既存集合住宅の窓形状および開閉パターンと風向別通風量の関係に関する実測
MEASUREMENT OF RELATION BETWEEN WINDOW SHAPE/OPENING PATTERN OF EXISTING APARTMENT BUILDING AND CROSS-VENTILATION AIR VOLUME FOR EACH WIND DIRECTION
森口 拓生1) 水谷 国男2)
Tao MORIGUCHI1), Kunio MIZUTANI2)
ABSTRACT
Since the wind direction and speed of natural winds fluctuate, cross-ventilation air volume also fluctuates. This leads to the possibility of excessive indoor airflow accompanied by rain, sand, and falling leaves. Therefore, it is necessary to confirm actual cross-ventilation volumes under natural wind for different wind directions and wind speed fluctuations. In this research, the optimum window shape and opening pattern are clarified by measuring the cross-ventilation air volume for various window openings and closing patterns and window shapes, and analyzing them for a range of wind directions in an existing apartment building.
Key Words: Cross Ventilation, Window Opening Pattern, Existing Apartment Building
1.はじめに 近年、集合住宅の夏季の夜間自然室温が高くなり、エアコンの使用を嫌う高齢者が集合住宅内で熱中症を 発症する事例も増加している。夜間の外気温は熱中症を発症するほど高くない場合が多いので、窓開けによ る通風・自然換気は、室内熱中症対策の 1 つとして有効と考えられる。また、最近の新型コロナウイルス感 染予防の観点からも、通風・自然換気の重要性は高まっている。こうした背景から、近年、風向別の通風・ 換気に効果的な窓の配置や、ウインドキャッチやボイド、ダブルスキンなど、開口周りの気流障害物の効果 の検証などが、風洞実験や CFD を用いて行われている1)~7)。しかし、自然風は風向・風速が大きく変動する ため、通風・換気量も大きく変動し、過大な室内気流が生じたり、降雨や砂・落ち葉などが侵入する可能性 もあるため、風向・風速が変動する自然風の下での実際の通風・換気量を確認する必要がある。 実際の集合住宅を用いた通風・自然換気量の実測事例2)7)は比較的少なく、特に、窓の配置や窓周りの障害 物が変更できない既存の集合住宅について、風向別に通風・自然換気量を測定した例はほとんどない。そこ で、本研究では既存集合住宅を対象として、窓の開閉パターンや窓形状を変化させ、室内温熱環境と通風・換気量 を実測し、通風・自然換気の効果を確認するとともに、最適な窓の形状と開閉パターンを明らかとする。 1) 東京工芸大学 工学研究科 建築学・風工学専攻 大学院生 (〒243-0297 厚木市飯山1583) 3) 東京工芸大学 工学部 教授 (〒243-0297 厚木市飯山1583)
2.対象集合住戸と実測概要 2.1 対象集合住宅の概要 対象集合住宅は、神奈川県厚木市近郊の神奈川県住宅供給公社の団地で、昭和38 年~昭和 39 年に建築され た鉄筋コンクリート造4 階建ての集合住宅が 12 棟建っている(図1)8)9)。対象とした住棟(4502 棟、写真 1)には 4 か 所の階段室から2 戸の住宅が対称に配置され、1 棟当たり 32 戸の住戸がある(図2)。住戸の間取りは 2DKで、南側 に台所と和室、北側に浴室・玄関と和室が配置されている(図3)。 2.2 室内温熱環境の測定方法 室内環境の測定は、4502 棟4階の 2 室(227 号室と 228 号室)を対象とし、測定期間は 2018 年 4 月 28 日~2019 年5 月 20 日である。測定方法は各室内に温湿度計と PMV 計を設置し、2分間隔(5 月~7月は 1 分間隔)で各室内 の温湿度等を測定する。また、ベランダと階段室に温湿度計を設置して、外気の温湿度も測定する。 図1 団地内の棟配置図 写真1 対象集合住宅の外観(4502 棟) 図2 対象集合住宅(4502 棟)の 4 階平面図 228 号室 227 号室 (1)小型温湿度データロガー (2)ポータブル PMV 計 図3 測定対象住戸の間取り図と測定点 写真2 温湿度及び室内環境測定機器の設置状況 ▲風速測定点(3 次元超音波風速計及び高感度ベーン式風速プローブ) 屋上風速測定点(3 次元超音波風速計)は屋根上 3m(写真 1 参照) ●温湿度測定点(室内床上 1.1m、バルコニー床上 2.2m(屋根下 0.5m)) ◎PMV 測定点(床上 1.1m) 風速・温湿度・放射温度を測定 ▲ ▲ ◎● ◎● ◎● ● ● ◎● ● ● ▲ 屋上風速測定点 測定対象住戸 228 号室 227 号室 ▲ 閉 閉鎖鎖ししたた窓窓のの外外 側 側のの風風速速をを測測定定 縦 縦すすべべりり出出しし窓窓 取 取付付位位置置 北 北側側和和室室窓窓 ( (開開口口率率変変更更)) 風 風速速測測定定点点 測 測 定定 中中 はは 襖 襖をを開開放放 測測 定襖襖をを開定 中開放中 は放 は
2.3 屋上風向・風速と窓面からの通風・換気量の測定方法 屋上面から 3m の位置に超音波風速センサーを設置し屋上の風向・風速を測定する。窓からの通風・換気量の測 定は、窓面に超音波風速計を設置し、窓面に垂直な風速成分と窓の開口面積から通風・換気量を算出する。超音波 風速センサーの設置状況を写真3に示す。超音波風速計の測定間隔は 0.2 秒とし、測定結果の解析は 1 分間の平 均値を用いた。 使用した測定器の仕様を表1 に、測定期間中の窓の開閉パターンを表2に示す。 (1)屋上に設置した超音波風速計 (2)台所窓面風速測定状況 (3)北側和室 4.5 畳窓面風速測定状況 写真3 超音波風速計による窓面通過風速の測定 表1 使用した測定器の仕様 測 測定定項項目目 測測定定器器 仕仕様様 室内・外気温湿度 小型温湿度データロガー TR-52,TR-503 温度 0~55℃,湿度 10~95%RH,記録間隔 1 秒~60 分 室内環境(PMV) ポータブル PMV 計 AM-101 気温,平均放射温度:0-50℃,相対湿度 0-100%,風速 0-5m/s 屋上風向・風速 3 次元超音波風向風速計 SAT-600 測定範囲 0-60m/s,出力分解能 0.01m/s,アナログ出力 0-20mA 窓面風速 3 次元超音波風速計 DA-650,TR-90T 測定範囲 0-10m/s,分解能 0.005m/s 以下,アナログ出力 1V/10m 高感度ベーン式風速プローブ testo440 Dp 測定範囲 0.1~15m/s,風向は±で表示,最小記録間隔 1sec 表2 窓の開閉スケジュールと開閉パターン 測 測定定 NNoo 測測定定期期間間 222288 号号室室 222277 号号室室 1 2018 年 4/28~5/18 台所引違い窓全開 北側 4.5 畳和室窓全開 全窓閉鎖 2 5/19~5/30 台所扉全開 3 5/30~6/10 6 畳和室窓全開 4 6/12~7/7 台所扉全開 5 7/8~7/22 台所引違い窓全開 6 7/23~7/28 台所引違い窓全開 北側 4.5 畳和室窓全開 7 7/29~8/20 6 畳和室小窓開 北側 4.5 畳和室小窓開 8 2019 年 4/29-5/1 台所引違い窓全開 北側 4.5 畳和室窓全開 全窓閉鎖 9 5/1-5/4 台所縦すべり出し窓 45 度開 10 5/4-5/5 北側 4.5 畳和室窓 25%開 11 5/5-5/10 北側 4.5 畳和室窓閉鎖 12 5/10-5/14 北側 4.5 畳和室窓 20cm 開 13 5/14-5/17 台所縦すべり出し窓 5 度開 北側 4.5 畳和室窓閉鎖 14 5/17-5/20 台所縦すべり出し窓 90 度開 3.実測結果 3.1 夏季の自然室温測定結果 2018 年 7 月 22 日~7 月 26 日の実測結果を図4に示す。期間中ベランダ(直達日射が当たらない場所)の外気温 は、日中36℃を超えており、夜間も 28℃以上であった。また、風は主に日中 2~4m/s の南東の風で、夜間は 1~2m/s の北西の風であった。227 室は日中も夜間も窓を閉めていたため、日中の室温が 36℃前後まで上昇しただけでなく、 夜間も温度が低下せず、明け方でも34℃程度の室温で、PMV も 3.0(測定上限)を超えていた。これに対して、228 室 は台所の窓と北側和室の窓を開放したため、室温が外気温に近い変化となっており、日中は34℃を超え、PMV が 3 を超える日もみられるが、夜間は30℃前後まで室温が低下し、明け方の PMV も 0.6~2.0 程度まで低下している。 これらの結果から、夏季の室内温度は窓を閉め切った状態だと外気温より高くなり、日中に 36℃を超える恐れがあ るだけでなく、外気温が低くなる夜間でも、躯体の蓄熱によって室温が 34℃以下に下がらない現象がみられ、熱中症 の危険性が非常に高くなることが分かる。一方、窓を開けた場合は、夜間室温は外気温に近くなって、窓を閉め切っ た場合より3~5℃低くなるだけでなく、ナイトパージ等の効果によって日中の室温も外気温より1℃以上低くなることが 分かる。従って、通風による気流感も加味すれば、夜間に冷房しなくても窓を開けておくだけで快適に過ごすことがで き、熱中症を防げる可能性があるだけでなく、コンクリートの蓄熱によって昼間の冷房負荷を低減できる可能性もある。
(1)室内温湿度と外気温湿度・PMV (2)屋上風向と風速 図4 2018 年 7 月 22 日~7 月 26 日の実測結果 3.2 台所引違い窓と北側和室窓を全開にした場合の通風・換気量測定結果 台所引違い窓と北側和室の引違い窓を全開にした2018 年 4/18~5/18 のデータについて、風向別に分類し、屋上 風速と窓面風速の散布図を作成した。結果を図5に示す。例えば屋上風向が北東の場合は、屋上風速 1m/s 当たり 0.249m/s の風速で北側の窓から流入し、0.358m/s の風速で台所の窓から流出する。 風向別の屋上風速 1m/s 当たりの各窓からの窓流入・流出風量を図6に示す。この場合は、南北方向の風が吹くと 室内を風が通過しやすいが、東風や西風の場合は屋上風速が比較的強くても、通風量は少ないことがわかる。 図5 風向別の屋上風速と窓面風速の関係(台所引違い窓・北側和室窓全開時) 図6 屋上風速 1m/s 当たりの通風・換気量(台所引違い窓・北側和室窓全開時) 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200 210 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 7/22 7/23 7/24 7/25 7/26 温度 [℃] 227号室6畳和室温度 228号室6畳和室温度 228号室ベランダ外気温度 228号室ベランダ外気湿度 227号室6畳和室湿度 228号室6畳和室湿度 228号室6畳和室PMV 湿度 [%] 湿度 [%] (活動量1Met,着衣量0.68cloで計算) 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 4.2 PMV [-] 0 90 180 270 360 450 540 630 720 810 900 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7/22 7/23 7/24 7/25 7/26 風向 N W S E N 風速[m/s] 屋上風速 屋上風向 y = 0.5553x y = -0.3087x -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 2 4 6 8 窓面風速 [m /s ] 屋上風速[m/s] 屋上風向:北 台所窓面風速 北側窓面風速 y = -0.0017x y = -0.0085x -1 -0.5 0 0.5 1 0 2 4 6 窓面風速 [m /s ] 屋上風速[m/s] 屋上風向:東 台所窓面風速 北側窓面風速 y = 0.3507x y = -0.6726x -6 -4 -2 0 2 4 0 5 10 窓面風速 [m /s ] 屋上風速[m/s] 屋上風向:南 北側窓面風速 台所窓面風速 -1600 -1400 -1200 -1000-800 -600 -400 -2000 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 N NE E SE S SW W NW 流入 [m ³/ h ] 流出 [m ³/ h] 台所窓風量 北側窓風量 温度[℃]
3.3 台所窓に縦すべり出し窓(開度 45 度)を仮設した場合の通風・換気量測定結果 図5、図6の結果から、引き違い窓を全開にしても、窓面に平行な風が吹く場合は、通風換気を得ることができないこ とがわかった。そこで、台所窓に縦すべり出し窓を仮設し、ウィンドキャッチの効果によって、窓が取り付けられた壁面 に平行な風を通風に利用する場合を想定した。設置状況を写真4に示す。 北側引違い窓は全開で、台所窓を縦滑り出し窓45 度開とした 2019 年 5/1~5/4 データについて、風向別に分類 し、屋上風速と窓面風速の散布図を作成した結果を図7に、各窓からの流入流出風量(屋上風速1m/s 当たり)を図8 に示す。縦滑り出し窓 45 度開の場合、引き違い窓と違って、東風でも、台所の縦滑り出し窓の左側から約 200m³/h (屋上風速1m/s 当たり)流入して右側から約 200m³/h(屋上風速 1m/s 当たり)流出する(図8の風向 E 参照)など、壁 面に平行な風も換気・通風に寄与していることがわかる。 (1)台所窓への縦すべり出し窓仮設状況(内観) (1)台所窓への縦すべり出し窓仮設状況(外観) (3)北側和室窓の開放状況 写真4 台所窓への縦すべり出し窓仮設状況と北側和室窓の開放状況 図7 風向別の屋上風速と窓面風速の関係(台所縦すべり出し窓 45 度開・北側和室窓全開時) 図8 屋上風速 1m/s 当たりの通風・換気量(台所縦すべり出し窓 45 度開・北側和室窓全開時) y = -0.4237x y = 0.404x -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 屋上風向:南西 台所左窓面風速 北側窓面風速 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 窓 窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓 窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓 窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓 窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓 窓面面風風速速[[mm//ss]]
3.4 北側窓 25%開・台所窓 45 度開とした場合の通風・換気量測定結果 台所窓を縦すべり出し窓 45 度開とした場合、強い南風や強い北風が吹くと、窓面から流入する通風換気量が過大 になるだけでなく、室内の風速が速くなって、紙類が吹き飛ばされるなどの悪影響が生じる可能性が高い。 このような悪影響を防ぐ方法としては、縦滑り出し窓の開度を写真5のように小さくすることが考えられるが、そうする と、壁面に沿った風は流入しにくくなる。そこで、台所の縦滑り出し窓の角度は変えずに、北側の引き違い窓の開度を 25%にして、効果の有無を検討する。写真6に北側の引違い窓の開度を変えた場合の状況を示す。 北側引き違い窓を25%開とし、台所窓を縦滑り出し窓 45 度開とした 2019 年 5/4~5/5 のデータについて、風向別 に分類し、屋上風速と窓面風速の散布図を作成した結果を図9に、各窓からの流入流出風量(屋上風速 1m/s 当たり) を図 10 に示す。北側窓を 25%開とした場合、南北の風による通風量が減少するが、一方で、壁面に平行な東風や 西風による通風換気量が増加し、風向による換気量の差が小さくなる。なお、北側和室窓全開時よりも流入と流出の バランスが取れていない理由は、窓以外の隙間や換気口の影響が相対的に大きくなったためと推察される。 写真5 台所縦すべり出し窓開度 5 度の状況 写真6 北側和室窓 25%開の状況 図9 風向別の屋上風速と窓面風速の関係(台所縦すべり出し窓 45 度開・北側和室窓 25%開時) 図 10 屋上風速 1m/s 当たりの通風・換気量(台所縦すべり出し窓 45 度開・北側和室窓 25%開時) y = 0.4265x y = -0.172x -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.53 0 1 2 3 4 5 6 屋 屋上上風風向向::北北 台所左窓面風速 北側窓面風速 y = 0.1391x y = -0.0765x -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 0 1 2 3 4 屋上風向:北東 台所左窓面風速 北側窓面風速 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上 風 風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速[[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 屋 屋上上風風速速 [[mm//ss]] 窓 窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓 窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 窓窓面面風風速速[[mm//ss]] 屋 屋上上 風 風速速 [[mm//ss]]
3.5 窓開放条件別の風向別の通風量と室内風速の比較 図 11 に窓開放条件別の風向別通風・換気量(ここでは、流入風量の合計と流出風量の合計を比較して多い方の 風量を採用)を風配図の形式で示す。北側窓全開の場合、台所の引違い窓を全開にすると、東西の風における通風 換気量が極端に少なく、南北方向の風との差が大きい。 これに対して、台所の窓を縦滑り出し窓 45 度開とすると、南北風向の際の通風換気量が低下し、東西方向の通風 換気量が増加する。さらに、北側窓を 25%開にすると、南北方向の通風換気量がさらに低下し、どの風向でもほぼ一 定の換気通風量が得られる。 図12 に窓開放条件別の風向別の{台所室内風速(PMV 計の風速測定値を使用)/屋上風速}の値を%で示す。 台所室内風速は、南北の引違い窓を全開した場合、南及び南西方向風については屋上風速の 50%近い風速にな るので、4m/s 以上の南風が吹くと、室内に 2m/s 近い風が吹いて、生活に支障が生じる可能性がある。 しかし、台所窓を縦滑り出し窓として開度を 45 度とすれば、どの風向でも室内風速は屋上風速の 30%以下となる ので、屋上風速が4m/s でも室内風速を 1.2m/s 以下に保つことができ、過大な室内気流による障害も発生しづらいと 考えられる。 (1)台所窓の違いによる比較(北側窓全開時) (2)北側窓の開度による比較(台所縦すべり出し窓 45 度開) 図 11 窓開放条件別の屋上風向と通風換気量の関係 図 12 窓開放条件別の屋上風向別台所室内風速(屋上風速 1m/s 当たり) 0 500 1000 1500 2000 2500 N NE E SE S SW W NW 縦すべり出し窓 45度開 引違い窓全開 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 N NE E SE S SW W NW 北側窓25%開 北側窓全開 0% 10% 20% 30% 40% 50% NN N NEE E E S SEE S S S SWW W W N NWW 台所窓・北側窓全開 台所風速 台所窓全開・北側窓 25%開 台所風速 台所縦すべり出し窓 45度開・北側窓25% 開 台所風速 風量[m³/h] 風量[m³/h] 台 台所所風風速速//屋屋上上風風速速
4.まとめ 既存集合住宅を対象として、窓の開閉パターンや窓形状を変化させ、室内温熱環境と通風・換気量を実測し、通 風・自然換気の効果を確認するとともに、最適な窓の形状と開閉パターン検討し、以下の結果を得た。 (1)集合住宅の夏季の自然室温は窓を閉め切った状態では夜間も 34℃以下に下がらない現象がみられたが、窓を 開けた場合は、夜間室温が外気温に近くなって、窓を閉め切った場合より3~5℃低くなることが分かった。従って、窓 を開け、通風・換気することで、夜間に冷房しなくても熱中症を防ぐことができる可能性があることがわかった。 (2)南側の台所の引き違い窓と北側和室の引違い窓を全開にすると、南北方向の風が吹いたときに通風・換気量が 多くなるが、東風や西風のように窓面に平行の風が吹く場合は、屋上風速が比較的速くても、通風・換気量が少ない ことがわかった。 (3)南側の台所の窓を縦すべり出し窓にすると、東風の時に窓の東側から流入して西側から流出するなど、ウインドキ ャッチの効果によって、壁面に平行な風でも換気・通風が得られるようになることがわかった。 (4)南側の窓形状を変更しても、北側の窓が全開だと、南北の風向の時の通風・換気量が、東西の風向の時の 3 倍 になるなど、風向による通風・換気量の差が大きい。そこで、北側の窓の開度を小さくした結果、どの風向でもほぼ一 定の通風・換気量を得ることができることがわかった。 (5)また、室内の風速も、風向によらずほぼ一定にできることから、屋上風速や風向が大きく変動しても、窓の開度を 変更することなく、適度な通風・換気量を得ることができる。 なお、一般に換気・通風の駆動力は風圧力がベースとなるので、風圧力が測定できない場合は、上空風速に対す る窓面風速の風速比の2乗で整理するのが良いと考えられるが、風速比を2乗すると屋上風速と窓面風速の比が正 なのか負なのかが不明となる。今回は、屋上の風が窓面からの流入に寄与するのか、流出に寄与するのかを風向別 に明らかにするため、単純に屋上風速と窓面風速の関係で表した。 また、風圧係数がわかっている場合、開口部を通過する風量は、相当開口面積(αA)×{開口前後の風圧係数の 差(Δc)}1/2×アプローチ風速(v)で求められ、この場合は、開口面積(A)に流量計数(α)を掛けたものが相当開口面 積となるが、今回の実測では、窓面に垂直な風速の平均値(Vm)×開口面積(A)で風量を求めることとしたので、流量 計数(α)は考慮していない。ただし、窓面平均風速(Vm)≒窓面の中央部で測定した風速としているので、流入風量 の合計と流出風量の合計に差が生じている原因になっている可能性がある。 【謝辞】 本実測の実施に当たり、緑ヶ丘団地の住戸の使用をさせていただいた神奈川県住宅供給公社の茶屋道京佑様な らびに、2018-2019 年度東京工芸大学建築設備デザイン研究室卒研生の方々ほか、関係各位の協力を得ました。こ こに記して感謝の意を表します。 【参考文献】 1)吉野博:最近の自然換気の研究動向、空気調和・衛生工学、第 76 巻、第 7 号、pp.9-19、2002.7 2)飯野由香利、安中哲夫、飯野秋成、大場正昭、他:通風と空調風および扇風機風の気流環境別にみた温熱環境 評価の特性(その1)~(その3)、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp.543-548、2006.9 3)織田貴之,倉渕隆,大場正昭,塚本健二,野中俊宏、他:市街地に建つ戸建住宅の通風性能向上に関する研究, 日本建築学会大会学術講演梗概集、 pp587-588、2013.9 4)坂口淳、赤林伸一、富永禎秀、有波裕貴:粒子画像測定法(PIV)を用いた室内気流測定に関する基礎的研究 その12 単純住宅モデルを対象とした建物周囲条件と室内外気流性状に関する PIV 測定、日本建築学会大会学 術講演梗概集、pp.843-844、2017.8 5)本間陽樹、倉渕隆、八木繁和、齊藤孝一郎:実測及び CFD に基づくパッシブタウン黒部モデルにおける通風性能 評価に関する研究、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp.1135-1136、2018.9 6)平本透也、遠藤智行:ウインドキャッチャーによる通風量増加効果の予測手法に関する研究 その6 形状・位置変 更に伴う効果検証、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp.755-756、2019.9
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