• 検索結果がありません。

Key words : elderly, influenza vaccine

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Key words : elderly, influenza vaccine"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

358

高齢 者 にお け るイ ンフル エ ンザ ワ クチ ンの抗体 産 生 能 の検 討

名古屋市厚生院内科 山 腰 雅 宏 鈴 木 幹 三 山 本 俊 信 山 本 俊 幸 名古屋市衛生研究所 後 藤 則 子 中 北 隆 名古屋市立大学第一 内科 山 田 保 夫 伊 藤 誠 (平成9年10月15日 受付) (平成9年12月24日 受理)

Key words : elderly, influenza vaccine

要 旨 高 齢 者 の イ ン フ ル エ ン ザ ワ ク チ ン に よ る 抗 体 産 生 能 を調 べ る た め に成 人 接 種 例 と比 較 し検 討 を行 っ た. 対 象 は名 古 屋 市 厚 生 院 の 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム に 入 所 中 の 高 齢 者31名(男 性11名,女 性20名,平 均 年 齢 82.2歳)お よ び 健 康 成 人23名(女 性23名,平 均 年 齢40.7歳)で あ る.方 法 は1995年 度 市 販 の 不 活 化 ワ ク チ ン を用 い,1995年10月 下 旬 か ら12月 上 旬 に か け て0.5mlを4週 間 間 隔 で2回 皮 下 接 種 し た.血 清 抗 体 価 は接 種 前,2回 目接 種2週 間 後,3カ 月 後 でHI抗 体 価 を 測 定 し た.

高 齢 者 で のHI抗 体 価 の4倍 以 上 の上 昇 率 は,Aソ 連 型(H1N1)93.5%,A香 港 型(H3N2)100%, B型74.2%で,成 人 例 と比 べ 有 意 差 は な く,高 齢 者 に お い て も ワ ク チ ン接 種 に よ る抗 体 産 生 能 は良 好 で あ っ た.ま た128倍 以 上 の 抗 体 保 有 率 も ワ ク チ ン 接 種 に よ り著 明 に増 加 し,接 種3カ 月 後 まで 持 続 して お り,高 齢 者 に お い て イ ン フル エ ン ザ ワ ク チ ン接 種 に よ り,感 染 防 御 が 期 待 で き る こ とが 明 らか に な っ た. 序 文 イ ン フル エ ン ザ は毎 年 流 行 を繰 り返 し,そ の 度 に多 数 の 患 者 が 発 生 して い る.イ ン フル エ ンザ の 流 行 期 に は,高 齢 者 で の 死 亡 率 が 著 し く増 加 し1)2),そ の た め超 過 死 亡 が み られ て い る.近 年, 欧 米 諸 国 で は,65歳 以 上 の 高 齢 者,慢 性 の 肺 疾 患, 心 疾 患 を持 つ 成 人,小 児 な どのハ イ リス ク グ ル ー プ に対 して,イ ン フル エ ン ザ ワ クチ ン接 種 を積 極 的 に勧 め て い る.一 方,日 本 の ワ クチ ン接 種 の 現 状 は,1994年10月 予 防 接 種 法 が 改 正 さ れ,イ ン フ ル エ ンザ ワ ク チ ンが 任 意 接 種 に な った こ とや,ワ ク チ ンの 有 効 性 が正 し く認 識 され て い な い こ とな どか ら,ワ クチ ン接 種 率 は著 し く減 少 した3)4).イ ン フル エ ン ザ の 予 防 に は,現 時 点 で は ワ ク チ ン接 種 が 最 も有 効 な対 策 で あ る. 高齢 者 の イ ン フル エ ン ザ ワ ク チ ンの有 効 性 を調 べ るた め に,イ ン フル エ ンザ の 予 防 に 重 要 な役 割 を担 う抗 体 産 生 能 の 面 か ら,健 康 成 人 接 種 例 と比 較 し検 討 を行 っ た. 対 象 お よび 方 法 1.対 象 対 象 は名 古 屋 市 厚 生 院 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム に 入 所 中 の 高 齢 者31名(男 性11名,女 性20名,67歳 ∼96 歳,平 均 年 齢82.2歳)お よび 健 康 成 人23名(22歳 ∼54歳 ,全 例 女性,平 均 年 齢40.7歳)で あ る.こ れ らの 対 象 者 は,ワ ク チ ン接 種 に あ た り本 人 か ら 同 意 が 得 られ た 入 所 者 お よび 当 院 職 員 で,全 例 に 別刷 請 求 先:(〒464-0071)名 古 屋市 千 種 区若 水1-2 -23 名 古 屋 市立 東 市 民病 院 内科 山腰 雅宏 感染症学雑誌 第72巻 第4号

(2)

高 齢者 の イ ン フルエ ンザ ワ クチ ン 359

Fig. lA Change of HAI antibody titer before and after inactivated influenza vaccination (A/ Yamagata/32/89) (HINI) elderly % with≧4-fold rise 935% adult % with≧4-fold rise 100% ワ ク チ ン 接 種 歴 は 認 め な か っ た.ま た 高 齢 者 の 全 例 に 基 礎 疾 患 が み ら れ,脳 血 管 障 害 後 遺 症 が17名 で 最 も 多 く,つ い で 大 腿 骨 骨 折 後 遺 症9名,心 疾 患7名,呼 吸 器 疾 患5名 の 順 で あ っ た. 2.方 法 イ ン フ ル エ ン ザ ワ ク チ ン は1995年 度 市 販 の イ ン フ ル エ ン ザHAワ ク チ ン(R)(デ ン カ 生 研)を 使 用 し,ワ ク チ ン1mlにA/山 形/32/89(HINI)(200 CCA/ml相 当 量),A/北 九 州/159/93(H3N2)(400 CCA/ml相 当 量),B/三 重/1/93(250CCA/ml相 当 量)を 含 有 す る不 活 化 ワ ク チ ン で あ る. 接 種 方 法 は,1995年10月 下 旬 か ら12月 上 旬 に か け て,両 群 と も に ワ ク チ ン0.5mlを4週 間 間 隔 で 2回 接 種 し た.血 清 抗 体 価 は,接 種 前,2回 目 接 種2週 間 後,3カ 月 後 で,ワ ク チ ン に 含 ま れ る ウ イ ル ス 株 を 抗 原 と し て,HI抗 体 価 をSRL社 に 依 頼 し 測 定 し た.ワ ク チ ン 接 種 前 後 のHI抗 体 価 に つ い て,高 齢 者 群 と健 康 成 人 群 問 で 比 較 し,検 討 を 行 っ た. HI抗 体 の 測 定 方 法 は,血 清 を レ セ プ タ ー 破 壊 酵 素 で 処 理 し た 後,マ イ ク ロ タ イ タ ー 法 で 各 抗 原 と 反 応 さ せ た.抗 原 は ワ ク チ ン株 と 同 一 の ウ イ ル ス 株 を 用 い た. 統 計 学 的 検 討 は,x2あ る い はMann-Whitney のU検 定 を 用 い,p<0.05を 有 意 差 あ り と し た.平 均 抗 体 価 に お い て は,32倍 未 満 の 抗 体 価 は1倍 と し て 計 算 し た. 成 績 1. 抗 体 応 答 1) 4倍 以 上 の 抗 体 上 昇 率 ワ ク チ ン 接 種 前,2回 目 接 種2週 間 後 で のA/ 山 形/32/89(H1N1)に 対 す るHI抗 体 価 の 推 移 に つ い て 検 討 し た(Fig.1A).ワ ク チ ン 接 種 後4倍 以 上 の 抗 体 価 の 上 昇 を 示 し た 症 例 は,高 齢 者 群 で は29/31(93.5%),成 人 群 で は23/23(100%)で, 成 人 群 に お い て や や 高 率 で あ っ た が 有 意 差 は な く,と も に 良 好 な 反 応 を 示 し た. A/北 九 州/159/93(H3N2)に つ い て,4倍 以 上 の 抗 体 上 昇 を 示 し た 症 例 は,高 齢 者 群 で は31/ 31(100%),成 人 群 で は23/23(100%)で,A/山 形/32/89(H1N1)と 同 様 に 良 好 な 反 応 を 示 し た (Fig.1B). B/三 重/1/93に お い て4倍 以 上 の 抗 体 上 昇 を 認 め た の は,高 齢 者 群23/31(74.2%),成 人 群17/ 23(73.9%)で,A/山 形/32/89(HIN1),A/北 九 州/159/93(H3N2)に 比 べ,両 群 と も に 低 率 で あ っ 平成10年4月20日

(3)

3〓 lLi腰 雅 宏 他 Fig. 1B (A/Kitakyusyu/159/93) (H3N2) elderly % with≧4-fold rise 100% adult % with≧4-fold rise 100% Fig. 1C (B/Mie/1/93) elderly % with≧4-fold rise 74.2% adult % with≧4-fold rise 73.990 た(Fig.1C). 2)平 均 抗 体 価 ワ ク チ ン 接 種 前 後 に お け るA/山 形/32/89(Hl N1)の 平 均 抗 体 価 の 推 移 は,ワ ク チ ン 接 種 前 は 高 齢 者 群10.0,成 人 群25.1で,ワ ク チ ン 接 種 に よ り 高 齢 者 群,成 人 群 そ れ ぞ れ409.4,1,120.9で,と も に 明 ら か な 上 昇 を認 め た.ワ ク チ ン 接 種3カ 月 後 で は 高 齢 者 群306.1,成 人 群1,024.0で,2回 目 接 種2週 間 後 に 比 べ て そ れ ぞ れ 若 干 の 低 下 を 認 め た(Fig.2A)。 A/北 九 州/159/93(H3N2)に つ い て は,ワ ク チ ン接 種 前 は 高 齢 者 群2.5,成 人 群12 .2で,ワ ク チ ン 接 種 に よ り高 齢 者 群,成 人 群 そ れ ぞ れ468.2,880.8 で,と も に 明 ら か な 上 昇 を 認 め た.ワ ク チ ン 接 種 感 染 症 学 雑誌 第72巻 第4号

(4)

高齢 者 の イ ン フル エ ンザ ワ クチ ン 361

Fig. 2A Geometric mean titers (GMT) of HAI antibodies before and 2 weeks and 3 months after vaccination (A/Yamagata/32/89) (H1N1)

Fig. 2B (A/Kitakyusyu/159/93) (H3N2) Fig. 2C (B/Mie/1/93) 3カ 月 後 で は 高 齢 者 群286.3,成 人 群735.1で,2 回 目 接 種2週 間 後 に比 べ て そ れ ぞ れ 若 干 の 低 下 を 認 め た(Fig.2B). B/三 重/1/93に つ い て は,ワ ク チ ン 接 種 前 は 高 齢 者 群70.0,成 人 群45.9で,ワ ク チ ン接 種 に よ り 高 齢 者 群,成 人 群 そ れ ぞ れ547.5,651.6で,と も に 明 ら か な 上 昇 を 認 め た.3カ 月 後 で は 高 齢 者 群 382.9で,2回 目 接 種2週 間 後 に 比 べ て 抗 体 価 の 若 干 の 低 下 が み ら れ た が,成 人 群 で は735.1で,さ ら に 抗 体 価 の 上 昇 が み ら れ た(Fig.2C). 平 成10年4月20日

(5)

362 山腰 雅宏 他

Table 1 Comparison of number of serum HAI titers•†128-fold before and

2 weeks and 3 months after vaccination between elderly and adult

No comparisons between elderly and adult gave significant differences.

また,高 齢 者 群 と成 人 群 にお け る平 均 抗 体 価 の 比 較 で は,ワ クチ ン接 種 後 い ず れ の株 にお い て も 成 人 群 が 優 っ て い た. 3)128倍 以 上 の 抗 体 保 有 率 128倍 以 上 の抗 体 保 有 率 に つ い て は(Table1), A/山 形/32/89(HIN1)に お い て ワ ク チ ン接 種 前 で 高 齢 者,成 人 そ れ ぞれ16.1%,21.7%で あ った. ワ ク チ ン接 種2週 後 の保 有 率 は それ ぞ れ96.8%, 100%と 上 昇 して お り,3カ 月後 は90.3%と100% で あ っ た.ワ ク チ ン接 種 に よ り128倍 以 上 の 抗 体 保 有 率 は,イ ン フル エ ンザ 流行 期 の終 わ りにお い て も,高 齢 者 群 で90%以 上,成 人 群 で100%を 示 して い た. A/北 九 州/159/93(H3N2)で は ワ ク チ ン接 種 前 で 高 齢 者 群,成 人 群 それ ぞ れ9.7%,21.7%で あ っ た.ワ ク チ ン 接 種2週 後 で は そ れ ぞ れ87.1%, 95.7%と 上 昇 して いた が,3カ 月 後 で は77.4%と 95.7%で,高 齢 者 群 にお い て低 下 傾 向 が み られ た. B/三 重/1/93で は,接 種 前 で高 齢 者 群51.6%,成 人 群47.1%で,接 種 前 の抗 体 保 有 率 は 最 も高 値 を 示 した.ワ ク チ ン接 種2週 後 で 抗 体 保 有 率 は高 齢 者 群,成 人 群 そ れ ぞ れ96.8%,100%で,3カ 月 後 で は93.5%と100%で,128倍 以 上 の抗 体 保 有 率 は 3カ 月 後 も高齢 者 群 で90%以 上,成 人 群 で100%を 示 して い た. 2.ワ クチ ン接 種 に よ る副 反 応 ワ ク チ ン接 種 した 高 齢 者3名 お よ び成 人2名 に 局 所 痛 の副 反 応 が み られ た が,い ず れ も軽 度 で翌 日 に は消 失 した. 考 察 高 齢 者 は加 齢 に伴 う免 疫 能 の低 下,さ ら に慢 性 の 基 礎 疾 患 の 合 併 よ り,若 年 者 に比 べ て感 染 症 に 対 す る抵 抗 力 は弱 い.高 齢 者 が イ ン フル エ ンザ に 罹 患 す る と肺 炎 を併 発 しや す く,ま た 肺 気 腫 症 な どの慢 性 呼 吸 器 疾 患 を有 し て い る場 合 に は重 篤 化 しや す い.当 院 老 人 ホ ー ム に お い て も,こ れ まで に何 度 もイ ン フ ル エ ンザ の流 行 を経 験 して きた. 1995年1月 か ら3月 に は,特 別 養 護 老 人 ホー ム(定 床300名)で 高 齢 者 イ ン フル エ ンザ の 流 行 が み られ た5).特 に長 期 臥 床 状 態 の 入 所 者 が 多 い 階 で は,84 名 中23名 に イ ン フ ル エ ンザA(H3N2)が 流 行 し, そ の うち14名 が 入 院 し,2名 に肺 炎 を合 併 して い た.こ の よ う に集 団生 活 を営 む老 人 ホ ー ム にお い て は,ひ とた び イ ン フル エ ン ザ が持 ち込 まれ る と 大 流 行 を 引 き起 こす 可 能 性 が 高 い た め,高 齢 者 に お い て イ ン フル エ ンザ の 予 防 対 策 は極 め て重 要 で あ る と考 え られ る.そ こで 高 齢 者 を対 象 に,イ ン フル エ ンザ ワ ク チ ンに対 す る抗 体 産 生 能 に つ い て 検 討 した. 今 回検 討 した31名 の 高 齢 者 に お い て,イ ン フル エ ン ザ ワ クチ ン接 種 に よ り4倍 以 上 の 抗 体 上 昇 率 を示 した の は,A/山 形,A/北 九 州,B/三 重 そ れ ぞ れ93.5%,100%,74.2%で,い ず れ の 株 に お い て も,成 人 群 と比 較 して 有 意 な差 は な く良 好 で あ っ た.し か しB型 に お け る4倍 以 上 の 抗 体 上 昇 率 は,高 齢 者 群,成 人 群 そ れ ぞれ74.2%,73.9%で, 抗 体 上 昇 率 にお い て 高 齢 者 群,成 人 群 と もに90% 以 上 を示 したA型 の場 合 と比 較 して,低 い傾 向 が 感 染 症学 雑 誌 第72巻 第4号

(6)

高 齢 者 の イ ン フル エ ンザ ワク チ ン 363 み られ た.イ ン フル エ ン ザ ワ クチ ン の予 防効 果 は, B型 で はA型 に比 べ て 効 果 が 劣 る と い う報 告 が み られ る が6),こ れ は今 回 の 成 績 を含 め,B型 に お け る抗 体 上 昇 率 の低 値 が 影 響 して い る可 能 性 が 考 え られ る.一 方 武 内 ら は,ワ ク チ ン接 種 に よ りB 型 に対 す る十 分 な抗 体 価 が 得 られ て も,B型 イ ン フル エ ンザ の 流 行 が み られ た と報 告 し て お り7),B 型 抗 体 産 生 能 と予 防効 果 との 関係 につ い て は 今 後 の 検 討 課 題 で あ る と思 わ れ る. イ ン フル エ ンザ の 感 染 防 御 が 可 能 な血 中 抗 体 レ ベ ル は,一 般 に ワ クチ ン株 と流 行 イ ン フ ル エ ンザ 株 と の 抗 原 性 に 大 き な 違 い が 認 め られ な い か ぎ り,128倍 以 上 と報 告 され て い る8)9).今回 の 結 果 で は128倍 以 上 の 抗 体 保 有 率 は,ワ ク チ ン接 種2週 間 後 で 高 齢 者 群 で はA/山 形96.8%,A/北 九 州 87.1%,B/三 重96.8%,成 人 群 で はA/山 形100%, A/北 九 州95.7%,B/三 重100%ま で 上 昇 が み られ た.接 種3カ 月 後 に お い て は高 齢 者 のA/北 九 州 で77.4%と や や 低 下 して い た が,そ の 他 の株 で は 90%以 上 を示 し て お り,3カ 月 後 ま で128倍 以 上 の 抗 体 保 有 率 は持 続 し て い た.高 齢 者 のA/北 九 州 に お い て も,9.7%と い う接 種 前 の128倍 以 上 の 抗 体 保 有 率 の 低 値 を考 慮 に入 れ る と,接 種3カ 月 後 の77.4%と い う保 有 率 は十 分 に評 価 で き る数 値 で あ る と思 わ れ る.以 上 ワ ク チ ン接 種 に よ り,感 染 防 御 が 可 能 な血 中 抗 体 レベ ル が3カ 月後 まで 持 続 して お り,高 齢 者 に お い て もワ クチ ン接 種 に よ り, イ ン フル エ ンザ 流 行 期 に お け る感 染 防御 が 期 待 で き る と思 わ れ る. 平 均 抗 体 価 の 面 か らの検 討 で は,高 齢 者 に お け る ワ ク チ ン接 種 後 の平 均 抗 体 価 は,成 人 群 と比 較 して 有 意 に低 い値 を 示 して い た.し か し今 回 の 結 果 を み る限 りで は,高 齢 者 の抗 体 産 生 能 は,成 人 群 に比 べ て 平 均 抗 体 価 と して は低 値 で あ っ た が, 128倍 以 上 の 抗 体 保 有 率 で は差 が な か った.し た が っ て感 染 予 防 に 十 分 な抗 体 価 が 得 られ た と考 え て い る. イ ン フル エ ンザ ワ ク チ ン は,こ れ まで 特 記 す べ き副 作 用 の報 告 は極 め て少 な く,最 も安 全 な ワ ク チ ンの 一 つ で あ り7)10),有効 性 に つ い て も科 学 的 に 評 価 し うる 方 法 を用 い た 臨 床 的 検 討 に よ り証 明 さ れ て い る11)∼13).ワクチ ン接 種 に よ り高 齢 者 にお け る イ ン フル エ ンザ の 被 害 が 小 さ くな り,医 療 費 削 減 につ なが る こ とが 報 告 され て い る14)15).今回 の 研 究 で は,臨 床 的 に ワ ク チ ン効 果 を確 認 で き な か っ た が,高 齢 者 にお い て もイ ン フル エ ンザ ワ ク チ ン接 種 に よ り,感 染 予 防 に必 要 な抗 体 価 を産 生 で き る と考 え られ る.し た が って イ ン フ ル エ ンザ の 流 行 期 前 に は,高 齢 者 に対 して ワ ク チ ン接 種 を 積 極 的 に勧 め て い く必 要 が あ る.今 後 高齢 者 に お け る イ ン フ ル エ ンザ の予 防対 策 は,老 人 ホ ー ム の よ う な施 設 で は急 務 で あ り,早 急 に検 討 して い く 必 要 が あ る と思 わ れ た. 本論文の要旨は第39回日本感染症学会中日本地方会総会 (1996年11月,奈 良)に おいて発表 した. 文 献

1) Barker WH, Mullooly JP : Pneumonia and influenza deaths during epidemics. Implications for prevention. Arch Intern Med 1982 ; 142: 85 -89 .

2) Baker WH, Mullooly JP : Impact of epidemic type A influenza in a defined adult population. Am J Epidemiol 1980 ; 112: 798-811.

3) Hirota Y, Kaji M : Scepticism about influenza vaccine efficacy in Japan. Lancet 1994 ; 344: 408 -409 .

4) Hirota Y, Fedson DS, Kaji M : Japan lagging in influenza jabs. Nature 1996 ; 308: 18.

5) 山 腰 雅 宏, 鈴 木 幹 三, 山 本 俊 信, 他: 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム で 流 行 した 高 齢 者 イ ン フ ル エ ン ザA(H3 N2)の 検 討. 感 染 症 誌1996:70,449-455. 6) 加 地 正 郎, 薩 田 清 明: イ ン フ ル エ ン ザ の 予 防 効 果. 臨 床 と研 究1987;64:136-146. 7) 武 内 可 尚: イ ン フ ル エ ン ワ ク チ ン― 臨 床 の 立 場 か ら. 臨 床 と ウ イ ル ス1991;19:221-228. 8) 松 岡 伊 津 夫, 松 岡 明 子, 中 村 和 幸, 南 谷 幹 夫: 松 本 市 に お け る イ ン フ ル エ ン ザ(1986-87) の 疫 学 的 調 査― 流 行 株 と ワ ク チ ン 株 が 一 致. 日 医 新 報 1987 ; 3256 : 28-34. 9)芝 田 充 男, 阿 部 明 也, 斉 藤 由 紀, 他: イ ン フ ル エ ン ザ ワ ク チ ン の 抗 体 産 生 の 予 防 効 果.日 医 新 報 1981 ; 3006 : 43-47. 10) 加 地 正 郎, 加 地 由 実: 現 在 の 予 防 接 種 ― 今 こ こ が 知 り た い. 小 児 科 臨 床1990;43:2516-2521.

11) Sugaya N, Nerome K, Ishida M, Matsumoto M, Mitamura K, Nirasawa M : Efficacy of inactivated vaccine in preventing antigenically drifted influenza type A and well-matched type B. JAMA 1994 ; 272: 1122-1126.

(7)

364 山腰 雅宏 他 12) 中 園 直 樹, 野 呂 新 一, 藤 井 新 一, 林 健 治: 高 齢 患

者 へ の イ ン フ ル エ ン ザ ワ ク チ ン 接 種 の 試 み と そ の 応 用. 臨 床 と ウ イ ル ス1990; 18; 377-384.

13) Govaert TME, Thijs CTMCN, Maurel N, Sprenger MJW, Dinant GJ, Knottnerus JA : The efficacy of influenza vaccination in elderly individuals. A randomized double-blind placebo-controlled trial. JAMA 1994 ; 272 : 1661

-1665 .

14) Nichol KL, Margolis KL, Wuorenma J, Von-Sternberg T : The efficacy and cost effectiveness of vaccination against influenza among elderly persons living in the community. N Engl J Med 1994 ; 331 : 778-784.

15) Foster DA, Talsma A, Furumoto Dawason A et al . : Influenza vaccine effectiveness in preventing hospitalization for pneumonia in the elderly. Am J Epidemiol 1992 ; 136 296-307.

Antibody Response of Inactivated Influenza Vaccine in the Elderly

Masahiro YAMAKOSHI1), Kanzou SUZUKI1), Toshinobu YAMAMOTO1) , Toshiyuki YAMAMOTO1), Takasi NAKAKITA2), Noriko GOTO2),

Yasuo YAMADA3) & Makoto ITOH3)

1) Nagoyashi -Koseiin Geriatric Hospital 2) Nagoya City Public Health Research Institute

3) First Department of Internal Medicine, Nagoya City University Medical School

The antibody responses of 31 elderly persons (11 males and 20 females , mean 82.2 years) and 23 adults (mean 40.7 years) to inactivated influenza vaccine were studied . Participants were given twice the influenza vaccine containing A/Yamagata/32/89, A/Kitakyusyu/159/93, and B/ Mie/1/93. Serum specimens were obtained before vaccination , and 2 weeks and 3 months after the second vaccination. Antibody to influenza was determined by hemagglutination inhibition test (HI).

The rates of fourfold or greater increases of HI antibody agaisnt the A/Yamagata , A/ Kitakyusyu, and B/Mie were 96.8%, 100%, and 74.2%, and there was no significant difference of the rates of fourfold or greater increases between elderly persons and adults . The rates of possession of HI antibody more than 128 in titer after vaccination were significantly higher than those of HI antibody before vaccination, and were maintained at high levels up to three months after the second vaccination.

These results suggest that antibody response to the inactivated influenza vaccine is satisfac-tory in the elderly.

Fig.  lA  Change  of  HAI  antibody  titer  before  and  after  inactivated  influenza  vaccination  (A/
Fig.  2A  Geometric  mean  titers  (GMT)  of  HAI  antibodies  before  and  2  weeks and  3  months  after  vaccination  (A/Yamagata/32/89)  (H1N1)
Table  1  Comparison  of  number  of  serum  HAI  titers•†128-fold  before  and

参照

関連したドキュメント

In this work we give definitions of the notions of superior limit and inferior limit of a real distribution of n variables at a point of its domain and study some properties of

We describe a generalisation of the Fontaine- Wintenberger theory of the “field of norms” functor to local fields with imperfect residue field, generalising work of Abrashkin for

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

Safety and immunogenicity of a high-dose quadrivalent influenza vaccine administered concomitantly with a third dose of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine in adults aged ≥65 years:

We study infinite words coding an orbit under an exchange of three intervals which have full complexity C (n) = 2n + 1 for all n ∈ N (non-degenerate 3iet words). In terms of

The theory of log-links and log-shells, both of which are closely related to the lo- cal units of number fields under consideration (Section 5, Section 12), together with the

We relate group-theoretic constructions (´ etale-like objects) and Frobenioid-theoretic constructions (Frobenius-like objects) by transforming them into mono-theta environments (and

The theory of log-links and log-shells, which arise from the local units of number fields under consideration (Section 5), together with the Kummer theory that relates