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NGO・NPOにおけるアカウンタビリティ/アドボカシーという戦略

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(1)Mem.S c h o o . 1B .O .S .T .K i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9 :67~ 80 (2007 ). 6 7. NGO・NPOにおけるアカウンタビリティ/アドボカシーという戦略 新田和宏. l. 要旨 本稿は、日本の NGO・NPOの弱点と指摘され続けられてきたアカウンタピリティ(説明行為)とアド ボカシー(政策提言)について取り上げる。 アカウンタピリティとアドボカシーは、ともに外部マネジメントの範酵に入る表出行為 ( e x t e n s i o na c t ) にあたる。また、アカウンタピリティにおける説明様式 ( e x p l a n a t i o ns t y l e ) とアドボカシーにおける提言 様式 ( p r o p o s a ls t y l e ) は、意外にも、極めて近似しており、その思考方法は通底し合っているといえる。 そうすると、アカウンタピリティとアドボカシーの両者が NGO・NPOにおいて弱いのは、これは単なる 偶然ではなく、必然の所産ともいえる。 思うに、 NGO・NPOのアカウンタピリティおよびアドボカシーの強化は、「市民社会の強化」の要諦と いえるだろう。それ故に、 NGO・NPOにとって、弱いと認識されているアカワンタピリティやアドボカシ ーを強化することは、「市民社会の強化 J という点において、極めて重要な課題なのである。しかもまた、 アカウンタビリティやアドボカシーは、 NGO・NPOから外部へ向けて、戦略的に表出されなければ、所期 の成果を期待することはできない。決して、アカウンタピリティはその説明責任を受動的に果たすもので もないし、アドボカシーは「言いたいことを言う J というような類のレベルのものではない。 本稿は、 NGO・NPOがアカウンタピリティおよびアドボカシーを行うにあたり、必要とされるべき戦略 的な表出方法を、アカウンタピリティにおける説明様式およびアドボカシーにおける提言様式として確定 するとともに、改めて、何故に NGO・NPOのアカウンタピリティやアドボカシーの強化が「市民社会の 強化」に連動するのか、この重要な論点についても併せて考察することを目的とする。. 1.問題の所在 図1.のように、「自律補完性の原理 ( p r i n c i p l eofs u b s i d i a r i t y )Jに基づきながら、重層的ガバナンスの構 築に向けて政治システムの全般を組み換えようとする試みは、次の 3点の方向性にまとめることができる。 まず、何よりも、「脱主権国家」としての方向性である。それは、国家=中央政府の権限の一部を「上方へ 権限委譲」すること、つまり国連諸機関などのグローパルな組織、あるいはまた EUなどのリージョナル な組織へ権限を委譲することである。次に、国家=中央政府の権限の一部を「下方へ権限委譲」すること、 つまり中間自治体(州あるいは都道府県)や基礎自治体(市町村区)などのローカルな政府組織へ権限を 委譲することである。要するに、分権化(d e c e n t r a l i z a t i o n ) である。第 3に、国家=中央政府の権限の一部 を市民社会へ権限委譲することである。この第 3の方向性が「市民社会の強化 ( s t r e n g t h e n i n gc i v i ls o c i e t y )J に連動する。そして、「市民社会の強化」は、強化されるべき市民社会を担う「能動的市民 ( a c t i v ec i t i z e n )J の育成にも連動する。 こうして、「脱主権国家」から重層的ガバナンスへ、政治システムの全般を組み換えようとする試みは、 国家=中央政府の権限を縮小・限定し、肥大化した「行政国家J の機能障害を是正しつつ、上記第 lの方 向性もさることながら、とりわけ、上記第 2・第 3の方向性、すなわち分権化と「市民社会の強化」とい う方向性への舵取りを行う。また、第 2・第 3の方向性を束ねると、就中、基礎自治体を基本構成単位に 原稿受付. 2 0 0 6年 1 1月 1 7日. 1.近畿大学生物理工学部. 教職教養課程. 干6 4 96 4 9 3和歌山県紀の川市西三谷 9 3 0 回.

(2) 6 8. Memoirso fTheS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9( 2 0 07). 据えつつ、市民社会が具現化すべく当該地域におけるガバナンス、特に、市民社会の自律性を強化しつつ、 市民社会の主体である NGO・NPO・社会的企業および市民の参加と協働を前提とするソーシャル・ガパナ s o c i a lgovemance) の構築が重要視される。 ンス (. 下位から上位へ権限委譲. グローバル. 国際組織. リージョナ lレ. リージョナル組織. ナショナル. 中央政府 中間自治体. 口一力 J レ. 基礎自治体. 近隣/コミュニティ 家族. 個人 図 l 自律補完性の原理. 尚、注意を要するのは、国家=中央政府の権限を縮小・限定していくという論点は、歳出削減、規制緩 和( d e r e g u l a t i o n ) および民営化 ( p r i v a t i z a t i o n ) などを政策の基本スタンスとする新自由主義的な国家観、 すなわち「小さな政府J とオーバーラップする場合がある。この件について、若干コメントを加えておこ う 。 1980年代以降進められてきた新自由主義政策は、今日に至るまでの四半世紀問、とりわけ、冷戦終結 後の 1990年代以降、地球的な規模における市場競争や貿易の自由化、そして金融自由化などのグローバリ ゼーションの進展と相侯って、世界的にも、また国内的にも、所得格差を著しく拡大させっつ、一方にお a k e sa l 1 )J と他方における「働く貧困 ( w o r k i n gp o o r )J としづ極端な経済的帰 ける「勝者総取り (Winnert. 結をもたらした。それはまた、金融グローパリゼーションそしてヘッジ・ファンドの雄、ジョージ・ソロ ス (GorgeS o r o s ) が指摘するところの「自分さえよければ社会」の出現でもある(ソロス 2 0 0 6 )。こうし た、経済的・社会的状態の出現は、政治にも連動しつつ、少なからず、人びとの政治的心理の奥底に不満 g o v e m a b i l i t y)は動揺 を欝積させ、また犯罪や紛争を誘発する温床ともなり、この結果、政府の統治能力 (. をきたしかねない。それ故に、新自由主義政策の結果の延長として「強し、国家」が台頭し、「安価なナショ c h e a pn a t i o n a l i s m )J に訴えながら改めて国民統合を図ったり、併せて権力作用を強めたりする ナリズム (. 傾向もみられる。こうして、国家=中央政府の権限を縮小・限定しつつある新自由主義的な「小さな政府 J は、実は、「強い国家」なのである。しかしながら、このような「小さな政府 J = r 強 し 1国家」は、本稿で 議論している重層的ガバナンスの構築という試みとは基本的に異なることを断っておく. O. さて、本稿では、重層的ガバナンスの構築における第 3の方向性について着目する。「市民社会の強化」 に関しては、既に、「市民社会を強化するカバナンス、パブリック・マネジメントおよびデモクラシー J と. 0 0 6 ) 本稿はその別稿からすると、各論的な位置にある いう別稿において論じてきた経緯がある(新田 2 0. が、強化されるべき市民社会を担う NGO・NPOのアカウンタピリティとアドボカシーについて焦点を絞.

(3) 6 9. ってみる。. 2. NGO・NPOのアカウンタビリティ. 最初に、アカウンタピリティから考察してみよう。アカウンタピリティ ( a c c o u n t a b i l i t y )は、通例、「説 明責任J と訳される。しかし、「説明責任」は誤訳ではないにしても、大変誤解を招きやすい語感を漂わせ る。それは、事件や不祥事にたいする道義的な釈明という語感である。その場合、「説明責任」は、一方で 説明を行う側の説明にたいする重い責任と義務、他方で説明を聞く側の責任追及への姿勢としづ文脈を用 意させてしまう。このようにアカウンタピリティを「説明責任」として捉えてしまうと、説明する側は、 アカウンタビリティにたいして受動的かっ消極的に構えてしまう。 また他方で、道義的な釈明という語感は希薄なものの、アカウンタピリティを行うと、「説明責任Jの反 作用というべき、重箱の隅を突っつくような質問や疑問、意見が噴出し、たちまち本業が立ち往生してし まうという「アカウンタビリティのジレンマ j に陥りかねない(山谷 2006)。これでは、結局、アカウン タピリティにたいする萎縮効果 ( c h i l l i n ge f f e c t ) すらもたらしかねない。 NGO・ NPOの中には、アカウンタピリティそのものを忌避してしまう傾向も決して少なくない。それは、. 対外的な説明などを行う必要もなく、「善意は表出せず」として、敢えて禁欲的な立場を固守する姿勢であ る。こうした姿勢は、それ自体、当該 NGO・NPOのアイデンティティとして理解することができるもの の、到底、一般化・普遍化できるものではない。他方、 NGO・ NPOは、企業や助成団体などのドナー ( d o n o r: 資金提供者)から、いかに資金提供を得ることができるか、もっぱらそのための表現技法としてアカウン タビリティを理解する場合があるが、このような態度は本道とはいえない。 a c c o u n t ) についての説明に限定して捉え、ドナーに対する「会計 さらに、アカウンタピリティを会計 (. 報告」という意味合いで理解される場合がある。しかし、それにしても、アカウンタビリティを「会計報 告」に限定解釈してしまうと、組織・団体のレゾンデートルやフロジェクトについてのアカウンタピリテ イは、その範曙から脱落するのであろうか? 尚、シーズ(市民活動を支える制度をつくる会)がまとめ た『データから見る NPOの信頼性確保のための 1 0のチェックポイント. 寄付者の信頼をどう得るか?-Jl. を見ると、 ドナーから信頼を得るためのアカウンタピリティに関して、そのポイントを簡潔に取りまとめ ているが、アカウンタピリティを必ずしも会計だけに限定しているわけではない(シーズ 2006)。 JANIC(国際協力 NGOセンター)は、アカウンタビリティに関する「組織運営基準 j、「事業実施基準」、 「会計基準」および「情報公開基準」を取りまとめた ~NGO のアカウンタピリティ向上のための行動基準』. を作成した(J ANIC2 0 0 6 )。しかしながら、『行動基準』は、 NGOにおけるマネジメントのポイントについ て、詳細にチェックを施し、そのパフォーマンスの向上を促すものではあるものの、そのチェックを行い、 「自己診断・自己認証」を行ったからといって、かつまたパフォーマンスが向上したからといって、その こと自体が直ちに、アカウンタピリティに直結するわけではない。端的に言って、 JANICの『行動基準』 は、アカウンタビリティとマネジメントとが、浬然一体となってしまっているのである。「情報公開基準」 において、一応、情報公開の一般原則は確認できるものの、 JANICの『行動基準』からアカウンタピリテ ィという表し方もしくは示し方は垣間見られない。 尚、アカウンタピリティの対象者についても、「園内の支援者、途上国のパートナ一団体、受益者グルー プ」などを含めて「複数のアカウンタビリティ ( m u l t i p l ea c c o u n t a b i l i t y )Jが求められることも(重田 2005: 3 1 2 ) 踏まえる必要があるだろう。. それでは、アカウンタビリティを次のように定義しよう。アカウンタビリティとは、 NGO・NPOを含め て組織・団体が、とりわけ、対外的に行う表出行為であり(対内的に行う場合もある)、その表出内容は組 織・団体のレゾンデートル、プロジェクト、および会計に関する事柄からなり、表出にあたって公正な説.

(4) 7 0. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9( 2 0 0 7 ). 明を行い、組織・団体の信頼と信任を高め、いわば組織・団体の「品質 ( q u a l i t y )Jを向上させる目的で行 う説明行為である。また、アカウンタピリティという作業には、説明する側の説明のみならず、その説明 を聞いて評価する側の評価が伴う。換言すれば、アカウンタピリティは、説明と評価とが表裏一体をなし ている。かくして、評価する側から厚い信頼と高い評価を得るためにも、 NGO・NPOは、それ相当の工夫 を凝らした上で、アカウンタピリティを行う必要がある。さらに、 NGO・NPOにとって、アカウンタピリ ティは戦略的な説明行為である。アカウンタピリティを通じて、社会的課題の所在を明示するとともに、 その課題解決には何が必要なのか、そして当該 NGO・NPOはどのような課題解決のアプローチを行いつ つ、所期の成果をあげたのか、そうしたことを広報 ( p u b l i c i t y)しながら、市民をはじめ政府や企業にた いしても、その社会的課題への認識を高めるよう促す。. 3 .N G O・N P Oのアカウンタピリティの前提要件 NGO・NPOが戦略的な説明行為としてのアカウンタピリティを行うためには、まず、その前提要件とし. て、いわば INGO・NPOがアカウンタピリティの 6W2HJ を押さえる必要がある(表1.)。. 表1.NGO ・ NPO のアカウンタピリティの 6W2H. 誰が(Who ). 誰がアカウンタピリティを行うのか?. 誰!こ(Whom). 誰にたいしてアカウンタピリティを行うのか?. 何を(陶. いかなる内容のアカウンタピリティを行うのか?. 理事長理事監事事務局長スタッフ顧問カウンターリ t ートナー. ドナー会員市民政府・行政企業支援対象者子ども. 会計組織のレーゾンテートルプロジェクト どのようにして (How). Iどのような方法やツールを使いながらアカウンタビリティを行うのか? 報告書ニュースレター. ビジュアル・ツール音楽朗読演劇など. n ) いつ(Whe. いつアカウンタピリティを行うのか?. どこで(Wh e r e ). どの場でアカウンタピリティを行うのか?. 何故(Why ). そもそもアカウンタビリティを行う目的は何か?. コスト (Howmuch). アカウンタピリティに要するコストはどれくらいか?. 事前途中終了時. ドナーのところ総会理事会事務局会議. 理解信頼評価資金獲得広報戦略的目的. 人数時間人件費教育費その他諸費用. 特に、重要なのは、誰に ( Whom) に対するアカウンタビリティなのか、そのターゲット(対象)を特 定化することである。そもそも、ターゲットが誰であろうと、同じ内容を説明するような自己本位のアカ ウンタピリティは成り立たない。基本的に、相手あってのアカウンタピリティである。ターゲットの特定 化こそ、その戦略的な説明行為としてのアカウンタビリティの最初の一歩に値する。 次に重要なのは、特定した相手が一体何の説明を求めるのか、どのような情報を知り得たいのか、つま り説明の中身 ( W h a t ) を絞り込む必要がある。要するに、スクリーニング ( s c r e e n i n g ) である。そこでポ イントとなるのが、相手との良好なコミュニケーションである。一見すると、アカウンタピリティは、説 明する側から説明を受ける側にたいする一方的な説明行為のように思われ、両者の距離は遠いと思われが ちであるが、これはアカウンタビリティの水準が未だ、低い状態にあるといわざるをえない。そうすると、 アカウンタビリティは一種のマーケティング調査を必要とする。すなわち、相手たるドナーやターゲット.

(5) 7 1. のニーズを把握しなければ、思いもかけないミス・マッチングを起こしてしまい、 NGO・NPOの信頼と信 任を高めることにつながらない。例えば、 ドナーの中には、意外にも、細かい会計報告を執劫に求めるの ではなく、就中、プロジェクトそのものに対する NGO・ NPOの熱意や思い入れを聞きたい場合すらある。 第 3に重要なのは、アカウンタピリティには、説明すべき内容を、どのような方法 (How) でもって伝. えるか、という点である。要するに、プレーミング(企aming) である。アカウンタピリティも、広い意味 でプレゼンテーション行為に相当する。プレゼンテーションは、説明すべきコンテンツ(中身)を用意す るだけでは不十分であり、そのコンテンツを理解しやすいストーリーに組み立て直し、かつまたそのスト ーリーを補強し、相手によりよく理解され伝達されるためのピ、ジュアル・ツ)ルを併せて用いることが肝 要である。ビジュアル・ツールは、視認性に富むものが好ましく、文字情報だけではなく、グラフや図、 イラストなどを駆使するとょいとされる。例えば、国際協力 NGO にとって、支援対象が文字を判読でき ない人びとや子どもである場合、ビジュアル・ツールは決定的な意味をもっ。 さらに、アカウンタピリティがプレゼンテーション行為である以上、それには、非言語的コミュニケー ションの側面にも、当然、配慮する必要がある。 NGO・ NPOが会員や支援者にたいして寄付を求めるさい、 コンサートを催したり、音楽を奏でたりしながら、非言語的コミュニケーションを用い、場の雰囲気を整 えた上で、言語的なアカウンタピリティを行うケースがよくある。こうして見ると iアカウンタピリティ には、それこそ戦略的な演出の能力が求められることがわかる。 その他、度外視されてしまうのがアカウンタピリティのコスト (Howmuch) である。それは、金銭的な 費用を意味するだけではなく、アカウンタピリティを準備・実施する時間や労力、さらにはアカウンタピ リティの能力を育成・強化するためのトレーニング経費・時間も含まれる。この点を勘案しておかないと、 質の高いアカウンタピリティは求められないであろう。 4. NGO・NPOのアカウンタビリティの説明様式. かかる前提要件を確定した上で、 NGO・ NPOが戦略的な説明行為としてのアカウンタピリティを成功裡 に収めようと試みるとき、一定の説明様式に準拠すべきである。特に、プロジェクトについての説明がそ うである。 NGO・NPOのミッションや目的などのレゾンデートノレ(存在事由)に関する説明にたいしては、一定の. 説明様式が求められるほどのものではない。また、会計については、会計のみを説明する場合だと、複式 簿記や貸借対照表、損益計算書、並びにドナーが求める書式などに則ることが、一種の一定の説明様式に 値するので、ここで改めて取り上げる必要はないであろう(以下、アカワンタピリティという場合、それ はプロジェクトに関するアカウンタピリティを意味する)。 それでは、 NGO・NPOが自らのプロジェクトについて、戦略的な説明行為としてのアカウンタピリティ を行う際に準拠すべき説明様式とは、一体何であろうか? この場合の説明様式とは、プロジェクトにた いする一定の説明の仕方や手順であり、また説明に際して配慮すべき観点を意味する。それはまた、説明 を受ける側にとっても、一定の認識枠組みが提供される。 もちろん、 NGO・NPOは、全てのフ。ロジェクトに関するアカウンタピリティを、説明様式通りに行えば よいというものだ、はない。あくまでも、これは準拠すべき「準則」であり、そもそも、先に述べたように、 実際のアカウンタピリティにおいては、 6W2Hに適切に応じた TPOが求められる。 この点を前置きした上で、その説明様式を、図式化すると図 2 . (fNGO・NPOのアカワンタピリティの 説明枠組み(プロジェクト系)J ) のとおりである。図 2 . には、マネジメント上の PDCAサイクルに、プ ロジェクト・ニーズ ( p r o j e c tn e e d s ) 一計画 ( p:P l a n n i n g ) /インプットCi n p u t:投入)一実施 (D:Do) ーアウトプット ( o u t p u t :産出) -アウトカム (outcome:成果)ーインパクト ( i m p a c t :波及効果)、並び.

(6) 7 2. Memoirs o fTheS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9 (2007 ). に必要性 ( r e l e v a n c e )・経済性 (economy)・実効性 ( a c t u a le f f e c t )・効率性 ( e f f i c i e n c y )・有効性 ( e f f e c t i v e n e s s ) および妥当性 ( v a l i d i t y ) という評価項目が重ね合わされている。 尚、周知の通り、開発援助に際して、 PCM ( P r o j e c tCydeManagement) の手法に基づいた PDM ( P r o j e c t DesignM a t r i x ) とし、うプロジェクト概要表がある (FASID 1997;2000;2001)。この PDMをアカウンタ. ピリティの説明様式として用いることもできょう。但し、本稿では、図 2 . を用いる。その理由は、後の 立論により明らかになる。. p(計画). D(実施). 投入. プロジェクト・ニーズ P r o j∞ tNeeds. 実施 Do. ーインプット十旨標ー. Q斗 p. q斗ぷ〉. 産出 O u t p u t. 成果 Outcome. ーアウトプット指標一. ーアウトカム指標一. ミグ. ミ〉之〉. 必要性. 実効性 a c t u a le 質問t. 効率性. 有効性. r e l e v a n c e. 経 済 性 economy. e f f i c i e n c y. e f f e c t i v e n e s s. -一」 波及効果 i m p a c t. 進捗管理 M o n i t o r i n g 途中評価 Ch ∞k. 途中見直し A c t i o n 調整 A d j u s t. C(評価). 終了時評価 Check. A(見直し). 継続的改善. 図2 .NGO ・ NPOのアカウンタピ、リティの説明枠組み(プロジェクト系). 4. 1 アウトカムのアカウンタビリティ:成果重視 端的に言って、 NGO・NPOが自らのプロジェクトについてアカウンタピリティを行う際に、最も重要な 点はアウトカムにほかならない。 NGO・NPOは、然るべきプロジェクトを通じて、どのようなアウトカム を実現するのか/あるいはまた実現したのか、これが明確に説明されなければならない。また、アウトカ ムについての説明を説得力あるものに仕立てるには、プロジェクト・ニーズからストーリーを組み立てて . のビ、ジュアル・ アカウンタビリティを遂行しなければならない。尚、本項を記載するにあたって、図 3. ツーノレを援用する。 4. 2. プロジェクト・ニーズ→計画/インプットのアカウンタビリティ:プロジェク卜圃ニーズのスク. リーニング ブρロジェクト・ニーズは、 NGO・NPO自身が掘り起こす場合もあれば、支援対象やカウンターパートナ. 一、並びに政府・行政機関やドナーから受ける要請の場合もある。ところが、プロジェクト・ニーズが肥 大化し、当該 NGO・NPOのキャパスティからすると、資金的にも人的にも組織的にも時間的にも資源動.

(7) 7 3. 員的にも、とても全てのニーズには対応で、きない場合が少なくないし、またそもそも対応する必要のない ニーズもある。こうして、資源動員の稀少性という制約の中において、必要性の観点から勘案した上で、 全フ。 ロジェクト・ニーズにたいし適切な絞り込み(スクリーニング)を行いつつ、プロジェクト計画が立 案される。 プロジェクト・ニーズ→計画の段階で、求められる説明の中で最も重要なのは、実は、プロジェクト・ニ ーズのスクリーニングである。特に、支援対象からのニーズをし、かにスクリーニングしてプロジェクト計 画を作成したかが重要なポイントとなる。. p r 申d. I I I P O d. 沙漠緑化と林檎プロジェクト. 呼窃納吃,ゴル自治fl. i会冒ftが過竜宮包司ヰ樋緩め附曹司乱π、 f合宮廷穴~"Æ化蹴量. 符を止めるとと匂二f!i種明白書ライ:A:::誕弘明人制E指司自立を震進するたの二民会作 輔10)1)::":おり也容を変質するブD'.J"ク十.. 特の入鋼拙-e. ; , ; . . 抵穴/冷冨f t l二よる貧富姥鰯ち切るー 鶴勘四国海. 。. q蜘 圃. 。晦喧. 約2 宮城酒量型こ路銀.1::.ポブラめ将爪銑凪将捌宜割 也おこい沙辺倒穴をとめる、りんご畑や住宅軒、. りんご8渇tl:Iこ』チム..-戸当た り司帰授が対前年比-e 2 0 弛噌えん. こ呪刀ロジ'~~ドø:・=住民自治. の力炉峨J 叫. 図3 .ピュアル・ツール. 尚、プロジェクト・ニーズのスクリーニングとアウトカムとの関連に触れておく。プロジェクトを計画 する際には、スクリーニングされたニーズ、を踏まえつつ、当該プロジェクトを通じて実現すべきアウトプ ットとアウトカムを予め想定し、そこから逆算して考えるバック ・キャスティング・ア プロ ーチ ( b a c kc a s t i n g. a p p r o a c h ) が掛けられた上でプロジェク ト計画が確定される 。 この作業の過程で、併せて、スクリーニン .を参照する グされたニーズがし 1かにアウトカムへ転化するかがイメージされていなければならない。図 3. d e s e r t i z a t i o n )J もしくはひとつの沙漠がもう一つ と、当該集落の周辺の沙漠の面積が広がる「沙漠拡張 ( d e s e r t i f i c a t i o n )Jの阻止、および農民の貧困化の阻止というニーズが、植林に の沙漠と結合する「沙漠化 ( よる防砂林の造林と農民の生活の向上というアウトカムとして実現されている。 ここで、「自律補完性の原理」との関係で付言しておく。 NGO・NPOは、自律補完性上の上位に位置す る政府・行政機関でも十全に対応できず、また下位に位置する当事者の個人や家族、近隣(コミュニティ や村落)でも十全に対応できない社会的課題を、対応すべきプロジェクト・ニーズで、あると判断する。換.

(8) 7 4. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9( 2 0 07). 言すれば、 NGO・NPOは、スクリーニングしたプロジェクト・ニーズ、を、市民社会レベルで対応すべき公 共的課題として認識変換したことを意味する。 4. 3 計画/インプット→実施のアカウンタビリティ:選んだ手段・方法とその実効性および経済性 次に、プロジェクト計画に基づき、所定の労力や機材・資材、予算などの諸資源が投入される。図 3 . のビジュアル・ツールのように、沙漠緑化にあたっては、相当数の百木と労力ないし労賃などが投入され る 。 この計画/インプット→実施の段階で求められる説明は、アウトプット→アウトカムという目的を実現 するために、どのような手段や方法を選択したのか、また何故に他の手段や方法を選択しなかったのか、 そして幾つかのバリエーションとして存在している手段や方法の中から選択するさいに用いた基準は何で あったのか、についてで、ある。また、選んだ手段・方法がアウトフ。ット→アウトカムという目的を実現す るために確実な実行力を持ちえていたのか、その実効性についての説明が求められる。さらに、不必要か っ無駄な支出や経費をで、きうる限り防ぎながら、いかにコスト・パフォーマンスを追求したのか、その経 済性についての説明が求められる。. 4. 4 実施→アウトプットのアカウンタビリティ:モニタリングとその中間評価および調整、効率性. プロジェクトの実施の段階において求められる説明は、進捗状況のモニタリング ( m o n i t o r i n g ) の在り方 とその中間評価 ( C:C h e c k ) の内容、そしてモニタリングや中間評価を踏まえたフ。ロジェクト計画の調整. (A:A司 j u s t ) あるいは見直し ( A:A c t i o n ) についてである。 プロジェクトの実施により一定の産出結果たるアウトプットが得られる。アウトプットは、図 3 . の場 合、生育した植林の本数や収穫された果実の実数である。実施→アウトプットの段階において、無駄なく かつまた無理なく、計画に沿ってプロジェクトが進展し、所期のアウトフ。ットが得られたかどうか、その 効率性についての説明が求められる。 4. 5 アウトプット→アウト力ムのアカウンタビリティ:有効性. NGO・NPOのブロジェ,クトは、決してアウトプットのレベルで、完了するわけではないし、本来、アウト . を例にすると、たとえ、生育した植林の本数や収穫さ プットそれ自体に意義をもつわけではない。図 3. れた果実の実数が、所期の予定数をいくら超えたとしても、そのこと自体に意義があるわけではない。あ るいはまた、別件のプロジェクトにおいて、学校や保健所などの箱物の建設、里山の整備、地域通貨の発 行そのこと自体に意義があるわけではない。あくまでも、重要なのは、アウトプットを踏まえて実現した /実現すべきアウトカムなのである。 アウトプット→アウトカムとの関係は、小目的→大目的との関係と言い換えることもできる。また、ア ウトフ。ットとアウトカムをつなぐ接点は、「だから、どうなの? ( S oW h a t ? )J という問い掛けである。図. 3 . の場合、生育した植林の本数や収穫された果実の実数にたいして、「だから、どうなの ?J という聞い を掛ける。改めて図 3 . をみると、そこでは植林により、「沙漠拡張」もしくは「沙漠化 Jを食い止めた成 果と、収穫された果実により、農民の所得が増加した成果が説明されている。アウトフ。ツトとしづ産出結 果とアウトカムという成果が連動している。要するに、アウトカムは、アウトプットに基づいて実現され るのである。 こうして、アウトプット→アウトカムの段階に求められてくる説明は、アウトプットとアウトカムとが いかに関係し、いかに有効に機能して成果をもたらしたのか、その有効性が問われる。例えば、学校や保 健所などの箱物が落成したとしても、これらが有効に利用されていなければ、所期のアウトカム(成果).

(9) 7 5. が十分に上げられていないわけである。 4. 6 アウト力ム→インパクトのアカウンタビリティ:正負のインパクトと妥当性. 尚、アウトカムは、思わぬ、正負双方のインパクトを惹起するケースが生じる。その場合、改めて、ア ウトカム→インパクトの段階において、インパクトの内容およびインパクトに対するアウトカムが潜在的 に有する妥当性(正負双方とも)について説明しなければならない。 例えば、負のインパクトの例として、沙漠に井戸が掘られ、その周囲に居住する民衆の多くが水を享受 できるはずで、あったが、地域ボスがこれを排他的に利用すると、かえって地域の権力関係を強めることに なる。よって、このような負のインパクトが生じた場合、プロジェクトの見直しに関する説明が必要とな る。もちろん、例示したケースなどは、プロジェクトを計画する段階で、アウトカム→インパクトについ て予期することが肝要であることは言うまでもない。 インフ。ット、アウトプットおよびアウトカムについては、それぞれ幾つかの然るべき数値指標を示した 上で、数値による説明を加えることにより、アカウンタピリティの質を高めることが求められる。図 3 . においても、数値の説明がされている。特に、アウトカム指標に所得という指標を用いることによって、 プロジェクト以前と以後における所得の増加が理解できる。このような、数値指標は、アカウンタピリテ ィを受けながら評価する側にとって、大変理解しやすいツールとなる。. 5 . NGO・NPOにおけるグッド・マネジメントとグッド・ガバナンス ところで、プロジェクトにたいするアカウンタピリティを含めて、優良なアカウンタビリティを可能に させる条件は、取りも直さず、 NGO・NPOのグット・マネジメント ( g o o dr n a n a g e r n e n t:健全な経営/管 理)の下支えがあるからにほかならない。つまり、「火のないところに煙は立たぬ」の喰えの通り、グット・ マネジメントの裏付けがあってこそ、はじめて優良なアカウンタピリティが生まれるのである。それ故に、. NGO・NPOは、絶えずグット・マネジメントのベスト・プラクティス ( b e s tp r a c t i c e:最優良実践)を目指 す必要がある。逆に言えば、アカウンタピリティに劣っていると評価される NGO・NPOは、グット・マ ネジメントに達していないとも推測できる。 但し、いかにグット・マネジメントが遂行しえているとしても、そのことが直ちにプロジェクトに関す る優良なアカウンタピリティに直結するわけではない。グット・マネジメントと優良なアカウンタピリテ ィとの関係は、前者が後者を生み出す必要条件ではあるものの、決して十分条件にはなりえないのである。 先に検討した J A N I Cの「基準j 原案は、あくまで、も必要条件のみ提示で、あって、十分条件に対応していな い。それ故に、これまで述べたように、プロジェクト・マネジメントとは相対的に独立し、一定の説明様 式の「準則」に則り、戦略的な説明行為としてアカウンタピリティが求められる次第である。 さて、それにしても、プロジェクトのアカウンタピリティにたいする一定の説明様式であるが、実は、 これはアカウンタビリティ以前の段階におけるプロジェクト・マネジメントの様式とオーバーラップして いることに改めて気付く。 PDCAサイクル、モニタリング、アウトプットとアウトカムおよび内部評価/ 外部評価は、もともとプロジェクト・マネジメントそのものである。ということは、プロジェクト・マネ ジメントとプロジェクトにたいするアカウンタビリティの説明様式とは、互いに通底していることになる。 要するに、両者は通底しつつも、プロジェクト・マネジメントは内部マネジメントにおける範曙であり、 アカウンタビリティは、とりわけ、外部マネジメントにおける範轄にあたり、内部から外部に向けて、意 図的に表出される行為である。 およそ、 NGO・NPOにとって、グット・マネジメントのベスト・プラクティスを求める在り方とは、ス.

(10) 7 6. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .1 .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9( 2 0 0 7 ). タップ全員が、プロジェクトのマネジメントとそのアカウンタピリティの両方に精通していることであろ う。そしてまた、そのような NGO・NPOであるように方向付けを行う理事会も、何よりもグッド・ガパ ナンス ( g o o dg o v e m a n c e:健全な統治)が求められる次第である。ここでも、逆に言えば、アカウンタピ リティに劣っていると評価される NGO・NPOは、グット・ガパナンスに達していないとも推測できる。. 6 . NGO・NPOのアドボ力シー アドボカシー ( a d v o c a c y ) は、権利擁護とも訳されるが、本稿では NGO・NPOにとって、「自律補完性 の原理」に基づき、自らの力量を超えた範囲における社会的・公共的および政策的課題について、基礎自 治体や中間自治体および政府、とりわけ行政機関、並びにリージョナル組織やグローパル組織にたいする 政策提言である、と定義する。 それでは、 NGO・NPOのアドボカシーを、政策過程全体の中に位置付けてみよう. D. 図4 . (1政策過程と. NGO・NPOのアドボカシー J ) は、それを図式化したものである。 図4 .は、アウトカム重視の政策スタンス、政策 PDCAサイクノレおよび政策評価というように、 NPM(New. P u b l i cM a n a g e m e n t:新しい公共経営)改革で唱道さる政策マネジメントが重ね合わされている。政策担当 者は、基本的に、政策の所期のアウトカムを求め、その政策は事後的に必要性・経済性・実効性・効率性・ 有効性および妥当性などの評価項目によって評価されるが故に、事前にも、こうした評価項目を念頭に置 きながら政策を作成し、また政策 PDCAサイクルを積み重ねることを通じて、所期のアウトカムが実現さ れると想定する。. NGO・ NPOが行うアドボカシーと政策過程との接合は、主に、政策形成の段階においてである。他にも、 アドボカシーは、政策の実施段階において、モニタリングや中間評価を踏まえつつ、政策の中間見直しと しての提言、および政策の評価段階において、外部評価としての提言、というかたちで行われる。 中でも、最も重要なのは、政策形成の段階におけるアドボカシーである。但し、 NGO・NPOからアドボ カシーを受ける自治体・政府および国際機関サイドには、財源や人材、技術を含め、もともと「資源の稀 少性」としづ限界がある。だから、 NGO・NPOから提出された政策提言書が、可及的に、政策として実現 されるわけではない。一般に、政策は、政策担当者が幾多の社会的課題もしくは政策課題 ( p o l i c yi s s u e ) の中から、必要性の観点から「審判 j して残ったものが、政策として採用される。換言すれば、政策は、 政策的に課題解決が必要なものを政策として「切り取る」作業なのである。したがって、 NGO・NPOから の政策提言書は、このようなかたちで「審判」される。それ故に、 NGO・NPOは、政策提言書を提出する 作業と併せて、その政策提言書が採用されるように、議員や行政へのロビング(市民活動センター神戸. 2 0 0 5 )、様々なキャンペーン活動を展開し政策担当者を促すわけである(ルービン 2 0 0 2 )。 ところが、政策は、必要性の観点からのみ、作成されるわけではない。通例、政策担当者は、政策の実 施によって所期のアウトカムを実現しようとするのであれば、アウトカムとの関連で、インプットとアウ トプットの具体的な検討を行う。また、政策の「事前評価J として、必要性の他にも、経済性・実効性・ 効率性・有効性および妥当性の観点から検討を行う。これが、政策思考の手順である。 このように、政策担当者が一定の政策思考の手順をとるならば、 NGO・NPOは、かかる政策思考の手順 に則る必要がある。すなわち、 NGO・NPOは、図 4 . をアドボカシーにおける提言様式として捉え返しつ つ、相手の枠組みの中に入り、相手の枠組みで考え、相手の枠組みを使って提言書を取りまとめることが、 より効果的なのである。少なくとも、 NGO・NPOは、政策の必要性を力説しつつも、そのアウトカムを明 示し、コスト・パフォーマンに優れ、かつまた実効性のあるインフ。ットを具体的に提示すべきである。故 に、アドボカシーは、「言いたいことを言い放す」、デモストレーション行為と一線を画する。.

(11) 7 7 7. アカウンタビリティの説明様式とアドボカシーの提言様式の通底. . (rNGO・NPOのアカウンタピリティの説明枠組み(フ。ロジェクト系)J ) ところで、一瞥した限り、図 2 と図 4 .. r c政策過程と NGO・NPOのアドボカシー J) は、近似している。いままでの、議論を総合すると、. i)アカウンタピリティにおける説明様式、並)プロジェクト・マネジメント、温)アドボカシーにおけ. る提言様式、並びに i v ) 政府・行政機関の政策過程も、お互いに近似している。. p(計画). D(実施). 投入 I np u t ーインプット指標一. 政策課題 P o l i c y i s s u e. J I. 産出 O u t p u t ーアウトプット指標一. 実施 Do. 成果 Outcome ーアウトカム指標一. ミグ. ミグ. ミグ. 必要性. c t u a le f f e c t 実効性 a. 効率性. 有効性. r e l e v a n c e. 経済性 economy. e f f i c i e n c y. e f f e c t i v e n e s s. ミ~. 波及効果 Imp a c t. 進捗管理 M o n i t o r i n g 途中評価 Check. C (評価). 終了時評価 Check. ,. ••••• •••••••• • • • • • • • • • ••••••••• ••••••• • • • • • • ••••• -a'. -. ・. ••••• •••••• • • • • • •••••. E. ・. -. l 国. -. ••••• ••••••••• • • • • • • • • • • •••• ••••••••• •••••••••. ・. 途中見直し A c t i o n 調整 A d j u s t. A(見直し). 継続的改善. 図4 .政策過程とNGO・ NPOのアドボカシー. では、何故に、近似しているのか? それは、お互いに、全てが同じではないにしても、その根本的な 思考方法がベースの部分で通底し合っているからである。要するに、換言すると、公共的課題にたいする 課題解決の思考方法が、重要なところで通底し合っているのである。社会的課題を発見・認識し、それを 公共的課題として絞り込み、課題解決に向けて一定の諸資源をインプットしつつ、所期のアウトプットお よびアウトカムを実現し、その結果、公共的課題解決を目指すという思考方法は、基本的に、同様のもの なのである。 そもそも、公共的課題の課題解決は、行政機関が専権的に独占する事項ではないし、また全てに渡って 十全に対応しきれるわけで、はない(対応しようとした結果、「行政国家」の拾頭をもたらした)。公共的課 題は、一方において行政が政策課題として対応するとともに(r 行政的公共性J の課題解決)、他方におい. r市民的公共性」の課題解決)、また行政と NGO・NPOが協 c 働しながら対応する。その他、公共的課題は、事実、市場的公共性として企業が対応する場合もある c r市 て NGO・NPOがプロジェクトで対応するし. 場的公共性」の課題解決)。いずれにしても、公共的課題の課題解決は、共通の思考方法をベースに据えな がら行われる。.

(12) 7 8. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .1 .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9( 2 0 07). 但し、大きな違いもある。第 1~こ、公共的課題の課題解決にたいする共通の思考方法といっても、その 実施主体が異なる故に、基本的に、 NGO・NPOは社会的公正、行政は平等や公平・統一性という基準がバ イアスとなり、それぞれの思考方法を拘束する。第 2に 、 NGO・NPOのプロジェクトは、政策体系もしく は政策ツリーからすると、基本政策 ( p o l i c y ) -施策 ( p r o g r a m ) 一事務事業 ( p r o j e c t ) のうち、事務事業 に相当する故に、そのプロジ再クト規模は相対的に基本的に小さい。しかし、こうした違いがあるにして も、公共的課題の課題解決にたいする思考方法が共通している点は、行政 -NGO・NPO聞を架橋する役割 を果たす。 8. 市民社会の強化. 公共的課題の課題解決に向けて、 NGO・NPOは、一方において、自らのプロジェクトとしての解決を試 み、それをアカウンタピリティとして説明し、また他方において、行政にたいして然るべき政策として解 決させるべくアドボカシーを行う、というように表出行為を実施する。それでは、最後に、このような NGO・NPOのアカウンタビリティとアドボカシーが、し 1かにして「市民社会の強化」に連動するのか、と. いう論点を整理し、本稿の結語としよう。. p u b l i c i t y ) といえる。アカウンタピ 第 lに、アカウンタビリティとアドボカシーは、市民社会の広報 ( リティとアドボカシーがともに表出行為、したがってまた情報発信行為であるが故に、それを受ける側は、 改めて社会的課題の認識を促される。 NGO・ NPOから発せられるアカウンタビリティとアドボカシーの精 度が増せば増すほど、情報力を担保した市民社会が強化する。 、 NGO・NPOがそのプロジェクトについてアカウンタピリティを行うことは、 NGO・NPOの実 第 2に 績の証明となる。アカウンタピリティが行われなければ、当然、その実績を見ることはできない。沈黙は アカウンタピリティにならない。その意味で、アカウンタピリティは、 NGO・NPOの実力を可視化するツ ーノしである。アカウンタピリティを通して、 NGO・NPOの実績を認知させることは、実績を伴う市民社会 の強化に連動する。 第 3に、アカウンタピリティにおける説明様式とおよび、ブ ロジェクト・マネジメント、アドボカシーに ρ. おける提言様式、並びに政府・行政機関の政策過程が近似していること、その近似の理由が公共的課題の 課題解決にたいする思考方法を共有していることは、先に指摘した通りであるが、このことが政府・行政 機関と NGO・NPOを架橋し、協働事業を計画・実施しえる条件となる。要するに、かかる思考方法は、 NGO・ NPOと政府・行政機関とが対等に意思を疎通しつつ協働事業を実践するための共通基盤なのである。. そして、 NGO・NPOは協働事業の実践を通じて、 NGO・NPO自身の実力を認めさせることになり、その 実績は市民社会の強化に連動する。また、ジャン・クーイマン(J a nK o o i m a n ) が指摘するように、政府・ 行政機関と NGO・NPOとの「協治 ( c og o v e m a n c e )J において、アカウンタピリティは「キー・イッシュ 同. ー」という位置付けを得る ( K o o i m a n2 0 0 3 )。尚、クーイマンのいうところの「協治」は、先に触れたソー シャル・ガバナンスと同義であるといえる。 第 4に、第 3の点とも関係するが、上記思考方法の共有は、政府・行政機関と NGO・NPOとの聞のい わば信頼醸成装置として機能しながら、政府・行政機関から NGO・ NPOへの事業の外部委託(o u t s o u r c i n g ) を容易にする。 NGO・NPOは、外部委託された事業にたいする実績を含めてアカウンタピリティを行うこ とにより、委託事業を遂行しえる実績を示し、かつまた市民社会の強化に寄与する。但し、政府・行政機 関から外部委託された事業に依存する「下請け j に依存する NPOの在り方は、むしろ、市民社会の弱体化. 0 0 6 )。 に連動することにつながり、この点十分な注意を要する(田中 2 第 5に、上記の諸点を踏まえつつ、政府・行政機関の権限の一部を NGO・NPOへ委譲することによっ て、したがってまた、一部の公共的課題の課題解決については、その担当主体を政府・行政機関から NGO・.

(13) 7 9 NPOへ転換することによって、漸進的に「脱主権国家」を具現化しつつ、市民社会の強化へ連動させる。 それは、かつて、アラン・ウォルフが指摘した「国家の市民社会への再吸収」のプロセスの一環といえる. ( W o l f1 9 7 7 )。 こうしてみると、 NGO・NPOのアカウンタビリティとアドボカシーを強化することは、「市民社会の強 化」に向けて、実は、極めて重大な戦略性を潜在させていることが理解できる。そうすると、 NGO・NPO のアカウンタピリティとアドボカシーを強化するミッションが市民性教育に課せられることになる。. 追記. 本稿は、筆者が外務省の主催する 2 0 0 6年度 INGOのアカウンタビリティ強化セミナー」の委員として 関係したことが直接の契機となり起稿したものである。. A N I C (国際協力 NGOセンター)に委託された。 J A N I Cはセミナーを開 このセミナーは、外務省から J 催するにあたり、日本の NGOの 13ネット」と称される「ネットワーク NGOJ の J A N I C、名古屋 NGO センターおよび関西 NGO協議会のメンバーから構成される委員会方式を採用した。筆者は、このうち関 西 NGO協議会から指名を受けた上で、委員会に加わった。 委員会におけるセミナーの内容や進め方についての議論、並びに関西 NGO協議会における意見を取り まとめるための議論は、大変参考になるとともに、アカウンタピリティに関する研究の重要性を痛感した。 本稿は、その研究成果の一つである。 参考文献. K o o i m a n . ,J a n( 2 0 0 3 ) Governinga sGovernance,SAGEP u b l i c a t i o n s . A l a n( 1 9 7 7 ) Thel i m i t sof L e g i t i m α c y:P o l i t i c a lC o n t r a d i c t i o n sofContemporaryC a p i t a l i s m, F r e eP r e s s . W o l f e, 19 9 7 ) ~PCM-開発援助のためのプロジェクト・サイクル・マネジメント-~国際開発高等教育機 F A S I D( 構 。. F A S I D( 2 0 0 0 ) ~PCM-PCM 手法に基づくモニタリング・評価-~国際開発高等教育機構。 F A S I D( 2 0 0 1 ) ~PCM 手法の理論と活用』国際開発高等教育機構。 J A N I C( 2 0 0 6 ) ~NGO のアカウンタビリティ向上のための行動基準~ J A N I C 。 シーズ ( 2 0 0 6 )~データから見る NPO の信頼性確保のための 10 のチェックポイント-寄付者の信頼をどう 得るか-~シーズ。. 重田康博 ( 2 0 0 5 ) ~NGO の発展と軌跡一国際協力 NGO の発展とその専門性-~明石書店。 市民活動センター神戸 ( 2 0 0 6 ) ~NPO のためのアドボカシー読本』市民活動センター神戸。 ソロス,ジョージ ( 2 0 0 6 ) ~世界秩序の崩壊-1 自分さえよければ社会 J への警鐘-~ランダムハウス講談 社 。 田中弥生 ( 2 0 0 6 ) ~NPO が自立する日一行政の下請け化に未来はない-~日本評論社。 新田和宏 ( 2 0 0 6 )1 市民社会を強化するカバナンス、パブリック・マネジメントおよびデモクラシー J ~近 畿大学生物理工学部紀要』第 1 8号 。. ( 2 0 6 ) ~政策評価の実践とその課題 アカウンタピリティのジレンマ-~萌書房。 ノレーピン,バリー. R ( 2 0 0 2 ) ~アメリカに学ぶ市民が政治を動かす方法』日本評論社。 山谷清志.

(14) 8 0. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9( 2 0 07 ). 英文抄録. TheS t r a t e g yofA c c o u n t a b i l i t yandAdvocacyi nNGO&NPO K a z u h i r oN i t t a1 T h i sp a p e ri st a k e nUpa b o u tt h ea c c o u n t a b i l i t yanda d v o c a c ywhichk e e p sb e i n gp o i n t e do u tt h eweakp o i n to f J a p a n e s eNGO'and , NPO. Wec a nr e c o g n i z et h a tt h ea c c o u n t a b i l i t y. a nda d v o c a c ya r et h ee x t e n s i o na c twhichi sw i t h i nc a t e g o r yo ft h e ti sr e s e m b l et h ee x p l a n a t i o ns t y l eo fa c c o u n t a b i l i t yandt h ep r o p o s a ls t y l e o u t s i d emanagementt o g e t h e r .Anda l s o,i o fa d v o c a c y ,b o t ho fs t y l es h a r e st h i n k i n gmethodi nb o t t o m .Then,i tc a nb es a i dt h a tt h eweakp o i n to ft h e st h ep r o d u c to fn e c e s s i t yi nNGOa n d a c c o u n t a b i l i t ya n da d v o c a c ys h a r i n gt h i n k i n gmethodi sn o tac o i n c i d e n c e,i NPO. I tw i l lbeseemt h a ts t r e n g t h e n i n go f t h ea c c o u n t a b i l i t yanda d v o c a c yi nNGOandNPOi sv e r yi m p o r t a n tp o i n tf o r " s t r e n g t h e n i n go ft h ec i v i ls o c i e t y " .Moreover ,wec a ne x p e c tt og a i na ne x p e c t e doutcomet h r o u g ht h es t r a t e g i c a c c o u n t a b i l i t ya n da d v o c a c yfromNGOandNPOt ot h eo u t s i d e . I nt h i sway ,t h i sp a p e rd e t e r m i n e st h ee x p l a n a t i o ns t y l eo fa c c o u n t a b i l i t yandt h ep r o p o s a ls t y l eo fa d v o c a c ywhich s h o u l db en e c e s s a r y .Andt h i sp a p e re x a m i n e si m p o r t a n ti s s u et h a ts t r e n g t h e n i n go ft h ea c c o u n t a b i l i t ya n da d v o c a c y i nNGOandNPOconcemsw i t h" s t r e n g t h e n i n go f t h ec i v i ls o c i e t y " . 1 .C o u r s eo f T e a c h e rT r a i n i n ga n dL i b e r a l A r t s, K i n k iU n i v e r s i t y , W a k a y a m a649・6493, J a p a n ..

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