創立50周年記念特集:情報処理技術の未来地図 9.パターン認識・マルチメディア技術-今後の技術と新たな産業創出-
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(2) 50. th Anniversary Information Processing Society of Japan 1970. 技術. 1980. 1990. 2000. 古典的手法. 数理モデル・統計的手法. 基本的分析手法. 統計的モデル 文脈利用 . 発見的手法. 実用化. 製品 検査. 文字. 郵便番号 読み取り. ものづくり産業と企業経営. 環境. 小語彙 電話系. メディア統合・自動認識 高度文脈利用 . 機械学習. 個別パターン. 映像 画像. 音声. 2010. メディア統合 センサ統合. パターンの抽出. 意味理解. 生体認証 指紋・掌紋・網膜 印刷文字OCR 手書き文字OCR 大語彙 電話系. 人物検知 顔認識. 知識発見. Web画像検索 マルチメディア ディジタルアーカイブ. ナンバー 読み取り. メディア横断検索 言語理解・知識検索. ディクテーション. Web音声検索. カーナビ音声操作 . Host. WS. PC. Computing. Client-Server. Internet. Mobile PC Cloud. Sensor Unification Ubiquitous. 図 -1 パターン認識の研究と実用化,その歴史と今後. 究も精力的に行われるようになった (図 -1) .. ト,あるいは,画像に作成者が付与したアノテート情報 のみを用いて認識したと解釈できる.技術視点では, 「パ. ■実用化の動向. ターン認識」の実用化成功事例というには抵抗を感じる. 前述のように,初期のパターン認識では,入力のため. 読者も多いかもしれないが,今後の実用化を考察する上. に作成あるいは事前処理されたパターンを対象とし,あ. では重要な事例であろう.. いまい性のない少数の意味を扱うものであった.郵便番 号の認識,製品や農作物の形状の検査システム,数字だ けを対象とする電話系音声認識などが主な実用化成功例 である.これらは,コンピュータがデータを扱う際の人. パターン認識の今後の展開. 手による入力の代替手段を目的とするものであった.産 業上の成功の鍵は,技術的な制約の上で,省力化による 利益が大きい対象を選択することにあった.. ■パターン認識とコンピューティングの進化. 前章に述べたように,技術視点では,統計手法,大量. 統計的な手法が用いられるようになると,人間のパタ. データの活用という大きな発展があり,実用的な成功は. ーン処理の代替ではなく,より複雑で人間では扱いにく. それに対応し. いパターンの利用や,自然界の映像や音から,対象パタ. 1)明確な入力用データから明確な少数のカテゴリを識. ーン自体の抽出が可能となり,その実用化が進展した.. 別する,人間のパターン認識の代替,省力化. 前者の事例としては指紋,掌紋,網膜などのパターンを. 2)統計的な手法,高速演算で可能となった人間が扱う. 用いる個人認証があり,後者の事例としては,走行車輌. ことが困難なパターンの認識,対象パターンの抽出. のナンバー読み取り,デジタルカメラの顔検出,さらに. 3 )文 脈 や イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 大 量 な 情 報 の 活 用 と. は,音声認識を用いた用件抽出によるコールセンタの回. 時代を追って大別することができる. 線振り分けシステムなどが挙げられる.. これは,規定された目的のために設計されたデータ処理. 文脈の利用,さらに複雑な対象・意味を扱う実用化例. 系,ネットワークコンピューティング,さらにはクラウ. も増えている.カーナビにおける音声認識は,対話の枠. ドコンピューティングに対応付けて考えることが可能で. 組みの中で,文脈情報を規定することで実用化したと考. ある(図 -2).このことは,今後の真の意味のユビキタ. えられる.さらに,最近の音声による Web 情報検索は,. スコンピューティングに,次の時代のパターン認識の方. Web 上に存在する莫大な言語資源を,統計言語モデルと. 法論,実用化成功の鍵があることを示唆する.. して音声理解におけるサイドインフォメーションとして 活用しているのみならず,目的とする検索自体が,Web 情報を音声の認識の意味的制約として利用したと解釈で. ■ パターン認識アルゴリズムの深化. パターン認識を人間の認識過程の実現と考えると,現. き,今後のパターン認識技術を考える上で興味深い.. 状においても,技術課題は山積している.統計的数理モ. 同様に,Web 上の画像検索は,画像というパターン. デルとその学習手法については,継続して,モデリング,. から得られる特徴量ではなく,同一のページ内のテキス. 学習,探索手法をさらに深化させる必要がある.利用可. 510. 情報処理 Vol.51 No.5 May 2010.
(3) 9. パターン認識・マルチメディア技術 間ができるパターン認識の実現は,ロボットなどで重要. 過去: Host Computing 意味:活用のために設計 目的:データ入力の省力化. Computer. ではあるが,情報産業としての価値は見出しにくい. 今後のコンピューティングで扱うことができる,社会 現象,経済活動,自然現象など,複雑で多様な意味が内 在するデータを対象とし,パターン認識技術でその意味. Pattern. パターン:入力のために作成・加工. を抽出・発見できたとき,大きな産業的価値を創造でき る.ユーザの生活から得られるパターンの中から意味,. 現在: Cloud Computing. 莫大なネットワーク情報から抽出,支援できて初めてユ ビキタスコンピューティングは,価値を持つだろう.パ ターン認識こそが新たなコンピューティングのキー技術. パターン:抽出 文脈情報活用. Pattern. 行動目的や価値基準を抽出,その意味に適合する情報を. と言っても過言ではないだろう.. おわりに. 将来: Ubiquitous Computing Pattern. 意味:利用者の意味づけ 利用者行動からの意味抽出 目的:利用者の行動支援. 意味←目的→文脈. パターン:ユーザを取り巻く 社会現象などからパターンの発見 文脈情報の高度活用. 図 -2 パターン認識とコンピューティング. パターン認識の基盤技術を進歩させるには,解明され ない人間のパターン認識などを対象に地道なチャレンジ が必要である.学際領域であり,研究者が相互に意見交 換ができるコミュニティとして学会の意義も,産学連携 の重要性も高まるだろう.一方で,その技術を,社会現 象などの複雑なデータから意味を抽出する技術として捕 らえたとき,新たな実用化展開と産業創出の可能性が生. 能な情報量は今後さらに大量になり,センサ情報などを. じる.情報を,事前にその意味や価値を規定できるもの. 含め,パターンの文脈として活用できる情報量もますま. とするとき,Web の情報量の爆発を危惧しなくてはな. す増大する.有効なモデリング,効率的な探索,適応化,. らないが,多くの意味と価値が内在するパターン認識の. 適応学習などに進歩を期待したい.. 対象として考えたときは,さらに多くの情報が蓄積利用. また,統計手法で問題となる,学習データの取得方法,. できることに可能性と期待を感じるのである.. より根源的な問題である意味の表現についての研究の重 要度はさらに増すだろう.意味を言語情報として与える 上では,そのあいまい性,文脈依存性をどのように解消 するかが重要である.オントロジーなどの意味知識の表 現と活用,Web 上の大量の言語資源から言語知識を構 築する方法など,自然言語研究との連携のもと,意味モ デルの研究がパターン認識の深化をもたらすだろう.. 参考文献 1) 日浦,他:パターン認識・メディア理解 15 年の進歩,信学会誌, Vol.92, No.8, pp.647-655 (2008). 2) 柳井: 一 般 物 体 認 識 の 現 状 と 今 後, 情 処 論 文 誌,Vol. 48, No. (SIG_16 (CVIM_19)), pp.1-24 (2007). 3) 古井:音声認識の動向 [I];話ことば認識,信学会誌 , Vol.89, No.8, pp.746-751 (2006). 4) 馬場口,他:今なぜグランドチャレンジか,信学会誌,Vol.92, No.8,. pp. 640-642 (2008). 人間の行動・動作認識,医療画像の認識,マルチメデ ィアコンテンツの関連付け,検索など,高い目標をか かげ,技術的なチャレンジを地道に続ける必要がある 4). 従来の手法に加え,認知科学,脳科学の進展が,物理モ デルや心理尺度などに新たな方法論を提供する可能性も あり,学際的取り組みが必要である.. ■実用化・産業創出の新たな展開. 一方,産業上の成功を考える上では,再度,1) 扱うパ ターン,2) 扱う意味あるいは分類,を今後の真のユビキ タスコンピューティング環境で考察する必要がある.人. (平成 21 年 12 月 26 日受付). 村上篤道(正会員) [email protected] 1971 年東北大学・通信工学科卒.同年,三菱電機(株)入社.情報, 通信, マルチメディア技術の研究・開発に従事.ITU,ISO/MPEG 等の国際標 準策定に貢献.現在,開発本部役員技監.博士(情報科学).IEEE 論文 賞 , 米国 R&D100 賞,映像情報メディア学会功績賞 , 電子情報通信学会 業績賞等を受賞.IEEE Fellow.映像情報メディア学会フェロー,本会 フェロー&副会長&評議員.日本工学アカデミー会員. 石川 泰(正会員) [email protected] 1982 年東京工業大学・物理情報工学専攻修了.同年三菱電機(株)入 社.音声処理,HMI の研究開発に従事.工学博士.. 情報処理 Vol.51 No.5 May 2010. 511. ものづくり産業と企業経営. Internet 大量な情報 多くのセンサ活用. 意味:複雑な意味,多様性 目的:大量のパターンの活用.
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