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音楽を通した社会貢献 : ─ 共に生き、感じ合うこと ─ (I. 特集:サービス・ラーニングの学習効果)

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Academic year: 2021

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音楽を通した社会貢献

─ 共に生き、感じ合うこと ─

小林 玲子 キーワード:生きる、人権、音楽交流、共同学習、配慮

1.概要

 筆者が声楽ゼミの学生と音楽を通した社会貢献を始めて今年で 7 年目になる。  声楽ゼミはモーツァルト作曲 オペラ「フィガロの結婚」を仕上げ公演するのであるが、 言語であるイタリア語で暗譜をして演技することはもちろん、企画制作もすべて行わな ければならない。ゼミ生はこの 1 年間で仲間とのかかわりが強くなり意見のぶつかり合 いは当然のこと相手の気持ちを配慮するなどかなりの忍耐力、協調性、コミュニケー ション力を身に付ける。「フィガロの結婚」の公演は毎年 11 月下旬に終わるため、12 月 からは養護学校、支援学校との音楽交流会や共同学習のプランを立て始め 2 月にはゼミ で培ったコミュニケーション力を大いに役立てた共同学習を行うのである。  昨年から音楽交流会を共同学習会へと移行した。それは生徒たちが大学生の演奏を聴 くのみである受け身の態勢から共に学びお互いを理解し合える態勢とし、音楽を学ぶ喜 びを感じる必要があると感じたからである。学生は養護学校に出向いて音楽の授業のお 手伝いとして参加し音楽を楽しいと感じられなかった生徒にも音楽を学ぶ喜びを伝えて いる。  最近は近隣の福祉施設から演奏の依頼もあり、学生はどのようにすれば施設利用者さ んに喜んで頂ける演奏会になるのかを研究し、我が大学の教育理念であり建学の精神で もある「学而事人」を実践できるありがたい機会といて感謝している。筆者はそのたび に音楽の持つ深く柔らかなパワーを感じるのである。

2.学而事人

 私たちのようなプロの音楽家は通常、小さい時からピアノや楽器のお稽古を初める。筆 者のように声楽を高校生から本格的に学ぶようになったものでもピアノは小さな頃から

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習っていた。指導者からこれは見込みがあると思った子供にはそれ相当の課題が出され、 見込みがあると思われた子供は学校に通いながら空いた時間の多くを練習に費やし大人に 成っていく。その間、友人との交流や旅行などをはじめ多くの犠牲を払うことは当たり前 である。ただひたすら演奏家になり世界で演奏することを夢見て練習するのである。早い 話し、自分のことで精一杯なのである。  「学而事人」筆者は 2005 年 4 月、桜美林大学の准教授就任時に初めてこの言葉と出会い 深い感銘を受けた。そして今まで自分のためだけに学んできたことを恥じた。何とか学生 と「学而事人」を実践できないものかと考え、養護学校の教諭をしている友人に相談し、 2008 年 2 月にゼミ生、卒研生合わせて 12 名と高津養護学校高等部の生徒 30 名とで音楽 交流会をさせていただいた。生徒の障害のレヴェルは様々であり知的障害と肢体不自由で あるが普段ほとんど接することのない状況に我々は戸惑いを隠せなかった。事前学習の必 要性を痛感すると共にゼミの指導教官である筆者が理解していなければならないことが多 く、愛情を持って生徒を指導している現場の先生方には頭が下がった。何より心が温まっ たことは生徒たちがゼミ生に憧れを持ち素直に受け入れてくれたことである。最後の演奏 曲「ドレミの歌」では全員が楽しい時間と空間を共有した仲間になっていた。小規模な「学 而事人」ではあるが、学生も今まで学んできた「音楽」がこれほど人を喜ばせることがで き、こんなにも人を笑顔にできると実感した瞬間だったと思う。 相模原養護学校橋本分校 音楽の授業のアシスト(2014 年 6 月 23 日) この日はゼミ生 6 名がリズム楽器、リコーダー、ギター、キーボードのグループに分かれ た生徒を指導した。 手で拍子をとるリズムを練習。 初めて出会う大学生ではあるが笑顔で指導す ることにより生徒たちも笑顔になり安心して ついて来るのである。

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タンバリンを使ったリズム練習。 課題として与えられたリズムを何回も繰り返 す。生徒の集中力を切らさないために養護学 校も先生も身振り手振りでリズムをとり協力 をして下った。 キーボードを使った練習。 このグループは楽譜を読める生徒が集まりメ ロディーを楽しそうに奏でていた。 練習の最後にはタンバリンのグループと合 奏を行ったが苦戦していた。他人と合わせ ることが苦手な生徒にとっては良い経験に なった。 白峰福祉会「かたつむりの家」バースデーコンサート(2014 年 8 月 6 日) 8 月にお誕生日を迎える 4 名の方のためにコンサートを行ってくださいとの依頼があり学 生 3 名が訪問演奏を行った。 玄関には手作りのポスターが貼ってあり歓迎 ムードがたっぷりだった。 学生も増々やる気を出したようだ。

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40 名ほどの利用者さんがホールに集って下 さり学生と一緒に歌ったり、体を動かしたり と楽しいひと時を過ごせた。事前に演奏して ほしい曲のアンケート結果を頂いてあったた めスムーズな進行であった。 アンコール曲はリクエストが一番多かった 「ドラエモン」のテーマソング、全員合唱で元 気に終了。コンサート後は 4 名のお誕生日を 迎える方々とティータイムをとり簡単なゲー ムも行った。 ここでも利用者さんの笑顔と学生の笑顔が輝 いていた。

3.学習効果

 学習効果については障害を持つ生徒に対しての理解、配慮ができるようになることであ る。障害を持つ児童、生徒、成人の方々と同じ場所で同じ空気を吸いお互いの存在を肌で 感じ合いながら音楽を共に奏でる経験は学生の持つやさしさを引き出す。この経験を持つ 人と持たない人では眼差しが違ってくる。障害者を刺すような目つきで見ることはなくな るのではないかと思うところである。お互いを尊びながら共に生きることは人権を尊重す ることにも繋がって来る。音楽は障害を持ち生きにくいと感じている人と楽しい時間を共 有するための最高の道具である。この道具を使って創れるものは大きい。学生たちは音楽 の持つ特別な力に気付き他人様のためにも音楽をより深く学びたいと思うのである。

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4.今後の課題

 今後の課題としては事前学習の重要性を上げなければならない。養護学校には様々な障 害を抱えた生徒が通っている。アスペルガーなどの自閉症症候群を抱える者、知的障害 者、肢体不自由者など一人ひとりの状況が違うのである。事前学習を行い或る程度の知識 は持っているべきである。音楽の授業は普通学級と養護学級が合同で行うことも多く養護 学級から参加した生徒は普通学級の生徒について行けず嫌な思いをしたことから音楽が嫌 いになるケースもあると聞く。事前学習はそのような情報を養護学校教諭から説明して頂 くことが望ましいと考える。それぞれが時間に追われる日々を送っているが説明会を実施 できるよう計画をしていきたい。

参照

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