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Academic year: 2021

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120 〔ウイルス 第 61 巻 第 1 号, きています.C 型肝炎ウイルスの感染環は,侵入,脱殻, 翻訳,ウイルス蛋白質成熟(切断),ウイルスゲノム複製, 集合,出芽,放出に分けられ,それに付随した過程で病原 性が発現されます.私たちはこれら感染過程および病原性 発現で関連する宿主蛋白質に焦点を当てて研究を進めてい ます.  C 型肝炎ウイルス粒子の構成蛋白質であるコア蛋白質の 成熟にはシグナルペプチドペプチダーゼと言われる膜内プ ロテアーゼによる切断 が必要です.この過程は感染ウイ ルス粒子形成に不可欠であり,コア蛋白質の細胞内局在を 規定しています.また, コア蛋白質を発現するマウスは肝 細胞癌,肝脂肪化,インスリン抵抗性を示します. これ まで,私たちは,ユビキチン化依存・非依存プロテアソー ム分解経路によるコア蛋白質の分解が,ウイルス産生およ び病原性発現に関与していることを明らかにしました.ユ ビキチン非依存プロテアソーム分解系のウイルス粒子形成 および病原性発現における意義を明らかにする目的で,そ の生理的な機能とウイルスコア蛋白質による病原性発現と の関連についてモデル動物および培養細胞系を用いて,宿 主蛋白質の翻訳後修飾などを解析しています.  C 型肝炎ウイルスは,複数の受容体・補助受容体を介し て細胞内に侵入し,宿主細胞内に形成される特異な膜構造 物内でウイルスゲノムは複製します.必要な宿主およびウ イルス蛋白質などがその内腔に濃縮されて おり,例えば, 分子シャペロン及びコシャペロン蛋白質がこの内腔に集合 し,ウイルス複製の効率化を図っています.それらシャペ ロンやコシャペロンのウイルス複製における機能解析を, 培養細胞で解析するとともに,山梨大工学部と阪大微生物 病研究所との共同研究でそれらウイルス蛋白質とホスト蛋 白質との構造解析を行っています.また,医薬基盤研と阪 大微生物病研究所との共同研究でバイオインフォマティク ス解析によって,新規宿主因子の探索・同定も行っていま す.

山梨大学大学院医学工学総合研究部医学学域微生

物分野

森石恆司

〒 409-3898 山梨県中央市下河東 1110

TEL 055-273-9537 FAX:055-273-6728

E-mail: [email protected]

Home page: http://www.med.yamanashi.ac.jp/

clinical_basic/microbio/

はじめに  昨年 8 月,大阪大学微生物病研究所分子ウイルス分野(松 浦善治研)から山梨大学大学院医学工学総合研究部医学学 域微生物分野(手短かに言うと医学部微生物学です)の教 授として赴任しました.感染研から微生物病研究所へ 2000 年 8 月 1 日に赴任したので,きっちり十年間,阪大 にいたことになります.山梨大学医学部は,昭和 55 年に 山梨医科大学として開学し,平成 14 年の旧山梨大学との 統合により山梨大学医学部となり,翌年大学院医学工学総 合研究部が設置され,国立大学法人化を経て現在に至って おります.退官された前教授の伊藤正彦教授の後を引き継 ぐ形で赴任したわけですが,ご好意により実験機材を残し て頂き,昨年の研究室移動の際,セットアップにそれほど 時間とお金が節約できたことを,非常に感謝しております. 山梨大学医学部では,ほぼ必要な大型機器は共通機器とし てそろっており,研究環境に全く問題ありません.周りの 生活環境もよく,近くにショッピングセンター(なんと映 画館もある)がいくつかあることから生活に必要なものは すべてそろいますし,集中して仕事を励む事が出来ます.  現在,准教授1名,助教2名,大学院生2名,秘書1名 がおり,私を入れて現在7名で,教室運営しております. 研究は,C 型肝炎ウイルスを中心に展開し,「ウイルスと癌」 をテーマに基礎的な研究および抗ウイルス剤開発を手がけ て行きたいと考えています. 研究内容 1. C 型肝炎ウイルスの病原性発現および感染機構に関する 研究  主に血液あるいは血液製剤を介して C 型肝炎ウイルス は感染し,感染者は肝炎を発症します.ウイルス排除が出 来なければ,10 ∼ 30 年の長期に渡って持続感染し,脂肪 肝や肝硬変を経て高率に肝細胞癌に至ります.C 型肝炎ウ イルス感染者は,全世界で約 2 億人,日本では 200 万人と 推定されており,特異的な抗ウイルス剤とイ ンターフェ ロン療法を併用しても,五 - 六割の著効率でしかなく,そ の副作用や耐性ウイルス出現が問題となっています.近年, 様々なウイルス - 培養細胞系が 開発され,多くの宿主因 子が C 型肝炎ウイルス感染に必要であることが分かって

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121 pp.117-126,2011〕 薬開発では早稲田大学,琉球大,産総研,東大,星薬科大 でチームを組んで,研究を進めています. 3. p63 の分子機構に関する研究  p63(TP63, p51) は が ん 抑 制 遺 伝 子 p53 フ ァ ミ リ ー (p53,p63,p73) を形成する 1 遺伝子です.p53 は,全てのが ん症例の 50% 以上で変異しているか, あるいは二次的な 不活化を受けている重要な遺伝子です.p63 が発見された 時,p53 と同じように細胞の腫瘍化を抑制する作用を示す だろうと多くの研究者 は予想しましたが,p63 は皮膚や顔 面,四肢の発生・形態形成に大変重要で,口腔がんや皮膚 がんで強く発現していることがわかってきました.准教授 の加藤伊陽子先生を中心に, p63 が p53 とは異なる標的遺 伝子を活性化することを明らかにしてきました.現在, p63 遺伝子自体がどのように誘導され,産生される p63 タ ンパク質 が細胞のがん化の過程でどのような機能を果た してしているのかを准教授の加藤伊陽子先生を中心に研究 しています.  以上,C 型肝炎ウイルスを中心に研究を進めて行く予定 です.山梨にはワイン,果物や B 級グルメ鳥もつ煮など おいしいものも沢山あり,美しい自然の中で山登りもでき ます.残念ながら,位置が悪く折角の富士山が大学から見 え難いですが,八ヶ岳や南アルプスなど美しい山々も見ら れますし,生活も仕事も環境も非常に良いところだと思い ます.大学院生を募集してますので,興味がある方は連絡 を待っています.  ウイルスは限られた自身の蛋白質および核酸だけではウ イルス粒子を複製することは出来ません.従って,感染し た宿主細胞内のモノを利用(ハイジャック)し て,ウイ ルス自身を増やしていかなくてはなりません.その分子機 構が分かれば,ウイルス感染および感染による病原性発現 に対処する方法が見つかるはずです.まだまだ,分からな い事が多い C 型肝炎ウイルスの生活環および病原性発現 機構をより詳細に解析し,宿主因子との関わりを明確にし ていくことが我々の研究課題です. 2. 抗 C 型肝炎ウイルス治療薬の探索および開発  1999 年に C 型肝炎ウイルスゲノム複製を再現出来るレ プリコン細胞系が開発され,更には,ウイルス感染系を再 現できる JFH1 株を用いた培養細胞系も樹立されたことか ら,インターフェロン療法以外の C 型肝炎に対する治療 薬開発は,大躍進しました.私たちは,上記のような培養 細胞におけるウイルス増殖システムを取り入 れ,様々な 既存の化合物や天然素材抽出物の中から,新たな抗 C 型 肝炎ウイルス治療薬の候補となるような物質を探索してお ります.また,同定した宿主蛋白質を標的にしたスクリー ニング系を開発し,化合物スクリーニングを行っています. 更に,そのスクリーニング の効率を飛躍的に向上させる ため,理化学研究所・ゲノム科学総合研究センター・タン パク質基盤研究グループと共同で,ウイルスタンパク立体 構造情報を基に,コンピューター上で治療薬の候補化合物 となるような物質を検索するシステム(In silico スク リーニングシステム)も併用して,研究を行っております. また,天然物素材抽出物からの抗 C 型肝炎ウイルス治療

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