障害者福祉制度の財政分析 : 「措置から契約」に
よる成果と課題
著者
丹波 勇気
学位名
博士 (経済学)
学位授与機関
関西学院大学
学位授与番号
34504甲第659号
URL
http://hdl.handle.net/10236/00027291
障害者福祉制度の財政分析
「 措 置 か ら 契 約 」 に よ る 成 果 と 課 題
丹 波 勇 気
【 目 次 】 序 章 障 害 者 福 祉 制 度 の 充 実 に 向 け て ··· 1 1. 現 行 制 度 の 評 価 と 2 つ の 課 題 ―世 代 間 格 差 と 自 治 体 間 格 差 ― 2. 分 析 の 視 点 と 各 章 の 要 約 第 1 章 障 害 者 福 祉 制 度 の 展 開 と そ の 経 緯 ··· 6 1. 障 害 者 福 祉 制 度 運 営 の 経 緯 2. 障 害 者 福 祉 制 度 の 確 立 3. 第 1 の 転 換 : 施 策 方 針 の 転 換 ―施 設 サ ー ビ ス か ら 居 宅 サ ー ビ ス へ ― 3.1 施 設 サ ー ビ ス 中 心 の 施 策 展 開 3.2 居 宅 サ ー ビ ス 中 心 へ の 転 換 4. 第 2 の 転 換 : 措 置 制 度 か ら 契 約 制 度 へ の 移 行 4.1 90 年 代 の 障 害 者 福 祉 施 策 : 措 置 制 度 を 中 心 と し て 4.2 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 : 措 置 か ら 契 約 へ の 転 換 の 障 害 者 福 祉 へ の 波 及 4.3 支 援 費 制 度 ―契 約 制 度 の 導 入 ― 4.4 障 害 者 自 立 支 援 法 ―制 度 的 飛 躍 と 社 会 的 批 判 ― 4.5 障 害 者 総 合 支 援 法 ―自 立 支 援 法 の 課 題 へ の 対 応 ― 4.6 制 度 展 開 の 総 括 ―成 果 と 課 題 ― 第 2 章 サ ー ビ ス 給 付 水 準 の 世 代 間 格 差 ―介 護 保 険 優 先 原 則 が 高 齢 障 害 者 に 及 ぼ す 影 響― ··· 32 1. 介 護 保 険 優 先 原 則 の 功 罪 2. 先 行 研 究 3. 介 護 保 険 制 度 の 概 要 4. 介 護 保 険 優 先 原 則 の 変 遷 4.1 介 護 保 険 法 の 成 立 と 介 護 保 険 優 先 原 則 の 誕 生 4.2 支 援 費 制 度 ま で の 介 護 保 険 優 先 原 則
4.3 介 護 保 険 統 合 論 と 介 護 保 険 優 先 原 則 4.4 現 行 制 度 に お け る 介 護 保 険 優 先 原 則 5. 制 度 的 差 異 と サ ー ビ ス 給 付 水 準 の 低 下 5.1 障 害 者 総 合 支 援 法 と 介 護 保 険 制 度 と の 制 度 的 差 異 5.2 制 度 的 差 異 と サ ー ビ ス 給 付 水 準 の 低 下 5.3 本 研 究 の 限 界 ―給 付 水 準 低 下 の 実 態 解 明 ― 6. 今 後 の 介 護 保 険 優 先 原 則 の あ り 方 第 3 章 ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス 支 給 量 の 自 治 体 間 格 差 ··· 59 1. 障 害 者 自 立 支 援 法 と 自 治 体 間 格 差 の 縮 小 1.1 支 援 費 制 度 の 限 界 と 自 治 体 間 格 差 1.2 障 害 者 自 立 支 援 法 施 行 後 の 自 治 体 間 格 差 2. 先 行 研 究 3. ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス に お け る 需 要 要 因 と 供 給 要 因 、 地 域 特 性 4. 兵 庫 県 内 で の 自 治 体 間 格 差 に 関 す る 分 析 4.1 仮 説 と 実 証 分 析 4.2 結 果 の 解 釈 5. 大 規 模 都 市 間 で の 自 治 体 間 格 差 に 関 す る 分 析 5.1 仮 説 と 実 証 分 析 5.2 結 果 の 解 釈 と 分 析 の 課 題 終 章 障 害 者 自 立 支 援 法 の 成 果 と 残 さ れ た 課 題 ··· 86 参 考 文 献 ··· 91 参 考 資 料 障 害 者 施 策 の 展 開 ··· 103
1 序 章 障 害 者 福 祉 制 度 の 充 実 に 向 け て 1. 現 行 制 度 の 評 価 と 課 題 ―世 代 間 格 差 と 自 治 体 間 格 差 ― 日 本 の 障 害 者 福 祉 制 度 の 歴 史 は 、戦 後 に 限 っ て 言 え ば 、1949 年 の 身 体 障 害 者 福 祉 法 の 制 定 か ら 始 ま り 、こ の 半 世 紀 で 急 速 な 近 代 化 を 遂 げ た 。占 領 統 治 下 で 、 日 本 国 憲 法 が 制 定 さ れ た こ と を 受 け て 、 福 祉 施 策 の 充 実 が 求 め ら れ る 中 、 い わ ゆ る 福 祉 三 法 の 1 つ と し て 制 定 さ れ た も の で あ る 。 そ し て 、 直 近 の 制 度 改 革 で あ る 2012 年 の 「 障 害 者 の 日 常 生 活 及 び 社 会 生 活 を 総 合 的 に 支 援 す る た め の 法 律 」( 障 害 者 総 合 支 援 法 と 略 称 ) の 制 定 は 、 障 害 者 福 祉 制 度 を よ り 充 実 さ せ た 。 現 行 制 度 の 分 析 の 切 り 口 と し て 、 以 下 の 4 点 が 挙 げ ら れ る 。 第 1 に 、障 害 福 祉 サ ー ビ ス の 多 様 化 で あ る 。 初 期 の 障 害 者 福 祉 制 度 で は 、 入 所 ( 通 所 ) 施 設 で の 訓 練 サ ー ビ ス が そ の 中 心 で あ っ た が 、 高 度 経 済 成 長 期 以 降 か ら 、 居 宅 サ ー ビ ス を 中 心 に 多 様 な 障 害 福 祉 サ ー ビ ス が 新 設 さ れ て い っ た 。 第 2 に 、契 約 制 度 の 導 入 で あ る 。2002 年 度 ま で の 障 害 者 福 祉 制 度 は 、地 方 自 治 体 が 事 業 者 に 委 託 す る と い う 形 で サ ー ビ ス を 提 供 す る 措 置 制 度 が 採 ら れ て お り 、利 用 者 は 自 由 に 事 業 者 を 選 択 す る こ と が で き な か っ た 。と こ ろ が 、2003 年 度 に 利 用 者 と 事 業 者 と の 契 約 関 係 に 基 づ い て サ ー ビ ス が 提 供 さ れ る 契 約 制 度 ( 支 援 費 制 度 ) へ と 移 行 し た こ と で 、 利 用 者 は 自 ら 事 業 者 を 選 択 し 、 ニ ー ズ に 即 し た 障 害 福 祉 サ ー ビ ス を 受 け る こ と が 可 能 と な っ た 。 第 3 に 、 居 宅 サ ー ビ ス の 義 務 付 け の 強 化 で あ る 。 日 本 の 障 害 福 祉 サ ー ビ ス の 費 用 は 、 公 費 に よ っ て 賄 わ れ て お り 、 公 費 は 国 と 地 方 自 治 体 ( 都 道 府 県 ・ 市 町 村 等 ) が 負 担 す る 仕 組 み に な っ て い る 。 そ の 際 、 義 務 付 け の 強 い サ ー ビ ス に つ い て は 、 法 律 補 助 ( 根 拠 法 に よ っ て 補 助 が 義 務 付 け ら れ て い る ) と し て 国 庫 負 担 が 行 わ れ る こ と が 多 い 。 こ の 仕 組 み は 、 現 在 に か け て ほ と ん ど 変 わ っ て い な い が 、 補 助 率 の 割 合 に つ い て は 、 大 き く 変 化 し て い る 。 1970 年 代 以 前 の 義 務 付 け の 強 い サ ー ビ ス に 対 す る 補 助 率 は 5 分 の 4 と 非 常 に 高 い も の で あ っ た 。と こ ろ が 、1985 年 度 の「 国 の 補 助 金 等 の 整 理 及 び 合 理 化 並 び に 臨 時 特 例 等 に 関 す る 法 律 」が 施 行 さ れ る と 、補 助 率 は 2 分 の 1 ま で 引 き
2 下 げ ら れ 、 現 在 で も こ の 割 合 が 適 用 さ れ て い る 。 高 率 補 助 金 の 補 助 率 引 き 下 げ は 、 国 と 地 方 の 負 担 割 合 の 適 正 化 と い う 観 点 で 国 の 財 政 当 局 が 主 張 し た 結 果 で あ る が 、当 時 、地 方 財 源 が 国 よ り も 豊 か で あ る と い う 見 方 を 受 け た も の で あ る 。 障 害 者 福 祉 の 場 合 に は 、 国 庫 負 担 の 割 合 が 引 き 下 げ ら れ 、 地 方 負 担 の 割 合 が 大 き く な っ た こ と が 、 地 方 自 治 体 へ の 負 担 転 嫁 の 影 響 は 程 度 は と も か く も あ っ た と い え る 。 障 害 福 祉 サ ー ビ ス の う ち 、 施 設 サ ー ビ ス ( 入 所 に 係 る 費 用 ) は 当 初 か ら 義 務 付 け の 強 い も の と し て 位 置 づ け ら れ て い た が 、 居 宅 サ ー ビ ス に つ い て は 支 援 費 制 度 ま で 義 務 付 け が 弱 い も の と 位 置 づ け ら れ て お り 、 予 算 補 助 ( 根 拠 法 に よ っ て 補 助 が 義 務 付 け ら れ て お ら ず 、 予 算 の 範 囲 内 で 補 助 す る こ と が で き る ) に よ る 2 分 の 1 以 内 ( 1986 年 以 前 は 3 分 の 1 以 内 ) の 国 庫 補 助 が 行 わ れ て い た 。 し か し 、 障 害 者 自 立 支 援 法 の 移 行 に 伴 い 、 居 宅 サ ー ビ ス の 義 務 付 け が 強 化 さ れ る と 、 一 定 の 条 件 ( 後 述 ) の 範 囲 内 で 2 分 の 1 の 法 律 補 助 が 定 め ら れ た 。 す な わ ち 、義 務 付 け の 強 い サ ー ビ ス と 同 等 の 国 庫 負 担 に 引 き 上 げ ら れ た の で あ る 。 こ の 見 直 し に よ っ て 、 義 務 付 け の 強 い サ ー ビ ス が 増 え た こ と で 、 国 の 財 政 負 担 の 基 盤 が 整 い 、 財 源 面 で 障 害 者 福 祉 制 度 は よ り 充 実 す る よ う に な っ た 。 第 4 に 、 サ ー ビ ス 体 系 の 一 元 化 で あ る 。 障 害 者 自 立 支 援 法 以 前 の 障 害 者 福 祉 制 度 は 、 障 害 の 種 別 に よ っ て 根 拠 法 が 違 っ て お り 、 身 体 障 害 者 福 祉 法 、 知 的 障 害 者 福 祉 法 、精 神 保 健 福 祉 法( 精 神 保 健 及 び 精 神 障 害 者 福 祉 に 関 す る 法 律 )」に そ れ ぞ れ 基 づ き 、 障 害 福 祉 サ ー ビ ス が 提 供 さ れ て い た 。 そ の た め 、 障 害 の 種 別 に よ っ て 受 け ら れ な い 障 害 福 祉 サ ー ビ ス が あ る 等 、3 障 害 間 で 格 差 が 存 在 し て い た 。 こ の 格 差 は 契 約 制 度 移 行 後 、 次 第 に 問 題 視 さ れ る よ う に な り 、 障 害 者 自 立 支 援 法 で は そ の 対 策 と し て 、 各 法 に 規 定 さ れ て い た サ ー ビ ス の 多 く が 同 法 に 一 元 化 さ れ た 。 こ れ に よ っ て 、3 障 害 の 障 害 福 祉 サ ー ビ ス が 同 一 の 制 度 か ら 提 供 さ れ る よ う に な っ た 。 こ の よ う に 、 現 行 制 度 に は 評 価 す る べ き 点 が 多 く あ る 反 面 、 重 要 性 の 高 い 制 度 的 課 題 が い く つ か 残 さ れ て い る 。 本 論 は 、 そ れ ら の う ち 、 サ ー ビ ス 給 付 水 準 に 関 わ る 課 題 で あ る 「2 つ の 格 差 」 を 分 析 す る こ と で 、 現 行 制 度 を 成 果 と 課 題
3 の 両 面 か ら 改 め て 評 価 し よ う と し て い る1)。 第 1 に 、 障 害 福 祉 サ ー ビ ス 給 付 水 準 の 世 代 間 格 差 で あ る 。 日 本 で は 、 障 害 者 が 介 護 保 険 適 用 年 齢 に 到 達 す る と 、 介 護 保 険 サ ー ビ ス が 優 先 適 用 さ れ て い る 。 こ れ は 、 一 般 的 に 介 護 保 険 優 先 原 則 と 呼 ば れ て い る 。 と こ ろ が 近 年 、 障 害 福 祉 サ ー ビ ス か ら 介 護 保 険 サ ー ビ ス へ の 移 行 後 に 、 そ の 給 付 量 が 移 行 前 よ り も 低 下 し て し ま う と い う 問 題 が 発 生 し て い る 。 そ し て 、 そ の こ と に よ っ て 、 介 護 保 険 適 用 年 齢 未 満 の 障 害 者 と 、 介 護 保 険 適 用 年 齢 の 障 害 者 と い う 2 つ の 「 世 代 間 」 で 、 障 害 福 祉 サ ー ビ ス 給 付 水 準 の 格 差 が 表 面 化 し つ つ あ る2)。 第 2 に 、 障 害 福 祉 サ ー ビ ス 支 給 量 の 自 治 体 間 格 差 で あ る 。 支 援 費 制 度 以 降 、 居 宅 サ ー ビ ス で あ る ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス の 支 給 量 の 自 治 体 間 格 差 が 発 生 し た 。 そ の 後 、 障 害 者 自 立 支 援 法 や 障 害 者 総 合 支 援 法 で は 、 格 差 縮 小 の 取 り 組 み が 強 化 さ れ た も の の 、 そ の 正 確 な 実 態 に つ い て は 明 ら か に さ れ て い な い 。 ま た 、 こ れ ら 2 つ の 格 差 を 研 究 す る 上 で 大 き な 障 壁 が あ る 。 1 つ は 障 害 福 祉 サ ー ビ ス に 関 わ る デ ー タ が 少 な い こ と で あ り 、 も う 1 つ は そ の こ と が 、 格 差 の 定 量 的 分 析 を 困 難 に し て い る こ と で あ る 。 こ れ は 、 そ れ ぞ れ の 先 行 研 究 に お い て 、 定 量 的 分 析 が 全 く 行 わ れ て い な い こ と か ら も 明 ら か で あ る 。 例 え ば 、 世 代 間 格 差 の 先 行 研 究 と し て 、 山 崎 (2013)・ 白 沢 ( 2014)・ 荻 原 (2015) 等 が 挙 げ ら れ る が 、 そ れ ら は 格 差 の 要 因 と な る 制 度 的 差 異 を 理 論 的 に 示 唆 す る に と ど め て い る 。 そ の 一 方 で 、 自 治 体 間 格 差 の 先 行 研 究 は 非 常 に 少 な く 、 筆 者 が 知 る 限 り で は 、 財 政 負 担 の 仕 組 み と 格 差 と の 関 係 性 を 理 論 的 に 示 し た 岡 部 (2004) の み で あ る 。 ま た 、 研 究 史 の 側 面 か ら 見 る と 、 定 量 的 分 析 が 全 く 行 わ れ て い な い こ と は 、 デ ー タ の 少 な さ だ け で な く 、 障 害 者 福 祉 分 野 で 定 量 的 分 析 を 扱 う 研 究 者 が 少 な い こ と が 影 響 し て い る よ う に 見 え る 。 勝 又 (2014a) は 、 障 害 者 福 祉 分 野 に お け る 、 社 会 科 学 分 野 か ら の 研 究 者 の 参 入 は 、 障 害 者 自 立 支 援 法 施 行 後 か ら 増 加 1) そ の た め 本 論 で は 、 障 害 者 に 対 す る 所 得 保 障 や 労 働 施 策 と い っ た サ ー ビ ス 給 付 に 関 わ ら な い 部 分 は 、 分 析 の 対 象 外 と な っ て い る 。 2) 本 論 に お け る 「 世 代 間 格 差 」 は 、 一 般 論 で 使 わ れ る 世 代 間 格 差 と は 少 し ニ ュ ア ン ス が 違 っ て い る 。 こ の 点 に つ い て は 、 第 2 章 1 節 を 参 照 の こ と 。
4 し た も の の 、 高 齢 者 福 祉 と 比 べ る と 依 然 と し て 限 定 的 で あ る と 述 べ て い る 。 ま た 勝 又 (2014a) は 、 そ の 背 景 と し て 、 デ ー タ の 少 な さ が 定 量 的 分 析 手 法 を 用 い る 社 会 科 学 分 野 か ら の 研 究 者 の 参 入 を 阻 ん で い る こ と を 指 摘 し て い る3)。 そ こ で 本 論 で は 、 世 代 間 格 差 に つ い て は 理 論 的 分 析 に よ る 格 差 発 生 メ カ ニ ズ ム の 解 明 、 自 治 体 間 格 差 に つ い て は 、 分 析 対 象 の 範 囲 を 限 定 し た 定 量 的 分 析 に よ る 実 態 の 解 明 と い う 、 そ れ ぞ れ 異 な っ た ア プ ロ ー チ に よ っ て 、 こ の 障 壁 を 乗 り 越 え よ う と し て い る 。 2. 分 析 の 視 点 と 各 章 の 要 約 第 1 章 で は 、障 害 者 福 祉 制 度 の 展 開 を 辿 る こ と で 、 過 去 の 制 度 改 革 が 現 行 制 度 の 成 果 と 課 題 に ど う 影 響 し た の か 分 析 し た 。 第 2 章 で は 、 世 代 間 格 差 発 生 の メ カ ニ ズ ム を 、 制 度 的 観 点 か ら 分 析 し た 。 分 析 手 法 と し て は 、 ま ず 、 障 害 者 総 合 支 援 法 と 介 護 保 険 制 度 を 比 較 す る こ と で 、 そ れ ら の 制 度 的 差 異 が 世 代 間 格 差 に ど の よ う に 影 響 し て い る か を 分 析 し た 。 次 に 、 世 代 間 格 差 の 補 填 的 役 割 を 担 っ て い る 障 害 福 祉 サ ー ビ ス の 上 乗 せ が 、 一 部 の 団 体 で う ま く 機 能 し て い な い 原 因 を 、 財 政 負 担 の 観 点 か ら 考 察 し た 。 最 後 に 、 こ れ ら の 分 析 に 基 づ き 、 世 代 間 格 差 解 消 の あ り 方 に つ い て 論 じ た 。 第 3 章 で は 、 自 治 体 間 格 差 の 実 態 と そ の 要 因 を 明 ら か に す る た め に 、 定 量 的 分 析 を 用 い て 分 析 し た 。 分 析 手 法 と し て は 、 第 1 に 、 都 道 府 県 及 び 大 規 模 都 市 ( 中 核 市 ・ 政 令 指 定 都 市 ) の デ ー タ か ら タ イ ル 尺 度 を 算 出 す る こ と で 、 自 治 体 間 格 差 の 実 態 を 明 ら か に し た 。 第 2 に 、 自 治 体 間 格 差 が 財 政 力 の 差 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ て い る か 検 証 す る た め に 、 兵 庫 県 内 26 市 の ク ロ ス セ ク シ ョ ン デ ー タ と 、大 規 模 都 市 62 団 体 の パ ネ ル デ ー タ を 用 い て タ イ ル 尺 度 の 要 因 分 解 を 行 っ た 。 さ ら に 、 前 者 の デ ー タ を 用 い た 回 帰 分 析 と 後 者 の デ ー タ を 用 い た パ ネ ル 分 析 を 行 っ た 。 終 章 で は 、 こ れ ら の 分 析 を 踏 ま え て 、 現 行 制 度 の 基 盤 と な っ た 障 害 者 自 立 支 援 法 の 制 度 設 計 に つ い て 、 成 果 と 課 題 の 両 面 か ら 評 価 し た 。 ま た 、 本 論 で は 網 3) 勝 又 ( 2014a) ,p.80.
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6 第 1 章 障 害 者 福 祉 制 度 の 近 代 化 と 制 度 改 革 1. 障 害 者 福 祉 制 度 運 営 の 経 緯 現 行 制 度 の 成 果 は 、 半 世 紀 に も 及 ぶ 制 度 改 革 の 積 み 重 ね に よ っ て も た ら さ れ た も の で あ る 。 し か し 、 制 度 改 革 の 方 向 性 は 常 に 不 変 で あ っ た わ け で は な く 、 様 々 な 歴 史 的 背 景 の 中 で そ の 方 向 性 を 変 え な が ら 実 行 さ れ て い っ た 。 序 章 で 指 摘 し た 現 行 制 度 の 成 果 と 課 題 を 真 の 意 味 で 理 解 す る た め に は 、 複 雑 極 ま り な い 制 度 展 開 を 整 理 す る 必 要 が あ る 。 そ こ で 本 章 で は 、 制 度 展 開 を 、 以 下 の 2 つ の 時 期 区 分 ( 転 換 ) に 分 け て 、 現 行 制 度 の 成 果 と 課 題 に ど う 繋 が っ て い っ た の か 、 整 理 し よ う と し て い る4)。 第 1 に 、 施 設 サ ー ビ ス 中 心 か ら 居 宅 サ ー ビ ス 中 心 へ の 施 策 方 針 の 転 換 、 第 2 に 措 置 制 度 か ら 契 約 制 度 へ の 移 行 で あ る 。第 1 の 転 換 は 、1973 年 の オ イ ル シ ョ ッ ク を 起 点 と し た も の で あ っ た 。 オ イ ル シ ョ ッ ク 以 前 の 障 害 者 福 祉 施 策 は 、 施 設 サ ー ビ ス が 中 心 で あ り 、 更 生 援 護 施 設 へ の 入 所 ( 通 所 ) に よ る 訓 練 サ ー ビ ス が 重 点 的 に 行 わ れ て い た 。 し か し 、 オ イ ル シ ョ ッ ク 以 降 の 不 況 に 伴 う 国 家 財 政 の 急 激 な 悪 化 に よ り 、 政 府 は 多 額 の 公 費 を 投 入 す る 施 設 サ ー ビ ス 中 心 か ら 、 居 宅 サ ー ビ ス 中 心 に 施 策 方 針 を 切 り 替 え る こ と で 公 費 の 抑 制 を 図 っ た5)。 第 2 の 転 換 は 、社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 を 起 点 と し た も の で あ っ た 。2002 年 度 ま で の 障 害 者 福 祉 施 策 は 、 措 置 制 度 で あ っ た 。 措 置 制 度 と は 、 地 方 自 治 体 が 利 用 者 の 申 請 を 受 け て サ ー ビ ス の 支 給 決 定 や 事 業 者 の 選 択 を 行 い 、「 措 置 」と し て サ ー ビ ス を 提 供 す る 制 度 で あ る 。と こ ろ が 、1998 年 の 中 央 社 会 福 祉 審 議 会 社 会 福 祉 構 造 改 革 分 科 会 の 「 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 に つ い て ( 中 間 ま と め )」 に て 、 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 が 提 唱 さ れ た の を 皮 切 り に 、 社 会 福 祉 サ ー ビ ス の 契 約 制 度 移 行 の 検 討 が 行 わ れ る よ う に な っ た6)。こ の 検 討 を 受 け て 、2003 年 度 に 障 害 者 福 祉 制 度 は 、 措 置 制 度 か ら 契 約 制 度 で あ る 支 援 費 制 度 へ と 移 行 し た 。 4) 以 下 の 時 期 区 分 の 解 説 は 、 室 田 ( 2006) を 参 考 に し つ つ 、 障 害 者 福 祉 の 観 点 を 取 り 入 れ た も の と な っ て い る 。 5) 室 田 ( 2006) ,p.125. 6) 室 田 ( 2006) ,p.126.
7 こ れ ら 2 つ の 時 期 区 分 を 用 い た 分 析( 整 理 ) 手 法 そ の も の は 、 通 説 的 で あ る が 、序 章 で 指 摘 し た 2 つ の 制 度 的 課 題 と の 繋 が り に つ い て 着 目 し て い る 先 行 研 究 は 皆 無 で あ り 、 本 研 究 は 、 こ の 点 で 独 自 性 が あ る と 言 え る 。 2. 障 害 者 福 祉 制 度 の 確 立 戦 前 の 日 本 は 、 社 会 福 祉 と い う 概 念 が 確 立 さ れ て お ら ず 、 貧 困 者 に 対 す る 救 貧 施 策 が 細 々 と 行 わ れ て い た 。 そ の た め 、 障 害 者 福 祉 制 度 は 、 確 立 し た 分 野 に は な っ て い な か っ た7)。 と こ ろ が 、 敗 戦 後 、 日 本 国 憲 法 が 1947 年 に 施 行 さ れ る と 、 社 会 福 祉 の 概 念 が 憲 法 第 25 条 の 生 存 権 規 定 に よ っ て 確 立 さ れ た8)。 そ の 後 、「 社 会 福 祉 三 法 」 の 1 つ で あ る 身 体 障 害 者 福 祉 法 が 1949 年 に 制 定 さ れ た こ と で 、 よ う や く 障 害 者 福 祉 制 度 が 誕 生 し た の で あ る9)。 身 体 障 害 者 福 祉 法 の 制 定 に よ っ て 確 立 さ れ た 障 害 者 福 祉 制 度 は 、 更 生 援 護 施 設 で の 訓 練 サ ー ビ ス 等 の 施 設 サ ー ビ ス を 中 心 に 施 策 を 展 開 し て い っ た10)。 そ の 背 景 に は 、 当 初 の 障 害 者 福 祉 制 度 の 目 的 が 、 障 害 者 に 対 す る 更 生 の 援 護 と さ れ て い た こ と が 挙 げ ら れ る 。 7) 戦 前 の 主 な 障 害 者 施 策 は 、 救 貧 施 策 に よ る 貧 困 に 陥 っ た 障 害 者 へ の 救 済 、 傷 痍 軍 人 援 護 施 策 に よ る 戦 傷 で 障 害 を 負 っ た 者 へ の 社 会 復 帰 援 護 と い う 形 で 行 わ れ て お り 、 障 害 者 福 祉 制 度 と し て 確 立 さ れ た も の で は な か っ た 。 戦 前 の そ れ ら 施 策 の 経 緯 に つ い て は 参 考 資 料 「 障 害 者 施 策 の 展 開 」( 巻 末 年 表 ) を 参 照 の こ と 。 年 表 か ら は ① 救 貧 施 策 は 恤 救 規 則 か ら 救 護 法 へ の 移 行 に 伴 い 充 実 強 化 さ れ た こ と 、 ② 傷 痍 軍 人 援 護 施 策 は 当 初 恩 給 制 度 の み で あ っ た が 、 大 正 期 以 降 は 廃 兵 院 法 に よ る 収 容 保 護 施 設 の 設 置 や 、 軍 事 救 護 法 に よ る 扶 助 と い っ た 様 々 な 援 護 制 度 が 誕 生 し て い っ た こ と が 読 み 取 れ る 。 8) 日 本 国 憲 法 第 25 条 2 項 「 国 は 、 す べ て の 生 活 部 面 に つ い て 、 社 会 福 祉 、 社 会 保 障 及 び 公 衆 衛 生 の 向 上 及 び 増 進 に 努 め な け れ ば な ら な い 」 9) 以 降 の 記 述 は 、 身 体 障 害 者 福 祉 法 の 条 文 ( の 変 遷 ) を 基 に 、 戦 後 の 制 度 展 開 を 整 理 し た も の で あ る 。 10) ま た 、 こ の 頃 、 労 働 施 策 か ら の 障 害 者 援 護 も 行 わ れ る よ う に な っ た 。 そ の 1 つ が 、 職 業 安 定 法 で あ り 、 障 害 者 を 含 め た 求 職 者 に 対 し て 、 公 共 職 業 安 定 所 に よ る 職 業 紹 介 ( 指 導 ) や 施 設 で の 職 業 訓 練 が 規 定 さ れ た 。 そ の 後 、 職 業 訓 練 に つ い て は 職 業 訓 練 法 ( 現 : 職 業 能 力 開 発 促 進 法 ) が そ の 根 拠 法 と な っ た 。 も う 1 つ は 、 身 体 障 害 者 雇 用 促 進 法 ( 現 : 障 害 者 の 雇 用 の 促 進 等 に 関 す る 法 律 ) で あ り 、 民 間 企 業 に 対 し て 障 害 者 雇 用 ( 政 令 で 定 め ら れ た 割 合 に 応 じ た 人 数 ) の 努 力 義 務 (1987 年 の 現 行 法 制 定 時 に 義 務 化 ) が 規 定 さ れ た 。( 巻 末 年 表 を 参 照 )
8 こ こ で 言 わ れ て い る 更 生 と は 、経 済 活 動 へ の 参 加( 復 帰 )、す な わ ち 、経 済 的 自 立 を 指 し て い る 。 つ ま り 、 経 済 的 自 立 を す る た め の 訓 練 ( 援 護 ) が 障 害 者 福 祉 サ ー ビ ス の 主 な 使 命 で あ る と さ れ て い た の で あ る 。 そ の よ う な 意 図 か ら 身 体 障 害 者 福 祉 法 で は 、第 1 条 に て 、「 更 生 の 援 助 」が 同 法 の 目 的 で あ る と し た 上 で 、 以 下 の 更 生 援 護 施 設 で の 訓 練 サ ー ビ ス が 規 定 さ れ た11)。第 1 に 、身 体 障 害 者 更 生 援 護 施 設( の ち に 肢 体 不 自 由 者 更 生 施 設 に 改 称 ) で あ り 、 身 体 機 能 及 び 労 働 能 力 を 回 復 さ せ る た め の 医 学 的 、 職 業 的 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン が 行 わ れ た 。 第 2 に 、 障 害 者 収 用 授 産 施 設 ( の ち に 収 用 が 取 り 除 か れ る ) で あ り 、 就 労 が 困 難 な 障 害 者 に 対 す る 就 労 機 会 の 提 供 や 、 技 能 訓 練 が 行 わ れ た 。 第 3 に 、 中 途 失 明 者 更 生 施 設 ( の ち に 失 明 者 更 生 施 設 に 改 称 ) で あ り 、 後 天 的 に 失 明 し た 者 に 対 す る 社 会 復 帰 の た め の 訓 練 が 行 わ れ た 。 他 に も 、 義 肢 の 製 作 及 び 修 理 を 行 う 義 肢 用 具 製 作 施 設 、 点 字 図 書 館 及 び 点 字 施 設 が 規 定 さ れ た 。さ ら に 、1954 年 に は 聴 覚 障 害 者 等 の 更 生 援 護 施 設 と し て 、ろ う あ 者 更 生 施 設 が 追 加 さ れ た 。 た だ し 、 当 初 の 各 種 更 生 施 設 及 び 収 用 授 産 施 設 は 、 施 設 入 所 が 前 提 と な っ て お り 、 現 在 の よ う な 通 所 利 用 は 認 め ら れ て お ら ず 、 在 宅 生 活 者 が 訓 練 サ ー ビ ス を 受 け る こ と は で き な か っ た 。 ま た 、更 生 援 護 施 設 の 入 所 の 可 否 の 判 断 や 、施 設 の 選 択 に つ い て は 、2000 年 施 行 の 地 方 分 権 一 括 法 以 前 は 、 地 方 自 治 体 の 機 関 委 任 事 務 と さ れ 、 都 道 府 県 設 置 の 施 設 の 場 合 は 都 道 府 県 知 事 に 、 市 長 村 設 置 の 施 設 の 場 合 は 市 町 村 長 に 委 任 さ れ た 。こ の よ う な 地 方 自 治 体 側 が サ ー ビ ス の 内 容 を 決 定 す る シ ス テ ム は 、「 措 置 制 度 」 と 呼 ば れ た 。 ま た 、 入 所 に 係 る 費 用 は 、 更 生 援 護 施 設 を 設 置 し た 地 方 自 治 体( 都 道 府 県 、も し く は 市 町 村 )の 負 担 で あ っ た が 、法 律 補 助 と し て 、5 分 の 4 の 国 庫 負 担 を 受 け る こ と が で き た12)。 さ ら に 、更 生 援 護 施 設 の 経 営( 運 営 )は 、1951 年 に 制 定 さ れ た 社 会 福 祉 事 業 11) 1960 年 に 制 定 さ れ た 精 神 薄 弱 者 福 祉 法 ( 現 : 知 的 障 害 者 福 祉 法 ) の 第 1 条 に お い て も 、 そ の 目 的 は 「 更 生 の 援 助 」 で あ る と 規 定 さ れ て い る 。 12) こ の 補 助 率 は 1951 年 の 改 正 で 定 め ら れ た も の で 、 改 正 前 は 、 都 道 府 県 設 置 の 施 設 の み が 5 分 の 4 の 国 庫 負 担 の 対 象 で あ っ た 。 市 町 村 設 置 の 施 設 に 対 し て は 、 都 道 府 県 が 10 分 の 9 を 負 担 し 、 う ち 10 分 の 8 は 都 道 府 県 に 対 す る 国 庫 負 担 と い う 形 で 国 が 負 担 し て い た 。
9 法 ( 現 : 社 会 福 祉 法 ) に お け る 第 1 種 社 会 福 祉 事 業 と み な さ れ て お り 、 原 則 的 に は 、 国 や 地 方 公 共 団 体 が 経 営 、 あ る い は 地 方 自 治 体 が 社 会 福 祉 法 人 ( 社 会 福 祉 事 業 所 ) に 委 託 す る べ き も の と さ れ て い た 。 こ の よ う に 初 期 の 障 害 者 福 祉 施 策 は 、現 在 と 比 べ る と 限 定 的 な 内 容 で あ っ た 。 さ ら に 、知 的 障 害 者 や 精 神 障 害 者 は 制 度 の 対 象 外 と み な さ れ て い な か っ た た め 、 現 在 の よ う に 全 て の 障 害 者 が 障 害 福 祉 サ ー ビ ス を 享 受 す る こ と が で き な か っ た 。 3. 第 1 の 転 換 : 施 策 方 針 の 転 換 ―施 設 サ ー ビ ス か ら 居 宅 サ ー ビ ス へ ― 3.1 施 設 サ ー ビ ス 中 心 の 施 策 展 開 初 期 の 障 害 者 福 祉 制 度 は 、 施 設 サ ー ビ ス 中 心 の 施 策 方 針 が 採 ら れ て い た が 、 高 度 経 済 成 長 期 に 入 っ て も そ の 施 策 方 針 は 続 け ら れ 、 施 設 サ ー ビ ス の 充 実 が 図 ら れ た 。 最 初 に 行 わ れ た の は 更 生 援 護 施 設 に お け る 通 所 利 用 の 認 可 で あ る 。1967 年 に 身 体 障 害 者 福 祉 法 の 改 正 に よ っ て 、 通 所 利 用 が 規 定 さ れ 、 在 宅 生 活 者 も 訓 練 サ ー ビ ス を 受 け る こ と が 可 能 に な っ た 。 さ ら に 、 そ の 翌 年 に は 、 新 し い サ ー ビ ス と し て 、 更 生 訓 練 費 の 給 付 が 規 定 さ れ た 。 こ れ は 更 生 援 護 施 設 の 入 所 者 及 び 通 所 者 に 対 し て 、 訓 練 に 必 要 な 費 用 や 物 品 、 交 通 費 等 を 給 付 す る も の で あ る 。 訓 練 費 の 規 定 は 、 通 所 利 用 を よ り 促 進 さ せ る だ け で な く 、 多 様 な 訓 練 を 行 う こ と が 可 能 に な っ た 。 次 に 、知 的 障 害 者 が 施 設 サ ー ビ ス の 対 象 と し て 加 え ら れ た 。1960 年 に 、精 神 薄 弱 者 福 祉 法 ( 現 : 知 的 障 害 者 福 祉 法 ) が 制 定 さ れ る と 、 更 生 援 護 施 設 と し て 精 神 薄 弱 者 援 護 施 設 が 規 定 さ れ た 。同 施 設 は 、18 歳 以 上 の 知 的 障 害 者 を 施 設 に 収 容 し 、 経 済 的 自 立 の た め に 必 要 な 指 導 や 訓 練 を 行 う も の と さ れ た13)。 こ れ に よ っ て 、 知 的 障 害 者 も 更 生 援 護 施 設 で の 訓 練 サ ー ビ ス を 受 け る こ と が 可 能 に な っ た 。 し か し そ の 一 方 で 、 精 神 障 害 者 に つ い て は 、 入 院 を 中 心 と し た 医 療 措 置 13) 18 歳 未 満 の 場 合 、 児 童 福 祉 法 に 規 定 さ れ た 精 神 薄 弱 児 施 設 で 、 指 導 や 訓 練 を 受 け る 。
10 の 対 象 と さ れ て い た の で 、 障 害 者 福 祉 制 度 の 対 象 外 で あ っ た14)。 ま た 、 こ の 頃 、 障 害 者 に 対 す る 介 護 サ ー ビ ス が 創 設 さ れ る よ う に な っ た 。 初 期 の 障 害 者 福 祉 制 度 は 、 更 生 援 護 施 設 で の 訓 練 サ ー ビ ス を 重 点 に 置 い た も の で あ り 、 介 護 サ ー ビ ス は 存 在 し て い な か っ た 。 そ の た め 、 介 護 を 必 要 と す る 障 害 者 は 、 家 族 介 護 者 が 引 き 受 け ざ る を 得 な か っ た 。 と こ ろ が 、 高 度 経 済 成 長 に 伴 う 労 働 力 の 不 足 に よ り 、 家 族 介 護 の 担 い 手 と さ れ た 女 性 の 労 働 市 場 の 参 入 が 活 発 に 行 わ れ る よ う に な る と 、 平 均 世 帯 人 数 が 減 少 し 始 め た こ と も 相 ま っ て 、 家 庭 内 で の 介 護 は 次 第 に 困 難 な も の に な り 、 そ の 代 替 と し て の 公 的 な 介 護 サ ー ビ ス が 求 め ら れ る よ う に な っ た15)。 そ こ で 、 政 府 は 2 つ の 介 護 サ ー ビ ス を 創 設 し た 。 第 1 に 、 入 所 施 設 で の 介 護 サ ー ビ ス が 創 設 さ れ た 。 初 期 の 障 害 者 福 祉 制 度 で は 経 済 的 自 立 が 重 視 さ れ て お り 、 労 働 能 力 の 回 復 が 望 め な い 重 度 障 害 者 に 対 す る 援 護 は あ ま り 考 慮 さ れ て い な か っ た 。 そ の た め 、 重 度 障 害 者 に 対 す る 介 護 サ ー ビ ス は 存 在 し て お ら ず 、 そ の 代 替 と し て 、 生 活 保 護 法 に 規 定 さ れ た 救 護 施 設 内 で の 介 護 が 行 わ れ て い た 程 度 で あ っ た16)。 高 度 経 済 成 長 期 に 入 る と 、 日 本 心 身 障 害 児 協 会 や 重 度 心 身 障 害 児 を 守 る 会 等 の 障 害 者 団 体 が 誕 生 し 、 重 度 障 害 児 に 対 す る 福 祉 制 度 の 創 設 を 求 め る 運 動 が 活 発 化 し た 。こ れ ら の 運 動 を 受 け て 、政 府 は 重 度 障 害 者 に 対 す る 福 祉 制 度 と し て 、 コ ロ ニ ー 政 策 を 推 進 し た 。 コ ロ ニ ー 政 策 と は 重 度 障 害 者 を 国 立 コ ロ ニ ー 等 の 専 門 施 設 に 収 容 し 、 介 護 や 医 療 等 の 必 要 な 保 護 及 び 生 産 活 動 を 、 施 設 内 で 行 う と 14) 戦 前 の 精 神 障 害 者 施 策 は 、 精 神 病 者 監 護 法 に よ っ て 明 文 化 さ れ た 保 護 者 に よ る 私 宅 監 置 と 、 精 神 病 院 法 に 基 づ く 精 神 病 院 へ の 入 院 の 2 つ が 行 わ れ て い た 。 戦 後 、 こ の 2 つ の 法 律 は 、 1950 年 に 廃 止 さ れ 、 精 神 衛 生 法 が 新 た に 制 定 さ れ た 。 同 法 は 、 戦 前 の 私 宅 監 置 を 禁 止 す る 一 方 で 、 精 神 病 院 法 の 方 向 性 を 受 け つ い だ も の と な っ て い た 。( 巻 末 年 表 を 参 照 ) 15)「1980 年 代 頃 か ら 産 業 構 造 の 機 軸 が 重 化 学 工 業 か ら 知 識 産 業 ・ サ ー ビ ス 業 へ と シ フ ト し て い く 。( 中 略 ) し か し 、 重 化 学 工 業 を 基 礎 と す る 工 業 社 会 が 終 わ り を 告 げ る と 、 男 性 中 心 の 労 働 市 場 が 崩 れ 、 女 性 が 大 量 に 労 働 市 場 に 進 出 し て い く こ と に な る 。 こ れ を メ ダ ル の 裏 側 か ら 表 現 す る と 、 家 族 内 部 で ケ ア を 担 っ て い た 女 性 の 無 償 労 働 が 消 え て い く こ と を 意 味 す る 。 そ う な る と ケ ア と い う 支 援 な し に は 生 活 で き な い 者 は 生 活 不 可 能 な 状 態 に 陥 る 」( 上 野 ・ 大 熊 ・ 大 沢 ・ 神 野 ・ 副 田 (2008) ,p.7)。 16) 宇 山 ( 1998) ,p.25.
11 い う も の で あ っ た 。 同 施 策 の 根 拠 法 は 、児 童 福 祉 法 で あ り 、1967 年 の 改 正 に よ り 重 度 障 害 児 の 保 護 及 び 治 療 、 日 常 生 活 指 導 を 目 的 と し た 重 症 心 身 障 害 児 施 設 が 規 定 さ れ た 。 ま た 、 都 道 府 県 知 事 が 必 要 と 認 め た 場 合 は 18 歳 以 上 の 者 も 入 所 可 能 と し 、 国 立 療 養 所 に 業 務 を 委 託 す る こ と が 認 め ら れ た 。 こ の よ う な コ ロ ニ ー 政 策 に 基 づ き 、 国 立 重 症 心 身 障 害 児 ( 者 ) 施 設 が 全 国 の 国 立 療 養 所 等 に 11 ヶ 所 、 520 床 用 意 さ れ た17)。 さ ら に 、1972 年 の 身 体 障 害 者 福 祉 法 の 改 正 に よ っ て 、 身 体 障 害 者 療 護 施 設 が 更 生 援 護 施 設 の 1 つ し て 追 加 さ れ た 。 同 施 設 で は 、 常 時 の 介 護 を 必 要 と す る 者 に 対 す る 施 設 内 で の 治 療 及 び 養 護 が 行 わ れ た 。 第 2 に 、 居 宅 で の 介 護 サ ー ビ ス が 創 設 さ れ た 。 政 府 は 1967 年 に 身 体 障 害 者 福 祉 法 の 改 正 を 行 い 、 現 在 の 障 害 者 ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス の 前 身 で あ る 身 体 障 害 者 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 が 規 定 さ れ た 。 同 事 業 は 、 機 関 委 任 事 務 と さ れ た 施 設 サ ー ビ ス と 違 い 、 市 町 村 の 固 有 事 務 と さ れ 、 国 の 費 用 負 担 は 、 予 算 補 助 と し て 3 分 の 1 以 内 の 国 庫 補 助 を 受 け る こ と が で き た 。 ま た 、 都 道 府 県 が 費 用 の 3 分 の 1 以 内 の 負 担 を す る こ と が 定 め ら れ て い た 。 つ ま り 、 市 町 村 の 費 用 負 担 は 、 予 算 の 範 囲 内 で 3 分 の 1 と な っ て お り 、 施 設 サ ー ビ ス の 負 担 ( 5 分 の 1) よ り も 重 い も の と な っ て い た 。 同 事 業 の 対 象 は 低 所 得 世 帯 、 す な わ ち 非 課 税 世 帯 の 身 体 障 害 者 に 限 定 さ れ て い た 。 ま た 、 サ ー ビ ス の 内 容 は 現 在 の ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス の よ う に 身 体 介 護 が 主 眼 に 置 か れ た も の で は な く 、 日 常 生 活 上 の 世 話 で あ り 、 現 在 で 言 う 家 事 援 助 を 主 と し て い た 。 こ れ ら の 介 護 サ ー ビ ス の 創 設 に よ っ て 、 障 害 者 は 居 宅 と 施 設 の 両 方 で 介 護 サ ー ビ ス を 受 け る こ と が で き る よ う に な っ た 。 し か し 、 当 時 の 身 体 障 害 者 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 は 、 非 課 税 世 帯 の 身 体 障 害 者 に 対 象 を 絞 っ て い た 上 に 、 家 事 援 助 中 心 の 内 容 で あ っ た た め 、 重 度 障 害 者 の 利 用 を 想 定 し た も の で は な か っ た 。 17) 小 島 ( 1970) ,p.118.
12 さ ら に 、 介 護 サ ー ビ ス を 提 供 す る 事 業 所 の 経 営 は 、 他 の 障 害 福 祉 サ ー ビ ス と 同 様 に 社 会 福 祉 事 業 法 の 第 1 種 社 会 福 祉 事 業 に 位 置 付 け ら れ て い た の で 、 社 会 福 祉 法 人( 社 会 福 祉 事 業 所 )以 外 の 民 間 事 業 者 に 委 託 す る こ と は で き な か っ た 。 3.2 居 宅 サ ー ビ ス 中 心 へ の 転 換 オ イ ル シ ョ ッ ク に よ る 財 政 悪 化 に 伴 い 、 施 策 方 針 は 、 施 設 サ ー ビ ス 中 心 か ら 居 宅 サ ー ビ ス 中 心 へ と 方 針 転 換 し 、 次 の 2 つ の 観 点 か ら 居 宅 サ ー ビ ス の 充 実 が 図 ら れ る よ う に な っ た 。 こ の 施 策 方 針 の 転 換 は 、 北 欧 を 発 祥 と す る ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン 思 想 が 日 本 に 入 っ て き た こ と も 影 響 し て い た 。 ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン と は 、「 障 害 者 を で き る 限 り 通 常 の 人 々 と 同 様 な 生 活 を お く れ る よ う に す る こ と 」 で あ り 、 日 本 に お い て は 、 障 害 者 の 脱 施 設 と い う 形 で 障 害 者 施 策 に 反 映 さ れ た18)。 第 1 に 、短 期 入 所 サ ー ビ ス と し て 、障 害 児( 者 )緊 急 保 護 事 業 が 創 設 さ れ た 。 同 事 業 は 1976 年 に 創 設 さ れ 、 介 護 者 が 一 時 的 に 介 護 不 能 に 陥 っ た 場 合 に 対 し て 、 緊 急 の 施 設 保 護 を 行 う と い う 内 容 で あ っ た 。 そ の 後 、 障 害 者 短 期 入 所 事 業 へ と 改 称 さ れ 、 現 在 の 障 害 者 短 期 入 所 サ ー ビ ス の 前 身 と な っ た 。 さ ら に 、4 年 後 の 1980 年 に 、通 所 介 護 サ ー ビ ス と し て 、在 宅 障 害 者 デ イ サ ー ビ ス 事 業 が 創 設 さ れ た 。 通 所 介 護 と は 、 日 帰 り で 施 設 に 通 所 し 、 施 設 内 で 入 浴 や 排 せ つ 等 の 身 体 介 護 や 創 作 活 動 等 の レ ク リ エ ー シ ョ ン を 行 う サ ー ビ ス で あ り 、 現 在 の 生 活 介 護 サ ー ビ ス の 前 身 で あ っ た 。 ま た 、 こ れ ら の 居 宅 サ ー ビ ス の 財 政 負 担 は 、 身 体 障 害 者 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 と 同 じ も の と な っ て い た 。 さ ら に 、 居 宅 サ ー ビ ス を 提 供 す る 事 業 所 の 経 営 は 、 第 1 種 社 会 福 祉 事 業 に 位 置 付 け ら れ て お り 、 既 存 の サ ー ビ ス と 同 じ く 、 社 会 福 祉 法 人 ( 社 会 福 祉 事 業 所 ) 以 外 の 民 間 事 業 者 に 委 託 す る こ と は で き な か っ た 。 第 2 に 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 の 対 象 が 拡 大 さ れ た 。 今 ま で 同 事 業 の 対 象 は 、 非 課 税 世 帯 と な っ て い た が 、 全 世 帯 へ と 対 象 範 囲 が 拡 大 さ れ た 。 ま た 、 非 課 税 世 帯 以 外 の 利 用 者 に 対 し て 自 己 負 担 が 求 め ら れ た 。 負 担 形 式 は 応 能 負 担 で 、 前 年 18) 昭 和 56 年 版 厚 生 白 書 ,p.13.
13 の 所 得 課 税 年 額 が 30,000 円 未 満 の 者 は 費 用 基 準 額 の 2 分 の 1 を 、 30,000 円 以 上 の 者 は 費 用 基 準 額 の 全 額 を 負 担 す る こ と に な っ た19)。 こ の よ う な 新 し い 居 宅 サ ー ビ ス が 誕 生 す る 一 方 で 、既 存 の 居 宅 サ ー ビ ス に は 、 2 つ の 課 題 が あ り 、 そ れ ら の 対 応 策 と し て 様 々 な 制 度 改 革 が 行 わ れ た 。 第 1 の 課 題 は 、居 宅 サ ー ビ ス の 費 用 に 対 す る 市 町 村 負 担 が 、 施 設 サ ー ビ ス よ り も 重 い も の と な っ て い た こ と で あ る 。 ま た 、 そ れ に よ っ て 、 居 宅 サ ー ビ ス の 普 及 が 伸 び 悩 ん で い る の で は な い か と い う 指 摘 が 挙 が っ て い た20)。 こ の 問 題 に つ い て は 、 財 政 負 担 の 見 直 し に よ っ て 解 決 が 図 ら れ た 。 最 初 に 行 わ れ た の は 、施 設 サ ー ビ ス の 補 助 率 の 見 直 し で あ っ た 。1985 年 に 施 行 さ れ た 「 国 の 補 助 金 等 の 整 理 及 び 合 理 化 並 び に 臨 時 特 例 等 に 関 す る 法 律 」 に よ り 、 施 設 サ ー ビ ス ( 入 所 に 係 る ) の 費 用 に 対 す る 国 庫 負 担 の 補 助 率 は 5 分 の 4 か ら 2 分 の 1 ま で 引 き 下 げ ら れ た21)。 市 町 村 と 都 道 府 県 の 負 担 は そ れ ぞ れ 4 分 の 1 と な っ た 。 次 に 行 わ れ た の は 、 施 設 サ ー ビ ス と 居 宅 サ ー ビ ス の 団 体 委 任 事 務 化 で あ る 。 翌 年 に 制 定 さ れ た 「 地 方 公 共 団 体 の 執 行 機 関 が 国 の 機 関 と し て お こ な う 事 務 の 整 理 及 び 合 理 化 に 関 す る 法 律 」 に よ り 、 身 体 障 害 者 、 精 神 薄 弱 者 福 祉 法 に 定 め ら れ た 障 害 福 祉 サ ー ビ ス の 多 く が 、 機 関 委 任 事 務 か ら 団 体 委 任 事 務 に 位 置 付 け ら れ る よ う に な っ た22)。 団 体 委 任 事 務 と は 、 国 が 都 道 府 県 や 市 町 村 等 の 地 方 自 治 体 に 委 任 す る 事 務 で あ る 。 身 体 障 害 者 福 祉 法 を 例 に す る と 、 各 種 更 生 援 護 施 設 へ の 入 所 、 更 生 訓 練 費 の 支 給 、 更 生 医 療 の 給 付 、 補 装 具 の 給 付 修 理 等 の 障 害 福 祉 サ ー ビ ス は 、 都 道 府 県 知 事 、 市 町 村 長 で は な く 都 道 府 県 及 び 市 町 村 に 委 任 さ れ た23)。 ま た 、 市 町 村 の 固 有 事 務 と さ れ て い た 障 害 者 短 期 入 所 事 業 及 び 在 宅 障 害 者 デ 19) 当 時 の 基 準 額 は 1 時 間 580 円 で あ っ た 。 20) 第 102 回 国 会 衆 議 院 予 算 委 員 会 ( 9 号 ) ,1985 年 2 月 14 日 ,二 見 伸 明 出 席 委 員 答 弁 21) た だ し 、 1985 年 度 は 、 経 過 措 置 と し て 10 分 の 7 と さ れ た 。 22) そ の 後 、 団 体 委 任 事 務 は 、 1999 年 に 制 定 さ れ た 地 方 分 権 の 推 進 を 図 る た め の 関 係 法 律 の 整 備 等 に 関 す る 法 律 に 基 づ き 廃 止 さ れ 、 サ ー ビ ス の 多 く が 自 治 事 務 に 再 編 さ れ た 。 23) 丸 山 ( 1998) ,p.36.
14 イ サ ー ビ ス 事 業 も 、 市 町 村 の 団 体 委 任 事 務 と な っ た 。 こ れ に よ っ て 、 国 庫 補 助 の 補 助 率 は 施 設 サ ー ビ ス と 等 し い も の と な り 、3 分 の 1 以 内 か ら 2 分 の 1 以 内 に 引 き 上 げ ら れ 、都 道 府 県 の 負 担 は 3 分 の 1 以 内 か ら 4 分 の 1 以 内 に 引 き 下 げ ら れ た 。さ ら に 、身 体 障 害 者 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 に つ い て も 、1989 年 に 団 体 委 任 事 務 化 さ れ 、 同 様 に 補 助 率 が 変 更 さ れ た 。 こ れ に よ っ て 、 居 宅 サ ー ビ ス は 、 補 助 率 の 面 で 施 設 サ ー ビ ス と 対 等 な も の と な っ た 。 た だ し 、 義 務 付 け そ の も の は 弱 い ま ま で あ っ た た め 、 予 算 補 助 の 形 が 維 持 さ れ た 。 こ の 理 由 は 明 ら か に さ れ て い な い が 、 当 時 の 国 会 の 議 論 か ら 推 測 さ れ る 理 由 と し て 、 当 時 の 居 宅 サ ー ビ ス の ニ ー ズ は 、 予 算 枠 の 範 囲 内 で 充 足 さ れ る ほ ど 少 な く 、 義 務 付 け を 強 化 し て 法 律 補 助 を 行 う 程 の 必 要 性 が な い と い う 判 断 で あ っ た と 思 わ れ る 。 第 2 の 課 題 は 、重 度 障 害 者 に 対 す る ニ ー ズ を 満 た せ て い な か っ た こ と で あ る 。 当 時 の 身 体 障 害 者 家 庭 奉 仕 員 事 業 は 、 家 事 援 助 に 重 点 を 置 い て い た の で 、 重 度 障 害 者 が 必 要 と す る 専 門 的 な 身 体 介 護 を 行 う こ と が 難 し か っ た24 )。 そ の た め 、 地 方 自 治 体 で は 、 そ れ ら の ニ ー ズ に 対 し て 、 介 護 人 派 遣 事 業 と い う 独 自 の 介 護 サ ー ビ ス で 対 応 す る 動 き が 見 ら れ る よ う に な っ た 。 最 初 に こ れ を 行 っ た の は 東 京 都 で あ る 。 東 京 都 で は 1974 年 に 、 脳 性 麻 痺 者 介 護 人 派 遣 事 業 を 独 自 の 制 度 と し て 行 っ た 。 同 事 業 は 脳 性 麻 痺 に よ っ て 自 立 生 活 が 困 難 な 重 度 障 害 者 に 対 し て 介 護 を 行 う も の で あ っ た 。 そ の 後 、 上 記 の 介 護 人 派 遣 事 業 は 、 他 の 団 体 で も 行 わ れ る よ う に な っ た25)。 さ ら に 、1982 年 に 厚 生 省 社 会 局 更 正 課 長 通 知 (「 老 人 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 運 営 の 改 正 点 及 び 実 施 手 続 等 の 留 意 事 項 に つ い て 」)に 基 づ き 、地 方 自 治 体 が 独 自 に 行 っ て い た 介 護 人 派 遣 事 業 が 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 の 一 部 と な っ た こ と で 、 介 護 人 派 遣 事 業 も 国 庫 補 助 の 対 象 と さ れ た26)。 24) 茨 木 ・ 大 熊 ・ 尾 上 ・ 北 野 ・ 竹 端 ( 2009) ,p.64. 25) 同 上 ,p.66. 26) 一 部 の 地 方 自 治 体 で は 、 独 自 の 事 業 と し て 行 わ れ て お り 、 国 庫 補 助 は 受 け ら れ な か っ た 。 例 え ば 東 京 都 は 1997 年 の 制 度 改 正 を 機 に 国 庫 補 助 を 受 け る よ う に な っ た 。
15 こ の よ う な 制 度 改 革 が 日 本 国 内 で 行 わ れ て い た 一 方 で 、 国 際 連 合 ( 国 連 と 略 称 ) で は 、 前 述 の ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン の 概 念 が 国 際 的 に 広 く 認 知 さ れ る よ う に な っ た き っ か け と な っ た 「 障 害 者 に 関 す る 世 界 行 動 計 画 」 が 1982 年 に 採 択 さ れ た 。 こ れ は 国 際 障 害 年 の テ ー マ で あ る 「 完 全 参 加 と 平 等 」 に 対 す る 政 策 的 取 り 組 み を 加 盟 国 に 要 請 す る も の で あ っ た 。 「 完 全 参 加 と 平 等 」 と は 「 全 て の 人 に 対 し 平 等 に 機 会 を 与 え 、 社 会 的 ・ 経 済 的 発 展 に よ る 生 活 水 準 の 向 上 を 平 等 に 分 か ち 合 う こ と 」 を 指 し て お り 、 ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン の 理 念 に 基 づ い た も の で あ っ た27)。 同 計 画 の 採 択 は 、 多 く の 国 に ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン の 概 念 を 普 及 さ せ る と と も に 、 加 盟 国 の 障 害 者 施 策 に も 大 き な 影 響 を 与 え た 。 日 本 に お い て も 、 採 択 に 先 ん じ て 策 定 さ れ た 障 害 者 対 策 に 関 す る 長 期 計 画 に 基 づ い て 、 ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン を よ り 意 識 し た 制 度 改 革 が 行 わ れ る よ う に な っ た 。 例 え ば 、後 述(4 節 参 照 )の 制 度 的 方 向 性 の 転 換(「 自 立 と 社 会 活 動 へ の 参 加 」) や 在 宅 福 祉 サ ー ビ ス の 見 直 し は 、 そ の 一 環 で 行 わ れ た も の で あ っ た 。 4. 第 2 の 転 換 : 措 置 制 度 か ら 契 約 制 度 へ の 移 行 4.1 90 年 代 の 障 害 者 福 祉 施 策 : 措 置 制 度 を 中 心 と し て 90 年 代 の 障 害 者 福 祉 施 策 は 、依 然 と し て 措 置 制 度 が 続 け ら れ て い た が 、そ の 内 容 に つ い て 、 以 下 に 示 す 5 点 に つ い て 、 大 幅 な 見 直 し が 行 わ れ た 。 第 1 に 、制 度 的 方 向 性 の 変 化 で あ る 。1990 年 以 降 、3 つ の 障 害 者 福 祉 法( 身 体 障 害 者 福 祉 法 ・ 精 神 薄 弱 者 福 祉 法 ・ 精 神 保 健 法 ) が 次 々 と 改 正 、 改 称 さ れ た 28)。そ の 際 、第 1 条 に 記 さ れ て い る 制 度 の 目 的 が 、「 自 立 と 社 会 活 動 へ の 参 加 」 で あ る と 規 定 さ れ る よ う に な っ た29)。 こ れ に よ っ て 、 経 済 的 自 立 以 外 の 社 会 的 自 立 や 精 神 的 自 立 も 重 視 さ れ る よ う に な っ た 。 こ の よ う な 方 向 性 の 変 化 に よ っ 27) United Nations( 1983) ,p.6. 28) 精 神 衛 生 法 は 1987 年 に 精 神 保 健 法 に 改 称 さ れ た 。 29) 身 体 障 害 者 福 祉 法 は 1990 年 に 、 知 的 障 害 者 福 祉 法 ( 旧 : 精 神 薄 弱 者 福 祉 法 ) は 2000 年 に 、 精 神 保 健 及 び 精 神 障 害 者 福 祉 に 関 す る 法 律 ( 旧 : 精 神 保 健 法 ) は 1995 年 に そ れ ぞ れ 第 1 条 が 改 正 さ れ た 。
16 て 、 訓 練 サ ー ビ ス は 、 社 会 的 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン が 重 視 さ れ る よ う に な り 、 居 宅 サ ー ビ ス は 家 族 介 護 の 「 代 替 」 か ら 、 障 害 者 の 自 立 支 援 の 「 手 段 」 と し て の 意 味 合 い が 強 く な っ た 。 第 2 に 、 サ ー ビ ス の 実 施 主 体 の 移 管 で あ る 。 訓 練 サ ー ビ ス 等 の 施 設 サ ー ビ ス の 権 限 が 、居 宅 サ ー ビ ス と 同 様 に 市 町 村 の 団 体 委 任 事 務 と な り 、こ れ に よ っ て 、 ほ と ん ど の サ ー ビ ス の 実 施 主 体 が 市 町 村 に な っ た 。 第 3 に 、 居 宅 サ ー ビ ス の 整 理 統 合 及 び 、 そ の 内 容 の 見 直 し で あ る 。 前 者 は 、 居 宅 サ ー ビ ス で あ る 身 体 障 害 者 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 、 障 害 者 短 期 入 所 事 業 、 在 宅 障 害 者 デ イ サ ー ビ ス 事 業 が 、 身 体 障 害 者 居 宅 生 活 支 援 事 業 と し て 一 体 化 さ れ る と と も に 、 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 は 、 身 体 障 害 者 居 宅 介 護 等 事 業 に 、 障 害 者 短 期 入 所 事 業 は 身 体 障 害 者 短 期 入 所 事 業 に 、 在 宅 障 害 者 デ イ サ ー ビ ス 事 業 は 身 体 障 害 者 デ イ サ ー ビ ス 事 業 に 改 称 さ れ た 。 後 者 は 、 厚 生 省 の ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス 事 業 要 綱 策 定 に 伴 い 、 身 体 障 害 者 居 宅 介 護 等 事 業 の う ち 、 ① 入 浴 、 排 せ つ 及 び 食 事 等 の 介 護 、 ② 調 理 、 洗 濯 及 び 掃 除 等 の 家 事 、 ③ 生 活 等 に 関 す る 相 談 及 び 助 言 を ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス 事 業 、 外 出 時 に お け る 移 動 の 介 護 を ガ イ ド ヘ ル プ サ ー ビ ス 事 業 と 呼 称 す る こ と と し た 。 こ れ に よ っ て 、 居 宅 介 護 サ ー ビ ス は 、 身 体 介 護 、 家 事 援 助 、 移 動 介 護 ( ガ イ ド ヘ ル プ サ ー ビ ス ) の 3 類 型 と な り 、居 宅 サ ー ビ ス は よ り 多 様 な ニ ー ズ に 対 応 す る こ と が で き る よ う に な っ た 。 第 4 に 、 居 宅 サ ー ビ ス の 民 間 事 業 者 へ の 委 託 が 可 能 に な っ た 。 今 ま で の 居 宅 サ ー ビ ス は 第 1 種 社 会 福 祉 事 業 に 位 置 付 け ら れ て い た の で 、 主 に 社 会 福 祉 法 人 及 び 社 会 福 祉 事 業 所 に 委 託 す る 形 で 行 わ れ て い た 。 例 え ば 、 身 体 障 害 者 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 の 場 合 、 市 町 村 が 雇 用 し た ヘ ル パ ー か 社 会 福 祉 法 人 及 び 社 会 福 祉 事 業 所( 主 に 社 会 福 祉 協 議 会 )に 委 託 す る 形 で 行 わ れ て い た 。し か し 、1990 年 の 社 会 福 祉 事 業 法 の 改 正 に よ り 、 こ れ ら の 居 宅 サ ー ビ ス は 第 2 種 社 会 福 祉 事 業 と し て 位 置 づ け ら れ 、 民 間 事 業 者 へ の 委 託 が 可 能 と な っ た 。 第 5 に 、障 害 福 祉 サ ー ビ ス の 対 象 が 大 幅 に 拡 大 さ れ た 。90 年 代 以 前 の 障 害 者 福 祉 制 度 で は 、 知 的 障 害 者 は 居 宅 サ ー ビ ス の 対 象 と な っ て お ら ず 、 精 神 障 害 者
17 に 至 っ て は 、 わ ず か に 精 神 保 健 法 に 規 定 さ れ た 社 会 復 帰 施 設 や 授 産 施 設 で の 訓 練 サ ー ビ ス が 設 け ら れ て い る 程 度 で あ っ た 。1990 年 の 精 神 薄 弱 者 福 祉 法 の 改 正 で 、 知 的 障 害 者 向 け の 居 宅 生 活 支 援 事 業 と し て 、 精 神 薄 弱 者 居 宅 支 援 事 業 が 創 設 さ れ た 。 施 設 サ ー ビ ス に つ い て も 、 今 ま で 通 知 で 規 定 さ れ て い た 精 神 薄 弱 者 更 生 施 設 、精 神 薄 弱 者 授 産 施 設 が 精 神 薄 弱 者 福 祉 法 の 中 で 規 定 さ れ た 。他 に も 、 精 神 薄 弱 者 地 域 生 活 援 助 事 業 と し て 自 立 生 活 の 訓 練 を 行 う 通 勤 寮 や 集 団 で 生 活 す る グ ル ー プ ホ ー ム 等 が 規 定 さ れ た30)。 精 神 障 害 者 に つ い て は 、1987 年 に 精 神 衛 生 法 か ら 精 神 保 健 法 に 移 行 後 、社 会 復 帰 施 策 の 一 環 と し て 、 援 護 寮 等 の 精 神 障 害 者 社 会 復 帰 施 設 、 精 神 障 害 者 授 産 施 設 が 規 定 さ れ 、訓 練 サ ー ビ ス( 施 設 サ ー ビ ス )を 受 け ら れ る よ う に な っ た31)。 さ ら に 、1999 年 の 改 正 で 精 神 障 害 者 居 宅 生 活 支 援 事 業 が 創 設 さ れ 、居 宅 サ ー ビ ス に つ い て も 受 け ら れ る よ う に な っ た 。 4.2 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 : 措 置 か ら 契 約 へ の 転 換 の 障 害 者 福 祉 へ の 波 及 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 は 、1997 年 に 設 置 さ れ た 厚 生 省 社 会・援 護 局 長 の 私 的 検 討 会 で あ る 「 社 会 福 祉 事 業 等 の あ り 方 に 関 す る 検 討 会 」 に て 、 発 案 さ れ た も の が そ の 始 ま り で あ る 。 検 討 会 で は 、 社 会 保 障 費 拡 大 に 対 応 し た 新 し い 社 会 福 祉 制 度 の 在 り 方 が 議 論 さ れ 、そ れ ら の 意 見 を 取 り ま と め た も の と し て 、「 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 に つ い て ( 主 要 な 論 点 )」 が 公 表 さ れ た 。 さ ら に 、 同 年 に 制 定 さ れ た 介 護 保 険 法 の 附 則 に 、 障 害 者 へ の 適 用 に つ い て 施 行 後 5 年 ( 2005 年 ) を 目 途 に 検 討 を 行 う こ と が 定 め ら れ た 。 そ の 後 、1998 年 に 社 会 福 祉 構 造 改 革 分 科 会 に よ っ て 、社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 の 具 体 的 な 提 言 を 取 り ま と め た「 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 に つ い て( 中 間 ま と め )」 が 公 表 さ れ た 。 取 り ま と め で は 、 社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 の 目 的 で あ る 利 用 者 本 位 を 確 立 す る 30) こ れ ら の 施 設 や 事 業 の 名 称 は 、 1999 年 の 精 神 薄 弱 の 用 語 の 整 理 の た め の 関 係 法 律 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 に 基 づ き 、「 精 神 薄 弱 者 」 と い う 表 現 は 改 め ら れ 、 全 て 「 知 的 障 害 者 」 に 置 き 換 え ら れ た 。 31) 精 神 保 健 法 は 、 1995 年 に 精 神 保 健 及 び 精 神 障 害 者 福 祉 に 関 す る 法 律 に 改 称 さ れ た 。
18 た め に は 、 利 用 者 と 事 業 者 の 対 等 な 関 係 の 構 築 が 必 要 で あ る と し て 、 契 約 関 係 に 基 づ い た 利 用 制 度 の 導 入 が 提 言 さ れ た 。 そ れ 以 外 の 提 言 と し て 、 民 間 事 業 者 の 新 規 参 入 を 促 進 す る こ と で 、 障 害 福 祉 サ ー ビ ス の 多 様 性 を 確 保 し 、 市 場 競 争 に よ っ て そ の 質 と 効 率 性 の 向 上 を 促 す 必 要 が あ る と し た 。 こ れ ら の 提 言 は 、1996 年 か ら 今 後 の 障 害 者 福 祉 の あ り 方 に つ い て 議 論 が 行 わ れ て い た 、 身 体 障 害 者 福 祉 審 議 会 、 中 央 児 童 福 祉 審 議 会 障 害 福 祉 部 会 、 公 衆 衛 生 審 議 会 精 神 保 健 福 祉 部 会 ( 障 害 福 祉 関 係 3 審 議 会 ) の 合 同 企 画 分 科 会 の 議 論 に も 大 き な 影 響 を 与 え た 。 同 分 科 会 の 当 初 の 検 討 項 目 は 、 障 害 者 施 設 体 系 の 見 直 し 、 地 域 生 活 の 有 り 方 、 権 利 擁 護 、 介 護 保 険 と の 関 連 ( 介 護 保 険 適 用 年 齢 の 障 害 者 に 対 す る 障 害 者 福 祉 制 度 と 介 護 保 険 制 度 と の 適 用 関 係 ) 等 で あ り 、 契 約 制 度 へ の 移 行 に つ い て は そ れ ほ ど 意 識 さ れ て い な か っ た 。 し か し 、1998 年 に 上 記 の 提 言 が 公 表 さ れ る と 、 契 約 制 度 移 行 の 検 討 を 意 識 し た 議 論 が な さ れ る よ う に な り 、1999 年 に 同 分 科 会 が 議 論 の 取 り ま と め と し て 提 出 し た 「 身 体 障 害 者 ( 知 的 障 害 者 ・ 障 害 児 ) 施 策 の 在 り 方 に つ い て 」 の 中 で は 、 障 害 者 福 祉 制 度 の 契 約 制 度 へ の 移 行 が 提 言 さ れ た 。 契 約 制 度 移 行 に 伴 う 利 用 者 負 担 の 見 直 し に つ い て は 、 サ ー ビ ス 内 容 に 応 じ て 定 率 の 負 担 を 課 す 応 益 負 担 の 導 入 を 求 め る 意 見 が あ っ た が 、 障 害 者 の 所 得 状 況 を 勘 案 し 、 応 能 負 担 を 継 続 さ せ る こ と が 適 当 で あ る と し 、 応 益 負 担 に つ い て は 将 来 的 に 検 討 す る べ き で あ る と し た 。 ま た 、 介 護 保 険 の 適 用 に つ い て は 、 将 来 的 な 適 用 を 視 野 に 入 れ て 今 後 も 検 討 作 業 を 続 け る べ き で あ る と し た 。 こ れ ら の 合 同 企 画 分 科 会 で の 意 見 を 踏 ま え て 具 体 化 さ れ た 社 会 福 祉 事 業 法 等 改 正 案 大 綱 に 基 づ き 、 政 府 は 、2000 年 に 、 社 会 福 祉 の 増 進 の た め の 社 会 福 祉 事 業 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 等 の 法 律 を 制 定 し 、2003 年 度 か ら 身 体 障 害 者 福 祉 法 、 知 的 障 害 者 福 祉 法 、 児 童 福 祉 法 に 規 定 さ れ た 障 害 福 祉 サ ー ビ ス に つ い て 、 契 約 制 度 で あ る 支 援 費 制 度 を 適 用 す る こ と が 規 定 さ れ た 。 た だ し 、 精 神 保 健 及 び 精 神 障 害 者 福 祉 に 関 す る 法 律 に 規 定 さ れ た 障 害 福 祉 サ ー ビ ス に 関 し て は 支 援 費 制 度 の 対 象 と は な ら ず 、 検 討 課 題 と し て 見 送 ら れ た 。
19 4.3 支 援 費 制 度 ―契 約 制 度 の 導 入 ― 支 援 費 制 度 で は 、 身 体 障 害 者 福 祉 法 、 知 的 障 害 者 福 祉 法 、 児 童 福 祉 法 に 規 定 さ れ て い る サ ー ビ ス に 対 し て 契 約 制 度 が 適 用 さ れ た 。 ま た 、3 類 型 で あ っ た 身 体 障 害 者 居 宅 介 護 事 業 に 、 重 度 障 害 者 用 の 居 宅 介 護 サ ー ビ ス と し て 日 常 生 活 支 援 ( 現 : 重 度 訪 問 介 護 ) が 新 た に 追 加 さ れ 、4 類 型 と な っ た 。 支 給 決 定 の プ ロ セ ス に つ い て 説 明 す る と 、 利 用 者 が 市 町 村 に 申 請 を 行 い 、 聞 き 取 り 調 査 に よ っ て 障 害 の 程 度 を 勘 案 し た 上 で 、 支 給 の 可 否 及 び サ ー ビ ス の 支 給 量 ( 時 間 ) が 決 め ら れ る32)。 そ の 後 、 受 給 者 証 が 交 付 さ れ 、 そ れ を 使 っ て 利 用 者 が 指 定 事 業 者 と 契 約 す る と い う 形 に な っ て い る33)。 契 約 後 、 利 用 者 が 費 用 の 一 部 ( 応 能 負 担 ) を 支 払 い 、 残 り は 、 支 援 費 と い う 形 で 市 町 村 が 負 担 す る 。 支 援 費 は 、 居 宅 生 活 支 援 事 業 等 の 居 宅 サ ー ビ ス の 費 用 を 支 払 う 居 宅 生 活 支 援 費 と 施 設 サ ー ビ ス ( 身 体 障 害 者 療 護 施 設 で の 介 護 サ ー ビ ス も 含 む ) に 係 る 費 用 を 支 払 う 施 設 訓 練 等 支 援 費 の 2 つ に 区 分 さ れ て い た 。 施 設 訓 練 等 支 援 費 は 、 法 律 補 助 と し て 2 分 の 1 の 国 庫 負 担 ( 都 道 府 県 負 担 4 分 の 1)、居 宅 生 活 支 援 費 に は 予 算 補 助 と し て 2 分 の 1 以 内 の 国 庫 補 助( 都 道 府 県 負 担 4 分 の 1 以 内 ) を 受 け る こ と が で き た 。 一 方 で 、居 宅 生 活 支 援 費 は 、 国 庫 補 助 基 準 に よ っ て 市 町 村 へ の 国 庫 補 助 金 の 配 分 量 が 決 め ら れ て い た34)。 支 援 費 制 度 が 開 始 さ れ る と 、 民 間 事 業 者 の 増 加 に 伴 っ て ニ ー ズ の 掘 り 起 こ し が 発 生 し 、 居 宅 サ ー ビ ス は 、 以 前 に も 増 し て 利 用 さ れ る よ う に な っ た 。 特 に ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス の ニ ー ズ の 拡 大 は 、 国 の 想 定 を 超 え て お り 、 居 宅 生 活 支 援 費 を 中 心 に 予 算 不 足 に 陥 っ て い た35)。初 年 度 の 2003 年 度 は 、当 初 予 算 か ら 128 32) た だ し 、 施 設 訓 練 等 支 援 費 の 場 合 、 障 害 程 度 区 分 ( 3 区 分 ) の 判 定 が 行 わ れ 、 該 当 す る 区 分 に 基 づ い て 支 援 費 の 金 額 が 決 定 さ れ て い た 。 33) 茅 原 ( 2003) ,p.52. 34) 国 庫 補 助 基 準 に は 、 障 害 者 の 種 別 ( 一 般 、 移 動 介 護 利 用 者 、 全 身 性 障 害 者 ) ご と に 単 位 が 設 定 さ れ て お り 、 こ れ に 各 種 別 の 利 用 者 数 及 び 級 地 区 分 ご と の 1 単 位 当 た り 単 価 、 各 市 町 村 の 給 付 率 を 乗 じ る こ と で 、 国 庫 補 助 基 準 額 を 算 定 す る こ と が で き る 。 そ し て こ の 基 準 額 を 超 え た 場 合 、 市 町 村 の 単 費 負 担 と な っ た 。 35) 以 下 の 数 値 は 、 厚 生 労 働 省 「 障 害 保 健 福 祉 施 策 の 現 状 」 か ら 引 用 。 (URL:http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushienhou02/1.ht ml)
20 億 円 の 不 足 が 発 生 し 、2004 年 度 は 274 億 円 の 不 足 が 発 生 し て い た36)。 そ の た め 、厚 生 労 働 省 は 、省 内 予 算 の 流 用 や 補 正 予 算(2004 年 度 の み )等 に よ っ て 予 算 不 足 の 穴 埋 め を 行 っ た が 、 完 全 に 不 足 分 を カ バ ー す る こ と は で き な か っ た37)。 2003 年 度 の 場 合 、 全 体 で 14 億 の 不 足 が 発 生 し 、 2004 年 度 の 場 合 11 億 の 不 足 が 発 生 し て い た38)。 こ の 予 算 不 足 の 問 題 に よ り 、 厚 生 労 働 省 は 、 支 援 費 制 度 の 大 幅 な 見 直 し を 迫 ら れ る こ と と な っ た 。 そ こ で 厚 生 労 働 省 は 、2004 年 の 10 月 に そ の 試 案 と し て 「 今 後 の 障 害 保 健 福 祉 施 策 に つ い て( 改 革 の グ ラ ン ド デ ザ イ ン 案 )」を 提 示 し た 。 同 案 で は 、 ① 支 給 決 定 プ ロ セ ス の 透 明 化 、 ② 財 政 負 担 の 見 直 し 、 ③ 利 用 者 負 担 の 応 益 負 担 化 が 盛 り 込 ま れ 、 そ の 意 図 に つ い て は 以 下 の よ う に 説 明 し た 。 支 給 決 定 プ ロ セ ス の 透 明 化 は 、 明 確 か つ 、 統 一 的 な 支 給 決 定 プ ロ セ ス を 導 入 す る こ と で 、 効 率 的 な サ ー ビ ス 利 用 を 促 す 狙 い が あ っ た 。 財 政 負 担 の 見 直 し と 利 用 者 負 担 の 応 益 負 担 化 は 、 制 度 の 公 平 性 と 持 続 性 保 持 を 確 保 す る 狙 い が あ っ た 。 さ ら に 、 サ ー ビ ス 体 系 に つ い て の 言 及 が あ り 、 今 ま で 別 々 の 法 律 で 定 め ら れ て い た 障 害 福 祉 サ ー ビ ス の 一 元 化 が 必 要 で あ る と し た 。 こ れ は 、 一 元 化 す る こ と で 障 害 福 祉 サ ー ビ ス 提 供 の 効 率 性 を 高 め る 狙 い が あ っ た 。 ま た 、 厚 生 労 働 省 は も う 1 つ の 選 択 肢 と し て 、 障 害 者 福 祉 と 介 護 保 険 と の 統 合 に 関 す る 検 討 も 、 同 時 に 行 っ て い た 。 こ こ で 言 わ れ て い る 統 合 と は 、 第 2 号 被 保 険 者 の 対 象 年 齢 を 引 き 下 げ 、 受 給 要 件 で あ る 特 定 疾 病 を 撤 廃 す る こ と で 、 65 歳 未 満 ( 特 定 疾 病 該 当 者 で 40 歳 未 満 ) の 障 害 者 に 対 し て 介 護 保 険 サ ー ビ ス を 適 用 す る と い う も の で あ っ た 。 し か し 、 障 害 者 団 体 等 か ら の 反 対 意 見 が 相 次 36) 2005 年 度 は 、 前 年 度 の 反 省 を 踏 ま え て 、 当 初 予 算 枠 が 増 額 さ れ た た め 、 予 算 不 足 は 発 生 し て い な い 。 37) 2001 年 の 中 央 省 庁 再 編 に よ り 、 厚 生 省 は 労 働 省 と 統 合 再 編 さ れ 、 厚 生 労 働 省 と し て 新 た に 発 足 し た た め 、 以 降 厚 生 労 働 省 と 記 述 す る 。 38) 2003 年 度 の 14 億 円 は 全 て ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス の 予 算 不 足 額 で あ る 。 2004 年 度 の 11 億 円 に つ い て は そ の 内 訳 は 明 ら か に さ れ て い な い が 、 2003 年 度 の 状 況 を 考 慮 す る と 、 大 半 が ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス の 予 算 不 足 額 で あ っ た 可 能 性 が 高 い 。
21 い だ こ と で 、 最 終 的 に は 検 討 課 題 と し て 見 送 ら れ た39)。 こ れ ら の 経 緯 を 踏 ま え て 、 厚 生 労 働 省 は 、 試 案 を ベ ー ス に 障 害 者 自 立 支 援 法 を 策 定 し 、 同 法 は 、2005 年 に 制 定 さ れ 、 翌 年 4 月 に 施 行 さ れ た40)。 4.4 障 害 者 自 立 支 援 法 ―制 度 的 飛 躍 と 社 会 的 批 判 ― 同 法 は 、 身 体 障 害 者 福 祉 法 、 知 的 障 害 者 福 祉 法 、 児 童 福 祉 法 、 精 神 保 健 及 び 精 神 障 害 者 福 祉 に 関 す る 法 律 に 規 定 さ れ て い た 障 害 福 祉 サ ー ビ ス を 一 元 化 し た も の で あ る 。 こ れ に よ っ て 、3 障 害 全 て の 障 害 者 が 同 一 の 制 度 か ら 障 害 福 祉 サ ー ビ ス を 受 け る こ と が 可 能 に な っ た 。 さ ら に 、 同 法 附 則 61~ 63 条 に 伴 い 、 社 会 福 祉 法 ( 旧 : 社 会 福 祉 事 業 法 ) が 改 正 さ れ 、 一 部 を 除 い て 、 ほ と ん ど の 障 害 福 祉 サ ー ビ ス に つ い て 民 間 事 業 者 が 参 入 で き る よ う に な っ た41)。 サ ー ビ ス 体 系 は 自 立 支 援 給 付 と 地 域 生 活 支 援 事 業 の 2 つ に 大 別 さ れ る 。前 者 の 自 立 支 援 給 付 は 介 護 給 付 と 訓 練 等 給 付 、 そ の 他 の 給 付 に 分 け ら れ て い る 。 介 護 給 付 は 、 居 宅 生 活 支 援 事 業 の う ち 、 ホ ー ム ヘ ル プ サ ー ビ ス 、 デ イ サ ー ビ ス 事 業 ( 生 活 介 護 に 改 称 )、 短 期 入 所 事 業 ( 短 期 入 所 に 改 称 ) は 介 護 給 付 と な っ た 。 さ ら に 、 日 常 生 活 支 援 が 廃 止 さ れ 、 そ の 代 わ り に 重 度 訪 問 介 護 、 重 度 障 害 者 包 括 支 援 が 設 け ら れ た 。 前 者 は 身 体 介 護 や 家 事 援 助 、 移 動 介 護 を 複 合 的 に 行 う 障 害 福 祉 サ ー ビ ス で あ り 、 後 者 は 多 様 な 障 害 福 祉 サ ー ビ ス を 組 み 合 わ せ て 重 度 障 害 者 の 援 護 を 行 う 一 種 の 複 合 型 サ ー ビ ス で あ る 。 ガ イ ド ヘ ル プ サ ー ビ ス は 知 的 障 害 及 び 精 神 障 害 者 を 対 象 と し た 行 動 援 護 、 視 覚 障 害 者 を 対 象 と し た 同 行 援 護 、 そ れ ら の 援 護 の 対 象 と な ら な い 者 を 対 象 と し た 移 動 支 援 の 3 つ に 分 割 さ れ た 。 こ の う ち 、 行 動 援 護 、同 行 援 護 は 介 護 給 付 の サ ー ビ ス 、 移 動 支 援 は 後 述 の 地 域 生 活 支 援 事 業 の サ ー ビ ス と な っ た 。 ま た 、 更 生 援 護 施 設 の 1 つ と し て 規 定 さ れ て い た 身 体 障 害 者 療 護 施 設 で の 介 護 サ ー ビ ス は 、 介 護 給 付 と し て 新 設 さ れ た 施 設 入 所 支 援 サ ー ビ ス と し て 行 わ れ る こ と に な っ た 。他 に も 、医 療 機 関 で 介 護 や 訓 練 等 を 受 け る 療 養 介 護 が 新 た に 創 設 さ れ た 。 39) 2 章 4.3 節 参 照 。 40) 2006 年 の 1 月 か ら 3 月 ま で は 支 援 費 制 度 が 適 用 さ れ て い た が 、 試 験 的 に 居 宅 介 護 サ ー ビ ス の 財 政 負 担 が 2 分 の 1 の 国 庫 負 担 と い う 形 で 行 わ れ て い た 。 41) 後 述 の 障 害 者 支 援 施 設 の 経 営 は 、 第 1 種 社 会 福 祉 事 業 に 位 置 付 け ら れ た 。