I
目的
テニスの試合は、サービスから始まり、その後の リターン、グラウンド・ストロークによるラリーの応 酬、ボレーやスマッシュでの応戦により展開される。 テニスでは、主に、これら5
つの基礎・応用技術の 獲得が求められる。 テニスの試合に関する研究では、各種ゲーム分 析手法を用いて、競技パフォーマンスに影響を及 ぼす技術や効果的な戦術などを明らかにしている。 高橋ら(2007
)は、男子トッププロ選手のシングル スの試合をプレー時間に着目して分析している。 それによると、近年の男子トッププロ選手の1
ポイ ントに要する時間は平均4
秒程度で、サービス、 サービスリターン、その後の3
打目もしくは4
打目で おおよそポイントが決定していることを報告してい る。これらの結果は、指導現場への提言として、男 子選手ではサービスを含めた4
打目までの有効な 戦術を考えることが試合結果に結びつくことを示 唆するものといえる。佐藤ら(2003
)は、近年の男 子プロテニス選手のシングルスをサービスの得点 率や時間的要素に着目してゲーム分析している。 それによると、男子選手ではファーストサービスで の得点率が高いものほど試合の勝率が高いこと、 ファーストサービスの初速が大きく、サービス速度 の緩急による戦術を有効に駆使している選手ほど、 試合での勝率も高いことなどを報告している。また、O’Donoghue
(2001
)は、4
つのグランドスラム大 会におけるサービスでの得点率を男女で比較して いる。それによると、男子選手におけるサービスで の得点率が女子選手のそれよりも有意に高いこと、 男女ともに勝者のサービスでの得点率が敗者のそ れよりも有意に高いことなどを明らかにし、男子選 手の試合におけるサービス技術の重要性を提示し ている。男子選手におけるサービス技術の重要性世界一流男子
テニス
選手
の
ファーストサービス
動作
の
キネマティクス
的分析
道上静香 Shizuka Michikami 滋賀大学経済学部 / 教授 論文について、大森(
2002
)はO’Donoghue
(2001
)と 同様の結果に加えて、男子選手の試合中のサービ ス速度が女子選手のそれよりも大きく、このことが 男子選手の試合中のファーストサービスでの得点 率、サービスエースの数やレシーブの失点数に起 因しているとして、男子選手の試合におけるサービ ス技術は女子選手のそれとは比較にならないほど 重要であることを報告している。このように、短時 間でポイントが決定する近年の男子選手の試合 において、第1
打目の高速で正確なファーストサー ビス技術は、競技パフォーマンスに影響を及ぼす 重要な技術の1
つであることが明らかになっている。 試合の優劣に大きく左右するサービス技術に関 するバイオメカニクス的研究では、1980
年代頃か ら、3
次元画像解析法を用いてキネマティクス的に 分析したものが比較的多く報告されるようになっ ている[4]、[5]、[6]、[11]、[27]。しかしながら、これまでの サービス技術に関するバイオメカニクス的研究の 多くは、国内レベルや熟練者を対象としたものが ほとんどであり、世界のトップレベル選手を扱っ た研究は極めて少ない。また、これらの研究では 実験的試技によるものが多く、試合中の実践的な 場面で用いられているサービス技術を検討したも のはほとんどみあたらない。競技力向上に役立つ 知見についても充分に提示されているとは言い難 いのが現状である。それゆえ、ポイントの獲得や 試合結果に大きな影響を及ぼすサービス技術に ついて、世界一流男子テニス選手の試合中におけ るポイントを獲得した時のファーストサービス技 術を明らかにし、サービス技術の指導に役立つ知 見を得ることは、実践場面でのサービス技術の指 導をする際に有用になると考える。 本研究の目的は、試合中における世界一流男子 テニス選手のエースを獲得した時のファーストサー ビス動作を、3
次元DLT
法を用いてキネマティク ス的に分析し、先行研究と比較・検討することに よりその特徴を明らかにすること、そして、サービ ス技術の指導に役立つ知見を得ることである。II
方法
Ⅱ.1 分析対象選手2002
年9
月30
日∼10
月6
日に有明コロシアム(東 京) で 開 催 さ れ たAIG Japan Open Tennis
Championships 2002
における男子シングルスに出 場した選手を分析の対象とした。分析対象選手は、 当時の世界ランキング選手、L. Hewitt
(1
位)、J.C.
Ferrero
(6
位)、C. Moya
(10
位)、P. Srichaphan
(18
位)、A. Corretja
(20
位)、N. Lapentti
(27
位)、T.
Dent
(57
位)、J. M. Gambill
(60
位)、N. Massu
(65
位)、K. Kucera
(72
位)、M. Norman
(82
位)、M.
Ancic
(112
位)、M. Larsson
(115
位)の13
名(身長、1.87
±0.04 m
;体重、81.0
±7.83 kg
)であった(Table
1
参照)。なお、全選手右利きであった。 Ⅱ.2 撮影方法2
台の高速度VTR
カメラ(NAC
社製HSV
−500C
3)を観客席最上段に設置し、試合中の選 手を側方および前方から毎秒250
コマ、露出時間1/2000
秒で撮影した。撮影範囲は、4 m
(セン ターマークからサイドライン方向)×4 m
(ベース ライン前後2 m
)×4 m
(高さ)のフォアサイドコー トとした。DLT
法により分析点の3
次元座標値を 算出するため、撮影範囲内の25
ヶ所に9
個のコン トロールポイントの付いたキャリブレーションポー ルを設置し、試合終了後に撮影した。 Ⅱ.3 データ処理 本研究では、①ファーストサービスである、② フォアサイドコートから相手サービスエリア内のセンターへ打球している、③相手選手からノータッ チエースもしくはサービスエースでポイントを獲得 している、という
3
条件を満たしているサービス動 作について、各選手1
試技ずつ選択し、分析した。 得られたVTR
画像から身体各部位(23
点)、ラ ケット(5
点)、ボール(1
点)の計29
点を、ビデオ動 作解析システム(DKH
社製Frame
−DIAS
Ⅱ) を用いてディジタイズした。その後、DLT
法により これらの分析点の3
次元座標値を算出し、得られた座標値は、
Wells and Winter
(10
)の方法を用いて最適遮断周波数(
4
∼19 Hz
)を決定し、Butterworth digital filter
により平滑化した。なお、固定した静止座標系は右手系とし、ベースライ ン方向を
X
軸、ネットに垂直方向をY
軸、鉛直方向 をZ
軸とした。 Ⅱ.4 測定項目と算出法 ①動作時間 サービス動作は、ラケットワークに着目すると、 準備局面、主要局面、終末局面に分けることがで きる。本研究では、ラケットを後方へ引き始めてか ら、ラケットを肩に担いだ後、ラケット先端が最も 低い 位置に達した時点までを準備局面(Back
Swing phase; BS
局面)、BS
完了時からインパクト までを主要局面(Forward Swing phase; FS
局面)、インパクトからラケット先端が最も低い位置に達 し た時点 ま で を 終末 局面(
Follow-Through
phase; FT
局面)とした。サービスの動作時間は、 各局面に要した時間を測定した。 ②インパクトパラメータ 本研究では、インパクトパラメータをインパクト 直前のラケット先端の最大速度、インパクト直後 のボール速度、トスの最大高、インパクト位置と した。 ③身体各部の角度Fig. 1
(a
)∼(h
)は、身体各部の角度定義を示し たものである。Fig. 1
(a
)の手関節角は、手関節から肘関節へ 向かうベクトルと手関節からラケット先端へ向か う手ベクトル(HL
)とのなす角度とし、Fig. 1
(b
) の肘関節角は、肘関節から肩関節へ向かうベクト ルと肘関節 から手関節 へ向かう前腕ベクトル (FA
)とのなす角度とした。本研究では、試合中の 選手の動作を分析したため、手関節の座標系を 定義するためのマーカーを選手に付けられなかっ たので、手関節の掌/背屈、橈/尺屈、前腕部の 回内/外の動作を区別して測定できなかった。し たがって、本研究の手関節角はこれらを統合した ものとして示し、手関節角が減少した場合には屈 曲、増加した場合には伸展と解釈することとした。Fig. 1
(c
)と(d
)に示した肩関節の内転/外転角 と水平内転/外転角の算出にあたっては、まず、 体幹部に移動座標系を設定した。移動座標系は、 両股関節の中心から両肩関節の中心へ向かう体 幹ベクトルをz
軸、左肩関節から右肩関節へ向か うベクトルをx
′軸とし、z
軸とx
′軸の外積からy
軸 を、y
軸とz
軸の外積からx
軸を求めた。そして、体 幹部の移動座標系のxz
平面に投影した肩関節か ら肘関節へ向かう上腕ベクトル(UA
’)と左肩関 節から右肩関節へ向かう肩ベクトル(SL
’)とのな す角度を内転/外転角とし、xy
平面に投影した上 腕ベクトル(UA
’)と肩ベクトル(SL
’)とのなす角 度を水平内転/外転角とした。これらの肩関節の 角度は、内転および水平内転を正の角度とし、外 転および水平外転を負の角度とした。Fig. 1
(e
)の体幹部の右屈/左屈角は、両股関 節の中心から両肩関節の中心へ向かう体幹ベク トルを静止座標系のXZ
平面に投影したベクトル とZ
軸とのなす角度とした。また、Fig. 1
(f
)の体幹本研究では、上肢についてはラケットを持つ利 き手側の、下肢については地面に大きな力を加え、 インパクト方向へ身体全体を推進させる働きのあ る左脚の動作に着目して分析を行った。 Ⅱ.5 データの規格化・平均化 本研究の身体各部の角度データは、各選手の トスアップ開始(非利き手からボールが離れる時 点)からインパクトまでに要した時間を
100
%とし て規格化し、1
%ごとに加算平均した。 部の前屈/後屈角は、体幹ベクトルを静止座標 系のYZ
平面に投影したベクトルとZ
軸とのなす角 度とした。これらの体幹部の角度は、左屈および 後屈を正の角度とし、右屈および前屈を負の角度 とした。Fig. 1
(g
)の股関節角は、股関節から肩関節へ 向かうベクトルと股関節から膝関節へ向かうベク トルとのなす角度とし、Fig. 1
(h
)の膝関節角は、 膝関節から股関節へ向かうベクトルと膝関節から 足関節へ向かうベクトルとのなす角度とした。Fig. 1 Definitions of joint and segment angles
-90° Z軸 + - 90° 0° Z軸 - -90° + 90° 0° (a) Wrist angle (b) Elbow joint angle
0°
90° -90°
+ -
(c) Shoulder joint angle
-90° 90°
0° - +
(d) Shoulder joint angle
(e) Trunk angle (f) Trunk angle
Backward flex.(+)/ Forward flex.(–)
(g) Hip joint angle (h) Knee joint angle 0° 180° 0° 180° 0° 180° 0° 180° HL FA UA’ UA’ SL’ SL’
Left flex.(+)/ Right flex.(–)
III
結果および考察
Ⅲ.1 世界一流男子テニス選手の サービスの動作時間Fig. 2
は、世界一流男子テニス選手13
名のサー ビスの動作時間を平均値で示したものである。こ れをみると、BS
局面では1.10
±0.14
秒、FS
局面で は0.11
±0.01
秒、FT
局面では0.17
±0.03
秒であり、 全動作時間は1.38
±0.14
秒であった。これまでの ところ、サービスの動作時間を検討した先行研究 は、村田ら(2006
)の日本強化指定選手を対象と したものしかみあたらない。それによると、BS
局面 では1.20
±0.11
秒、FS
局面では0.13
±0.01
秒、FT
局面では0.19
±0.04
秒であった。村田ら(2006
) と本研究の結果を比較すると、世界一流男子テニ ス選手の方が、全局面の動作時間は短かった。ま た、日本強化指定男子選手[15]と世界一流男子テ ニス選手を比較すると、世界一流男子テニス選手 の方が、BS
局面とFT
局面の動作時間は短かった。 世界一流男子テニス選手のBS
局面の動作時間 が短かった要因の1
つとして、Fig. 3
に示したバック スウィングの仕方が大きく影響しているものと考え られる。従来では、ラケットを大きく円を描くように してバックスウィングするフルスウィング型が一般 的であったが、近年ではラケットを顔の前を横切っ てバックスウィングするショートスウィング型が認 められている。特に、ショートスウィング型を利用し ている世界一流男子テニス選手の方が、フルスウィ ング型を利用している選手よりもBS
局面に要する 時間が短い傾向にあり、このことが、サービスの動 作時間の短縮化につながっていた要因と考えられ る。なお、Fig. 3
に記載の動作時間は、バックスウィ ング開始からフォロースルー終了までの全動作時 間を示したものであり、ショートスウィング型の方が、 動作時間が短いことがわかる。 世界一流男子テニス選手のFT
局面の動作時 間が短かった。このことは、グラウンド・ストロー ク技術において、現在、主流となっているオープン - 1.4 - 1.2 - 1.0 - 0.8 - 0.6 - 0.4 - 0.2 0.0 0.2Start Toss- up Knee- max. flexion Take- off
Racket downward
Landing Finish
Impact
BS FS FT
Time(s)
Fig.2 Mean time elapsed in each phase of tennis first serve of world-top male tennis players
スタンス打法と共通するものである。すなわち、 オープンスタンス打法は、従来の打法よりも
FT
局 面に要する時間が有意に短く、次のボールに対す る移動時間や準備時間を確保できるため、近年の 展開の早いラリーの応酬場面に対応可能な打 法[8]とされている。また、近年の世界一流テニス選 手においては、ラリーテンポの加速化[21]、ショット 時間の短縮化[24]、グラウンド・ストローク技術の 高速化[8]、[22]が認められている。すなわち、技術レ ベルの優れた選手ほど、打球後に素早く構え、次 のボールに即座に準備し対応することが求められ、 これらの行為が遂行されているといえる。一方、 サービスからサービスリターンを返球するまでの 場面は、グラウンド・ストロークでのラリーの応酬 場面に比べて、より大きな時間的制約を伴うため、 グラウンド・ストローク以上に素早く次の動作へ と移行する必要がある。世界一流男子テニス選手 のFT
局面の動作時間が短かった要因の1
つとして、 グラウンド・ストロークでのラリー以上に、サービ スからサービスリターンを返球するまでの時間的 制約が大きな状況に対して、打球後に即座に次の 準備動作へと移行していたものと考えられる。そ れゆえ、技術レベルの優れた選手のサービスの技 術指導において、「サービス後に素早く次の構えに 入りなさい」という指導・助言やサービスからサー ビスリターン、そして3
打目までを含めた実践練習 に取り組むことは、サービス動作から次に続くプ レーを有利に展開するうえで極めて重要な指導と いえる。 以上のことから、世界一流男子テニス選手の サービスの動作時間は、全局面において短かった。 特に、BS
局面とFT
局面の動作時間が短いことが 明らかとなった。BS
局面ではショートスウィング型 などの多様なバックスウィングを利用していたこと、FT
局面ではサービスからサービスリターンを返球 するまでの時間的制約の大きな状況に対して、打 球後に即座に次の準備動作へと移行していたこと などが、動作時間の短縮化の要因であることが示 唆された。また、サービスの技術指導において、次 の構えに素早く移行するよう指導・助言したり、Fig. 3 Stick pictures in full and abbreviated backswings of the tennis first serve by four players
(Time= 1.288 sec) P. Srichaphan (Time= 1.112 sec) J. M. Gambill (Time= 1.448 sec) K. Kucera (Time= 1.552 sec) C. Moya Impact Impact Start Impact Start Start Impact Start Full back swing Abbreviated back swing
サービスからサービスリターン、そして
3
打目までを 含めた実践練習に取り組ませたりすることは、 サービスからの展開を有利に進める上で重要な指 導ポイントといえよう。 Ⅲ.2 世界一流男子テニス選手の インパクトパラメータTable 1
は、世界一流男子テニス選手13
名の身 体特性とインパクトパラメータについて示したもの である。また、Fig. 4
は、インパクトパラメータの模 式図を示したものである。インパクト直前のラケッ ト先端の最大速度は172.3
±9.9 km/h
、インパク ト直後のボール速度は202.0
±11.6 km/h
であっ た。トスの最大高は3.30
±0.31 m
(身長比、1.77
±0.15
)であった。インパクト位置については、Ⅹ 方向(サイドライン方向)では0.68
±0.37 m
、Y
方 向(ネット方向)では0.78
±0.21 m
、Z
方向(インパ クト高)では2.74
±0.10 m
(身長比、1.47
±0.04
) であった。また、トスの最大高とインパクト高との 差は0.57
±0.31 m
であった。 ラケット先端及 びボ ール の 速度 につ いて、Elliott
ら(1986
)は、国内ランキング選手(身長、 平均1.75 m
;体重、記載なし)のサービス動作を3
次元分析し、それぞれ 平均125.3km/ h
と平均152.6km/ h
であったことを報告している。水谷ら (1992
)は、1992 Japan Open
における世界一流 男子選手(身長、平均1.82 m
;体重、平均75.4
kg
)の試合中のサービス動作を3
次元分析し、そ れ ぞ れ平均130.4 km/ h
と平均165.0 km/ h
で あったことを報告している。Chow
ら(2003
)は、ア トランタオリンピックの試合中における世界一流 男子選手( 身長、1.78
∼1.90 m
;体重、697
∼844N
)のファーストとセカンドのサービス動作を3
次元分析し、ファーストサービスのボール速度は186
∼196 km/ h
であったことを報告している。ま た、Fleisig
ら(2003
)は、シドニーオリンピックの試Subject ranking NationWorld Height Weight
Racket Vel. Ball Vel. Toss height Impact position Toss height (Z(m))
–Impact position (Z(m))
(Pre-impact) (Post-impact) Z X Y Z
(m) (kg) (km/ h) (km/ h) (m)(height/body )(m) (m) (m)(height/ body ) (m)
L. Hewitt 1 AUS 1.80 68 164 202 3.04 1.69 1.01 0.91 2.58 1.43 0.47 J. C. Ferrero 6 ESP 1.83 72 175 198 3.23 1.77 0.80 0.65 2.69 1.47 0.55 C. Moya 10 ESP 1.91 80 158 200 3.12 1.64 0.46 0.54 2.77 1.45 0.35 P. Srichaphan 18 THA 1.85 81 178 214 3.14 1.69 0.56 0.37 2.83 1.53 0.30 A. Corretja 20 ESP 1.80 70 151 181 3.39 1.88 0.43 0.55 2.68 1.49 0.71 N. Lapentti 27 ECU 1.87 84 168 209 3.35 1.79 0.58 0.88 2.76 1.47 0.59 T. Dent 57 USA 1.87 88 183 191 3.26 1.75 0.03 0.70 2.60 1.39 0.66 J. M. Gambill 60 USA 1.90 90 172 215 3.40 1.79 1.08 1.08 2.82 1.48 0.58 N. Massu 65 CHI 1.82 80 183 215 2.75 1.51 0.39 1.01 2.74 1.51 0.01 K. Kucera 72 SVK 1.87 77 170 200 4.03 2.15 0.86 0.96 2.69 1.44 1.34 M. Norman 82 SWE 1.87 89 179 185 3.28 1.75 0.33 0.95 2.66 1.42 0.61 M. Ancic 112 CRO 1.93 81 179 216 3.67 1.90 1.38 0.85 2.87 1.49 0.80 M Larsson 115 SWE 1.93 93 179 200 3.29 1.70 0.90 0.70 2.91 1.51 0.38 Mean 1.87 81.00 172.30 202.02 3.30 1.77 0.68 0.78 2.74 1.47 0.57 S.D. 0.04 7.83 9.88 11.57 0.31 0.15 0.37 0.21 0.10 0.04 0.31
合中における世界一流男子選手(身長、
1.83
±0.08 m
;体重、77.6
±10.0 kg
)のファーストサー ビス動作 を3
次元分析し、ボ ール速度 は平均182.9 km/ h
であったことを報告している。これら の先行研究と本研究の結果を比較すると、本研究 の方が、ラケット先端及びボールの速度は大きかっ た。本研究では、ファーストサービスでエースを獲 得したものを分析していることから、サービスエー スでのポイント獲得は、ラケット先端及びボール の速度が大きかったことが要因の1
つとして考えら れる。 また、ラケット先端及びボールの速度はボール に与える回転量に影響を受ける[1]、[13]、[14]ため、他 の先行研究よりもこれらの速度が大きかった本研 究の世界一流男子テニス選手は、回転量の少ない フラット系のボールを相手コートへ打球していた と考えられる。 さらに、本研究の世界一流男子テニス選手は、 前述したように短い動作時間で大きなラケット先 端及びボールの速度を獲得していた。近年のテニ スのプレーでは、加速化・短縮化・高速化が進ん でおり、このことは、科学技術の発展に伴うラケッ ト性能の向上、スポーツ科学やトレーニングの進 歩などが要因となって、ラケット先端やボールの速 度が増加していると考えられる。しかしながら、前 述したサービス動作時間が短かったことを併せて 鑑みると、近年の世界一流男子テニス選手は、大 きな筋力や筋パワーを発揮しながら打球していた と考えられ、以前よりもサービス動作に求められる 運動負荷は大きく、より高強度の負荷によるトレー ニングが求められていることが推察される。 以上のことから、世界一流男子テニス選手のイ ンパクト直前のラケット先端及びインパクト直後 のボールの速度は大きかった。また、回転量の少 ないフラット系の球種であったことが推察され、こ れらのことが、サービスエースでのポイント獲得に つながっているものと考えられる。さらに、近年の 世界一流男子テニス選手は、短時間でより大きな インパクト直前のラケット先端及びインパクト直 後のボールの速度を獲得していたことから、より大 Toss height 3.30 ± 0.31m < 3.41m (Mizutani et al.1992)3.32m (Nakamura et al.1991)
Impact height 2.74 ± 0.10m > 2.71m (Mizutani et al.1992) 2.54m (Nakamura et al.1991)
Ball vel. 202 ± 11.6km/h > 165.0km/h (Mizutani et al. 1992) Racket vel. 172.3 ± 9.9km/h > 130.4km/h (Mizutani et al. 1992)
0.78 ± 0.21m forward > 0.71m (Mizutani et al. 1992) 0.08m over the net
きな筋力や筋パワーを発揮していたと考えられる。 技術レベルの優れた選手においては、高強度の 負荷によるトレーニングの必要性が示唆される。 トスの最大高は
3.30
±0.31 m
(身長比、1.77
±0.15
)、インパクト高は2.74
±0.10 m
(身長比、1.47
±0.04
)、トスの最大高とインパクト高との差は0.57
±0.31 m
であった(Table 1
、Fig. 4
参照)。ト スの最大高及びインパクト高について、水谷ら (1992
)の報告ではそれぞれ平均3.41 m
(身長比、 平均1.9
)、平均2.71 m
(身長比、平均1.5
)であった。 また、トスの最大高とインパクト高との差は平均0.70 m
であり、インパクト高よりもかなり高いトス をあげていたことを報告している。トスの最大高と インパクト高との差について、中村ら(1991
)は日 本大学トップレベル男子選手(身長、平均1.80 m
; 体重、平均71.3 kg
)を対象に分析している。その 結果、平均0.78 m
であり、身長の大きな選手の サービス動作の特徴として、トスを高く上げて、上 から打ち下ろすタイプの選手が増えてきていること を報告している。Chow
ら(2003
)の報告では、イ ンパクト高は2.74
±0.07 m
であった。これらの先 行研究と本研究の結果を比較すると、本研究の方 が、トスの最大高は低いが、インパクト高は同程 度か僅かに高く、トスの最大高とインパクト高との 差は小さかった。これらのことから、本研究の世 界一流男子テニス選手は、上述した短い動作時 間において、ボールを高くトスせず、そして、大きく 落下させずに高い位置でボールをとらえるサービ ス技術、いわゆる「クイックサービス」を利用して、 より大きな速度のボールを相手コートに打球して いたと考えられる。 中村ら(1991
)は、トスの最大高の獲得は、ボー ルが外的環境に左右されやすくなり、動作のばら つきも大きくなることから、85
∼90
%の高い割合 でサービスの成否に大きく影響することを示唆し ている。本研究では、トスの最大高は低く、トスの 最大高とインパクト高との差は小さかったことから、 上記のようなサービスの成功を妨げる要因から受 ける影響は小さいものと考えられる。したがって、 本研究の世界一流男子テニス選手のサービス動 作は、外的環境から受ける影響や動作のばらつき の少ない正確性の高いサービス動作を遂行してい るものと考えられる。また、サービス技術のインパ クトに関する指導では、「できるだけ高い位置で ボールをとらえる」、「トスの最高点かやや落ちたと ころでボールをとらえる」[19]ように、選手に指導・助 言するのが一般的であるが、本研究の世界一流 男子テニス選手は指導書に即したサービス技術 を実践し、相手選手からサービスエースを獲得し ていたと考えられる。 以上のことから、世界一流男子テニス選手は、 ボールを高くトスせず、そして、大きく落下させずに 高い位置でボールをとらえるサービス技術、いわゆ る「クイックサービス」を利用し、外的環境から受 ける影響や動作のばらつきの少ない正確性の高い サービス動作を遂行しながら、より大きな速度の ボールを相手コートに打球していたといえる。 インパクト位置は、Ⅹ方向(サイドライン方向)で は0.68
±0.37 m
、Y
方向(ネット方向)では0.78
±0.21 m
、Z
方向(インパクト高)では2.74
±0.10 m
(身長比、1.47
±0.04
)であった(Table 1
、Fig. 4
参 照)。インパクト位置は、打球後のボールのバウン ド地点やコースを決定する要素の1
つである[3]、[9]。 通常、センターマーク付近のベースライン上から 相手コートのサービスエリア内のセンターに、ネッ トという障害物に左右されることなく、ボールを直 線的に打つためには、少なくとも約2.70 m
(理論 値)のインパクト高が必要となる。しかし、本研究 が示したインパクト高は、上記の理論値よりも高く、 ベースラインから約0.78m
ネットに近い位置で打球していた。このインパクト位置から放たれたボー ルは、重力や空気抵抗を無視すれば、ネット中央 から約
0.24 m
フォアサイドよりで、高さが約0.92
m
あるネット上を、約1 m
の高さで通過して相手 サービスエリア内のセンターにバウンドしているこ とになる。ボールの直径(約6.541
∼6.858 cm
)を 考慮しても、ネット上を充分な高さ(約0.08 m
上 方)で通過している。Elliott
ら(1986
)の報告では、 インパクト高は2.56 m
で理論値や本研究のものよ りも低く、ラケット及びボールの速度も本研究のも のよりも小さかった。このことは、Elliott
ら(1986
) のものはインパクト高が低いために、ボールに回 転をかけネットという障害物をクリアしなければな らず、その結果として、ラケットやボールの速度が 獲得できなかったと考えられる。 ネット方向におけるインパクト位置(Y
方向)に ついて、水谷ら(1992
)の報告では平均0.71 m
、Chow
ら(2003
)では0.78 m
ネットよりにあった。 これらの先行研究と本研究の結果を比較すると、 本研究の方が、インパクト位置(ネット方向)は同 程度か僅かにネットよりにあった。しかし、先行研 究ではトスアップ時の左足つま先を基準に測定を 行っている。一般的に、選手はフットフォールトを 避けるために、ベースラインから数センチあるいは 数十センチ以上後方に離れた位置からサービス 動作を開始する。それゆえ、ベースラインを基準に 測定している本研究の方がよりネットに近い位置 でボールをとらえていたといえる。 これらのことから、本研究の世界一流男子テニ ス選手は、ネットという障害物に左右されることな く、ボールを直線的に打ち込めるだけの充分なイ ンパクト高とネットにより近いインパクト位置を獲 得していたことが、より大きなボール速度やサービ スエースでのポイント獲得につながっていたと考 えられる。 蝶間林ら(2001
)、大森(2002
)、佐藤ら(2003
)、Schönborn
(2000
)は、男子プロ選手の200km/
h
以上のサービスは、サービスからサービスリター ンまでのボールの到達時間が約0.4
∼0.5
秒であ り、この到達時間はスポーツ選手が示す選択反 応時間の約0.5
∼0.6
秒よりも短いことから、サー ビスリターン側はサービスに適切に反応すること は困難であるとしている。一方、高橋ら(2007
)は 世界一流男子選手のファーストサービスの到達時 間は平均0.7
秒であり、サービスリターン側には充 分に反応できるとし、さらには選手の予測が加わ ることで正確に返球することは可能であると報告し ている。このように、サービスリターンの成否に対 して相反する報告があるが、本研究において相手 選手がボールに触れることが出来なかった、もしく はフレームショットによりネットまでボールを返球 することができなかった要因として、上述したよう に本研究のインパクト直後のボール速度が平均200km/ h
以上であったこと、約0.78m
ネットに近 い位置でボールをとらえていたことに加えて、セン ターマーク付近(センターマークから約0.68 m
フォ アサイドより)から打球していたことが考えられる。 テニスのルール上、サービスの打球位置は、セン ターマークからシングルス・サイドライン間であれ ばどの位置から打球してもよいことになっている。 しかし、世界一流男子テニス選手は、センターマー ク付近から相手コートのセンターへ打球しており、 最短の打球コースを選択していたことが窺える。ま た、ネットにより近い位置でボールをとらえることで、 サービスからサービスリターンまでのボールの到 達距離や到達時間が短縮するため、これらの要 因が重なり合って、相手選手からいわゆる「時間を 奪う」結果となり、サービスエースでのポイント獲 得につながったものと考えられる。したがって、戦 術的な側面から左右方向のインパクト位置を考慮し、ボールの到達距離においてできる限り最短 の打球コースを選択し、その上でネットにより近い 位置でボールをとらえることは、ポイント獲得のた めのサービス技術に重要な要素の
1
つといえる。 以上のことから、世界一流男子テニス選手は、 ネットという障害物に左右されることなく、ボール を直線的に打ち込めるだけの充分なインパクト高 とネットにより近いインパクト位置を獲得しており、 このことが、より大きな速度のボールを打つことや サービスエースでのポイント獲得を可能にしたと いえる。また、センターマーク付近からネットによ り近い位置でボールをとらえていた。このことは、 打球コースやボール速度と併せて鑑みると、サー ビスからサービスリターンまでのボールの到達距 離や到達時間が短縮するため、相手選手から「時 間を奪う」という戦術において、サービスエースで のポイント獲得に有効に作用していたと考えられ る。戦術的側面からサービス技術を捉えた場合、 センターマーク付近からネットにより近い位置で ボールをとらえるよう指導することは、ポイント獲 得のためのサービス技術に重要な要素の1
つとい えよう。 Ⅲ.3 世界一流男子テニス選手の サービス動作の特徴Fig. 5
は、インパクト直後のボール速度が大き かった上位4
選手のスティックピクチャーを示した ものである。また、Fig. 6
は、左上図から手関節角、 P. Srichaphan (214.3km/h) J. M. Gambill (214.7km/h) N. Massu (215.4km/h) M. Ancic (215.7km/h) Impact Impact Impact Impact Start Finish Start Start Start Finish Finish Finish Knee- max. flexionKnee- max. flexion
Knee- max. flexion
Knee- max. flexion Toss-up Toss-up Toss-up Toss-up Take-off Take-off Take-off Take-off
Fig. 6 Changes in the average joint and segment angles from toss-up to impact in the world-top male tennis players
Time(%) Time(%)
Knee max. flexion Take-off
Toss - up Impact -90 -60 -30 0 30 60 90 Left flexion Right flexion -90 -60 -30 0 30 60 90 Backward flexion Forward flexion 0 30 60 90 120 150 180 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Flexion Extension 0 30 60 90 120 150 180 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Flexion Extension -90 -60 -30 0 30 60 90 Adduction Abduction -90 -60 -30 0 30 60 90 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Horizontal adduction Horizontal abduction 0 30 60 90 120 150 180 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Flexion Extension 0 30 60 90 120 150 180 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Flexion Extension (deg) (deg) W ri st a n g le El b o w jo in t a n g le Sh o u ld er jo in t a n g le Sh o u ld er jo in t a n g le Tr an k an g le Tr an k an g le Hi p jo in t an g le K n ee jo in t a n g le
肘関節角、肩関節の内転/外転角と水平内転/ 外転角を、右上図から体幹部の右屈/左屈角と 前屈/後屈角、左股関節角、左膝関節角を、世界 一流男子テニス選手
13
名の平均値と標準偏差で 示したものである。 手関節角は、トスアップ開始からインパクトに かけて屈曲が徐々に増大したが、インパクト直前 で急激な伸展を示した。インパクト時の手関節角 は140.7
±7.9
度であった。肘関節角は、トスアップ 開始からテイクオフにかけて屈曲が徐々に増大し、 その後、インパクトまで急激な伸展を示した。イン パクト時の肘関節角は166.1
±9.2
度であった。肩 関節の内転/外転角は、30
%付近からテイクオフ にかけてニュートラルポジション(0
度)付近を示し たが、その後、インパクトへ向けて急激な外転を 示した。肩関節の水平内転/外転角は、45
%付近 からテイクオフにかけて水平外転を示し、その後、 インパクトまでニュートラルポジション(0
度)付近 を示した。インパクト時の肩関節の内転/外転角 と水平内転/外転角は、それぞれ-26.1
±12.9
度 と6.3
±13.7
度であった。体幹部の右屈/左屈角 は、トスアップ開始からインパクトにかけて徐々に 左屈が増大した。体幹部の前屈/後屈角は、トス アップ開始からテイクオフにかけて後屈を示した が、その後、インパクトへ向けて急激な前屈を示し た。インパクト時の体幹部の右屈/左屈角と前屈 /後屈角は、それぞれ30.5
±5.6
度と-30.0
±7.1
度 であった。左股関節角は、テイクオフ直前に僅か に伸展がみられたが、トスアップ開始からインパク トまでほぼ同程度の伸展位を維持していた。また、 左膝関節角は、トスアップ開始から50
%付近にか けて屈曲が徐々に増大したが、その後、インパクト 直前まで伸展を示した。インパクト時の左股関節 角と左膝関節角は、それぞれ142.7
±9.6
度と155.1
±14.4
度であった。 上肢関節の動作をみると、手関節ではインパク ト直前に急激な屈曲から伸展への動作が認めら れた。手関節のこのような動作は、一般的に「ス ナップ動作」と呼ばれているものである。また、肘 関節では、インパクト直前に急激な伸展の動作が 認 められた。これらの動作 は、友末ら(1982
、1983
)のラケット先端の速度が大きい上級者の報 告と一致していた。このことから、世界一流男子テ ニス選手のインパクト直前の手関節や肘関節の 動作は、ラケット先端やボールの速度の獲得に貢 献していたものと考えられる。さらに、インパクト時 の肘関節は、約14
度とわずかに屈曲位にあり、完 全伸展は認められなかった。肘関節が完全伸展、 あるいは過伸展の状態でインパクトをむかえるこ とは、上肢関節障害を引き起こす要因となるが、世 界一流男子テニス選手においては、適切な動作で インパクトをむかえていたといえる。 体幹部の動作をみると、左屈動作が認められた。 宮西ら(1995
)は、野球の投動作において体幹部 の左屈動作は、肩の鉛直高の獲得とリリース高の 獲得に貢献すると述べている。本研究においても、 宮西ら(1995
)の遠投動作と同程度の左屈動作が 認められた。これらのことから、体幹部の前屈動 作、肩関節の大きな外転動作、肘関節の大きな伸 展動作とともに、体幹部の左屈動作は、インパク ト高獲得に貢献していたものと考えられる。また、 体幹部では、後屈から前屈への動作が認められた。 この動作は、体幹部を後方から垂直にした後、打 球方向へ倒しながらボールをとらえるといった動 作を示している。宮西ら(1995
)の野球の速投動 作における加速期での体幹部の動作ときわめて 類似しており、テニスのサービス動作における体 幹部を打球方向へ倒す動作においても、ラケット 先端やボールの速度に大きく貢献しているものと 考えられる。体幹部の前屈動作については、インパクト位置がネットにより近い選手ほど大きい傾 向にあった。このことから、体幹部の前屈動作は、 ネット方向へのインパクト位置の獲得にも貢献し ているものといえる。 下肢の動作をみると、股関節ではテイクオフ直 前に僅かに伸展の、膝関節ではトスアップ開始か らテイクオフにかけて、屈曲から伸展の動作が認 められた。これらの動作は、地面を強く蹴る動作 を示しているものである。本研究では、ジャンプ動 作の詳細については記載していないが、全選手が インパクト時点を空中でむかえていたことから、股 関節の伸展及び膝関節の屈曲から伸展の動作は、 ジャンプ高及びインパクト高の獲得に貢献してい たものと考えられる。 以上のことから、世界一流男子テニス選手の サービス動作の特徴として、上肢関節の動作にお いては、インパクト直前に、手関節の大きなスナッ プ動作、肘関節の急激な伸展動作及び肩関節の 大きな外転動作が認められた。インパクト時の肘 関節においては軽度の屈曲位(約
14
度)を示した。 また、体幹部の動作においては、トスアップからイ ンパクトにかけて、左屈動作及び後屈から前屈へ の動作が認められた。さらに、下肢関節の動作に おいては、50
%からテイクオフにかけて、股関節の 伸展動作と膝関節の屈曲から伸展の動作が認め られた。IV
まとめ
本研究では、世界一流男子テニス選手13
名を 対象に、試合中のファーストサービス動作を3
次 元分析し、先行研究と比較・検討した。その結果、 以下のような特徴が明らかになった。1
) 世界一流男子テニス選手のサービスの動作 時間は、全局面において短かった。特に、BS
局面とFT
局面の動作時間が短いことが明ら かとなった。BS
局面ではショートスウィング型 などの多様なバックスウィングを利用していた こと、FT
局面ではサービスからサービスリター ンを返球するまでの時間的制約の大きな状 況に対して、打球後に即座に次の準備動作へ と移行していたことなどが、動作時間の短縮 化の要因であることが示唆された。また、サー ビスの技術指導において、次の構えに素早く 移行するよう指導・助言したり、サービスから サービスリターン、そして3
打目までを含めた 実践練習に取り組ませたりすることは、サー ビスからの展開を有利に進める上で重要な 指導ポイントであることが明らかとなった。2
) 世界一流男子テニス選手のインパクト直前 のラケット先端及びインパクト直後のボール の速度は大きかった。また、回転量の少ない フラット系の球種であったことが推察され、 これらのことが、サービスエースでのポイント 獲得につながっているものと考えられる。さら に、近年の世界一流男子テニス選手は、短時 間でより大きなインパクト直前のラケット先端 及びインパクト直後のボールの速度を獲得し ていたことから、より大きな筋力や筋パワー を発揮していたと考えられる。技術レベルの 優れた選手においては、高強度の負荷による トレーニングの必要性が示唆された。3
) 世界一流男子テニス選手は、ボールを高くト スせず、そして、大きく落下させずに高い位置 でボールをとらえるサービス技術、いわゆる「ク イックサービス」を利用し、外的環境から受け る影響や動作のばらつきの少ない正確性の 高いサービス動作を遂行しながら、より大き な速度のボールを相手コートに打球していた。4
) 世界一流男子テニス選手は、ネットという障 害物に左右されることなく、ボールを直線的 に打ち込めるだけの充分なインパクト高と ネットにより近いインパクト位置を獲得して おり、このことが、より大きな速度のボールを 打つことやサービスエースでのポイント獲得 を可能にしたといえる。また、センターマーク 付近からネットにより近い位置でボールをと らえていた。このことは、打球コースやボール 速度と併せて鑑みると、サービスからサービス リターンまでのボールの到達距離や到達時 間が短縮するため、相手選手から「時間を奪 う」という戦術において、サービスエースでの ポイント獲得に有効に作用していたと考えら れる。戦術的側面からサービス技術を捉えた 場合、センターマーク付近からネットにより近 い位置でボールをとらえるよう指導することは、 ポイント獲得のためのサービス技術に重要 な要素の1
つであることが明らかとなった。5
) 世界一流男子テニス選手のサービス動作の 特徴として、上肢関節の動作においては、イ ンパクト直前に、手関節の大きなスナップ動 作、肘関節の急激な伸展動作及び肩関節の 大きな外転動作が認められた。インパクト時 の肘関節においては軽度の屈曲位(約14
度) を示した。また、体幹部の動作においては、ト スアップからインパクトにかけて、左屈動作 及び後屈から前屈への動作が認められた。さ らに、下肢関節動作においては、50
%からテ イクオフにかけて、股関節の伸展動作と膝関 節の屈曲から伸展の動作が認められた。 参考文献 [1] 浅野敏郎,佐藤邦彦,浜野博行,原肇(2007)/ テニス・スウィングの解析と定量評価.精密工学会誌 73(2):281-285 [2] 蝶間林利男,佐藤政廣,勝田茂(2001)/ 科学の目で見たテニスレッスン②/ ベースボール・マガジン社,東京:22-27[3] Chow JW, Carlton LG, Lim YT, Chae WS,
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