情報ネットワークの活用による重症心身障害者の社会参加と取り巻く諸問題施設入所者のホームページによる社会参加支援
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(2) 北海道教育大学紀要(自然科学編)第54巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(NaturalSciences)vol.54,No.1. 情報ネットワークの活用による重症心身障害者の社. 平成15年 9 月. September,2003. 会参加と取り巻く諸問題. 施設入所者のホームページによる社会参加支援. StudyofSomeProblemsofSeriousHandicappedPeopleWhen≠eyParticipat intheCommunitynroughtheInformationNetwork. 山形 積治・中津 真弓. %magataSek肩iandNakatuMayumi. 北海道教育大学旭Jil校 物理・健康福祉コ・−ス. PhysicsLaboratoryandHealth−WelfareCourse,AsahikawaCampus, HokkaidoUniversityofEducation. Abstract. BecauseoftheenforcementofthelawofIT(informationtechnology),theutilizationofITforhandi− CaPPedpeoplehasbeenimprovedasthesamelevelasWesterncour)tiesinrecentyears.. ThismovementofITforhandicappedpeoplehasalsospreadtoAsahikawacity.Theactivityforde−. VelopmentandspreadofITfbrsocialwelfarehasbeenenforcedsinceApril1995.Inthisactivity,thel. intranetconsistedofG−bitsnetworks,CATVnetworks,andtheWDM deviceswillbe established and. supportFukushi−mura(15welfhreinstitutions,1500handicappedpeople,1000workers).Theobjectiv ofthisintranetnetworkare l)usingnetworks,PeOPleofadvancedyearsandhandicapped二PeOPlecanparticipate thesocialac− tivities. 2)Openinginformation,theefBcientofthewelfhreservice. 3)Theremotenessmedicalandwelfareservices.. Inthisreport,WeWOuldliketoclearthesomedifncultiesandproblemswhenhandicappedpeoplecom−. mittheinformationnetworksbyhavingownhomepage. Wecertifiedfo1lowingfacts.. 1)Itisextremelydifnculttomakeandmaintainownhomepagesforserioushandicappedpeople Withoutanyhelps:90%ofthemneedsomehelpsbyvolanteers.. 2)Aslongashavingnoinstitution’sadmission,itisverydimculttoopenpersonalhomepageseven thoughthereisstafTscomprehension.. 3)TrainingvolunteersandNPOs,supportarenecessary. 1.
(3) LU形 積治・中津 真弓. Keywords:VerySerioushandicappedpeople,Participationincommunity,ParticipationinITne. accessibilityfornetwork,ITsupportvolunteers. はじめに. 近年,法律等の整備が進み高齢者や障害者を取り巻く情報環境を欧米並みに改善する方向が打ち出され た.そのことをうけて,平成12年4月以来,旭川市においては,通信・放送機構(mO)のマルチメディ ア・パイロットタウン構想に基づく「北海道旭川市福祉支援情報通信システムの開発・展開事業」が展開さ. れてきた.. 本事業の骨子は,福祉サービスの充実を目指し,ギガビット網,CATV網,WDM(WavelengthDivision Multiplexing:波長分割多重)装置網で構成される地域イントラネットを構築し,旭川春光台地区にある福. 祉村(15の福祉施設,入所者1500人,従業者1000人)の支援に当たる事である.本ネットワークの目的は, (1)ネシトワーク活用による障害者及び高齢者の社会参加,. (2)情報公開による福祉サービスの効率的な提供, (3)遠隔医療・遠隔福祉の実現,等である.. 本報告では,(1)の活用目的で,重症心身障害者がホームページ(以下HPと表記する)を開設して,社会 参加を行う場合に伴う,さまざまな問題とその解決の見通しについて,実践に基づいて検討した. その結果,(1)重症心身障害者が独力でHPを製作したり,そのメンテナンスに当たることは,まず不可能 でほとんどの部分にボランティア等の他者の支援が必要である,. (2)施設職員の個人的な理解があっても,施設全体の方針がない限り,施設のサーバを通して,入所者が HPを開設することは難しい, (3)支援ボランティアの継続的養成やNPO等の支援体制が必要である,等が明らかとなった.. キーワード:重症心身障害者,社会参加,情報バリアフリー,ネットワーク活用,情報化支援ボランティア 1.わが国におけるアクセスビリティの法的整備. 「心身障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業に関する法律(平成5年5月26. 日法律54号)」が誕生し,障害者に対する情報通信のアクセスビリティが保障されるようになった.しかし, アメリカで施行された,ADA’90と異なり,罰則の規程が無く,関係者や関係機関の善意に任される点に不 満が残るものの一歩前進といえる.この法律の第1条には理念が高々とうたわれている.以下,条文を示 す.. 「第1条 この法律は,社会経済の情報化の進展に伴い身体障害者の電気通信の利用の機会を確保するこ との必要性が増大していることに鑑み,通信・放送身体障害者利用円滑化事業を推進するための措置を講ず ることにより,通信・放送役務の利用に関する身体障害者の利便の増進を図り,もって情報化の均衡ある発 展に資することを目的とする」1).また,同年に「心身障害者対策基本法(昭和45年5月21日法律84号)」か ら大幅な改正がなされた「障害者基本法(法律94号)」が整備された.この第22条の第3項に情報の利用等の 規程がある.「1.国及び地方公共団体は,障害者が円滑に情報を利用し,及びその意思を表示できるよう にするため,電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進,障害者に対して情報を提供する 施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならない.2.電気通信及び放送の役務の提供を行 2.
(4) ′、情報ネットワークの括馴二よる重症心身障害者の社会参加と取り巻く諸問題. う事業者は,社会連帯の理念に基づき,当該役務の提供に当たっては,障害者の利用の便宜を図るよう努め なければならない」2)となっている.しかし,障害者基本法においても理念の提示であって,当該事業者等 がこの法を守らなくとも,何の罰則も存在しない.. 2.情幸飢ヒと障害者 郵政省と厚生省の連携で「高齢者,障害者の情報通信利用に対する支援の在り方に関する研究会」を平成 12年1月に立ち上げ,高齢者・障害者による情報通信の利用に対する人的支援及びウェブアクセシビリティ の確保に向けた課題と方策の検討を開始した.その報告書を要約すると,序文は次のように書かれてい る3).. (1)IT(情報通信技術)の発展が高齢者・障害者の自立や社会参加などを可能にする.. (2)介護保険制度の創設や社会福祉基礎構造改革により,福祉が「『措置』から『契約』へ」と変貌を遂げる 中,契約当事者たる高齢者・障害者自身が必要な情報を受発信するためには,情報通信の利用が欠かせな い状況となっている.. (3)デジタル情報格差,いわゆるデジタルデイバイドの問題として,年齢・障害といった要因により利用面 での格差が生ずる可能性のある,高齢者・障害者による情報通信の利用は,こうしたデジタルデイバイド. に関する問題の一つとして,地球規模で取り組んでいくべき課題となってきている. (4)高齢者・障害者による情報通信の利用が具体的に進むためには,利用に必要なITが開発されるだけで なく,そのITを用いた製品・サービスが実際に利用されるようになることが必要である. (5)実際の利用に当たっては,対面/一対一/双方向による人的支援が重要であり,中でも高齢者・障害者 による.利用に関しては,障害の種類・程度によって必要な支援の内容が一般の場合と異なる,などの事情 に配慮した人的支援が必要である.. 特に,今後(5)に関連して,高齢者・障害者の情報化相応を支援するための地域ボランティア組織の確立が 急がれる.. 3.E−Japan戦略の中での扱い e−Japan2002プログラムにおいては,2001年7月にIT戟略会議,IT戟略本部を創設し,政府は,集中的 な検討を行い,平成13年1月には,IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)に基づき,総 理を本部長,全閣僚と民間等の有識者を本部員とし,官民を挙げてIT施策を推進する拠点である新しいIT 戟略本部(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)を発足させた. このIT戦略本部においては,「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家になる」という目標を掲げた 「e−Japan戦略」を決定し,具体的な行動計画を定めた「e−Japan重点計画」を策定し,政府を挙げたIT 革命の推進に向けて新たな一歩を踏み出したところである. この中での高齢者・障害者のIT活用に関しては,重点計画目標の「7.横断的課題の(2)デジタル・デイ. バイドの是正」で扱われている.一部抜き出して記述すると,「項目2の年齢・身体的な条件の克服」に次 の記述がある4).. 「年齢,身体的な条件により情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差が生じないよう,高齢者や障害. 者等に配慮した情報提供等のバリアフリー化や情報通信関連機器・システム等の開発を推進する. ①情報提供のバリアフリー化. 3.
(5) 山形 積治・中津 真弓. 国がインターネットを通じて提供する情報が視覚障害者にも利用しやすいものとなるよう,官庁のホーム ページのバリアフリー化に取り組むほか,視覚障害者に配慮した官報のインターネット配信等を行う.ま た,視聴覚障害者が健常者と同様に放送サービスを享受できるよう,視聴覚障害者向け放送ソフトの制作技. 術の研究開発を実施するほか,字幕番組,解説番組及び手話番組の制作費に村する助成を行う. ②高齢者・障害者のための情報通信関連機器・システムの開発等 高齢者や障害者が容易に利用できる情報通信関連機器・システム(パソコン等)の開発・普及等を促進す る.また,高齢者や障害者が簡単にインターネット利用等をできるようにする技術等の研究開発や,高齢 者,障害者にとってアクセシブルなホームページの点検システムを制作し,実証実験を行うなど,情報バリ. アフリー化を推進する」. しかし,全文を読む限り,「IT革命による競争原理」が強調され,弱者のデジタル・デバイド解消に取り 組む姿勢が弱いことが本報告の特徴である.. 4.旭川市における取り組み 高度情報化の中で,多くの地域が「地域情報化」に向けてさまざまな試案を示している現況である.旭川 市においても平成10年3月,旭川地域 情報化協議会で検討した結果,「旭川地域情報化ビジョン」5),6)を策. 定し,「旭川地域情報ハウェイ構想」を打ち出した.この構想の中の一つが障害者や高齢者者のnormaliza− tions,rehabilitationsを促進し,入所者のQOL(QualityofIJife)を保証するための「福祉村マルチメディ ア推進事業」7),H)である.事業目的・内容等を第1表に示す. 第1表 福祉村マルチメディアの事業概要. 事業名称. 福祉支援情報通信システムの開発・展開 事業目的. 高度な機能を持つ、福祉支援情報通信システムの開発・展開を行い、福祉の情報化を促進 することにより、高齢者や障害者が情報通信を活用して自立し、安心して生活すること等を可 能とする情報通信利用環境の創出。 事業概要. 通信■放送機構が、地方公共団体等の協力を得て、質の高い福祉サービスの効率的な提供 と高齢者等の自立・社会参加を可能とする、高度な機能をもつ福祉支援情報通信システムを 実現するため、厚生省と連携し、研究開発を実施する。 開発が期待されるシステム例 (1)訪問介護等支援システム(福祉・看護情報提供). (2)高齢者・障害者申社会参加支援システム(テレワーク、メール、HP、電子売買) (3)高性能型遠隔介護システム(在宅介護支援、遠隔診療) (4)ボランティア支援システム(友達ネット、ボランティア情報) (5)バーチャル面会システム(遠隔面会、遠隔家族団欒) 旭川市の福祉村といわれる春光台地区には15箇所の福祉施設(児童施設から高齢者施設までの各種の障害. 者相応)があり,約1500人の入所者と1000人の従業者がこの村に所属している.本試みは,この地区のIT 革命である. 4.
(6) 情報ネッ. トワークの活用による重症心身障害者の社会参加と取り巻く諸問題. 特に,外出することが困難な入所者を本ネットワークを用いて,社会参加させようとすることが狙いであ る.具体的には(1)テレワーク的な利用,(2)メールの活用及びHPの開設による社会との接点の拡大,(3)遠隔. 医療,遠隔福祉への活用,(4)ネットを通した地域事業への参加,及び(5)生涯学習への参加,寒が考えられ る.. 5.ネットワーク及びシステムの概要. 旭川市に以前から存在していた,CATV(ポテト)の基幹回線を拡張し,旭川市中心部の市役所,市立病 院,旭川保健医療情報センター,参加小中学校と福祉村をG−bitイサーネットで結びシステムを構築する. ネットワーク及びシステム全体の概略を第1図に示す.福祉村と市街地域とは光ファイバー1Gbpsで接続 されている軋10)・11). 第1図 福祉村マルチメディアネットワーク構成図. 6.システムの運用. システムの運用については,「福祉村マルチメディア研究会」を組織し,運用計画の策定を行っている. 本システムの運用はmO(通信・放送機構)の実験研究となっており,おおよそ次の段階で実用に向けた 取り組みを行う.. 第1段階として,職員にさまざまな活用の基本的な技術の習得と外部からの協力体制の確立である.北海 5.
(7) LI」形 積治・中津 真弓. 道教育大学旭川校健康福祉コースの研究テーマ一に位置付けて,関心のある学生を諸会議に参加させ,将来. 支援ボランティア組織とする下地を作る.. 第2段階としては,入所者がメールやHPを通して,情報発信を行う.この場合,障害の種類,程度,部 位により,特別なインタフェース(ハード及びソフトの面から)を工夫する必要がある.また,トラブルの. 対応や支援にボランティア組織などの外部協力団体を組織し連携を取る必要がある.本ネットワークは「マ ルチメディア活用学校間ネットワーク」とも連結しているので,児童生徒と入所者間のメールフレンドの支 援も考えている.また,事務部門,医療福祉分野での活用準備も進め,不正アクセス防止の為の認証及び情 報の暗号化等のセキュリティ村策研究も同時平行で進める.. 第3段階として,実用運用に入り,入所者の情報発信,施設福祉情報の発信,遠隔医療,遠隔福祉,情報 ネットワークを用いた入所者のQOL,放送大学活用による入所者の生涯学習が本格的に展開される.更 に,地域在宅福祉支援システムへと拡充する.平成14年5月現在,第2∼3段階の取り組みに入っている. 7.ホームページ作成支援に当たって 福祉村マルチメディアネットワークの運用に当たり,本システムの目的の一つである情報ネットワーク利 用による社会参加の一環として,入所者の希望者を募り,HPの作成とその公開を行うことになり,研究会 における検討の結果,北海道療育囲の入所者を対象とすることになった.HPの製作支援には,著者の一人 中津が,平成13年4月から週に1∼2度北海道療育園のボランティアとして支援に当たった. 本施設で希望を取った結果,H,N,Kの3名が希望し 第2表 ホームページ製作を希望した3名の入所者. た.それぞれのプロフィール及び障害の程度は第2表の. のプロフィール. 通りである. 氏名 性別年齢 障害の程度 大島の分類 そ の 他 参 考 事 項. Hの希望は,HPを通じて自作の詩を発表する希望を. ‖ 男 56 1種1級. 16 特殊キーでワープロ入力可、詩の発表. 示した.日常的には,文字盤を用いてコミュニケーショ. N 女 38 1種ユ級. 9 一語一語確認で全面支援、絵の発表. ンを取っているが,特殊な入力装置を用いて,ワープロ. K 男 22 1種1級. 16 書き溜めたmあり、作詞作曲の発表. の使用が可能であるために,作品などは,FDで提出さ れる.. Nは,普段書き溜めている絵を公表したいと言う希望を持っているが,IQがかなり低いために,一問一 答で,支援者が全ての入力を行う必要がある.. Kは,最近の若者らしくHPの意味を理解していて意欲が高い.本人は,シンガーソングライターとし て,作品を公表したり,自分を表現したいと考え,訓練の一環としてワープロで打った文章があり,これを HPに載せたいという希望があった.. 約10ケ月の期間を掛けて,HPが完成し,公開という段階になったが,北海道療育園においては,個人の HPを施設のサーバを用いて,公開することの是非が定まらず,とりあえず園内限定で職員に公開し,反応 を見て次の方針を立てることになった.. 8.HPの施設内公開. H,N,K各氏の希望を最大限に取り入れて製作したHPを北海道療育園内限定で公開し,これを関係職員 に見てもらい,聞き取り調査と合わせてアンケート調査を行った.アンケートの目的は,障害者がネット ワーク(特にHP)を通して,社会参加することについて職員の意識を調査するものであった12,13) 6.
(8) 情報ネットワークの活用による重症心身障害者の社会参加と取り巻く諸問題. 調査は,平成13年12月に行い,対象者は,北海道療育園の職員で,10代から60代までの男女72名である. 年齢や福祉に関わった年数によって,入所者のHP公開に対する見解に偏りが出るのではないかと当初考え て,クロス分析も行ってみたが,いずれの項目についても有意差は見られなかったので,一次集計に基づい. て議論を進める. 8.1 調査対象者 (1)調査対象者の年齢及び福祉従事経験年数 年齢は,主に20代から50代が中心であり,10代と60代はともに一人であった.20代は21人,30代は14人,40 代は21人,50代は13人であった.また,調査対象者の福祉従事経験年数は,5年以下が16人,6年∼10年が 20人と,全体として,福祉に従事して豊かな経験を有する職員が半数以上をしめる. (2)福祉村マルチメディアネットワークに対する認知度 福祉村マルチメディアネットワークは,平成12年に開 設され,これまでにさまざまな実験を行って来たが,施 N=72. 設職員にどう受け止められているかを調査したのが第2 図である.「福祉村マルチメディアネットワークを知っ ている」と答えたのは29%,「名前を聞いたことがあ. る」のは31%,「知らない」は40%であった.福祉村マ 31%. 第2図 施設職員の福祉村マルチメディアネット ワークに対する認知度. ルチメディアネットワークの知識を持たない者は,調査. 対象者の7割であった. 施設などのネットワークの存在は,管理者や関心の高. い職員については,大きな存在であるが,一般の職員にとっては,関心が薄いことが何われる.しかし,今. 回の試行によって,多くの職員に関心を持たせることが出来た.. 8.2 HPを見た感想 (1)障害者がネットワーク(特にHP)によって社会参加することについて このことについて,調べたのが第3図である.「大賛. 成である」と答えたのは47人,「反村とは言わないが安 易である」と答えたのは8人,「よくわからない」14 …. 人,「反対である」0人であった.65%が「大賛成であ る」と答えている.. (2)HPの内容について ¶一叫¶. 3人のHPを見た感想を第4図に示す.「社会参加の 手段として有効である」が40人,「三人のことがよくわ かった」が16人,「三人に親しみを感じた」が12人で あった.とくに,「社会参加の手段として有効である」. 第3図 ホームページによって,施設入所者が社会参 加することに対する施設職員の意識. と答えた人数は,全体の56%を占めている.また,「今 すぐに実現されるべきである」と答えたのは5人 (7%)であった.積極的な支援は意外に少ない.. 7.
(9) 山形 積治・中津 真弓. ホームページを見た感想(複数【司答) 不明. その他 三人に親しみを感をじた 需要カモない. 不1央である. 支援したい 三人のことカヾよくわ力ヽった 今すぐに実現されるべきである. 時期尚早である 興味カヾない. 必要1生カヾ薄い 社会参カロの手段として有効ではない 社会参カロの手段として有効である. 0. 10. 30. 20. 40. 50. 人数 第4図 3人のホームページを見た職員の感想 (3)問題点として. 施設入所者のHPを,実際に公開した場合,様々な問 題が予想される.最も懸念が大きかったのは,第5図に. 示すように,「支援体制」が32人(45%),ついで「ネッ トトラブルへの対処」が29人(41%),「施設側の管理」 が26人(38%)であった.. 9.実践研究から見えたこと 障害者のHP開設について65%の職員が「大賛成であ 第5図 入所者のHP公開に対して事前に準備すべ き事項(複数回答),カツコ内は%表示. る」と答えている.北海道療育園の職員は,障害者が HPを公開することによって社会参加することに対し. て,肯定的である.しかし,この結果は,理念上での肯定で,「誰かが担当するのであれば賛成」という意 味であるように思える.特に重症障害者がHPを開く場合,支援者が当人に村して丁寧な確認の基で進めな ければ,障害者本人の意図とはかけ離れた内容になってしまう危険性がある.今回の支援では,H,N,K3 名が納得するHPになるまでに,約半年の時間を要した.. 第5図からも明らかなように,福祉に永い経験を持つ職員の56%が「社会参加の手段としての有効性」を 認めており,この職員達が自己の課題として認識した場合,福祉村マルチメディア計画に期待がもてる.. 現実の問題として,HPの作成及び公開を希望する入所者が増加することが考えられ,特に,支援体制確 立の問題が急務であろう.入所者の情報化支援にあたる職員は確保されておらず,入所者のニーズに応える ためにはボランティアの手を借りなければならない.又,HP公開後も,システムのトラブルへの村処,HP 8.
(10) 情報ネットワークの活用による重症心身障害者の社会参加と取り巻く諸問題. メンテナンスやメール交換の支援,等のために継続的な援助が必要である.そのため,ボランティアの人数. もかなりの数になり,組織的に運営されていく必要がある.また,アンケート結果は,施設側の管理の問題 等を提起している.第5図にみられるように,セキュリティも含めたサーバ管理の問題から,入所者が利用 する端末をどこに設置し,どの部署が管理するかといった極めて初歩的な問題もある.特に,早急な検討が 急がれるのは,施設入所者が施設のサーバからHPを発信することに対する是非の問題である.. 施設を管理する側にとっては,入所者のHPを公開した場合,(1)外部から思わぬ反応があった時の対応が 予測できないこと,(2)希望者が多くなった場合の対応,(3)指導支援やサーバ管理に廻す人材の余裕がない等. 、. で躊躇する結果になる.聞き取り調査からも,入所者がHPを通して社会参加を行うことを評価しながらも 実行に踏み切れないジレンマを感じた.. 10.今後の課題とその解決に向けて 旭川市が開設した「福祉村マルチメディアネットワーク」がその機能をフルに発揮し,入所者がこのネッ 下ワークを通じて,社会参加を果たすためには,次の諸点の改善が必要である.. 10.1 支援人材の育成と確保 (1)重症心身障害者が,独力でHPを制作することはまず不可能で,90%以上はボランティア等の他者の 支援が必要である.. (2)開設した後々もメンテナンス及びトラブルの処理等で,継続的にボランティア含め他者の支援が必要 になる.. (3)特に,重症の障害者の支援に当たっては,慣れない者にとっては,会話さえ成り立たず,支援者には. 情報技術の他,特別な研修が必要である. 上記諸問題に対して,北海道教育大学旭川校健康福祉コースと旭川市の担当部の連携の下で,ボランティ. アを募り定期的な研修会を開き,技術を身に付けた者を各施設に配属し,支援する体制を整えた.ボラン ティア登録者は現在のところ約30名であるが,旭川市内にある大学や高専に呼びかけた結果,支援者も増加 の傾向にあり,コンピュータ技術を用いて福祉支援ができる点で学生からの評判も良い.しかし,ボラン ティア希望者の数は増えているが,今ひとつ施設側の腰が重い現状にある.. 10.2 意識改革. (1)職員の個人的な理解があっても,施設全体の方針が定まらない限り,施設のサーバを通して,入所者 がHPを開設することは難しい.従って,入所者の情報化に対する施設全体の意識の改革が必要であ る.. 施設職員の多くは,情報化という社会の変化については理解しているが,自らが情報化社会には帰属して いるとは考えておらず,自分達とはかけ離れたところで起こりつつある社会現象であると捉えており,従っ. て,施設に「入所している者も帰属していない」と考えている傾向にあることが聞き取り調査の結果判明し た・第2図の分析結果がそのことを裏付けるものである.この考えは誤りであって,この意識を改めない限. り,彼らの管理下にある入所者の情報化への途は閉ざされる.このことに村して,「福祉村マルチメディア 研究会」では,定期的に施設幹部の研修会を持っている.. 9.
(11) 山形 積治・中津 真弓. 10.3. (1)入所者個人がHPを持ったり,施設の情報化を進めて行くことは,現状の職員配置では無理な点が多 く,情報化を見据えた新しい人員配置が必要になる. 福祉村に設置されている福祉施設のほとんどは相当以前に建設され,情報化村応には成っておらず,これ までの方法で施設運営が十分にやってこられたのに「情報化」という厄介なものが持ち込まれたという印象. は免れない.しかし,第2節において示したように福祉が大きく変わろうとしている中で,情報化の波を避 けて通ることは出来ない.ハード,ソフト,人材の各方向から,職員の意識改革も含め,施設の情報化を検 討する時期に差し掛かっている.現状では,情報化を支援しようとするボランティアが入り込み難い状況に なっている.. 10.4 地域福祉支援への拡充 (1)情報化が進む中で地域福祉情報化支援ボランティア組織の確立が必要である. (2)システムの今後の展開を地域福祉支援に位置付ける必要がある.. 福祉村マルチメディアネットワーク事業は,通信・放送機構(TAO)の支援によって実施されているも のであり,研究の成果を平成16年中にまとめることになっている.往々にして,実験終了後にハードシステ ムだけが取り残されるケースをよく耳にする.従って,将来に向けて,このネットワークをどう展開してゆ. くかのビジョンを明確にしておくことが肝要である.この対応として,既に「上川中部圏地域拠点都市地域 情報通信高度化調査研究会」を組織して,旭川市のみならず周辺の市町村との協力による広域活用の検討を 行っている.. 広域で捉らえた場合,人口40万人が対象となり,20%の高齢者人口を見積もっても8万人の高齢者が在宅 していることになる.また,施設から出て,地域で生活する高齢者・障害者の支援も考慮に入れている.北 海道の場合,過疎遠隔地の高齢者が多く,特に冬季の社会的入院などの事情により,医療費を引き上げる結 果となっている.そのため国民健康保険事業は軒並み赤字である.将来,本ネットワークを広域地域の在宅 福祉や在宅医療ネットワークとして拡充する計画を立てている.また,前述したボランティア研修にもこの. ことを配慮して行っている.更に,「旭川市マルチメディア学校間連携推進事業」とも協力し,総合的学習 の時間におけるボランティア活動,福祉授業を支援し,「心の教育」の一端を支援する計画である. 最後に,現状のインターネット環境は,個人情報の悪用・ネット詐欺・中傷・HP荒し,等の違法行為が. 横行している.インターネットは,全世界に向けて公開されるものであり,その受け取り方は人それぞれで. ある.そのため,思いもつかないような反響が返ってくることも十分に考えられる.情報を公開すること は,そのことへの覚悟も必要である.即ち,公開した情報の責任は,自己責任であることを入所者に理解さ せることも必要である.. イギリスには,Amicro−Chipisthegreatleveler.(「半導体マイクロチップは偉大なる平等社会を作り出 す物である」という意味)という思想が浸透しており,マイクロチップで構成されているコンピュータは, 障害者のハンデキャップを保証するが,そのことによって社会参加した場合の責任は自己に属するというこ とである.わが国においても見習うべきところが多い14・15). 文 献. 1)「心身障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業に関する法律(平成5年5月26日法律封号)」に関しては,例えば, http:〝wwwhouko,COm./00/01/hO5/054.HTM等で全文を読むことが出来る.. 10.
(12) 情報ネットワークの活用による重症心身障害者の社会参加と取り巻く諸問題 2)「障害者基本法(法律94号)」に関しては,例えば, http:〟wwwhouko.com./00/01/s45/084.HTM等で全文を読むことが出来る. 3)「高齢者,障害者の情報通信利用に対する支援の在り方に関する研究会報告書,平成12年5月」に関しては,総務省のホームページから入 ることが出来る. 4)「eJapan」や「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」に関しては,首相官邸ホームページ,http:〟wwwkantei.gojp伽/singi^t2/ で確認することが出来る. 5)山形積治・”北海道旭川市福祉支援情報通信システムの開発・展開事業”,成果展開等研究開発事業研究成果発表会資料(その2),pp.179 −192.,放送・通信機構(平成14年3月).. 6)旭川地域情報化協議会(会長.山形)「旭川地域情報化ビジョン」,1998.3(旭川市発行). 7)旭川情報ネットワーク研究会(会長.山形)「福祉柑マルチメディア推進事業推進計画」,1999.3(旭川市発行). 8)山形積治・「旭川市福祉村マルチメデデイアネットワークの活用」,2000PCConference論文集,Pp.109−110(2000.8), 9)山形積治・”北海道旭川市福祉支援情報通信システムの開発・展開事業”,成果展開等研究開発事業研究成果発表会資料(その2),pp.179 −192.,放送・通信機構(平成14年3月). 10)山崎則明・「旭川福祉村マルチメディア推進事業の取り組み」,PCカンファレンス北海道2001論文集,pp.40N41(2001.10). 11)山崎則明・「旭川福祉支援情報通信システムの開発展開」,PCカンファレンス北海道2001論文集,pp.42−43(2001.10). 12)中津真弓・山形積治.「福祉村マルチメデデイア活用による障害者の社会参加支援」,. PCカンファレンス北海道2001論文集,pp.38−39(2001.10).. 13)山形積治・中津真弓.「重症心身障害者のネットワークによる社会参加の諸問題」,電子情報通信学会技術研究報告,. WIT2001−38鵬42. (福祉情報工学),pp.1−6,(2002年3月). 14)J・PDeakin.’Thespasticsociety,,TutorialandWorkshoponComputerandHandicapped,,Ottawa,1982. 15)山形積治・「英国の事情・パソコンと身体障害(児)者」,信学誌,Vol.69,No.5,pp.412−416,May,1986.. (山形 積治 旭川校教授) (中津 真弓 旭川校学生). 11.
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