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フランス自動車産業における労働時間の弾力化 : 80年代以降におけるルノー・フラン工場の事例(美崎皓教授追悼号)

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フ ランス 自動 車産業 にお け る

労働 時間の弾力化

― - 8 0 年 代 以降におけ るル ノー ・フランエ場 の事例―― 夫 井 荒 市 I `まじめ に フ ランスにおけ る労働 時間の推移 は, この国に特有 の労使 妥協 とい う観 ″点か ら大雑 把 に見 るな らば,高 度 成 長期 にお け る国民経 済 レベ ル にお け る大 量生 産 ・生産 性 向上 に対 す る代償 としての労働 時 間短縮 。年 次有給休 暇増加 (典型 的集約 的表現 としての 68年 5月 闘争 の後 の グルネル協定 におけ る週 40時 間の 提起 とヴ ァカ ンス 4週 間)か ら,石 油危機 を契機 とす る低 成長期へ の移行 の も とでの企業 の競 争力 ・生産性 向上 を 目指 す経営 陣か らの労働 時間の増減 ・変形 ・ 交番制 とい った弾力化 の提起 と労働 組合 に よる失業 ・雇用 問題解決 のため の ワ ー ク・シェア リングの観 ″点か らす る労働 時間短縮 の対抗的提起,す なわ ち 80年 代 以 降 の 国際競 争 の激化 の も とでの特 に企業 ・事 業所 レベ ル におけ る経営 陣主 導 の労働 時 間の短縮 ・弾 力化 の 同時的 な交渉 と実現へ と移行 して きた よ うに思 1 ) わ れ る。 と りわけ 8 0 年 代 以降の フ ランス 自動車産業 にお いては,石油危機 後 の市場 の 構 造変化 に対応 して製 品モデルの 多様化 と低 コス ト迅速供給 を可能 にす るフ レ キ シブル な生産 設備 の確保 と相 対 的高賃金 であ る製造労働 力の削減 を目指 して, 産 業用 ロボ ッ トをは じめ とす る高価 な 自働 機械 が急速 に導 入 され るのであ り,

1)J.Y. Boulin dこ D. Taddei Les accords de rOduction‐ rёorganisation du temps de travail,in rγQυαグァタサ2物少わグ,No.40,1989.

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164 美 崎 皓 教授記念論文集 (第309号) それ ゆ え以上 の傾 向 は特 に明瞭 に現 れ るこ とに な る。 とはい え,そ れ は,雇 用 維持 の ため の生産変動へ の弾力的対応,賃 金 コス トの節減,労 働 者 の生活費維 持要 求,等 の理 由 に よって頻繁 な時 間外 労働 へ の依 拠 を,需 要 に対 す る生産 の フ レキシブル な適 応 を可能 にす る主要 な一 手段 として活用 して きたがゆえに, 労働 基準法 の独 自的規定 (第 36条 )お よび協 調 的企業 内労使 関係 と相 侯 って, 80年 代 後半 のバ ブル期 に は西 欧諸 国に比 して隔絶 的 な長 時 間労働 を結 果 して きた 日本 の 自動 車産 業 とは当然,様 相 を異 にす る。 ここでは,フ ランスの主要 自動車 メー カー,ル ノー の特 に小 型乗用車 の主力 組 立工場 であ るフ ランエ場 を夕Jに とって,80年 代 か ら 90年 代 にか け ての労働 時 間 の短縮 と絡 み合 った弾力化 の諸 形 態 につ いて検 討 し,そ れが生産 の フ レキ シ ビ リテ ィの展 開 に とっていか な る意義 を担 い,企 業 内のいか な る労使 関係 の なか で成 立 し,そ れにいか な る反作用 を与 え るこ とにな るのか, を考察す るこ とに しよう。考察対象が,ル ノーの企業 レベルよ りもむ しろ,率 先 して弾力化 の労使合意に努力 し実践 して きたフランとい う小型乗用車組立工場 であるとい う点に こそ,80年 代以降のフランスの労働時間問題 の所在の一端,す なわち需 要変動 に規定 され る個 々の生産″点の実態に即 した労働時間短縮 ・弾力化の追求, がすでに体現 されていると言えよう。 I 労 働 時間の弾力化 の諸形態 1 . ル ノー公 団におけ る労働 時間弾力化 の導入の前提 グル ネル協定 に よる週 4 0 時 間労働 の提起 を受 けて, ル ノー公 団において も労 働 時 間短縮 を 目指 す労使 交渉 が進 め られ, 4 週 間の ヴ ァカンスの企業協 定 に よ る実現 の後,70年 代 中期 には,42時 間 20分 であ った週労働 時間が 1時 間短縮 され,製 造現場 におけ る土曜 日就 労 の廃 止が示 され る とともに,年 次有給休 暇 が勤続年数 に応 じて増や され,生 産労働 者 は勤続 5年 以上 (78年か らは 2年 以 上 ) , 職 制 は勤続 2 年 以上 を対象 として, そ れ ぞれ年数群 に応 じて 1 日 か ら最大 2)こ の″点につ いては例 えば,野 村正賃 『トヨティズム』 ミネルヴァ書房,1993年 ,参 照。

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フランス自動車産業におけ る労働時間の弾力化 1 6 5 3 ) 6日 まで従来の 4週 間に追加 され ることになった(75年 2月 6日 付の協定)。他 方,80年 代 に入 るや,労 使交渉の討議事項 として,「可変的勤務時間 (フレック ス ・タイム)」(horaires variables)と年次有給休暇増加が含め られ るととも に,前 者の事項についての討議 と交渉の レベルは事業所 (工場)に なることが 4 ) 明示 された(80年 6月 2日 付の協定)。この時″点においてすでに,労 働時間の弾 カイしの適用 は事業所 レベルであることが提起 されているのは注 目に値 しよう。 80年 代 におけ る労働時間の短縮 ・弾力化の具体化 を全国的 レベルで大 きく促 したのは,周 知の ように,81年 5月 の ミッテラン左翼政権の成立 とその もとで のオールー法 と呼ばれ る包括的な労働法制改革のなかで実現 された労働時間法 制 であった。それは,1982年 1月 16日付のオル ドナ ンスによって体現 されたの であ り,労 働時間の短縮 と弾力化 との同時的成立 を目指 した ものであった。 労働時間の短縮については,週 39時 間労働への法定労働時間の短縮,一 日当 た り10時 間 とい う最長労働時間の規制,労働者一人当た り原則 として 130時間 の年間超過勤務時間枠の新設,週 39時 間 を越 える最初の 8時 間 までは 25%そ れ以上の時間は 50%と い う超過勤務 の害J増賃金支払い,年間超過勤務時間枠 を 越 える超過勤務 についての 1時 間当た り30分 の 「補償休暇」 (repos compen― sateur)の付与,年 次有給休暇の 30日 への増加,年 間総労働時間の 1769時間へ の短縮,等 の内容か ら成 る。他方,労 働時間の弾力化の面では,週 当た り労働 時間が年間平均 で 39時 間 を越 えないこ とを条件 として,業務の繁 閑に応 じて各 週労働時間の変形 を承認 し,拡 張適用 され る産業別協約 ・協定 または企業 ・事 業所別協定 に よって実施 しうるとい うものである。 それはまた,産 業別協約 ' 協定 または企業 ・事業所房U協定の成立 または労働監督官の許可 を条件 として, 一 日当た り最長労働時間の延長,年 間超過勤務時間枠の増減,さ らには土曜 日・ 日曜 日の 50%以 上の割増賃金 を伴 っての週末 「補充作業班」 (6quipe de sup― 5 ) p 1 6 a n c e ) による一 日最大 12時 間の就労, を可能に している。 3 ) R ё g i e R e n a u l t , A c c o r d d ' e n t r e p r i s e R e n a u l t d u 6 f O v r i e r 1 9 7 5 , i n 二筋為θ% s s θご筋′2 s i 乙をガS筋″θ%Sθ び筋彦,No.4257,1975.

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166 美 崎 皓 教授記念論文集 (第309号) 以上 の法制 改革 の後,金 属 産 業 にお いて労働 時 間に関す る交渉が行 われ,そ こでは,ま ず週最 長労働 時間が,オ ル ドナ ンスでは連続す る 12週 の平均 で週 46 時 間,同一週 で週 48時 間であったのが,前 者は週 44時 間,後 者は週 46時 間 と い う一 層 の短縮,さ らに年 間超過 勤務 時間枠 につ いては 94時 間 とい うオル ドナ ンス以上 の水 準,が それ ぞれ合 意 され協約 (82年 2月 23日 付 )に 盛 り込 まれ た。 労働 時 間 に関す る以上 の よ うな法制 改革 と産業別協約 を受 けて,ル ノー公団 にお いて も企業 内交渉 が行 われ,週 39時 間労働 が公認 され る とともに,日 曜 日 に行 われ る労働 時間につ いて 100%の 割増賃金支 払 い,週 末 の補 充作業班方式 で働 いた全 時 間につ いて 10%の 特房U割増賃金 の支 払 い,が合 意 され た (82年 11 月 30日 付 の企 業協 定 )。 こ うしてル ノー公 団の企業 レベルにおいて,労 働 時間 短縮 が実 現 され る とともに,市 場 の変動 に対 応す る設備稼働 時 間 したが って労 働 時 間の弾力化 を可能 にす る枠組 みが設定 され るのてあ る。 2.週 末特別短縮 勤務 時間の設定 以上 の よ うな前提 の も とで,ル ノー公 団の製造部 門におけ る労働 時 間の弾力 化 の最初 の形 態 は,フ ランエ 場 にお け る 「週 末 特 別 短縮 勤務 時 間」 (horaires

rёduits spёciaux de fin de semaine)の設定 とその もとで働 く補 充作業班 の配

置 で あ る。 それ は,80年 代 中期 に,フ ランエ場 の経営 陣 と CGTを 除 く労働 組 合 との 間 で署 名 され た事 業所協 定 (85年 4月 18日 付 )に よって成 立 した もの で あ り,プ レス部 門におけ る週末 の保全 を担 当す る補 充作業班 を工場 内部,必 要 に よっては企業 内他工場 のプ レス専 門工 の志願 者 に よって編成す るこ とを当面 5)1982年 1月 16日付 オル ドナ ンスにつ いては,L筋 駒 %s sθσ励′夕島対%物″殉 ψ2筋 みD物夕を あ サ物υα″′,1984.保原喜志夫訳 『日本労働協会雑誌』第310号,1984年 ,浜 村彰 「フランスにお け る労働 時間の法的規制」 (『労働法律句報』第1128号,1985年 ),野 田進 「フランスの労働 時間法制」 (『日本労働協会雑誌』第320。321号,1986年 ),大 和 国敢 太・矢部恒夫 「フラン スにおけ る労働 時間問題」 (基礎経済科学研 究所編 『労働 時 間 の経 済学』青 木 書店,1987 年,所 収)等 ,参 照。

6)Rё gie Renault(Flins),Horaires rё duits spOciaux de fin de semaine,inニ ルなο%s sθび筋′容 r二をな筋ナゲθ%sθσ筋ル,No.5641,1985.

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フランス自動車産業における労働時間の弾力化 167 の 目的 とす る もの であ る。 そ こで作業班 を構成 す る全部 で 30人 の メンバー たちは,更新可能 な 3ヶ 月の 期 間 に わ た って,土 曜 日お よび 日曜 日におけ る 10時 間労働 に加 えて,金 曜 日ま たは月曜 日のいずれかの 8時 間労働 を選択 した うえで,実 労働 28時 間に従事 す る。報酬は,週 39時 間労働 を起算″点とした うぇで,企 業協定における日曜 日 の就労の 「不快就労割増」100%の 原則のフランの週末就労 日数 3日 間による 割増率 の拡散 =低 下 (100%× lo。5時 間/29.5時 間=35.59%),週 末の補充作 業班方式の 7労 働時間に対す る 10%の 割増賃金,等 を含んでお り,「 8時 間 2 交替制方式の勤務時間に等 しい所得水準 を保証す る」 ことを原則 とする。 ここ では明 らかに,週 末だけの作業班 という労働時間の弾力的設定が,正 規の週労 働時間に比 して 9時 間短いに もかかわ らず同等の報酬が保証 される労働時間の 短縮 と共存 している (第1表 ,参 照)。 とはいえ, こうしたフランエ場の労働時間弾力化の形態は,そ の後に他企業 において広範に展開 され るいわゆる「週末作業班」(6quipes de fin de semaine) に比 して,き ゎめて限定的であるように思われる。通常の週末作業班は,80年 代後半以降の市場の不安定化 と競争の激化の もとで,主 として製造企業が,発 展性のある市場 において素早 く占有率 を高め,高 価 な生産設備のより迅速な減 第 1表 フ ラ ンエ場 における特別短縮勤務時間 曜 日 1 日 当た り 実労働 時間 始業 ・終業時刻 弁 当休 憩 時 間 在社 時間 報 酬 土 曜 日 日曜 日 金 曜 日 また は 月 曜 日 1 0 時間 1 0 時間 8 時 間 5 : 4 5 - 1 6 5 : 4 5 ∼ 1 6 5 : 4 5 - 1 4 30分中断 30分中断 30分中断 1 0 時間3 0 分 1 0 時間50分 8 時 間3 0 分 日曜 日の不快就 労割増 3 日 間に わた り3 5 . 5 9 % 十 週 末 作 業班 の実 労働 時 間 に対 す る割 増 10% 計28時間 29時間50分 基準実 労働 日7 . 8 時間 週3 9 時間 起 算点 ( 出所 ) R 6 g i e R e n a u l t ( F l i n s ) , H o r a i r e s r o d u i t s s p 6 d a u x d e 宜

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1 6 8 美 崎 皓 教授記念論文集 ( 第3 0 9 号) 価償 却 を可能 にす るこ とに よって,需 要 の動 向 と くに増大 に対 応 しうる生産 の フ レキ シビ リテ ィを確保 す るため に導 入 され るのであ り, し たが つてそれは直 接 的 に は,設 備稼 働 時 間の延 長 に よる生産 能 力の迅速 な一 時的増加 の一手段 と して現 れ る。 それ ゆ えそれ は,企 業 内部 の労働 力 で あれ外部 の労働 力 であれ, 直接 的製造 を担 当す る生産労働 者 の志願 制 に よる確保 と補 充作 業班 の編成 とい う形 を とるの であ る。 これ に対 して,フ ランエ場 の当該事例 は,主 として通常 の曜 日の保全作業 に 関連 す る 「超過 勤務 時 間 を明示 的 に減 らそ う とす る意 図」 を もって設定 され, したが って その狙 いは,設 備稼働 時 間の延 長 では な く,設 備 の保 全 の円滑化 で あ り,編 成 の対象 も直接 生産労働 者 ではな く,工 場 内 または企業 内で志願す る 保 全 の専 門工 であ る。 したが つて,こ の週 末特別 短縮 勤務 時 間の設走 の意義 は, 保 全 の充実 に よる設備稼働率 の間接 的上昇 とい う点 に求め られ,生 産 の フ レキ シ ビ リテ ィ確保 には限定 的 に しか関与 しない よ うに思 われ る。 その理 由はお そ ら く,大 衆小 型乗用車 R5の 20年 振 りの モデルチ ェンジた るシュペー ル 5の 投 入が 設備 近代化投 資の基礎 上 に 84年 に当該工場 で行 われてい る とはいえ,そ の 新 型車効 果 が十分 に発揮 され ない まま,80年 代 前半 のル ノー公 団におけ る経営 赤字幅 の拡大,生 産 台数 の低迷 が他 方 にお いて 「減 量経営」 を公 団 と工場 の全 体 に余儀 な くして いたか らで あ ろ 引。 さ らに,労 働 組合 の なか の強力 な反対 も, 設定 の こ うした限定 的性格 の方 向に作 用 したであ ろ う。 労働 組合 の こ うした労働 時 間弾力化 の方式 に対す る対応 につ いて言 えば,第 二勢力 の組合 であ る CFDTが ,労 働 時 間短縮 と通常 報酬 の保 証 を積極 的 に評イ面 して署 名 したのに対 して,最 大勢 力の組合 であ る CGT(85年 2月 の 当地 の企業 委 員会選 挙 にお いて有効 投 票 の 46%を 獲得 )は,そ の積極 的側 面 を承 認 しつつ も署 名 を拒否 したのであ る。CGTは 「週 末作業班」につ いて一般 に,週 末の就 労 自体 が労働 条件 の後退 であ り,一 日の労働 時間 も 10時 間 または 12時 間にな

7)M.Butel,Les ё quipes de fin de semaine,in rγQυαゲ′冴 ク7少わグ,No.48,1991. 8)こ のフ点は例 え│ゴ, D.Tacet&G Zenoni,貿 夕%αクル rs夕び″ナ冴駄 Qナ,Albin Michel,1986.参

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フランス自動車産業における労働時間の弾力化 169 る″点で受け入れ られず,何 よ りも雇用問題の解決に役立つか どうか不明確 な方 式が多い とい う理由か ら拒否の態度 をとっているが,今 回のフランエ場の方式 につ いて も,「経営陣が討議 を事業所 レベルに限定 している」こと,そ して 「雇 用保証が欠けている」 ことか ら受容 しなかったのである。事実,当 該工場にお け る減量経営 の展 開に よって 84年 度 には 1383人 の離職者があ り,そ の うち 61人 が解雇 されているのである。 ところで,同 じ85年 の末に,フ ランエ場において,先 の 82年 のオル ドナン スに添 って,年 次有給休暇の 30日 への増加 を,従 来の 4週 間のヴァカンスに追 加 して第 5週 目の休暇の計画的取得 として実現す る事業所協定が,CFDTを 除 く労使の合意によって成立 している(85年 12月 16日付)。それは,所 属の担当 部局の稼働計画 と両立す る限 り, 1週 間の連続休H浸またはば らばの休暇 として 「従業員の 自由な選択」に応 じて取得す るのを可能にす るとともに,休 暇 を同 時に取得す る従業員数 をク リスマスや復活祭のような特別 な祝祭 日を別 として (これ らの場合 には 8%),各 担当部局の定員の 5%以 内に制限 と/ている。それ は また, 5週 間にわたる休暇の連続取得については認めていない。 これ らの事 情は,CFDTの 署名拒否に関連す るであろ う。 なお, この第 5週 目の休暇は, 勤続年数 による追加的休 日と同様 に,担 当部局の承認の もとに特に移民従業員 と海外領土 フランス人従業員について,個 人的な 「貯蓄」が認め られている。 3,労 働時間の弾力化法制 とルノー公団の 「生存す るための協定」 生産設備 の稼働時間 したがって従業員の労働時間を市場の変動に対応 して増 減 させ るの を目指す弾力化の方式がル ノー公団の製造部門に本格的に導入され るのは,90年 に入 ってか らである。 しか しなが ら,フ ランスの法制上は,先 の 82年 の改革 よ りも一層,弾 力化 を前面に押 し出 した労働時間法制の改革が,す 9)M.Butel,わ ″ .,大 和 田敢 太 ・矢部恒 夫,前 掲 論文,参 照。 10)ROgie Renault(Flins),わ ″.

11)Rё gie Renault(Flins),Prise anticipё e de la 5e semaine de congOs payё s,in二 筋為ο%s sθc筋ブタsfと をなわ″力%sθびカル,No.5758,1986.

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1 7 0 美 崎 皓 教授記念論文集 (第309号) でに 86年 の法律 (86年 2月 28日 法)お よび シラ ク保 守政権下 での 87年 の法律 (87年 6月 19日 法 )に よって提起 され て いた。 そこで提起 された労働時間弾力化の基本 内容 は,次 の二点である。 まず第一 に,週 当た り労働時間が年間平均 で 38時 間以内の場合 には,実 労働 41時 間ま での週,同 じく年間平均 で 37.5時間以内の場合 には,実 労働 44時 間までの週 があって も,超 過勤務時間に対す る割増賃金 を支払 う必要がない とい う点であ る。第二に,週 当た り労働時間が 39法 定労働時間を越 える超過勤務時間につい て,最 初 の 8時 間 までは賃金の 25%割 増に代 えて 125%の 補償休暇 を,8時 間 を越 え る分 は賃金 の 50%割 増 に代 えて 150%の 補償休暇 をそれぞれ与 えるこ とがで きるとい う″点である。 いずれ も,従 来のいわば年間単位 の労働時間変形 の原員Jを変 える重大 な法制改革 と言 うべ きであるが, ここでは,拡 張適用 され た産業別協約 によってのみ実施 され うるとい う限定が付け られている。 後者の法律 は,前 者における弾力化措置 を一層,緩 和する。第一の労働時間 の変形は,82年 1月 のオル ドナンスに もとづ くタイプ とともに,86年 法が平均 労働時間の短縮 を条件 としていたのに対 して,金 銭や訓1練など「何 らかの代償」 を条件 として変形 を認め るタイプ をも定めている。 なお, この点にかかわって, 超過勤務時間の計算単位 を 1週 間ではな く数週間にす る 「労働周期」 (cycle de travail)の設定が連続操業の企業について新 たに認め られ る。第二の超過勤務 時間につ いての割増賃金の補償休暇による代替は,そ の まま存続 され る。 ここ で注 目すべ きは,以 上の二つの弾力化措置が,86年 法 とは異な り,適 用拡張 さ れた産業別協約のみならず企業 。事業所別協定によって も実施 され うるように なった とい う点である。なお,87年 法はこの他 に,製 造業におけ る日曜休 日原 則の例外 としての休 日交替制 の産業別協約 の締結 を条件 とす る承認,女 性労働

12)こ の1986年 2月 28日 法 に つ い て は, NOgociation collective sur l'am6nagement du temps de travail,in二物為θ%s sθびカブ容 f二窪溶挽″わ%Sθσ筋ル,No.5775,1986.ま た, 1987と年 6 月19日法 につ いては, Durёe et amёnagement du temps de travail,in二 妨綺%s sθび筋ブ容 f 乙をな筋力 %Sθσカル,No.5972,1987.これ らの法律 の詳細については,大 和 田敢 大・矢部恒 夫,前 掲論文,盛 誠吾 「フランスにおけ る労働時間 と団体交渉」 (『一橋論叢』第99巻 3号 , 1988年),同 「弾力化 の現段階 ・フランス」 (『日本労働協会雑誌』第343号)等 ,参 照。

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フランス自動車産業における労働時間の弾力化 171 者 に つ い て の 深 夜 就 労 禁 止 ・一 日最 長 労 働 時 間規 制 ,等 の解 除 の産 業 別 協 約 お よび企 業 ・事 業 所 別 協 定 の締 結 を条 件 とす る承 認 な ど を含 ん で い る。 こうして,86年 法および 87年 法 とりわけ後者におけ る労働時間の弾力化措 置の 目指す方向は明瞭であ り,一 方では,超 過勤務時間への割増賃金支払いの 不要化 であ り,他 方では,業 務繁忙時の超過勤務 と業務 閑散時の無給休暇 との 組み合 わせ とい う企業の経済的負担の軽減化の基礎上 で,市 場の変動により柔 軟かつ迅速 な企業の対応 を可能にす るものに他 ならない。 また,そ れが女性労 働者の交替制勤務 と深夜就労 を可能にす ることによって も,そ うした方向を目 指 しているこ とは明 白である。そ して,こ れ らの方向は,労 働組合 とくに CGT の 「生活の質の向上」のための労働時間弾力化制限・弾力化の代償 としての 「賃 金引 き下げな しの労働時間短縮」等の主張 と正面か らぶつか ることになる。 だが,80年 代後半におけ るこうした労働時間の弾力化法制は,CGTが 言 うと ころの社会的既得権の侵害に とどまらず,従 来の労使関係 とくに労使交渉制度 に否定的なインパ ク トをもた らしうることが確認 され よう。すなわち,労 働法 が最低基準 を定めた うえで,労 働組合が労使交渉 を通 じてより高い水準の条件 を拡張適用 された産業別協約 さらには企業 ・事業所別協定 として獲得 してゆ く とい う従来の枠組みが, ここでは逆転 してお り,激 しい国際競争に直面す る産 業部 門の企業経営陣が交渉の主導権 を握 り,競 争力 ・生産性向上の 目標に合致 す る新 しい労働規準 (nOrme)を設定 した うえで,そ れ を労働法規 として国家に 追認 させ てゆ くとともに,そ れ を通 じて今度は,一 層弾力化 されたこの労働規 準 を例外規定 として産業別協約 または企業 ・事業所別協定が採用す ることを承 認 させ るのであ り,そ の結果,企 業 ・事業所の労使交渉 を経過す るに もかかわ らず,労 働者の社会的既得権 をしば しば侵害す るこれ らの新 しい労働規準が労 働現場 で実現 されてゆ く, とい う新 たな枠組みが見い出され るか らである。 労使交渉 と労働立法 との関連におけ るこうした企業経営陣の主導権掌握 を端

13)Accord national du 17 julllet 1986 sur l'amOnagement du temps de travail,in二筋為θ%s s θσ物広 f とをなあサブθ% S θご筋彦, N o . 5 8 2 8 , 1 9 8 6 . この協定の詳細は, 浜 村彰 「フランスにおけ る労働時間に関す る労働協約 ・協定」 ( 『労働法律句報』第1 1 7 2 号, 1 9 8 7 年) 参 照。

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1 7 2 美 崎 皓 教授記念論文集 ( 第3 0 9 号) 的に示す もの こそ,86年 の 「労働時間の調整」 (amOnagement du temps de travail)に関す る金属産業の全 国協定 (86年 7月 17日付)と 上記の 86年 法お よび 87年 法 との関連 であろ う。 この全国協定は,第 一に,労 働時間の変形の前提 としての年間平均週労働時 間 を 38時 間 または 37.5時間か ら 39時 間に変更 し,ま た変形の最長 限度 を 41 時間 または 44時 間か ら 44時 間に統一 していること,第 二に,超 過勤務時間に 対す る割増賃金支払 いについて,補 償休暇などの 「適切 な代償」の設定 を条件 に,企 業 ・事業所別協定は適用除外す ることができること, とい う二点におい て明 らかに 86年 法に抵触 している。ところが,86年 法に とっては例外規定であ るはずの規準が,金 属産業全国協定のなかに盛 り込 まれ,そ れが締結 され るや, 今度 は 87年 の法規定 として再現 されているのであ り,そ の結果,個 別企業 にお いて労働時間の法規違反の代償不十分 な例外規定の実施 を求め る交渉が経営陣 主導の もとに開始 され,当 該企業 ・事業所の協定のなかに盛 り込 まれ ることに なる。 したが って,こ の ような新 しい枠組みが普及すれば,労 働時間の弾力化 は, 労働時間立法の規制 を事実上,受 け ることな く,逆 説的なが ら労使交渉 を通 じ て企業 ・事業所間の競争的導入 したがって労働 。生活条件の企業 ・事業所間格 差 と労働組合 に よる労働時間の企業横 断的な集団的規制力の剣奪 をもた らす可 能'性があるように思われ る。 こ うした状況のなかで,ル ノー公回は,90年 代の国際競争 を見据 えて企業の 新 たな戦略 を提起す る 「生存す るための協定」 (Accord a vivre)(89年12月 29日 付の企業協定)の なかで,労 働時間編成のあるべ き方向について も提起 を し,そ れ を 「労働時間の調整」の 目標 ・実施原則 。新 しい諸形態 として明示 し ている (第21条 )。なお,訓 練再教育 ・移動 ・労働編成 ・労働時間,等 に関す る諸規定 を含む この協定は,CGTを 除 く組合 の署名 によって成立 している。 1 4 ) こ の点につ いてはなお, 盛 誠吾氏の二つの前掲論文 を参照。

15)Rёgie Renault,Accord a vivre,in乙あなο%s sθびカブタsiと をガS筋″οtt sθc物′夕,No.6327,1990. なお, 「生存す るための協定」につ いては, 拙 稿 「フランス自動車産業におけ る生産組織 ・ 労働編成改革 と雇用管理 ( 下) 」( 『彦根論叢』第3 0 8 号, 1 9 9 7 年) 参 照。

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フランス自動車産業における労働時間の弾力化 173 それに よれば,労 働時間の 「調整」すなわちここで言 う短縮 ・弾力化の 目標 は,何 よ りもまず 「企業が品質 ・コス ト・納期の点において顧客 を満足 させ る ために,プ ロセスの統制 と従業員の参画 とによって,す べてを活用す る恒常的 進歩のキャンペー ン」である 「完全 な品質」 (Qualitё Totale)に資す ることで ある。 それは具体的には, よ り良い生活の質 と企業の成功に専念す る従業員 メ ンバーの 「欲求」 を注意深 く考慮 しつつ,顧 客 の 「量的欲求の満足」のために 「緊張 した流れ」 (flux tendu)の政策に添 って 「組織の作動の柔軟性の増大に よって需要の変動に最短時間で反応す ること」であ り,か つ顧客の 「質的欲求 の満足」のために 「購買者の消費様式に適応す ること」 したがって 「サー ビス 遂行時間の拡張の可能性 を追求す ること」であるとともに, 自動化投資の コス ト増大の理 由によ り 「生産設備 の最適 な利用 を可能にす る」 ことである。 次 いで,労 働時間 「調整」の実施原則は,企 業の様々な部門におけ る独 自性 を考慮すれば 「現場 に最 も近 い所 で決定 され,そ して可逆性 (rёversibilit6)の 原則に立脚 し,志 願制に広 く依拠 した部 門別の形態 をとること」,そ のためには 「中間役職者 と従業員 メンバー との対話 と意思疎通」,従 業員の 「権 限尊重」・ 「代表諸制度 との協議」によって 「労働時間の編成におけるあらゆる変化 を準 備す ること」,そ の際,労 働時間 のそ うした新 しい編成が関係従業員に「追加的 諸拘束」 を引 き起 こす場合 には,そ の適用期間にわたって 「労働時間短縮 ・労 働条件 ・訓練 または金銭の面か らの適合的代償が与えられ る」 こと,で ある。 さらに,労 働時間 「調整」の新 しい諸形態については,販 売サー ビス部門 も 含めて 「個別化 された勤務時間 (horaires individualisOs),パー トタイム労働, 変形労働 時間 (mOdulatiOn),橋渡 し休 日 (pont)のための労働時間の回収」の ような既存の方式の他 に,「周期的勤務時間 (horaire cyclique),経済的理 由の ための連続方式作業 (travail en continu)の編成,週 の複数 日にわたっての労 働時間の配分 または 日曜 日に結びつけ られた週の休 日の交替」のような新 しい 方式 を検討す ること,そ のために,協 定に署名 した各組合の代表 2名 と経営陣 の同数代表か ら構成 され る 「技術的省祭委員会」 を企業 レベルで創設す ること, である。

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174 美 崎 皓 教授記念論文集 (第309号) なお,こ の協定は,労 働時間 「調整」に関係す る従業員の金銭上の 「代償」 について,そ の原則 を附則において明示 している。それによれば,交 替制 「作 業班」の他 に,「夜間作業班」 (午後 10時 か ら午前 6時 までの間に少な くとも5 時間の労働),「部分的夜間作業」(早朝の 5時 には働 き始め るか,ま たは仕事 を 終 わるのが深夜の 12時 以降)についてそれぞれ手当金が付 くこと,割 増賃金に つ いては,82年 の協定の諸規定 を引 き継 ぐとともに,週 39時 間を越 える超過勤 務 の最初の 8時 間 までは 30%そ れ以上の時間は 50%に す ること,が 盛 り込 ま れている。 いずれにせ よ,「生存す るための協定」における労働時間の編成方向は明確 で あ り,そ こでは,労 働時間は基本的に,企 業が国際競争の激化に対応す るため の基本戦略である 「完全 な品質」に組み込 まれ,従 業員 メンバーの 「多能性」 と 「欲求」に立脚す る新 しい柔軟 な労働編成による 「緊張 した流れ」に服す る もの として位 置づ け られている。そ うであるがゆえに,CGTは ,当 該協定の核 心 である 「完全 な品質」 を目指す 「緊張 した流れ」 または 「ジャス ト・イン ・ タイム」が,労 働時間の弾力化 を含む 「労働のフレキシビ リティ」による労働 者の「生活の質の破壊」,労 働者間競争激化,労 働組合運動排除,社 会的既得権 切 り崩 しをもた らす として署名 を拒否 したのに対 して,CFDTは ,国 際競争の 激化の もとで,企 業による従業員への追加的拘束 と従業員 自身の欲求には交差 しうる領域が生 じてお り,労 働組合運動の危機 を克服す るために も,そ こで生 じた例 え│ゴ「労働時間短縮 とワー ク ・シェア リング」などの欲求に立脚 して, 競争力 ・生産性 向上に対す る 「首尾一貫 した代償の戦略」 を提起すべ きである として署名 したのである。 上述の労働 時間の弾力化法制 との関連 につ いて言えば,「生存す るための協 定」は,労 働時間 「調整」の新 しい形態の提起 を除いて,法 制の直接的適用に よる規定 を与えていない とはいえ,「完全 な品質」のための 「ジャス ト・イン・ タイム」方式に奉仕す る労働時間の編成 とい う形で,法 制の趣 旨を独 自に展開 してお り,そ の うえで以後,弾 力化 に対す る労働組合間の意見対立 をも一基盤 として,事 業所 レベルで具体的に活用す るための企業の包括的方針 を提起 した

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フランス自動車産業におけ る労働時間の弾力化 もの と言えよう。 4.夜 問作業班の提起 と実現 以上 の 「生存す るための協定」に基づ いて労働時間弾力化の新 しい一形態 と して提起 されたのが,フ ランエ場におけ る 「夜間作業班」 (6quipe de nuit)で あ る。 それは,85年 当時の 「週末特別短縮勤務時間」とは異なって,投 入 を待 つばか りの 「新車の受け入れを助長す る状況」 を創 り出 し,生 産 「活動の必要 な一時的増大」に適応 しうる 「工場の産業能力」 を 「証明す る機会」 として位 置づ け られた 「部分 的な夜間作業班」の設定 である。 そのための事業所協定が, 90年 初頭に CGTを 除 く諸組合の署名によって締結 されている (90年 3月 6日 付)。 それは,当 該工場の 2本 の組立 ラインに対応 した従来の 2交 替制勤務に夜間 勤務 を加 え, 日本で言われ る連続 3交 替制 または 3直 体制に近い方式を目指そ うとす るものである。第 2表 に明 らかなように,夜 間作業班は,金 曜 日の夜は 8時 間 30分 と他 の曜 日と比べ て長時間就労す るとはいえ,週 の実労働時間は 31時 間 30分 と相 当な短時間労働 を実現す ることになる。 こうした夜間作業班 の設定は,従来の 2交 替制勤務 (午前作業班 ;5:45∼ 14:05,午 後作業班 ;14: 05∼22:25)の 週実労働時間 38時 間 10分 を 37時 間に短縮す ることになる。 と はいえ, こ こでの夜間作業班 と午前作業班 とは時間的に直結す るわけではな く, 「塗装 ボックスの清掃」 とい う技術的理 由のために,早 朝に 4時 間近 くの中断 を次んでお り,夜 間作業班は 「部分的」に就労す る。報酬は,週 労働 38時 間 10 分 を起算点 として,午 前作業班 と午後作業班については従来 との同額が維持 さ れ,夜 間作業班については一律 20%の 割増が実現 されることになる。 フランエ場におけ るこうした夜間作業班の新設は,小 型車の新モデル ・クリ オの投入予定に対応す るものであるとともに,当 該事業所協定の締結の直前, 1 6 ) R e n a u l t F l i n s , C r ёa t i o n d ' u n e ёq u i p e d e n u i t , i n 二物なθ% s s θび力′2 , f 二ぞ於筋ナゲθ% s θびカル, N o . 6 3 5 3 , 1 9 9 0 ,

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1 7 6 美 崎 皓 教授記念論文集 ( 第3 0 9 号) 90年 1月 に最終決定 された ビヤ ンクールエ場の閉鎖 に伴 う従業員の配置転換 とい う企業経営陣の意向に添 うもので もある。実態に即 して言えば,協 定締結 時に約 1万 人の従業員が,2交 替制勤務 に よって毎 日約 1550台の組立 を行 って いる現状 に対 して,新 たな夜問作業班の設定によって毎 日約 300台の増産 を実 現す ることを目指すのであ り,そ の際に必要 な新規労働力は, ビヤ ンクールエ 場か らの転職斡旋者 も含めて志願制 によって確保 し編成 しようとい うのが,経 営陣の当初 の具体 的 目標 であった。 こ うした経営陣の意向に もとづ く協定に対 して,CFDTは ,内 部討議 におい て,一 方では,夜 間作業班の設定が 300人か ら 350人の若年労働力の採用 をも た らしうるとい う雇用面の利″点と従来の 2交 替制作業班の週実労働 38時 間 10 分 に対 して夜問作業班のそれの 31時 間 30分 への短縮 とい う利点,他 方では, 早朝 5時 の就労開始に よる生活習慣への侵害 とそ して早朝か ら正午過 ぎまで中 断がないライン作業後の食事 に よる健康への悪影響 とい う難点 をそれぞれ摘 出 しつつ も,「 3交 替制作業班への移行 は,権利要求上の行動のための跳躍台にな りうる」とす る観点か ら最終的には署名 している。他方,CGTに よれば,夜 間 第 2表 フ ランエ場における夜間作業班の提起 (注)午 前 ・午後作業班 の週実労働 時間はA,Bと もに37時間。夜間作業班のそれはA,Bと もに31時間30分。 午前作業班 の始業時刻 のA,B2種 類の設定 は,労 働組合 に よる従業員4,426人の投票 に よるもの。 Aの 賛成者は2,515人(60.8%)で製造労働者が 多 く,Bの 賛成者は1,619人 (39.2%)で 専 門工 ・技術職員 ・女性が 多い。D.Richeter,Belles de nuit,の.びル. (出,す「) Renault Flins,Cr6ation d'une ёquipe de nuit, 9ク. 冴す.

曜 日 労 働 編 成 日実労働 時間 始業 ・終業時刻 弁 当休 憩 報 酬 月∼金 月∼金 午 前 作 業 班 A B 午 後 作 業 班 A B 7 時 間2 0 分 7 時 間1 2 分 7 時 間2 8 分 7 時 間3 6 分 5: 00-12 : 20 5: 30-12 : 42 12i 20-19:48 12 : 42-20 i 18 終業後 終業後 終業後 終業後 過労働38時間 10分を起算″点 月∼木 金 曜 日 夜 間作 業 班 A B 夜 問作 業 班 A B 5 時 間4 5 分 5 時 間4 5 分 8 時 間3 0 分 8 時 間3 0 分 19 : 48- 1 : 33 20 : 18-ヤ 2 : 03 19i48- 4: 48 20: 18- 5i 18 終業後 終業後 30分中断 30分中断 起 算点にプ ラ スー律割増2 0 %

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フランス自動車産業における労働時間の弾力化 177 作 業 班 に よ る工 場 の稼 働 時 間 の 増 加 は, 生 産 装 置 の受 け 入 れ が た い フ レキ シブ ル化に関与 し,当 然の結果 として労働者の状態の悪化 を伴 う。 しか も,勤 務時 間の変更はすべ て,不 可避的に労働者たちを分裂 させ る。 さらに,今 回目指 さ れているフランエ場 におけ る生産の増大は, ビヤ ンクールエ場の閉鎖 と符合 し ているのであ り,運 帯精神の名 目で後者の犠牲 を受け入れ ることはできない。 CGTは 総 じて,今 回の提起が「労働条件 を改善 しうるいかなる投資 をも実際に は引 き起 こさない」 として協定への署名 を拒否 している。 この協定は 「1年 とい う実験的施行期 間」について締結 されたが,実 際には 直 ちに施行 され ることはなかったのである。その理由は何 よ りも,新 車の売れ 行 き不振に求め られ よう。ル ノー公団の株式会社化 (90年 4月 )の 直後,90年 6月 に投入 された新型小型車 クリオは,発 売直後はフランス とヨー ロッパの市 場の低迷 に よ り,販 売台数が旧型車 R5を 下回る状況で,市 場 占有率 も低下 し たのである。協定の施行 はそれゆえ,93年 4月 に投入 され る小型車の新 コンセ プ トカー ・トゥインゴの成功 を待 たなければならなかった。 トゥインゴの発売当初か らの注文の殺到に対応す るために,フ ランエ場 は, ここに至 って漸 く夜間作業班 を配置す るとともに,既 存の午前 ・午後作業班の 労働時間の短縮 を実行 に移 した。すなわち,夜 間作業班の編成のために 400名 の新 たな雇用が実現 され るとともに,組立 ラインの稼働時間が 40%延 長 され毎 日,300台 の増産が達成 された。そ して労働時間 も協定通 り,夜 間作業班の週実 労働 31時 間 30分 (在社時間 temps de pr6senceは32時 間)と ともに,新 たな 午前 ・午後作業班 について も週実労働 37時 間 (在社時間は 39時 間 40分 ,但 し この終わ りの部分 に含 まれ る食事時間には退出可能)と い う短縮が実現 された のである。協定 と比べ ると,こ の実際の部分的 3交 替制勤務 は,第 3表 に示 さ れているように,当 初のBつ ま り遅 いほ うの始業時刻 によって編成 されている。 フランエ場における夜間作業班は以上のように,割 増賃金付 き労働時間短縮 1 7 ) A . G . V e r d e v o y e , S . B o m m e l , M . P r a n d i , R e n a u l t u n e m p l o F i n d u s t r i e l s u r d i x あl a c l l , inと'しなグ%夕 %θク2/1夕″′夕,No.2338,1991. 1 8 ) R e n a u l t F l i n s : f a i r e t r a v a l l l e r l e s m a c h i n e s e t l e s h o m m e s , i n A ′物物 α″υt t E c θ% θ物か ?クタs, No.111, 1993,

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178 美 崎 時 教授記念論文集 (第309号) 第 3表 フ ランエ場 におけ る労働時間の新 しい編成 新 しい 編 成 以前の動務 時 間 調 整 1993年か らの勤務 時間 午 前 作業班 5: 45-14 就労 開始 を1 5 分早め る 勤務 終 了時 に4 0 分間食事 3 月 1 日 以降 5 : 3 0 ∼ 1 3 : 2 2 但 し1 2 : 4 2 に退 出可能 午 後 作業班 i 05-22 勤務終 了時 に40分間食事 3月 1日 以降12:42∼ 20:58 但 し20'18に 退 出可能 夜 問 作業班 4 月 5 日 以略2 0 : 1 8 ∼ 2 : 0 3 金 曜 日のみ2 0 : 1 8 ∼5 : 1 8 ( 注) 金 曜日は在社時間の週合計3 2 時間を獲得するためにより長時間の夜間就労。 (出所)Renault Flins:faire travalller les machines et les hommes,の.冴ナ.

を代償 とす る一 時的 な補 充作業班 の編成 とい う形 を とってお り,87年 の弾力化 法制 に直接 には依 拠 して いない。それが 当工場 で問題 にな るのは,96年 におけ る新 しい弾力化 の形態 の提起 にお いてであ る。 5.需 要 の季節的変動 に応 じた労働 時間編成 と時間バ ン ク 最 後 に,現 時″点の よ り進 んだ労働 時間弾力化 の形態 につ いて考察 してお こ う。 それ は,以 上 に見 た夜 間作業班 の設定 に よる部分 的 3交 替制勤務 を継承 しつつ も,季 節 間 で増減 を生み 出すが ゆ えに,12ヶ 月の間で も企業 に業務 の繁 閑 を も た らす最近の乗用車市場の変動によ り柔軟に適応 しようとす る形態である。 し たがって,そ こでは,87年 法における業務繁忙時の超過勤務 と業務 閑散時の無 給休暇 との組み合 わせが 1年 間のなかの季節的配分 として問題 になる。 ところが,そ うした週労働時間の 1年 間を単位 とす る季節的な変形 を可能に す る制度が,90年代前半に 87年 法 とは別個 に提起 され る。それは,いわゆる「労 働 時間の年次化」 (annualisation du temps de travall)を謳 った 9 3 年 の法律 ( 9 3 年 1 2 月 2 0 日付 「雇用 5 ヶ 年法」)に よるものであ る。 ここで労働 時間の

19)DurOe et amOnagement du temps de travail:Loi quinquennale,in二筋なθ%s sθび力′容 f とをな物ナゲθ% S οび力′夕, N o . 6 9 9 9 , 1 9 9 4 . この法律 の詳細については, 野 田進「労働時間規制の『年 次化』の行方」 ( 『労働法律句報』第1 3 3 9 号, 1 9 9 4 年) 参 照。

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フランス自動車産業における労働時間の弾力化 179

年 次 化 」 とは, 週 労 働 時 間 を, 法 定 時 間以 下 の一 定 の平 均 時 間 で あ る「週 基 準

時間」 (durёe hebdomadaire de r6f6rence)を越 えないことを条件 に,「営業 活動におけ る季節的性質」に対応 して 1年 間の全部 または一部分 にわたって変 形 させ 配分す ることを可能にす る制度である。 こうした年間単位の労働時間の 変形は,「雇用の維持 と発展」を目標 とし,労 働時間短縮 を伴 う 「新 しい労働編 成」 として,拡 張適用 され る産業別協約 または企業 ・事業所別協定の締結によ って実施 され ることになる。 そこで労働時間短縮の起算点になるのは週基準時 間であ り,そ れ を越 えて勤務 した時間は,法 定労働時間に対す る超過勤務時間 か ら区別 されて 「逸脱時間」 (heures excOdentaires)と規定 され る。 これに対 す る代償 としては,割 増賃金支払いケース と割増賃金に代 わる補償休暇の付与 のケー ス とが選択可能にされている。なお,こ の 93年 法は,当 面 1年 間の実験 的措置 として,労 働時間の 「年次化」のための企業協定の締結によって,以 前 よ りも 15%以 上の労働時間短縮,労 働時間短縮 に伴 う何 らかの賃金引 き下げ, 同 じく時間短縮による 3年 間にわたる従業員数の 10%以 上の雇用増加,とい う 「成果」が得 られた場合 には,社 会保険 ・労災保険 ・家族手当への企業拠出金 に対 して国家か らの助成措置 を認めている。 以上の ような 93年 法は,87年 法に比 して,雇 用の維持 ・発展 と労働時間短縮 をよ り前面に押 し出 しているとはいえ,市 場の とりわけ季節的な変動によ り迅 速に相対的低 コス トで対応 しようとす る企業の意向に添 う形で,特 に,従 来は 協約 ・協定の締結によって可能であった割増賃金に代 わる補償休暇の付与が企 業委員会等の合意 さえあれば可能になった点, また従来の労働時間協定 と異な り, この年次化協定は,企 業委員会選挙等で過半数 を得 た組合が署名 を拒否 し た場合 に も協定失効権限 を与えていない点において,労 働組合の交渉権限を弱 化 させ,そ れによって労働時間の弾力化 を一層進めやす くしていると言えよう。 以上 の ような 90年 代前半 までの法制的枠組みの もとで,フ ランにおけ る最 新の弾力化形態は,そ こで組み立て られ るクリオ と トゥインゴヘの需要の 「低 調期」 (pёriode basse)と「高揚期」 (p6riode haute)を12ヶ 月のなかで区分 し,前 者の時期 には午前 と午後の 2交 替制勤務 のなかに夜間作業班 を組み込み,

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180 美 崎 皓 教授記念論文集 (第309号) 後者の時期 には夜間作業班 を復帰 させ 3交 番御l勤務 にす るとともに,90年 3月 の事業所協定におけ る週 37時 間の 「基準勤務時間」に もとづ いて 「時間バ ンク」 (banque d'heures)を制度化す るこ とに よって,低 調期 の交替制勤務 におけ る 超過勤務時間 をバ ンクヘの預 け入れの対象 (7.8日)と した後,特 に 「橋渡 し休 日」 として計画的に消化 させ,高 揚期の勤務時間の不足分 はバ ンクヘの借 り入 れの対象 (2.6日)と した後,以 後生ず る休 日との相殺 または志願制による土曜 日就労 として時間管理 しようとす るものである。 こうした労働時間の一層の弾力化 によって結果 しうる 「パフォーマンスの改 善」 と従業員が被 る 「勤務時間の再調整」による生活 リズムの侵害 とい う追加 的 「拘束」の代償 として,年 間 2日 の労働時間短縮の付与 (2交 替制勤務 に就 くライン労働者には 96年 に限 りさらに 1日 追加)と時間バ ンクヘの貯蓄 ととも に, 2交 替制作業班の編成時に一律 110フ ランの手当金,夜 間作業班の需要高 揚期 におけ る 2交 替制勤務か らの復帰時に一律 1000フランの手当金の支給,さ らには雇用上 の代償措 置 として,需 要 の低調期 に 「一 時解雇 (レイオフ)」 (ch6mage partiel)を回避す るための措置の追求,夜 問作業班の編成時におけ る 70人 か ら 100人 までの外部労働力の新規採用,が 謳われている。こうした 1 年 間のなか での労働時間のいわば季節的な編成替 えによる 「市場の変わ りやす さ」へのよ り柔軟な適応 とそれ を可能にす る 「3交 番制作業班方式で常時稼働 しうる工場」の創 出こそ,最 近締結 された事業所協定 「市場の変わ りやす さに 関す るル ノー 。フラン協定」 (96年 5月 10日付)の 核心である。 それは,「年次

20)Renault Flins,Temps de travail et variabilitO des march6s,in二筋為ο%s sθび筋′夕sf 二をガS物″θ%Sθσ物ル,No.7507,1996. 因みに,こ の協定に もとづ いて,96年 の 2交 替制勤務 に就 くライン労働者の年間実労働時 間 を概 算すれば,次 の ようになる。年間労働 日231-(2+1+7.8)≒ 220日。起算点 としての 週37時 間は一 日7時 間24分 の労働 時間に換算可能。.・.年間実労働 時間=220日 × 7時 間24分 =1628時 間。他方,日 本の 自動車産業における96年度のメーカー平均の年間労働時間は,RV 人気があった とはいえ,2050時 間強である (『日本経済新聞』1996年 10月28日付)。彼我の格 差 は依 然 として長大 であ る と言 うべ きであろ う。 21)な お,ル ノー ・サ ン ドゥヴィルエ場 では最近,文 字通 りの 「労働時間の年次化」協定が締 結 されてい る (97年 3月 27日付)。二物なθ%s sθび筋燃 fβ /2/sοσ筋′,No.12409,1997.

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需要 に よる 時期 区分 労働 編成 日実労働 時間 始業 ・終業時刻 週実労働 時間 ( 月∼金) 低 調期 午前作業班 午後作業班 7 時 間4 0 分 7 時 間4 0 分 5 : 2 5 ∼ 1 3 : 0 5 1 3 : 0 5 - 2 0 : 4 5 3 8 時間2 0 分 3 8 時間2 0 分 高揚期 最短 4 ヶ 月 は孫区糸売 午前作業班 午後作業班 夜 間作業班 7 時 間2 0 分 7 時 間2 0 分 6 時 間2 0 分 5: 30-12 : 50 12:50-20: 10 20: 10か▼2 : 30 3 6 時間4 0 分 3 6 時間4 0 分 3 1 時間4 0 分 フランス自動車産業における労働時間の弾力化 181 第 4 表 の 1 フ ラ ンエ場 におけ る需要の季節的変動 への労働時間の適応 (注)午 前 ・午後作業班の一律手当金110フランは1993年に始め られた もの。午前 ・午後作業 班 の年次有給休暇は96年度に限って 1日 追加 され る。 第 4表 の 3 プ レス部 門 に お け る夜 問作 業班 の編成 (と)代 償 としての 2日 の年次有給休暇は他 の部 門 と同様 に付与 され る。 ( 出所) R e n a u l t F l i n s , T e m p s d e t r a v a i l e t v a r i a b i l i t ё d e s ■l a r c h O s , の. び″. 化」という用語 を使用 していないとはいえ,全 体 として 93年法にもとづいたフ ランエ場版 「年次化」協定であると言えよう)。 第 4表 の 2 労 働 時間の適応 への代償 需要 に よる 時期 区分 労働 編成 時間バ ン ク 週3 7 基準時間 時間バ ン ク の使用法 時間的代債 年次有給休 暇 金銭 的代償 一律手当金 低 調期 午前作業班 午後作業班 7 . 8 日の預 入 7 . 8 日の預 入 休 日の計画 白匂ヤ肖化 2 日 ( 1 日) 2 日 ( 1 日) 1 1 0 フラ ン 1 1 0 フラ ン 高揚期 午前作業班 午後作 業班 2 . 6 日の借入 2 . 6 日の借入 志願制 の土 曜 日就労 2 日 ( 1 日) 2 日( 1 日) 1 1 0 フラ ン 1 1 0 フラ ン 夜 間作業班 2 日 1000フ ラ ン 需要 に よる 時期 区分 1 日 の平均 労働 時 間 始業 ・終業時刻 (曜日) 週労働 時間 時間バ ン クヘ の預 入 ・借入 低 調期 8時 間16分 20i45∼ 5:25(月 ∼木) 2 0 : 4 5 ∼ 3 : 2 4 ( 金 曜 日) 41時間20分 基準4 1 時間2 4 分 7 . 8 日の預 入 高揚期 4ヶ 月継続 8時 間44分 2 0 : 1 0 ∼ 5 : 3 0 ( 月 ∼木) 2 0 : 1 0 ∼ 2 i 3 0 ( 金 曜 日) 43時間39分 基準3 9 時間5 8 分 9 . 1 4 日の預 入 7 ヶ 月継続 8 時 間 6 分 20:10∼ 5:30(月 ∼木) 20:10∼ 2i30(隔 週金) 40時間30分

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1 8 2 美 崎 皓 教授記念論文集 (第309号) なお この場合, 第 4 表 に示 されてい るよ うに, 夜 間作業班 は, 月 曜 日か ら金 曜 日まで定 時の勤務 時 間 を もって就労す る とはいえ, 週実労働 時間は 1 0 分 長 く な ってお り, 4 ヶ 月の最短継続期 間後 は景況 に よっては直 ちに 2 交 替制勤務 に 統合 され うるのであ り,90年 3月 の協定に比 してよ り大 きな労働 ・生活時間の 変動 に巻 き込 まれ るこ とになるであろ う。他方,プ レス部 門におけ る夜間作業 班は,組 立 ラインの夜間作業班に比 して,一 日に 2時 間前後,一 週間に 10時 間 前後,長 く働 くことにな り,時間バ ンクを通 じて実現 され る休 日は多 くなる(7.8 日お よび 9.14日)と はいえ,労 働 ・生活条件の改善 を見い出すのは困難である ようにJ8われ る。 この協定におけ る時間バ ンクとい う新 しい時間管理装置の運用については, 署名者の各組合 (CGTと CFDTを 除 く3組 合)の代表 2名 と事業所経営陣同数 との 「追跡調査技術委員会」の年一度以上 の開催 によって一時解雇の回避策 も 含めてチェ ックされ るとともに,経 営陣による需要の 「低調期」 と 「高揚期」 の決定は,事 業所委員会の月別会合 の際に翌月の稼働 日程 とともに予め通知 さ れ意見聴取の対象になるのであ り,そ の限 りで,こ の新 たな労働時間弾力化の 手段 は,依 然 として労使協議制の もとで運用 され ることになると言えよう。 ま た,従業員に対 して も,勤務時間の変更に際 して 6週 間の「事前通告期 間」(d61ai de pr6venance)の付与が 93年 法に従 って明記 されてお り,個 人の労働 ・生活 時間の変動へ の配慮が うかがえよう。 だが,今 回の協定 を全体 として見た場合 に注 目され るのは,上 記の労働 ・生 活時間の変動の問題の他 に,そ れが,交 替制作業班の編成時に一律の手当金 を 支給す るとはいえ,超 過勤務時間への割増賃金支払い とい う従来の原則 を棚上 げ し,そ の代 わ りに,い わゆる補償休暇 を時間バ ンクを通 じて付与す るとい う 点であろ う。それは,無 給休暇の付与すなわち割増分 に相 当す る賃金の不払い を伴 う労働時間短縮 とい う87年 法の適用 に他 ならない。さらには,協 定が,需 要の低調期 におけ る夜間作業班の 2交 替制勤務への組み込みの際に,「一時解雇 の可能性」について,回 避の努力 を謳いつつ も,そ れ を否定 していない とい う 点 も留意すべ き問題″点であろ う。 しか も,夜 間作業班の編成のために募集 され

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フランス自動車産業における労働時間の弾力化 183 る対象 として,工 場 内の 「期 限の定め のあ る契約」 を有 す る従 業員や 派遣従 業 員 が協定 には明示 され てい るのであ る。す なわ ち,夜 間作業班 の構成員 は,補 償 休 暇 ここでは無給休 暇 に置かれ るだけでな く,率 先 して解 雇 され る可能性 が あ る とい う点 であ る。協定 に対す る CGTと C F D T 両 組合 の署名拒否 は,こ れ らの問題 点 に関連 す るよ うに思 われ る。 III まとめに代 えて 以上,ル ノーのフランエ場 におけ る労働時間の短縮 と絡み合 った弾力化の諸 形態 を,80年 代 中期 の週末特別短縮勤務時間,90年 代初頭の夜間作業班,90年 代 中期 の労働時間の季節的編成替 え方式の順 に考察 して きた。それ らは, 自動 車産業におけ る競争の激化 と市場のグローバル化の もとで,企 業の競争力 ・生 産性 の向上のために設定 され,特 に 89年 末の 「生存す るための協定」以降, と りわけ製造現場 におけ る柔軟労働編成に立脚す る 「完全 な品質」 キヤ ンペー ン と製品納入の 「ジャス ト・イン ・タイム」方式に奉仕すべ きもの として明確 に 位 置づ け られ るに至 った。すなわち,労 働時間弾力化の追求は,外 部労働力に よる週末作業班 または夜間作業班の一時的編成に依拠す る生産設備稼働時間の 延長 を通 じての需要増大への対応か ら,製 品の品質 ・コス ト・納期の面での顧 客満足 を可能 にす るための工場 内従業員の需要変動に応 じた労働時間 と勤務体 制 の季節的編成替 えへ と至 っているのである。 とはいえ, これ らの形態は,企 業狽lの論理のみによって展開 されて きたので はな く,80年 代以降の政府による労働者の労働 ・生活条件改善のための労働時 間短縮 と企業の競争力 ・生産性向上のための労働時間弾力化 との同時成立 を目 指す法制改革 とそ して 「賃金引 き下げな しの労働時間短縮」による生活水準向 上,「ワー クシェア リング」による雇用問題解決 とい う基本的権利要求 を掲げた 労働組合 と企業経営陣 との交渉,対 抗関係 を通 じて展開 されて きたのであ り, それゆえ, これ らの形態 を体現す るフランの事業所協定は,基 本給の起算″点で あ る週実労働時間について見れば,39時 間→ 38時 間 10分 → 37時 間 とい う短 縮 をも実現 して きたのである。

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1 8 4 美 崎 皓 教授記念論文集 ( 第3 0 9 号) 以上 の労働時間短縮 ・弾力化 の展開過程 を労使関係 とりわけ企業内労使関係 への影響 とい う観″点か ら見た場合 には,時 間短縮の実現による労働組合の影響 力の確保 とは異なった,む しろ逆の面が引 き出され うるように思われ る。 それ は,す でに見た労使交渉 と労働時間立法 との関連におけ る企業経営陣の主導権 掌握 とその もとでの労働時間弾力化の企業・事業所間の競争的導入, したがっ て労働 ・生活条件の企業 ・事業所間格差 と労働組合による労働時間の企業横断 的な集団的規制力の剰奪 とをもたらす一般的可能性があるというだけではない。 それは また,労 働時間の弾力化が労働者間の 「欲求」の個別化 を引 き起 こす と ともに,そ れに依拠す ることによって労働組合の権利要求 を封 じ込め,そ の影 響 力 を後退 させ うるとい う面 もある。す なわち,フ ランの協定が成立 させ て き た週末作業班,夜 間作業班,時 間バ ンクによる補償休暇,等 の様々な労働時間 編成 は,勤 務時間の選択,金 銭的代償 と時間的代償 との選択 などに関す る労働 者間の 「欲求」の個別的差異化 を引 き起 こす とともに,全 国的雇用状況の悪化 を背景 とす る企業内短期労働契約者や企業外失業者による週末・夜間作業班の 短時間勤務への志願 を殺到 させ るがゆえに,時 間短縮の他 に超過勤務規制,交 替制勤務 限定 といった労働 時間の均一的集団的規制の労働組合による権利要求 が受容 されに くい雰囲気 を醸成 しうるであろう。CGTが 労働時間弾力化 に反対 す る理 由に一つ は,そ れが 「労働者間の分裂」 をもた らしうることであつたが, まさし くル ノーの 「生存す るための協定」は,労 働時間の 「調整」において 「従 業員 メンバー の欲求」「願望 を注意深 く考慮す る」必要 を強調 していたのであ る。 そ うであるとすれば,労 働時間の一層の弾力化は,企 業内労使関係 を 「個 別化」 し,労 働組合 の影響力 を弱め る方向に も作用す るように思われ る。 22)MI.Butel,グ うググ.

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フランス自動車産業におけ る労働時間の弾力化

Flexibilisation du temps de travail

dans l'industrie automobile en France

H i s a o A r a l

En considё rant le cas de Renault a Flins sur la flexibilisatiOn du temps de travail,qui s'imbrique bien dans la rё duction de celui‐ci a la diff6rence du

cas japonais,que se succёdent``6quipe de fin de semaine"en 1985,``6quipe de nuit"en 1993 et``r6organisation saisOnniёre d'horaires"en 1996,on peut bien constater comme suitill s'agit de passer de l'adaptation a une augmen― tation de la demande a travers d'une allongement de la duree d'utilisatiOn des 6quipements fonctionn6s par les 6quipes de fin de semaine ou de nuit organis6es de facon temporaire par les mains―d'oeuvre externe a la r6pOnse plus rapide a une fluctuatiOn de la demande se reposant sur une r6organisa― tion saisonniёre d)hOraires pour 3 1quipes organisёes en permanence par le personnel interne permettant de satisfaire a la clientё le en ternle des “

qualit6,coat et d61aiルdes produits.

La flexibilisation du travail aurait la possibilitO d'affaiblir l'influence des syndicats en favorisant la diff6renciation des aspirations individuelles des salari6s au lieu de maintenir la force de ceux-la en obtenant une rёduction de la duree du travail par la n6gociation collective.

参照

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