油脂と水酸化ナトリウムからの固形石けん作りの理科的な扱い方について
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(2) 平 成 25{ I 8月. 北海道教育大学紀要(教育科学編)第 6 4巻 第 1号 J o u r n a lo fH o k k a i d oU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( E d u c a t i o n )Vo . l6 4,No. l. ご. August,2 0 1 3. 油脂と水酸化ナトリウムからの固形石けん作りの理科的な扱い方について 早野清治・津田和也・種谷富茂華・小林真実・佐々木舞・大和田秀一*. 北海道教育大学教育学部札幌校化学教室 *酪農学岡大学農食環境学群化学教本. S c i e n t i f i cH a n d l i n go fP r e p a r a t i o no fS o l i dSoapfromF a t sandO i l s w i t hSodiumH y d r o x i d e HAYANOKiyoharu,TSUDAKazuya ,TANEY A Tomoka ,KOBA YASHIMasami SASAKIMaiandOHWADAS h y u i c h i* C h e m i s t r yL a b o r a t o r y,S a p p o r oCampus,H o k k a i d oU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n C o l l e g eo fA g r i c u l t u r e, FoodandEnvironmentS c i e n c e s, RakunoGakuenU n i v e r s i t y * C h e m i s t r yL a b o r a t o r y,. 要旨 小学校保健と家庭や中学校家庭分野で手洗いや洗濯などに使われている石けんの工業的製法の 1つは,油 脂(脂質)を水酸化ナトリウムと化合させる「けん化法」である。油脂は家庭分野でおもに熱や力のもとと なる栄養素として学び,水酸化ナトリウムは小中学校の理科で実験に使用されている。小中学校で、扱ってい るこれら 2つ,油脂と水酸化ナトリウム,から固形石けん作りを児童・生徒が体験して,自分で家庭へ持ち 帰って使用するならば,驚きや喜びも実感できるであろう。また,保健や家庭分野で学んだ健康面や衛生面 の維持にも児童・生徒たちは積極的に活動するであろう。今回,生活に馴染み深い固形石けんを,理科の実 験授業や物作り活動で,いかに安全に簡単に泡立ちよく作り,児童・生徒に家庭へ持ち帰らせることができ るのかを検討したので本論文にて報告したい。. はじめに. 理科の実験教材として,中和で固形石けんを作る 実験と,固形石けんの水と汚れになじみやすい 2. 小学校の保健 3・4年 1)と家庭 5・6年 2)で手. つの部分を調べて固形石けんが汚れを落とす理由. 洗いや洗濯の大切さを学び,中学校家庭分野では. を理科的に確認する実験とを開発し報告した 4)。. 洗剤・石けんによる洗濯の様子を学習 3) してい. しかしながら,最も一般的な固形石けんの作り. る。このように石けんは,衛生面や健康面で実生. 方である,油脂と水酸化ナトリウムからの「けん. 活を支えており,欠かすことのできない大切な必. 化法」による作り方は,操作も煩雑で危険性が伴. 需品として興味深い題材である。. い長時間かかるため,いまだ実験授業や物作り活. われわれは,今までに固形石けんに関する中学. 動の中で実施できる方法としては確立されていな. 1 6 3.
(3) 早野. i 青j 台・津田和也・種谷富茂華・小林真実・佐々木舞・大和田秀会. し 、 。. 以下に,実験授業や物作り活動における,「油. 今回,小中学校の家庭分野 5)で扱われている油. 脂と水酸化ナトリウムからの固形石けん作りの操. 脂と理科の実験6)で使用されている水酸化ナトリ. 作条件について J,I固形石けん作りにおけるエタ. ウムを活用して,固形石けんを簡単な操作で時間. ノール量の影響について J, I種類を変えた油脂か. を短縮して安全に作り,児童・生徒が家庭へ持ち. らの固形石けん作りについて J,I泡立ちの良い固. 帰えることができる理科の実験授業や物作り活動. 形石けんについて J, I安全対策について J, I恒温. の教材を新たに考えた。ただし,油脂と水酸化ナ. 槽に代わる加熱方法について」の順に実験の内容. トリウムの「化学反応」や化学専門用語の「けん. や工夫を詳しく説明する。. 化J Iエステルの加水分解」などは一切説明した り触れたりはしない。状況に合わせて,“油脂と. 2-1 油脂と水酸化ナトリウムからの固形石け ん作りの操作条件について. 水酸化ナトリウムが良く混ざると油の性質が変化 して石けんに変わる"などの説明にとどめたい。 本論文では,油脂と水酸化ナトリウムからの固. 固形石けん作りの操作条件を検討するために,. 4 . 0 gとヤシ油 1 6 . 0 gのヤ 使用する油脂は,午脂 6. 形石けん作りを,理科の実験授業や物作り活動 1. シ油 20%混合油脂に固定する。化合させる水酸化. 回分の教材として扱う場合の工夫や教育的な効果. ナトリウム水溶液注1)は,水酸化ナトリウム. と共に,今後の課題についても考察したので報告. 1 1 . 9 gを水 28mlに溶かして調製する。油脂と水. したい。. 酸化ナトリウム水溶液を化合させる時,容器は密. 2 実験 油脂から固形石けん(脂肪酸ナトリウム塩)を 作る実験授業や物作り活動を確立するためには,. 50mlの回収ベットボトルを,添加物は 閉できる 3 化合しやすくするためにエタノール 1mlを使用 する。. 4 . 0 g,ヤシ油 1 6 . 0 g,エ ベットボトルに午脂 6. 以下の 5点を検討しなければならない。 1点目は,. タノール 1mlを量り入れて混合油脂とし,. 油脂と水酸化ナトリウム水溶液とが完全に均一に. 7 0Cの湯浴で温める(固まっている場合は溶かし. 混ざり,化合して固形石けんになる操作条件を決. て液体の油脂にする)。この温めた混合油脂に水. めなければならない。 2点目は,油脂と水酸化ナ. 酸化ナトリウム水溶液を加え,密閉して上下に激. トリウムが化合する時間の短縮が可能かどうかを. しく振り混ぜ,水と油が分離せず,固まらずに均. 検討する必要がある。固形石けん作りの実験や活. 一に混ざるのに要する時間や,その後ベットボト. 5 分単位,中学校では 5 0分単位 動は,小学校では 4. ルのまま ,60~70oC の恒温槽(ヤマト乾燥器,モ. であることを考慮しなければならない。 3点目は,. デル DX-58) に入れて完全に化合して固形石け. 油脂の種類を変えても固形石けんを作る操作条件. んになる時間を調べる。この実験から固形石けん. や時間短縮の条件がそのまま使えるかどうかを検. 作りの操作条件が決定できる。. 60~. 0. 討する。 4点目は,どの油脂から泡立ちの良い固 形石けんが作れるのかを調べなければならない。. 5点目は,固形せっけんを作るにしても使うにし. 2-2 固形石けん作りにおけるエタノール量の 影響について. ても強アルカリ性の水酸化ナトリウムを扱うの. 4 . 0 g+ヤシ油 1 6 . 0 g ) 固定した混合油脂(午脂 6. で,児童・生徒の安全を第一に考えて安全対策を. と水酸化ナトリウム水溶液 (NaOH1 1 . 9 g+水. 充分に考えなければならない。 6点目は,石けん. 28ml)が均一に混ざりやすくするために,添加. を作る場合には一定温度で加熱する必要があり,. 物としてエタノール 1mlを量り入れる。このエ. 本実験では恒温槽を使用するが,ない場合には恒. タノールは,油脂と水酸化ナトリウム水溶液の両. 温槽に代わる加熱方法の検討が必要である。. 方に溶けるので,両物質が化合しやすくなるはず. 1 6 4.
(4) 油脂と水酸化ナトリウムからの同形石けん作りの理科的な扱い方について. である。ベットボトルで混合油脂と水酸化ナトリ. はこれに代わる加熱方法を考えなければならな. ウム水溶液を上下に振り混ぜる時,この添加する. い。一例として発泡スチロールなどの保温容器で. エタノールの量によって均一に混ざる時聞がどの. 保温的加熱が可能かどうかを実験する。. ように変化するのかを調べて振り混ぜる時間の短 縮が可能かどうか,加熱時間やできる固形石けん の pHへの影響はあるのか,を検討する。. 3 結果 本実験を行った結果は,「油脂と水酸化ナトリ. 2-3 油脂の種類を変えた固形石けん作りにつ いて. ウムからの固形石けん作りの実験操作条件につい てお「固形石けん作りにおけるエタノール量の影. 固形石けんを作るための油脂は,動植物性油脂. 響について J,1"油脂の種類を変えた固形石けん作. が使われており,種類が多い。本実験では,牛脂. りについて J,1"泡立ちの良い固形石けんについ. とヤシ油の割合を変えた混合油脂,ヤシ泊,オリー. てJ,1"安全対策について J,1"恒温槽に代わる加熱. ブ泊からの固形石けん作りが,固定したヤシ油. 方法について」の 6つに分けて以下に説明する。. 20%混合油脂で確立される固形石けん作りの操作 条件で実施できるのかどうかを検討する。さらに,. 3-1 油指と水酸化ナトリウムからの固形石け. 異なる油脂を使った場合,エタノール添加量がど. ん作りの実験操作条件について:60~70oC の湯浴. のように振り混ぜ時間,加熱時間,できる固形石. で温め搭かしたヤシ油 20%混合油脂(牛脂 6 4 . 0 g. けんの pHに影響するのかも調べる。. +ヤシ油 1 6 . 0 g+エタノール 1ml)に水酸化ナト リウム水溶i 夜 ( NaOH1 1 . 9 g+水28ml ) 注 2)を加え. 2-4 泡立ちの良い固形石けんについて. て上下に激しく振り混ぜると,最初は水と油が混. 児童・生徒が作った後,家庭へ持ち帰って実際. ざる軽い音ですぐに分離するが,振り混ぜている. に使用することを考えているので,なるべく泡立. うちに“ゴボゴボ"の音に変わって均一に混ざり,. ちの良い固形石けんを作りたい。牛脂とヤシ油の. 振っている手に抵抗感がでてくるので,振り混ぜ、. 割合を変えた混合油脂,ヤシ泊,オリーブ泊から. るのをやめた。水酸化ナトリウム水溶液を加えて. の固形石けんを作り,それらの石けん水を作って. から振り混ぜた時間を測定したところ 4 0分間で. 泡立ち方の比較を行い,どの固形石けんの泡立ち. 0 分間以上行うとベットボト あった。振り混ぜを 4. が良いのかを調べる。. ルの中で混合物が移動しながら固まってしまうこ とも分かつた。均一に混ざった混合物をベットボ. 2-5 安全対策について. トルの底部分に集めて 60~700C の恒温槽に入れて. 固形石けんを作るのには,強いアルカリ性の濃. 加熱した。油脂と水酸化ナトリウム水溶液が完全. い水酸化ナトリウム水溶液を使うので,児童・生. に化合して水酸化ナトリウムが残らない固形石け. 徒の安全確保が第ーである。安全を確保するため. んができるまでの加熱時間を調べるために,固形. には,固形石けんを作る実験操作,固形石けん自. 石けんの pHを測定した。測定は,加熱 1時間お. 体,ベットボトルから固形石けんを取り出す操作,. きにベットボトルのふたの裏に付着している固形. における危険を予想し,それらの危険を回避でき. 石けんに水でぬらした pH試験紙注 3)をすりつけ. るような手立てを具体的に考え実践する。. 加熱時間と共に pHの変化を調べた。 その結果,. 2-6 恒温槽に代わる加熱方法について. pHは加熱 0時間で 1 1, 2時間で 1 0. ~11 を示して固形石けんには水酸化ナトリウムが. 教育現場に恒温槽がある場合は,ベットボトル. 残っていること,加熱 3 時間 ~20時間では固形石. 全体を加熱するのは簡単にできるが,ない場合に. けんの pHが 9~10 と一定になり水酸化ナトリウ. 1 6 5.
(5) 早野. i 青j 台・津田和也・種谷富茂華・小林真実・佐々木舞・大和田秀会. ムが残っていないことが分かつた。加熱時間と固. たヤシ油 20%に固定した混合油脂(牛脂 64.0g+. 形石けんの pHの変化を表 1に示した。この表 1. ヤ シ 泊 16.0g) と 水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 j 夜. より,固形せっけんは,恒温槽での加熱は最短 3. (NaOHl 1.9g+水 28ml)にエタノール 1mlを. 時間であることが分かる。恒温槽からベットボト. 添加してベットボトル内で振り混ぜると,均一に. ルごと取り出し,室温に冷ますと白っぽく固体と. 混じりあうまで、に 40分聞かかった。実験授業や物. 1) 石けん部. 作り活動は,限られた時間で実施しなければなら. 分の少し上のベットボトルを輪切りにして切り取. ないので,振り混ぜる時間を短縮する必要がある。. なった。固形石けんの取り出しは,. る ,. 2) 石けん部分のベットボトルは,カッター. ナイフで縦に数本切れ目を入れる,. そこで,エタノールの添加量を1.5,2.0,3.0,4.0,. 3) ベンチ等. 5.0mlと変化させて,ヤシ油 20%に固定した混合. ではさんで花びらのように横に広げてひらく,の. 油脂からの固形石けん作りで確立された操作を実. 操作で簡単に行うことができた。. 施し,振り混ぜる時間やできる固形石けんの pH. 以上の実験結果から,ヤシ泊 20%混合油脂(牛. への影響を調べた。. 脂 64.0g+ヤシ油 16.0g+エタノール 1ml)から. その結果,ベットボトルを上下に激しく振り混. ベットボトル (350ml)中で固形石けんを作る操. ぜて均一に混ざる時間は,エタノール添加量が. 作条件は,混合油脂を 60~700C の湯浴で温め溶か. 1 . 5,2.0,3.0,4.0,5.0mlと増すにつれて 10分. してから水酸化ナトリウム水溶液 (NaOH11 .9. 間 ,. g +水 28ml)を加えること,上下に激しく 40分. た。それらを 60~700C に加熱した時の固形石けん. 間振り混ぜて均一に混ざり,振り混ぜるのに抵抗. の pH変化を調べると,エタノール添加量 1.5ml. 感がでてきたのを確認すること,その後混合物を. の固形石けんは 3~20 時間で pH が 9 ~10 と安定. ベットボトルの底部分に平らに集めて 60~700C の. しており,水酸化ナトリウムが残っていなかった. 恒温槽で 3時間以上加熱すること,. 5分間,. 1分間, 30 秒間, 1 5秒間と短くなっ. pH試験紙の. pHが 9~10 で固形石けんの水酸化ナトリウムが. 表 2 エタノール添加量と振り混ぜる時間変化. 残っていないことを確認すること,室温に冷ます. エタノール添加量. 振り混ぜる時間. と固形になること,固形石けんの取り出しはカッ. 1.5ml. 1 0分間. ターナイフでできること,であると確立できた。. 2ml. 5分間. しかしながら,振り混ぜ時間が40分間と長いので,. 3ml. 1分間. この時間の短縮が実験操作条件の確立には必要で. 4ml. 3 0 秒間. ある。. 5ml. 1 5 干 少 間. 表 1 加熱時間と固形石けんの pH変化 加熱時間. pH. 1時間. 1 1. 2時間. 1O ~11. 3時間. 9~10. 4時間. 9~10. 5時間. 9~10. 2 0時間. 9~10. 3-2 固形石けん作りにおけるエタノール添加. 量の影響について:60~70oC の湯浴で温め溶かし. 1 6 6. 表 3 エタノール添加量と固形石けんの pH変化 固形石けんの pH 加熱時間 エタノー エタノー エタノー エタノー エタノー 話 加 ル添加 ル添加 ル添加 ルi 恭 加 ルi 1 . 5 m l 2 . 0 m l 3 . 5 m l 5 . 0 m l 4 . 0 m l 1時間. 1 1. 1 1. 1 1. 1 1. 1 1. 2時間. 10~11. 1 1. 1 1. 1 1. 1 1. 3時間. 9~10. 1 1. 1 1. 1 1. 1 1. 4時間. 9~10. 1 1. 1 1. 1 1. 1 1. 5時間. 9~10. 1 1. 1 1. 1 1. 1 1. 2 0時間. 9~10. 1 1. 1 1. 1 1. 1 1.
(6) 油脂と水酸化ナトリウムからの同形石けん作りの理科的な扱い方について. 表 5 加熱時間と pH試験紙測定結果. が,その他のエタノール添加量では,できた固形 1であり,水酸化 石けんは 20時間たっても pHが 1. ナトリウムが残っていた。エタノール添加量の振. 固形石けんの pH ( 1 . 5 m lのエタノール添加). 力 日 課4 時間. り混ぜる時間への影響を表 2に,エタノール添加. ヤシ油 30% ヤシ油40% ヤシ抽 50%. 量の固形石けんの pHに及ぼす影響を表 3にまと. 1時間. めた。. 2時間. 1O ~11. 1O ~11. 1O ~11. 3時間. 9~10. 9~10. 9~10. 以上,ヤシ油 20%に固定した混合油脂と水酸化. 1 1. 1 1. 1 1. ナトリウム水溶液から固形石けんを作る実験よ り , 1 .5mlのエタノール添加でi 且め溶かしてから の振り混ぜる時間が 10分間に短縮でき,その後最. は ,. 短 3 時間の加熱でフ1~ 酸化ナトリウムの残っていな. 時間も最短 3時間でできる固形石けんの pHが 9. い固形石けんが得られる実験操作条件が確立でき. ~10 となり,水酸化ナトリウムが残っていない。. た 。. 加熱時間と pH試験紙測定結果は表 5にまとめ. 7~10分間とほとんと号変わらなかった。加熱. た。ヤシ油の割合が変わっても牛脂とヤシ油の混. 3-3 油脂の種類を変えた固形石けん作りにつ. 合油脂では,ヤシ油 20%に固定した混合油脂で確. )は,新 いて:固形石けん作りに使用する油脂注4. 立した実験操作条件がそのまま適応できることが. たにヤシ泊の割合を 30%( 2 4 g ),40%( 3 2 g ),50%. 分かつた。. ( 4 0 g ) と変えた牛脂とヤシ油の混合油脂(合計. ヤシ油 100%とオリーブ油 100%からの固形石け. 8 0 g ) 3種類, 100%ヤシ油 ( 8 0 g ), 100%オリー. ん作りでは,添加するエタノールの量を 0.5mlと. 8 0 g ) を加えて計 5種類を使用した。これ ブ油 (. して固形石けん作りの実験操作条件(エタノール. , らに化合させる水酸化ナトリウム水溶液注 Z)は. 添加, 60~70oC の湯浴で温め,激しい振り混ぜ). 表 4の よ う に 調 製 し た 。 ヤ シ 油 の 割 合 を 30%. を行ったところ,数分で固まってしまった。そこ. 3 2 g ), 50% ( 4 0 g ) と変えた牛脂 ( 2 4 g ),40% (. で. とヤシ油の混合油脂(合計 80g) からの固形石け. を 6ω0~7 刊 OOC の湯 i浴苔でで、 j温量めるのを止めることとし. ん作りは,ヤシ油 20%に固定した混合油脂で確立. た. した同様な実験操作条件(エタノール添加量. 浴で温め溶かしてから冷まして室温で,エタノー. 1 .5ml, 60~70oC の湯浴で温め i容かし,激しい振. .5, 1 .0, 1 .5mlと添加量を変え,水酸化ナ ルを O. り混ぜ 10分間前後, 60~70oC に加熱 3 時間,. トリウム水溶液を加えて室温で激しく上下に振り. pH. O. オリ一ブブ油は室温 j 且 で で 、 , p. ヤシ油は 30~400C の湯. 試験紙測定)で実験した。その結果,ヤシ泊の割. 混ぜ, 60~70oC に 3 時間加熱し,. 合が30%,40%,50%と変えても振り混ぜる時間. きた石けんの pHを測定した。その結果,均一に. pH試験紙でで. 混ざるまでの振り混ぜる時間が表 6のようになっ 表 4 新たな油脂と化合する水眼化ナトリウム ヤシ油(割合) +午脂. NaOH+7 ] (. 24g ( 3 0 % ) +56g. 12.2g+28ml. 32g ( 4 0 % ) +48g. 12.6g+28ml. 40g ( 5 0 % ) +40g. 1 2 .9g+28ml. 泊脂. t NaOH+オ. 室i 晶) ヤシ油 80g (. 1 4 .7g+28ml. オリーフ寺泊 80g (室担). 1 0 .7g+28ml. た。振り混ぜた後, 60~70oC に加熱した最短 3 時. 表 6 エタノール添加量と振り混ぜる時間 振り混ぜる時間. エタノール 添加量. ヤシ油(室温). オリーブ泊(室温). 0.5ml. 1 2分間. 1 5分間. 1.0ml. 1~2 分間. 1 0 分間. 1.5ml. 1~2 分間. 6分間. 1 6 7.
(7) 早野. i 青j 台・津田和也・種谷富茂華・小林真実・佐々木舞・大和田秀会. 表 7 加熱 3時間後のヤシ油,オリーブ泊 固形石けんの pH 固形石けん. エタノル添加量 ( m l ). pH. 0 . 5. 9~10. 1 .0. 9~10. 1 .5. 1 1. オリーブ油 (加熱 3時間). ヤ. ン. j 由. (加熱 3時間). 0 . 5. 8~9. 1 .0. 8 9. 1 .5. 8~9. 間後のそれらの固形石けんの pHを試験紙で測る と表 7のようになった。 以上の結果から,室温のヤシ油を使用する場合 は,添加するエタノールの量が 0.5ml,室温で振. 図 1 混合油脂からの固形石けんの泡立ち. 2分間,加熱時間が 3時間で,室 り混ぜる時間が 1. 温のオリーブ油を使用する場合は,添加するエタ. 方法で,ヤシ油とオリーブ油からの固形石けんに. ノールの量が 1.0ml,室温で振り混ぜる時聞が 1 0. ついても泡立ちの比較を行った。ヤシ油ではエタ. 分間,加熱時聞が 3時間で,それぞれの固形石け. ノール 0.5mlを,オリーブ泊では,エタノール. 3 3 加 んができあがる。 使用する油脂が変わると, i. 1.0mlを添加して作った固形石けんを使用した。. するエタノールの量や油脂の温度によって振り混. ヤシ油とオリーブ油の固形石けんの泡立ちの結果. ぜる時間やできる固形石けんの pHが影響を受け. は,一番泡立ちの良いヤシ油 30~ の混合油脂の石. ることも分かつた。. けんとほぼ同じ泡立であった。. 3-4 泡立ちの良い固形石けんについて:作っ. 3-5 安全対策について:固形石けん作りで使. た固形石けんの泡立ちの良さを比較確認するに. 用する水酸化ナトリウム水溶液は,濃く強いアル. .0 1~ O . l gを 試 験 管 ( 18x は,固形石けん O. カリ性であり,皮膚を溶かす。万一,この溶液が. 180mm) 内の水 1~10ml に加えて 80 0C に温めて. 目に入った場合は,多量の水で、洗い流し,すぐに. 溶かし,ゴム栓をはめて 1 0 秒ほど振った時の泡の. 専門の眼科医を受診させなければならない。ベッ. 量で行うこととした。石けんが多いと泡立ち過ぎ,. トボトルへ水酸化ナトリウム水溶液を注ぐ操作. 水が少ないと泡立ちを比較しづらかったが,実際. は,児童・生徒にはさせずに教員が行うことで安. . O l gを試験管の水 5mlに加え, には,固形石けん O. 全性を高めたい。また,濃い水酸化ナトリウム水. 8 0Cに温めて溶かし,ゴム栓をして 1 0 秒ほと守振っ. 溶液を扱う操作の間,すなわちベットボトルへの. た時がもっとも見やすく比較することができた。. 水酸化ナトリウム水溶液の導入とベットボトルの. この方法で,午脂とヤシ油の混合油脂から作った. 振り混ぜ操作は,必ず保護めがねと保護手袋注 3). 固形石けんの泡立ちを比較した様子が図 1であ. を着用することが第一の安全対策である。ベット. る。左側から,ヤシ油の割合が20,30,40,50~. ボトルに試薬を加えたら,①フタがしっかり閉. の固形石けんの泡立ちである。牛脂とヤシ泊の混. まっているか,②フタがひび割れていないか,③. 合油脂からの固形石けんでは,ヤシ油の割合30~. ベットボトル本体にひび、が入っていないか,の確. が一番泡立ちゃすいことが分かる。また,同様の. 認が必要である。確認後,ベットボトル本体をボ. 0. 1 6 8.
(8) 油脂と水酸化ナトリウムからの同形石けん作りの理科的な扱い方について. リエチレン袋に入れて口をしばり,万ーもれ出た 場合でもポリエチレン袋で防ぐのが第二の安全対 策である。振り混ぜて袋をはずした後に 60~700C. 4 考察 13 結果」をふまえて,固形石けん作りを 1. に 3時間加熱してできた固形石けんは,児童・生. 回分の理科実験や物作り活動 ( 4 5分から 5 0 分)で. 徒が家庭へ持ち帰って使うので,試薬の水酸化ナ. 行う場合,油脂と水酸化ナトリウム水溶液の混合. トリウムが残っていないことが要求される。出来. 物を均一に混ぜる操作は,適量のエタノール添加. 上がった固形石けんの pHは,必ず pH試験紙で. 0 分前後に時間短縮できたので実施可能になっ で1. 8~10前後であることを確認する。 pH 試験紙が. た。均一な混合物を 60~700C に 3 時間加熱する操. 紫色になったものは,水酸化ナトリウムが残って. 作は,実験や活動以外の時間に教員が別途行い,. いるので絶対に持ち帰らせない。家庭へ持ち帰っ. pH試験紙でできた固形石けんの安全性を確認. た後,固形石けんを取り出す場合は,カッターナ. (pH=8~10前後)してから,空き時間等に児. イフで切り開くので,自分ひとりで絶対にせずに. 童・生徒に渡し,石けんの取り出し方を周知徹底. 大人の人と一緒にすることと取り出し方を厳重に. して持ち帰らせることとしたい。注意したいこと. 指導することが大切である。カッターナイフでの. は,振り混ぜる時間は,極端に短いと扱いづらい. 怪我は,非常に深く大きくなるので危険である。. ので, 1 0 分前後を目安にする。 添加するエタノー. 最後に,固形石けんを使ってみて,皮膚に異常が. ルの量は,できあがる固形石けんの pHが 8~10. あった場合には,使わないように指導することも. 前後になる量で決める。表 3と 7に見られるよう. 重要である。. に,エタノール添加量を増して時間短縮しても水. 1と高くなるので 酸化ナトリウムが残って pHが 1 3-6 恒温槽に代わる加熱方法について:教育. 注意が必要である。この理由としては,油脂と水. 現場に恒温槽がない場合,油脂と水酸化ナトリウ. 酸化ナトリウム水溶液が,あまりにも混合する時. ム水溶液を 10分前後振り混ぜた後の 60~700C の加. 聞が短縮されるので均一に混ざらず,偏在して化. 熱が困難である。恒温槽に代わる加熱方法として,. 合せず、に残ってしまうことが原因と考えている。. 厚さ 18mmx縦 182mmx横 182mmx高さ 248mm. 理科実験や物作り活動に望ましい油脂とエタノー. の発泡スチロール内の 6 5Cの温水による 3時間の. ル添加量の組み合わせは,暖め溶かしたヤシ油. f 呆温加熱を試した。牛脂とヤシ油 ( 2 0,3 0,40,. 30%混合油脂+エタノール 1.5ml,室温の 100%. 50%) の混合油脂と水酸化ナトリウム水溶液が均. ヤシ油+エタノール 0.5ml,室温の 100%オリー. 一に混さ守ったベットボトルについて各々 1本を. ブ油+エタノール 1.0mlの 3種類と考える。これ. 6 0Cに温めて発泡スチロールの容器に入れ,浮き. らを踏まえた固形石けん作りの理科実験や物作り. 1 0 g ) 上がらないように上にコップや湯飲み(約 2. 活動は,以下のような実施方法が考えられよう。. 0. 0. をかぶせて, 6 5Cの湯をベットボトルの肩部分ま. 泡立ちの良い固形石けんを作るには,牛脂とヤ. 3時間保温加熱した。 3時. シ油 30%の温め溶かした混合油脂,室温のヤシ油. 間後の湯の温度は 5 3Cであったが,これらからで. 100%,室温のオリーブ油 100%を使うと良い。手. きた固形石けんの pHは,試験紙で 9~10 を示し,. 聞を省くには混合しなくても良い単一の油脂が良. 水酸化ナトリウムが残っていなかった。小規模で. いが,オリーブ油は高価なのでヤシ油 100%が手. はあるが,発泡スチロールによる保温加熱で固形. ごろであろう。. 0. で入れてフタを閉め, 0. 石けん作りの可能性が示された。. 教員が準備することは,使用する油脂 80gと適 量のエタノール(表 5,7参照)を量りいれたベッ トボトル,油脂に見合った水酸化ナトリウム水港 液の調製(表 4参照),保護めがねと保護手袋,. 1 6 9.
(9) 早野. 恒温槽または保温加熱容器,. i 青j 台・津田和也・種谷富茂華・小林真実・佐々木舞・大和田秀会. pH試験紙である。. 固形石けん作りの実験や活動に入る前に,油脂. 児童・生徒分を保温加熱することが困難であるの で,簡単に加熱できる装置の工夫を模索したい。. で汚れた手,食器,衣類は洗剤で、洗ってきれいに. 注. していることを日常生活から思い出させる。この 油脂を洗い流す洗剤は,油脂から作られることを 紹介する。油脂から洗剤を作るには,水酸化ナト. 注 1)水酸化ナトリウム水溶液の調製は,保護めがねと保. リウム水溶液を使って均一に混ぜるとできること. 護子袋を着用し,発生する刺激臭の飛まつを直接すわ. を説明すると共に,水酸化ナトリウムは,理科の. ないようにし,換気を良くする。水酸化ナトリウムは, 空気巾の水分でべとつく(潮解性)ので手早く量り取. 実験で金属アルミニウムを溶かし,酸を中和する. 晶に り,水を加えて発熱に注意してよく振り混ぜ,室j. のに使っている馴染み深いものである 6)ことにも. 冷やす。. 触れる。今回の理科実験や物作り活動では,「洗 剤として手洗いにも使える固形石けんを作って家. 注 2)油脂の種類が変わった場合は,油脂の「けん化価J ( 油 脂 1gを脂肪酸カリウムとグリセリンに分解するのに 必要な水酸化カリウムのミリグラム)から,固形石け. に持ち帰り使ってみよう」との目的意識を持たせ. んを作るのに必要な水酸化ナトリウムの量を計算し. て活動に入りたい。. た。本実験で使用した油脂のけん化価は次の通りであ. 児童生徒はもちろん,教員も '3 結果」の安 全対策についての内容を徹底して実行する。すな. J . s 旨=1 9 5,ヤシ油 =257,オリーブ油=1 8 70 る;! 20%) の混合油脂 ( 8 0 g ) の場合を 午脂とヤシ泊 ( 例に,計算方法を示す。. ' J . s I " i 64gの分解に必要な水酸. わち保護めがね,保護手袋,教員の水酸化ナトリ. 化カリウム(式量 5 6 ) =6 4x19571000。使う水酸化. ウム水溶液の扱い,ベットボトルの確認,ベット. ナトリウム(式量 4 0 ) =必要な水酸化カリウム x( 4 0. ボトルのポリエチレン袋での密閉,である。 油脂と水酸化ナトリウム水溶液を用いた本実験. 。ヤシ泊 1 6g 5 6 )=64x19571000x( 4 075 6 )=8.91g の分解に必要な水酸化カリウム=1 6x2 5 771 0 0 0。使. 0 ) =必要な水酸化カリウ う水酸化ナトリウム(式量4. を理科実験や物作り活動として,上述したように. ム x(4075 6 )ニ 1 6x2 5 771000x(40756)ニ 2 . 9 4 g 。合. 実施する場合には,以下のような教育的効果が期. 計して,使片jする水酸化ナトリウムの量は, 1 1 .85g,. f 寺できょう。 一つ目は,身近な物質である固形石けんを扱う. 1 . 9 gとなる。 四捨五入して 1 ) pH試験紙は東洋i 尉氏側の測定範囲が pH1~11 の 注3 pH試験紙(ロールタイプ, UNIVユニバーサル)を,. ことで実験や活動への生徒の興味関心が引き出さ. 保護めがねはアズワン. れるであろう。. 保護手袋は協和怖のミリオンラテックスグローブ. 二つ目は,小学校の保健や家庭と中学校家庭分 野で学ぶ油脂と小中学校理科で扱う水酸化ナトリ ウムから生活に使える固形石けんが作れることに. NO.280 Lサイズ. 保護メガネ. 8 5 3 6 5 0 1型を,. 1 0 0 枚入を使用した。. 注 4) 午脂 ( 5 0 0 g入)とオリーブ油 ( 5 0 0 m l入)は和光純 薬工業株式会社の試薬を,ヤシ泊はジエリーフイツ シュ蜘のココナッツ油 ( 7 0 0 m l入)を使用した。. 驚きを感じ,学校の知識が役に立つことを知るで あろう。 三つ目は,自分で作った固形石けんを家庭に持. 参考文献. ち帰り,児童・生徒が家族と共に使うことで,学. 1 ) I新しいほけん 3 . 4J 東京書籍, p p . 8 (平成 2 3年 ) ,. 校の教育活動への父母の理解が深まるきっかけに. . 4年」学研教育みらい, p p . 8( 平 「みんなのほけん 3. なりえるであろう。 今後の課題は,油脂からの固形石けん作りにお いて,恒温槽で 60~70UC に 3 時間加熱する操作が. 必要で、あるが,恒温槽がない場合の対応として, 本論分では発泡スチロール容器内での保温加熱を 紹介した。しかし,この方法では,一度に多くの. 1 7 0. 成2 3年 ) , Iわたしたちのほけん 3 . 4年」え;教社 9 (平成 2 2年 ) ,. Iたのしいほけん. p p .. 3. 4年」大日本図書,. p p .1 0 (平成 2 3年 ) 。 2) I新しい家庭 5 . 6J 東京書籍, p p .8 0 (平成 2 3年 ) , 「わたしたちの家庭科,小学校 5 . 6J 開隆堂, p p .8 2 (平成 2 3年 ) 。. 3)I技術・家庭家庭分野」東京書籍, p p .1 1 2(平成 2 3年 ) ,.
(10) 油脂と水酸化ナトリウムからの同形石けん作りの理科的な扱い方について 「技術・家庭家庭分野」開隆堂,. pp. 1 6 4 (平成 2 4年 ) ,. 「技術・家庭家庭分野」教育図書, pp. 1 6 8(平成2 4年)0 4) ["脂肪酸の水酸化ナトリウム水溶液による巾和で生成 する固形石けんの理科的な扱い方について」早野清治・ 永田雅幸・津田和也・望月桂・大和田修一,北海道教育 大学紀要(教育科学編),第 6 0 巻 第 1号 , pp. 1 2 1一1 2 7 (平成 2 1年 ) , ["汚れを落とす固形石けんの水と汚れにな じみやすい部分の理科的な扱い方について」叩野清治・ 津田和也・望月桂・大和田秀一,北海道教育大学紀要(教. 1巻 第 1号 , pp. 2 0 9 2 1 7(平成2 2年 ) 。 育科苧編入第 6 5 ) ["新しい家庭 5 . 6J 東京書籍, pp. 5 0 (平成 2 3年 ) , . 6J 開隆堂, pp. 3 9, 「わたしたちの家庭科,小学校 5 1 0 6 (平成 2 3年), ["技術・家庭家庭分野」東京書籍, pp. 2 3 (平成 2 3年 ) ,. I 技術・家庭家庭分野」開隆土. pp. 7 4 (平成 2 4年 ) , ["技術・家庭家庭分野」教育図書, pp. 7 4 (平成2 4 年 ) 。. 6 ) Iわくわく理科 6J 啓林館, pp. 7 1 (平成 2 3年 ) , 来へひろがるサイエンス 3J 啓林館,. 4年 ) , ["自然の探求 成2. I未. pp. 7 4, 9 6( 平. 中学校理科 3J 教育出版. pp.. 4,2 0 (平成2 4年 ) 。. (早野清治札幌校教授) (津田和也札幌校大学生) (種谷富茂華札幌校大学生) (小林真実札幌校大学生) (佐々木舞札幌校大学生) (大和田秀一酪農学園大学准教授). 1 7 1.
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