山口市における歴史的中心市街地の地区更新

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山口市における歴史的中心市街地の地区更新

中園眞人

(感性デザイン工学科)

大内裕子

(システム工学専攻)

中原弓恵

(感性デザイン工学科)

Transformation of Land Use and Residences in Historical Central Zone of Yamaguchi City

Mahito NAKAZONO

(Prof.,Dept. of Perceptual Design and Eng.)

Yuko OHUCHI

(Division of System Eng.)

and Yumie NAKAHARA

(Dept. of Perceptual Design and Eng.)

The purpose of this study is to clarify the planning subjects for improving the residential environment in the central area of local city by the research on the characteristics of land use transition and dwellers.

Ohdono, subject of this study, is the historical and central area in Yamaguchi-city, and many historical sites and traditional houses called MACHIYA built in Meiji- period exist and quiet residential environment has been kept even now.But the same as other local cities, decrease in population and aging of dwellers are in progress, so the ratio of single households is highest and the number of elderly person over 60’s occupies 77.7%, moreover, owing to the increase of vacant resident, vacant lot and parking, this area is becoming hollow, and owing to the construction of new buildings, the residential environment is changing gradually.

Key Words: Transition of Land Use, Residential Environment, Dwelling household, Rented House (43) 43

1. 序論

 近年地方都市中心市街地では,人口減少や 若年層の大都市部への流出等による空洞化・

高齢化が進行し,全国的に深刻な問題となっ ている.研究対象の大殿地区は山口市におけ る歴史的中心市街地であり,多数の史跡や明 治期の町屋が残る閑静な住環境を今日も保持 している.しかしながら他の地方都市同様,人 口減少と高齢化が進み,空家化・空地化・駐車 場化による地区の空洞化と建築更新による住 環境の改変が進行している.

 本研究の目的は,地方都市中心市街地にお ける土地・建物の更新特性と居住世帯属性を 把握し,住環境整備における計画課題を明ら かにすることである.研究方法は,大殿地区の 1995 年の土地・建物利用とに 2001 年の調査結 果をマッピングし,その期間の土地・建物の変 化を把握する.その変化傾向から今後の地区 更新を推測し,住環境整備における課題を抽 出する.尚,本報は地方都市中心市街地におけ る土地利用特性(工学部研究報告第 52 巻第 1 号)の続報である.

2. 土地・建物利用特性

 大殿地区の 2001 年時点での土地利用分布図 を見ると,専用住宅用地は全区画数の 58%,併 用住宅用地は 13% を占めている.空地・駐車場 は専用住宅用地に続いて18%を占めており,低 未利用地の割合が高い(fig.1).

fig.1 Land Use in 2001

Residential Lot Composite Residential Lot Vacant Lot, Parking

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44 (44)

 2001 年時点での地区内の建物利用形態を見 ると,戸建専用住宅が最も多くこれらの大部 分が木造住宅である.建物床面積は 100 〜 150

㎡の比較的大規模なものが最も多く存在して いる.さらに,建築年が不明なものが多く,古 く か ら あ る 物 件 が 多 い こ と が 推 測 で き る (fig.2).これら中心市街地の木造戸建専用住宅 は,老朽化し居住困難になったとき,建替えて 更新されるケースもあるが,接道条件の悪さ や居住者の高齢化・地区外転居等が原因とな り,空家化し取り壊された後に空地・駐車場化 する場合もある.当地区において,接道条件の 悪い木造戸建専用住宅が数多く見られること から,住宅が取り壊される前に何らかの対策 を行う必要がある.

fig.2 Building Type of 2001

3. 所有関係の分類

 土地・建物の所有者と居住世帯との関係を 見るとき,以下の 3 タイプに分類できる.

  ・ AAA(持地持家)

  ・ ABB(借地持家)

  ・ AAC(借地借家)

 この 3 タイプの占める割合をfig.3に示す.

AAA タイプが最も多く全体の 65.2% を占め,次 に AAC タイプ 20.0%,ABB タイプ 3.2% と続く.

その他については ABC タイプ(土地所有者,建 物所有者,居住世帯が異なる),ABA タイプ(建 物所有者のみ異なる)が存在するがその割合 は少ない.以下では,最も多い AAA タイプと借 地借家層である AAC タイプに着目して分析を 進める.

fig.3 Possessive Relation Ratio

63% 3% 20% 14%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

AAA ABB AAC Others, Unknown

3‑1.AAA(持地持家)の土地・建物状況  この AAA(持地持家)タイプを世帯主年齢を 60 歳で分け,さらに世帯属性を単身・夫婦の み・家族の 3 つに分類した(table1).世帯主が 60 歳以上の世帯が多く,土地・建物共に居住 者が所有していることから,居住継承が行わ れなかった場合,その住宅は空家化,もしくは 取り壊され空地化してしまう可能性が高い.

更に,高齢世帯で居住者人数が少ない世帯ほ ど昔ながらの大規模な土地に戸建専用木造家 屋に居住する傾向がある.

 60 歳以上の単身世帯は 78 世帯(fig.4)で AAA タイプの 28.5% を占め,土地面積 300 ㎡以上の 世帯が33.3%で大規模な敷地が目立つ.建物床 面積は 100 〜 250 ㎡のものがほぼ均一に存在し ており,単身世帯としては大規模住宅である.

木造住宅が最も多く 65 戸,そのうち建築年不 明のものに関しては,目視調査の結果戦前に 建築されたと思われる古い木造住宅が多く見 られた.これらのことから高齢単身世帯のた めに,建物の維持管理が難しく老朽化が進行 する建物も少なくないことが考えられる table1 Household Type of Owned House

fig.4 Single & Couple Over60

Residence Composite Residence Store,Office

Single Couple Family Total

Under 60 24 5 27 56

Over 60 78 80 57 215

Total 102 85 84 271

Single Couple

(3)

(45) 45

 空家の有効活用方策として,賃貸住宅とし ての再利用という方法が挙げられるが,ここ では将来空家化の可能性が高いもののうち,

賃貸住宅としての規模を備えた事例について 検討する.AAA タイプのうち居住者の転出・消 滅の可能性が高い 60 歳以上の単身・夫婦世帯 に着目し,借家としての活用可能性を検討す る.判断指標としては,借家の標準的な建築規 模として,土地面積が 200 ㎡以上かつ建物床面 積が 1 5 0 ㎡以上の住宅をプロットしている (fig.5). これらの物件は借家として活用可能な 規模を有することから,今後改修を行うなど して借家活用が期待される.しかし接道条件 を見ると,21.7%の建物が 4m未満の細街路に接 しておりアクセス条件が悪い.

3‑1.AAC(借地借家)の土地・建物状況  土地と建物の所有者が同じで,居住者が借 家して居住するタイプが AAC(借地借家)であ る.これら住宅の分布図をfig.6に示す.これら の土地・建物状況を見ると,土地は 100 〜 250

㎡のものが多く,建物床面積は 100 〜 150 ㎡の ものが比較的多く見られ,広い土地に中大規 模の建物であることから,以前は自宅として いた土地・建物を賃貸活用していると思われ る.このように自宅とは別に所有する住宅を 使用しなくなった場合に,取り壊さず借家と して活用するケースも見られた.このことか ら空家の有効活用方策としての賃貸活用シス テムの開発は有意義であるといえる.

fig.6 Distribution map of Rented House

fig.5 Lot Space: over 200m2 / Floor Space: over 150m2

4. 土地・建物の更新状況

 1995 年と 2001 年の土地・建物データを比較 して,地区内の土地と建物の更新状況をみる.

(fig.7)(table2)専用住宅が取り壊されて駐車場に 用途変更されたため,その占める割合が 4% 程 度増加しており,地区内の空地・駐車場化が進 行していることが明らかである.また,低未利 用地であった土地に新築したケースは 8 件,解 体は 23 件,建替えは 10 件で,戸建専用住宅が 空家化したケースが 6 件である.

 新築に関しては,8 件のうち 2 件が共同住宅 であり,その中には高層マンションが建設さ れており地区の景観を害している.建替えの ケースでは,居住者が住宅の老朽化等により 新築していることが予想でき,居住継承が行

Owned House Rented House

table2 Transformation of Land Use and Building Type

Composite Store, Public Education Parking, Residence Office Facility Facility Vacant Lot

441 0 0 0 0 0 0 0 19 0

2 89 0 0 0 0 0 0 2 0

0 0 28 0 0 0 0 0 1 0

0 0 0 33 0 0 0 0 0 0

0 0 0 0 8 0 0 0 0 0

0 0 0 0 0 6 0 0 1 0

0 0 0 0 0 0 5 0 0 0

0 0 0 0 0 0 0 3 0 0

3 2 2 0 0 0 0 1 103 0

11 0 0 0 0 0 0 0 0 2

Total 457 91 30 33 8 6 5 4 126 2

New Building Change to Parking or Vacant Lot 2001

1995

Others Hospital

Shrine Apertment Residence

fig.7 Situation of Land Use (the number of lands)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

Residence Composite Residence

Apartment Store, Office Other Lot Parking, Vacant Lot 1995 2001

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46 (46)

fig.8-a Demolished Building

1

2

3

5 6

7 8

10 9 11 12

1413

15 16

17

18 19 20

21 4

photo1-a No.8

fig.8-b New Building

1

2

3

4 5

6

7

8

fig.8-c Reconstruction

1 2

4 3 5

6

7

8

9

10

photo1-c No.3 photo1-b No.8 table3 Transformation of Land Use

われているが,プレハブ住宅が多くまちなみ を考慮している建物はわずかである.さらに 解体後空地となった土地は最も多く見られ,

殆どが駐車場として使用されている.解体さ れた建物は老朽化した木造戸建住宅が多くみ らた.空家化してしまったケースでは,1995年 時点では戸建専用住宅であったものが殆どで あるが,その建設年は昭和30年から40年代で,

目 視 の 結 果 老 朽 化 が 進 行 し て い る . (table3)(fig.8)(photo1)

Map No. 1995 2001 Map No. 1995 2001

1 Residence Parking 1 Residence Residence

2 Apartment Parking 2 Residence Residence

3 Residence Parking 3 Residence Residence

4 Residence Parking 4 Residence Residence

5 Residence Parking 5 Residence Residence

6 Residence Parking 6 Composite Residence Residence

7 Residence Parking 7 Residence Residence

8 Residence Parking 8 Residence Residence

9 Residence Parking 9 Composite Residence Residence

10 Residence Parking 10 Residence Residence

11 Composite Residence Parking 12 Composite Residence Parking

13 Residence Parking

14 Apartment Parking

15 Residence Parking

16 Residence Parking

17 Residence Vacant Lot

18 Residence Parking

19 Residence Parking

20 Residence Parking

21 Residence Parking

Map No. 1995 2001 Map No. 1995 2001

1 Parking Education Facility 1 Residence Residence

2 Parking Residence 2 Residence Residence

3 Parking Apartment 3 Residence Residence

4 Parking Residence 4 Residence Residence

5 Parking Composite Residence 5 Residence Residence

6 Parking Composite Residence 6 Residence Residence

7 Parking Apartment

8 Parking Residence

a. Demolished Building

b. New Building

c. Reconstruction

d. Changed Lot to Vacant House

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47 (47)

化,もしくは新築されている.新築されるケー スでは,高層マンションやプレパブ住宅等が 建設され,景観を考慮するものは少ない.当地 区の高齢化を考慮すると,建物の空家化や解 体後の無秩序な新築,又土地の空地・駐車場化 は更に進行することが予想され,これらに歯 止めをかける方策と,空家を解体放置するの ではなく,改修・活用の検討が今後重要であ る.

5. 結論

 高齢化が進行し今後空家が増加することが 予想される当地区において,高齢世帯が所有 する土地と建物を調査した結果,土地・建物共 に広い物件が数多く存在することが明らかと なり,賃貸住宅としての活用が可能である.更 に,自宅地以外に土地を所有するケースでは,

戸建専用住宅を賃貸活用するケースが存在し ており,今後はこれらの物件に対する詳細調 査が課題として挙げられる.また,1995 年か ら 2001 年の建物更新状況を見ると,専用住宅 が解体撤去され駐車場に用途変更されるケー スが最も多く見られ,空地・駐車場化が確実に 進行している現状が明らかになった.以上よ り,当地区における住環境整備の計画課題と して以下の事柄が指摘される.

1)持家高齢世帯の転出・消滅後の空家の有効 活用方策

2)老朽住宅の借家活用を目的とした,賃貸・改 修システムの構築

(平成 15 年 8 月 29 日受理)

fig.8-d Changed Lot to Vacant House

photo1-d No.3

fig.9 Demolished and Vacant Houses

1

2 3

4 5

6

 更に,解体された物件があった土地と空家 化した住宅のある土地についてその土地面積 を見ると,200 ㎡以上の土地が多く存在する.

ある程度の広さを持った土地に関しては,駐 車場以外に定借スケルトンマンション・コー ポラティブマンション建設用地としての利用 や,地域住民の共同スペースとしての活用方 法を考えられる.また,雑草が生い茂り空地と なってしまったNo.17の土地は面積が73㎡,道 路幅員が 1.6m で,奥まった場所にあり非常に アクセス困難な立地条件のために,駐車場に することもできず空地として放置されている と思われる.このような駐車場にもならない 低未利用地に関しては,何らかの方法で活用 することが望ましい.

 同様に接道条件を見ると,その殆どが 4m 未 満の細街路である.特に空家化した物件 6 戸の 内 5 戸はいずれも幅員 1.7m 〜 2.6m の細街路に 面しており,このことが空家化の一要因であ ると思われる(fig.9).

 土地・建物の変化はこの 6 年間に 10 から 20 件単位で穏やかではあるが進行しており,老 朽化した建物が解体撤去され,空地・駐車場

Lot Space

0 2 4 6 8 10 12

50~100m2 100~150m2 150~200m2 200~300m2 300m2~

The Number of Lot

Width of Road

0 2 4 6 8 10 12

1~2m 2~3m 3~4m 4~6m 6m~

The Number of Lot

Figure

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