超空間を求めて : ウスペンスキーの奇妙な旅
著者
向山 毅
雑誌名
研究論集
巻
88
ページ
135-152
発行年
2008-09
URL
http://doi.org/10.18956/00006199
超 空 間 を求 め て
ウ ス ペ ン ス キ ー の 奇 妙 な 旅向 山
毅
要 旨 ウス ペ ン スキ ーは 主 と して グ ル ジ ェ フの 弟 子 で あ り、 そ の 思 想 の解 説 者 ・伝 道 者 と して取 り扱 わ れ て きた 。 これ ま で の ウス ペ ンス キ ー に 関 す る著 書 で は 、 ほ とん どが 彼 と グル ジ ェ フ との交 流 と別 離 に 重 点 が 置 か れ て い る。 しか し彼 は グル ジ ェ フ と出 会 う以 前 か ら、 高 次 元 空 間 を認 識 す る こ と に よ り人 間 の 意 識 を 拡 大 し よ うとす る、 「超 空 間 哲 学 者 」 と して 優 れ た 著 作 を 残 して い る 。 この 論 文 で は 、 最 初 の超 空 間哲 学 者 で あ った ヒ ン トンの 後 継 者 と して の ウ ス ペ ンス キ ー に注 目 し、 彼 の 「超 空 間 哲 学 」 特 に そ の 独 自の 時 間論 ・空 間 論 に つ い て 述 べ る。 キ ー ワ ー ド=超 空 間 哲 学 、 四 次 元 、 空 間 、 時 間 1 は じめ に 19世 紀 の 後 半 か ら20世 紀 の 初 頭 に か け て 四 次 元 空 間 は 知 的 興 味 の 対 象 で あ り、 一 種 の ブ ー ム と 言 っ て も よ い 状 態 で あ っ た 。 そ れ ま で ア リ ス トテ レ ス 以 来 、 私 た ち の 生 活 して い る 空 間 は 平 ら な 三 次 元 空 間 で あ る と 考 え れ ら れ て お り、 四 次 元 や そ れ よ り も 高 次 元 の 空 間 に つ い て は 言 及 す る も の も い た が 、 真 面 目に 取 り上 げ ら れ る こ と は な か っ た 。 こ う した 状 況 が 変 化 した の は19 世 紀 に な っ て か ら の こ と で あ る 。1820年 代 か ら ロバ チ ェ フ ス キ ー 、 ボ ヤ イ 、 リ ー マ ン た ち に よ る 曲 が っ た 空 間 で の 幾 何 学 す な わ ち 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学1)の 発 展 と ほ ぼ 同 時 期 に 、 メ ー ヴ ィ ウ ス は 四 次 元 空 間 内 に お け る 三 次 元 物 体 に つ い て 考 察 して い る 。 1840年 代 に な る と 四 次 元 、 あ る い は も っ と一 般 化 さ れ た 形 で あ る π 次 元 空 間 に お け る幾 何 学 の 研 究 が 盛 ん に な っ た 。 こ う した 風 潮 を 受 け て19世 紀 の 後 半 に は 、 未 知 の 現 象 を 四 次 元 空 間 を 考 え る こ と に よ っ て 説 明 し よ う と す る 人 た ち が 現 れ た 。 四 次 元 思 想 の 歴 史 に つ い て は マ ニ ン グ のr四 次 元 幾 何 学 』[1]、 リ ン ダ ・ヘ ン ダ ー ソ ン の 「現 代 芸 術 に お け る 四 次 元 と非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 』[2]あ る い は 著 者 の 論 文[3]に 詳 し く述 べ ら れ て い る 。 ま た 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 と%次 元 空 間 に つ い て の1911年 ま で に 出 版 さ れ た 論 文 の リ ス トが 集 め ら れ て い る[4]2)。19世 紀 と い うの は 、 物 理 学 を 中 心 と した 自 然 科 学 の 急 速 な 発 展 に よ り、 天 体 や 物 体 の 運 動 、 電 気 、 磁 気 、 熱 、 光 な ど 私 た ち の 五 感 で 経 験 で き る 巨 視 的 世 界 に 対 して 、 い わ ゆ る 古 典 的 世 界 観 が 確 立 した 時 期 に あ た っ て い る 。 人 々 は ニ ュ ー トン の 力 学 と マ ッ ク ス ウ ェ ル の 電 磁 気 学 に よ っ て 、 私 た ち の 住 む 世 界 が 完 全 に 理 解 で き た も の と 信 じた 。 こ の 古 典 的 世 界 像 の 基 礎 と な っ て い た の が カ ン トの 哲 学 で あ っ た 。 イ マ ニ ュ エ ル ・カ ン ト(lmmanuel Kant)に よ れ ぽ 空 間 お よ び 時 間 は 実 在 で は な く、 我 々 に ア ・プ リ オ リに 与 え ら れ て い る 先 験 的 観 念 で あ り、 人 間 の 認 識 の 仕 方 に 関 連 し て い る[5]。 彼 は 高 次 元 空 間 の 存 在 の 可 能 性 も 検 討 し た が 、 重 力 が 距 離 の 二 乗 に 逆 比 例 して い る こ と か ら 空 間 は 三 次 元 で あ る と 結 論 して い る 。 一 方 、 心 霊 主 義 者 は 超 自 然 現 象 の 存 在 を 四 次 元 空 間 に よ っ て 説 明 し よ う と し て い た[6]。 そ ん な と き に 起 こ っ た の が1877年 ロ ン ドン で の ス レ ー ド裁 判 で 、 こ れ に よ っ て 四 次 元 は 脚 光 を 浴 び る こ と と な っ た 。 ヘ ン リ ー ・ス レ ー ド(Henry Slade)は 心 霊 ブ ー ム に あ や か っ て 米 国 か ら や っ て き た 霊 媒 の 一 人 で あ る 。 彼 は 呼 び 出 した 霊 が 自 動 的 に 石 版 に メ ッセ ー ジ を 書 く と い う心 霊 筆 記 を 得 意 と して い た 。 ス レ ー ドの 出 席 す る 交 霊 会 は 大 評 判 で 盛 況 を 極 め た が 、 あ る 出 席 者 に ト リ ッ ク を 見 破 ら れ て 詐 欺 罪 で 告 発 さ れ た の で あ る 。 彼 の 裁 判 に は 物 理 学 者 の ク ル ッ ク ス 卿 (Sir William Crookes)を 含 む 多 くの 著 名 人 が 弁 護 に 立 ち 上 が り、 心 霊 現 象 と 四 次 元 の 関 係 を 主 張 した 。 そ の う ち の 一 人 が ラ イ プ チ ッ ヒ 大 学 の 天 文 ・物 理 学 教 授 で あ っ た ヨ ハ ン ・カ ー ル ・ フ リ ー ド リ ッ ヒ ・ツ ェ ル ナ ー(Johann Karl Friedrich Z611ner)で あ った[7]。 ツ ェ ル ナ ー は ス
レ ー ドを ラ イ プ チ ッ ヒに 呼 び 、 彼 と 大 学 の 同 僚 の 前 で ロ ー プ を 用 い た 実 験 を 行 わ せ た 。 そ の 結 果 は 四 次 元 空 間 の 存 在 を 証 明 す る も の で あ る と 、r超 越 的 物 理 学 』[8]と い う著 書 で 述 べ て い る 。 こ の 事 件 に よ り四 次 元 空 間 は 多 くの 人 た ち の 注 目 を 集 め る よ うに な っ た 。 そ の う ち に 四 次 元 を テ ー マ と した 文 芸 作 品 が 現 れ る よ うに な っ た 。 シ ェ イ ク ス ピ ア 学 者 で あ り、 学 校 長 そ し て 牧 師 で も あ っ た ア ボ ッ ト(E.A. Abott)は1884年 、 二 次 元 の 世 界 で の 物 語 『平 面 国 』 を 発 表 した[9]。 厚 さ の な い 平 面 上 で 暮 ら し て い る 主 人 公 ス ク ェ ア(正 方 形)氏 は 三 次 元 空 間 か ら の 使 者 ス フ ェ ア(球)氏 の 訪 問 を 受 け 、 高 次 元 の 世 界 を 体 験 す る 。 こ の 小 説 で は ヴ ィ ク ト リ ア 朝 の 英 国 社 会 へ の 風 刺 と と も に 、 高 次 元 空 間 に 対 す る 興 味 と そ れ を 訪 問 す る こ と に よ る 神 秘 体 験 が 述 べ ら れ て い る 。 こ の 本 は 大 成 功 を お さ め 、 二 次 元 世 界 を 描 く こ と で 高 次 元 空 間 を 表 現 す る 手 法 は こ れ 以 降 多 くの 作 者 に よ っ て 用 い ら れ る こ と と な っ た 。 四 次 元 の も う一 つ の 表 現 は 、 時 間 を 第 四 番 目 の 次 元 と 考 え 、 空 間 の 三 次 元 と 合 わ せ て 四 次 元 空 間 と す る こ と で あ る 。 こ れ は 厳 密 な 意 味 で の 四 次 元 空 間 で は な い の で 、 四 次 元 時 空 と も 呼 ぼ れ て い る 。 四 次 元 時 空 で は 私 た ち が 空 間 軸 を 自 由 に 行 き 来 す る の と 同 じ よ うに 、 時 間 軸 に 沿 っ て も 自 由 に 移 動 で き る も の と す れ ば タ イ ム トラ ベ ル が 可 能 に な る 。 こ う した 考 え は 既 に18世 紀 か ら あ っ た が 、 ウ ェ ル ズ(H.G. Wells)は1895年 にrタ イ ム マ シ ン』 と い う タ イ トル の 時 間
旅 行 に 関 す る 小 説 に 適 用 した[10]。 そ の 後 タ イ ム トラ ベ ル や タ イ ム マ シ ン はSF文 学 や 映 画 で 一 つ の 大 き な 分 野 と な り、 多 くの 作 品 が 作 ら れ た[11]。 こ の よ うに して 四 次 元 へ の 関 心 が 盛 ん に な る に つ れ て 、 四 次 元 空 間 を 実 在 す る の も の と 考 え て 、 そ れ を 認 識 す る こ と に よ り私 た ち の 知 覚 の 限 界 を 超 え よ う と 考 え る 人 た ち が 現 れ た 。 彼 ら は 空 間 が 先 験 的 観 念 で あ る と い う カ ン トの 哲 学 を 逆 手 に と っ て 、 空 間 の 四 次 元 性 を 認 識 す る こ と に よ っ て 「高 次 の 意 識 」 を 進 化 さ せ よ う と した の で あ る 。 リ ン ダ ・ヘ ン ダ ー ソ ン は こ う した 考 え 方 を 「超 空 間 哲 学 」 と 呼 ん で い る3)。 最 初 の 「超 空 間 哲 学 者 」 と 考 え ら れ る の は チ ャ ー ル ズ ・ハ ワ ー ド ・ ヒ ン ト ン(Charles Howard Hinton)で あ る。 数 学 者 で あ っ た ヒ ン トン は 『思 考 の 新 紀 元 』[12]と 『四 次 元 』[13]と い う著 書 を 通 じて 「超 空 間 哲 学 」 を 展 開 す る と と も に 、 四 次 元 を 視 覚 化 す る こ と に 努 め た 。 ヒ ン トン に 大 き く影 響 を 受 け た の が 米 国 の ク ロ ー ド ・ブ ラ グ ドン(Claude Bragdon)と ロ シ ア の ウ ス ペ ン ス キ ー(P. D. Ouspensky)で あ る 。 ブ ラ グ ド ン は 「高 次 元 空 間 入 門 』[14]と 『四 次 元 の 展 望 』[15]で 四 次 元 空 間 を 意 識 の 進 化 と 考 え た 。 前 者 で は 四 次 元 空 間 の 概 念 を 多 くの 図 面 を 用 い て 示 して い る 。一 方 、 ウ ス ペ ン ス キ ー は 『四 次 元 』 [16]、rタ ー シ ャ ム ・オ ル ガ ヌ ム 』[17]、 r新 しい 宇 宙 像 』[18]4)で 独 自 の 時 間 論 と空 間 論 を 展 開 した 。r四 次 元 』 は 後 にr新 しい 宇 宙 像 』 に 一 つ の 章 と し て 含 ま れ て い る 。 ま たrタ ー シ ャ ム ・オ ル ガ ヌ ム 』 は ブ ラ グ ドン に よ っ て 英 訳 さ れ た 。 ヘ ン ダ ー ソ ン は 「超 空 間 哲 学 者 」 と して こ の 三 人 の 名 前 しか 挙 げ て い な い が 、 ル ドル フ ・シ ュ タ イ ナ ー(Rudolf Steiner)も ヒ ン トン の 影 響 を 受 け た 一 人 で 、 神 智 学 の 立 場 よ り四 次 元 空 間 に つ い て 講 義 を して お り、 そ の 講 義 録 が 「四 次 元 』 と い う タ イ トル で 出 版 さ れ て い る[19]。 こ れ ら の 「超 空 間 哲 学 者 」 の う ち 、 ヒ ン トン に つ い て は 多 くの 四 次 元 に 関 す る 書 物 や 論 文 で 紹 介 さ れ て い る し(例 え ば[2]、[20])、 シ ュ タ イ ナ ー[3]と プ ラ グ ド ン[21]に つ い て は 既 に 論 文 で 述 べ た 。 一 方 、 ウ ス ペ ン ス キ ー は オ カ ル ト哲 学 の 分 野 で は 有 名 人 で あ り、 彼 に つ い て 書 か れ た 本 も 多 く、 ま た そ の 著 書 の 多 くが 日本 語 に 翻 訳 さ れ て い る 。 しか し彼 が 一 般 に 知 ら れ て い る の は 、コ ー カ サ ス 出 身 の オ カ ル ト思 想 家 ゲ オ ル ギ ー ・イ ヴ ァ ノ ヴ ィ ッ チ ・グ ル ジ ェ フ(Georges Ivanovitch Gurdj ieff)の 弟 子 、 そ の 哲 学 の 解 説 者 ・伝 道 師 と して で あ る 。 例 え ぽ コ リ ン ・ウ ィ ル ソ ン(Collin Wilson)は そ の 著 書rオ カ ル ト』[22]で ウ ス ペ ン ス キ ー を 独 立 に は 取 り扱 わ ず 、 「二 人 の ロ シ ヤ 人 魔 術 者 」(ラ ス プ ー チ ン と グ ル ジ ェ フ)で グ ル ジ ェ フ の 章 の 中 に 含 め て い る5乙 彼 の 伝 記 も そ の 「超 空 間 哲 学 」 よ り も 、 グ ル ジ ェ フ と の 関 係 に 重 点 が 置 か れ て い る[23-26]。 「超 空 間 哲 学 者 」 と して の ウ ス ペ ン ス キ ー に つ い て 詳 し く述 べ て い る の は ヘ ン ダ ー ソ ン の み で あ る6)。 しか し彼 女 はrタ ー シ ャ ム ・オ ル ガ ヌ ム 』 以 後 の ウ ス ペ ン ス キ ー の 時 間 ・空 間 論 の 発 展 に つ い て は 取 り上 げ て い な い 。 こ の 論 文 で は ウ ス ペ ン ス キ ー の 超 空 間 哲 学 に つ い て 考 え て み る 。
2 ウ ス ペ ン ス キ ー の 生 涯
ウ ス ペ ン ス キ ー の 生 涯 、 特 に そ の 青 年 時 代 に 関 して は 不 明 な 部 分 が 多 い 。 若 い 頃 に は 彼 は 頻 繁 に 旅 行 して い た し、 ま た グ ル ジ ェ フ に 出 会 う以 前 の 自 分 の 過 去 に つ い て は あ ま り詳 し く語 る こ と は な か っ た 。 著 書rさ ら な る 記 憶 』[27]の 中 に1935年 に 書 か れ た 「自 伝 的 断 片 」 と い う 文 章7)が あ る 。 こ れ と伝 記[24]を 参 考 に 彼 の 生 涯 を 追 っ て み よ う。
ピ ョ ー トル ・デ ミア ノ ヴ ィ ッ チ ・ウ ス ペ ン ス キ ー(Pyotr Demianovich Uspenskii, Peter Demianovich Ouspensky)は1878年3月5日 に モ ス ク ワで 生 ま れ た 。 母 方 の 祖 父 は 肖 像 画 家 で あ り、 後 に 教 会 の 画 家 と な っ た 。 こ れ は 当 時 の ロ シ ア で は 高 い 地 位 に あ っ た こ と を 意 味 して い る 。 父 は 測 量 局 に 勤 務 して い た 役 人 で 、 絵 画 と 音 楽 を 好 ん で い た と い う。 彼 は ま た 数 学 者 で も あ り、 特 に 四 次 元 の 問 題 に 興 味 を 抱 き 、 そ の 研 究 に 多 くの 時 間 を 費 や して い た 。 母 も 才 能 あ る 芸 術 家 で 、 絵 を 描 き 、 文 学 に も 興 味 を 示 して い た 。 こ の よ うな 環 境 で 育 っ た ウ ス ペ ン ス キ ー が 、 文 学 、 絵 画 、 自 然 科 学 に 興 味 を 持 つ よ うに な っ た の は 当 然 で あ ろ う。 彼 に と っ て は 学 校 は 決 ま り き っ た こ と を 強 制 す る 所 で あ り、 退 屈 な 場 所 で しか な か っ た 。 そ の た め18歳 で ギ ム ナ ジ ウ ム を 中 途 退 学 し、 新 聞 記 者 と翻 訳 家 に な っ た 。 そ の 後 モ ス ク ワ大 学 の 聴 講 生 と な る が 、 ア カ デ ミ ズ ム を 嫌 悪 して い て 、 決 して 単 位 や 学 位 を 修 得 す る こ と は な か っ た 。 学 生 時 代 に は 自 然 科 学 と 心 理 学 に 魅 せ ら れ る 。 しか しや が て 自 然 科 学 に は 失 望 す る よ うに な る 。 特 に 四 次 元 が 数 学 的 な 形 式 で しか 取 り扱 わ れ て い な い こ と に 深 く失 望 した 。 子 供 時 代 に は レ ー ル モ ン トフ や ツ ル ゲ ー ネ フ を 好 ん だ が 、20代 の 始 め に ヒ ン トン の 『思 考 の 新 紀 元 』[12]と 「四 次 元 』[13]を 読 ん で 大 き な 影 響 を 受 け た 。 こ れ ら の 本 の ロ シ ア 語 訳 が 出 た の が1915年 で あ る か ら 、 彼 は 原 語(英 語)で ヒ ン トン を 読 ん だ も の と 思 わ れ る8)。 こ の 頃 彼 が 一 番 関 心 が あ っ た の は 永 劫 回 帰 の 思 想 で あ っ た 。 時 間 が 過 去 か ら 無 限 の 未 来 に 向 か っ て 直 線 的 に 流 れ る も の で は な くて 円 軌 道 を 描 く も の と す れ ば 、 い ず れ は 出 発 点 に 戻 っ て く る 。 した が っ て 過 去 は 繰 り返 す の だ 。 こ れ は 四 次 元 空 間 に お い て 時 間 を 高 次 の パ ラ メ ー タ ー と す る 考 え 方 に 対 応 して い る と い え る 。 こ の 考 え に 基 づ い て 書 か れ た の が ウ ス ペ ン ス キ ー の 処 女 作 と な る 「イ ワ ン ・オ ソ ー キ ン の 奇 妙 な 生 涯 』[28]で あ る 。 こ の 本 は1905年 にrキ ネ マ ドラ マ (Kinemadrama)』 と い う題 名 で 映 画 の 脚 本 と して 書 か れ 、1915年 に 小 説 に 書 き 直 さ れ て 、 彼 の 死 の 直 前 で あ る1947年 に 英 語 訳 がrイ ワ ン ・オ ソ ー キ ン の 奇 妙 な 生 涯 』 と して 出 版 さ れ た 。 若 い 頃 の ウ ス ペ ン ス キ ー に つ い て は ほ と ん ど 何 も 知 ら れ て い な い 。 しか しrイ ワ ン ・オ ソ ー キ ン の 奇 妙 な 生 涯 』 は ほ ぼ 彼 の 体 験 に 基 づ い て い る よ うで 、 自 伝 で あ る と 考 え て も よ い で あ ろ う。 主 人 公 の 若 者 は 学 校 か ら 追 放 さ れ 、 情 熱 的 な 恋 を す る が 不 幸 な 結 果 に 終 わ る 。 彼 は 魔 術 師 の 助 け を 借 りて 過 去 の あ る 時 点 ま で 戻 り、 間 違 い を 訂 正 して も う一 度 人 生 を や り直 す が 、 最 後
は ま た 同 じ結 果 に な り何 も 変 わ ら な い 。 ウ ス ペ ン ス キ ー の 円 環 状 の 時 間 と い う考 え 方 か ら す れ ば 、 何 ら か の 方 法 で 抜 け 出 さ な い 限 り私 た ち の 人 生 は こ の 円 周 上 で 永 久 に 繰 り返 さ れ る の で あ る 。 こ の 小 説 に は 「四 次 元 」 と い う言 葉 は 出 て こ な い が 、 「永 劫 回 帰 」 の 思 想 は そ の 後 の 彼 の 時 間 ・空 間 論 の バ ッ ク グ ラ ウ ン ドと な っ て い る 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は モ ス ク ワの 新 聞 社 で 働 き な が ら 、 永 劫 回 帰 か ら ど う した ら 脱 却 で き る の か 模 索 して い た 。 彼 は 敏 腕 新 聞 記 者 と して 活 躍 しな が ら 、 満 た さ れ ぬ 想 い を 抱 い て い た こ ろ の 姿 を 「新 し い 宇 宙 像 』 の 序 章 で 描 い て い る9)。 こ の 文 章 は 、 ウ ィ ル ソ ン の 「オ カ ル ト』 に お い て 第 一 章 の 冒 頭 部 分 に 引 用 さ れ て い るlo)。 1908年 に ウ ス ペ ン ス キ ー は エ ジ プ トと トル コ を 旅 行 す る 。 彼 の 東 方 へ の 旅 の 始 ま りで あ る 。 彼 は 若 い 頃 か ら 、 私 た ち が 日常 暮 ら して い る 「可 視 の 世 界 」 の 他 に 「不 可 視 の 世 界 」 が あ る こ と を 信 じて い た 。 こ う した 高 次 元 の 世 界 の 存 在 を 認 識 し、 そ れ を 理 解 す る た め の 意 識 を 開 発 す る こ と を 求 め て い た 。 そ の た め に オ カ ル ト関 連 の 文 献 を 読 み 、 夢 や 薬 物 を 用 い る こ と も 試 み た 。 や が て 彼 は 世 界 の ど こ か に 、 「可 視 の 世 界 」 と 「不 可 視 の 世 界 」 と の 間 に 橋 を か け る 重 要 な 知 識 を 長 年 に わ た っ て 伝 承 し、 保 存 して い る 人 々 が 存 在 す る は ず で あ る と 考 え る よ うに な っ た 。 彼 は こ の よ うな 高 次 元 空 間 に よ る 自 分 に 根 拠 を 与 え て くれ る 「永 遠 の 叡 智 」 を 東 洋 の 宗 教 に 求 め た 。 こ う した 真 理 を 探 究 す る た め の 旅 が 始 ま っ た の だ 。 1909年 に 彼 は モ ス ク ワか ら サ ン ク ト ・ペ テ ル ブ ル グ に 移 る 。 次 の 年r四 次 元 』 が 出 版 さ れ 、 引 き 続 い て1911年 にrタ ー シ ャ ム ・オ ル ガ ヌ ム 』 が 完 成 、1912年 に 出 版 さ れ た 。 こ れ ら の 本 は い ず れ も ウ ス ペ ン ス キ ー の 超 空 間 哲 学 の 中 心 と な る も の で 、 次 の 章 で 詳 し く述 べ る 。1913年 か ら1914年 に か け て ウ ス ペ ン ス キ ー は ロ ン ドン 経 由 で セ イ ロ ン と イ ン ドを 訪 れ た 。 最 初 は ペ ル シ ア ま で 行 く予 定 で あ っ た が 、 第 一 次 世 界 大 戦 が 勃 発 した た め 計 画 を 変 更 して 急 遽 ロ シ ア に 戻 っ た 。 こ の 旅 行 で 彼 は い くつ か の 教 団(ス ク ー ル)の 存 在 を 知 っ た が 、 そ の い ず れ も が 彼 の 求 め て い た も の で は な か っ た 。 イ ン ドで は 神 智 学 協 会 の ア ニ ー ・ベ サ ン ト(Annie Besant)と 会 っ て い る 。 しか し神 智 学 も 彼 の 目的 に 応 え る も の で は な か っ た 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は イ ン ドと セ イ ロ ン へ の 旅 行 体 験 に 関 す る 公 開 講 演 を サ ン ク ト ・ペ テ ル ブ ル グ と モ ス ク ワで 開 催 し、 多 くの 聴 衆 を 魅 了 した 。 1915年 の 春 、 ウ ス ペ ン ス キ ー は モ ス ク ワで の 講 演 の 出 席 者 か ら 一 人 の ス ク ー ル の 指 導 者 の 存 在 を 教 え ら れ る 。 グ ル ジ ェ フ と の 運 命 的 な 出 会 い で あ る 。 初 め て 喫 茶 店 で 会 っ た グ ル ジ ェ フ の 印 象 は 強 烈 で あ っ た 。 彼 は ウ ス ペ ン ス キ ー が 探 し求 め て い た 問 題 に 対 す る 解 答 を 持 っ て い る よ うに 思 わ れ た 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は こ れ ま で の 知 識 概 念 を 超 え る ま っ た く新 しい 思 想 体 系 に 出 会 っ た と 感 じた と い う。 彼 は 一 週 間 グ ル ジ ェ フ と 過 ご した 後 、 ペ テ ル ブ ル グ に 帰 っ て い っ た 。 こ の と き の グ ル ジ ェ フ と の 会 話 は 『奇 跡 を 求 め て 』[29]の 第 一 章 に 記 録 さ れ て い る 。 や が て そ の 年 の 秋 に グ ル ジ ェ フ が ペ テ ル ブ ル グ を 訪 れ 、 二 人 の 交 際 は 続 い た 。
グ ル ジ ェ フ の 生 年 月 日に は い くつ か の 説 が あ る が 、1877年12月28日 に 当 時 は トル コ 領 で あ っ た ア レ クサ ン ド ロ ポ ー ル で 生 ま れ た と さ れ て い る11)。 そ うだ と し た ら ウ ス ペ ン ス キ ー よ り2ケ 月 年 長 と い う こ と に な る 。 グ ル ジ ェ フ の 思 想 を 簡 単 に 言 っ て し ま え ぽ 次 の よ うに な る 。 私 た ち 人 間 の 問 題 は 自 分 が 完 全 な 意 識 を 持 っ て お り、 自 分 自 身 を コ ン ト ロ ー ル して い る も の と 誤 解 し て い る こ と に あ る 。 実 際 に は 私 た ち は 周 囲 で 生 じて い る こ と に た だ 単 に 反 応 して い る だ け で あ る 。 しか し人 間 に は 自 己 を 知 り、 意 識 的 に 行 動 す る 能 力 が あ る 。 した が っ て 意 識 を 持 っ た 行 動 を と る こ と に よ り、 日常 の 経 験 に 意 味 を 与 え 、 自 分 自 身 を よ り高 次 の 存 在 に 変 え る こ と が で き る 。 彼 は 「ワ ー ク 」 を 通 じて こ の よ うな 意 識 開 発 を す る 「シ ス テ ム 」 を 持 っ て い た 。 グ ル ジ ェ フ が 彼 の 思 想 体 系 に つ い て 書 い た 本 は 、 読 者 に 努 力 さ せ る た め に わ ざ と 難 し く して あ る と 言 わ れ る ほ ど 難 解 で あ り、 ウ ス ペ ン ス キ ー のr奇 跡 を 求 め て 』[29]が 一 番 よ い 入 門 書 と な っ て い る 。 こ の よ うな こ と も あ っ て ウ ス ペ ン ス キ ー は 彼 自 身 の 哲 学 よ りは 、 グ ル ジ ェ フ の 思 想 の 解 説 者 と して 有 名 に な っ た 。 こ れ は ち ょ う ど キ リ ス トに 対 す る パ ウ ロの 役 割 に 相 当 す る 。 1916年 の 終 わ りに ウ ス ペ ン ス キ ー は 召 集 さ れ て 戦 場 に 送 ら れ た 。 しか し近 視 の た め に 四 ケ 月 後 に 除 隊 と な りペ テ ル ブ ル グ に 戻 る 。 こ れ は ロ シ ア 革 命 勃 発 の 二 週 間 前 で あ っ た 。 グ ル ジ ェ フ は 革 命 の 直 前 に 故 郷 の コ ー カ サ ス に 移 っ て い た 。 ウ ス ペ ン ス キ ー も しぼ ら く して コ ー カ サ ス に 向 か い 、 グ ル ジ ェ フ は こ こ に モ ス ク ワ と ペ テ ル ブ ル グ の グ ル ー プ を 呼 び 寄 せ た 。 彼 ら は 内 戦 を 避 け て 黒 海 沿 岸 な ど に 移 動 した 。 1918年 に な る と ウ ス ペ ン ス キ ー と グ ル ジ ェ フ の 間 に 亀 裂 が 生 じ る よ うに な り、 夏 に ウ ス ペ ン ス キ ー は グ ル ジ ェ フ の 許 を 去 る こ と に な る 。 そ の 原 因 に つ い て は ウ ス ペ ン ス キ ー は 決 して 詳 し くは 語 る こ と は 無 か っ た 。 二 人 の 間 に 何 が あ っ た か が 、 ウ ス ペ ン ス キ ー の(そ して グ ル ジ ェ フ の)伝 記 の 主 要 な テ ー マ で あ る[23-26]し 、 特 に こ の 問 題 に つ い て 書 か れ た 本[30]も あ る 。 我 が 国 に お い て も ウ ス ペ ン ス キ ー と グ ル ジ ェ フ の 関 係 を 取 り扱 っ た 小 説 『グ ル ジ ェ フ の 残 影 』 が 出 版 さ れ て い る[31]。 ま た ピ ー タ ー ・ ワ シ ン トン の 『神 秘 主 義 へ の 扉 』[32]に は 、 ウ ス ペ ン ス キ ー と 神 智 学 と の 交 流 お よ び グ ル ジ ェ フ と の 関 係 が 述 べ ら れ て い る 。 グ ル ジ ェ フ は い か が わ し い と こ ろ の あ る 人 物 で あ り、 時 に よ っ て 異 な っ た 言 動 を と り、 ま た わ ざ と 人 を 怒 ら せ る こ と も 多 か っ た 。 こ う した こ と も 「ワ ー ク 」 の 一 部 だ と 考 え て い た と こ ろ も あ る 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は グ ル ジ ェ フ の 思 想 に は 共 感 を 覚 え た が 、 そ の 人 物 に は つ い て 行 け な い と 感 じ る と こ ろ が あ っ た と 思 わ れ る 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は1920年 の 初 め に コ ン ス タ ン チ ノ ー プ ル に た ど り着 く。 そ こ で 彼 は 米 国 の ブ ラ グ ドン か ら の 手 紙 に よ り 『タ ー シ ャ ム ・オ ル ガ ヌ ム 』 が 英 訳 出 版 さ れ た こ と を 知 る[21]。8 月 に は グ ル ジ ェ フ が コ ン ス タ ン チ ノ ー プ ル に 到 着 し、 再 会 して 一 緒 に ワ ー ク を す る が 、 二 人 の 仲 が 元 に 戻 る こ と は な か っ た 。1921年8月 に ウ ス ペ ン ス キ ー はrタ ー シ ャ ム ・オ ル ガ ヌ ム 』 の
愛 読 者 で あ っ た あ る 貴 婦 人 の 援 助 で ロ ン ドン に 移 り、 そ こ で グ ル ー プ を 作 っ た 。 一 方 、 グ ル ジ ェ フ は フ ラ ン ス に 渡 り、 パ リ と フ ォ ン テ ー ヌ ブ ロ ー に 道 場 を 開 い た 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は そ の た め の 資 金 の 一 部 を 援 助 して い る 。 そ の 後 互 い に 交 流 は あ っ た が 、1924年1月 に 二 人 の 間 の 関 係 は 完 全 に 決 裂 した 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は ロ ン ドン で ワ ー ク を 続 け て い た が 、 第 二 次 世 界 大 戦 中 の 6年 間 は ニ ュ ー ヨ ー ク で 暮 ら した 。1947年 の 初 頭 に ロ ン ドン に 戻 り、 そ の 年 の10月 に 死 亡 して い る 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は グ ル ジ ェ フ と 出 会 っ た 後 は 新 しい 本 を 書 い て い な い 。r新 し い 宇 宙 像 』[18] は1931年 に 出 版 さ れ て い る が 、 そ の 内 容 は グ ル ジ ェ フ に 会 う前 に 既 に ほ と ん ど 完 成 して い た 。 ま た 死 後 に 出 版 さ れ たr奇 跡 を 求 め て 』[29]は 上 に 述 べ た よ うに グ ル ジ ェ フ 思 想 の 解 説 書 で あ り、 ウ ス ペ ン ス キ ー 自 身 の 独 自 の 哲 学 を 述 べ た 部 分 は 少 な い 。 ウ ス ペ ン ス キ ー は グ ル ジ ェ フ に 出 会 っ た と き 、 知 識 に よ っ て 高 次 の 意 識 を 獲 得 し よ う と す る 自 分 の 方 法 に 行 き 詰 ま りを 感 じて お り、 「ワ ー ク 」 を 中 心 と す る グ ル ジ ェ フ の 「シ ス テ ム 」 に 解 決 を 求 め た 。 グ ル ジ ェ フ個 人 に 対 して は 人 間 的 に 幻 滅 を 感 じて い て も 、 彼 の 開 発 した 「シ ス テ ム 」 を 超 え る 新 しい 方 法 を 見 出 せ ぬ ま ま 、 「ワ ー ク」 を 行 い 「シ ス テ ム 」 を 継 続 し て い っ た も の と 思 わ れ る 。 した が っ て 「超 空 間 哲 学 者 」 と して の ウ ス ペ ン ス キ ー は 、 グ ル ジ ェ フ の 影 響 を 受 け る 以 前 の 著 書 に よ っ て 考 え ね ば な ら な い 。 3 ウ スペ ン スキ ー の 超 空 間 哲 学 ウ スペ ン スキ ーの 「超 空 間 哲 学 」 に つ い て の 最 初 の 著 作 は 『四 次 元 』[16]で あ る。 これ は 後 に 「新 しい宇 宙 像 』[18]の 第 二 章 に 「四 次 元 」 と して再 録 され て い る。r四 次 元 』 の初 版 お よ び1914年 に 出版 され た 第 二 版 とr新 しい 宇 宙 像 』 で の 「四 次 元 」 との 比 較 が ヘ ン ダ ー ソ ンに よ っ て行 わ れ て い る12)。r四次 元 』 は ウス ペ ン ス キ ー が31歳 の とき の作 品 で あ り、 彼 の超 空 間 哲 学 の 出発 点 とな った 著 作 で あ るが 、 これ まで あ ま り詳 し く取 り上 げ られ る こ とは な か った 。 ヘ ン ダ ー ソンは 「基 本 的 に は19世 紀 の四 次 元 の概 念 に つ い て の報 告 書 」13)のよ うな もの で あ る と 述 べ て い るが 、 ウ スペ ン スキ ーの 四 次 元 お よび 高 次 元 空 間 に つ い て の 思 想 の 発 展 を 考 え る上 で は 非 常 に 重 要 で あ る。 そ こで ウ スペ ン スキ ーは まず 人 類 に と って 解 決 不 可 能 な 問 題 は 、 不 可 視 の 問 題 と死 の 問 題 で あ る と指 摘 す る。 世 界 は 目に 見 え る もの と見 え な い もの に 分 か れ て お り、 宗 教 、 哲 学 、 科 学 に お い て 不 可 視 な もの が 目に 見 え る現 象 の 原 因 に な って い る。 死 に 関 して も死 とい う現 象 、 来 世 の概 念 、 霊 魂 の 存 在 な どの 背 後 に は や は り不 可 視 の 世 界 が あ る。 こ う した 不 可 視 の 世 界 を 理 解 す るた め に は 通 常 の 方 法 で は 不 十 分 で あ り、 何 か 新 しい 角 度 か らの ア プ ローチ が 必 要 とな る。 ウ スペ ンスキ ーは 「四 次 元 とい う概 念 、 多 次 元 世 界 とい うアイ デ アは 我 々の 世 界 像 を 拡 大 す
るた め の方 法 で あ る」14)と考 え て 、 「四 次 元 」 とい う概 念 を 不 可 視 の世 界 と結 び 付 け よ う と し て い る。 これ は そ れ まで の 宗 教 や 哲 学 が 不 可 視 の 世 界 を 、 目に 見 え る 「三 次 元 」 の 世 界 と ま っ た く同様 に 取 り扱 って きた の に 対 して 、 新 しい 「超 空 間 哲 学 」 を 示 唆 す る もの で あ る。 彼 は 幾 何 学 に お け る四 次 元 や 多 次 元 空 間 に つ い て は どの 定 理 と も矛 盾 せ ず 、 そ の 意 味 で は 何 も問 題 は な い と して い る。 しか し私 た ちが 未 知 の 方 向 に 向 か って 飛 び 出 して知 覚 の 領 域 を 拡 大 す るた め に は 、 「四次 元 の幾 何 学 」 で は な くて 「四 次 元 の物 理 学 」 が 必 要 で あ る と考 え て い る。 ウ スペ ン スキ ーは ロバ チ ェ フ スキ ーが 四 次 元 の 幾 何 学 を 発 見 した と書 い て い るが 、 これ は 彼 が 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 と四 次 元 の 幾 何 学 を 混 同 して い る と こ ろが あ る こ と に よ る15)。確 か に 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 の よ うに 、 平 らで は な い 空 間 を 取 り扱 うに は 一 つ 多 い 次 元 の 空 間 が 必 要 で あ る。 例 え ば 曲面(二 次 元)は 三 次 元 空 間 の 中 で しか 描 け な い 。 だ が 三 次 元 の 非 ユ ー ク リ ッ ド 空 間 の 物 体 は 三 つ の 次 元(座 標)で 表 わ され るの で 、 あ くまで 三 次 元 で あ る。 しか しウ スペ ン スキ ーは 後 に 「タ ー シ ャ ム ・オル ガ ヌ ム』 で は 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 と四 次 元 の 幾 何 学 とを 正 し く区 別 して い る。 ウ スペ ン スキ ーは 物 理 学 的 な 側 面 か ら四 次 元 の 問 題 を ア プ ローチ した 人 と してC.H.ヒ ン ト ンを 高 く評 価 して い る。 彼 は ヒ ン トンが 高 次 の 意 識 を 目覚 め させ るた め に は 「自己 を 放 棄 」 す る こ とに よ って 四 次 元 を 認 識 す る、 す な わ ちあ るが ま まの 世 界 を知 覚 す る能 力 を 開 発 しよ うと して い る こ とに 注 目 した 。 しか しヒ ン トンの 方 法 は 個 人 差 を 無 視 して お り、 そ の 手 法 が 全 て の 人 に 適 用 で き るの か とい うこ とに 疑 問 を 呈 して い る。 我 々の 世 界 は 四 次 元 世 界 の 三 次 元 へ の 投 影 あ るい は 断 面 で あ る と考 え る こ と もで き る。 ウス ペ ン スキ ーはN .A.宅 ロゾフが獄 中で同僚 の服役 囚に書 いた手紙を引用す る16)。そ こでは水面 上 の よ うな 二 次 元 世 界 の 生 物 が 三 次 元 の 生 物 を どの よ うに 知 覚 す るか が 述 べ られ て お り、 これ を 私 た ちの 三 次 元 世 界 の 住 人 が 四 次 元 が 存 在 す る と した と きの 関 係 に 適 用 で き る こ とが 示 唆 さ れ て い る。 この よ うな 考 え 方 は 既 に ア ボ ッ トが 「平 面 国」[9]で 示 して い るが 、 ウス ペ ンス キ ー は この 作 品 に つ い て は 知 らな か った よ うで あ る。 モ ロ ゾフに よれ ば も し四 次 元 世 界 が あ る とす れ ば 、 私 た ち三 次 元 世 界 に は 「心 霊 現 象 」 とい う形 で 現 れ るは ず で あ る。 しか しこ う した 現 象 は 確 認 され て い な い こ と よ り、 モ ロ ゾフは 四 次 元 世 界 は 存 在 しな い と結論 した 。 これ に 対 して ウ スペ ン スキ ーは な ぜ 四 次 元 を 心 霊 現 象 の 中 に の み 認 め た の か 、 そ して 「霊 的 な もの 」 を 否 定 す る こ とが な ぜ 四 次 元 を 否 定 す る こ とに な るの か 理 解 で きな い と、 モ ロ ゾフの 結論 を 疑 問 視 し て い る17)。 二 次 元 生 物 は 説 明で きな い 現 象 に 直 面 した と き、 最 初 は 超 自然 現 象 と考 え るだ ろ う。 しか し 説 明不 可 能 な 出来 事 が 一 定 の 法 則 性 を 持 って 生 じる こ とが 観 測 され た な ら、 何 らか の 仮 説 で 説 明 しよ うとす る。 も し三 次 元 の 存 在 を 認 め れ ば 説 明で き る と分 れ ば 、 現 実 の 物 体 は 三 次 元 を 持 って い る と認 識 す るだ ろ う。 さ らに 彼 自身 も三 次 元 の 存 在 で あ る と結論 す るか も しれ な い 。 同
じこ とが 我 々 と四 次 元 世 界 の関 係 に も当 て は ま る だ ろ う。 「私 た ち の世 界 で 目に見 え な い もの 、 説 明で き な い もの は 三 次 元 空 間 の 中 で説 明 しよ う と して い るか ら」 で 、 「そ れ は 本 当 は我 々の 世 界 の 外 部 、 高 次 元 空 間 で 起 こ っ て い る のだ と考 え る」 こ とが で き る18)。した が って 我 々は 事 物 を あ りの ま まに は 見 て い な い 。 実 体 を 持 って い るの は 四 次 元 の 事 物 で あ る。 も しそ うだ とす るな ら、 三 次 元 で の 我 々 も架 空 の 存 在 で あ るか 、 そ うで な い な ら我 々 自身 が 四 次 元 の 存 在 で あ る こ とを 認 め な け れ ば な らな い 。 ウ スペ ン スキ ーは 通 常 の 「物 質 的 な もの 」 以 外 に 「心 的 な もの 」 を 加 え て 、 心 的 現 象 が 四 次 元 の 領 域 に 属 す る もの と考 え る。 こ こで い う 「心 的 な もの 」 とは 心 理 的 、 精 神 的 な 現 象 の 意 味 で 、 心 霊 主 義 や 神 智 学 に お け る用 語 とは 異 な って い る。 心 的 な もの は 物 質 的 な もの とは 必 ず し も平 行 関 係 に あ るの で は な くて 、 四 次 元 空 間 に お け る新 しい 軸 と同様 に ま った く独 立 して い る と考 え る。 「我 々 は 四次 元 世 界 に 生 き て い る の だ が 、 三 次 元 世 界 の 自分 に しか 気 づ い て い な い の だ 」19)と言 え る。 四 次 元 超 立 方 体(ヒ ン トンの 用 語 に した が え ば テ ッサ ラ ク ト)は 、 三 次 元 立 方 体 内 部 の 全 て の 点 が 動 くこ とに よ って 作 られ る。 す な わ ち最 初 の 立 方 体 の 外 部 領 域 に 成 長 した 無 限 個 の 立 方 体 で あ る。 同様 な 条 件 で 考 え られ るの は 物 体 の 膨 張 と収 縮 で あ る。 そ れ ぞ れ の 点 の 軌 跡 は 物 体 の 中 心 と線 で 結 び 付 く。 この 運 動 の 方 向 は 中 心 か らの 放 射 線 とな る。 こ う した 四 次 元 の 運 動 は 物 体 の 元 の 形 状 を 保 った ま ま、 そ の 大 き さだ け を 変 化 させ る。 ウ スペ ン スキ ーは ヒン トンがr四 次 元 』[13]で 述 べ て い る よ うに 、 生 きて い る有機 体 の 構 造 に 見 られ る対 称 性 は 粒 子 の 四 次 元 運 動 に よ って 説 明で き る と考 え る。 雪 の 結 晶 や 冬 の 葉 の な い 木 な どは 四 次 元 の 図 形 で あ る。 これ らは 対 称 性 の 運 動 原 理 に 基 づ い て 作 られ る。 物 質 の 粒 子 は そ れ ぞ れ と中 心 を 結 ぶ 直 線 に 沿 って 運 動 して い る。 そ の 後 、 ウ スペ ン スキ ーは 物 質 、 状 態 、 エ ネル ギ ーに つ い て 話 を 進 め て い るが 、 彼 の 時 代 に は まだ 物 質 の 構 造 に つ い て の 物 理 学 的 な 知 識 は 十 分 で は な く、 そ の 議論 は 現 在 で は 納 得 の 行 く もの で は な い 。 最 後 に 「心 霊 主 義 者 」 や 「オ カル テ ィス ト」 が 四 次 元 を 「アス トラル 界 」 で 起 こ った 現 象 と して い る こ とに つ い て 述 べ て い る。 ア ス トラル 界 とは 私 た ちの 空 間 に は 当 て は め る こ との で きな い 現 象 の た め の 世 界 で あ り、 そ の 意 味 で は これ まで の 議論 と似 た と ころ は あ る が 、 ア ス トラル 界 の 存 在 は 確 認 され て い な い と して い る。 この よ うに して ヘ ン ダ ー ソンが 述 べ て い る よ うに 、 ウ スペ ン スキ ーのr四 次 元 』 は 彼 独 自の 思 想 とい うよ りは 、 そ れ まで の 四 次 元 空 間 に つ い て の 考 え 方 を 解 説 した もの に 近 い と思 わ れ る。 ウ スペ ン スキ ーの 「超 空 間哲 学 」は この本 を土 台 に して、彼 の主 著 と考 え られ るrタ ー シ ャ ム ・ オル ガ ヌ ム』 で 一 気 に 花 開 くこ とに な る。 「タ ー シ ャ ム ・オル ガ ヌ ム」 は 普 通 は 「第 三 の 思 考 規 範 」 と訳 され て い る。論 理 学 の 体 系 と して は まず ア リス トテ レスの 『オ ル ガ ノ ン』(論 理 学)が あ り、 これ に対 して フ ラ ン シス ・ベ ー
コ ンは 『ノ ヴ ム ・オ ル ガ ヌム』(新 しい論 理 学)を 出 版 した 。 ウス ペ ンス キ ーは 高 次 元 空 間 を 理 解 す るた め に は これ らを 超 え た 論 理 学 の概 念 が 必 要 で あ る との 見 地 よ り、 そ の 著 書 を 『タ ー シ ャ ム ・オル ガ ヌ ム』 と名 付 け た の で あ る20)。 この 本 は 「最 も難 しい の は 我 々は 何 を 知 って お り、 何 を 知 らな い か を知 る こ とで あ る」 とい う言 葉 で 始 ま る21)。彼 は まず 時 間 と空 間 に 関 す る カ ン トの 哲 学 か ら出 発 す る。 カ ン トに よれ ば 感 覚 に よ って 知 覚 され る全 て の 物 体 は 時 間 と空 間 の 中 で 知 覚 され るが 、 物 自体 は 時 間 と空 間 と は 独 立 に 存 在 して い る。 私 た ちが 感 覚 を 通 して 物 や 事 象 を 知 覚 す る と きに は 、 時 間 と空 間 とい う知 覚 形 式 を 通 して の み 可 能 で あ り、 時 間 と空 間 は 世 界 の 特 性 で は な くて 、 私 た ちの知 覚 の 特 性 で あ る。 コ リ ン ・ウ ィル ソ ンは この こ とを 「身 な りの い い 人 しか 入 れ よ うと しな い ナイ トク ラ プ の玄 関番 」 とい う上 手 い例 で表 現 して い る。 「事 物 は 空 間 と時 間 を ま と っ て い な け れ ば な らな い とい う。 裸 の もの は 入 場 を 許 され な い の だ 」22)。 ウ スペ ン スキ ーは 「カ ン トは 問 題 を 提 示 した が 、 そ の 解 決 法 を 与 え な か った 」 とい って い る。 この 状 況 を 一 歩 前 進 させ た の が ヒ ン トンで あ る。 カ ン トは 空 間 と時 間 の 中 で 感 覚 を 通 して知 覚 す る こ とが 物 自体 を 見 る妨 げ に な って い る とい う。 しか し空 間 的 知 覚 を 障 害 と して 見 るの で は な く、 世 界 を 理 解 す るた め の 手 段 と して と らえ る こ とが で き る。 我 々は 空 間 とい う手 段 に よ っ て 事 物 を 理 解 して い る と考 え るの だ 。 した が って 空 間 的 知 覚 を 発 達 させ る こ とに よ って 新 しい 概 念 に 到 達 で き る。 ヒ ン トンは 『思 考 の 新 紀 元 』 と 『四 次 元 』 で そ う主 張 した 。 彼 は 四 次 元 的 な 知 覚 を 創 造 す るた め に 着 色 した 立 方 体 を 使 用 す る方 法 を 開 発 した が 、 ウス ペ ンス キ ーは 上 に 述 べ た よ うに ヒン トンの 方 法 は 一 般 的 で は な い と コ メ ン トして い る。 一 次 元(線)や 二 次 元(面)の 空 間 と三 次 元 空 間(立 体)と の 関 係 よ り類 推 して 、 四 次 元 空 間 は 三 次 元 空 間 と次 の よ うな 二 つ の 関 係 に あ る もの と考 え られ る。 まず 、 三 次 元 空 間 で の 立 体 を そ の 空 間 の 中 に は 含 まれ て い な い 方 向 、 す な わ ち三 次 元 で の あ らゆ る可 能 な 方 向 以 外 、 の 外 部 へ と動 か す と、 そ の 軌 跡 と して 四 次 元 の 物 体 が 生 じる。 も う一 つ は 、 三 次 元 の 物 体 は 四 次 元 空 間 で の 物 体 の 断 面 で あ る とみ な せ る こ とで あ る。 四 次 元 物 体 は 三 次 元 空 間 に 含 まれ な い 方 向 へ の 運 動 の 軌 跡 と して 表 され 、 そ の 運 動 の 方 向 は 三 次 元 空 間 の 中 に は な い 。 空 間 に お け るあ らゆ る運 動 に は 時 間 が 関 係 して い る。 とす れ ば 運 動 と時 間 は 四 次 元 的 に 係 わ って い るの で は な い か 。 ウ スペ ン スキ ーは こ う して 独 自の 時 間論 ・次 元 論 を 展 開 す る23)。私 た ち の 時 間概 念 は 「過 去 ・現 在 ・未 来 」 か ら成 り立 って い る。過 去 は 過 ぎ去 って も う存 在 しな い 。 一 方 、 未 来 は まだ 存 在 して い な い 。 だ とす る と存 在 して い るの は 一 瞬 の 現 在 だ け とい うこ とに な るが 、 そ れ は 絶 え ず 過 去 へ と溶 け 込 ん で 行 く。 厳 密 に い うと 「過 去 ・現 在 ・未 来 」 は 存 在 して い な い こ とに な る。 ウ スペ ン スキ ーは こ う した 状 況 は 私 た ちの 感 覚 器 官 に よ る知 覚 に 限 界 が あ るた め で あ る と考 え る。 私 た ちの 知 覚 が 平 面 上 の 円の 内部 に 限 られ て い た とす る と、 円の 外 側 や 平 面 の 上 下 に あ
る存 在 は 私 た ちに と って は 非 存 在 で あ る。 感 覚 器 官 に よ る知 覚 に 制 限 され て い な い 意 識 は 、 円 の 外 側 や 平 面 を離 れ た 世 界 を見 る こ とが で き る。 「過 去 」 や 「未 来 」 は 、 三 次 元 空 間 に含 まれ て い な い 方 向 に 延 び て い る 「時 間 とい う新 しい 空 間 」 の 広 が りを 考 え る こ とに よ り、 現 在 と同 様 に 存 在 して い る とい え る。 私 た ちが 見 て い るの は 三 次 元 の 空 間 と時 間 面 で の 断 面 で あ る。 し た が って 時 間 は 「第 四 次 元 」 で あ る。 「時 間 」 に は 「あ る空 間 」 と 「空 間 に お け る運 動 」 とい う意 味 が あ る。 しか し現 実 に は この 「運 動 」 は 存 在 しな い 。 私 た ちが 「時 間 とい う空 間 」 を 見 る こ とが で きな い た め に 「運 動 」 が 存 在 して い る よ うに 見 え るだ け で あ る。 そ れ は 四 次 元 空 間 に 対 す る不 完 全 な 時 間 感 覚 の た め 生 じた もの で あ る。 四 次 元 空 間 の 特 性 を 調 べ るた め に は 、 三 次 元 空 間 と二 次 元 平 面 を 詳 細 に 比 較 して 、 そ の 間 に 存 在 す る違 い を 知 る こ とが 有 効 で あ る。 これ は ヒ ン トンがr思 考 の 新 紀 元 』 で 行 った こ とで あ る。 ウ スペ ン スキ ーは これ が 異 な った 二 つ の 空 間 の 間 の 問 題 で は な く、 同 一 の 空 間 を 持 った 世 界 に 対 す る二 つ の 知 覚 様 式 の 問 題 で あ る こ とを 強 調 して い る24)。で は 低 次 元世 界 の 生物 は 時 間 を どの よ うに 感 じて い るの だ ろ うか?ウ スペ ン スキ ーは 彼 らに と って も時 間 は あ る種 の 運 動 や 現 象 と して 知 覚 され る こ とを 示 した 。 例 え ば 二 次 元 世 界 の 生 物 が 三 次 元 世 界 を 理 解 す るた め に は まず 「二 次 元 」 で あ る こ とを 止 め て 、 彼 ら 自身 が 「三 次 元 」 の 存 在 に な らな け れ ぽ い け な い と して い る。 で は 空 間 の 次 元 とは 何 だ ろ うか 、 そ して 私 た ちの 世 界 は ど う して 三 次 元 な の か?ウ スペ ン ス キ ーに よれ ば 数 学 は 次 元 を 感 知 しな い 。 数 学 で は 空 間 は い くつ か の 代 数 記 号 で 表 され る。 しか しこれ らの 記 号 は 実 在 物 に 対 応 した もの で は な い 。 した が って 幾 何 学 に よ って 次 元 を 説 明 す る こ とが で きな い 。 ヒ ン トンは ロ・ミチ ェ フ スキ ーや ガ ウ スな どの 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 者 を 高 次 元 空 間 に 対 す る超 幾 何 学 と関 連 させ て い る。 これ に 対 して ウ スペ ンス キ ーは 、 非 ユ ー ク リ ッ ド 幾 何 学 は 超 幾 何 学 と何 の 関 係 もな い こ とを 指 摘 し、 ロバ チ ェ フ スキ ーは 三 次 元 空 間 の 範 疇 を 出 て い な い と述 べ て い る25)。 カ ン トの 命 題 か ら 出発 して ヒ ン トンの 考 え 方 を 適 用 す れ ば 、 私 た ちが 空 間 を 三 次 元 で あ る と 認 識 す る の は 、 自分 自身 の 内部 に三 次 元 空 間 の条 件 を備 え て い るが た め で あ る 。 「空 間 の三 次 元 性 は 私 た ちの 心 的 構 造 に あ り、 知 覚 器 官 の 中 に あ るの で あ る。 そ して 高 次 元 世 界 の 条 件 を 発 見 しなけ れ ば な らな い の も また そ の 中 で あ る」26)。した が って 上 の 問 い に 答 え るた め に は 我 々 の 意 識 とそ の 特 性 を 研 究 しな け れ ば な らな い 。 私 た ちの 知 覚 は 「感 覚 ・表 象 ・概 念 」 とい う三 つ の 段 階 か ら構 成 され て い る。 外 的 世 界 の 状 態 の 変 化 を 内的 生 活 に 反 映 させ るの が 感 覚 で あ り、 表 象 は 感 覚 の 記憶 が 関 連 付 け られ 、 結 合 さ れ 、 対 比 され て 生 じる グル ー プで あ る。 さ らに 表 象 の イ メ ー ジに つ い て も同様 な こ とが 行 わ れ て 概 念 とな る。概 念 の 形 成 は 言 語 の 形 成 、 発 生 に つ な が る。
私 た ちの 空 間 の 三 次 元 性 は 心 的 構 造 が 「感 覚 ・表 象 ・概 念 」 か ら構 成 され て い る こ とに 関 連 して い る。 した が って 「感 覚 だ け を 持 つ 存 在 に と って は 世 界 は 一 次 元 で あ り、 感 覚 と表 象 を 持 つ 存 在 に と って は 世 界 は 二 次 元 的 で あ り、概 念 や 観 念 に 加 え て 「高 次 の知 覚 形 態 」 を 有 す る も の に と っ て は世 界 は 四 次 元 で あ る」27)。動 物 は 概 念 を持 って お らず 、 そ の 行 動 は反 射 的 ・本 能 的 で あ る。 そ の た め に 動 物 は 二 次 元 の 世 界 に 住 ん で い る とい え る。 動 物 は 三 次 元 を 感 じる こ と が で き るが 、 そ れ を 見 る こ とは な い 。 彼 らは 三 次 元 を 私 た ちに と って の 時 間 の よ うに 感 じて い る。 同様 に 私 た ちに よ って 運 動 や 時 間 と して 知 覚 され て い る もの は 四 次 元 の 世 界 で 静 止 して い る 存 在 で は な い だ ろ うか 。 全 て の 物 は 時 間 の 中 に 存 在 す るが 、 私 た ちに 見 え るの は 物 の 断 面 だ け で あ り、 私 た ちは 物 が 運 動 して い る とい う錯 覚 を 持 って い る。 高 次 元 で 静 止 して い る物 体 を 私 た ちの 知 覚 とい うの ぞ き穴 を 通 して み る こ とに よ り、 本 当 は 存 在 して い な い 運 動 を 見 て い る こ とに な って い る。 低 位 か ら高 位 の 空 間 に 進 む に つ れ て 運 動 は 消 滅 し、 静 止 した 物 体 の 特 性 とな る28)。こ うして意 識 と知 覚形 態 の上 昇 と拡 大 に つれ て空 間 の 性 質 は増 加 し、 時 間 の 性 質 は 減 少 す る。 ウ スペ ン スキ ーは 意 識 の 拡 大 の た め に は 、 これ まで とは 異 な った 新 しい論 理 体 系 が 必 要 で あ る と考 え る。 ア リス トテ レス と フ ラ ン シ ス ・ベ ー コ ンを 超 え た 第 三 の 思 考 規 範 が 。 彼 は 新 しい 論 理 学 の 公 理 をrAはAで あ る と 同時 に非Aで あ る」 あ るい は 「す べ て の も のはAで あ る と 同時 に 非Aで あ る」 ま た は 「す べ て の も の はす べ て で あ る」 と表 して い る29)。 新 しい 意 識 の 目覚 め に つ い て ウ スペ ン スキ ーは 、 カ ナ ダの 物 理 学 者 リチ ャ ー ド ・モ ー リス ・ バ ックの 「宇 宙 意 識 』[33]で の 文 章 を 引 用 して 「宇 宙 意 識 とは 普 通 の 人 間 が 所 有 して い る意 識 よ りも高 次 の 意 識 形 態 で あ る」30)と述 べ て い る。 ウ スペ ンスキ ーの 超 空 間 哲 学 に つ い て の 最 後 の 著 書 が 『新 しい 宇宙 像 』[18]で あ る。 この 本 は1931年 に 出版 され た の で あ るが 、 そ の 内容 は 以 前 か ら書 か れ て い た 。 実 際 に1910年 に 出版 さ れ た 『四次 元 』 が 一 部 書 き直 され て、 この 本 の第 二 章 と して 再 録 され て い る。 『タ ー シ ャ ム ・ オル ガ ヌ ム』 以 降 の ウ スペ ン スキ ーの 超 空 間 哲 学 を 直 接 扱 った の が 、 本 の タイ トル に もな って い る第 十 章 「新 しい 宇 宙 像 」 で あ る。 この 部 分 は1911-1929年 の 間 に 書 か れ た 。 この 章 は 第 一 部 と第 二 部 に 分 か れ て い る。 ウ スペ ン スキ ーは 電 子 の 発 見(1897年)ま で の 物 理 学 を 「旧物 理 」 と し、 そ れ 以 後 の もの を 「新 物 理 」 と呼 ん で い る。 第 一 部 は 古 典 物 理 学 か ら アイ ン シ ュ タイ ンの 特 殊 相 対 性 理 論 まで の 解 説 で 、 ウ スペ ンス キ ー 自身 の 特 徴 は あ ま りな い 。 第 二 部 で ウス ペ ンス キ ーは そ の超 空 間 哲 学 を さ ら に前 進 させ る。 「新 物 理 」 で 新 しい世 界 像 を 構 築 す るた め に は 「湾 曲 した 空 間」 を 必 要 とす る の で、 「旧物 理 」 で の よ うに 四 つ の座 標 で は 不 十 分 で あ る。 運 動 は そ れ 自身 三 つ の 次 元 を 持 って い る。 持 続 時 間 、 速 度 、 方 向 で あ る。 運 動 の 尺 度 で あ る時 間 を 線 で 表 す とす れ ば 、 三 次 元 で の 線 で あ る 「螺 旋 」 とな るで あ ろ う。
この 時 間 の 三 次 元 性 に よ り、 空 間 は 「六 次 元 」 とみ な す こ とが で き る。 この と き全 て の 六 次 元 体 は 、 私 た ちに と って は 時 間 の 中 に 存 在 す る 「三 次 元 体 」 で あ って 、 そ の 五 次 元 と六 次 元 は 私 た ちに は 知 覚 で きな い ま まで あ る。 三 次 元 の時 間 を 図 に 描 い てみ る こ とに す る。 「過 去 」 「現 在 」 「未 来 」 の 三 つ の点 で定 ま る直 線 が 時 間 を 表 して い る四 番 目の 線 に な る。 この 直 線 に 垂 直 な 何 本 か の 線 を 想 像 しよ う。 これ が 五 次 元 を 表 して い る線 で あ る。 これ らの 垂 線 は す べ て あ る瞬 間 に お け る 「永 遠 の 現 在 」 を 表 し て い る。 そ れ ぞ れ の 瞬 間 は 多 くの 可 能 性 を 含 ん で い る。 そ れ らの 可 能 性 の うちの た だ 一 つ の み が 現 実 化 され て 「今 」 を 決 定 す る。 この 現 実 化 され た 点 を 結 ん で い るの が 四 次 元 の 時 間 線 とな って い る。 時 間 線 の 垂 線 で あ る五 次 元 の 線 は 「永 遠 」 の 線 と考 え られ る。 この と き時 間 は 一 本 の 直 線 で は な く、 「時 間面 」 で 表 され 、 個 々 の 時 間 は 完 結 した 円 とな る。 永 遠 とは 「時 間 の 湾 曲」 で あ り、 この 円に 沿 って の 永 久 運 動 、 永 劫 回 帰 で あ る。 先 行 す る瞬 間 に は 含 まれ て い た け れ ど、「時 間 」 の 中 では 実 現 され なか った 他 の可 能 性 を 現 実 化 してい る のが 六 次 元 の線 で あ る31乙 ウ スペ ン スキ ーは この よ うな 考 え 方 を 物 質 の 構 造 、 原 子 、 電 子 、 光 量 子 な どに 適 用 しよ うと 試 み て い る。 しか しこの 文 章 が 仮 に1929年 に 書 か れ た と して も、 こ う した 「新 物 理 」 の 現 象 は まだ 十 分 に 解 明 され て お らず 、 彼 の 議 論 は 現 在 で は 妥 当 で な い 点 が 多 い 。 ド ・プ ロイ の 物 質 波 の概 念(1924年)、 ハ イ ゼ ンベ ル グ(1925年)と シ ュ レデ ィ ンガ ー(1926年)に よる量 子 力 学 は 既 に 発 表 され て い た が 、 この 本 で は 触 れ られ て い な い 。 陽 電 子 と中 性 子 の 発 見(1932年)な ど とそ れ 以 降 の(新)物 理 学 の 発 展 を 考 え れ ば 、 この 部 分 は 現 在 で は 大 幅 に 書 き変 え る必 要 が あ るだ ろ う。 ウ スペ ン スキ ーは この 後 グル ジ ェ フ思 想 の 普 及 に 従 事 し、 彼 自身 の 四 次 元 や 超 空 間 に 関 す る 本 を 出版 して い な い 。 グル ジ ェ フ思 想 の 入 門 書 とい わ れ る 『奇 跡 を 求 め て 』[29]で は 、 グル ジ ェ フが 「ミク ロコ ス モ ス」 と 「マ ク ロコ ス モ ス」 に つ い て 語 った こ とを 「君 の 言 う次 元 の 観 点 か ら検 討 しな さい 」 な さい と言 わ れ て、 上 の六 次 元 空 間 の話 を して い る32)。また 「コス モ ス 」 に つ い て の グル ジ ェ フの 話 を 彼 な りの次 元 論 で 解 説 して い る33)。しか し これ らは い ず れ も難 解 な グル ジ ェ フの 考 え を ウ スペ ン スキ ー流 の 言 葉 で 明解 に 説 明 した もの で あ って 、 彼 が グル ジ ェ フ思 想 の 伝 道 師 と言 わ れ て い る所 以 で は あ るが 、 新 しい もの は な い 。 4 ま とめ ウ ス ペ ン ス キ ー は こ れ ま で グ ル ジ ェ フ の 弟 子 、 そ の 思 想 の 解 説 者 と して 考 え ら れ て き た 。 し か し彼 は 、 は じめ て グ ル ジ ェ フ に 出 会 っ た と き 既 に 優 れ た 「超 空 間 哲 学 者 」 で あ り、 あ る 意 味 で は グ ル ジ ェ フ を 凌 駕 して い た 。 ウ ス ペ ン ス キ ー を グ ル ジ ェ フ と は 独 立 に 取 り上 げ る こ と は 非 常 に 興 味 が あ る 。 こ の よ うな 試 み は コ リ ン ・ウ ィル ソ ン に よ っ て 行 わ れ て い る[23]が 、 彼 の 空
間 ・時 間 論 そ の もの に は そ れ ほ ど重 点 が 置 か れ て い な い 。 ウ スペ ンス キ ー は ヒ ン トンか ら大 きな 影 響 を 受 け て お り、 『四次 元 』 と 『タ ー シ ャ ム ・オ ル ガ ヌ ム』 で 四 次 元 空 間 を 認 識 す る こ とに よ り意 識 を 進 化 させ る とい う、 ヒ ン トンの 超 空 間 哲 学 を 発 展 させ た 。 第 四 番 目の 次 元 と して ウ スペ ン スキ ーは 時 間 を 考 え る。 この 点 で は 時 間 と空 間 を 同等 に 取 り扱 うアイ ン シ ュ タイ ンや ミン コ フ スキ ーの 特 殊 相 対 性 理論 に お け る四 次 元 時 空 と 似 て い る。 しか し特 殊 相 対 論 の 時 間 は 時 の 経 過 に 対 応 す る純 粋 な 物 理 学 的 な 時 間 で あ るの に 対 して 、 ウ スペ ン スキ ーの 時 間 は 心 的 要 素 を 含 ん で い る。 彼 は 更 に 一 歩 進 ん で 、 時 間 は 四 次 元 空 間 で 私 た ち の 四番 目の 次 元 に対 す る知 覚 が 不 十 分 な こ とに よ る結 果 で あ る と して い る。 「新 し い 宇 宙 像 』 で は 時 間 の 三 次 元 構 造 を 考 え て 、 空 間 は 六 次 元 で あ る と主 張 して い る。 ウ スペ ン スキ ーは 永 劫 回 帰 よ り逃 れ る鍵 を 探 す た め に 東 洋 へ 旅 立 った 。 これ は 単 な る空 間 的 な 移 動 だ け で は な く、 高 次 元 意 識 の 開 発 を 求 め た 「心 の 旅 」 で もあ った 。 そ の 後 共 産 主 義 革 命 を 避 け て グル ジ ェ フ と黒 海 沿 岸 を 彷 程 い 、 コ ン ス タ ンチ ノ ー プル に 到 着 す る。 ロ ン ドンに 落 ち 着 い て 彼 の 旅 は 終 わ った が 、 心 の 旅 は 彼 の 死 まで 続 い た 。 ウス ペ ンス キ ーは 超 空 間 哲 学 を 発 展 させ た が 、 そ れ だ け で は 問 題 を 解 決 で きな い こ とに 気 づ い て い た 。 そ ん な と きに 出会 った の が グル ジ ェ フで あ る。 グル ジ ェ フは ウ スペ ン スキ ーの 求 め て い る答 え を 知 って い る よ うに 思 わ れ 、 彼 の 下 で 「ワー ク」 を 続 け た 。 グル ジ ェ フ と決 別 した 後 も彼 の 教 え を 信 じ、 超 空 間 哲 学 と両 立 させ よ うと試 み て い る。 こ う した 彼 の 心 の 旅 は 、 奇 妙 な 軌 跡 を 描 い て い る曲 線 の よ うで あ る と 言 え る。 最 近 の 物 理 学 で は高 次 元 空 間 の存 在 は 常識 とな って い る。 リサ ・ラ ン ドー ル(Lisa Randall) は 高 次 元 空 間 を 導 入 す る こ とに よ り、 素 粒 子 物 理 学 の 問 題 が 解 決 で き る こ とを 示 した[34]。 残 念 な が ら私 た ちの 感 覚 器 官 で は 高 次 元 空 間 を 見 る こ とは で きな い が 、 最 新 の 実 験 装 置 を 用 い て そ の 存 在 を 調 べ る実 験 が 計 画 され て い る。 一 方 、 ウ ス ペ ン ス キ ー の 発 した 「私 た ち の空 間 は なぜ 三 次 元 か?」 とい う問 い に 対 して は 「人 間 原 理 」 に よ って 一 つ の 解 答 が 提 供 され て い る[35]。 人 間 原 理 とは 「現 在 の 世 界 が この よ うで あ るの は 人 間 の 生 存 に 適 して い るか らで あ る」 とい うもの で あ る。 惑 星 の 運 動 や 原 子 構 造 が 安 定 して い るの は 空 間 が 三 次 元 で あ る と きの み で あ り、 音 に よ る信 号 が 歪 み な く伝 わ るの も 三 次 元 だ け で あ る。 とす れ ば 私 た ちが 存 在 す るの も、 言 語 に よ る情 報 の 伝 達 が 可 能 な の も三 次 元 空 間 とい うこ とに な る。 こ う して 三 次 元 空 間 の み が 人 間 の 生 存 に 適 した 空 間 で あ る と言 え る。 グル ジ ェ フ と 出会 った 後 、 ウ スペ ン スキ ーの 超 空 間 哲 学 は 進 歩 して い な い 。 『新 しい宇 宙 像 』 が 出版 され た1931年 か ら ウ スペ ン スキ ーが 死 亡 した1947年 まで の 間 に 自然 科 学 は 大 きな 進 歩 を 遂 げ た 。 彼 が そ の 後r新 しい 宇 宙 像 』 で の 超 空 間 哲 学 を ど う発 展 させ た か 、 現 在 の 科 学 の 進 歩 を 体 験 した と きに そ の 時 間 論 ・空 間 論 が どの よ うに 変 化 す るの か 、 非 常 に 興 味 の あ る問 題 で あ る。
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注 、 、 ! 1)ロ バ チ ェ フ ス キ ー と ボ ヤ イ の 幾 何 学 は 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 だ が 、 三 次 元 空 間 に 対 す る も の で あ る 。 一 方 、 リ ー マ ン は 別 の 形 の 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 を π 次 元 空 間 に つ い て 提 案 し た 。 2)1970年 の 第 二 版 で は 、 そ の 後 に 出 版 さ れ た 書 籍 の リス トが 追 加 さ れ て い る 。 3)文 献2のp.25。 4)文 献18に は 二 種 類 の 日本 語 訳 が あ る が 、 『超 宇 宙 論 』 に は 多 く の 誤 訳 が あ る こ と が 指 摘 さ れ て い る の で こ こ で は 『新 し い 宇 宙 論 』 の 方 を 用 い る こ と に す る 。 http:〃homepage 1.nifty.com/pdo/linktyo.htmを 参 照 の こ と。 5)コ リ ン ・ウ ィ ル ソ ン は 後 に グ ル ジ ェ フ と は 独 立 に ウ ス ペ ン ス キ ー の 伝 記[23]を 書 い て い る 。 6)文 献2のpp.245-255. 7)日 本 語 訳 が 次 の ホ ー ム ペ ー ジ に あ る 。 http:〃homepage 1.nifty.com/pdo/linkautbio.htm 8)文 献2のp.246。 9)文 献18の3-4ペ ー ジ 。 10)文 献22の45ペ ー ジ 。 11)文 献23の59ペ ー ジ 、 注1。 パ ス ポ ー トに 記 載 さ れ た 生 年 月 日 に よ る 。 彼 の ホ ー ム ペ ー ジ http://www.geocities.com/Paris/1181/に よ る と1866年 と な っ て い る 。 12)文 献2のp.245の 注27。 13)文 献2のp.248. 14)文 献18の101ペ ー ジ 。 15)同 様 な 指 摘 が ヘ ン ダ ー ソ ン に よ っ て 行 わ れ て い る 。 文 献2のpp.254-255. 16)文 献18のlll-115ペ ー ジ 。 17)文 献18の115-116ペ ー ジ 。 18)文 献18の124ペ ー ジ 。 19)文 献18の133ペ ー ジ 。 20)文 献17の307-308ペ ー ジ 。 21)文 献17の1ペ ー ジ 。 22)文 献23の37ペ ー ジ 。 23)文 献17の 第3-5章 。 24)文 献17の77-78ペ ー ジ 。 25)文 献17の83-84ペ ー ジ 。 26)文 献17の86ペ ー ジ 。 27)文 献17の94ペ ー ジ 。 28)文 献17の135ペ ー ジ 。
29)文 献17の319ペ ー ジ 。 30)文 献17の389ペ ー ジ 。 31)文 献18の223-232ペ ー ジ 。 32)文 献29の326-331ペ ー ジ 。 33)文 献29の513-520ペ ー ジ 。 (むこ や ま ・た け し 外 国 語学 部 教授)