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2017年6月730号医機学

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1.はじめに

臨床検査の結果は,診断と治療における意 思決定を左右する客観的な指標を提供する.一 方,臨床検査のプロセスは,検体採取に始ま り,検体保存・搬送,前処理,測定・結果さら に報告に至るまでの多段階にて構成されてお り,検査結果は各プロセスにおける様々な要因 の影響により変動する可能性がある.このた め,臨床検査の結果の信頼性と客観性を確保す る上で,臨床検査の品質管理,品質保証が重要 となる.国際標準化機構 / 第 212 専門委員会 (ISO/TC212)「臨床検査と体外診断検査シス テム(Clinical laboratory testing and in vitro diagnostic test systems)」は,初めて保健医 療サービスに踏み込んだ ISO 専門委員会とし て 1994 年に設置され,臨床検査の質的な向上 を通して良質な医療・ヘルスケアに貢献するべ く活動してきた1,2).本稿では,ISO/TC212 専 門委員会の活動の概要と展望について述べる.

2.組織と活動概要

1)ISO/TC212 専門委員会の組織と概要 ISO/TC212 専門委員会の議長国は米国(米 国 国 家 規 格 協 会 American National Stand-ards Institute, ANSI) で, 議 長 は Dr. David Armbruster である.事務局は臨床・検査標 準 協 会(Clinical Laboratory and Standards Institute, CLSI)が務める.P-メンバー(Par

ticipating member) は 38 ヶ 国,O-メ ン バ ー (Observing member) は 24 ヶ 国 で,27 の 国 際規格が発行され,20 の国際規格が開発中で ある(2017 年4月現在).本委員会は,5つの作 業グループ Working Group(WG),すなわち WG1:臨床検査の質と能力(Laboratory biorisk management),WG2:基準システム(Reference systems),WG3: 体 外 診 断 用 製 品(In vitro diagnostic products),WG4:微生物学と分子診 断(Microbiology and molecular diagnostics), WG5:検査室のバイオリスクマネジメント(Labo-ratory biorisk management)から構成される.

規格開発作業における重要なしくみとして, 内部リエゾンと外部リエゾンがあり,それぞれ ISO/IEC 内 の 相 互 に関 係 する TC/SC,ISO/ IEC 以外の組織との情報交換をおこなう.前 者には ISO Committee on Conformity assess-ment(ISO/CASCO),ISO Committee on Ref-erence Materials(ISO/REMCO),ISO/TC34 (食品),ISO/TC34/SC9(微生物),ISO/TC48 (実験用装置),ISO/TC76(医療用輸血装置), ISO/176(品質管理及び品質保証),ISO/TC210 (医療機器の品質管理と関連する一般事項), ISO/TC276(バイオテクノロジー)などがあ り,後者には,世界保健機関(World Health Organization, WHO),国際度量衡局(Bureau international des poids et mesures, BIPM),国 際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine, IFCC),国際試験所認定協力機構(International Laboratory Accreditation Cooperation, ILAC),

東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学

特集:医療における国際標準化

ISO/TC212(臨床検査と体外診断検査システム)の活動と展開

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欧州委員会(European Commission, EC),欧 州分析機器製造業協会連合会(European Diag-nostic Manufacturers Association, EDMA)な どがある. 本専門委員会の守備範囲は臨床検査の領域 と体外診断検査システムにおける規格とガイダ ンスである.これらには,品質マネジメント, 分析前・分析後の手順,分析性能,臨床検査室 の安全,基準システムおよび品質保証が含ま れる.除外範囲として,ISO/TC 176 にて取り 扱う一般的な品質マネジメント規格,ISO/TC 210 にて取り扱う医療機器の品質マネジメント 規格,REMCO にて取り扱う基準物質ガイドラ イン,CASCO にて取り扱う適合性評価ガイド ラインがある. ISO/TC212 総会は年1回 P-メンバー国の持 ち回りで開催される.我が国は第5回(1999 年, 成田)および第 22 回(2016 年,神戸)の開催 ホスト国となった.各 WG は,年1−2回の 対面会議(総会開催時,単独開催)およびメー ル審議にて,新規格の審議とともに既発行規格 の改正に関する文書作業をおこなっている.審 議規格の内容により,必要に応じて専門家の招 集と作業がおこなわれる. 2)ISO/TC212 国内検討委員会 わが国は,工業標準法(JIS 法)に基づい て,経済産業省が主管する日本工業標準調査 会(Japanese Industrial Standards Committee, JISC)が ISO の P-メンバーとして加盟している. JISC からの委託にて,ISO/TC212 国内事務局 は,特定非営利法人日本臨床検査標準協議会 (Japanese Committee for Clinical Laboratory

Standards, JCCLS)が担う. ISO/TC212 国内検討委員会は日本臨床検 査標準協議会の専門委員会として設置され, ISO/TC212 専門委員会と同様に5つの WG か ら構成される(表1).国内検討委員会の構成 メンバーは,各関連団体(日本臨床検査医学会, 日本臨床衛生検査技師会,日本臨床微生物学会, 日本衛生検査所協会,日本臨床検査薬協会,日 本分析機器工業会など)や産業技術総合研究所, 日 本 適 合 性 認 定 協 会(Japan Accreditation Board, JAB),臨床検査基準測定機構や国立感 染症研究所からの推薦委員からなる.国内検討 委員会の各 WG 活動は,上記の ISO/TC212 専 門委員会あるいは WG での審議文書に関して, 国内委員の意見聴取と調整をおこない,また日 本の意見を国際規格に反映させるよう意見提出 とともに,会議出席にて意見交換と意見調整を おこなう.

3.各 WG 活動

1)ISO/TC212/WG1:臨床検査室にお ける品質と能力 ISO/TC212 専 門 委 員 会 の WG1 の 活 動 は, 臨床検査の質と能力に関する様々な国際規格, 技術仕様書の文書作業を担当している.コン ビーナは Ms Sheila Woodcock(カナダ国)が 務め,構成メンバーは臨床検査学の専門家,国 家規格協会,認定機関,規制当局(CDC)や リエゾンの関係組織(ILAC, WHO)などである. WG1 で策定された国際規格 ISO 15189(臨床 検査室―品質と能力に関する要求事項)は,臨床 検査室の質的な向上に大きく貢献してきた3,4) ISO 15189 は 2012 年 に 第 3 版 が 発 行 さ れ, 2017 年は5年ごとの定期的見直しの年となる. 表1 ISO/TC212;臨床検査及び体外診断検査システム 国内検討委員長:宮地勇人(東海大学・医),副委員長:矢冨 裕(東京大学・医),小出博文(JCCLS)

・WG1: 臨床検査室における品質と能力(Quality and competence in the medical laboratory)国内代表:宮地勇人(東 海大学・医),国内副代表 : 下田勝二(JAB)

・WG2: 基準システム(Reference systems)国内代表:小出博文(JCCLS) ・WG3: 体外診断用製品(In vitro diagnostic products)国内代表:櫻井智也(日立)

・WG4: 微生物学と分子診断(Microbiology and molecular diagnostics)国内代表:石井良和(東邦大学・医),国 内副代表 : 中江裕樹(JMAC)

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また WG1 においては,臨床検査における品質 と能力に関して,ISO 15189 の要求事項を補完 する多くの規格文書について審議している(表 2).それらには,ISO 15190(臨床検査室− 安全に関する要求事項),ISO 22367(臨床検 査室−リスク・マネジメントと継続的改善によ る検査過誤の削減),ISO 22870(POCT −品 質と能力に関する要求事項),ISO 20658(臨 床検査室試験−検体の収集,搬送,受領と取扱 いに関する要求事項)などが挙げられる. ISO 15189 に基づく臨床検査室の施設認定取 得は,国際治験や医師主導の治験,臨床研究中 核病院において国からの推奨または要件化され ている5,6).これらに続き,2016 年の保険診療 報酬改定にて国際標準検査管理加算(新設)に て算定可能となり,検査サービスの品質向上 に対する画期的なインセンティブ導入となっ た.その結果,ISO 15189 に基づく施設認定取 得した臨床検査室の数は大幅に増加傾向にある (2017 年3月現在,116 施設). 2)ISO/TC212/WG2:基準システム ISO/TC212 専 門 委 員 会 の WG2 の 活 動 は, 臨床検査の適正な測定系を確立するために必要 な基準物質,基準測定操作法,基準測定検査室 等に関する国際規格,技術仕様書の文書作業を 担当している(表3).IVD 機器・試薬の薬事 規制の国際整合化が進められた結果,多くの国 で体外診断用製品は薬事規制の対象となってお り,ISO/TC212 の国際規格が法体系の基準と して用いられている.また,IVD 製品の製造 販売の許認可の基準として基準物質や基準測定 操作法が指定されている7) WG2 の コ ン ビ ー ナ は Dr. Neil Greenberg (米国)が務め,構成メンバーは,IVD 関係企 表2 ISO/TC212/WG1「臨床検査における品質と能力」における規格 規格 文書番号 日本語規格名称 発行規格 ISO 15189:2012 (第3版) 臨床検査室-品質と能力に関する要求事項 ISO 15190: 2003 臨床検査室-安全に関する要求事項 ISO TS 22367: 2008 臨床検査室-リスク・マネジメントと継続的改善による検査過誤の削減 ISO 22870:2016 POCT-品質と能力に関する要求事項 新規規格

(審議中) N441 PWIISO/DTS 20658 POCT の監督者と操作者の為のガイダンス(仮)臨床検査室試験-検体の収集,搬送,受領と取扱いに関する要求事項(仮) 表3 ISO/TC212/WG2「基準システム」における規格 規格 文書番号 日本語規格名称 発行規格 ISO 15193:2009 (第2版) 体外診断用医薬品・医療機器-生物試料の定量測定-基準測定操作法の内容と提示に関する要求事項 ISO 15194:2009 (第2版) 体外診断用医薬品・医療機器-生物試料の定量測定-認証標準物質と立証文書の内容に関する要求事項 ISO 15195:2003 臨床検査医学-基準測定検査室に対する要求事項 ISO/NP 17511 (第2版) 体外診断用医薬品・医療機器-生物試料の定量測定-校正物質と管理物質への表示値の計量学的トレーサビリティ ISO 18153:2003 体外診断用医薬品・医療機器-生物試料の定量測定-校正物質と管理物質への酵素活性表示値の計量学的トレーサビリティ ISO/DTS 25680 臨床検査室-測定不確かさの算定と表現 新規規格 (審議中) ISO/NP TS 20914 臨床検査室-測定不確かさの算定の為の実用的ガイド(仮) ISO/NP 21151 体外診断用医薬品・医療機器-生物試料の定量測定-校正物質と患者検体への表示値の計量学的トレーサビリティの確立を目的とした国際整合化手順への要求事項 (仮)

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業,標準研究機関(NIST,IRMM,JCTLM/ BIPM), 規 制 当 局 や リ エ ゾ ン の 関 係 組 織 (ILAC,EDMA)と幅広い. WG2 担当の国際規格は表3のごとくである. 目下,新規2規格について審議作業をおこなっ ている.ISO/NP TS 20914「臨床検査室−測 定不確かさの算定の為の実用的ガイド」(仮)は, 測定不確かさの算定について,臨床検査の品質 の指標の一つとして臨床検査室で日常的に利用 する簡便なガイドである.ISO/NP 21151「生 物試料の定量測定−校正物質と患者検体への表 示値の計量学的トレーサビリティの確立を目的 とした国際整合化手順への要求事項(仮)」は, SI トレーサブルでない検査項目の測定結果の 整合化をおこなうためのプロトコールを示す. 3)ISO/TC212/WG3:体外診断用製品 ISO/TC212 専 門 委 員 会 の WG3 の 活 動 は, IVD 企業が開発,製造している機器,製品に 関連する国際規格,技術仕様書の文書作業を担 当している.WG3 の発行規格は,体外診断用 医薬品・医療機器のラベリング,血糖や抗凝固 治療の自己モニタリング装置の性能評価手順, 病理組織染色試薬の技術仕様書と幅広い分野に 及ぶ(表4).また,臨床検査機器が関連する 医療機器の国際調達,法整備がされていない地 域への臨床検査機器のコメント提出など幅広く 活動している8) WG3 のコンビーナは Mr. Claude Giroud(仏 国,バイオラッド社),副コンビーナは Ms. Robert(米国,ロシュ社)が務め,構成メンバー は,IVD 関係企業や規制当局(FDA 等)である. 目下,新規規格として審議中のものとして, ISO 20916「体外診断用医薬品・医療機器−ヒ トからの検体を含む臨床性能研究−実施研究 表4 ISO/TC212/WG3「体外診断用医薬品」における規格 規格 文書番号 日本語規格名称 発行規格 ISO 14971:2007, Annex H 医療機器―医療機器へのリスクマネジメントの適用,付属書H:体外診断用医療機器のためのリスク分析に関する指導書 ISO/15197:2013 (第2版) 体外診断検査システム-糖尿病管理における自己測定のための血糖モニターシステムに対する要求事項 ISO 15198:2004 臨床検査医学-体外診断用医薬品・医療機器-製造業者による使用者の品質管理手順の妥当性確認 ISO 17593:2007 臨床検査と体外診断検査システム-抗凝固薬治療の自己測定のための体外モニターシステムに関する要求事項 ISO/TR 18112: 2006 臨床検査と体外診断検査システム-医療用体外診断用医薬品・医療機器 -製造業者により提供される情報に対する規制要求事項の概要 ISO 18113-1:2009 体外診断用医薬品 ・ 医療機器-製造業者により提供される情報(ラベリング)-第一部:用語,定義と一般要求事項 ISO 18113-2:2009 体外診断用医薬品 ・ 医療機器-製造業者により提供される情報(ラベリング)-第二部:専門家の使用する体外診断用試薬 ISO 18113-3:2009 体外診断用医薬品 ・ 医療機器-製造業者により提供される情報(ラベリング)-第三部:専門家の使用する体外診断用装置 ISO 18113-4:2009 体外診断用医薬品 ・ 医療機器-製造業者により提供される情報(ラベリング)-第四部:自己測定用体外診断試薬 ISO 18113-5: 2009 体外診断用医薬品 ・ 医療機器-製造業者により提供される情報(ラベリング)-第五部:自己測定用体外診断装置 ISO 19001: 2013 (第2版) 体外診断用医薬品・医療機器-生物学における体外診断用染色試薬に対して製造業者により提供される情報 ISO 23640: 2011 体外診断用医薬品・医療機器-体外診断用試薬の安定性の評価 ISO/TS 17518: 2015 (仮訳)臨床検査室-生物学における染色試薬の臨床検査室でのユーザに対するガイダンス 新規規格 (審議中) ISO/NP 20916 (仮)体外診断用医薬品・医療機器-ヒトからの検体を含む臨床性能研究-実施研究規範

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規範(仮)」がある.国際的に合意された医薬 品の臨床試験の実施基準である Good Clinical Practice(GCP)は,IVD にも適用されてきた. IVD の多くは被験者に対するリスクが低いた め,試験内容の最適化の必要性が指摘され,医 療機器規制国際整合化(Global Harmonization Task Force, GHTF)において IVD 用の規格 が策定,運用されている.GHTF の規格を元 にした ISO 新規格について EDMA から提案が なされ,審議が継続している. 4) ISO/TC212/WG4:微生物学と分子 診断 ISO/TC212 専門委員会の WG4 の活動対象 は,専門委員会の組織展開として,2013 年 WG 活動テーマの見直しにともない,「微生物 薬剤感受性試験」から「微生物検査と分子診断」 へと拡大された.これにより WG4 は,微生物 の核酸検査をはじめ広く遺伝子関連検査に関す る規格の文書作業を新たに取り扱うこととなっ た.WG4 のコンビーナは Mr. Uwe Oelmüller (独国,キアゲン社)で,構成メンバーは,臨 床微生物学や分子診断の専門家,IVD 関係企 業,認定機関などである. WG4 による規格として,一般細菌の培養法 や培地の基準あるいは真菌の抗菌薬感受性検査 がある(表5)4).具体的には,ISO 20776「臨 床検査と体外診断検査システム−感染性病原 体の感受性検査及び抗菌薬感受性検査機器の 性能評価」:ISO 20776-1「迅速発育好気性細 菌に対する基準法」,ISO 20776-2「抗菌薬感 受性検査機器の性能評価」,ISO 16256「酵母 様真菌の感受性検査」,ISO 16782/DIS「非特 殊栄養要求性の抗菌薬感受性検査の培地の基 準」が策定されている.ISO 20776-1/2 は,そ れぞれ抗菌薬感受性検査の国際基準法として日 常検査法との比較・点検,製造業者における 抗菌薬感受性検査機器装置の性能評価に用い, ISO 16256 は,抗真菌薬感受性検査キット,検 査機器や新薬開発におけるメーカでの基準法 として,ISO 16782/DIS は,培地メーカで製 品ロットの点検における国際基準法として用 いる.これらの規格の目的は,CLSI と欧州抗 菌薬感受性試験法検討委員会(The European

Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing, EUCAST)それぞれが発行している 抗菌薬感受性検査に関する規格の整合性をとる ことにある. WG4 では目下,多くの分子診断関係の規格 文書が提案され,審議中である.検査前プロセ スとしてホルマリン固定後の組織からの DNA, RNA およびタンパクの抽出法(ISO 20166-1 ~3),凍結組織からの RNA およびタンパクの 抽出法(ISO 20184-1,2),末梢血からの細胞内 RNA,ゲノム DNA および血中循環遊離 DNA (20186-1 ~ 3)がある.病原微生物の核酸検 査の質を確保するため,ISO 17822「微生物病 原体の検出と同定の為の核酸体外診断用製品− 第一部:一般的要求と定義」が策定され,「同 第二部:核酸増幅の品質規範」の文書作業が 進行中である.さらに,我が国が提案した ISO 21474-1「体外診断用医薬品・医療機器−核酸 用の多項目分子学的解析−第一部:核酸品質の 評価方法の用語と一般的要求事項」の審議作業 が進んでいる(後述). 5) ISO/TC212/WG5:検査室のバイオ リスク・マネジメント ISO/TC212 専門委員会の WG5 は,2014 年, バイオリスク管理システムに関する規格を担当 する WG として設置された.コンビーナは Mr. Gary Burns(英国)で,構成メンバーはバイ オリスク管理学の専門家と管理に関わる機関の 実務担当者である.グローバル化や医療技術革 新が進み,微生物検査室では,絶えず新興ある いは未知の病原体を取り扱うことになる.そこ で,バイオリスクアセスメントに基づく対応策 の計画,導入,評価の重要性が指摘されてい る9).WG5 では,欧州標準化委員会(Comité Européen de Normalisation, CEN) ワ ー ク ショップ協定文書 CWA 15793:2011(検査室 のバイオリスクマネジメント)に基づき,国際 規格 ISO 35001「検査室及び関連施設のための バイオリスクマネジメント」の審議作業中であ る(表6)10).その対象は,臨床検査室に加え, ワクチン・製薬メーカ,研究機関(臨床研究セ ンター,衛生研究所)などがある.必要最小限 の安全基準とバイオリスクアセスメントに基づ

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いたリスク低減対策の実践に加え,人員の力量 と訓練,組織の役割と責任の明確化などを取り 入れている.本規格は,バイオリスクマネジメ ントの面で ISO 15189(臨床検査室−品質と能 力に関する要求事項)に対して補完的な指針を 提供する.

4.今後の展望

1)ISO/TC212 活動の展開 グローバル化時代における臨床検査の役割 の増大を背景として,ISO/TC212 活動におい て様々な規格が策定されている.ISO/TC212 では設置後 20 年の節目において,2015 年のヘー ル総会にて,今後の活動の方向性を議論した. 規格開発の対象は,従来は IVD 産業のための 標準化を中心としてきたのに対して,今後は臨 床検査室関連のニーズを捉えたものにより重点 を置くとの方針が出された(表7).その方向 性は,各 WG にて担当する既発行と現在審議 中の規格のテーマを比較することで窺うことが できる(表2−6).医療技術の進歩と臨床的 ニーズに呼応して,遺伝子関連検査,ポイント オブケア検査や検査室の安全に関する新たな規 格の提案と文書作業が進行中である. 2)我が国の国際規格提案 ISO/TC212 の国内審議委員会である JCCLS は,特定非営利活動法人バイオチップコンソー シアム(JMAC)と連携して,核酸品質の評価 表5 ISO/TC212/WG4「微生物学と分子診断」における規格 規格 文書番号 日本語規格名称 発行 ISO 20776-1:2006 臨床検査と体外診断検査システム-感染性病原体の感受性検査及び抗菌薬感受性検査機器の性能評価-第一部:感染症に関連する迅速発育好気性細菌に対する抗菌薬の体 外活性検査の基準法 ISO 20776-2: 2007 臨床検査と体外診断検査システム-感染性病原体の感受性検査及び抗菌薬感受性検査機器の性能評価-第二部:抗菌薬感受性検査機器の性能評価 ISO 16256:2012 臨床検査及び体外診断検査システム-感染症に関連する酵母様真菌に対する抗菌薬の体外活性検査の基準法 ISO/TS 16782 非特殊栄養要求性(非選好性細菌)の抗菌薬感受性検査のための乾燥 Mueller-Hinton寒天及び肉汁の利用可能なロットに関する基準(仮) ISO/TS 17822-1: 2014 微生物病原体の検出と同定の為の核酸体外診断用製品-第一部:一般的要求と定義(仮) 新規規格 (審議中) ISO/NP 17822-2 微生物病原体の検出と同定の為の核酸体外診断用製品-第二部:核酸増幅検査の品質規範(仮) ISO/NP 21474-1 体外診断用医薬品・医療機器-核酸用の多項目分子学的解析-第一部:核酸品質の評価方法の用語と一般的要求事項(仮)

ISO/DIS 20166-1 分子学的体外診断試験- FFPE 組織の試験前処理の規格 Part 1:DNA(仮) ISO/DIS 20166-2 分子学的体外診断試験- FFPE 組織の試験前処理の規格 Part 2 :抽出タンパク(仮) ISO/DIS 20166-3 分子学的体外診断試験- FFPE 組織の試験前処理の規格 Part 3 :RNA(仮) ISO/DIS 20184-1 分子学的体外診断試験-凍結組織の試験前処理の規格 Part 1:RNA(仮) ISO/DIS 20184-2 分子学的体外診断試験-凍結組織の試験前処理の規格 Part 2 :抽出タンパク(仮) ISO/DIS 20186-1 分子学的体外診断試験-静脈全血の試験前処理の規格 Part 1:血液細胞内 RNA(仮) ISO/DIS 20186-2 分子学的体外診断試験-静脈全血の試験前処理の規格 Part 2 :血液ゲノム DNA(仮) ISO/DIS 20186-3 分子学的体外診断試験-血液の試験前処理の規格 Part 3 :血漿の循環セルフリーDNA(仮) ISO/PWI 20094 分子学的体外診断試験-:尿,血清,血漿中メタボロミクスの試験前処理の規格(仮) ISO/DIS 20186-3 分子学的体外診断試験-血液の試験前処理の規格 Part 3 :血漿の循環セルフリーDNA(仮) ISO/PWI 20094 分子学的体外診断試験-:尿,血清,血漿中メタボロミクスの試験前処理の規格(仮)

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を通して多項目分子学的解析における様々な測 定法の標準化を目指し,国際規格文書案「体外 診断用医薬品・医療機器−多項目分子学的解析 の一般的要求事項と定義−核酸品質の評価方 法」の提案をおこなった11).この提案規格は 新規作業項目提案(ISO NP 21474)として承 認され,2016 年 11 月総会(神戸)にて,ISO 21474「体外診断用医薬品・医療機器−核酸に よる多項目分子学的解析 −第一部− 用語と核 酸品質の一般的要求事項」への改称とともに, ISO 21474 は多項目分子学的解析の品質保証に 関する一連の文書をシリーズ化することが決議 された.これは,我が国の ISO/TC212 活動の 歴史において初の国際規格の提案であり,かつ 新規技術を利用した遺伝子関連検査に基づく良 質なゲノム医療の遂行において重要な文書であ る.その点で,我が国の活動は,その成果に大 きな期待が寄せられ,重要な責務を担うことと なった.

5.おわりに

臨床検査は,医療技術革新にともない,科学 的根拠に基づく個別の計画的医療,患者負担軽 減による医療の質や効率の向上に向けて,研究 から臨床への応用展開,および利用対象の拡大 は続くと予想される.また,科学的根拠の蓄積, 情報技術の進歩と利用環境の促進にともない, 個別患者のニーズの対応において,医学的判断 の指標として臨床検査の客観性と信頼性の確保 の重要性はますます高まると予想される.そこ で国際規格は,安全性と信頼性の確保とともに, より利用し易い製品やサービスの提供と普及に 不可欠である.これら国際規格の作成と発行を 目指す国際標準化作業は,良質な臨床検査サー ビスを通して,我が国の臨床検査の発展と医療 の質向上に大きな貢献が期待される. 申告すべき COI はなし. 文献 1) 河合忠.微生物検査関連の国際標準化—ISO/ TC212の活動を中心に—.モダンメディア61: 221-227, 2015. 2) 河合忠.ISO 15189による臨床検査室認定の意 義.国際認定の経緯を振り返って.臨床病理 62:615-619, 2014. 3) 宮地勇人.遺伝子関連検査の品質マネジメント: 規格文書作成による品質基準と意義.臨床病 理63:823-831, 2015. 4) 宮地勇人.臨床微生物検査における国際標準 化(ISO)に向けて.感染症46:172-176, 2016. 5) 厚生労働省医薬食品局審査管理課.治験にお ける臨床検査等の精度管理に関する基本的考 え方について.(2013年7月)<https://www. pmda.go.jp/files/000161910.pdf>(2013年7月) 6) 厚生労働省医政局長.医療法の一部改正(臨 床研究中核病院関係)の施行等について. <http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/ isei/chiken/dl/150402-01.pdf>(2015年3月) 7) 小出博文.世界臨床検査通信15.ISO/TC212 表7 ISO/TC212 専門委員会活動の展開 委員会設置後の活動年数 設立〜 20 年(〜 2014 年) 設立 21 年〜(2015 年〜) 規格開発の焦点 IVD 産業のニーズ 臨床検査室関連のニーズ 利害関係者(ステー クホルダー)の拡大 IVD メーカ,検査サービス利用者(医 師,患者など),政府機関,保険支払者, 施設認定・認証機関,臨床検査室 従来に加え,臨床検査室外での検査実施施設(外来 クリニック,薬局,在宅など) ワクチン・製薬メーカ,研究機関:臨床研究センター, 衛生研究所,バイオバンクなど 表6 ISO/TC212/WG5「検査室のバイオリスク・マネジメント」における規格 規格 文書番号 日本語規格名称 新規規格 (審議中) ISO/NP 35001 試験室のバイオリスク・マネジメント システム-要求事項

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WG2(基準システム)活動について.モダン メディア63(5), 2017. 8) 三村智憲.世界臨床検査通信16.ISO/TC21 2WG3(体外診断用製品)活動について.モダ ンメディア63(6), 2017. 9) 重松美加.検査室におけるバイオセーフティ, バイオセキュリティの考え方. Medical Technology 43:1350-1354, 2015.

10) CEN workshop agreement. CWA 15793: 2011. Laboratory biorisk management <http://www.uab.cat/doc/CWA15793_2011> 11) (多項目)バイオチップコンソーシアウム[プ レスリリース]多項目遺伝子解析のための核 酸品質に関する予備業務項目提案ISOで承認. http://www.jmac.or.jp/ja/home-ja/news/145-news20140121.html

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