• 検索結果がありません。

人類とICTの未来:シンギュラリティまで30年?:[人類はどう生きるべきか?ITはどうあるべきか?]7.4 <人間とは何か>を超越した知性

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "人類とICTの未来:シンギュラリティまで30年?:[人類はどう生きるべきか?ITはどうあるべきか?]7.4 <人間とは何か>を超越した知性"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)特集 新年特別企画 人類と ICT の未来:シンギュラリティまで30 年?. [人類はどう生きるべきか?IT はどうあるべきか?]. 7.4. <人間とは何か>を 超越した知性. 基応 専般. 黒崎政男(東京女子大学) はほんとうの知能とは言えない」.  かつて,D. Hofstadter は『ゲーデル・エッシャー・ 1 バッハ』 (1979) のなかで,次のように述べていた..  だから,より高度な直観や洞察を必要とする将棋.   「人工知能とは,なんであれ,まだ,なされてい. は,コンピュータには指せないだろう,と思われた. ☆. ないところのものである」. わけだ.2010 年代に入って,コンピュータの指す. つまり,こういうことだ.人工知能の進歩に関して. 将棋が,次々とプロ棋士を破り始めたとき,我々は. は,1 つの定理とも言うべきものがあって,何らか. どのように語るべきなのだろうか.. の心的機能がいったんプログラムされると,人々は.  「将棋を指せるぐらいでは,本当の知能とはいえ. それを「真の思考」の本質的部分と見なすことをや. ない.ほんとうに全体の洞察力が必要な囲碁を,. めてしまう.知識の不可欠の核心は常に,次のいま. コンピュータは打つことはできないだろう」. だプログラムされていない事柄の中にある,という.  だが,早晩,コンピュータ囲碁も人間の囲碁名人. わけである.. に勝つ日がやってくるだろう,と考えるようになっ.  この Hofstadter の定理に従うと,人工知能は永. た我々は次のような言葉を考えるのだろうか.. 遠に実現しないことになる.まだ,作られたことの.  「囲碁が打てるくらいでは本当の知能とは言えな. ないものが人工知能だというのが,人工知能の定義. い.結局,ゲームというのは厳密な規則に従って. だとすれば,原理的に,人工知能など作れるわけが. いるだけだからだ.自然言語を楽々と理解するよ. ない.作ったとたん,つまり,神秘的と思われてい. うでなければ,本当の知能とは言えない」. た人間のある能力の仕組みが分かり,それを定式化.  そうこうしているあいだに,IBM が開発した質. し得たとたん,その能力は知能とは呼ばれなくなる. 問応答システムの人工知能「Watson」は,2011 年,. のだから.. 伝統的なクイズ番組に登場して,自然言語をいわば.  人工知能のゲーム研究の分野で,9 つの升目を. 「理解」し,的確な解答をして,人間チャンピオン. 使う「三目並べ」で,コンピュータが常に勝つか. を打ち破ってしまった.. 引き分けるかを可能にしたとき,反 AI 論者の H. L..  三目並べはできるが,チェスはできない.チェス. Dreyfus は次のように言った☆ 2.. はできるが,将棋ができない.将棋はできるが,囲.   「コンピュータは単純な三目並べはできるが,本. 碁はできない.囲碁はできるが言語は理解できな. 当の知能が必要なチェスは指すことができない」. い.言語は理解できるが,**はできない.この.  1997 年 チ ェ ス・ コ ン ピ ュ ー タ, デ ィ ー プ・ ブ. ような形で,そのつど要求水準を上げていくこと. ルーが,人間のチェス世界チャンピオンの G. K.. Kasparov を破ったとき,私は,次のように考えた☆ 3.. ☆1.   「1 秒間に数億手考えるコンピュータと,数手浮 かんだだけでそれに匹敵する人間の直観力や洞察. ☆2. 力はすばらしい.無意味ほど膨大なしらみつぶし 計算をしなければならないコンピュータのやり方. ☆3. Hofstadter, D. R. : Gödel, Escher, Bach : An Eternal Golden Braid (1979), ダグラス・ホフスタッター 著,野崎昭弘,はやしはじめ,. 柳瀬尚紀 訳:ゲーデル,エッシャー,バッハ ─ あるいは不思議の環, 白揚社(1985).. Dreyfus, H. L. : What Computers Can't Do - The Limits of Artificial Intelligence - (1972/79), ヒューバート・L. ドレイファス,黒崎政男, 村若 修 訳:コンピュータには何ができないか ? 哲学的人工知能批 判,産業図書(1992). 黒崎政男:となりのアンドロイド,NHK 出版(1998).. 情報処理 Vol.56 No.1 Jan. 2015. 39.

(2) 特集 新年特別企画 人類と ICT の未来:シンギュラリティまで30 年?. で(Hofstadter の定理によれば)人工知能はいつ. 種類のテクノロジーで,人間の知能以上のことを実. でも不可能ということになってきた.だが逆に言え. 現している.. ば,人工知能は,この数十年でどんどん進化してき.  さらに言い換えてみれば,こういうことだ.<飛. た,ということだ.. ぶ>という働きを人工的に実現するため,鳥の羽や.  Kurzweil は「これから数十年のうち」に,「情. 筋肉の構造や動きを理解しシミュレートしようとす. 報テクノロジーが,人間の知識や技量をすべて包. る努力とは別に,ジェットエンジンというまったく. 含」することになり,「ついには人間の脳に備わっ. 異なる種類のテクノロジーで,飛ぶことを実現する,. た,パターン認識力や,問題解決能力」 ,さらには. しかも,遥かに効率的な形で.. 「感情や道徳にかかわる知能すらも取り込むように ☆4. なる」と論じている. ..  こうなると,人工知能の進化を追うことで,人間 の知性とは何かに対する新たな知見がもたらされる.  それが 2045 年だというが,私には,それがそん. ことを期待するという立場での人工知能研究は,当. なに遠い未来の話ではないように思われる.その日. 初の意味を失ってゆくだろう.人間みずからの自己. は「やって来る」,というよりは,日々,すでにそ. 理解を模倣し,後追いすることから生まれた人工. の日に「なって」いっているように思われる.. 知能は,「人間ならできる,こんなことができない,.  だだし,それはこれまでの人間知能が解明された. まだ,あれができない」と言われているうちに,い. うえで,こうした変化が起こるのではないだろう.. つのまにか独自の進化を遂げてしまう.その自律的. 従来,人工知能研究のおもしろさは,コンピュータ. 発展はまったく別のルートを取りつつ,人間の知性. における知能の限界を知ることによって,逆に人間. を超えるという目的そのものを達成しつつある.そ. 知能の特質や広がりについて何かを学ぶことができ. こが人工知能の,いわば人類の予想を超えた「跳躍」. るという点にあった.コンピュータによる知能のシ. であり,〈超知性〉たるゆえんなのだろう. (2014 年 10 月 8 日受付). ミュレーション,その限界を通して逆照射される人 間知能の特質を知ることが AI 研究の意味でもあった.   だ が, た と え ば,Watson は, 総 メ モ リ 容 量. 15TB,総プロセッサ・コア数は 2,880 個で構成さ れており,約 100 万冊分の書籍をデータベースと して持っているという.人間の知能,人間のクイズ チャンピオンがたどる思考法とは,まったく異なる 黒崎政男 ☆4. Kurzweil, R. : The Singularity Is Near : When Humans Transcend Biology (2005)(レイ・カーツワイル 著,井上 健 監訳 他:ポスト・ ヒューマン誕生─コンピュータが人類の知性を超えるとき─,NHK 出版(2007) .. 40 情報処理 Vol.56 No.1 Jan. 2015. [email protected].  1954 年仙台市生まれ東京大学文学部哲学科卒業.同大学院博士 課程修了.現在,東京女子大学現代教養学部人文学科哲学専攻教授. 専門は,カント哲学.人工知能論.著書に『哲学者はアンドロイド の夢を見たか』など多数..

(3)

参照

関連したドキュメント

タカチホヘビ  ヤマカガシ  ニホンカナヘビ  シマヘビ  ニホントカゲ  シロマダラ  ニホンマムシ  ニホンヤモリ  ジムグリ  アオダイショウ  ニホンイシガメ 

我々は何故、このようなタイプの行き方をする 人を高貴な人とみなさないのだろうか。利害得

人の生涯を助ける。だからすべてこれを「貨物」という。また貨幣というのは、三種類の銭があ

 今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ

人間は科学技術を発達させ、より大きな力を獲得してきました。しかし、現代の科学技術によっても、自然の世界は人間にとって未知なことが

 自然科学の場合、実験や観測などによって「防御帯」の

 講義後の時点において、性感染症に対する知識をもっと早く習得しておきたかったと思うか、その場

かかる人々こそ妊娠を中絶して健康を回復すべきである。第2に,この条項