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スマートシティを中心としたライフスタイル変革とグリーンリカバリーの実現

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スマートシティを中心としたライフスタイル変革とグ

リーンリカバリーの実現

諸賀加奈・吉田謙太郎

1 はじめに  今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響に よって,わが国ではライフスタイル・ワークスタ イルが見直され,情報通信技術(ICT)を活用し た在宅勤務,オンライン会議ツールの普及が進ん だ.ちょうど第 5 世代移動通信システム(5G) の導入も始まり,今後も ICT を活用した新常態 下の新たなワークスタイルの普及が進むと考えら れる.また,企業の本社移転や国立公園等におけ るワーケーションの推進も進められるなど,都市 一極集中による外部不経済が見直され,人々の生 活や行動に大きな変化が生じつつある.現段階に おいては,わが国では欧米などと比較して爆発的 な感染拡大は生じておらず,海外のように都市封 鎖することなく,ほとんどの国民が外出自粛等の 行動制限を受け入れることにより,国家的な緊急 事態に対応している状況である.2020 年 4 月に 発出された緊急事態宣言が解除された後も,11 月になると第 3 波と言われる感染拡大が進み,自 粛を余儀なくされた.自粛期間が長引くことによ り,新常態とその後の生活様式の変化の定着化が 進むと見られる.コロナ禍による長い自粛期間を 経験し,そこからいかに復旧していくのかが,今, 世界が直面している課題である.  そのような状況の中,第 5 期科学技術基本計画 に基づき,わが国が目指すべき未来社会の姿,超 スマート社会として「Society 5.0」が提唱され, その実現の場であるスマートシティでの取組みに おいても,その在り方の変化が求められている. これまでのような都市一極集中や都市機能の効率 化・利便性に着目するだけでなく,国家的な危機 に直面した場合に対処できる,都市機能や生活の 脆弱性,安全性を考慮した取組みが重要となる. また,交通システムにおいては中国や米国カリ フォルニア州等で 2035 年に向けた電動化の動き があり,さらには公共交通や航空会社の苦境が長 期化するなど,感染症の世界的大流行が大きな変 化をもたらす可能性がある.今回の新型コロナウ イルスの影響では深刻な感染拡大や景気後退等の ネガティブな側面だけでなく,世界的な CO2排 出量減少,大気汚染改善等のポジティブな側面も ある.コロナ禍からの回復において,脱炭素かつ 生態系に配慮した持続可能な社会・経済を構築し ていく,グリーンリカバリー(緑の復興)を指向 した施策が一段と重要になると考える.  本稿では,スマートシティやデジタルトランス フォーメーション(DX)の取組みや現状を紹介し, スマートモビリティを中心としたポストコロナ社 会の在り方についてグリーンリカバリーの視点か ら考察する. 2 スマートシティの取組みについて  わが国ではエネルギー供給や都市問題等の解決 を図るため,2010 年頃からスマートシティ構想が 注目され,実施されている.スマートシティ構想 については,国内外で様々なプロジェクトが推進 されているが,わが国でも経済産業省「次世代エ ネルギー・社会システム実証事業」,内閣府「環 境未来都市構想」,総務省「ICT スマートタウン構 想」,最近では国土交通省「スマートシティモデル 事業」など,政府支援によるスマートシティ構想 の実証実験が実施され,国家規模のプロジェクト としてスマートシティへの取組みが行われている.  スマートシティについては,統一的な定義はな く,国や地域,人によって見解の相違がある.一 般的には,ICT 等の先端技術を用いて様々な都市 機能の DX 化を行い,基礎インフラと生活インフ 47 環境経済・政策研究 Vol. 14, No. 1 (2021. 3) 諸賀・吉田:スマートシティを中心としたライフスタイル変革とグリーンリカバリーの実現

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ラの両方を効率的に管理し,環境に配慮しながら 効率性や生産性を向上させ,人々がより快適に暮 らすことを目指した都市システムのことをいう. さらには,その都市システムが持続可能な発展と 総合的・効果的な組み合わせを持つことが期待さ れている.スマートシティ化は人口の集中した都 市だけではなく,高齢化が進む地方においても重 要な課題である.  交通分野でのスマートシティプロジェクトで は,電気自動車や燃料電池車等を利用した地域内 エネルギーマネジメントシステムの開発や実証実 験事業が国内外で展開される.最近では,トヨタ 自動車が静岡県裾野市で実験都市「ウーブン・シ ティ(Woven City)」プロジェクトを開始しており, そこでは,ロボット,人工知能(AI),自動運転 といった先端技術を導入・検証できる,次世代モ ビリティサービス「MaaS」を核にした都市を新 たに作り上げることを目指している.  今回の新型コロナウイルスの影響で自動運転が 可能な配送ロボットやドローンなど非接触型サー ビスの需要が高まっており,エネルギー・社会イ ンフラへの自動車・自動運転技術の適用は,今後 ますます拡大していくと考えられる.特に,自動 運転技術の汎用化は,シェアリング・エコノミー との親和性も高く,モビリティの電動化と組み合 わせることにより,CO2排出量や大気汚染物質の 削減に大いに寄与する可能性がある.自動運転技 術については,ホンダが部分的なレベル 3 を市販 車に初実装したが,現状では日本の消費者は自動 運転に対して消極的であることが調査から明らか となっており,実験都市等における先進的な取組 みを実施し,消費者の信頼性を高める必要がある. 例えば,筆者がインターネット・アンケート調査 において,自動車免許所有者に自分自身にとって 望ましい自動運転レベルを質問した結果は表 1 の とおりになる. 3 スマートシティ構築における都市化と ICT 活 用の現況  あらゆる都市機能の DX 化を実現するスマート シティでは,エネルギーや交通等の分野での社会 基盤の推進に向けて積極的な取組みが行われる. 現在,ICT は世界で持続可能なスマートシティを 実現する上で重要な役割を果たしており,エネル ギーや交通分野では ICT をスマートシティプロ ジェクトと融合させるための多様な取組みが実施 されている.近年,アジア地域の都市では,野心 的な目標を掲げたスマートシティプロジェクトが 実施され,その実現に向けた動きが活発であり, 関連技術への投資が増加し,スマートシティのイ ンフラのベースである ICT 環境の整備を推進し てきた.  ここで,アジア地域の都市化がいかに進んでい るのかを見てみる.表 2 は,World Bank の Open Dataをもとに,アジアの都市化がどの程度進ん でいるのかを示したものである.都市化の進展で は,人口 100 万人以上の都市数がアジア地域で一 層増加するだろう.これまでの都市問題では交通 渋滞や大気汚染問題等が取り上げられたが,コロ ナ禍では新たに大都市への人口集中による感染拡 大リスクの問題が生じている.これはスマートシ ティのあるべき姿を考える上で,パンデミックの 表 1 自動車免許保有者が望む自動運転技術レベル レベル 概 要 件数 (%) 0 自動運転機能なし 296 (14.1) 1 運転支援 459 (21.9) 2 部分的自動運転 461 (22.0) 3 条件付自動運転 265 (12.6) 4 高度自動運転 266 (12.7) 5 完全自動運転 341 (16.3) その他 8 ( 0.4) 注:筆者が 2019 年 3 月に調査実施(n=2,096). 表 2 アジア諸国の都市化率 国名 都市人口の 割合(%) 2014年 都市人口の 割合(%) 2019年 都市人口 増加率(%) (2014∼2019 年) シンガポール 100.0 100.0  0.0 日本 91.3 91.7  0.4 韓国 81.7 81.4 −0.4 マレーシア 73.6 76.6  4.1 中国 54.3 60.3 11.0 インドネシア 52.6 56.0  6.5 タイ 46.9 50.7  8.1 インド 32.4 34.5  6.5

出所:World Bank Open Data より筆者作成.

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拡散防止というもう 1 つの考慮すべき指標が明示 的に追加されたことを意味する.

 International Telecommunication Union (2017,p. 31)によると,ICT 開発指標ランキングでは, 2017年はアジアの中では韓国が 2 位で上位を維 持しており,日本は 10 位という結果であった(表 3参照).アジア諸国では,いち早く経済協力開 発機構(OECD)加盟を果たして先進国入りした 日本ではあるが,コロナ禍の中で韓国等の他国・ 地域と比較して日本のデジタル化の遅れが露呈し た.特に,台湾では,政府がインターネット上に 「マスクマップ」を公開し,また健康保険カード を活用することで,国民に対して公平にマスクを 供給するなどの DX の取組みが話題となったが, 日本では,このような行政分野をはじめとした 様々な分野において,デジタル技術を用いて社会 全体を変革する DX の遅れが表面化した.日本政 府はデジタル化の遅れを取り戻すため,ようやく 情報環境や法制度の整備,デジタル庁の新設等を 進めている状況である.コロナ禍での感染防止対 策として非接触型ライフスタイルや先端技術によ る自動化が顕在化しており,都市内のあらゆる データを有効活用したデジタル技術が社会に浸透 し,今後,スマートシティの社会実装がますます 加速化すると考えられる. 4 ポストコロナ社会でのスマートモビリティの 実現  現在,世界ではコロナ禍で都市封鎖や外出自粛 が実施され,人の移動や接触が制限され,テレワー

クなどが積極的に導入されている状況である.In-ternational Energy Agency (2020)によると,世界 のエネルギー需要は 2020 年に 5%減少し,エネル ギー起源の CO2排出量は 7%減少すると予測され ている.都市封鎖などによって自動車等の利用が 大幅に減少し,それによってガソリン使用量など エネルギー需要が減り,大気汚染が改善され, CO2排出量が一時的に減少している.しかしなが ら,CO2排出量は 2008 年 9 月に米国で発生した リーマンショックでの景気後退により急減したが, 後にリバウンドしたという事実があり,今回のコ ロナ禍での行動制限が解除され,人の移動や経済 活動が回復してくると,それに伴って,CO2排出 量の状況も元に戻るのではないかと懸念される.  日本では,在宅勤務などコロナ禍でのワークス タイルの変化により,都市から郊外や地方へ居住 地を移す人々が増えている.さらに,外出自粛な どの行動制限が実施された都市では公共交通機関 のコロナ禍での業績不振が深刻化し,公共交通 サービスが成り立たなくなってきており,特に, 地方の公共交通をいかに存続させるのかがこれま で以上に問題となってくるだろう.元々,赤字基 調の地方公共交通が一気に撤退に追い込まれると すれば,それに代替するモビリティを考える必要 がある.実際に,わが国では感染防止対策の観点 から,移動手段に変化が生じつつあり,電車やバ スの公共交通利用が減少し,自家用車や二輪車, 自転車の利用が増加している状況である.CO2排 出削減や公共交通機関の財務的サステナビリティ に対処するため,MaaS の視点から複数の交通手 段の利用者の利便性を最適化するとともに,脱炭 素化を目指した新たなプラットフォーム構築を促 し,利便性向上や感染リスク回避,脱炭素化など 複数の目標を,消費者の置かれた状況に応じて提 供することが必要となるだろう.そのためには, 多様な交通システムの連携による一層の DX 進 展,そして消費者の行動変容を促すためのナッジ (nudge)などを用いた効果的な手段が必要である.  交通サービスでも大きな転換が必要となってお り,新たな変革のためにもデータの有効な連携・ 利活用を推進し,いかにそれを実現させていくの かが重要となる.新型コロナウイルス感染症の感 染拡大による新常態への転換に際しては,グリー 表 3 ICT 開発指標ランキング 国・地域名 2017年順位 2016年順位 アイスランド 1 2 韓国 2 1 スイス 3 4 デンマーク 4 3 イギリス 5 5 香港(中国) 6 6 日本 10 11 シンガポール 18 20

出所:International Telecommunication Union(2017).

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ンリカバリーと言われるように,持続可能な脱炭 素型社会への転換を図るべきである.例えば,再 生可能エネルギー利用拡大や各種電動モビリティ の利用,高度 ICT という技術革新を活用した電 動モビリティやシェアリング,自動運転等の普及 によるラストワンマイルの移動・物流の効率化な どの普及が不可欠であると考える.それを実現す るスマートシティの取組みは,重要性が増してく るであろう. 5 おわりに  本稿では,今回のコロナ禍やポストコロナ社会 でのスマートシティの有用性について検討した. 今後,新型コロナウイルス感染症拡大のような国 家的な危機に直面した場合に,人々の移動・接触 履歴など都市のデータを多面的に利活用すること により,有効性や安全性に考慮し,感染症対策等 へ対応可能な都市機能を高める取組みが必要であ ると考える.スマートシティ事業の推進では,例 えば,エネルギー使用や公共交通の改善等を目標 として,市民サービスの質向上と運営コストの削 減を両立させることが必要である.それにより, データの収集・整理や情報共有が効率的に行える ようになり,効果的な意思決定を推進する可能性 がある.  わが国で環境負荷の少ない持続可能なライフス タイルへの転換を推進するためには,太陽光・風 力発電などやそれら再生可能エネルギー由来の水 素エネルギーなどの促進,電気自動車・燃料電池 車などの積極的な導入などグリーンリカバリーを 指向した改革を目指し,街全体のスマート化・見 える化など多様な情報により都市の可視化がさら に加速することが重要である.  以上のように,スマートシティ化推進で多様な 情報がリアルタイムに提供されることにより感染 症等の対策や利便性が向上することが期待され る.したがって,特にデータの利活用では個人情 報保護に対する費用と便益を比較しつつ,今回の コロナ禍への対応により浮かび上がった DX 化に おける東アジア諸国と日本との差違を踏まえて, 今後の対策を講じるべきである. 謝辞  本研究は JSPS 科研費 JP19K12461 の助成を受 けたものである. 参考文献

International Energy Agency (2020) World Energy Out-look 2020, IEA Publications. https://www.iea.org/reports/ world-energy-outlook-2020 (最終閲覧日:2020.11.24). International Telecommunication Union (2017) Measuring the Information Society Report 2017, Volume 1, ITU Publications. https://www.itu.int/en/ITU-D/Statistics/ Documents/publications/misr2017/MISR2017_Volume1. pdf (最終閲覧日:2020.11.26).

World Bank, World Bank Open Data. https://data.worldbank. org/indicator (最終閲覧日:2020.11.26). (もろが・かな 九州大学科学技術イノベーション政策教育研究センター) (よしだ・けんたろう 九州大学エネルギー研究教育機構) 50 環境経済・政策研究 Vol. 14, No. 1 (2021. 3) 諸賀・吉田:スマートシティを中心としたライフスタイル変革とグリーンリカバリーの実現

参照

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