在庫循環のメカニズム
著者
村田 治
雑誌名
経済学論究
巻
64
号
1
ページ
107-134
発行年
2010-06-25
URL
http://hdl.handle.net/10236/5610
在庫循環のメカニズム
A Theoretical Model
of the Inventory cycle
村 田 治
The purpose of this paper is to clarify the mechanism of the Kitchin cycle. To do this, we divide the role of inventory into three functions, these are the production smoothing function, the buffer Stock function, and the stock-out avoidance. After that, we set up the model which can explain the behavior of inventory growth rate and the growth rate of shipment. In order to give a theoretical explanation on the cyclical relations between inventory and shipment, we investigate the function of inventory. As the result, we can show that the main engine of inventory cycle is the stock-out avoidance function.
Osamu Murata
JEL:E22, E32
キーワード:在庫循環、キチンサイクル、内生的景気循環論、生産平準化、バッファース トック、品切れ防止
Key words: Inventory cycle, Kitchin cycle, Endogenous business cycle the-ory, Production smoothing, Buffer Stock, Stock-out Avoidance
はじめに
在庫循環モデルはMetzler(1941)を嚆矢として、いくつものモデルが提示 されてきた1)。村田( 2001)においても在庫循環モデルが展開されたが、いく つかの問題点を指摘することができる。まず、第一に、生産平準化機能による 在庫投資とバッファー・ストック機能による在庫投資の区別がないことが挙げ られる。言い換えれば、生産水準の決定時点で予期されている需要変動と予期 されていない需要変動の区別がなされていない。第二の点は、生産水準の決定 1) 代表的なものとしては、Blinder(1980), Franke and Lux(1983)などがある。時点で予期されている需要変動に対して、企業は生産調整と在庫調整の二つの 方法によって対応している点を明示的にモデル化していない点が挙げられる。 村田(2001)においては、生産水準の決定時点で予期されている需要変動に対 して全て在庫調整によって対応することが前提とされている。このように、予 期された需要変動に対して全てを在庫の調整で対応すると仮定しているのは、 上で述べた、生産平準化機能による在庫調整とバッファー・ストック機能によ る在庫調整の区別が明確でないことにある2)。さらに、在庫の機能との関連で 言うと、在庫循環を生起させる要因について、これまで明確な分析がほとんど なされてこなかったという問題も指摘できる。言い換えれば、在庫循環をも たらす要因は生産平均化機能にあるのか、バッファー・ストック機能にあるの か、あるいは、品切れ防止機能にあるのか等の考察が行なわれてこなかったの である。また、在庫投資の変動が意図した在庫投資によって生じているのか、 あるいは、意図せざる在庫投資によって生じているのかは、在庫循環の各局面 の推移を理解する上で重要である。これらの点は、従来、理論的にまったく明 らかにされていない問題であるが、以下ではモデル分析によって論点を明確に し、在庫循環の各局面の特徴を明らかにしたい。 本稿では、在庫調整機能として、生産平準化機能とバッファー・ストック機 能を明確に区別し、品切れ防止機能を考慮した在庫循環モデルを構築する。そ の際、予期された需要変動に対して、企業が生産調整と在庫調整の二つの方法 で対応する、より一般的なモデルを提示したい3)。本稿の構成は以下のとおり である。 まず、第1節では、景気基準日付との対応関係を考慮しながら、わが国の在 庫投資や出荷・在庫バランスの推移等について見てみる。さらに、出荷の伸び 率と在庫ストック伸び率の循環図について、いくつかの短期循環を取り上げて 観察しよう。続く第2節では、生産平準化機能による在庫投資とバッファー・ ストック機能による在庫投資の違い、および、品切れ防止機能による在庫投資 について考察し、その上で在庫循環モデルを構築しよう。第3節では、第2節 2) この点については、第 2 節で詳しく説明する。 3) その意味で、本稿のモデルは村田(2001)のモデルを一般化したものと捉えることができよう。
でのモデルに基づき位相図を導出し、生産量と在庫ストックの変動要因を探 る。第4節では、在庫循環のメカニズムを考察するとともに、現実のデータ動 きについての説明力に言及する。
1. 戦後日本の在庫投資の推移
この節では、戦後のわが国における在庫投資等の推移について概観しよう。 (1) 在庫投資と出荷・在庫バランスの推移 はじめに、在庫投資の推移を見てみよう。第1図には、戦後のトレンドを除 去した後の在庫投資の推移が景気基準日付とともに描かれている。この図から わかるように、景気の山(谷)に対して在庫投資の山(谷)は若干のラグあるこ とがわかる。 第 1 図 在庫投資の推移と景気基準日付 㪈 㪐 㪌 㪋 ᐕ 㪈 㪐 㪌 㪌 ᐕ 㪈 㪐 㪌 㪍 ᐕ 㪈 㪐 㪌 㪎 ᐕ 㪈 㪐 㪌 㪏 ᐕ 㪈 㪐 㪌 㪐 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪇 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪈 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪉 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪊 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪋 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪌 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪍 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪎 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪏 ᐕ 㪈 㪐 㪍 㪐 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪇 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪈 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪉 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪊 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪋 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪌 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪍 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪎 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪏 ᐕ 㪈 㪐 㪎 㪐 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪇 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪈 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪉 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪊 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪋 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪌 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪍 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪎 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪏 ᐕ 㪈 㪐 㪏 㪐 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪇 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪉 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪊 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪋 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪌 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪍 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪎 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪏 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪐 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪇 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪈 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪊 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪋 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪌 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪍 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪎 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪏 ᐕ 㪄㪊㪇 㪄㪉㪇 㪄㪈㪇 㪇 㪈㪇 㪉㪇 㪊㪇 ᥊᳇ᓟㅌᦼ ᐶᛩ⾗ 次に、第2図には、わが国の出荷・在庫バランスの推移が景気基準日付とと もに描かれている。この図からわかるように、概ね、景気の山において出荷・ 在庫バランスはゼロ%ラインを上から下に横切り、景気の谷においてゼロ%ラ インを下から上に横切っていることがわかる4)。言いかえれば、景気の拡張期 では出荷の伸び率が在庫の伸び率を上回り、景気の後退期では出荷の伸び率が 在庫の伸び率を下回っていることが読み取れる。 4) 出荷・在庫バランスは、出荷の伸び率−在庫の伸び率と定義されている。第 2 図 出荷・在庫バランスの推移 ᐕ 㪋 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪉 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪊 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪋 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪉 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪊 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪋 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪉 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪊 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪋 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪉 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪊 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪋 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪈 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪊 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪋 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪌 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪍 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪎 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪏 㪇 㪇 㪉 䋦 㪄㪍㪇 㪄㪋㪌 㪄㪊㪇 㪄㪈㪌 㪇 㪈㪌 㪊㪇 ᥊᳇ᓟㅌᦼ ⩄䊶ᐶ䊋䊤䊮䉴 さらに、第3図においては、以下の議論との関係から、景気基準日付と出荷 の伸び率との関係が描かれている5)。 第 3 図 景気基準日付と出荷の伸び率 ᐕ 㪋 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪌 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪉 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪊 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪋 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪍 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪉 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪊 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪋 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪎 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪉 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪊 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪋 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪏 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪈 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪉 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪊 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪋 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪌 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪍 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪎 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪏 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪐 㪐 㪐 㪈 ᐕ 㪇 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪈 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪉 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪊 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪋 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪌 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪍 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪎 㪇 㪇 㪉 ᐕ 㪏 㪇 㪇 㪉 㪄㪉㪇 㪄㪈㪌 㪄㪈㪇 㪄㪌 㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪉㪌 㪊㪇 ᥊᳇ᓟㅌᦼ ⩄䈱િ䈶₸ (2) 戦後の在庫循環 次に、戦後の在庫循環について、高度成長期、安定成長期、低成長期に分け て見てみよう。ここでは、村田(2009)にしたがい、高度成長期を1954年第 Ⅳ四半期∼1971年第Ⅳ四半期、安定成長期を1971年第Ⅳ四半期∼1991年第 Ⅰ四半期、低成長期を1991年第Ⅰ四半期以降とする。したがって、第3循環 5) 第 3 図からわかるように、出荷伸び率の山(谷)は景気の山(谷)に先行していることが読み取 れる。
の谷から第6循環の谷までが高度成長期、第6循環の谷から第11循環の山ま でが安定成長期、第11循環の山以降が低成長期となる。そこで、高度成長期 から第5循環、安定成長期から第10循環、低成長期から第13循環を取り出 して在庫循環図を描いたのが、第4図∼第6図である。どの在庫循環図を見て もきれいなサイクルを描いている。これは、高度成長期から1991年以降の低 成長期にわたって在庫循環が存在するということを物語っている。本稿は、ま さに、この在庫循環のメカニズムを理論的に明らかにすることが目的である。 第 4 図 高度成長期の在庫循環(第 5 循環) 㪇 㪋 㪏 㪈㪉 㪈㪍 㪉㪇 㪄㪋 㪇 㪋 㪏 㪈㪉 㪈㪍 㪉㪇 㪉㪋 ᐶ䈱િ䈶₸ ⩄ 䈱 િ 䈶 ₸ 第 5 図 安定成長期の在庫循環(第 10 循環) 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪄㪏 㪄㪍 㪄㪋 㪄㪉 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 ᐶ䈱િ䈶₸ ⩄ 䈱 િ 䈶 ₸
第 6 図 低成長期の在庫循環(第 13 循環) 㪄㪈㪌 㪄㪈㪇 㪄㪌 㪇 㪌 㪄㪈㪉 㪄㪐 㪄㪍 㪄㪊 㪇 㪊 㪍 ᐶિ䈶₸ ⩄ િ 䈶 ₸
2. 生産と在庫の循環モデル
本節では、第1節の出荷・在庫バランスの推移や在庫循環図を説明する在庫 循環モデルを提示する。以下で用いる記号は次のとおりである。 Y:生産量、Yd:需要量、Yde:予想需要量、D:出荷量、De:予想出荷量、I: 設備投資(一定)、C:消費、c:限界消費性向、B:基礎消費、Z:在庫ストッ ク、Zd:望ましい在庫ストック、IP n:生産平準化(Production Smoothing) 機能による在庫投資、InB:バッファー・ストック(Buffer Stock)機能による 在庫投資、IS n:ストック調整(Stock Adjustment)型在庫投資、Inu:意図せ ざる在庫投資、Ini:意図した在庫投資、t:時間。 はじめに、在庫投資の機能について概観しよう。以下では、生産平準化機 能とバッファー・ストック機能の違いについて考察し、その後、品切れ防止 (Stock-Out Avoidance)機能について吟味しよう。 (1) 生産平準化機能とバッファ−・ストック機能 まず、生産平準化機能とは、生産水準の決定時点で予期された需要の変動 に対して生産水準の変動で対応するにはコスト高となるため、在庫の調整に よってこの需要の変動の一部を吸収することを意味している。予期されたとは いえ、需要の変動に対して生産の変動を小さくするために在庫調整を行なうのであるから、意図せざる在庫投資と考えられる。次に、バッファー・ストック 機能とは、予期しない需要の変動に対して在庫調整によって対処する機能であ り、意図せざる在庫投資と考えられる。この生産平準化機能とバッファー・ス
トック機能は、これまで同じものと考えられ、「生産平準化=バッファー・ス
トック機能」というように、同義語的に表現されてきた6)。
しかしながら、上でも述べたように両者は同じではない。Blinder and Maccini
(1991)によると、生産平準化機能とバッファ−・ストック機能は次のように 表すことができ、本稿でも、この定義にしたがう7)。 ⓐ 生産平準化機能 生産決定を行なう時点で予想される需要の変動に対して、企業が生産の 変動を抑制するために一部を在庫の調整よって対処しようとする機能。 ⓑ バッファ−・ストック機能 企業にとって予想不可能な需要の変動に対しては、すべて在庫の調整に よって対応しようとする機能。 ここで、生産量をY、予想需要量をYde、生産平準化機能による在庫投資を InP、生産調整Y˙ とすると、生産調整と生産平準化による在庫投資は次のよう に定式化できる。 ˙ Y = β(Yde− Y )、 0 < β < 1 (1) InP = (1− β)(Y − Y e d)、 0 < β < 1 (2) 上式は、予期された需要と生産量との差の一定割合βは生産の調整によって 対応し、残りの1− βの割合を在庫の調整によって対応することを意味してい る8)。また、実際の需要量をY dとすると、バッファー・ストック機能による 在庫投資IB n は InB= Y e d − Yd (3) と定義できる。つまり、予想需要量と実際の需要量の差はすべてバッファー・ ストック機能による在庫投資によって吸収されるのである。 6) 例えば、Blinder(1986)などを参照のこと。 7) Blinder and Maccini(1991、p.79)を参照されたい。
8) 村田(2001)においてはこの点が明確に区別されていなかった。この区別については、村田(2004、 pp.85-86)を参照されたい。
(2) 生産平準化機能と品切れ防止機能 次に、生産平準化機能と品切れ防止機能について考察しよう。村田(2004) によると、意図した在庫投資であるストック調整型の在庫投資関数において、 生産平準化機能に比べて品切れ防止機能が強い場合は、出荷量と望ましい在庫 ストックの間にプラスの関係が生じ、逆に、品切れ防止機能に比べて生産平準 化機能が強い場合は、出荷量と望ましい在庫ストックの間にマイナスの関係が あることが明らかにされている9)。本稿でも、この結果を用いて、ストック調 整型在庫投資、望ましい在庫ストックと出荷量の関係を次のように定式化しよ う10)。 InS= λ(Z d− Z)、 Zd= z(D)、0 < λ < 1 (4) ① 品切れ防止機能が強い場合 z0(D) > 0 (5) ② 生産平準化機能が強い場合 z0(D) < 0 (6) ここで、z0(D)は出荷量1単位の増加に対して、望ましい在庫ストックを限界 的にどれくらい増やすか減らすかを表す限界在庫率を示している11)。さらに、 z0(D)がプラスかマイナスか、また、その大きさを品切れ防止機能と生産平準 化機能の相対的な大きさの指標であると見なそう。これは次のように考えるこ とができる。まず、生産平準化機能に比べて品切れ防止機能が強い場合、出荷 量の増加に対して将来の品切れ予測が発生し在庫の積み増しが行なわれ、これ が生産平準化による在庫の切り崩しを上回り在庫の積み増しが生じると考えら れる12)。したがって、生産に関しては、出荷量の増加と在庫の積み増しの双 方を補うだけの増産が行なわれ、言わば、生産の集積(bunching)が生じる。 他方、品切れ防止機能に比べ生産平準化機能が強い場合、出荷量の増加に対す 9) その意味では、Lovell 型の在庫投資関数は品切れ防止機能の方が強い場合にあたる。 10) この点については、村田(2004、pp.102-104)を参照されたい。 11) 内閣府(2009、p.21)によると、限界在庫率 z0(D) は 0.8∼1.8 と推計されている。 12) z0(D) > 0 を意味する。
る将来の品切れ予測による在庫の積み増しは生産平準化による在庫の切り崩し を下回るため、結果として在庫の減少が生じる13)。つまり、生産量の減産が行 なわれ生産の平準化(smoothing)が生じるのである。 (3) 生産と在庫ストックの調整 まず、在庫ストックの変化は、意図せざる在庫投資Inuと意図した在庫投資 Ini からなり、上でも述べたように、前者は生産平準化機能による在庫投資I P n とバッファー・ストック機能による在庫投資InBから構成され、後者はストッ ク調整型在庫投資IS nそのものである。よって、在庫ストックの変化Z˙、意図 せざる在庫投資Inu、意図した在庫投資Ini は ˙ Z = Inu+ I i n (7) Inu= I P n + I B n (8) Ini = I S n (9) と表される。また、予想需要量Ydeは予想出荷量D eと意図した在庫投資 IS の和であるので、 Yde= De+ InS (10) と定義される。同様に、需要量Ydは出荷量Dと意図した在庫投資ISの和で あるので、 Yd= D + InS (11) と表される。次に、出荷量は消費と設備投資から構成されているとして、 D = C + I (12) とし14)、さらに、消費関数を次のように定義しよう。 C = cY + B、 0 < c < 1 (13) ここで、企業の出荷予想に関しては、完全予見を仮定し 13) z0(D) < 0 を意味する。 14) 政府と海外部門は捨象されている。
D = De (14) としよう。 ところで、企業の生産調整は(1)式で表されるが、(2)(8)(9)(14)式を考慮 すると、 ˙ Y =−βInu/(1− β) (15) と変形できる15)。上式は、意図せざる在庫の増加があると生産は減少し、逆 に、意図せざる在庫の減少があると生産が増加することを意味している16)。さ らに、在庫ストックの調整Z˙ は(1)∼(3)式、(7)∼(11)(14)式を考慮すると、 ˙ Z− ˙Y = Y − D (16) となる。この(16)式は、生産量と出荷量の差の一部は生産調整によって、残 りは在庫の調整によって吸収されることを意味している17)。これは、在庫の 生産平準化機能を表している(1)(2)式の帰結である18)。 ここで、この経済の均衡状態について考えよう。Z = ˙˙ Y = 0、および (12)(13)(16)式から、均衡生産量Y∗は Y∗= D = (B + I)/(1− c) (17) と求まる。さらに、Z = ˙˙ Y = 0、および(4)(7)(9)(15)式から、在庫ストック 量Z∗は Z∗= z(Y∗) (18) となる。さらに、Z = ˙˙ Y = 0、および(4)(7)∼(11)(14)(17)(18)式を考慮す ると 15) (14) 式を考慮すると (1)(2)(8)(9) 式から、Iu n− ˙Y = Y − Ydとなり、これより (15) 式を 得る。 16) これは、通常の 45 度線分析における生産調整の説明と整合的である。 17) 例えば、生産量が出荷量を上回っている場合、一部は生産の減少により、残りは在庫の増加に よって吸収されることを意味している。 18) 村田(2001)においては、生産平準化機能に関する定式化が不十分であったために、生産量と 出荷量の差はすべて在庫の変動によって吸収され、 ˙Z = Y− D と表されている。村田(2001、 p.68)を参照されたい。
InP = I B n = I S n= 0 (19) が求まる19)。つまり、均衡においては、生産量と出荷量が等しくなり、在庫 ストックは望ましい在庫量に等しくなる。また、生産平準化、バッファー・ス トック機能による在庫投資および、ストック調整型在庫投資はすべてゼロと なる。
3. 生産量と在庫ストックの変動要因
本節では、生産量と在庫ストックの動学的特性を分析し体系の変動要因につ いて考察しよう。その際、村田(2004)にしたがい、出荷量の変化に伴う望ま しい在庫ストックの変化を表すz0の大きさに着目して考察する20)。つまり、 z0の値を生産平準化機能と品切れ防止機能の相対的な大きさの指標と見なす のである。 (1) 体系の動学的特性、およびY = 0˙ 線とZ = 0˙ 線の傾き まず、生産量と在庫ストックの体系の安定性と振動特性について吟味する。 (1)(4)(10)(12)∼(14)式を考慮すると ˙ Y =−β(1 − c)Y + βλZd− βλZ + β(B + I) (20) となる。また、(12)(13)(16)(20)式より ˙ Z = (1− β)(1 − c)Y + βλZd− βλZ − (1 − β)(B + I) (21) と求まる。(20)(21)式を均衡点(Y∗、Z∗)の近傍で線形化すると 0 @Y˙ ˙ Z 1 A = 0 @ −β{1 − c(1 + λz0)} − βλ (1− β)(1 − c) + cβλz0 − βλ 1 A 0 @Y − Y∗ Z− Z∗ 1 A (22) を得る。上式の係数行列をJとすると、 Det.J = βλ(1− c) > 0 (23) TraceJ =−β{1 − c + λ − cλz0} (24) 19) 特に、(17) 式の結果は、通常の 45 度線分析における均衡国民所得と同じ式である。 20) 上でも述べたように、村田(2004)によると、品切れ防止機能が生産平準化機能を上回っている 場合は z0の値がプラス、逆に、生産平準化機能が品切れ防止機能を上回っている場合はマイナ スとなる。詳しくは、村田(2004、pp.102-104)を参照されたい。となる。これより、 ① z0< (1− c + λ)/cλならば、体系は安定 (25) ② z0> (1− c + λ)/cλならば、体系は不安定 (26) となる21)。次に、生産量と在庫ストックの動きを見るために、線形微分方程式 体系(22)式の特性方程式の判別式を計算すると、 判別式= β2{(1 − c) + λ(1 − cz0)}2− 4(1 − c)λ (27) を得る。これより、線形微分方程式体系(22)式が振動を伴うための必要十分 条件は次のように求まる22)。 (1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cλβ < z0 < (1− c + λ)/cλ + 2{(1 − c)λ}1/2/cλβ (28) この(25)(26)(28)式から体系の安定性と振動について、z0の大きさを指標と して、第7図のように描ける。 第 7 図 体系の安定性と循環 1 − c + λ cλ − 1 − c + λ cλ + 1 − c + λ cλ ቯ ᓴⅣ㧔ᝄേ㧕 ਇቯ Z0 2p(1− c)λ cλβ 2p(1− c)λ cλβ この第7図からわかるように、z0が(1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cλβ より小さい場合、体系は安定的に収束していくが、この値を超えると振動運動 が発生する。さらに、z0が(1− c + λ)/cλよりも大きくなると体系は発散的 な振動となり、(1− c + λ)/cλ + 2{(1 − c)λ}1/2/cλβを超えるに至っては振 動せずに発散する。言い換えると、生産平準化機能に比べて品切れ防止機能が 強くなり、z0がマイナスからプラスに転じるにしたがい体系の不安性が増大す るのである23)。 21) z0< (1− c + λ)/cλ の場合、TraceJ < 0 となり体系は安定的となる。 22) 微分方程式体系が振動する必要十分条件は、特性方程式の判別式が負なることである。 23) 例えば、生産平準化機能が弱く β が 0.8 であると仮定しよう。また、限界消費性向を 0.8、λ
(2) z0の値とY = 0˙ 線、Z = 0˙ 線の傾き 次に、Y = 0˙ 線とZ = 0˙ 線の傾きを求めよう。まず、(20)式よりY = 0˙ 線 の傾きを求めると dY dZ ˛ ˛ ˛ ˛˙ Y =0 =− λ 1− c(1 + λz0) (29) を得る。よって、 ① z0< (1− c)/cλならば、Y = 0˙ 線の傾きはマイナス (30) ② z0> (1− c)/cλならば、Y = 0˙ 線の傾きはプラス (31) となる24)。また、(21)式からZ = 0˙ 線の傾きを求めると dY dZ ˛ ˛ ˛ ˛˙ Z=0 = βλ (1− β)(1 − c) + cβλz0 (32) となり、これより、 ① z0<−(1− c)(1− β)/cβλならば、Z = 0˙ 線の傾きはマイナス (33) ② z0>−(1 − c)(1 − β)/cβλならば、Z = 0˙ 線の傾きはプラス (34) を得る25)。さらに、˙ Y = 0線とZ = 0˙ 線の傾きの大小関係を計算すると dY dZ ˛ ˛ ˛ ˛˙ Z=0 −dY dZ ˛ ˛ ˛ ˛˙ Y =0 = λ(1− c) {1 − c(1 + λz0)}{(1 − β)(1 − c) + cβλz0} (35) と求まり、 ① − (1 − c)(1 − β)/cβλ < z0< (1− c)/cλならば、 ˙ Y = 0線の傾き< ˙Z = 0線の傾き (36) ② z0<−(1 − c)(1 − β)/cβλ < 0ならば、 ˙ Y = 0線の傾き> ˙Z = 0線の傾き (37) ③ (1− c)/cλ < z0ならば、Y = 0˙ 線の傾き> ˙Z = 0線の傾き (38) を宮川(1998)、内閣府(2009)の実証結果を参考に 0.3 と仮定すると、 (1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)/λ}1/2/cλβ =−0.199 < 0 (1− c + λ)/cλ = 2.08 となる。また、上でも述べたように、内閣府(2009)によると、限界在庫率 z0(D) は 0.8∼1.8 と推計されている。この例の場合、体系は安定的に振動することがわかる。 24) z0< (1− c)/cλ の場合、(29) 式より ˙Y = 0 線の傾きはマイナスとなる。 25) z0<−(1 − c)(1 − β)/cβλ の場合、(1 − β)(1 − c) + cβλz0< 0 となり、(32) 式より ˙ Z = 0 線の傾きはマイナスとなる。
を得る。 次に、(1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cλβと−(1 − c)(1 − β)/cβλの大 小関係を比較すると (1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cλβR −(1 − c)(1 − β)/cβλ ⇔ 1 − c + βλ R 2{(1 − c)λ}1/2 ⇔ β R 2{(1 − c)/λ}1/2− (1 − c)/λ (39) を得る26)。よって、 λがある程度小さい場合は、 β < 2{(1 − c)/λ}1/2− (1 − c)/λ (40) となり27)、 (39)(40)式から (1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cλβ <−(1 − c)(1 − β)/cβλ (41) を得る。 以上の考察から、z0の値について、第8図のようにⒶ∼Ⓕの6つに場合分 けができる28)。 それぞれの場合について、Z = 0˙ 線の傾きとY = 0˙ 線の傾きと変数の動き を示すと、以下のようになる。 Ⓐ z0< (1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cβλ Z = 0˙ 線の傾き< ˙Y = 0線の傾き< 0となり、循環(振動)を伴わ ない安定的な体系29) 26) (1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cλβ − [−(1 − c)(1 − β)/cβλ] = (1− c + βλ)/cβλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cλβ と計算でき、1− c > 0 を考慮すると (39) 式を得る。 27) 上と同様に、限界消費性向を 0.8、λ を宮川(1998)等の実証結果にあわせて 0.3 とすると、 2{(1 − c)/λ}1/2− (1 − c)/λ = 0.9663 と求まるので、0 < β < 1 を考慮すると (40) 式が 成立している可能性が高いと考えられる。 28) ただし、第 8 図では、(1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cβλ < 0 を仮定している。この 条件を満たす β の値は、β < 2{(1 − c)λ}1/2 /(1− c + λ) となる。ここで、限界消費性向 c を 0.8、λ を前と同様に 0.3 と仮定すると、2{(1 − c)λ}1/2 /(1− c + λ) = 0.98 となる。 0 < β < 1 であるので、この例では明らかに、β < 2{(1 − c)λ}1/2 /(1− c + λ) が成立して いると考えられる。 29) (30)(33)(37) 式より、 ˙Z = 0 線の傾き < ˙Y = 0 線の傾き < 0 を得る。
第 8 図 z0の値と位相図 1 − c + λ cλ − 1 − c + λ cλ 1 − c + λcλ + 1 − c cλ − (1 − β)(1 − c) λβ Ⓐ Ⓑ Ⓒ 0 Ⓓ Ⓔ Ⓕ Z0 2p(1− c)λ cλβ 2p(1− c)λ cλβ Ⓑ (1− c + λ)/cλ − 2{(1 − c)λ}1/2/cβλ < z0<−(1 − c)(1 − β)/cβλ Z = 0˙ 線の傾き< ˙Y = 0線の傾き< 0となり、循環(振動)を伴う 安定な体系30) Ⓒ −(1 − c)(1 − β)/cβλ < z0< (1− c)/cλ Y = 0˙ 線の傾き< 0 < ˙Z = 0線の傾きとなり、循環(振動)を伴う安 定な体系31) Ⓓ (1− c)/cλ < z0< (1− c + λ)/cλ 0 < ˙Z = 0線の傾き< ˙Y = 0線の傾きとなり、循環(振動)を伴う安 定な体系32) Ⓔ (1− c + λ)/cλ < z0< (1− c + λ)/cλ + 2{(1 − c)λ}1/2/cβλ 0 < ˙Z = 0線の傾き< ˙Y = 0線の傾きとなり、循環(振動)を伴う不 安定な体系33) Ⓕ (1− c + λ)/cλ + 2{(1 − c)λ}1/2/cβλ < z034) 0 < ˙Z = 0線の傾き< ˙Y = 0線の傾きとなり、循環(振動)を伴わな い不安定な体系35) 30) (30)(33)(37) 式より、 ˙Z = 0 線の傾き < ˙Y = 0 線の傾き < 0 となる。 31) (30)(34)(36) 式より、 ˙Y = 0 線の傾き < 0 < ˙Z = 0 線の傾きとなる。 32) (31)(34)(38) 式より、0 < ˙Z = 0 線の傾き < ˙Y = 0 線の傾きとなる。 33) (31)(34)(38) 式より、0 < ˙Z = 0 線の傾き < ˙Y = 0 線の傾きとなる。 34) 限界消費性向 c を 0.8、λ を宮川(1998)の実証結果にあわせて 0.3 とすると、 (1− c + λ)/cλ + 2{(1 − c)λ}1/2 /cβλ = 2.08 + 2.04/β となる。0 < β < 1 であるので、z0は少なくとも 4.12 より大きくなる。z0は出荷量の 1 単 位の増加に対して、望ましい在庫ストックを限界的にどれくらい増やすかという限界在庫率を 示しており、内閣府(2009、p.21)によると、0.8∼1.8 と推計されている。したがって、z0が 4.12 より大きい値をとることは、現実にはあり得ないと思われる。 35) (29)(32)(36) 式より、0 < ˙Z = 0 線の傾き < ˙Y = 0 線の傾となる。
(3) 生産平準化機能と品切れ防止機能 生産平準化機能に対する品切れ防止機能の相対的な大きさの指標であるz0 の値による上の分析から、生産平準化機能と品切れ防止機能について次のよう に考えられる。 生産平準化機能に対する品切れ防止機能の相対的な大きさの指標であるz0 の値がマイナス、言い換えれば、生産平準化機能が大きく作用している場合、 生産量と在庫ストックは循環を伴わない安定な動きとなる36)。また、生産平 準化機能に比べて品切れ防止機能が強くなるとz0の値はマイナスからプラス に転じ、生産量と在庫ストックの動きは安定的な循環運動となる。さらに、品 切れ防止機能が強まるにつれて生産量と在庫ストックの動きは発散的な循環変 動となり、やがて、循環を伴わない発散的な動きとなる。この分析結果から、 生産平準化機能が大きい場合は、生産量と在庫ストックの動きは循環変動を伴 なわず安定的であり、品切れ防止機能が相対的に大きくなるにつれて循環変動 が生じ、かつ体系の安定性は弱まっていくことがわかる。その意味では、品切 れ防止機能こそが生産量と在庫ストックの循環的変動や不安定な動きを発生さ せる原因と考えられる。逆に、生産平準化機能は循環的変動等を抑える役割を 果たしていると言えよう37)。
4. 在庫循環のメカニズム
本節では、第3節での分析を踏まえて、在庫循環のメカニズムを明らかにし たい。以下では、z0がⒹの領域、つまり (1− c)/cλ < z0< (1− c + λ)/cλ (42) の領域にあると仮定して分析を行なう38)。 36) 村田(2004)の分析結果からも、z0がマイナスの場合には生産平準化が成立していることが明 らかである。 37) この点は、従来、明確に分析されてこなかった点であり本稿の一つの貢献と考えられる。 38) 限界消費性向 c を 0.8、λ を宮川(1998)、内閣府(2009)の実証結果にあわせて 0.3 とする と、(1− c)/cλ = 0.83、(1 − c + λ)/cλ = 2.08 と求まる。上でも述べたように、内閣 府(2009、p.21)によると、z0の値は 0.8∼1.8 と推計されている。また、z0がⒸの領域にあ る場合についても全く同様の分析が当てはまる。この場合も、c を 0.8、λ を 0.3 とすると、 −0.83 < z0< 0.83 と求まる。(1) 生産量と在庫ストックの動き ここでは、生産量、出荷量、在庫ストック、在庫率(在庫ストック/生産量) 等の経済変数の動きに焦点を合わせて各循環局面の特徴を分析しよう。Ⓓ領域 にz0がある場合、位相図は第9図のように描ける。 第 9 図 生産量と在庫ストックの位相図 I in Z* p q 0 = 0 Z Y* Y Y= 0 ( = 0) ・ I u n Z= 0 ・ a b c d e f g h i j k l m n Σ Τ Υ Φ Χ Ψ まず、生産量Y はe点で最も大きくなり、h点を経てk点で最小となる。 出荷量は(12)(13)式を考慮すると生産量Y とまったく同じ動きをすることが わかる。また、在庫ストックZはa点で最小となっており、d点を経てg点 で最大となり再びm点で最小となる。 次に、在庫率について見ておこう。在庫率はZ/Y で表されるので、例えば、 i点では∠iopで表される。したがって、c点で最小であり、その後増加しi点 で最大となる。i点を過ぎると在庫率は再び減少していく。これらの時系列的 な動きを図示したのが第10図である。
第 10 図 生産量、在庫ストックと在庫率の動き a b c d e f g h i j k l m n a b c d e f g h i j k l m n a b c d e f g h i j k l m n Z Y Z* Y * Z Y Z Y (ޓ)* (2) 在庫投資、意図した在庫投資、意図せざる在庫投資の動き 次に、在庫投資、意図した在庫投資、意図せざる在庫投資の動きについて見 ておこう。まず、在庫投資の動きについて見てみよう。在庫投資はZ˙ で表さ れるので、a点で在庫投資はゼロとなっており、その後、増加していきe点の あたりで最大となりg点でまたゼロとなる。その後、減少していきk点あた りで最も小さくなり再びm点でゼロとなる。 次に、意図した在庫投資Ii nは(9)式よりストック調整型在庫投資に等しい。 したがって、(4)式より、意図した在庫投資がゼロとなるIni = 0線の傾きを 求めると
dY dZ ˛ ˛ ˛ ˛ I=0 = 1 cz0 > 0 (43) を得る。さらに、Ii n= 0線の傾きとZ = 0˙ 線の傾きの大きさを比べると、 dY dZ ˛ ˛ ˛ I=0− dY dZ ˛ ˛ ˛˙ Z=0 = (1− β)(1 − c) cz0{(1 − β)(1 − c) + cβλz0} (44) となる。これより、Ini = 0線の傾き> ˙Z = 0線の傾き> 0が求められる39)。 また、Ii n= 0線の傾きとY = 0˙ 線の傾きの大きさを比べると dY dZ ˛ ˛ ˛ ˛ I=0 −dY dZ ˛ ˛ ˛ ˛˙ Y =0 = 1− c + cz 0(1− λ) cz0{1 − c(1 + λz0)} (45) を得、Y = 0˙ 線の傾き> Ini = 0線の傾きを得る40)。これを図示したのが、第 9図のIi n= 0線である。さらに、(4)式より、Ini = 0線の右側ではIni < 0と なり、左側ではIni > 0となっていることがわかる。 また、(15)式より、 Inu=−(1 − β) ˙Y /β (46) と求まるので、Inu= 0線とY = 0˙ 線とが一致していることがわかる41)。ま た、(46)式より、Iu n = 0線の右側ではInu> 0であり、左側ではInu< 0と なっていることが理解できよう。 以上の分析から、在庫投資Z˙、意図した在庫投資Ii n、意図せざる在庫投資 Inuの動きに関して、領域を第9図のⅠ∼Ⅵのように6つに分けることができ る。この6つの領域と境界線上でのそれぞれの在庫投資の動きは、(7)式を考 慮すると次のように整理できる。 領域 Ⅰ 在庫投資Z > 0˙ 、意図した在庫投資Ini > 0、意図せざる在庫投資I u n< 0 Inu= 0線上 在庫投資Z =˙ 意図した在庫投資Ii n> 0、 意図せざる在庫投資Inu= 0 39) z0はⒹ領域にあるので、z0> 0 である。また、z0がⒸの領域にある場合も以下の分析結果は 変わらない。 40) 0 < c < 1、0 < λ < 1、および、z0> 0 より、(45) 式右辺の分子はプラスとなる。分母はマ イナスであるので、 ˙Y = 0 線の傾き > Ii n= 0 線の傾きとなる。 41) (46) 式を変形すると、 ˙Y =−βIu n/(1− β) となり、意図せざる在庫の減少(増加)があると きは生産を増加(減少)させるという、教科書的な生産調整の説明とも整合的となっている。
領域 Ⅱ 在庫投資Z > 0˙ 、意図した在庫投資Ini > 0、意図せざる在庫投資Inu> 0 Ii n= 0線上 在庫投資Z =˙ 意図せざる在庫投資Iu n> 0、意図した在庫投資Ini = 0 領域 Ⅲ 在庫投資Z > 0˙ 、意図した在庫投資Ii n< 0、意図せざる在庫投資Inu> 0 ˙ Z = 0線上 在庫投資Z = 0˙ 、意図した在庫投資Ii n=−意図せざる在庫投資Inu< 0 領域 Ⅳ 在庫投資Z < 0˙ 、意図した在庫投資Ii n< 0、意図せざる在庫投資Inu> 0 Inu= 0線上 在庫投資Z =˙ 意図した在庫投資Ini < 0、意図せざる在庫投資Inu= 0 領域 Ⅴ 在庫投資Z < 0˙ 、意図した在庫投資Ii n< 0、意図せざる在庫投資Inu< 0 Ini = 0線上 在庫投資Z =˙ 意図せざる在庫投資Iu n< 0、意図した在庫投資Ini = 0 領域 Ⅵ 在庫投資Z < 0˙ 、意図した在庫投資Ii n> 0、意図せざる在庫投資Inu< 0 ˙ Z = 0線上 在庫投資Z = 0˙ 、意図した在庫投資Ii n=−意図せざる在庫投資Inu> 0 (3) 在庫循環図と在庫投資の動き 次に、第4図∼第6図で観察された在庫循環図を理論的に導出しよう。そ こで、第10図から生産量の伸び率と在庫ストック伸び率の時系列グラフを描 いたのが第11図である。さらに、第11図から、出荷・在庫バランスのグラフ を描くと第12図のようになる。 第1節の第2図と第3図を観察すると、現実のデータでは出荷(生産量)伸 び率がピークに達した後に出荷・在庫バランスがゼロ%ラインを上から下に横 切り、出荷の伸び率がボトムに達してから出荷・在庫バランスがゼロ%ライン
第 11 図 生産量と在庫ストックの伸び率 a b c d e f g h i j k l m n Y ・ Y Y ・ Y Z ・ Z Z ・ Z 0 第 12 図 出荷・在庫バランス ጊ ⼱ a 0 b c d e f g h i j k l m n − Y ・ Y Z・Z を下から上に横切っている。さらに、第2図から、出荷・在庫バランスがゼロ %ラインを上から横切るのは景気の山であり、下から横切るのは景気の谷であ ることが読み取れる。モデル分析から得られた第11図と第12図においても、 生産量がピーク(ボトム)に達した後に出荷・在庫バランスがゼロ%ラインを 上(下)から下(上)に横切っていることが読みとれる。したがって、第12 図においても、出荷・在庫バランスがゼロ%ラインを上から横切る点が景気の 山であり、下から横切る点が景気の谷であると考えることができる。さらに、 第11図と第12図から生産量の伸び率と在庫ストック伸び率の循環図を作成
すると第13図のようになる42)。 第 13 図 在庫循環図 ࿁ᓳዪ㕙 ⓍჇߒዪ㕙 Ⓧ߇ࠅዪ㕙 ᥊᳇ߩጊ ᥊᳇ߩ⼱ a k g e Y ・ Y Z ・ Z ⺞ᢛዪ㕙 さらに、この第13図の在庫循環図は、第1象限、第4象限、第3象限、第 2象限の順に、それぞれ、在庫積み増し局面、在庫積み上がり局面、調整局面、 回復局面と呼ばれている。これらの局面と第9図の領域Ⅰ∼領域Ⅵにおける在 庫投資の変動を対応させたのが第14図である43)。 第14図からもわかるように、これらの局面はそれぞれ、在庫投資がプラス で拡大している局面、在庫投資はプラスであるが縮小している局面、在庫投資 がマイナスで拡大していう局面、在庫投資はマイナスであるが縮小している 局面に対応している44)。この第 14図から、それぞれの局面の特徴が読み取れ る45)。 42) 第 13 図では、第 12 図の景気の山と谷を考慮して、出荷の伸び率と在庫ストックの伸び率が等 しい点をそれぞれ景気の山と谷に特定している。 43) 本節第 2 項の分析結果から、意図した在庫投資、意図せざる在庫投資、在庫投資の推移を図示 している。 44) ここでの在庫投資は、意図した在庫投資と意図せざる在庫投資を加えた ˙Z を意味している。 45) この各局面における、意図した在庫投資と意図せざる在庫投資の動きを理論的に導いたことも本 稿の一つの貢献である。
第 14 図 在庫投資の変動 a b 0 c d e f g h i j k l m n ⓍჇߒዪ㕙 Ⓧ߇ࠅዪ㕙 ⺞ᢛዪ㕙 ࿁ᓳዪ㕙 I in Z ・ I u n 山 谷 まず、在庫積み増し局面では意図せざる在庫の切り崩しが減少し、同時に、 景気の山を挟み意図した在庫投資が増加から減少に転じながらプラスで推移し ている46)。次に、在庫積み上がり局面では、意図せざる在庫投資の増加と意図 した在庫投資の減少が生じているが、意図した在庫投資の減少が大きいため、 全体として在庫ストックの増加は低下してきている47)。また、調整局面では、 意図せざる在庫の積み増しが減少し始め、景気の谷の前後で、マイナスではあ るが意図した在庫投資の減少が増加に転じている。最後に、回復局面では、意 図した在庫投資がマイナスからプラスに転じ急速に増加している。他方、意図 せざる在庫の切り崩しが増えているが、意図した在庫投資の増加に追いつか ず、全体として在庫ストックの減少が小さくなってきている48)。 (4) 在庫循環のメカニズム 最後に、このモデルにおける景気循環のメカニズムを考察しよう。いま、経 済が第9図のa点にあるとしよう。a点では総需要が総供給を上回っている ため生産量と出荷量の増加が生じている。また、在庫ストックは最低水準にあ る。第14図からわかるように、a点では、意図した在庫投資はプラスとなっ 46) したがって、「在庫の積み増し」にとっては意図した在庫投資の役割が大きいと考えられる。 47) その意味では、「在庫の積み上がり」というのは意図せざる在庫投資の動きを意味するものと考 えられる。 48) その意味では、回復局面においては、意図した在庫投資の役割が大きいと考えられる。
ているが49)、意図せざる在庫投資はマイナスであり50)、この両者が拮抗し在 庫投資の水準はゼロとなっている。このプラスの意図した在庫投資は総需要を 押し上げる一因となり生産量の増加をもたらす。生産量の増加は出荷量の増 加をもたらすが、出荷量の増加は生産量の増加ほど大きくはなく、意図せざる 在庫投資の切り崩しが減少し、結果として、在庫ストックの増加がもたらされ る。また、生産の増加に伴いc点で在庫率が最低となる。出荷量の増加に伴い 望ましい在庫ストックが上昇するが、在庫ストックの増加の方が大きいため意 図した在庫投資は減少に転じる。やがて、e点において、生産量と出荷量の増 加が止まり意図せざる在庫投資がゼロとなる51)。他方、意図した在庫投資は 減少し続けているので総需要は低下する。これにより、生産量と出荷量が減少 に転じる。出荷量の減少は望ましい在庫ストックを低下させるが、在庫ストッ クは増加しているので、意図した在庫投資は減少し続ける。これが、さらに総 需要を低下させ生産と出荷量の減少を招き意図した在庫投資を減少させる。や がて、f点で意図した在庫投資はゼロとなり、この点を過ぎると意図した在庫 投資はマイナスとなる。他方、生産量の減少は、総需要の低下が生産の低下を 上回っているために生じているので52)、意図せざる在庫投資が積み上がって くる。生産平準化機能よりも品切れ防止機能の方が強いため、マイナスの意図 した在庫投資の影響が強く、やがて、g点で在庫ストックの増加が止まり在庫 ストックは減少に転じる。このg点では、この意図せざる在庫投資の増加とマ イナスの意図した在庫投資が拮抗し在庫ストックは最大となっている。出荷量 の低下に伴い意図した在庫投資は減少し続けるため、在庫ストックは減少に転 じる。在庫ストックの減少により、意図した在庫投資の減少が止まる。これに より、総需要の低下に歯止めがかかり生産量の減少幅が小さくなり、やがて、 k点で生産の減少が止まり上昇に転じる。この生産の増加は出荷量の増加をも たらし、望ましい在庫ストックを上昇させる。他方、在庫ストックは減少して 49) z0> 0 であるので、出荷量の増加は望ましい在庫ストック Zdを増加させ、これにより、意図 した在庫投資が増加する。 50) 在庫の切り崩しが行なわれている。 51) (48) 式より、生産量の増加が止まると意図せざる在庫投資はゼロとなる。 52) (1) 式より、生産の減少は予想需要量の低下が生産量の低下より大きいことを意味している。
いるので、意図した在庫投資が上昇し始める。また、生産量の減少と呼応して 意図せざる在庫投資は減少していくが、k点を過ぎて生産量が増加に転じると 意図せざる在庫投資もマイナスに転じる53)。生産量、出荷量の増加と在庫ス トックの減少によって、意図した在庫投資は増加し、これによって総需要がさ らに増加し、意図せざる在庫投資の低下と意図した在庫投資の一層の増加を促 す。品切れ防止機能の方が生産平準化機能よりも強いため、意図した在庫投資 の増加の影響が大きく、やがて、m点で在庫ストックの低下が停止する。他 方、m点では、総需要が生産を上回っているために、生産量は増加し続けてい る。このようにして、在庫循環の一循環がもたらされるのである。
おわりに
本稿では、在庫調整機能として、生産平準化機能とバッファー・ストック機 能を区別し、さらに品切れ防止機能を考慮した理論モデルを構築し、在庫循環 の発生メカニズムと循環エンジンを明らかにすることができた。また、理論モ デルから導かれる出荷・在庫バランスや在庫や出荷の伸び率の動きは、現実の データの動きときわめて整合的であるとも明らかになり、その意味で、現実の 在庫循環を説明する理論モデルとしての有用性も大きいと考えられる。 とくに、在庫循環をもたらす要因について、これまで一般的に言われている ように生産平準化機能ではなく、品切れ防止機能であることを明らかにできた ことは本稿の大きな貢献であろう。言い換えれば、生産平準化機能は在庫の変 動を安定化する役割を果たし、循環変動などを生起させるのは品切れ防止機能 であることが理論的に明らかになった。つまり、在庫投資以外の需要要因の変 動によって品切れ防止機能による生産の集積(bunching)が生じ、在庫循環 が発生していることが理論的に明らかにされたのである54)。このことは、景 気基準日付で見た短期循環が在庫循環によって生じたものではなく、むしろ、 53) 生産平準化機能により、意図せざる在庫投資は生産量の変化と反対の方向に変化する。これに関 しては、(1)(2) 式を参照のこと。 54) この結果はまた、村田(2004)で明らかにされた在庫保有のマイクロファンデーションとも整合 的である。短期循環の動きに依存して在庫循環が生じていることを意味しており、村田 (2009)の分析結果とも整合的である55)。 さらに、在庫循環図に関して、これまで必ずしも明確ではなかった在庫局面 について、在庫投資、意図した在庫投資、意図せざる在庫投資の動きを明らか にできたことも大きい56)。つまり、在庫循環図において、在庫積み増し局面、 在庫積み上がり局面、調整局面、回復局面の各局面の位置を明確にし、これら の局面における在庫投資、意図した在庫投資、意図せざる在庫投資の動きを明 らかにし、各局面の特徴を浮き彫りにすることができたのである57)。 参考文献
Abel, A.(1985), “Inventories, Stock-Out and Production Smoothing,” Review
of Economic Studies, vol.52.
Blinder, A.S.(1980), “Inventories in the Keynesian Macro Model,” Kyklos, vol.33, pp.585-614.
Blinder, A.S.(1980), “Inventories and Sticky Prices: More on the Microfoun-dations of Macroeconomics,” American Economic Review, vol.72, pp.334-348,.
Blinder, A.S.(1981), “Inventories and the Structure of Macro Models,”
Amer-ican Economic Association Papers and Proceedings, pp.11-16.
Blinder, A.S.(1986), “Can the Production Smoothing Model of Inventory Behavior be Saved?” Quarterly Journal of Economics, vol.101, pp.431-53,.
Blinder, A.S. and L. J. Maccini(1991), “Taking Stocks : A Critical Assess-ment of Recent Research on Inventories,” Journal of Economic
Perspec-tive, vol.5, pp.73-96. 55) 村田(2009b)においては、寄与度で見た場合、GDP 成長率キチンサイクルに影響を与えている は在庫投資ではなく設備投資や住宅投資であるとの分析結果が出ている一方で、在庫投資寄与度 の周期解析からは平均 3.49 年の周期が抽出されている。このことは、在庫投資それ自体には短 期の循環が存在するが、GDP 成長率キチンサイクルには影響を与えていないことを意味する。 56) 例えば、金森・景気循環学会(2002)における在庫循環図での在庫局面と第 13 図の在庫循環 図での在庫局面は大きく異なっている。 57) この点も、本稿のもう一つの大きな貢献であるといえる。
Darren, F. and L. Philip(1995), “Inventories and Business Cycle,” Economic
Record, vol.71, pp.27-39.
Franke, R. and T. Lux(1993), “Adaptive Expectation and Perfect Foresight in Nonlinear Metzlerion Model of Inventory Cycle,” Scandinarvian Journal
of Economics, vol.95, pp.355-363.
Kahn, J.A.(1987), “Inventories and the Volatility of Production,” American
Economic Review, vol.77.
Kahn, J.A.(1992), “Why is Production More Volatile than Sales? : Theory and Evidence on the Stockout-Avoidance Motive for Inventory Holding,”
Quarterly Journal of Economics, vol.57, pp.113-29.
Topel, R.H.(1982), “Inventories, Layoffs, and the Short-Run Demand for Labor,” American Economic Review.
Yoshikawa, H.(1984), “Demand-Supply Constraints and Inventory Stock in Macroeconomics Analysis,” The Economic Studies Quarterly, vol.35. 秋山・奥野・松山(1984)、「在庫変動と雇用調整」、『金融研究』第 3 巻第 2 号. 浅子和美・坂本和典 他(1991)、「戦後日本の景気循環:定型化された事実」、『フィ ナシャル・レビュー』、大蔵省財政金融研究所。 足立英之(1994)、「在庫投資と経済変動」、『マクロ動学の理論』第 8 章、有斐閣。 飯田泰之(2000)、「在庫投資と Production Smoothing −季節性を用いた検証−」、 2000 年度日本経済学会報告論文。 宇沢弘文(1986)、「在庫調整とインフレーションの安定性」、『経済動学の理論』、第 2 章、東京大学出版会。 小塩隆士(1989)、「在庫の保有動機と景気変動」、『ESP』、経済企画庁。 小塩隆士(1995)、「製品在庫と生産行動:日本の自動車産業の場合」、『日本経済研 究』、第 28 号。 景気循環学会・金森久雄編(2002)、『ゼミナール景気循環入門』、東洋経済新報社。 小巻泰之(2000)、「景気調整機能の変化とその検証 −在庫の保有動機−」、2000 年 度日本経済学会報告論文。 篠原三代平(1994)、『戦後 50 年の景気循環』、日本経済新聞社。 田原昭四(1998)、『日本と世界の景気循環』、東洋経済新報社。 日本開発銀行調査(1993)、「近年の在庫投資と景気変動」。 日本銀行調査月報(1990)、「在庫投資の構造変化を巡って −生産・在庫管理技術 の発達とその影響−」。 堀江康煕・浪花貞夫・石原 鈴(1987)、「景気変動パターンに関する検討」、『金融 研究』、第 6 巻、第 1 号。 宮川 努(1988)、「わが国における在庫投資の決定要因」、『現代経済学研究』、東 京大学出版会。
村田 治(2001)、「在庫循環と景気変動」、『経済学論究』、第 54 巻、第 3 号。 村田 治(2004)、「在庫の機能と在庫投資」、『経済学論究』、第 58 巻、第 3 号。 村田 治(2009)、「複合循環と循環周期」、『経済学論究』、第 63 巻、第 2 号。 森 一夫(1997)、『日本の景気サイクル』、東洋経済新報社。 横溝雅夫・日興リサーチセンター編(1991)、『景気循環で読む日本経済』、日本経 済新聞社