博士論文審査結果の要旨
学位申請者
門 浩 志
主論文 1編Normotensive non-dipping blood pressure profile does not predict the risk of chronic kidney disease progression. Hypertension Research 42:354-361, 2019
審 査 結 果 の 要 旨
慢性腎臓病(CKD)は末期腎不全(ESRD)への進展のみならず,心血管疾患のリスク因子であ る事が多くの観察研究から示されている.CKD 患者において,高血圧はそれらの中でも強力なリス ク因子と考えられている.血圧測定法の一つである24 時間自由行動下血圧測定(ABPM)による測 定血圧では,non-dipper pattern(夜間降圧度が 10%未満)の判定が可能であり,腎機能悪化と相関 する事が報告されている.特にCKD 患者では non-dipper pattern の血圧日内変動が多い事が観察さ れており,腎機能悪化のリスク因子と報告されている.しかし,血圧が正常なnon-dipper pattern も 存在しているが,この場合に腎機能悪化因子であるのかについて明らかではない.本研究ではCKD 患者にABPM を行い,24 時間平均血圧と夜間降圧度を用いて患者を 4 群に分類し,血圧が正常な non-dipper pattern 患者の腎機能悪化速度について検討を行った. 申請者はABPM を実施(フクダ電子 FB-270 を使用)し,必要なデータを収集し得た 676 症例の CKD 患者を対象とした.夜間降圧度が 10%以上を dipper(D),10%未満を non-dipper(ND)とし,24 時間平均収縮期血圧により,130mmHg 以上を high(H),130mmHg 未満を low(L)と定義した.前述の 定義を用いて対象者を以下の4 群(DH 群,DL 群,NDH 群,NDL 群)に分類した. 申請者は,eGFR 低下量(ABPM 測定時から 6 か月後,12 か月後および 24 か月後までの各期間) について各群で比較を行ったところ,観察全期間でNDH 群が DL 群および NDL 群より eGFR 低下 量が有意に大きかった.この結果より,CKD 患者において血圧正常の場合には ND pattern は腎機能 悪化因子とならない事を示した. 次に申請者は,健康な 40 歳以上の日本人における加齢による 1 年間の平均腎機能悪化速度 (0.36ml/min/1.73m2)をcut off 値として対象症例全体を腎機能悪化群と非悪化群に分類し,背景因子のうち腎機能悪化に関与していると知られている因子および年齢,性別を用いてロジスティック 回帰分析を行った.その結果,収縮期血圧(10mmHg 上昇でオッズ比 1.28,p <0.0001),尿蛋白(1g/day 増加でオッズ比1.95,p <0.0001),腎機能(eGFR 値が 10 ml/min/1.73m2高い場合のオッズ比1.21, p=0.031)は腎機能増悪に有意に関連する因子であったが,夜間降圧度(1%低下でオッズ比 0.99, p=0.350)は有意な因子ではなかった.さらに,24 時間平均血圧値および夜間降圧度と 2 年間の eGFR 低下量との相関を検討した.前者はr=0.255,p <0.0001 と相関があったが,後者は r=-0.069,p=0.074 と相関がなかった.これら検討結果より,血圧日内変動パターンよりも24 時間平均血圧値の方が腎 機能悪化には重要な因子である事を示した. 以上が本論文の要旨であるが,CKD 患者の腎機能悪化には血圧日内変動パターンよりも 24 時間 平均血圧値が影響しており,non-dipper pattern であっても 24 時間平均血圧値が正常であれば腎機能 を悪化させない事を明らかにした点で,医学上価値のある研究と認める. 平成31 年 4 月 18 日 審査委員 教授 福 井 道 明 ○印 審査委員 教授 山 脇 正 永 ○印 審査委員 教授 田 中 秀 央 ○印