開水路水面形の簡易計算法
佐々木大策
荻原能男
(受理月日 昭和39年8月31日)
A Simple and Convenient Method of Calculation
of the Water Surface Profile in an Open Chennel
DaisakuSasaki YoshioOgihara
Abstract
Authors will introduce here the simple method of calculation of water surface profile when the short obstructural structure is installed in the open channel. Generally if、 any structure is placed in the channe1, the control section appears here in many cases. This section is the division point between the supercritical flow and subcritical flow. So the ,ecti。n h。, a critical d。pth. lt i・p・ssibl・t・d・t・亘in・thi・v・lu・・In・u・h・・a・e D・・Y・ Iwasa developed the method of water surface profile calculation. But if either supercritical flow or subcritcal lflow occUrred continuously upward and downward the structure, we explain the simple method of calculation of water surface pro− file of this part and readers will understand the conditional equation of such cases.1緒
言 最近は各方面で水不足を生じて社会的な問題となっ たり、又反面洪水による災害も毎年各地で問題を起し ている。そのために、河川管理や、水路の設計にも各 種の努力がはらわれている。しかしながらこれ等の計 算には非常に多くの手数を必要としているし又模型実 験も必要とされているのであるが、大略の計画を作成 する折には、これ等の精密な計算や実験を行うのは、 時間的にも経済的にも不経済であるので、簡易計算が あれば非常に便利である。 筆者等がここに紹介するのは水路の中に比較的短い 構造物を作成した場合に水面形がどのように変化する かを簡単に求めようとする方法である。一般に水路中 に構造物を建造すると、この場所において流れは限界 流となって、常流から射流に、あるいは射流から常流 に流れが変化することになる場合が多い。このような 流れに対しては水深が限界水深であるためにその値を 求めることは可能であるし・流れの水面形も色々と研 究されている(1)。しかしながら、不連続の構造物を常 流で流じ通す場合とか、射流で流し通す場合には境界148
条件を他に求めてこの部分とその前後とを一貫して計 算する必要がある。この場合の簡易計算法を説明しよ う。2 基礎方程式
開水路の基礎方程式にっいては筆者等が前に報告し たとおり次のようにあらわすことができる(2)。 まず使用する記号文字を次のようにする(図一1参 照)。 図一1 u=平均流速 H=水 深 A=流水断面積 座 標 系t=時 間 X=流心にそった水平距離
z=河床高
9=重力の加速度 η=運動皇補正係数 α=エネルギー補正係数n=Manningの粗度係数
運動方程式、連続方程式は次のようになる。η票+・σ芸一一9鴛一9−☆(H+・)
(1)普+畷一〇 (2)
ここで、各水理量の変動は小さいものとして、定常 量と変動量と分けて式(1),(2)を線形化すること &こする。 ここにUO, Ro, Ho, Ao,はそれぞれU, R, H, Aの定常量、Zt, r, h, aはそれぞれσ, R, H, A の変動量である。又水路を長方形断面であるとし、水 路巾をB、その定常量をB①、変動量をbとして、次 のような無次元量を用いることにする。 v==w・ ζ一ナ・
_UoT
γ一一g㌃・ δ=旦= Bo Re Ho σo ξ一芸「・ 1=_x_ Ho’ ・一q9
H①b
m=一「・
θ一ケ一・ (4) Bo十2He Bo β=一一= B・+2H・ f == ゾgHo 式(1)(2)は次のようになる。÷嘉+α一妥一…2・・+÷・βξ
+÷輌一ナ吾ナ吾(5)
嘉一+γ:il,T(ξ+m+v)一・ (6) さて、流れが定常的の場合には時間に関する項が一 定になるので上式は次のようになる。・裏一+2μ+÷μβξ+÷rδ.
ナ毒一ナ吾 (7)
る「(ξ+m+v)一・ (8)
ζは水路床の関数形、mは水路巾の関数形である。 これ等の関数形は特に定めず一般的なものであるとす る。又境界条件としては、1= O(原点)における水理 量を基準にとることにして、次のように定める。 そこで式(7)(8)を1に関してラプラス変換をと ると。・・i−一÷2戸+÷・βτ+÷ぽ
一≠一・τ一ナ・て ξ十m十v・=O したがってVを消去してξにっいて整理すると次のよ うになる。 {(・≠)・+2・(・+÷β)τ } 一÷一{・・+2・(・+÷・)}m+十・ζ 今 F、== a__L f2 K・2(・+÷β) N=2(1+÷δ) とおくと 4 ξ= (10) μ aS十Nμ m Fs(s+手一・)F(Ks−F−#μ)+砲記言
逆変換をとるとξ一昔∫1。一手㌦
一÷∫1。一吾・°一)㌢
一÷。∫1。一穰・(’一・)ntd.+剥1二吾・°一め砦
構造物の長さは短く、その近くの粗度による水面形の 変化を無視すると’昭和39年12月
山梨大学工学部研究報告
第15号
2(・+÷β) ξ=奄p+≒β)( ず
#1 −・)一tff−・+≠、ζ (・・)
更に、水面形計算区間を構造物の近辺のみにするとξ一α秀竺、Z≒監勿+≠、ζ(12)
又水深にづいて書き改めるとh=f2μx._’_塑L.』動+_1_x
αf2−1 αf2−1 Bo αf2−1 (13)’ ∫2μx_一亙三_旦u H=Ho十h== Ho 十 Bo αf2−1 αf2−1+昂ゴ ’ (・4)
これらの式を用いて計算することになる。この計算 式は計算の途中で高次の微小項を省略しているので非 常に簡単な式であるが、それだけ精度が落ちるので、 この点にっいて実験によって確めることにした。 又水路床および水路壁を変化せしめる構造物の形状 は任意で良いが、構造物によって水流がはく離したり して平均流的な取扱いが出来ない場合にはこの式を使 うことはできない(3)。 けた構造物の寸法は図一一2のとおりである。 又水路壁に構造物を取付けた水路の寸法は、水路巾 が10cm,長さ2m40cm,壁高40cln,勾配1/100のガ ラス張り水路である。流量調節と測定は高水槽、バル ブ、直角三角堰によった。又水路壁に取付けた構造物 の寸法は、図一3のとおりであって、これを水路壁の 片面のみに取付けた。4実験方法
水路床又は水路壁に図一2、3の構造物を取付け て、流量を段階的に変化させてその時の水面形をポイ ントゲージによって測定した。多くの水面形は図一4 のように構造物のところに支配断面を生じて常流から 射流に流れが変化するのであるが、構造物の小さい場 合とか水深が他の個所で支配されている場合にはこの 構造物のところが支配断面となることがなく常流又は 射流の一種類で図一5のように流下することになる。 この図一5のような流れに対する計算をするのが本研 究の目的であって、この計算式(12)(13)(14)を図 一4の流れに用いることはできない。 したがって実験の方法も上流又は下流にgateを設 置して流れをContro1して図一一5の流れを生じせしめ て水面形を測定した。その測定値と計算式を比較する ことになる。3実験設備
実験は前節で説明した簡易式を確める目的で行な い、水路床に構造物のある場合と、水路壁に構造物の ある場合の2種類に分けて実験した。水路床に構造物 を作成した水路は、水路巾50cm、長さ7.Om、壁高 40cmのガラス張り水路であって、勾配は連続的に変 えることができる。又流量調節は高水槽とバルブによ り、流量の測定は直角三角堰によった。水路床に取付 57㎜ ’00仇抱 5ア ’5 .■ 逐 物 . ’5棚洞シ\ 図一2 水路床構造物(断面) 4roo,,iM 図一3 永路壁構造物(平面) d…=6.9.15.20mm 図一・4 支配断面を生ずる流れ ”“’盾?│.一‘,一.,一一一
(イ)常 流 (ロ)射 流 図一5 支配断面を生じない流れ5実験結果
「 (1) 水路床に構造物を設置した場合の水面形 水路床の勾配は1/400と1九〇〇の2種類に分けて実150
験した。この水路の粗度係数は勾配1/400の時n= 0.013、1/100のとき0.OIOであった。又水面形の測定 例は図一6に示すとおりである。図一6−1に示す水 面形は構造物の上で限界水深を横切るために、一部分 射流ができて計算値と一致することができない。図一 6−一一・2のように構造物の上で限界水深をとらない場合 には計算値と実験値とが良く一致することになる。図 一6−3は射流の場合であるが、この場合には計算値 と実験値が合はない。射流の場合にはこのような傾向 が強い。 次に式(13)(14)による水面形の計算式を我々の 行った実験値(66個)と比較して計算式を修正する ことにする。図一一7に示すように、構造物の中点にお ける計算値と実測値との差をED、下流においてEM としてこれらの値の計算水深に対する割合を調べて図
図一6 水面形測定例
竜t thVnt・95
2
1 図一7 実測値と計算値との差呼閉一
⑤
o
●Φ・ 濫紗⑭09ゆ
斤 ’iM / 、 / \\ =一H実測
κ処左_ No,15 Q=1.951/sec Fr=0.258 i=1/400 Ho=2.86cm図一6−1
一一ll,1
/…v−一一一一/ \___」処L__
一一一一_____」’@ s一_____皇白≦二__ 1 No.23_ Q=6.851/s Fr = O.329 i==1/400 正lo=5.62 cm図一6−2
No.27 Q=4.Ol/s Fr=3.51 i;1/400 Ho=0.81cm図一6−3
0 2
図一8 4 ff 6 /o 構造物の上における計算 水深と実測水深の誤差 (d :構造物の高さ)⑤
● ◎● %3 2 , ●も◎ピ80
梶悁?j
I⑪
{Oθ→2%ウ24
?S{r6 揩U一つ怩W弓o
怐C0〔@ 序
Φ0
2 4 6 8 θ 図一9 下流点における計算水深 と実測水深の誤差 示すると射流の場合図一8(ED)、図一一9(EM>の ようになる。又常流の場合には誤差は非常に小さくて 水深の5%以下に入るので計算式を修正する必要はな い。 (2) 実験結果による計算式の修正 常流にっいては修正の必要はない(誤差5%以内) ので式(13)(14)がそのまま使える。一方射流にっ いては相当誤差が大きい場合もあるのでその誤差の生 ずる法則を発見して修正式を作る必要がある。 式(14)において x= −ir十ZG(Zo:構造物の関昭和39年12月
山梨大学工学部研究報告
第15号
数、i:水路床勾配)とおくと≡凪+ri措μエ+。芦一、・・
ただし水路巾は変化しないものとする。 (15) 式(15)’の右辺の第一項は、.計算原点の水深で定常 量である。又第二項は下流誤差EMに関係する重要 な項であるので、この項を修正してEMを最小にする ようにすればよい。又第三項は構造物の中心の誤差 EDに関係の深いものである。旦
L ○ ’ ○,1O q
♀、 撃三 再 ,、o
望O
4
2 4 5 6 7 8 9〆”3、8 0 の図一10 計算式の修正図
そこで横軸に (−i十∫2μ)/(α!2−1)=A 縦車由}こ EM/L をとってEMと、 Aとの関係を最小自乗法により求 めることにする。Lを計算原点より、EMの点までの、 距離とする。 AトEM/Lのグラフを図一1Qに示す。 その結果 EM/L=0.909 A−3.08×10−3 (16) なる結果が得られてEM=(計算値一実測値)を考え に入れて式(16)によるEMを式(15)より引いて修 正計算式が次のように求まる。H−He+(…9・芸告+・…3・)x
二。』・・ (・7)
この修正をほどこすと、EDも同時に修正されて、式 (17)のXoの項を修正する必要性がなくなる。(.ED の誤差は1.5%以内になる。図一11参照) / 従って水路床に構造物の存在する場合の水面形の計 算式は によって計算すればよい。 (3)水路巾の変る場合の水面形 水路巾の変る構造物を設置した場合の水面形につい%
◎ ”02O
≒o
O
O
δ q、、 Φ⊥o
OO
O
O
O
0
o
O
o
O O
o
oうo
\OO
O
8
o
’θ 2θΦo
麺
40
綱9渚o
O
11
o
◇O
o
≧魂
1・ 図一11 構造物上の計鰍深の諜(B・=。1;、:一、)..152
ては一部の実験結果を土木学会年次講演会(昭和39) に発表してあるので参考にされたい。
6 数値計算例
ζこに示した水面形の計算式は次の諸点に注意しな ければならない。 i) 水路構造物の高さは水深に゜比較して小さく水 深の1/2以下であること。 ii)流れがはく離して渦などの生じないことが大 切で構造の形もなるべくこの条件を満足する ようでなければならない。 iii) 構造物の近辺で限界流を生ずる場合には計算 することができない。 (1) 背水計算例の1 図一12に示す例を計算しよう。 流 量水路巾
下流水深 水路勾配 粗度係数構造物
と仮定つると 2=20m3/secB=10m
5m
i=1/100 n=0.025 図一一12のとおり 限界水ua Hc−3揶黷Rン9.鑑
一3ン嚥一・.74m
流れは当然常流となるので式一(18)の常流の式を用い る。水深5mのダム上流地点より上流100 mの地点 において床勾配1/100を考えると水深は約4mと思わ れる。 従ってHo=4.OO mとすると R・−a三{転一、鵠4一皇}−2・22m
Ue:=9/B Ho;20/10×4==0.50 m/secf−/缶一/㌫一嘉誌一…8・
_n2 Ho O.0252×4 ×9.8=0.00845 Pt ==R。4/・9=2.22・/・ エネルギー補正係数 α=1.1 とすると 図一一12 計算例の1(水路巾10M)“ αf2−1・=1.1×0.0802−1=−0.9929 1 ==_ 1 :=_1.007 α.f2−1 0.9929 f2μ一乞=0.082×0.00845−0.01==−0.009946 /2μ一L−0・009塑;0.0100 αf27 1 −0.9929 従って水面計算式は H=He十〇.0100 x−1.007 Zo Ho=4.OO mと仮定したので、 xの原点はダム地点 より上流100mのところとなる。ここを原点にとると H=4.00+⊥x_1.007。。 100 となって、水面はほぼ水平であるが、構造物の上で構… 造物の高さの0.7%緬が下る(新㎜) (2)計算例の2 図一13に示す例を計算しよう。 流 量水路巾
上流水深 水路勾配 粗度係数構造物
と仮定すると、 限界水深 9=10.O m3/secB=10m
Ho=0.1m
1/100 n=O.020 図一13の通り 猛一3雇一3Vtnd’,°i°2,,一 一3ンr皿一・.467m 流れは射流となると考えられるので式(18)の射流の 式を用いる。 Ho=O.10 m Ro=HoBo/(Bo十2Ho) =O.10×10.0/(10.0十2×0.10)=O.10 fn Uo=9/BHo =・ 10/(10×0.10) =10 m/sec f一望L−10//9.8・0.1−1・/0.99−・0.1.ygHo
μ一η:誘9−n29/H①9−0⑨⊆漂0;0−8 図一13 計算例の2(水路巾10m)昭和38年12月