気候変動・海面上昇が環礁州島の地形維持機構に与
える影響―マーシャル諸島マジュロ環礁における現
地調査―
著者
横木 裕宗
雑誌名
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers
巻
47
ページ
11-17
別言語のタイトル
Impacts on the Land Maintenance Mechanisms of
Atolls Induced by the Climate Change and the
Aea Level-rise―Field Survey on Majuro Atoll,
the Marshall Islands―
OCCASIONAL PAPERS No.47 (March 2007)
気 候 変 動 ・海 面 上 昇 が 環 礁 州 島 の
地 形 維 持 機 構 に 与 え る 影 響
−
マーシャル諸 島マジュロ環礁 における現地調査−
横木
裕宗
茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター
316-8511日立市中成沢町4-12-1
Tel: 0294-38-5219,
Fax: 0294-38-5268,
Email: [email protected]
Impacts on the Land Maintenance
Mechanisms of Atolls
Induced by the Climate Changeand the Aea Level-rise
— Field Survey on Majuro Atoll
, the Marshall Islands —
YOKOKI Hiromune
Center for Water Environment Studies, Ibaraki University Email: [email protected]
Abstract
According to IPCC Third Assessment Report, the mean sea level is projected to rise to 9 to
88 cm by 21OO relative to in 199O due to the global warming and climate changes (IPCC, 2OO1).
Various impacts are anticipated to be caused by the sea-level rise in coastal areas. As for the
in-undation risks for example, the potentially inundated area are expected to increase by 1.5 times
relative to the present against 5Ocm sea-level rise according to the calculations using the global
topographical data. Storm surges enhance the risk. In particular, the countries which consist of
atolls like Marshall Islands and Tuvalu in the South Pacific region are exposed to the risk of
in-undation. This paper focuses on the impacts of global warming and sea-level rise onto the coastal
areas of atolls, and presents the preliminary results of the field survey in Majuro atoll supported
by Global Environment Research Fund (GERF), Ministry of the Environment, Japan.
1.は じ め に 太 平 洋 を は じ め とす る海 洋 上 に は,多 く の島嶼 が あ り,現 在 多 く の 国 の 人 々 が 比 較 的 小 規 模 の 島 で 生 活 し て い る 。 ま た,地 球 温 暖 化,海 面 上 昇 が 進 行 し て お り,IPCC (2001)に よ る と,2100年 に は,全 球 平 均 気 温 で1.4∼5.8℃ 上 昇 し,平 均 海 面 は9∼88cm 上 昇 す る と予 測 され て い る 。 海 面 上 昇 お よ び 温 暖 化 に 伴 う気 候 変 動 が島嶼 国 に 及 ぼ す 影 響 は さ ま ざ ま で あ る が,面 積 や 標 高 な どの 地 形 的 な 面 で島嶼 国 は 適 応 力 が 比 較 的 小 さ い と され て お り,温 暖 化,海 面 上 昇 に よ る 影 響 は 甚 大 に な る も の と考 え られ る 。
12 横木 裕宗 本 稿 で は島嶼 の 海 岸 の うち,サ ン ゴ礁 海 岸,特 に環 礁 州 島海 岸 と取 り上 げて,地 形 的 特 性 と海 面 上 昇 に よ って 受 け る と考 え られ る影 響 を述 べ る こ と とす る。 環礁 州 島 は一 般 的 に細 く長 い ので,海 岸 にお け る侵 食 ・堆 積 は,州 島 の地 形 維 持 に直 接 影 響 す る こ とに な る。 そ こで 本 稿 で は,海 面 上 昇 や 高 波 浪 が 環 礁 州 島 の海 岸 地 形 ひ い て は 州 島 の地 形 維 持 に どの よ うな影 響 を及 ぼす のか につ い て 考 察 す る。 サ ン ゴ礁 そ の もの が 温 暖 化,海 面 上 昇 か ら受 け る影 響 と して は,海 面 上 昇 に よ る水 没 や 海 水 温 の 上 昇 に よ る 白化 の頻 発 な どが 挙 げ られ て い る(例 え ば,原 沢 ・西 岡編2003)が,本 稿 で は 言 及 しな い。 ま た, 筆 者 が 所 属 して い る環 境省 の プ ロ ジ ェ ク トで 実 施 した マ ジ ュ ロ環礁 へ の 現 地 調 査 につ い て 調 査 内容 と結 果 の概 要 を紹 介 す る。 2.環 礁 州 島 海 岸 に お け る 土 砂 収 支 の 特 徴 環 礁 とはサ ン ゴ礁 が 中央 の ラ グー ン を囲 む よ うに環状 に連 な っ た地 形 の こ とをい い, そ の サ ン ゴ礁 の上 に形 成 され た 細 長 い 島 を 州 島 とよぶ の で,こ こで は環 礁 上 に形 成 さ れ た 州 島 を環 礁 州 島 とよん で い る。 図1は 典 型 的 な 環 礁 お よび 環 礁 州 島 を示 した もの で あ る。 一 般 に見 られ る環 礁 で はサ ン ゴ礁 の幅 は数 百mか ら1km程 度 で,そ の上 に形 成 され て い る州 島 の幅 は 広 い とこ ろで も数 百m程 度 で あ る。 また,州 島 の標 高 はせ い ぜ い 数m程 度 で あ る こ とが 多 い 。 この よ う な狭 い 地 形 で は,降 った 雨 はす ぐに海 岸 に 流 出す るか,地 下 に浸 透 す るた め,河 川 が 形 成 され る こ とは ない 。 規模 の 大 きい 火 山 島や 大 陸 の海 岸 の 底 質 図1 環 礁 の 例 (ツ ア モ ツ の 一 環 礁,Nunn 1999よ り) (礫,砂,シ ル トな ど海 浜 を構 成 す る物 質)は,河 川 の河 口か ら流 れ 出 た 土砂 や 海 崖 の 崩 落 に よ って 生 じた 土 砂 が 海 岸 に沿 って 運 ば れ,海 岸 に供 給 され て い る。 つ ま り,海 岸 の底 質 は陸 域 か ら供 給 され て い る こ とに な る。 しか し,環 礁 州 島 で は 河 川 や 崖 が な い の で,海 岸 の底 質 は陸 域 か ら供 給 され る ので は な く,サ ン ゴ の破 片 や 有 孔 虫 の 死 骸 な どサ ン ゴ礁 で 形 成 され た リー フか ら供 給 され て い る。 した が って,例 え ば 日本 の 海 岸 の砂 浜 で 海 岸 侵 食 問 題 を考 え る場 合 は,河 口や 崖 か ら の土 砂 供 給 と沿 岸 漂 砂 の 連 続 性 が 非 常 に重 要 とな るが,環 礁 州 島海 岸 で の 土 砂 収 支 を考 察 す る場 合 は,サ ン ゴの破 片 や,有 孔 虫 に よ る生 物 生 産 に よ る底 質 の 供 給,波 浪 や 流 れ に よ る沿 岸 漂 砂 に よ る運 搬,そ して リー フか らの 消 失 や 州 島の 一 部 と して の 堆 積 が 重 要 な要 素 とな る。 3.海 面 上 昇 ・気 候 変 動 の 影 響 次 に,波 浪 や 流 れ に よ る沿 岸 漂 砂 が 海 面 上 昇 に よ って 受 け る影 響 を考 え る。 サ ン ゴ礁 海 岸 は,一 般 に 自然 の 防 波 堤 を持 った海 岸 とい わ れ て い る。 そ れ は,リ ー フ
エ ッジで 砕 波 す る こ とで 外 洋 か ら入 射 す る波 の エ ネ ル ギー が 減 衰 し,リ ー フ上 お よび海 岸 に入 射 す る波 は比 較 的穏 や か に な るか らで あ る。 これ は,一 般 の砂 浜海 岸 と比 較 して, 海 岸 の底 質 を移 動 させ るエ ネ ル ギー が 小 さ くな って い る こ とを意 味 す る。 そ の た め,サ ン ゴ礁 海 岸 は高 波 浪 に よ る侵 食 ・堆 積 の影 響 を受 け に くい,安 定 した海岸 と され てい る。 しか し,海 面 上 昇 に よ って リー フ上 の水位 が 上 昇 す る と,入 射 波 が リー フエ ッジで砕 波 しに くくな り,そ の 結 果,入 射 波 の エ ネ ル ギー が 減 衰 す る こ とな く海 岸 に入 射 す る こ とに な る。 これ は,底 質 が 移 動 しや す く な り,沿 岸 漂 砂 に よ る運 搬 が 活 発 にな る こ とを 意 味 す る。 ま た,リ ー フ上 に比 較 的 大 き な波 浪 場 が 発 生 す る こ とにな るの で,リ ー フ上 の底 面 流 速 が 大 き くな り,底 質 が リー フエ ッジ を越 えて 流 出す る可 能 性 が 高 くな る こ と も考 え られ る。 こ こで は,海 面 上 昇 の み を考 慮 し,温 暖 化 に伴 う気 候 変 動 に よ る波 浪 そ の も のの 変 化 は考 慮 して い な い 。 入 射 波 浪 が 変 化 す る とな る とそ の 影 響 も評 価 す る必 要 が あ る。 現 状 で は,海 面 上 昇 に よ って 有 孔 虫 に よ る生 物 生 産 が 受 け る影 響 を評 価 す る こ とは難 しい ので,そ れ ほ ど変 化 が な い と仮 定 す る と,海 岸 に入 射 す る波 浪 エ ネ ル ギー が 大 き く な る こ とで,沿 岸 漂 砂 が 大 き くな り,土 砂 供 給 量(速 度)が 変 化 しな けれ ば環 礁 州 島 全 体 にわ た っ て土 砂 の 運搬 が活 発 とな り,侵 食 ・堆 積傾 向 が よ り顕 著 にな る と考 え られ る。 さ らに,リ ー フエ ッジ を越 えて 流 出す る底 質 の 割 合 も増 加 す る こ とが 危 惧 され る。 図2マ ジ ュ ロ環 礁 4.マ ジ ュ ロ 環 礁 に お け る 現 地 調 査 4.1調 査 の概 要 筆 者 は,気 候 変 動 ・海 面 上 昇 に対 す る環 礁 州 島 で の 脆 弱 性 評 価 と適 応 策 の 提 案 を 目的 とす る,環 境 省 地 球 環 境 研 究 総 合 推 進 費(課 題 番 号B-15,環 礁 州 島 か らな る島嶼 国 の 持 続 可 能 な国 土 の 維 持 に 関す る研 究,2003∼)の プ ロ ジ ェ ク トに属 して お り,2003年 よ り環 礁 州 島の 調 査 を行 う機 会 に恵 まれ た 。 この プ ロ ジ ェ ク トは,代 表 者 の 茅 根創 氏(東 京 大 学 理 学 系研 究 科,地 理 ・地 質),山 野 博 哉 氏(国 立 環 境 研 究所,地 理,リ モ ー トセ
14 横木 裕宗 ン シ ン グ),山 口徹 氏(慶應 義 塾 大 学,考 古 学),近 森 正 氏(慶應 義 塾 大 学,帝 京 平 成 大 学,文 化 人 類 学)と 筆 者(横 木 裕 宗,海 岸 工 学)と い う多 様 な 分 野 の 研 究 者 か らな っ て い る 。 ま た 筆 者 と協 力 して 調 査 研 究 を 行 う研 究 協 力 者 と して,桑 原 祐 史 氏(茨 城 大 学 工 学 部,空 間 情 報 工 学)も 加 わ っ て い る 。 現 地 調 査 で は,海 岸 の 踏 査 と と も に,流 速 計 を 設 置 して 流 動 場 の 定 点 観 測 を 実 施 した 。 こ れ らの 調 査 に 際 して マ ー シ ャ ル 諸 島 共 和 国 政 府 の 許 可 が 必 要 で あ り,許 可 の 取 得 と調 査 に 関 す る ア ドバ イ ス を,環 境 保 護 局 のC.McCLENNEN氏 お よ びT.A.ISHODA氏(当 時,現 在 は 海 洋 資 源 局)か ら得 る こ と が で き た 。 特 に,McCLENNEN氏 に は,マ ジ ュ ロ 環 礁 に お け る 海 岸 保 全 計 画 に つ い て の 情 報 も 提 供 して も ら え る な ど,調 査 研 究 の 成 果 の 現 地 適 用 に 向 け て 友 好 的 な 関 係 を 築 い て い る 。 こ の プ ロ ジ ェ ク トで の 現 地 調 査 は,2003年 と2005年 に マ ー シ ャ ル 諸 島 共 和 国 の マ ジ ュ ロ 環 礁 で,2004年 に ツ バ ル の フ ナ フ チ 環 礁 で 行 っ た 。 本 稿 で は2005年 の マ ジ ュ ロ の 調 査 に つ い て 紹 介 す る 。 現 地 調 査 の 対 象 で あ る マ ー シ ャ ル 諸 島 共 和 国 の 首 都 マ ジ ュ ロ 環 礁(図2)は,南 太 平 洋(北 緯7度6分,東 経171度22分)に 位 置 し,伝 統 的 な 居 住 環 境 が 保 た れ た 地 域 が あ る も の の,比 較 的 高 度 に 都 市 化 し た 環 礁 で あ る 。 マ ー シ ャ ル 諸 島 共 和 国 の 総 人 口 約 52,000人 に 対 し て,マ ジ ュ ロ 環 礁 に は 約25,000人 居 住 し て お り(1993年 推 計; DOUMENGE 1999),近 隣 の島嶼 国 と 比 較 し て も,都 市 人 口 が 多 い の が 特 徴 で あ る。 4.2主 な 調 査 結 果 マ ジ ュ ロ 環 礁 の 沿 岸 環 境 の 概 略 を 把 握 す る た め に,図2の リ タ,ウ リガ 地 区 か ら ロ ン グ ア イ ラ ン ドを 経 て ロ ー ラ 地 区 に か け て 踏 査 を 行 っ た 。 マ ジ ュ ロ 環 礁 東 部 の ウ リガ ・ リ タ 地 区 は,近 代 建 築 物 と住 宅 ・工 場 等 が 分 布 す る都 市 域 で あ る 。 一 方 で,環 礁 西 部 の ロ ー 図3マ ジ ュ ロ 環 礁 の 海 岸 風 景(a:ウ リ ガ,リ タ 地 区,b:ロ ン グ ア イ ラ ン ド地 区,c:ロ ー ラ 地 区) ラ 地 区 は,2000年 前 に 既 に 人 類 が 居 住 して い た 痕 跡 が 発 見 さ れ て い る 伝 統 的 な 居 住 域 で あ り(YAMAGUCHIほ か2005),現 在 で も 密 度 の 高 い 樹 林 に 覆 わ れ た 地 域 と な っ て い る 。 しか し最 近 数 十 年 で は 激 し い 海 岸 侵 食 に 見 舞 わ れ て お り(XUE 2001),海 面 上 昇 の 影 響 に よ る 将 来 の 海 岸 侵 食 の 加 速 が 危 惧 され て い る 。 ウ リガ ・ リ タ 地 区 と ロ ー ラ 地 区 の 間 に あ る ロ ン グ ア イ ラ ン ド地 区 は,細 長 い 島(州 島)が 連 な っ て お り,細 長 い 海 岸 が 繋 が っ て い る 。 こ れ ら3地 区 の 海 岸 の 様 子 を 図3に 示 す 。 図3よ り,ウ リガ ・ リ タ 地 区 で は, 海 岸 に ゴ ミが 投 棄 さ れ も は や 自然 海 岸 と は 言 い 難 い 状 況 で あ る 。 そ れ に 比 べ て ロ ン グ ア
イ ラ ン ド,ロ ー ラ地 区の海 岸 は 自然 の 砂 浜 が 豊 富 に残 って い る状 況 が 分 か る。 波 浪 や 流 れ に よ る漂 砂 の 場 を推 定 す るた めの 基礎 資 料 を得 るた め に,い くつ か の 測 線 を設 定 して,海 岸 地 形 の 断 面 測 量 を行 った 。 断 面 地 形 の特 徴 と して は,オ ー シ ャ ン側, ラ グー ン側 とも に典 型 的 な リー フ海 岸 で あ る こ と以 外 に,オ ー シ ャ ン側 は,汀 線 付 近 に 砂 礫 が あ り,リ ー フ は ビー チ ロ ック とな って い た 。 一 方 ラ グー ン側 は 底 質 が 砂 の部 分 が 比 較 的 長 く続 き,リ ー フエ ッジ に近 づ く とサ ン ゴが 見 られ た 。 一 般 的 な環礁 州 島海 岸 で は,ラ グー ン側 よ りオ ー シ ャ ン側 の方 が 大 き な波 浪 が 来 襲 す るの で,リ ー フエ ッジ付 近 のサ ン ゴ の発 達 が 顕 著 で あ るが,マ ジ ュ ロの ロ ン グア イ ラ ン ドの海 岸 で は,以 前 調 査 し た フナ フチ の 海 岸 ほ ど顕 著 な サ ン ゴの 生 息 は 見 られ な か った 。 これ は,人 間 居 住 に よ る 水 質 変 化 の影 響 も考 え られ る。 図2で 示 した 測 線 の ラ グー ン側 海 岸 にお い て,リ ー フ上 の適 当な位 置 に電 磁 流 速 計 を 設 置 し流 動 場 の定 点 観 測 を行 った 。 流 動 場 の 特 性 を把 握 す るた め に,観 測 され た 流 速 の 時 系 列 デ ー タか ら,波 浪 に よ る往 復 流 成 分 と,潮 流 に よ る平 均 流 成 分 とに分 離 した 。 そ の結 果 の 一 例 を図4,5に 示 す 。 図4は,ロ ン グ ア イ ラ ン ド地 区 の測 線No.3の ラ グー ン側 海 岸 で の観 測 結 果 で あ る。 この 図 か らわ か る よ うに,ロ ン グア イ ラ ン ド沿 い の 海 岸 で は,平 均 流 向が 周 期 的 に変 動 して お り,こ れ は潮 汐 流 に対 応 して い る。 ま た,軌 道 流 速 の流 向 は ほ ぼ一 定 とな って お り,入 射 波 の 波 向 きが 一 定 で あ った こ とを示 して い る。 平 均 流 速 と軌 道 流 速 で は ほぼ 同 じ大 き さ とな って お り,こ の 海 岸 で は波 浪 に よ る流 れ と平 均 流(潮 汐 流)の 大 き さが ほ ぼ 同 じで あ る と言 え る。 一 方 ,図5は ロー ラ地 区 の 先 端 付 近 の測 線No.5に お け る観 測 結 果 で あ るが,潮 汐 に 応 じて 平 均 流 向が 明確 に反 転 して い る こ とが 分 か る。 また,流 速 の 大 き さ も,外 洋 側 か らラ グー ン側 へ 流 入 す る流 速 が,流 出す る流 速 よ り大 き くな って い る こ とが 分 か る.軌 道 流 速 や そ の 流 向が あま り変 化 して い ない こ とを考 慮 す る と,ロ ー ラ先 端 で は 潮 汐 に よ る流 れ が 支 配 的 に な って い る と考 え られ る。 以 上 の 流 速 観 測 結 果 の 考 察 か ら,ロ ン グア イ ラ ン ド沿 い の海 岸 で は 波 浪 に よ る流 れ と 潮 汐 流 が 拮 抗 して い るの に対 して,ロ ー ラ先 端 で は明 らか に潮 汐 流 が 支 配 的 とな って お り,こ の こ とは土 砂 収 支 を含 めた 海 岸 管 理 を考 え る上 で 重 要 な 視 点 とな り うる。 5.ま と め 本 稿 で は,環 礁 州 島の 海 岸 が,海 面 上 昇 ・気 候 変 動 に対 して どの よ うな 影 響 を受 け る 可 能 性 が あ るか を検 討 し,特 に波 浪 場 の変 化 とそ れ に伴 う土 砂 収 支 の 変 化,ひ い て は 環 礁 州 島の 地 形 維 持機 構 へ 及 ぼ す 変 化 に着 目 して 考 察 した 。 また,筆 者 が 所 属 す る研 究 プ ロ ジ ェ ク トで 実 施 され た マ ジ ュ ロ環 礁 にお け る現 地 調 査 お よび 調 査 結 果 の概 要 につ い て 述 べ た 。 土 砂 収 支 とい う海 岸 工 学 的 な視 点 に限 って も,将 来 受 け る影 響 を定 量 的 に評 価 す る に はま だ ま だ 知 見 が 足 りな い 状 況 で あ る。 今 後 も現 地 調 査 を 中心 と して,さ らに室 内実 験 や 数 値 モ デ ル に よ る開 発 も援 用 して,環 礁 州 島の 温 暖 化,海 面 上 昇 に よ って 受 け る影 響 を予 測 し,さ らに効 果 的 な適 応 策 を検 討 して い きた い 。 謝 辞:本 報 告 で述 べ た 現 地 調 査 は 環 境 省 地 球 環 境 研 究総 合 推 進 費(課 題 番 号B-15,代
16 横木 裕宗 図4 測 線No.3に お ける 流 速 観 測 結 果 図5 測 線No.5に お ける 流 速 観 測 結 果 表 者:茅 根 創 東 京 大 学 助 教 授)の 援 助 を う け て 実 施 さ れ た も の で あ る 。 ま た 報 告 の 内 容 に は,現 地 調 査 の 際 に 研 究 メ ン バ ー の 問 で 交 わ さ れ た 様 々 な 情 報 や 意 見 交 換 の 結 果 が 反 映 され て い る 。 研 究 代 表 者 の 茅 根 創 氏 を は じ め,研 究 参 画 者 の 山 野 博 哉 氏,山 口徹 氏, 近 森 正 氏,研 究 協 力 者 の 桑 原 祐 史 氏 に 深 甚 な 謝 意 を 表 しま す 。 参 考 文 献 原 沢 英 夫 ・西 岡 秀 三 編2003.地 球 温 暖 化 と 日本 自然 ・人 へ の 影 響 予 測 第3次 報 告, 古 今 書 院,411p. 横 木 裕 宗 ・佐 藤 大 作 ・山 野 博 哉 ・島 崎 彦 人 ・安 藤 創 也 ・南 陽 介 ・高 木 洋 ・茅 根 創 ・ Albon ISHODA 2004.環 礁 州 島 に お け る 地 形 維 持 機 構 と ラ グ ー ン 内 波 浪 場 の 関 係 に 関 す る 現 地 調 査,海 岸 工 学 論 文 集,第51巻,土 木 学 会,1381-1385. 横 木 裕 宗 ・桑 原 祐 史 ・林 利 一 ・佐 藤 孝 一 ・三 村 信 男2006.Majuro環 礁 に お け る 持 続 可 能 な 国 土 利 用 に 向 け て の 現 地 調 査,第14回 地 球 環 境 シ ン ポ ジ ウ ム 講 演 論 文 集,