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子ども家庭福祉の政策と実践における貧困の検討

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(1)Title. 子ども家庭福祉の政策と実践における貧困の検討. Author(s). 中村, 直樹. Citation. 北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編, 64(1): 11-20. Issue Date. 2013-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/6965. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(人丈科学・社会科学編)第 6 4巻 第 1号 J o u r n a lo fHokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( H u m a n i t i e sandS o c i a lS c i e n c e s )Vo . l6 4,No. l. 平 成 25{ I 8月 ご. August,2 0 1 3. 子ども家庭福祉の政策と実践における貧困の検討 中村直樹. 北海道教育大学函館校社会福祉学研究室. AnE x a m i n a t i o no ft h eP o v e r t yi nC h i l dS o c i a lWo r kP o l i c y& P r a c t i c e NAKAMURANaoki Departmento fS o c i a lW e l f a r e,HakodateCampus,HokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n. 概要 日本社会から一見すると消滅したかのようにみられてきた子どもの貧困が,今日において再発見されてお り,子ども家庭福祉の政策と実践に対して,その認識の仕方や対応方法などの検討を要請している。そのた め,本論は,日本の子どもの貧困についての検討を通じて,子ども家庭福祉の政策と実践に対して,どのよ うな対象領域と機能とを論証し確保することができるのかを考察しようと試みたものである。子どもの貧困 は,社会的な規定のもとに生み出される子どもの生活と発達にかかわる困難や制約と捉えることができ,子 どもの貧困の解決を通して子どもの生活と発達を社会的支援することが,子ども家庭福祉の政策と実践に要 請されているということが分かった。しかし,私たちそれぞれの,また,社会全体としての,子どもの貧困 の認識と解決のいずれにおいても課題が残されている。. 1.はじめに. 祉の政策と実践の対象として強く存在していた。 それが,高度経済成長や福祉国家の展開とともに,. 子ども家庭福祉の政策と実践に,貧困という視. 貧困の消滅や減少,あるいは貧困から社会福祉の. 点、の導入は,古くて新しい試みである。戦前にお. 「解放」が語られるようになり,日本社会(日本. いては,直接的な貧困児童にとどまらず,高率な. 人)は豊かな社会を実現したとみなされてきた。. 乳児死亡率,保育所(貧困労働者または低所得者. 実際,厚生省(現・厚生労働省)は「低消費水準. 対策),非行児童,不就学児童,労働児童などの. 9 6 5年を最後に打ち切り,日本の 世帯」の推計を 1. あらゆる児童保護の分野に貧困をみることができ. 政府統計から貧困の測定がなくなっている1)。こ. る。戦後直後においても,戦災浮浪児問題,戦災. れらの効果は,「目に見えない形で貧困が進行す. 孤児問題,引揚孤児問題,非行児童問題,乳幼児. るため,多少の消費生活の向上によって,中流意. 体位低下問題,母子世帯問題などの要保護児童対. 識に侵され,自己の生活位置の認識ができない結. 策を中心に貧困をみることができるなど, 1960年. 4 9 ), 果を招いた」といわれるように(吉田 1984:4. 代に高度経済成長に入るまで貧困は子ども家庭福. 日本社会(日本人)に対して,生活の中流化意識,. 1 1.

(3) 中村直樹. 貧困を「貧困」と認識できなくさせることなど,. い。しかし,貧困の定義は,単一ではないにして. さまざまな影響があったといえる 2)。. も,一部について合意が得られ,今日の社会福祉. このように日本社会の中から貧困の消滅や減少 といったことが,仮構にすぎないことは,「生活 保護, 2 0 0 万人に迫る. 1 9 5 2年度以来の水準 J ( 朝. .4.5 :1 0 ), '生活保護受給者, 日新聞夕刊 2 0 11 2 0 3万人. 0 1 1 .9.5 :2), 5月J (朝日新聞夕刊 2. 学の研究に影響を与えている定義もある。 日本の公的扶助制度では,貧困とは,低位の所 得階層のうち,その所得では最低生活費を充足で きない者の状態を指している。すなわち,貧困と は最低生活費という一つの基準で測ってその下に. 「生活保護最多,高齢化や不況が拍車 J (朝日新. 位置する所得の高さを意味するものである。この. 聞夕刊 2 0 1 1 . 1 1 .9 :2)3),あるいは, 'Bさん ( 4 2 ). 最低生活費という基準をどう設定するかが貧困を. は高校 1年と中学 2年の男子,小学校 6年女子の. どう定義するかの議論の要となる。. 3人の子どもの母親だ。小遣いはゼロ。次男はク. 古典的には,シーボーム・ラウントリーが,ヨー. ラブ活動後ジ、ユースも飲めない。それがつらい。. ク市における貧困を研究した「貧乏研究」のなか. 『働く』と言っていた長男を説き伏せ,道立工業. で (Rowntree1901),生存を基準とした生活必需. 高校に行かせることができた。だが, 1 3万円の修. 物資の欠乏状態という設定で貧困を定義した。貧. 学旅行代に頭を痛める。長男は「行かなくてもい. 困は生存の必要に関連した貧困基準(貧困線)で. 朝 いよ』と言うが,本心でないことがわかる J (. 判断され,その意味では絶対的な定義である。こ. 日新聞2 0 0 9 .5. 1 3 : 5) という新聞報道で日常に. れを一般に,絶対的貧困(絶対的水準論)と呼ん. おいて知ることができる事実である。こうした事. でいる。しかし,これは,「健康の保持その他の. 実は,日本社会から一見すると消滅したかのよう. 需要(衣服,居住等)と,国民経済等の水準とは. にみられてきた貧困が,今日において再発見され. 無関係に決定される考え方」など(阿部2 0 0 2:3 7 ),. ているとみることができるばかりではなく,子ど. かなり批判されることになった。. も家庭福祉の政策と実践に対して,その認識の仕. このような絶対的貧困に対し,基準を社会にお. 方や対応方法などの再検討を要請するものとみる. ける普通の人々の生活水準に達していない状態と. ことができる。. いう設定で貧困を定義する考え方が,社会科学の. したがって,本論の問題意識は,再発見された. なかで用いられ成果をあげてきた。こうした考え. 貧困についての検討によって,子ども家庭福祉の. 方に基づく貧困概念を,相対的貧困(相対的水準. 政策と実践に対して,どのような対象領域と機能. 論)と呼んでおり,それはピーター・タウンゼン. とを論証し確保することができるかどうか,とい. トにより発展させられた (Townsend1974)。彼. う点にある。言い換えれば,再発見された貧困が,. による相対的貧困の定義は,「個人,家族,諸集. どのような論理によって子ども家庭福祉の政策と. 団は,その所属する社会で慣習になっている,あ. 実践の対象と機能を構成することができるのか. るいは少なくとも広く奨励または是認されている. を,検討することが本論の目的である。. 類の食事をとったり,社会的諸活動に参加したり, あるいは生活の必要諸条件や快適さをもったりす. 2 . 貧困という概念. るために必要な資源を欠いているとき,全人口の なかでは貧困の状態にあるとされるのである。貧. 貧困の定義は学問的な活動だけでなく,政治. 困な人々の資源は,平均的な個人や家族が自由に. 的・政策的な活動としても理解しなければなら. できる資源に比べて,きわめて劣っているために,. ず,そのため貧困をどうのように定義するかは,. 通常社会で当然とみなされている生活様式,慣習,. 政治的にも,政策的にも,そして学問的にも常に. 社会的活動から事実上締め出されているのであ. 論争となり,単一の正しい貧困の定義は存在しな. 9 7 7:1 9 ),それが,食事, る」と (Townsend= 1. 1 2.

(4) f -ども家庭福祉の政策と実践における貧困の検討 所得,衣服,教育機会,雇用機会のいずれにせよ,. ある程度の高い生活水準の人と,比較的に低い生. ある人ゃある家族が,他の人々や他の家族に比べ. 活水準の人がで、きてしまう。つまり,『格差』は. て少なくしか所有していない状態を客観的に示す. 多かれ少なかれ存在する。…(中略)…しかし,. のが,相対的貧困の考え方である。こうした相対. 貧困と格差は異なる。貧困撲滅を求めることは,. 的貧困の重要だと考えられることは,「相対的貧. 完全平等を追求することではない。「貧困』は格. 困における比較の原理の要点は,ある人が相対的. 差が存在する中でも,社会の中のどのような人も,. 貧困の状態にあるかどうかの判断は,同じ社会の,. それ以下であるべきない生活水準,そのことを社. 歴史上の同じ時点に暮らしている人々との関係に. 会として許すべきではない,という基準である」. おいてのみ可能であるという考え方にある」とい. v-v),格差や不平等のなか と論じ(阿部 2008:i. L i s t e r=2011:4 2 )。例えば,戦後 う点である (. でも,社会的に許容できない格差・不平等を貧困. 直後の困窮した生活を経験した人々の間で,今日. と捉えるのである。なお,阿部が「この「許すべ. の貧困が,自分たちのそれより程度が軽いと認識. きではない」という基準は,価値判断である」と. されるとしても,こうした比較は,相対的貧困の. 述べるように(阿部 2008:v),貧困は価値判断. 比較の原理からは見当違いとなる。それは, 2013. という見方もできる。つまり,貧困は,単なる客. 年現在に普通の暮らしをするために必要なものに. 観的な状態を示しているだけではなく,社会的に. ついて,何も語っていないのである。日本におい. 許されない生活水準を如何に考えるべきかとい. ても,貧困測定の基準となる最低生活費は,憲法. う,その社会の問題意識や問題解決の意欲の反映. 第2 5条にも「健康で、文化的な最低限度の生活」と. というべきものを示しているのである。. してその保障が宣言されているが,それは相対 的・流動的なもので,その時々の社会的条件に よって決定されるものと捉えている。それは,貧 困という状態そのものも,社会によって,時代に よって相違が生じるものと理解しているからであ る。このように今日の貧困は相対的貧困として捉. 3 . 日本の子どもの貧困と子ども家庭福祉の 問題 ( 1 ) 子どもの貧困 子どもの貧困の傾向とその比率,さらに,その. えるべきだというのが,日本の政治的・政策的・. 社会全体の貧困と比べた水準は社会によってさま. 学問的な一応の合意である。. ざまである。そうした子どもの貧困の特徴につい. こうした相対的貧困は,社会的な格差や不平等. て,経済開発協力機構 (OECD) が行った貧困の. の問題としても捉えることもできる。貧困測定の. 国際比較が示している(図表 1)。なお,. 基準は,当該社会の同時代の生活に照らして設定. の貧困統計は,所得分布の中央値の 50%を貧困線. されるため,貧困は,貧困な個人や家族とその社. として設定している,また所得に焦点を当ててい. 会の人々との聞の格差や不平等としてみることが. るため,子どもの貧困(貧困率)という表現は,. できるのである。ただし,アマルテイア・センが. その子どもを育てている家庭の貧困(貧困率)を. 「貧困と不平等は相互に密接に関わっているが, それらは異なる概念であり,どちらも他方を包含. OECD. 表すものである。 図表 1の上段左のグラフは,各国の子どもの貧. S e n=2000 するものではない」と述べるように (. 困率を示したものである。子どもの貧困率が最も. :3 2 ),貧困をただちに格差や不平等とみること. 低いデンマーク (2.7%) から最も高いトルコ. には注意が必要である。このような貧困と格差や. (24.6%) まで大きな差があるにしても,日本の. 不平等の関係をどのように捉えるべきかについ. 3.7%と決して低くないことは 子どもの貧困率は 1. て,阿部は,「格差が皆無であるユートピアの世. 3.7%という数字は,子ど 明らかである。日本の 1. 界ではともかく,現代資本主義の社会においては,. もの 7人から 8人に 1人が貧困線以下の所得水準. 1 3.

(5) 中村直樹. 図表 1 子どもの貧困率 のり. ー. 30. 20. o. 0%. 50%. 100%. &時. 鱗子どもの貧凶半. オーストラリア オーストリア ベルギー カナダ チェコ デンマーク フィンランド フランス ドイツ ギリシャ ハンガリー アイスランド アイノレランド. 畿全体の貧凶半. イタリア 円本 韓日 ルクセンブルグ メキシコ オランダ、 ニュージーランド ノルウェー ポーランド ポルトガル スロヴァキア スペイン スウェーテ、ン スイス ト ノ レ コ イキ、リス アメリカ OECD全 体. 家族構成別及び就労状況別の子どもの貧困不(%) 全体の 貧阿率 (%) オーストラリア オーストリア ベルギー カナダ チェコ デンマーク フィンランド フランス ドイツ ギリシャ ハンガリー アイスランド アイルランド イタリア 日本 韓│疋│. ルクセンブルグ メキシコ オランダ ニュージーランド ノルウェー ポーランド ボルトガル スロヴァキア スペイン スウェーデン スイス トルコ イギリス アメリカ. OECD全体. 子どもの 貧岡率 (%). 非就労. 1 2. 4 6 . 6 8 . 8 1 2 5 . 8 5 . 3 7 . 3 7 . 1 1 1 1 2 . 6 7 . 1 7 . 1 1 4 . 8 1 1 . 4 1 4 . 9 1 4 . 6 8 . 1 1 8 . 4 7 . 7 1 0 . 8 6 . 8 1 4 . 6 1 2 . 9 8 . 1 1 4 . 1 5 . 3 8 . 7 1 7 . 5 8 . 3 1 7 . 1. 1 1 . 8 6 . 2 1 0 . 0 1 5 . 1 1 0 . 3 2 . 7 4 . 2 7 . 6 1 6 . 3 1 3 . 2 8 . 7 8 . 3 1 6 . 3 1 5 . 5 1 3 . 7 1 0 . 7 1 2 . 4 2 2 . 2 1 1 .5 1 5 . 0 4 . 6 21 .5 1 6 . 6 1 0 . 9 1 7 . 3 4 . 0 9 . 4 2 4 . 6 1 0 . 1 2 0 . 6. 6 7 . 8 5 1 .3 4 3 . 2 8 8 . 6 71 .4 1 9 . 8 4 6 . 3 4 5 . 5 5 6 . 1 8 3 . 6 4 4 . 1 2 2 . 9 7 4 . 9. 1 0 . 5 8 1. 1 2 . 4. fどもの人数. 両親家庭. ひとり親家庭 就労. 非就労. 一方が 就労. 両方が 就労. 6 5 . 9 7 8 . 0 1 8 . 1. 6 . 1 1 0 . 5 1 0 . 1 3 2 . 2 1 0 . 3 3 . 9 5 . 6 1 1 . 8 2 6 . 3 1 7 . 6 1 6 . 4 1 7 . 1 2 4 . 0 1 6 . 4 5 8 . 4 2 4 . 8 3 8 . 3 3 3 . 6 2 7 . 1 2 9 . 8 4 . 8 2 5 . 6 2 6 . 2 2 3 . 9 3 2 . 2 6 . 3. 5 0 . 8 3 6 . 3 3 6 . 1 8 0 . 5 4 3 . 2 21 .1 2 3. 4 4 8 . 4 4 7 . 3 3 9 . 2 21 .7 51 .0 5 5. 4 7 7 . 9 4 9 . 9 5 8 . 6 2 7. 4 5 2 . 8 6 4 . 5 4 6 . 8 2 8 . 8 51 .2 5 3 . 2 6 6 . 0 7 0 . 6 3 5 . 5. 7 . 9 4 . 5 1 0 . 6 2 2. 4 9 . 5 5 . 3 8 . 9 1 1 .5 5 . 7 2 2 . 1 6 . 5 2 8 . 8 1 5 . 7 2 4 . 1 1 0 . 8 11 .1 1 5 . 8 2 7 . 1 11 .9 21 .0 3 . 9 2 8 . 4 3 4 . 3 1 8 . 2 2 3 . 2 1 3 . 7. 1 .0 2 . 9 2 . 5 4 . 5 0 . 7 4 1 .1 1 .9 1 .5 4 . 0 3 . 4 4 . 1 1 .9 1 .3 9 . 8 3 . 9 5 . 3 1 0 . 9 2 . 3 2 . 8 0 . 3 5 . 7 4 . 8 1 .8 5 . 1 1 .1. 4 3 . 6 3 9 . 1 9 1 .5. 31 .9 6 . 7 3 6 . 2. 2 8 . 1 3 5 . 8 8 2 . 2. 1 8 . 9 9 . 0 2 7 . 0. 5 4 . 0. 21 .2. 4 7 . 7. 1 5 . 8. 6 0 . 1 31 .7 6 9 . 0 2 9 . 9 61 .6 4 8 . 0 31 .2 7 4 . 9. 2人. 3人以上. 9 . 0 6 . 4 7 . 0 1 0 . 6 7 . 6 1 .7 5 . 4 6 . 1 1 3 . 0 8 . 3 5 . 3 6 . 7 11 .7. 1 0 . 4 4 . 6 9 . 5 1 2 . 7 6 . 2 1 .7 2 . 9 6 . 6 1 3 . 0 1 2 . 6 6 . 0 6 . 2 1 1 .7. 1 0 . 9 5 . 5 1 0 . 8 1 8 . 0. 7 . 1 1 1 . 2. 1 2 . 7 1 5 . 7. 1 4 . 2 2 6 . 4. 3 . 8 1 5 . 2 9 . 8. 2 . 4 1 8 . 0 1 7 . 0. 5 . 6 3 0 . 9. 9 . 7 4 . 2. 1 6 . 5 2 . 5. 2 9 . 2 3 . 4. 2 0 . 2 1 .0 6 . 2. 4 . 0 1 3 . 6. 6 . 0 1 4 . 9. 1 9 . 8 2 6 . 1. 3 . 9. 8 . 1. 9 . 5. 1 4 . 7. 。. 出所・ OECD.2 0 0 9 ,S o c i e t ya taG l a n c e2 0 0 9 :OECDSOCIALINDICATORS ,OECD, pp92-93より筆者作成。. 14. 1人. 4 . 0 3 . 2 9 . 6 1 3 . 8 1 8 . 9 1 4 . 2 1 0 . 0 1 9 . 4.

(6) f -ども家庭福祉の政策と実践における貧困の検討 で生活していることを示している。次に,図表 1. と比べて最しい生活条件での子育てになる場合が. の上段右のグラフは,全体の貧困率と子どもの貧. 多い。その要因としては,母親ひとりで子どもを. 困率を 100%に積み上げその割合を示したもので. 抱えて働き続ける大変さや不利な k性の労働条件. ある。 OECD全体では,子どもの貧困率が全体. などに由来する経済的基盤の脆弱さが考えられ. の貧困率を上回っており,子どもの方が大人より. る。実際に, 2 0 0 6年の「国民生活基礎調査」によ. 貧困に陥るリスクが高いことが考えられる。子ど. ると,母子世帯の 1世帝当たり平均所得金額は,. も(子育て家庭)が貧困に陥りやすい理由は単ー. 2 1 1万 9千円(世帯人員 1人当たり平均所得金額8 1. ではないにしても,リスターが,「子どもは世帯. 万 3千円)であり,これは,全世帯の 1世帯当た. に追加的なコストをもたらす。また同時にこの時. り平均所得金額5 6 3万 8千円(世帯人員 1人当た. 期は,多くの国で労働市場での母親の活動が減る. り平均所得金額2 0 5万 9千円)に比べて極めて低. ために,親の収入が下がってしまう」と述べるこ. い水準となっている。ただし,全世帝との比較で. L i s t e r とが主たる理由であるのは確かであろう (. は,それに占める高齢者世帝の割合が大きいため,. =2 0 1 1:1 0 6 )。そこで注目したい点は,スペイン,. 子どものいる世帯に限定して比較すると,母子世. トルコ,アメリカなどでは,子どもの貧困率が全. 帯の平均所得は子どものいる全世帯の平均所得金. 体の貧困率を大きく上回っているが,デンマーク,. 額 ( 7 1 8万円)の 29.4%である。しかも,母子世. フィンランド,ノルウェー,スウェーデンなどで. 帯の平均所得の内訳をみると,その82.1%は「稼. はこれが逆になっているという点である。この 2. 働所得」であり,実際に 2 0 0 6年の時点では,母子. つのグループ聞の相違点は,子育てにかかる多大. 世帯の母の84.5%が就業しているのである。日本. なコストに対する社会手当やサービスの充実,そ. の社会において母子家庭は「ワーキング・フ。ア」. してワーク・ライフ・バランスの実現といったこ. といえる状態におかれているのである 4)。. との成否の如何による,と推測することができる。. 前述の図表 1の調査結果は,ほぼすべての国で,. その意味では,子ども・子育てを社会がどれだけ. 就労することによって,ひとり親家庭の貧困率は. 大切に支えているのかということが,子どもの貧. 大幅に減少に転じたのに,日本では母親の就労に. 困率と全体の貧困率の位置関係に影響を与えると. よっても貧困率が減少に転じなかったことを示し. いえよう。. ていた。そのことをどのように理解するかは,母. 図表 1の下段は,家族構成別及び就労状況別の. 親の就労の努力不足か,あるいは母親の就労とい. 子どもの貧困率であるが,ほとんどの国で非就労. う方法では克服できない貧困や格差の問題が存在. 家庭,とりわけ非就労のひとり親家庭において高. するのか,そのいずれか一方であると考えるべき. い子どもの貧困率を示している。一方,ほぼすべ. である。前者については,日本,ヨーロッパ 1 0か. ての国で,就労しているひとり親家庭で貧困率は. 国,アメリカの仕事・家事・育児の平均時間につ. 大幅に減少に転じたのに,日本だけは就労してい. いての研究が,「日本のシングルマザーは, 1 2カ. る ひ と り 親 家 庭 の 子 ど も の 貧 困 率 が 58%と. 国で最も仕事時聞が長い ( 3 1 5分)一方,育児時. OECDの3 0か国中で最も高い。こうした事実を. 間は最も短く. どのように理解すべきか, 日本の社会におけるひ. なっている」と指摘するように(田宮・四方2 0 0 7. とり親家庭での子育てをめぐる現状から考えてみ. :2 2 1 ),母子家庭の貧困が,母親の就労の努力不. ることにしたい。. ( 2 3分),仕事に偏った時間配分と. 足に由来するものではないことは明らかである。 したがって,母子家庭における貧困や格差の問題. ( 2 ) 子どもの貧困とひとり親家庭 日本の社会において,ひとり親家庭(とりわけ 母子家庭)で子どもを育てることは,一般の家庭. は,母子家庭で子どもを育てることを可能とする 社会的支援の乏しさを意味する以外の何物でもな いことを物語っているといえる。. 1 5.

(7) 中 村. 直. 樹. 以上の母子家庭の生活状況を補足しながら整理. 難,社会的孤立,就労の不安定という問題が残さ. すると,所得は子育て家庭全体の平均所得の. れたままであるからである。すなわち,図 1と表. 2 9.4%,就労時間は両親家庭の母親の就労時間の. 1が示しているのは,就労の不安定が経済的困難. 約 2倍の時間であり,それが母子家庭の母親の育. を招き,同時に社会的孤立が,育児の困難が助長. 児時間を奪うことになり両親家庭の母親の 4分の. している事態である。こうした事態を招くリスク. 1の時間となっている。また, 2 0 1 0年の「国民生. が高いのは,あるいはこうした事態に対処できる. 活基礎調査」による現在の暮らしについての世帯. 資源や力を十分に持っていないのは,相対的に母. 別生活意識をみると,「苦しい」と答えた世帯の. 子家庭であるという理解であった。. 割合は,全世帯で 59.4%,高齢者世帯で 5 l .5%,. なお,児童虐待を行った家族全体のうち生活保. 子 ど も の い る 世 帯 で 65.7%, そ し て 母 子 世 帯 で. ), 護を受給していた家族は 15.3%であり(図 2. 85.6%と最も高くなっている。こうして主観的に. 同年に東京都全世帯のうち生活保護を受給してい. または客観的に示された生活状況を,先のタウン. た世帯を推計すると 2.37%であるから,極めて高. ゼントの貧困の定義から理解すれば,今日の日本. い水準で、あることがわかる 5 )。児童虐待の要因は. 社会で,母子家庭は他の子育て家庭全般と比べて , 、 貧困状態にあることは明らかであるといえる。 ー 、. 単一ではないにしても,統計的には経済的困難が. うして表わされる母子家庭の貧困は,母親の持つ. 済的困難が,母子家庭の子育ての資源や力の不足. 子育て資源や力の相対的な不足を意味しているの. を招き,虐待へと追い詰めていくものと理解する. である。今日の日本の子育てをめぐる状況が,「子. ことカすできる。. 強く存在していることは確かである。こうした経. 育ては,私的営みであると同時に社会的に営みで. ロ2001年 調 杏. あるが,日本社会において,子育ての社会的営み という感覚の姿はほとんど失われ,子育ては私的. 図2 005年 調 杏. 2 3 . 8;. ひとり親家庭. 営みに強く傾いている」と指摘できるように(中 村2 0 1 2:3 4 ),家族や親に子育てを依存している ため,母親の持つ子育て資源や力の不足は,その. 2 7 . 5 3 0 . 8. 経済的困難. 1 6 . 7. 親族,近隣等か らの孤守一. 2 3 . 6. 子育てに失調が起こる可能性を高めると考えるこ. 2 0 . 1 20. 4. 夫婦問ノド和. とができる。そのことについて子ども家庭福祉問 題のなかでも要保護児童問題として括られる児童 虐待と非行から確認してみることにしたい。. ( 3 ) ひとり親家庭と子ども家庭福祉の問題 図 1は,児童虐待を行った家庭の状況をみたも のである。次に表 1は,虐待を行った家庭の状況 の上位 5項目と他に合わせて見られる家庭の状況 の上位 3項目をみたものである。家族の状況とし. 31 .8. w . o. 育児被れ. ~8.0. 11 .7 1 4 . 0 :. 就労の不安定. 8 . 3 i9 . 5. 夫婦以外の家族 との葛藤. 6 ; 9 忍 . 4. 特になし. 7 . 7. 育児に嫌悪感, 拒否感情. 7 . 8. その他概. て,ひとり親家庭と経済的困難が見て取れること がわかる。ただし,ここで大切なことは,母子家. ハリ. ハリ. 庭=虐待家庭という理解ではないということであ. 不明. 1 0 . 0. 2 0 . 0. 3 0 . 0. 4 0 . 0. る。児童虐待を母子関係の問題として捉え,母子. 図 1 虐待を行った家族の状況(複数回答). 関係に介入したとして,児童虐待を減少したり予. 山所:東京都保健福祉局「児童虐待の実態 IJ (2005) よ. 防したりすることはできない。それは,経済的困. 1 6. り筆者作成。.

(8) f -ども家庭福祉の政策と実践における貧困の検討 表 1 虐待を行った家庭の状況の上位 5項目と他に. 合わせて見られる家庭の状況の上位 3項目 ( 2 0 0 5 年調査). 果から本論に関係する内容を取り上げてみると, 非行相談として受理された子どもの家族構成は, 実父母家庭 42%,ひとり親家庭 48% (母子家庭. あわせて見られる 他の状 j 見1 .位 3つ. 家庭の状況. 同年の全世帯数における母子家庭の割合が 2.7%. (1)経済的岡雑. 4 6 0 件( 31 .8 % ). 1.ひとり親家庭. 34%,父子家庭 14%) と,ひとり親家庭が多く,. ② 孤¥ f. であったこと踏まえると,母子家庭の多さが特に. ③就労の不安定. 4 4 6件 ( 3 0 . 8 % ). 2 . 経済的困難. 〈むひとり親家庭. 目立つ。また,家庭の経済状況は, 31%の家庭が. ②孤立. 困窮家庭で, 10%の家庭では生活保護を受給する. ③就労の不安定. など,多くの家庭に経済的問題がみられる。その. ① 経 済 的H ' I難. 3 4 1件 ( 2 3 . 6 % ). 3 . 孤立. 必ひとり親家庭. 他にも,養育者の変更を経験した子どもは 50%,. ③就労の不安定. 両親の離婚を経験した子どもは 38%のように,多. ①経済的困難. 4 . 夫婦問イ守口. 2 9 5件 ( 2 0.4%). 2 6 1件 ( 1 8 . 0 % ). 5 . 育児疲れ. くの子どもが家族関係の変動を経験しているこ. ③孤立 ③育児疲れ. と,子どもの心理的・精神的傾向として何らかの. ①経済的凶難. 精神的問題を有している子どもは 83%であるこ. ②ひとり親家庭. と,被虐待経験があった子どもは全対象児の 30%. ③孤立 出所:東京都保健福祉局「児童虐待の実態 1J. ( 2 0 0 5 ) より筆. であること,. DV家庭で、育った子どもは全対象. 児の 10%であることなど,さまざまな困難がひと. 主作成。. つの家庭に纏わり付いて複合的な困難を抱えてい る様子が浮かびあがってくる。また,非行と児童. 2 0 0 5年調斉. 虐待の関連は従来から指摘されているが(犬塚. 2 0 0 6,松田 2 0 0 6 ),以上で示された内容でも両者 の家族状況や背景は類似している点が多く,そこ. 2 0 0 1年 調 査. には共通する何かがあると理解するべきである。. 0%. 20%. 図受給している. 40%. 60%. 図受給していない. 8 0 %. 1 0 0 %. 子育ては,一般には親によってなされる仕事で あるが,子育てには多大な労力と長い時聞がかか. 口小明等. 図 2 虐待を行った家庭の状況(生活保護の受給状況). るため,そして何より社会自らの存続にかかわる. ( 2 0 0 5 ). 営みのため,子育ては,私的営みであると同時に. 出 所 : 東 京 都 保 健 福 祉 局 「 児 草 虐 符 の 実 態 IJ. 社会的営みを本質としている。そのような意味で. より筆者作成。. は,母子家庭などの相対的に生活基盤や経済基盤 次に,「児童相談所における非行相談. 非行相. が脆弱な家庭で非行や虐待が発生するリスクが高. 0 0 6 ) を見てみ 談に関する全国調査から J (犬塚 2. くなるのは,母子家庭自体が問題なのではなく,. 0 0 4年度に全国の児童相談所にお よう。これは, 2. 日本の社会で子育てが私的営みに強く傾いている. いて非行相談として受理した子ども全員を対象と. ことに由来する問題と考えるべきである O つまり,. 1万. 子育てが親子関係に依存しているため,経済的困. し,担当児童福祉司が回答したものであり,. 1 . 5 5 5人の子どもの非行相談の概要,家族の属性・. 難や家族関係の変動などで親子関係が失調する. 状況,生育歴,地域との連携,援助内容などを明. と,他に支えがなく,その子どもの生育環境はた. らかにしたものである。児童相談所の非行相談は. だちに損なわれやすくなる。それが虐待という姿. 主に小中学生を対象としており,その実態につい. や非行という姿で出現していると考えることがで. て全国レベルの詳しい調査はほとんどないため,. きる 6)。したがって,母子家庭における虐待や非. この調査結果は大変重要である。そこで,調査結. 行の問題の基底には,母子家庭で子どもを育てる. 1 7.

(9) 中村直樹. ことを可能とする社会的支援の乏しさがあると理. 取り組みのいずれにおいても,日本社会はその前. 解することができる。同時に,母子家庭の抱える. 提に大きな揺らぎが生じているわ。したがって,. 経済的問題,家族関係の問題,疾病・障害などに. 本論で,日本の子どもの貧困の検討を通して,子. 対する社会的支援がより充実していれば,減少し. ども家庭福祉の政策と実践において,その対象と. たり予防したりすることが可能な問題であると理. 機能を説明した上でも,なお,私たちそれぞれが,. 解することできる。. また,社会全体として,どのような「子育て」理 解を前提としているのか,という課題が残されて. 4 . おわりに. いると考えられるのである。. 注. 本論は,日本の子どもの貧困についての検討を 通じて,子ども家庭福祉の政策と実践に対して, どのような対象領域と機能とを論証し確保するこ. 1)松本は, 'H本では高度経済成長期以降,貧困に対す. とができるのかを考察しようと試みたものであ. る社会的な関心は後退した。政府による貧困(低消費. る。そのため,日本の子どもの貧困に関する今日. 水準世帯)の推計は 1 9 6 5年を最後に打ち切られ,現在 もない。これは先進工業国では珍しい」と述べる(松. 的課題を検討したが,網羅的な渉猟ではないし. 0 0 8:3 3 1 )。当時,日本で一般に承認されている貧 本2. それらの理解に未熟さがあったかもしれない。そ. 困の量的測定としては,生活保護法による被保護者と. れにもかかわらず,明瞭だと考えられることは,. │司じか,あるいはこれ以下の消費水準に属する「低消. 子どもの貧困は,個人的な側面がないわけではな. 費水準世帯」の数の推計であった。なお,厚生省は『厚 生白書~. (昭和 3 2年度版)のなかで,次のように日本の. いが,経済的及び社会的な規定のもとに生み出さ. 貧岡対策について評している。「われわれにとって最も. れているということは否定できない事実であると. 問題としなければならないのは,わが国における貧岡. いう点と,子どもの生活と発達が,この貧困に起. 対策の貧閃さであり,貧岡についての問題意識の低さ. 因する困難や制約を含み持つという点である。こ. であり,さらに貧岡追放の意欲の欠乏であるといわな ければならない。米国においては,一人当り国民所得. のような社会的な規定のもとに生み出される子ど. に対する比系においてわが国の倍の高さの基準をもっ. もの生活と発達にかかわる困難や制約を,「子ど. て貧困が定義付けられ,追放されつつある。のみならず,. もの貧困」と捉えることができる。したがって,. わが国における貧困対策の明瞭な後進牲を不す事実と. 子どもの貧困の解決を通して子どもの生活と発達. しては,貧困測定の基準あるいは最低生活費が,単に 再分配政策の局面において公的扶助を通じてのみ現実. を社会的支援する役割(期待)が,子ども家庭福. 性を持つにとどまり,分配政策の面における規制力を. 祉の政策と実践に与えられるといえる。. 厚 持っていないということを挙げなければならない J (. 子ども家庭福祉の活動は,公的な制度に基づい て実施されるものから,地域活動やボランテイア 活動などにより実施されるもの,そして家庭によ. 9 5 7 )。これは,社会福祉に関する国の行政機関の 生省 1 巾心である厚生省(現・厚生労働省)の意見であるこ とが,注目に値する。. 2)こうした日本社会(日本人)の意識を,いわゆる「一. り実施されるものまであり,それぞれが,また,. 億総中流化」という弓葉が象徴的にボしている。この. 全体が,その役割を果たすことによって成立する. 言葉の登場は, 1 9 7 9年の「同民生活白書」であった。. ものである。しかし子育てが,私的営みである. 同白書では生活様式の平準化や世論調査をもとに,中 流意識の高まりについて指摘している(経済企画庁. と同時に社会的営みを本質としているにもかかわ. 1 9 7 9 )。 実 際 白 分 の 生 活 程 度 が 世 間 一 般 か ら み て ど. らず, 日本の杜会で子育ては私的営みに強く傾い. の程度のところにあるか」という人々の判断は,巾」. ている。その結果,子どもの生活と発達にかかわ る困難や制約は,一般的に私的な問題として捉え られ,私的な解決が期待される。子どもの貧困の 社会的な認識とその困難や制約に対する社会的な. 1 8. と答えた人の割合が 1 9 7 9年には 91%にのぼり,巾」意 識が大多数を占めている(総理府広報室「国民生活に )。 関する世論調査J. 3)各記事の内容について載せておく。「生活保護, 2 0 0 万人に迫る. 1 9 5 2年度以来の水準:生活保護の受給者.

(10) f -ども家庭福祉の政策と実践における貧困の検討 数が 200万人に迫った。厚生労働省が 5Hに公表した今. 同じ請求人の B さんは 2 )は高校 1年と中学 2年の男子,. 年 1月の受給者数は 199万 8975人。毎月の平均で 204万. 小学校 6年女子の 3人の子どもの母親だ。小遣いはゼ. 人を超えた 1952年度以来の水準となった J (朝日新聞夕. ロ。次男はクラブ活動後ジ、ユースも飲めない。それが. T リ 2 0 1 1 .4.5 :1 0 ), I生活保護受給者. 2 0 3 J J人. 5月. :今年 5月に生活保護を受けた人は 2 0 3)J1 5 8 7人だ、っ. つらい。『働く」と言っていた長男を説き伏せ,道立工 業高校に行かせることができた。だが. 1 3)J円の修学. 0 0 J J た。厚生労働省が 6日,公表した。 3カ月続けて 2. 旅行代に頭を痛める。長男は『行かなくてもいいよ」. 人を突破し,今年では最も多かった。厚労省によると,. と言うが,本心でないことがわかる。小学校 4, 5年. 4月より 1万 175人増えた。このまま増えると,過去最. ) は 2年前までは昼夜働 の娘の母親である Cさ ん は 7. 多だ、った 1951年度の 204 万 6646人(月平均)を超える可. いていたが,くも膜下山血で倒れ,生活保護を受けた。. 0 1 1 .9.5 :2), I生活保 能性がある J (朝日新聞夕刊 2. 習い事どころか,服も買ってやれない。「月に一度は外. 護最多,高齢化や不況が拍車:生活保護制度が始まっ. 食したり何かを買ってあげたりしたい。加算はなぜな. て約 60年。戦後の経済成長に支えられ,いったん大き. くなるので、すか」と訴える J(朝日新聞 2 0 0 9 .5. 13: 5)。. く減った受給者数が終戦後の高水準に戻った。生活保. この記事は,生活保護の母子加算が 2009年 4片に廃止. 護を取り巻く社会環境や受給者像には変化もみられる。. されたことによる母子家庭の実状を伝える内容である. 当初,受給者数は 200万人を超えたが,暮らしは豊かに. (なお,牛: i o保護の母子加算は,同年 12月に与党三党. なり,次第に減少。バフゃル経済を経て, 95年度には約 88. 合意で復活している)。母子加算の廃止の理由は,母子. 万人まで減った。ただ,これを境に増加に}転じる。高. 加算を上乗せすると,生活保護を受けていない母子家. 齢化に加え,不況も長期化。働く世代が職に就きにく. 庭の消費水準を上回るためである。そこで,母子加算. くなった。受給者数は 99年度に再び 100万人を突破。そ. を母親の就労支援に切り替えたが,この 4月に廃止対. の後も増え続け,今年 3月には 200万台に戻った J ( 朝. 象となった約 5万世帯のうち約 3万世帯は病気などで. H新聞夕刊 2 0 1l .1 1 .9: 2)。なお,厚生労働符が 2013. 就労が困難な世帯であるなととの批判が多かった。なお,. 年 2月 1 3日に公表した「被保護者調査J (平成 2 4年 1 1月. この記事に登場する 3世帯の状況は,前述のタウンゼ. 1月に生活保護を受けてい 分概数)によると, 2012年 1. ントの定義に照らせば,容易に貧困状態とみることが. た人の数は 2 1 4)J7 3 0 3人で過去最高を更新している。. できる(日本社会が子ども・子育て家庭に保障する健. 4) 母子世帯の「ワーキング・フ。ア」状態や母子世帯に. 育つ子どもの状況については阿部の著作をみるとはっ 0 0 8 )。そこでは,子どもの貧岡に対し きりする(阿部 2. て,従来の「母子世帯対策」とは違った. I子ども対策」. の必要性が論じられている(阿部 2008:140-143)。. 康で丈化的な最低限度の生活の程度の一端の姿であ る ) 。. 6)この点に関しては,児童虐待について滝川が. I現代. の子育ての一般水準はとても高いけれども,その高さ は親子の私的な「関係の I5~ 識」にほぼ全両的に依存し. 5)次の新聞記事は,生活保護を受けている母子家庭の. ている。そのため,いったんその関係が失調するとほ. 実状を伝えるものである。「北海道小樽市に住む Aさん. t f :活条件は かに支えがなく,その子どもの養育条件 .. は0 ) は 3年前に夫と離婚牛活保護を受けている。. 一気に劣化して,一般水準との聞に板端な落差が聞く. この 4月,母子加算分がそっくり削られた。小学牛ーに. ようになった。これが現代の「虐待問題」の本質である」. なったばかりの一人娘の言葉に,冷水を浴びせられた. と論じていることと(滝川 2008:8 5 ),某本的には一致. 思いがした。「ママ,私高校行けないんでしょ。勉強し. する。なお,滝川は,その失調の要因として「養育者. たいのにね」周りの子どもは机を新調したのに,リサ. のゆとりが奪われた状況」を見いだし,なかでも「経. イクルショップで小さい机を買わなければならなかっ. 済困難」を最大の要因として考えている(滝川 2008:. た 。 A さんは高血圧や高脂血症,ぜんそくに加え,白. 8 5 )。. 律神経失調症,うつ病を抱える。医療費は生活保護で 賄えるが,牛一活費は切りつめている。おふろは浴槽に. 7)日本の子どもの貧困についての認識と取り組みの今 日的課題は. Iわが国における貧困対策の貧困さであり,. 湯を半分にして週に 2度,食事はいつも夜だけ。髪は. 貧困についての問題意識の低さであり,さらに貧困追. 2年に 1回千円のところに切りに行く。そんな暮らし. 放の意欲の欠乏であるといわなければならない」と『厚. に,母子加算削減が追い打ちをかけた。小樽市の母子. 牛一白書~. 加算は 06年度まで 2万 1 6 4 0 l ' jだった。だが,小泉政権. その後,成熟していない(新たな展開が見られなかった). (昭和 32年度版)が示した貧困対策の状況が,. の社会保障費抑制策として段階的な削減が始まり,こ. ということなのだろうか。そうだとしたら,子育てと. の 4月にゼロになった。憲法 25条で定める生存権に違. いう営みの理解について反省すべき点があるかもしれ. 反するとして,広島地裁や札幌地裁など全同で廃止取. ない。その点について,私はかつて次のように書いて. り消し訴訟が起きた。小樽市では北海道知事あての不. いる。「子育ては,私的責任としてのみ営まれるのでは. 服審査請求が出された。. Aさんは請求人に名を連ねた。. なく,社会的責任によって,その営みが U J能となるの. 1 9.

(11) 中村直樹. である。家庭から社会全体までが責任を果たさなけれ ば,子育ては成立しないのである。け本社会から社会. 東京都保健福祉局 ( 2 0 0 5 ). ~児草虐符の実態 H. 輝かせよ. う子どもの本来,育てよう地域のネットワーク. 』. 的営みという子育ての感覚を失うことは,日本の社会. Townsend.P e t e r .1 9 7 4 .P o v e r t ya sR e l a t i v eDe ρr i v a t i o n :. で,誰が子育て機能を担うべきか,その機能の正しい. R e s o u r c e sandS t y l e s0 1Living.CambridgeUniversity. 分配とか正しい負担を考える前提を失ったことを意味. ニ1 9 7 7,高山武志訳「相対的収奪としての貧困」 P r e s s(. する。つまり,社会的営みという感覚が子育てから失 われたことによって,日本社会が,子育て機能を家庭. 9 5 4 )。 『イギリスにおける貧困の論理」光生館, 1 1 9 8 4 ) 古田久一 (. ~日本貧困史」川島吾底。. の責任から社会全体の責任として誰が何処まで担うの か,その理解が岡難なのである。もちろん,日本社会 において,社会的営みという感覚が子育てからすべて 失われたわけではないが,そうであっても子育て機能 と責任の分担の理解の速度は,子ども・子育ての今目 的課題の展開の速度に追いつくことはできない。この 附者の速度の均衡を左右するのが,社会的常みという 4 )。 子育ての本質である J (中村 2012:3. 文献 阿部彩 ( 2 0 0 8 ) ~子どもの貧困. H本の不公平を考える」. 岩波書宿。 2 0 0 2 ) I社会保障と最低生活の保障」森健一・ 阿部裕二 (. 阿部裕二『構造的転換期の社会保障」巾央法規出版。 2 0 0 6 ) I児童相談所における非行相談 犬塚峰子 (. 談に関する全国調査から J ~現代のエスプリ. 非行相 非行臨床. の課題』至丈堂, 117-1290 19 7 9 ) ~国民生活白書~ (昭和 5 4年度版)。 経済企画庁 ( 厚生省(19 5 7 ) ~厚生白書~ (昭和 3 2年度版)。. L i s t e r, R u t h .2 0 0 4 .POVERTY.P o l i t yP r e s s (=2011, 松本伊智朗監訳『貧岡とは何か. 概念・言説・ポリテイ. クス」明石書病)。 松本伊智朗 ( 2 0 0 8 ) I貧困と子ども虐待 J. ~子どもの虐待. とネグレクト」第 1 0巻題 3号 , 329-3340 2 0 0 6 )I虐待と非行 松田美智子 (. 代のエスプリ. 少年院在院者の場合」了現. 非行臨床の課題」烹文堂, 84-940. 2 0 1 2 ) I児童福祉の今 H的課題と子育ての責任」 中村甫樹 ( 「北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)~第 63. 号第 1号 , 25-370. OECD.2009,S o c i e t ya taG l a n c e2009:OECDSOCIAL. INDICATORS ,OECD. .POVERTYANDFAMINES:An S e n .AmartyaK .1981. Essayo nE n t i t l e m e n tandD e p r i v a t i o n,OxfordUn i 1 奇幸治訳『貧困と v e r s i t yP r e s s (=2000,黒崎卓.1 1 1 1 飢僅」岩波書庖)。 2 0 0 8 ) I子育てと児童虐待 J ~そだちの科学~ 1 0 滝川一贋 (. 号 , H本評論社, 80-860 出宵遊子・四方理人 ( 2 0 0 7 ) I母子世帯の仕事と育児. i 舌時間の│玉│際比較から 号冬2007219-231. 2 0. 生. J ~季刊社会保障」第 43巻第 3. (函館校講師).

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