,識別可能な資産の三綱の表示を規定して いる。 イギリスにおける展開はかなり近いうちに期待される。EEC第4指令(イギリス会社 法に組み入れられる予定)は売上高の製品ないしは事業種類別分析,地域別分析を要求す ることになるであろう。イギリス会社法をEΣC指令と調整するために,『会社会計と開 示』と題する諮問文書は,事業種類別の売上高および税引前損益の開示,地域別分析につ いては売上高のみの開示を提案している。上場会社に関しては,この提案は現行の要件と 何ら異なるものではない。 前政府がとりまとめた討議資料は地域別,事業種類別の純資産および資本投資額の開示 を提案しているが,この提案が近い将来実現するとは思われない。 会計基準委員会および国際会計基準委員会は「多角的な事業に関する会計」を会計基準 制定プPグラムにのせているが,その歩みはおそい。現時点では,セグメント報告に関す るほとんどすべての領域において,イギリスの規定はアメリカにおくれており,幅の広い 実務を認めているものである。