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低線量率放射線による放射線抵抗性の獲得─マウスにおける造血機能とDNA損傷を指標として─

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Academic year: 2021

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主要な研究成果

背 景

あらかじめ低線量の放射線を照射されたマウスが放射線に対する抵抗性を獲得し、その後高線量の放射線を 受けた場合に事前照射を受けていないマウスよりも生き残る割合が高くなる現象が知られている。この現象は 「放射線適応応答」と呼ばれており、低線量放射線に特有な生体応答の一つとして注目されている。しかし、 これまでに報告されている適応応答はいずれも事前照射の時間が短く(長くても十数時間)、わずかずつの放 射線を長期にわたって被ばくする場合(低線量率照射)にも同様な適応応答が生じるかどうか、また生じると すればそのメカニズムは何か、を明らかにすることが強く求められていた。

目 的

放射線の影響を最も敏感に受ける造血機能に注目し、①造血幹細胞* 1の放射線抵抗性の獲得、② DNA 損傷 の低減効果、および③脾臓における抗酸化物質の増加のそれぞれについて測定・評価を行うことにより、低線 量率放射線の長期照射で造血機能障害が緩和するという適応応答の確認と機構を解明する。

主な成果

1.1.2 mGy/hr の低線量率ガンマ線を種々の期間照射したマウスに、高線量を照射して生き残る造血幹細胞の 数を調べることで抵抗性を測定すると、照射期間が約 30 日および 60 日の時点で明瞭な抵抗性を示し、低線 量率放射線の長期照射により照射日数に依存して放射線適応応答を生じることが明らかになった(図 1)。 2.低線量率照射日数が約 30 日の条件で、マウスにそれぞれ 0.5、1 あるいは 2 Gy の放射線を照射し、脾臓細胞 に誘発される DNA 損傷量を測定した結果、低線量率放射線を照射しないマウスに比べて損傷量が低減す ることがわかった。このことは、低線量率放射線による DNA 損傷量の低減が造血幹細胞で見られた放射 線適応応答の機構に関わっていることを示唆している(図 2)。 3.DNA 損傷量を低減させる原因として考えられる抗酸化物質に注目すると、低線量率照射日数が約 30 日の 条件において増加する特性が認められた(図 3)。 以上の結果より、高線量の放射線が造血系に障害を与えて死にいたる過程のさまざまな段階において、抗酸 化物質の増加、DNA 損傷の低減、および造血幹細胞の生存という生体防御の機構が増強され個体死を抑制に 働くことが明らかとなった。

今後の展開

低線量率放射線による造血細胞の抵抗性獲得の背景に関与している分子・遺伝子を特定し、ヒトでも同様の 現象が起こっていることを検証する。 主担当者 原子力技術研究所 低線量放射線研究センター 研究員 大塚 健介 原子力技術研究所 低線量放射線研究センター 主任研究員 野村 崇治 関連報告書 「マウス組織細胞において低線量・低線量率放射線が誘発する DNA 損傷の解析」電力中央 研究所報告: G03012(2004 年 4 月) 「低線量率放射線の長期照射による適応応答─内因性脾コロニーおよび DNA 損傷を指標と して─」電力中央研究所報告: L04003(2005 年) 「II 型糖尿病モデルマウスにおける低線量率放射線照射の膵臓抗酸化機能増強効果」電力中 央研究所報告: L04004(2005 年) 40

低線量率放射線による放射線抵抗性の獲得

─マウスにおける造血機能とDNA損傷を指標として─

* 1 :赤血球、白血球、リンパ球など血液中に存在する血球を作り出すおおもとの細胞。造血幹細胞が障害を受けるこ とにより、造血機能が損なわれて死に至る

(2)

C.エネルギーと環境の調和

41 0 5 10 15 20 25 30 35 非照射 1.2mGy/ hr

Mn-SOD 活性(unit/mg protein)

個体死

造血機能障害

活性酸素

放射線

造血幹細胞死

【放射線が造血系へ及ぼす傷害】

緑の矢印に示す適応応答により傷害が抑制される。

DNA 損傷

DNA 損傷の低減

造血幹細胞の

抵抗性獲得

事前照射なし 事前照射あり

抗酸化物質の増加

図1 低線量率照射 によって変 動する造 血幹細胞の抵抗性 ( 上 )縦 軸は低 線 量 率 照 射をしないマウスに対する 低 線 量 率 照 射 マウスの 造血幹細胞数の比を表す。 (下)照射期間が 60 日の 脾 臓 写 真 の 例 。写 真 の 白い斑 点が多いほど造血 幹細胞数が多いことを示す。 事 前 照 射によって造血能 が高まる一例。 図2 低線量率事前 照射によるDNA損傷 量の低減 放射線の量によって DNA 損傷は増加するが、あらか じめ低 線 量 率で照 射する ことによって 全 体 の損傷 量は低減された。 図3 低線量率照射 による抗酸化物質の 増加 1.2mGy/hrで0.6Gy照射す ると抗酸化物質量が増加し た。

参照

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