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第8章 硝酸還元型アナモックスプロセスの検討

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第8章

硝酸還元型アナモックスプロセスの検討

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第 8 章 硝酸還元型アナモックスプロセスの検討

8.1 はじめに

アナモックス反応を用いた廃水処理技術は、下水汚泥の消化脱水ろ液や、半導体廃水な ど、窒素濃度が高く、有機物質濃度が低い廃水に極めて有効であることは、既に述べた通 りである。一方、自動車工場廃水やビール工場廃水、金属洗練廃水など、窒素濃度が数十

~100mg/L 程度の低い廃水もあり、同時に含有する有機成分が少ない(C/N 比の低い)廃水 も含まれている。このような低濃度アンモニア廃水に対し、長期間、安定した亜硝酸型の 硝化を行うことは、困難とされており、既に硝酸型に硝化する硝化プロセスおよび脱窒プ ロセスが導入されている。

ここで著者らは、これらの廃水に対し、硝酸とアンモニアをアナモックス反応により脱 窒が可能であれば、脱窒のための有機物添加量を大幅に削減できる新しい廃水処理システ ムを提案できると考えた(以後、硝酸還元型アナモックス)。しかしながら、アナモックス 反応は亜硝酸とアンモニアの反応であることから、本考案を可能とするには、硝酸を亜硝 酸に還元する反応、すなわち、脱窒反応とアナモックス反応が同時に行われる必要がある。

脱窒反応は、嫌気条件下での反応であることから、アナモックス反応との共存の可能性は 十分あると考えられる。

そこで、本研究では、硝酸還元型アナモックス反応の可能性を検討するため、メタング ラニュールに馴養した脱窒菌とアナモックス菌が付着した不織布を同一反応槽に投入し、

アンモニアと硝酸から成る合成廃水により連続処理試験を行った。同時に、硝酸還元反応 では、水素供与体としての有機物質添加が必要であることから、有機物質源として酢酸ナ トリウムを合成廃水中に添加した。

本実験において、主に次の2点に検討した。

①窒素濃度に対する有機物濃度比(C/N 比)が及ぼす窒素除去性能への影響

窒素濃度に対する有機物質濃度比(C/N 比)が窒素除去性能に大きく関与することが想定 されることから、C/N 比と窒素除去性能の関係について検討を行った。

②分子生物学的手法による微生物槽の解析

硝酸還元型のアナモックス反応では、硝酸を還元する脱窒菌とアナモックス菌との共存 が必要である。これを確認するため FISH 法を用いた解析を行った。

これらの実験、解析を行い、アナモックスプロセスの新しい適用方法の可能性について 検討を行った。

(3)

8.2 C/N 比が及ぼす窒素除去性能への影響 8.2.1 方法

(1) 供試汚泥

実験に用いたアナモックス汚泥は、下水汚泥から集積培養した汚泥を用いた(第3章参 照)また、脱窒菌の馴養に用いたグラニュールは、某ビール工場から採取したメタン醗酵 グラニュールを供試した。

(2) 供試廃水

アンモニア、硝酸および酢酸を用いた連続処理試験用の合成廃水組成を Table8.1 に示す。

この廃水は、脱窒菌の馴養された後(42 日目以降)に使用を開始した。アンモニア性窒素

(NH4-N)および硝酸性窒素(NO3-N)はそれぞれ、30 mg/L となるよう調整した。また、添 加した酢酸ナトリウムの濃度は 15~43 mg/L であった。

なお、脱窒菌の順養(運転 0~42 日目)においては、Table8.1 の廃水のアンモニアのみ を除いた廃水を用いて試験を行った。

Table 8.1 Synthetic medium for nitrogen removal test Substrates Concentration Unit

NaNO3 30 (asN) mg/L

(NH4)SO4 30 (asN) mg/L CH3COOH 15-43 (asC) mg/L

KHCO3 500 mg/L

KH2PO4 27 mg/L

MgSO4・7H2O 300 mg/L

CaCl2・2H2O 180 mg/L

T.Ellement S1 1 mL/L

T.Ellement S2 1 mL/L

T.Ellement1:EDTA=5g/L,FeSO4=5g/L

T.Ellement2:EDTA=15g/L,ZnSO4・7H2O=0.43g/L,CoCl2・6H2O=0.24,MnCl2・4H2O=0.99g/L,

CuSO4・5H2O=0.25g/L,NaMoO4・2H2O=0.22g/L,NiCl2・6H2O=0.19g/L,NaSeO4・ 10H2O=0.21g/L,H3BO4=0.014g/L

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(3) 実験装置および方法

実験装置図を Fig.8.1 に示す。塩ビ製の円筒形リアクタ内に、グラニュールと 不 織布が充填してある。リアクタの容積は 500mL であり、グラニュールは 100mL 充 填 してある。槽内は循環ポンプにより上昇流速 5m/h となるよう設定し、グラニュ ー ルが流動できるようにした。

まず、硝酸と酢酸ナトリウムの合成廃水(Table8.1 からアンモニアを除いた廃水 ) を用いて、脱窒菌の馴養を 42 日間行った。脱窒性能が確認された後、42 日目に ア ナモックス菌の付着した不織布を反応槽内に充填した。不織布充填と同時に、原 水 へのアンモニア添加を開始し、Table8.1 に示すアンモニア、硝酸、酢酸ナトリウ ム を 原 水 と し た 連 続 運 転 を 行 っ た 。 な お 、 槽 内 は ウ ォ ー タ ー ジ ャ ケ ッ ト に よ り 水 温 30℃となるよう調整した。

Figure 8.1 Schematic illustration of a reactor for nitrogen removal test Nonwoven fabric

biomass carriers

Influent

Efflunet

Granule P

Recycle Pomp

P

Nonwoven fabric biomass carriers

Influent

Efflunet

Granule P

Recycle Pomp

P

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8.2.2 結果

(1)窒素除去性能の経過時変化

窒素除去率の経過時変化を Fig.8.2 に示す。アナモックス菌を添加する 42 日目までの窒 素除去性能は、硝酸に対する有機物質の濃度比(C/N 比)が約1程度で運転していたため、

30~40%の窒素除去率であった。これは、脱窒のための有機物質濃度が十分でないため、完 全な脱窒処理が行えなかったと考えられる。

42 日目にアナモックス菌を投入し、アンモニアと硝酸と酢酸ナトリウムを用いて廃水処 理試験を行った。Fig. 8.2 の窒素除去率の変化から分かるように、急激に窒素除去活性が 増加し、運転開始 95 日目には、窒素除去率 97%を得ることができた。42 日目以降のアン モニア、硝酸、酢酸の濃度変化を Fig.8.3 に示すが、明らかに嫌気条件下においてアンモ ニアが処理されていることが分かる。また、同時に硝酸も除去されていることが確認でき た。これらのことから、硝酸還元型のアナモックス反応が生じていることが示唆された。

Figure 8.2 Time courses of nitrogen removal efficiency. Anammox bacteria was inoculated at day 42.

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 20 40 60 80 100 120

Time(day)

T-N Removal Efficiency(%)

Adding anammox bacteria

(6)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

0 20 40 60 80 100 120

Time (d)

Concentrations (mg/L)

Figure 8.3 Time courses of influent and effluent nitrogen concentrations and influent organic carbon concentration in a continuous-flow test. Influent ammonium (○), Influent nitrate (□), Influent Total organic carbon (♢), Effluent ammonium (●), Effluent nitrate(■).

(2)C/N 比と窒素除去率

本試験期間中の流入中の窒素濃度に対する有機物質濃度比(C/N 比)と、窒素除去率の関 係について解析を行い、Fig8.4 に示す結果を得た。この結果から、本試験で確認された窒 素除去性能は、明らかに C/N 比と関係があり、C/N 比が高いほど、高い窒素除去率が得られ た。また C/N 比 0.89 で最高窒素除去率 97%を得ることができた。

0 20 40 60 80 100 120

0.00 0.50 1.00 1.50 2.00

C/N ratio (-)

N-removal Efficiency (%)

Figure 8.4 Effect of C/N ratio on T-N removal efficiency

(7)

8.2.3 考察

本実験では、硝酸を脱窒菌により亜硝酸に還元させ、生成した亜硝酸とアンモニアをアナ モックス菌により脱窒すること(硝酸還元型のアナモックス反応)を目的とし、その可能 性について検討を行った。その結果、嫌気状態におけるアンモニアの除去を継続して確認 することができた。また、硝酸の除去も確認できたことから、アンモニアの除去は硝化反 応ではなく、硝酸の減少と共に脱窒されたと推定された。また、Fig.8.3 の結果から、脱窒 性能は C/N 比に大きく関与していることから、従属栄養型の脱窒反応が生じていることが 示された。これらの結果を総合的に判断すると、硝酸還元型のアナモックスが生じている と考えられた。

ここでアナモックス菌の添加の無い従属栄養型の窒素除去プロセスについて、C/N 比と窒 素除去率の関係についてまとめたものを Fig8.5 に同時に示す。従属栄養型の脱窒反応では、

90%以上の高い窒素除去率を得るには C/N 比が約 2.8 以上必要であることがわかる。一方、

アナモックス菌を共存させた本試験では、C/N 比 0.9 で 90%以上の窒素除去率が確認され た。これらのことから、本試験で確認された窒素除去性能は、従来の従属栄養型の窒素除 去とは異なることが示され、硝酸還元型のアナモックス反応が起きていることが明らかと なった。また、硝酸還元型のアナモックス反応を用いると、より低い C/N 比で窒素除去が 可能であり、脱窒に必要とする有機物質濃度(添加量)を半分以下に削減できることが明 らかとなった。

0 20 40 60 80 100 120

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

C/N ratio (-)

N-removal Efficiency (%)

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8.3 分子生物学的手法による微生物相の解析 8.3.1 方法

(1)供試汚泥

8.2 節に使用したメタングラニュールおよび不織布表面に付着しているアナモック汚泥 を用いた。サンプルは、試験開始前と運転開始後 12 週間後のサンプルをそれぞれ採取し、

比較検討を行った。

(2)FISH 法

サンプリングしたグラニュールを 4%パラホルムアルデヒドで固定し、5μm の厚みで薄層 切片を作成した。作成した切片はスライドグラスに貼り付け、Saiki ら(1)のプロトコルに 従い、FISH 法に供試した。FISH 法によるアナモックス細菌の検出方法としては、排水処理 系において優先化が数多く報告されているアナモックス細菌に特異的な Amx820 プローブを 用い(2)、また、古細菌を特異的に検出することのできる ARC915 プローブ(3)、真正細菌を特 異的に検出することのできる EUB338 プローブ(4)とともに三重染色を行い、グラニュール 内の空間分布について検討を行った。

8.3.2 結果

反応槽内に充填したメタングラニュールの生物相の変化について FISH 法による観察を行 った。その結果を Fig8.6 に示す。初期のグラニュール(Fig.8.6 a)には、赤く染色される 部分が多く、古細菌が多く生息していることが確認された。また、緑色に染色される脱窒 等の細菌が生息している様子も確認できた。しかしながら、アナモックス菌の生息を示す 青色の染色領域は確認することができなかった。

運転開始 12 週後にグラニュールを観察した結果、Fig.8.6 b に示す結果を得た。古細菌 の生息を示す赤い領域が激減し、グラニュール表面にアナモックス菌の生息を示す青色の 領域を確認することができた。これは不織布から剥がれたアナモックス菌がグラニュール 表面に付着し、生息していること考えられた。

次に、不織布表面に付着している微生物相を観察した。運転開始時のものを Fig8.7a に 示すが、アナモックス菌を示す青い領域が多く観察された。また、アナモックス以外の細 菌の存在を示す緑色の領域も確認された。運転開始 12 週後に不織布表面に付着している汚 泥を観察した結果、局所にアナモックス菌のクラスターと、その他一般細菌のクラスター が確認され、脱窒菌とアナモックス菌の共存関係が確認された。

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Figure 8.6 Changes in microflora of granules, (a) initial (b) After 12 weeks. Red shows Archaea(ARC915) , Green shows Bacteria (EUB338), Blue shows Anammox bacteria (AMX820)

Figure 8.7 Changes in microflora of anammox, (a) initial (b) After 12 weeks. Red shows Archaea(ARC915) , Green shows Bacteria (EUB338), Blue shows Anammox bacteria (AMX820)

100 μ m

100 μ m 100 μ m

200μm 200μm

100μm 100μm

(a) (b)

(a) (b)

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8.3.3 考察

本試験結果から、メタングラニュールにアナモックス菌が付着し生息することが確認さ れた。メタングラニュールにはあらかじめ硝酸を含む廃水で馴養しているため、脱窒菌が 付着していたと考えられる。そして、メタングラニュールへ不織布から供給されたアナモ ックス菌が、付着することを確認した。これらの結果は、グラニュール表面で、脱窒菌と アナモックス菌の共存が可能であったことを示すものである。

また、不織布表面の汚泥にも、アナモックス菌のクラスターとその他の細菌(脱窒菌を 含む)がクラスターを形成していることを確認した。これらのことから、不織布表面でも アナモックス菌と脱窒菌の共存が可能であったと推察される。

FISH 法により得られた結果は、硝酸還元を起こす脱窒菌と、生成した亜硝酸とアンモニ アにより脱窒するアナモックス菌が同時に生息していることを示す結果であり、水質試験 結果を裏付ける重要な情報を得ることができた。

(11)

8.4 結言

低濃度のアンモニア廃水処理では、硝化工程において硝酸まで酸化されやすく、亜硝酸 で維持することは困難である。ビール工場排水、下水などはアンモニア濃度が低く、中に は C/N 比の低い廃水も含まれる。硝酸とアンモニアによりアナモックスプロセスが運転で きれば、曝気量や薬品添加量を削減した効率的な処理プロセスが構築できると考えられる。

本研究では、硝酸とアンモニアを基質とした新しいアナモックスプロセスの可能性を得る ため、脱窒菌とアナモックス菌を同一反応槽に維持し、廃水処理試験を行うことにより検 証を行った。その結果、硝酸とアンモニアを基質とした場合でも、硝酸を還元するための 適切な有機物質量が存在すれば、アナモックス反応は生じることを確認した。また、分子 生物学的手法により、脱窒菌とアナモックス菌の共存を確認することができた。これらの 結果は、アナモックス反応を用いた新たな廃水処理方法を提案するものであり、環境工学 上極めて、有用な知見を得ることができた。

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引用文献

1. Saiki Y., Iwabuchi C., Katami A., Kitagawa Y., (2002) Microbal analyses by fluorescence in site hybridization of well-settled granular sludge in brewery wastewater treatment plants. J. Biosci.

Bioeng.. 93, 601-606.

2. Schamid M., Twachtmann U., Klein M., Strous M., Juretschlo S., Jetten M., Metzger J.W., Schleifer K.H., Wagner M. (2000) Molecular evidence for genus level diversity of bacteria capable of catalyzing anaerobic ammonium oxidation. Syst. Appl. Microbiol. 23, 93-106

3. Stahl D.A., Amann R., (1991) Development and application of nucleic acid probes, p.205-248.

In Stackebrandt, E and Goodfellow M., (ed.), Nucleic acid techniques in bacterial systematics.

Jhon Wiley and Sons, New York .

4. Daims H., Bruhi A., Amann R., Schleifer K,H., Wagner M.(1999) The domain-specific probe EUB338 is insufficient for the detection of all bacteria: development and evaluation of a more comprehensive probe set. Syst. Appl. Microbiol.22, 434-444.

参照

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