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選挙は「お祭り」 -- 台湾 (特集 選挙の風景)

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選挙は「お祭り」 -- 台湾 (特集 選挙の風景)

著者

松本 充豊

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

251

ページ

6-7

発行年

2016-08

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002885

(2)

アジ研ワールド・トレンド No.251(2016. 9)

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  台湾の選挙は派手で、とにかく にぎやかだ。その様子を一度でも 目にしたら、誰もが「お祭りみた い」と思わずにはいられないはず だ。   驚かされるのは、選挙広告のイ ンパクトの大きさ。日本では公示 日から専用の掲示板に整然とポス ターが貼られるが、台湾にはこう した規制がない。選挙の季節とも なると、いつの間にか街中の至る 所で、ビルの壁に候補者の巨大ポ スターが現れる。路線バスは候補 者の写真や名前が書かれた広告で ラッピングされ、タクシーの車体 にも広告が貼り付けられる。   なかでも圧巻なのが、色鮮やか な候補者の幟 のぼり が幾重にも重なり合 って、道路を覆い尽す光景だ。最 近でこそ数は減ったが、かつては 道路わき、ロータリーや中央分離 帯に幟が立ち並び、歩道橋にも隙 間のないくらい幟が付けられてい た。数年前には「台湾で一番醜い もの」という名誉ある(?)称号 を手にしたほどだ(参考文献①) 。   街を歩いていて、大太鼓や銅鑼 の音、爆竹が鳴り響く音が聞こえ てきたら、それは「掃街」である。 候補者が選挙カーに乗って街を走 り回る。選挙カーは小型トラック を改造した「オープンカー」がほ とんどで、車体には候補者の顔写 真が載った広告が貼られ、荷台に 候補者を載せて走る。これに小旗 や ポ ス タ ー な ど で 飾 っ た 自 動 車、 バイクや自転車が何十台も連なる ことなど珍しくない。大太鼓や銅 鑼を叩き、爆竹を鳴らし、時には ロケット花火まで打ち上げる。と にかくド派手な演出である。沿道 を支持者が埋め尽くし、スピーカ ーから候補者の名前が連呼される。 にぎやかというよりは、正直やか ましいくらいだ。   選挙運動は夜になってもまだま だ続く。夜開かれる大規模集会が 「 造 勢 晩 会 」 だ。 週 末 に は 演 説 の ための特設ステージが至る所に設 置され、夜になると候補者の演説 を 聞 こ う と 人 々 が 集 ま っ て く る。 会場周辺には屋台が立ち並び、こ れまたにぎわいをみせる。屋台を 営む人たちにとっても、選挙は絶 好のビジネスチャンスなのだ。ト ップリーダーを選ぶ総統選挙とも なれば、投票日前日の最後の造勢 晩 会 は、 各 陣 営 が 趣 向 を 凝 ら し、 大いに盛り上がる。候補者の登場 で、それは最高潮を迎える。会場 を埋め尽くした支持者が小旗やう ちわ、風船などを片手に、大合唱 で候補者を迎える。その熱気とノ リ は コ ン サ ー ト 会 場 さ な が ら だ。 人々は候補者の演説に興奮し、感 動し、時に涙するのである。

  前日までと打って変わり、投票 日は静かに始まる。台湾には期日 前投票や不在者投票、在外投票の 制度がない。台湾企業の最大の投 資先が中国だが、現地で働く台湾 人のビジネスマンやその家族が投 票するには、わざわざ台湾に戻ら ねばならない。また、戸籍地(本 籍地)でのみ投票可能なため、投 票日前日には大勢の人が実家に帰 っていく。投票日となる土曜日に は、普段離ればなれに暮らす家族 が顔を合わせる。とはいえ、投票 のために交通費と時間をかけて帰 省するのは、学生や若者にとって 負担が大きい。二〇一六年一月の ダブル選挙(総統選挙・立法委員 選挙)では、多くの大学の学生会 が学生に投票を促そうと格安の帰 省バスを仕立てたことが話題にな った。   投票所では入口に警察官が立っ て お り、 日 本 と 比 べ て い さ さ か 物々しい雰囲気がある。有権者は 身分証、選挙の通知書と印鑑を持 参して、確認後に投票用紙を受け 取る。投票用紙は投票ごとにその 都度渡されるのではなく、一度に

特集

選挙の風景

選挙

︱台湾︱

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アジ研ワールド・トレンド No.251(2016. 9) すべての選挙の投票用紙が手渡さ れる。投票の仕方も日本と違って、 有権者が候補者名や政党名を自分 で書いたりしない。投票用紙には 候補者名もしくは政党名とその番 号が予め印刷されており、その上 に四角い空欄がある。有権者は記 載台に備え付けのスタンプをそこ に押すことで、自分が支持する候 補者や政党に投票するという仕組 みだ。これなら何らかの事情で字 が書けない人でも投票できる。   投票が締め切られると、投票所 が開票所に早変わりし、即日開票 が行われる。開票の様子は市民が みることもできるし、選挙特番一 色となったテレビのニュースチャ ンネルがリアルタイムで伝えてく れる。担当者が投票箱から投票用 紙を取り出し、一票ずつ開いて番 号を読み上げ、別の担当者が候補 者ごとの得票数を「正」の字で書 いていくというスタイルだ。   当確が出る頃には、各陣営の選 挙本部前の路上を支持者がまた埋 め尽くす。当選者が決まり、勝者 が姿を現すと、支持者は彼/彼女 の勝利宣言に歓喜し、興奮の坩 る 堝 つぼ と化す。敗北の弁を述べる敗者に も、支持者は声援を送り、そして 涙する。民主化が完了してちょう ど二〇年。一部の支持者が選挙結 果を不服とし、混乱を招いた時期 もあった。しかし、いまでは勝者 も敗者も、そしてそれぞれの支持 者 も、 結 果 を 冷 静 に 受 け 止 め て、 互いにねぎらい合う。民主主義の 定着を実感する瞬間である。

  選 挙 の 実 施 を 取 り 仕 切 る の が、 中央選挙委員会(中選会)である。 選挙管理機関の国際比較では、独 立モデル、混合モデル、政府モデ ルの三つのモデルに分類され、台 湾の中選会はアジアの新興民主主 義国で多くみられる独立モデルの ひ と つ と さ れ て い る( 参 考 文 献 ② )。 し か し、 こ う し た 評 価 は 必 ずしも正確ではない。台湾と韓国 はほぼ同時期に民主化したが、独 立モデルの典型とされる韓国の選 挙管理委員会に対し、台湾の中選 会は混合モデルであり、むしろ日 本の中央選挙管理会に近いかもし れない。   中選会は行政院(政府)に所属 する三つの独立機関のうちのひと つ で あ り、 「 中 央 二 級 相 当 」 す な わち日本の各省庁にあたる各部会 と同じレベルの機関である。独立 機関とはいえ、韓国のように憲法 機関ではないし、執政府からの高 度な自律性も有していない。一方、 日本の中央選挙管理会は総務省の 附属機関だが、台湾の中選会は総 務省にあたる内政部と同じレベル の独立した機関である。   混合モデルでは執政府の影響力 の及び方が様々である。中選会の 委員は、同一の政党に所属する委 員 が 三 分 の 一 を 超 え て は な ら ず、 形 式 上 は 独 立 性 が 保 た れ て い る。 しかし、 実際には行政院長(首相) が推薦し、立法院(議会)の同意 を得て任命されるため、これまで も委員の人選が二大政党間のイデ オロギー対立とまったく無縁だっ たわけではない。また、専任の主 任委員と副主任委員は有給職だが、 他の委員は無給職であるため、委 員の専門性とそれによる独立性が 保障されているともいえない。   台 湾 の 選 挙 管 理 で は、 「 選 政 」 と 呼 ば れ る 選 挙 関 連 法 規 の 制 定、 修正と解釈は内政部の権限とされ、 「 選 務 」 す な わ ち 選 挙 の 実 施 は 中 選会が担っている。中選会による 選挙関連法規に関する提案は認め られているが、それは内政部に対 するもので、直接行政院に提案す ることはできない。こうした分業 のあり方は台湾の選挙管理の歴史 的経緯と深く関わっている。民主 化以前、選挙管理は当初内政部が 担っていた。一九八〇年の中選会 の成立後も、内政部長(大臣)が 主任委員を兼任し、職員のほとん どが内政部の職員だった。当時は こうした選挙管理体制がうまく機 能していたのだが、二〇〇〇年に 主任委員が専任職となり、中選会 が独立機関と位置づけられていく 過程で、中選会と内政部の間に矛 盾が目立つようになった。   中選会の独立性についてはなお 議論が続いている。独立モデルを 理 想 と す る 考 え 方 が あ る 一 方 で、 混合モデルの枠内で中選会の独立 性の強化を図るのが現実的とする 見方もある。 ( ま つ も と   み つ と よ / 京 都 女 子 大学現代社会学部教授) 《参考文献》 ① 「 選 舉 旗 幟 招 牌 台 灣 第 一 醜 」『 自 由時報』二〇一一年九月一六日。 ② L op ez -P in to r, R afa el, 2 00 0, Ele cto ra l M an ag em en t B od ies as In stit uti on s o f G ov ern an ce , UNDP. 15_特集.indd 7 16/08/02 10:38

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