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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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早稲田大学大学院 基幹理工学研究科

博士論文審査報告書

論 文 題 目

Dynamical Motion of Newtonian and Non-Newtonian Fluid Flows

with Free Surfaces

申 請 者

Sri Maryani

スリ マルヤニ

数学応用数理専攻 偏微分方程式研究

2016 年 4 月

(2)

自由境界をもつ粘性流体の数学解析は数理物理の基本的な問題の一つである.

厳密な数学解析は70年代初頭のSolonnikovをリーダーとするロシア学派の液滴 落下の解析,Beale, Nishida, Tani等をリーダーとする日米学派の海面の運動の解 析が研究の端緒となり,今日までの長い研究の歴史がある.現在までの研究の数 学的基盤は線形化問題に対する最大正則性原理と解の時間減衰評価にある.現在 までに何度か研究のピークを迎えているが,最大正則性原理に関するここ10年 間の発展としては,ドイツ学派によるHカリキュラスを用いる関数解析的方法 と柴田によるR有界性を用いる偏微分方程式的方法の確立があげられる.特に後 者は前者にくらべ非有界領域でも時間大域解の存在を示す方法まで与える優れた 方法であるといえる.本論文では後者が非ニュートン流の代表的な方程式である

Oldroyd-Bモデルに適用され,一般領域での時間局所解と,有界領域での時間大

域解の存在が示されている.

また本論文では非圧縮性粘性流体の2相問題に表れる方程式系の線形化問題の 解作用素のR有界性が示されている.これは非線形問題の解析の基礎となる結果 であり応用上重要である. 実際粘性流体の2相問題は応用上重要な問題を数多く 含む. 最近の例でいえば, 原子力の過酷事故は数学的には熱流体が冷えて固体に なっていく現象として,液体と固体の2相問題として定式化される. しかし数学的 に厳密な解析はまだ始まったばかりといえる.

以下,第1章から順に各章の研究概要およびその評価を述べる.第1章では,本 研究の概要が述べられたのち,論文中に用いられる,関数空間と記号が説明され ている.第2章と第3章ではOldroyd-Bモデルが扱われている.人体における血 液の流れや射出成形におけるプラスチックの流れなどは,力学的には水や空気な どに代表される粘性流体や金属などの弾性体とは異なり,両者の性質を合わせ持 つ粘弾性体としてふるまう.よって方程式は質量保存式,運動量保存式,および 弾性体の運動方程式の連立系で与えられる.本論文では代表的な基礎方程式であ

るOldroyd-Bモデルに対する自由境界問題が扱われている.

Ω⊂RN を時刻 t= 0 において流体が占める領域,Γをその境界とする. Ωt 時刻t における領域t をその境界とすると, Oldroyd-Bモデルに対する自由境 界値問題は次で記述される⎧ . 0< t < T に対し,

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⎪⎨

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⎪⎩

tρ+ div (ρu) = 0 inΩt,

ρ(∂tu+u·∇u)−DivT(u, P(ρ)) =βDivτ inΩt,

tτ+u·∇τ+γτ=δD(u) +gα(∇u,τ) inΩt, (T(u, P(ρ)) +βτ)nt=−P(ρ)nt on Γt, (ρ,u,τ)|t=0= (ρ0,u00) inΩ, Ωt|t=0=Ω, Γt|t=0=Γ.

(1)

ここで, u = u(x, t) = (u1(x, t), . . . , uN(x, t)) ρ = ρ(x, t) はそれぞれ流速 と密度, τ = τ(x, t) は応力テンソルの弾性部分を表す未知関数, T(u, P(ρ)) = µD(u) + (ν−µ)divuI−P(ρ)I,D(u) = ∇u+ (∇u)T (T は転置を表す.), µ,ν, β,γ,δ は正定数, I N 次の単位行列,nt Γt 上の単位外法線ベクトル,P(ρ) は圧力としρのC(R+)関数であり,P(ρ)>0 (ρ>0)を満たすと仮定する. ま

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(3)

た,gα(∇u,τ) =W(u)τ −τW(u) +α(τD(u) +D(u)τ),W(u) =∇u−(∇u)T, α は−1≤α≤1 を満たす定数,ρ は正定数とする.

第2章では問題(1)に対する時間局所解の一意存在が示されている. 領域Ωtは 未知であるので, Lagrange座標を用いて,既知の領域であるでの問題に帰着さ

せる. Lagrange座標上での方程式の線形化方程式の時間Lp空間Lq枠での最大正

則性原理を示す. これとBanachの不動点定理によりLagrange座標上の非線形問 題の時間局所解の一意存在が示される. 論文におけるこの部分はスタンダードな 議論である. この章の評価すべきところは,時間変数に対してラプラス変換して得 られるレゾルベントパラメーターλをもつ一般レゾルベント問題の解作用素を一 般領域で構成し,そのR有界性を示すところにある. 実際この作用素とワイスの 作用素値フーリエ掛け算作用素の理論から最大正則性原理が示されることもスタ ンダードな議論である. Lagrange 座標を用いているので, Euler座標での質量微 分は時間微分となっている. 従って 質量保存則の線形化はρ=λ1(divu+f), た弾性体方程式の線形化はτ = (λ+δ2)−1{D(u) +gα(∇u,τ1) +h}とともに流速 uで表される. これらの式を運動方程式の線形化方程式に代入し,一般化Lam´e方 程式を得る. レゾルベントパラメーターが大きい時これは通常のLam´e方程式か らの摂動とみることができ,自由境界条件付きの楕円型方程式に対するR有界な 解作用素を構成する議論へ持ち込んだ. ここに優れた独創性がある.

第3章では第2章で構成した時間局所解を領域が有界であり,初期値のノルムが 小さく,さらに初期値のうちの弾性体の部分τ0は対称行列であり,流速部分u0は 剛体運動に直交することを仮定して,時間局所解を時間無限まで延長できることを 示している. さらにこの時間大域解は時間無限遠方で指数減衰することを示して いる. 証明のポイントは,線形化問題の解の指数減衰定理を示す事である. まず, 線形化問題を時間変数に関して十分大なる正定数λ0をもってシフトする. 即ち,∂t の代わりに∂t0を考える. よってレゾルベントパラメーターがλからλ+λ0 シフトされる. これにより線形化問題の基本解は指数減衰することが分かる. よっ て右辺が適当なオーダーで指数減衰していれば, 解も同じオーダーで指数減衰す ることが分かる. 次にλ0だけシフトした分を補正する. これは線形化問題の右辺 をλ0(κ,v,ψ)としたものを考えることとなる. ここで κ,v, ψはシフト問題の解 である. この問題の解はDuhamelの原理により,線形化問題に対応する解析半群 を用いて表すことが出来る. こうして問題は解析半群の指数減衰を示す事に帰着 される. しかし,線形化問題は(0,vij,0) (vij =xiej−xjei,ei = (0, . . . ,1, . . . ,0) はRN の第i基底)なる減衰しない解をもつので, これらを除く商空間上で減衰 評価を示す事となる. 結果的に線形化問題の解の指数減衰評価を得るために右辺 に R = %t

0 |eηt(u,vij)|pdt (ηは正定数) なる項がつく. この評価を時間局所解を 延長する議論に用いるためにはR項を評価しないといけない. そのために解が

Lagrange座標上での方程式の解であるということを用い, Euler座標での解に変

換し,運動量保存と角運動量保存がEuler座標上は成立するという事実を用いてこ の項の評価を行なう. この証明方法は非ニュートン流体の研究においては全く初 めてのオリジナルなものであり,非常に優れたものであると評価できる.

2

(4)

第4章は非圧縮性粘性流体の2相問題の線形化方程式のR有界な解作用素の存 在を示している. これは第2章のところで触れたように非線形問題の時間局所解 の一意存在を示すための本質的な部分である.

考察するレゾルベント問題は次のように与えられる. ΩをRNの一様Wr2−1/r 領 域,Γ+をその境界. Ω+をΩの部分領域でその境界をΓとする. Ω=Ω\(Ω+∪Γ), Ω˙ =Ω+∪Ω とおく⎧ . 一般化レゾルベント問題は次で与えられる.

⎪⎪

⎪⎪

λu−ρ1DivT(u,θ) =f, divu=g in ˙Ω, [[T(u,θ)n]] = [[h]], [[u]] = 0 on Γ,

T(u,θ)n+=k on Γ+.

(2)

ここで,u= (u1(x), . . . , uN(x))θ=θ(x)はそれぞれ流速と圧力を表す未知関数, f,g,h,kは既知関数,ρ±は正定数,µ±±(x)は既知関数でΩ±を占める粘性流 体の密度と粘性係数とする. D⊂RNの特性関数χD に対し,ρ=ρ+χ+χ, µ=µ+χ+χ,T(u,θ) =µD(u)−θI,nn+はそれぞれΓΓ+の単位 外法線ベクトルとする. また, [[f]] は関数fΓ上のジャンプを表し,x∈Γ に対 し[[f]] = [[f]](x, t) = limy→x,y∈Ω+f(y, t)−limy→x,y∈Ωf(y, t) で定義される.

一様Wr2−1/r領域で(2)を解析するためには領域の局所化を行うのが一般的であ

るが, divergence conditionを保ちつつ局所化するのは困難である. そこで圧力項 を流速の関数とみなしたreduced Stokes方程式を導入する. このreduced Stokes 方程式が(2)と同値であることを示すためにweak Dirichlet-Neumann 問題が一 意的に解けるという仮定が本質となる. この仮定の下,レゾルベント問題(2)対す る解作用素のR有界性を得た. 証明の本質的な部分は半空間での問題のR有界な 解作用素の存在証明と一般領域でのパラメトリクスの構成である. 半空間での問 題ではロパチンスキィ行列式の下からの評価が独創的であり大変評価できる. ま た一般領域でのパラメトリクスの構成においては,圧力項は消去されているとはい え,問題が非局所的である部分は残っておりその処理が繊細で難しい. この困難さ を負べきのソボレフ空間を上手く使うことにより乗り切っているところが大変評 価できる.

以上述べたように,申請者は非ニュートン流の時間局所解と時間大域解の一意 存在定理,および非圧縮粘性流体研究の基盤となる,線形化問題の一般レゾルベン ト問題のR有界な解作用素の存在を示した. これらは非常に独創的な研究であり, 多くの価値ある結果を含んでいる.また,本論文の中で確立された研究手法は関 連分野の今後の発展に大きく貢献するものと期待される.よって,本論文は博士

(理学)の学位論文として十分に価値のあるものと認める.

20162 審査員

(主査) 早稲田大学教授 理学博士(筑波大学) 柴田良弘 早稲田大学教授 理学博士(北海道大学) 小薗英雄  早稲田大学教授 理学博士(京都大学) 小澤徹 

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参照