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改正民法543条が担う課題 利用統計を見る

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著者

福田 清明

著者別名

FUKUDA Kiyoaki

雑誌名

東洋法学

61

3

ページ

333-350

発行年

2018-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00009684/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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《 研究ノート 》

改正民法543条が担う課題

福田 清明

はじめに  改正民法(以後、改正法と表記する)543条は、「債権者の責めに帰すべき事 由による場合」という見出しのもとで、「債務の不履行が債権者の責めに帰す べき事由によるものであるときは、債権者は、前二条[「541条の催告による解 除」と「542条の催告によらない解除」]の規定による契約の解除をすることが できない」と規定する。新設条文であり、現行民法(以後、現行法と表記す る)の条文の一部修正ではない。しかしながら、この新設条文は、一方で現行 法の規律を改正法においても維持するために存在する面を持つ。他方で、現行 法の特定の条文が適用され解決されていた問題に含まれない新たな問題に対応 する可能性を持つ。前者は、いわば現行法が担っていた旧課題であり、後者は 可能性としての新課題である。本稿の目的は、改正法543条の新旧課題を示す ことである。 第 1 章 制定過程における改正法543条と改正法536条 2 項 第 1 節 民法改正法の制定過程の概観  法制審議会総会は、法務大臣から発せられた民法(債権関係)の改正に関す る諮問第88号(2009(平成21)年10月28日)を受け、「民法(債権関係)部 会」(新設)に、付託して審議することとした。民法(債権関係)に関する改 正要綱案に至るまでの審議段階は大きく分けると、第 1 ステージ、第 2 ステー ジおよび第 3 ステージに分けられる。

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【法制審議会での第 1 ステージ】  法制審議会民法(債権法)部会は、2009 (平成21)年11月24日の第 1 回会議以降、民法(債権関係)の見直しの調査・ 審議を重ね(第 1 ステージ)、2011(平成23)年 4 月12日の第26回会議で、「民 法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」を決定し、同年 5 月10日公 表し、それをパブリック・コメントの公募手続に付した。 【法制審議会での第 2 ステージ】  法制審議会民法(債権法)部会は、2011 (平成23)年 7 月26日の第30回会議以来審議を継続し(第 2 ステージ)、同部会 は、2013(平成25)年 2 月26日の第71会議で、「民法(債権関係)の改正に関 する中間試案」を決定し、同年 5 月10日に公表した。それをパブリック・コメ ントの公募手続に付した。 【法制審議会における第 3 ステージ】  法制審議会民法(債権法)部会は、 2013(平成25)年 7 月16日の第74回会議以来、第 3 ステージとしての改正要綱 案の取りまとめに向けての審議を続けた。第 3 ステージのスケジュールとして は、「⑴第 3 ステージでは要綱案の取りまとめを行うこと、⑵その取りまとめ は、平成27年 2 月頃に法制審議会の答申をすることが可能な時期までに行うこ と、⑶要綱案の取りまとめに先立ち、平成26年 7 月末までに「要綱仮案」の取 りまとめを行うこと」とされた。同年 9 月 8 日に、「民法(債権関係)の改正 に関する要綱仮案」(同年 8 月26日決定)が発表された。2015(平成27)年 2 月10日の第99会議で、「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」が部会決定 され、同月24日の法制審議会総会において、この要綱案が正式に要綱として決 定された。この時点で、 5 年余りの法制審議会の審議が終了した。 【法律案の作成と国会への提出】  この要綱に基づいて「民法の一部を改正す る法律案」が作成され、2015年(平成27)年 3 月31日閣議決定され、第189回 通常国会に提出された。 【国会での審議と可決・成立】  国会提出後、衆議院における閉会中審査、衆 参両院の審議を経て、第193回通常国会において、2017(平成29)年 5 月26 日、同法律案は可決成立し、同年 6 月 2 日に公布された。施行は、附則第 1 条 において、公布の日から起算して 3 年を越えない範囲内において政令で定める

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とされた(政府は同年12月15日の閣議で、2020年 4 月 1 日から施行することを 決定した。)。 第 2 節 改正法543条と改正法536条 2 項の制定過程における変遷  中間試案の段階で、危険負担における危険債権者主義(現行法534条と535 条)は、契約締結と同時に債権者が目的物の滅失又は損傷の危険を負担すると の帰結が不当であるとつとに批判されていたことを受け、削除された( 1 ) 。  現行法第536条第 1 項は、双務契約約当事者双方の帰責事由によらない一方 の債務の後発的履行不能の場合に他方の債務(反対給付を為す義務)も自動消 滅する旨を定める。中間試案における債務不履行解除規定は、債務者の帰責事 由を解除の要件から外したので、双務契約の両当事者無責の後発的不能事例に 適用が可能となった。契約解除と危険負担制度は、要件においても効果におい ても、重なり合うようになった。危険負担制度を削除しても問題が生じない状 況となった。契約の一方の債務が債務者の帰責事由の有無に係わらず、後発的 不能となれば、債権者は、危険負担制度がなくても、契約の解除をすることに より、自己の反対給付を為す義務(対価支払義務)を免れることができるから である。現行法では、契約の一方の債務が後発的不能となった場合に、債務者 の帰責事由があれば契約の解除が働き、それがなければ危険負担制度が働く。 このように適用領域を異にしていた解除制度と危険負担制度が、解除の要件か ら債務者の帰責事由を外すことで、同じ場面で同じ機能を発揮する二制度に なった。そこで、中間試案は、現行法536条 1 項を削除して、契約解除に一元 化することを選んだのである。  現行法536条 2 項について、中間試案は、その趣旨を残すが、その条文内容 は、債務者がその債務を履行しない場合において、その不履行が契約の趣旨に 照らして債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、契 約の解除をすることができないものとし、その条文は、契約の解除に関する規 定の中に置くとした( 2 ) 。これが、要綱仮案で登場した改正法543条である。同 条で後発的履行不能に限らず、債権者の責めに帰すべき事由による債務不履行

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一般としたのは、履行不能か履行遅滞等のその他の債務不履行かによって異な るものではないからであると説明された( 3 ) 。  法制審では、危険負担に関する「債務者主義」(現行法536条 1 項)の規定が 不要となるとの考え方及び危険負担制度の全面的な廃止(契約解除一元化)が 強く主張された。しかしながら、様々な理由( 4 ) により解除権の行使が困難な場 合もある。そこで、要綱仮案では、現行法536条を存置しつつ、現行法536条 1 項では「債務者は、反対給付を受ける権利を有しない」とされていたのを要綱 仮案では「債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」と改めた。中間試 案では解除の箇所に規定するとしていた現行法536条 2 項の内容は、要綱仮案 では、危険負担の箇所に存置されることになり、536条 1 項に続く 2 項で体裁 を同条 1 項に従い変更しで規定された( 5 ) 。  要綱仮案では、解除がなされるまでは、危険負担においては、反対債務は存 続しつつも、履行拒絶ができるとして、債権者の利益を保護している。そして 債権者が解除をして、初めて、反対債務は消滅すると理解することにより、危 険負担制度と解除制度の法律効果における重複を避けつつ両者の併存を図ろう とした。  双務契約の一方の債務が債権者の帰責事由により後発的履行不能になった場 合に、債権者の反対給付を為す義務が存続することは、危険負担の箇所( 6 ) と契 約解除の箇所( 7 ) の 2 箇所に規定されることになった。このように危険負担と解 除の 2 つの箇所で同じ機能を果たす条項が置かれたのは、要綱仮案において初 めてで、双務契約の一方の債務が債権者に帰責事由ある事情により不履行と なった場合に、解除をすることができないと規定された時点からである( 8 ) 。 第 2 章 債権者に帰責事由がある不履行事例における契約解除の 排除(改正法543条) 【現行法における契約の一方の債務の後発的不能の規律】  現行法は、契約の 一方の給付が後発的履行不能になったとき、①その不能について債務者と債権 者が共に帰責事由がない場合は、双務契約の他方の給付義務を消滅させ(双務

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契約の双方の給付義務が消滅する結果となる)、②債務者にのみ帰責事由があ る場合には、債権者に解除権を発生させ、その解除権の行使による双務契約の 双方の給付義務を消滅させ(現行法415条を併せて考慮すれば、債権者の債務 者に対する損害賠償請求権を発生させる)、③債権者にのみ帰責事由がある場 合には、不能となった給付義務は消滅するが双務契約の他方の反対給付の義務 は存続する(契約の債務者の給付義務を消滅させるが、債権者の反対給付を為 す義務を存続させる)。そして、④双務契約の一方の給付が後発的履行不能に なったとき、その不能につき、債務者と債権者に共に帰責事由がある場合につ いては、現行法は、規定を欠く。 【改正法における契約の一方の債務の後発的不能の場合の規律】  改正法は、 改正法542条だけでなくどの解除権の発生要件からも、債務者の帰責事由を除 外した。その結果、契約の一方の債務が契約両当事者の責めに帰すべからざる 事由により履行が不能である場合に、改正法542条で解除権が債権者に発生 し、それを行使することで、双務契約の双方の債務が消滅する。また改正法 536条 1 項は、契約の一方の債務が契約両当事者の責めに帰すべからざる事由 により後発的不能となった場合に自動的に双務契約の双方の債務を消滅させは しないが、債権者に、反対給付の履行拒絶権を与える(債務者の後発的履行不 能になった債務について、改正法412条の 2 第 1 項により、その履行を債権者 は請求できない。他方、債権者は、債務者からの反対債務の履行請求に対して 履行拒絶することができる)。すなわち、同じ事実に解除制度も危険負担制度 も適用され、両制度が、契約上の両債務の消滅という法的構成か、契約上の一 方債務の履行請求権の消滅と他方債務の履行拒絶権という法的構成かの相違は あるにしても、同じ機能を有する。  契約の一方の債務が債務者の責めに帰すべ事由により履行が不能である場合 には、改正法542条で解除権が債権者に発生し、それを債権者が行使すること で、双務契約の双方の債務が消滅する。改正法415条 2 項で、債権者は、債務 者に対して、債務の履行に代わる損害賠償を請求できることができる。  契約の一方の債務が債権者の責めに帰すべ事由により履行が不能である場合

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には、改正法542条の解除権の発生要件は満たすが、改正法543条で、解除権を 行使することはできない(解除の排除)。解除できずその契約に拘束される債 権者は、その履行が不能である債務の履行を請求できないが(改正法412条の 2 第 1 項)、反対債務の履行の義務を負う。また履行が後発的不能の場合に、 改正法536条 2 項が適用されて、債権者は、反対給付の履行を拒むことができ ず、債務者は、自己の債務の履行を免れたことによって利益を得たときは、こ れを債権者に償還しなければならない。改正法543条と改正法536条 2 項は、同 じ場面で同じ機能を果たしている。改正法536条 2 項第 2 文に相当する文言が 改正法543条にはないが、改正法543条が適用される事例にも、同条同項第 2 文 は、類推適用されるべきであろう。それによって、解除権行使が必要な規律と 自動的に働く規律の相違があるとはいえ、同じ機能を持つ二つの条文が細部に 亘っても同じ機能を持つことができる。また、債務者を、契約が履行された場 合以上に有利な地位に置く必要はないから、この類推適用は支持されるべきで ある。 第 3 章 改正法543条が担う課題 第 1 節 現行法536条 2 項が担っていた課題の改正法543条による承継  危険負担の箇所に存置された改正法536条 2 項は、後発的履行不能という債 務不履行の場合に、その債務不履行が債権者の帰責事由によるものであれば、 債権者が、不能となった債務の履行請求ができなくなるにも係わらず、反対債 務の履行を拒むことができないと規定する。解除の箇所に置かれた改正法543 条は、履行不能の場合に限らず債務不履行一般について、改正法536条 2 項を 適用したのと同じ結果を、もたらす。中間試案の段階において現行法536条 2 項の改正案に関し、「債権者の責に帰すべき事由」という文言につき、「その不 履行が契約の趣旨に照らして債権者の責めに帰すべき事由」という表現が使わ れていたし、また、「債権者が契約の解除をすることができない場合には、債 務者は、履行請求権の限界事由があることにより自己の債務を免れるときで あっても、反対給付の請求をすることができるものとする。この場合におい

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て、債務者は、自己の債務を免れたことにより利益を得たときは、それを債権 者に償還しなければならないものとする。」という項も付け足されていた( 9 ) 。  改正法543条は新設条文であるが、その担う課題の一つは、現行法536条 2 項 で対処していた問題群を、現行法536条と同じ基準で解決することである。そ の結果、改正法543条と同じ機能を持つ改正法536条 2 項が導き出すのと同じ結 論をもたらす。  現行法536条 2 項が対処していた問題は、一つには同条同項の既存判例に現 れている。もう一つは、解釈上の法律構成の問題である。すなわち、法律効果 を明確にしていない現行法413条の受領遅滞の効果の一つに挙げられる「危険 の移転」の法的根拠を提供することである。  第 1 款 危険負担事例における「債権者の責めに帰すべき事由」を基準と した規律  改正法の立法過程において、当初、危険負担制度を完全に廃止して、解除制 度に一元化しようとしたが、最終的には、解除制度と併存に適合するような文 言修正を施しつつ危険負担制度(危険債務者主義の現行法536条)が存置され た。改正法536条 2 項は、同条 1 項からの例外をなす。同条 1 項が、給付義務 の不能が両当事者の責めに帰すき事由に基づかない場合には、債権者は反対給 付義務の履行を拒絶できる(対価危険を債務者が負う)。同条 2 項では、給付 義務の不能が債務者の責めに帰すべき事由ではなく債権者の責に帰すべき事由 に基づく場合には、債権者は反対給付義務の履行を拒絶できない(対価危険を 債権者が負う)。改正法536条 2 項は、債権者の履行拒絶権を否定する構成を 採っているが、実質は現行法536条 2 項と同じである。新旧の536条 2 項は、共 に、債権者に責めに帰すべき事由があるか否かを基準に、債務者に反対給付請 求権を認めるか否かを決めている。現行法536条 2 項の学説・判例によれば、 「債権者の責めに帰すべき事由」とは、債務者の給付義務を不能にした債権者 の不法行為法上の違法行為についての故意・過失、債務者の給付義務を不能に した債権者の契約法上の違法行為に帰責事由(履行補助者の過失を含む)、及

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び契約上の主たる債務とまでは言えないが債権者が為すべき債務者への協力行 為の懈怠(作為又は不作為)を指す(10) 。最後の債権者の協力行為の懈怠が判例 上よく問題となる。例えば、注文者が材料を提供しないために目的物の製造請 負上の仕事完成が不能となった場合(大判昭和13年 7 月 5 日判決全集 5 輯16号 4 頁)である。 【ノーワーク・ノーペイの原則と不当解雇等による賃金請求権の存続】(11)  改正法536条 2 項は、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行する ことができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができな い。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得 たときは、これを債権者に償還しなければならない」と定めた。同条 2 項か ら、使用者の責めに帰すべき事由(不当解雇)により労働者が就労できなかっ た場合、労働者は、報酬請求権(債権者たる使用者の反対債務)を根拠づけら れると立案担当者は考えている(前注 7 を見よ)。  使用者による不当解雇等で労働者が就労できず、労働者の債務が履行不能に 陥る。債権者たる使用者は、債務者である労働者の帰責事由を問うことなく改 正法542条 1 号に基づいて催告期間を要せずに解除権を取得しうるように見え るが、しかし、ここで改正法543条が適用され、労働者の債務の履行不能は、 使用者の不当解雇によるもので、債権者(使用者)の帰責事由のある労務提供 債務の履行不能となり、同条で解除権が発生せず、使用者は契約を解除でき ず、存続している契約に基づき、報酬を労働者に支払わなければならない。  以上の結論は、現行法536条 2 項を適用して導くこともできる。つまり現行 法で導くことができる結論に、改正法は、536条 2 項の適用又は543条の適用と いう方法で到達できる。この点以外には、つまりルールの内容自体には、今回 の民法改正は修正を加えていない。  第 2 款 受領遅滞の効果の一つである「危険の移転」 【債権者の受領遅滞後の両当事者の責めに帰すべらざる債務の履行不能】  現行法は、413条で受領遅滞を規定したが、その法律効果については明確に

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定めていない。受領遅滞制度の法的性質について、履行の受領義務一般を認め ない法定責任説と、受領義務を前提に受領義務違反に義務者(債権者)の帰責 事由が加わることによって債務不履行が成立すると主張する債務不履行責任説 が対立している(12) 。どちらの説に立っても、債権者の帰責事由がなくても、債 権者の受領遅滞の効果である「危険の移転」が発生するとしていた。危険の移 転とは、対価危険を負う当事者が債務者から債権者に変更するということであ る(13) 。危険負担の原則的ルールである危険債務者主義によれば債務者が負って いた対価危険を、債権者の受領遅滞を機に債権者に移転するのである。給付危 険が発生し給付の義務を負っていた債務者が義務の履行を免れる(給付危険を 債権者が負う)が、反対給付の義務は危険債務者主義によれば、反対給付義務 を義務者の債権者が免れることで、対価危険を債権者が免れる(対価危険を債 務者が負う)。債権者の受領遅滞があると、その後、両当事者の責に帰すべか らざる事由によって債務者の給付が不能になっても、債務者が給付義務は免れ るが(給付危険を債権者が負う)、反対給付を債権者は履行しなければならな い(対価危険を債権者が負う)。  危険の移転という受領遅滞の一つの効果を、改正法は条文化したのである。 条文化は、まず、改正法413条の 2 第 2 項で「債権者が債務の履行を受けるこ とを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以 後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が 不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由による ものとみなす」と規定し、改正法536条 2 項の「債権者の責めに帰すべき事 由」を基準にして、対価危険を債権者が負う結果を導けるようにした。改正法 543条「解除権の排除の規定」も、改正法536条 2 項と同じ機能を持つ。債権者 の受領遅滞後に双方無責の事由で債務者の履行が不能となった場合、改正法 413条の 2 第 2 項により、改正法543条を経由しても、改正法536条 2 項を経由 したのと同じく、反対給付義務を、受領遅滞した債権者は、履行しなければな らないのである。

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第 2 節 ドイツ民法から見た日本の改正法543条が新たに担うかもしれない 課題  第 1 款 ドイツ民法と日本の改正法の類似点  2001年の債務法現代化法による改正後のドイツ民法は、日本民法の改正法 543条に対応する規定を、323条 6 項と326条 5 項(同条同項は、広義の給付不 能の場合に債権者が行なえる解除について、323条 6 項を含めた323条の準用を 規定している)の二箇条で定めている。これは、条文の建て付けの問題で、債 務不履行について債権者に帰責事由がある場合には解除権を行使できないとい う実質においては異ならない。改正法536条 2 項および543条を含め、両民法 は、法定解除(以下では解除とのみ記す)について類似した状況を抱えてい る。第一に、改正民法もドイツ民法も、それ以前には、債務者の帰責事由が解 除権発生の要件であったが、その要件を新しい解除権の要件から外した。第二 に、それ以前にあった危険負担制度(対価危険ルール)が、新たな解除権制度 によって全面的に取って代わられることなく、解除権と危険負担(対価危険 ルール)の二元制度となっている。第三に、債務者の債務不履行が債権者の帰 責事由によって生じた場合には、債権者が契約解除することができなくなる。 第四に、債権者に帰責事由があって債務不履行が生じても解除権を行使できな い場合の中に、債権者の受領遅滞中に両当事者又は債務者の責めに帰すべから ざる事由による不能が発生した事例を位置づけている。以上の 4 つの日独民法 の類似点を具体的に示すために、以下では、ドイツ民法の条文内容を述べる。  ドイツ民法323条(以下、ドイツ民法の条文を摘示する場合ド民○○条と表 記する)の見出しは、「不履行又は履行が契約に適合しないことに基づく解 除」で、その 1 項で、履行遅滞または契約不適合の場合の解除権発生を規定 し、その 6 項で、「債権者にのみ若しくは主として債権者に責任(verantwortlich) がある事情により解除権を根拠づけるとき、又は債権者が受領遅滞に陥ってい る時に債務者の責めに帰することのできない事由が発生したときは、解除権 は、行使することができない」(14) と規定する。ド民323条 6 項は、解除権の排除 という効果を定めており、債務法現代化法による改正の前のド民324条と結び

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ついた規定であり、かつ現行ド民326条 2 項と類似した規定である(15) 。  ド民326条の見出しは、「給付義務が排除された場合における反対給付からの 解放及び解除」である。  ド民326条 1 項 1 文は、「債務者が第275条 1 項から第 3 項までにより給付を 要しないときは、反対給付請求権は、消滅する」と定める。他方、同条 5 項 は、「債務者が第275条第 1 項から第 3 項までにより給付を要しないとき[債務 が広義の不能となる場合]は、債権者は、解除することができる;解除につい ては、期間の定めを要することなく第323条を準用する」(16) と規定し、一方当事 者の給付が不能である場合に、その反対当事者に解除権が発生するとしてい る。ド民326条 1 項の対価危険ルールがあるのに同条 5 項でド民323条を準用し て解除権を規定したことは、部分的不能又は契約不適合給付の追履行が不能の 場合に、意味を持つ(17)。前者の場合に、ド民326条 1 項の規定では反対給付請 求権の部分的な消滅しか導くことができず、後者の場合には、対価危険ルール が適用されない。さらに、同条同項による解除権付与は、債権者が債務者の債 務不履行の理由を知らないときに意味を持つ。催告期間を定めてそれが徒過す れば、債権者に解除権が発生するからである。   ド 民 326 条 2 項 は、「債 権 者 に の み 若 し く は 主 と し て 債 権 者 に 責 任 (verantwortlich)がある事情により債務者が第275条第 1 項から第 3 項までによ り給付することを要しないとき、又は債権者が受領遅滞に陥っている時に債務 者の責めに帰することのできない(nicht zu vertretend)事由が発生したとき は、債務者は、反対給付請求権を失わない。債務者は、給付を免れることに よって節約したのもの又はその労力を他に使うことによって取得したもの若し くは悪意で取得しなかったものを差し引かなければならない。」と定める。債 権者の反対給付義務が存続するためには、債権者が、債務者の債務不履行につ いて専ら又は主として責任(verantowortlich)を有することが要件である。同 条同項の前身は、2002年改正前のド民324条 1 項(18) であり、それは、債権者の 責めに帰すべき後発的不能に関する規定であり、そこでは、履行不能となった ことについて債権者に責めに帰すべき(zu vertreten haben)事由があることが

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要件とされた。改正後のド民326条 2 項ついての解釈も、改正前の324条 1 項の 解釈と同様に、当該条文が適用されて、債務者の給付不能にもかかわらず債権 者が反対給付義務を負担し続ける事例は、①債権者が不法行為法上または契約 上の行為義務(その違反が相手方の損害賠償請求権を基礎づけず義務者自身の 利益を守るための義務としての協力義務(Mitwirkungsobliegenheiten)も含め る)に違反した場合と、②債権者が、契約上債務不履行が生じるリスクを引き 受けていた場合に大別された(19) 。責任の程度は、立法資料によると、ド民254 条の過失相殺でいうならば債権者側の過失が債権者の損害賠償請求を排除する のと同程度に圧倒的でなければならない(20) 。そのためには、90パーセント、少 なくとも80パーセントの圧倒的さが必要である(21) 。  第 2 款 債権者が契約上引き受けたリスクの現実化と債権者の帰責事由  ド民323条 6 項およびド民326条 2 項の解釈によれば、債権者に責任のある債 務不履行の場合に債権者の反対給付義務が存続する類型の一つとして、債権者 が特定の債務不履行のリスクを契約上引き受けており、そのリスクが現実化し た場合である。債権者に債務不履行に関する義務違反かつ有責な行為がなくて も、この類型においては、債権者の解除権が行使できず、債権者の反対給付義 務が存続する。この類型に属する事案が、近年ドイツ連邦裁判所で扱われ た(22) 。その事案で、前年同様の有償契約を締結し人生相談を 1 ヵ月間した者 が、助言者から、約6000ユーロの約定の対価支払いを請求された。助言者の給 付は、置いたトランプに表れた魔法の力を分析しそれに基づいて人生相談者に 対して助言することである。魔法の力を読み取った上で助言することは原始的 不能である。対価支払義務は、ド民326条 1 項で消滅するのか、それとも同条 2 項 1 文に該当し存続するのかが問われた。ドイツ連邦裁判所の判示を概略す れば、次のようである。すなわち「両当事者間の契約は、良俗違反による法律 行為の無効を定めたド民138条に照らして無効であることはない。さらに、助 言者のなした約束は、確かに、客観的かつ科学的な基準からすれば不能な給付 に向けられているが、しかし、相談者は、助言者の給付が合理的な基準に照ら

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して説明可能なものとは考えておらず、それ故に不能であるリスクを認識し契 約上引き受けているといえる。したがって、相談者が不能の事情についてド民 326条 2 項に照らし専ら又は主として責任を有する場合に該当し、相談者は、 約定した対価を支払わなければならない」。  この点に示唆を受け、改正法543条・536条 2 項の解釈においても、この類型 が認められるべきであると筆者は考える。改正法の制定過程では、このような 類型はまったく議論されていない。現行法では解除権の発生要件に債務者の帰 責事由があることから、債権者に帰責事由がある場合には、債務者の帰責事由 の要件が欠けることになり、解除権が発生しなかった。解除権の発生要件から 債務者の帰責事由を外した改正法では、債務不履行について債権者に帰責事由 があっても解除権が発生してしまう。そこで、そのような場合には解除権を発 生させない現行法と同じ結果を導くために、債権者の帰責事由を要件にしてそ れが具備されたときに解除権を行使させない改正法543条の規律が要綱仮案で 挿入された(23) 。この挿入には現行法536条 2 項の規律維持の意味もある。  415条の債務不履行責任の根拠及び帰責事由についての制定過程の議論で は、当初、「契約の拘束力」に根拠をもとめる考え方が基礎に据えられた(24) 。 債務者が自らの意思により契約を締結したことにより引き受けた結果につい て、債務者は、その実現に責任が負うので、その結果が実現されない場合に損 害賠償責任を負うというものである。債務不履行責任の根拠を契約の拘束力か ら説明する立場に立てば、次のように説明されるであろう。すなわち、解除権 を債権者に行使させないで債権者の反対給付義務を存続させる効果(改正法 543条、536条 2 項)は、債権者が契約上、債務者の特定の債務不移行のリスク を引き受けていたからこそ、そのリスクが実現して債務不履行が発生しても債 権者に救済手段(解除権)は与えらず、契約上債権者が負った債務(反対給付 義務)を引き続き負うのであると。改正法415条の制定過程で議論された責任 根拠としての「契約の拘束力」という考え方が、改正された民法の基礎に据え られているか否かは、今後の解釈に任されていると思われる。もし、「契約の 拘束力」という考え方が415条に関して支持されるならば、解釈の整合性から

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言っても、改正法543条の解釈で、ドイツ法が解釈で承認している「債権者 が、契約上債務不履行が生じるリスクを引き受けていた場合」を、債権者の責 めに帰すべき事由の一類型に入れるべきである。  第 3 款 改正法543条と債権者と債務者の双方に帰責事由がある場合  ド民326条 2 項は、不能が債権者と債務者の双方に責任がある場合につい て、何も言っていない。両当事者に責任のある事由により履行が不能となった 次のような事例では、どのように解決するか。多くの見解が主張された(25) 。  【事例】買主が売主に、箱スパナの製造用のプレス機を注文した。代金 は50万ユーロで、その中に売主の工場で行う当該機械の試運転の費用も含 まれていた。約定された引渡し期日を、売主は遵守することができなかっ た。買主が、当該機械の試運転に必要な材料を用立てなかったからであ る。売主は、激怒し、当該機械をすぐに第三者に売却してしまった。その 売却において、売主は、 7 万ユーロの代金値引きをせざるを得なかった。 その後、買主は売主に損害賠償を請求した。その際、買主は、自己が蒙っ た損害(他のプレス機械を取得するために余分にかかる増加費用)を、 8 万ユーロと見積もった(26) 。  上記の事例でプレス機械の第三者への譲渡によって、売主は、自己の買主に 対する契約上の義務の履行を有責に不能にした。確かに買主は協力義務に違反 した。しかしながら、このことから、催告期間を設定せずに契約を解除する権 利を売主に与えることはない。つまり買主は、この売主の債務の不能に対し て、売主と共に責任があった。買主が必要とされる材料を売主に用立てなかっ たことで、プレス機の他への譲渡を有責に誘発したのである。  2002年の債務法現代化法による改正よりも前に、両当事者に帰責事由のある 不能の場合に、債務者が反対給付請求権を有するとの見解が支配的であった (もちろん、その反対給付請求権の額から、過失相殺の規定であるド民254条が 類推適用され債務者の過失部分に対応した額が減殺されるが)。債務法現代化 法後の現在においても、債務者の反対給付請求権を認める見解(27) が一部では存

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在するが、妥当な見解は、両当事者に帰責事由がある不能の場合には、ド民 326条 2 項の「不能についての責任が専ら又は圧倒的に債権者にある」のでな い限り、ド民326条 1 項が適用され、契約の解除により、契約上の債権者の給 付請求権と同様に、契約上の債務者の反対請求権も脱落すると説く(28) 。上記の プレス機械の例において、売主と買主の帰責事由の割合が 5 : 5 であるとすれ ば、次のようになる。すなわち、ド民280条 1 項・ 3 項、283条により、買主 は、売主に対して、 8 万ユーロの損害賠償請求権を有するが、その額がド民 254条に基づき 4 万ユーロに減額される。売主の買主に対する代金請求権は、 ド民326条 1 項により脱落する。しかしながら、買主の協力義務違反を理由 に、売主には、ド民280条 1 項に基づく損害賠償請求権が発生する。その損害 賠償請求権の額は、ド民254条に基づき、 7 万ユーロから 3 万5000ユーロに減 額される。売主と買主の間の両損害賠償請求を差し引きすると、買主は、売主 に対して、5000ユーロの支払いを請求できる。  国際物品売買契約に関する国際連合条約80条は、「当事者の一方は、相手方 の不履行が自己の作為又は不作為によって生じた限度において、相手方の不履 行を援用することができない」と規定し、債権者が債務者の不履行を生じさせ た限度において、債権者は解除権を援用できなくなる。同80条と、改正民法 543条、ド民323条 6 項およびド民326条 2 項とには、一脈通ずるものがある。 もっとも、ドイツにおける同条80条の通説的解釈では、不履行に対して圧倒的 でなくても50%をこえる原因力がある債権者の行為があれば、債権者は解除で きないとする。債権者は、契約を解除できず、反対給付義務を負うが、債務者 の地位が契約の通常履行に比べて有利にならないように利益調整される。つま り、同国連条約に規定はないが、ド民326条 2 項 2 文に規定されている「債務 者は、給付を免れることによって節約したもの又はその労力を他に使うことに よって取得したもの若しくは悪意で取得しなかったものを差し引かなければな らない」という法理を用いる(29) 。  改正法543条は、本来の規律対象ではないが他に条文がないという理由で、 双方に帰責事由がある債務不履行の問題に対処しなければならないかもしれな

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い(30) 。そのときに、ドイツにおける異なる方向の二つの考え方は参考になる。 【付記】鎌田耕一先生に、筆者が出会ったのは、1978年のことであった。中央 大学の川村泰啓先生が指導する大学院博士課程後期課程の院生と、川村ゼミの 新規学部生という関係であった。鎌田先生が主宰された自主ゼミに私が参加さ せて頂き、法律論文の主題の探し方と書き方だけでなく、社会科学文献の読み 方から独文解釈まで、目を開かせてもらった。生き方についての話も、時折 伺ったが、どれも心に染み入るものであった。この退職記念号に寄稿する機会 を頂き光栄に思う。鎌田先生への感謝の気持ちを表し先生の今後のご活躍とご 健康を祈念して、拙ない本稿を献呈させて頂きたい。 注 ( 1 ) 中間試案第12危険負担の本文 1 (商事法務・編『民法(債権関係)の改正に関する中 間試案の捕捉説明』商事法務2013年141頁)。 ( 2 ) 中間試案第12危険負担の本文 2 (商事法務・編(注 1 ))145頁以下。 ( 3 ) 中間試案第12危険負担の本文 2 の概要(商事法務・編(注 1 )146頁)。 ( 4 ) 中田裕康『契約法』(有斐閣2017年)164頁は、解除一元論には、債務者の行方不明の 場合の解除の意思表示を到達させる負担、解除権の不可分性のために解除権を行使でき ない問題および解除権が時効消滅した場合の不利益といった債権者=解除権者の保護に 欠ける点があるとの議論を紹介している。 ( 5 ) 「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」(http://www.moj.go.jp/content/001127038. pdf)14頁。 ( 6 ) 危険負担において債権者が反対債務について履行拒絶ができるという構成を採ったの で、債権者に帰責事由があるときに、債権者の反対債務の履行請求に対して、履行拒絶 することができないと規定された。このことから、債務者の債権者に対する反対債権が 発生するといえないのでないかとの疑義が生じうるが、立案担当者は、債務者の債権者 に 対 す る 反 対 債 権 が 発 生 す る と 考 え て い る(部 会 資 料 83⊖ 2  http://www.moj.go.jp/ content/000126620.pdf, 49頁)。これについては、潮見佳男『民法(債権関係)改正法の概

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要』きんざい2017年249頁参照。 ( 7 ) 債権者に帰責事由のある債務不履行(不能)によって、債務者は債務の履行義務から 解放されるが(改正法412条の 2 第 1 項)、債権者は契約を解除できないことで、引き続 き、反対債務(債務者の債権者に対する債権)から解放されずに、契約に拘束される。 これについては、潮見(注 6 )243頁参照。 ( 8 ) 「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」(http://www.moj.go.jp/content/001127038. pdf)13頁。 ( 9 ) 中間試案第12危険負担の本文 2 (商事法務・編(注 1 )145頁以下)。 (10) 谷口知平・五十嵐清・編『新版注釈民法(13)債権( 4 )第521~548条』(有斐閣 2006年)§536Ⅳ、588頁以下および592頁(甲斐道太郎・執筆)参照。 (11) 無効な解雇をされた被用者の賃金請求権については、林和彦・神尾真知子・新谷眞人 『労働法』第 2 版(三和書籍2013年)249頁以下参照。 (12) 二つの説の対立については、中田裕康『債権総論』第 3 版(岩波書店2013年)194頁 以下参照。 (13) 中田(注12)196⊖197頁。 (14) ド民323条の訳は、verantwortlich という語以外は、岡孝編『契約法における現代化の 課題』法政大学出版局2002年207頁にほぼ依拠した。 (15) Palandt/Grüneberg (77 Aufl. 2018) §323 Rn. 28. (16) ド民326条の訳は、verantwortlich の訳語を変更したことと括弧を筆者が追加補充した こと以外は、岡孝編(注14)207⊖208頁にほぼ依拠した。

(17) Jauernig BGB/Stadler, (16. Aufl. 2015)§323 Rn.27.

(18) 2002年の改正前のド民324条 1 項は、「双務契約の当事者の一方は、自己の負担する給 付が相手方の責めに帰すべき事由によって不能となるときは、反対給付請求権を失わな い。ただし、自己の給付を免れたことによって免れ、又はその他の方法により自己の労 働力を用いることによって取得し若しくは悪意で取得しなかったものを差し引かなけれ ばならない」というもので、同条 2 項は、「当事者の一方が負担する給付が自己の責め に帰すべからざる事由によって、相手方が受領遅滞にある当時に不能となる場合も、同 様である」というものである(この訳は、椿寿夫・右近健男『ドイツ債権総論』日本評

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論社1988年220頁に依拠した)。

(19) MünchKomm-BGB/Ernst, (5.Aufl., 2007)§326 Rn.63; Palandt/Grüneberg (Anm.15)§326 Rn. 8; Staudinger/Otto, (2009), §326 Rn. C19.

(20) BT-Drucks 14/6040 S.187.

(21) BeckOK/H. Schmidt, 43. Ed., 15. 6.2017, BGB §326 Rn. 15. und 63; Palandt/ Grüneberg (Anm.7) §323 Rn. 29 und §326 Rn.9.

(22) BGH Urt. v. 13. 1. 2011 BGHZ 188, 71. これ以外の判例(BGH Urt. v. 26. 10. 1979 NJW 1980, 700; BGH Urt. v. 18. 10 .2001 NJW 2002, 595)および設例については、Kötz, Hein, Vertragsrecht 2.Aufl., (Mohr 2012), Rn.829f. を参照のこと。

(23) 中田(注 4 )216頁によれば、現行法では、「債権者の帰責事由による不履行」は、「債 務者の帰責事由によらない不履行」に含まれるので、解除されないことに異論はなかっ たと考えられる。 (24) 部会資料 5 ⊖ 2 。この部会資料については『民法(債権関係)の改正に関する検討事 項法制審議会民法(債権関係)部会資料〈詳細版〉』(民事法研究会2011年)18頁を見よ。 (25) Vgl. Staudinger/Otto (Anm.19)§326 Rn. C78⊖C91.

(26) Looschelders, Dirk, Schuldrecht AT (Academia Iuris), 15.Aufl. (Vahlen 2017) Rn.703が下級 審裁判例(OLG Frankfurt a. M. NJW-RR 1995, 435)をもとに作成した事例。

(27) Brox/Walker, Allgemeines Schuldrecht (Grundrisse des Rechts), 41.Aulf.,(Beck 2017) §22 Rn.41. (28) Looschelders (Anm.26), Rn.704. (29) 拙稿『国際物品売買契約に関する国際連合条約80条を導入する場合の諸問題』法学新 報122巻 1 ・ 2 号(2015年 8 月)772⊖775頁参照。 (30) 中田(前注 4 )は、危険負担の箇所(169頁)で、両当事者に帰責事由のある場合を 論じている。 ―ふくだ きよあき・明治学院大学法学部教授―

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