小児喘息ハンドブック 2008 ネット版
入門編
患者とその家族が知りたかったことを、喘息の患者と家族が専門の医師と一緒に、患者の視点に立って作 成した診療ガイドラインです。喘息が起こるしくみや、症状、対応方法、薬について、安心して学校生活 を送るためにできることなど、患者の親ならではの経験と知恵とガイドラインに沿った正しい治療方法が 盛り込まれています。もっと詳しいことを知りたい場合は、「詳しく見る」をご覧下さい。喘息を治療する 上でお役に立てる情報が見つかると思います。第
1 章 「喘息」ってどんな病気?
1.喘息の症状 喘息は、とても元気で、喘息があることを全く忘れてしまうような生活が出来る時期と、発作が起きて 呼吸が出来なくなる(息がすえるけれども、はくことが出来ない)状態を、繰り返してしまう疾患です。 発作がなく元気に見えるときにも、息の通り道(気道)の炎症は続いていて、ちょっとした刺激でも、 発作が起きやすくなっています。一見元気なときにも、薬を飲んだり吸入をしたりすることが大切な理 由は、そこにあります。 咳がでる、息をするとゼーゼーヒューヒューと音がする(喘鳴ぜんめいと言います)、息をするのが苦しいなどは 喘息の症状ですが、風邪だと思って気づかないでいることがあります。日中は元気なのに夜中や朝方に よく咳をしたり、喘鳴が聞こえる場合は喘息の疑いがあります。また、喘息だと思っても他の病気や、 間違って異物を飲み込んでいる場合もありますので病院で調べてもらうことが必要です。 2、喘息が起こるしくみ 身体を守る働きが強すぎて自分の身体にダメージを与える状態をアレルギーといいます。特に小児の喘 息は、アレルギーとのかかわりが強い疾患です。それぞれの人によって違うアレルゲンが呼吸によって 気道から入ることによって、過敏になっている気道が反応して、気道粘膜のむくみや平滑筋の収縮、痰 がたまるなどの症状が起きます。喘息のない人ではなんでもない原因(ダニ・ホコリ・動物の毛や唾液・ 煙など)によって起きます3、喘息発作を引き起こす原因 発作を起こす原因には、アレルゲンとアレルゲンでないものとが、あります。 アレルゲンにはダニやカビ、動物の毛、花粉、食物など。アレルゲンでないものにはタバコやたき火 の煙、大気汚染、風邪、気象の変化、ストレスなどさまざまなものがあります。 喘息の発作を起こす 原因は、人によって異なります。子どもの場合は90%がダニといわれています。ダニは生きているも のだけではなく、死がいが乾燥してばらばらになったものもアレルゲンになります。 アレルゲンを周囲から取り除くことが、治療の出発点ともいえます。お子様のアレルゲンを見つけま しょう。 4、喘息の発作の強度と喘息の重症度 喘息の発作の強さとや喘息の症状の重さは段階と型で分けられています。それぞれの症状にあわせた 対応や治療をします。今の症状がどの程度なのかを知る目安にもなります。喘息発作の強度が強いこ とが、必ずしも喘息の重症度が重いわけではありません。発作の程度が軽くても、繰り返し起こした り、薬でコントロールできなかったりすると、重症といえます。また、とても強い薬を使っているこ とでやっと症状が軽くて済んでいる場合は、軽症とは言えません。まずは重症度を知って必要な治療 をしっかりと始め、コントロール、寛解を目指しましょう。
5、喘息の知識(アレルギーマーチ・リモデリング・喘息死など) 喘息になる前は食物アレルギーやアトピー性皮膚炎だったという方も多くいます。その後、アレルギ ー性の鼻炎や結膜炎を起こす場合もあります(アレルギーマーチ)。 また、発作が起きると気道が傷つき炎症をおこしますが、炎症が続くと気管支が硬くなったり厚くな ってして治りにくい状態になります(リモデリング)。最悪の場合は喘息死につながる恐れがあります。 そのために発作を予防する長期の治療が大切になります。
第
2 章 診察と検査
1、病院へ行くときに準備すること 「喘息かな?」と思って病院にいくときには、簡単な病気のエピソードをメモしていきましょう。ま た、親や兄弟、祖父母に喘息やアレルギー(喘息だけではなく、アトピー性皮膚炎や花粉症など)が あるかどうかも、ただ風邪が長引いているのか、喘息を視野に入れたほうがよいかどうかの判断の基 準になりますので、メモしていきましょう。外来で待っている間にのどが渇いたりしますので、飲み 物や、具合の悪いときにはタオルやビニール袋も用意します。24 時間以内に薬を飲んでいたときには、 何時にどんな薬を飲んだかもメモしてもって行きましょう。診察メモの見本もありますのでご活用く ださい。 2、検査の種類 ひいた風邪がなかなか治らない、熱が下がったのに咳がいつまでも続く、などで喘息かな?と気づくこ とが多いようです。「喘息」と診断がつくまでには幾つか確認することがあります。診断をつけるには、 検査が必要になります。検査の種類は、血液検査・皮膚テスト・肺機能検査などがあります。 3、診察から治療開始までの流れ(まとめ) 診察をしてから診断をするまでの流れは図のようになります第
3 章 ぜんそくの治療
1、 療の目標と治療の3 本柱 【小児気管支喘息の治療目標】(日本小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2008 より) 最終的には寛解・治癒を目指しますが、日常のコントロールの目標は、 1. β2刺激薬の頓用(発作止めに使う)が減少、又は必要がない 2. 昼夜を通じて症状がない 3. 学校を欠席しない 4. スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる 5. ピークフローの値が安定している 6. 肺機能がほぼ正常 7. 気道過敏性が改善(運動や冷気などの吸入に夜症状誘発がないことが確認される) 【治療の3 本柱】 1. 環境整備 2. 運動療法 3. 薬物療法 喘息は、寛解・治癒が目指せる疾患となりました。「今まで、あれほどひどかったのだから、これぐらいの 発作は仕方がない」と思わず、お子さまが将来、子どもの頃に喘息があったことを忘れるようになるぐら いまでになります。「症状を起こす引き金になるものをできるだけ避ける」「体調に合わせた運動を行い、 基礎的な体力を身につける」「薬を使って体調を管理する」を一緒にがんばってみませんか。 2、喘息の治療薬(炎症をおさえる薬と発作止めの薬) 喘息の人は、発作のないときでも気道に炎症があります。その炎症を抑えるための長期管理薬と、発 作が起きたときに使う発作止めとの、二本立ての薬が喘息の治療薬です。薬は出来るだけ飲ませたく ない、いつになったらやめることが出来るか?子どもが小さいほど薬を毎日飲ませるのは大変だし、 飲むお子様も大変です。なぜこの薬が必要なのか?親がまずは理解し納得してから、安心して薬を飲 めるように子どもに説明をしましょう。3、喘息の重症度に応じた治療ステップ 喘息は、人によって大きな違いがある疾患です。また、同じ重症度でも、年齢によって治療のために 使う薬が違いますし、お子さまのタイプによっても違います。重症度にあわせた治療ステップは、今 の治療があっているかどうかの一つの判断にもつながります。かかりつけの先生と相談する時に活用 できます。 4、吸入療法と上手なスペーサーの活用方法 喘息の薬には、飲む薬・吸う薬・貼る薬があります。吸う薬は直接患部に薬が届くため、身体のほかの 部分に副作用が起こりにくいことなどの利点があります。でも、きちんと吸えないと効果がないことも あります。今の吸入器の使い方が正しいかどうかを確認してみましょう。吸入を上手にするための補助 器具としてマスクやスペーサーもあります。 5、お薬Q&A 正しく知ってよりよい治療をめざそう 薬を飲み忘れたけど、どうしたら良いの?上手に飲んでくれないけど方法は?副作用は?どれくらいの 間薬を飲むの?など、悩みは皆同じです。参考になる解決法が見つかると思います。
第4章 発作を起こしたときの対応
1、発作を起こしたとき、家庭でできること 「何かあったら来てください」と先生に言われたとき、何かあったらの何かってどんなこと?と思いませ んか。病院に行かずに家で見ても大丈夫なときもあります。それも人によっても違うので、前もってかか りつけの先生に、どのような症状のときに、どうすればよいのかを具体的に相談しておきましょう。苦し そうにしている子どもに、水を飲ませる、背中をさすってあげる、戸外に出てみる、抱いてあげて楽にな る姿勢をとるなど、少しでも楽にしてあげるために親が子どもにできること、子どもが自分で出来ること があります。いざというときの対処方法を知っておくことで、発作がおきても必要以上に不安にならなく てもすみます。 2、救急受診(夜間受診) 「喘息」は、発作の時にはこのまま息が出来なくって死ぬのではないか、と子どもに思わせるほど苦し いものです。今は、発作を起こさせないような治療がメインですが、それでも発作を起こしたときには、 家で見ていていいのか、病院に行ったほうがいいのか悩むものです。薬を吸入しても発作が止まらない ときは救急受診をするなど、判断の基準の目安はありますが、人によっても違うので、どのような症状 のときに受診したほうがよいか、前もってかかりつけの先生に相談しましょう。また、夜間に救急受診 した翌日にはかかりつけの先生に診てもらいましょう。その後の治療にとってとても大切なことです。3、病院で行われる治療 家での治療が難しく、病院にいくと判断した時に、どんな準備をしていけばよいか、病院ではどんな治 療をするのか?などを知っておくことも大切です。発作を起こして病院に行くときには、長期管理薬と しては何時ごろにどんな薬を飲ませたか、発作を起こしてからは、発作止めとしてどんな薬を何回、何 時ごろに飲ませたか、また思い当たる原因やこれまでの発作の状態などをメモして行きましょう。 病院では、以上のようなことを聞かれた後、酸素吸入や吸入、点滴をすることもあります。発作が重い ときには経口ステロイドが処方されることもあります。発作が重く治療をしても症状が安定しないとき には、入院をして治療することもあります。 以上のようなメモを準備する以外に準備しておくと良いものには、 □受診する病院の診察券 □かかりつけ医の診察券 □保険証 □普段飲んでいる薬(長期管理薬と発作止めも:とっさに名前が出てこないときもあるので) □つけていれば喘息日記 □ティッシュ(箱で)□吐いてもいいようにビニール袋に紙袋をかぶせたも の2~3セット □タオル2~3 枚 □ぬれティッシュ □飲み物 □軽い食べ物 などがあります。 4、コントロールはできていますか 「喘息」はまだまだ標準治療が広く行われているとは限りません。貴方の今の治療が適切か、改めて 確認してみてください。 わずかな刺激で発作を繰り返す、発作を起こし救急受診をすることが多い場合は、コントロールが上 手くいっていないかもしれません。チェックしてみましょう。
第5章 セルフケア(自分で管理する)
1、治療効果をあげるにはセルフケアが大切 喘息の治療は家庭での治療が基本です。家庭での治療が上手く進んでいると治療の効果も必ずあがります。 そのためには何をすればよいのかをよく理解することは治療を続ける励みになると思います。 治療効果をあげるセルフケアには「環境整備」「体調を管理する」「セルフモニタリング」があります。 2、環境整備 治療の3本柱のひとつが環境整備です。子どものアレルゲンとしてはダニがメインですが、生活環境の 中からダニを全く排除するのは難しいのですが、少なくすることによって治療の効果は上がります。ダ ニを減らすために掃除をする・ダニが増えないようにする家具の配置など、またタバコを家の中で吸わ ないようにすることなど、工夫することで、発作の回数を減らし、薬も減らせるように出来るようにな ります。 3、体調を管理する(風邪、運動誘発喘息) 風邪を引くことは喘息発作の引き金になりますので、風邪を引かないようにするためにうがいをする、 手を洗う、予防接種をするなど、完全とはいえませんが予防をするようにしましょう。 また、運動をすると喘息発作を起こしてしまうことがあります。その予防として、運動する前に準備 運動を十分にすること。そして起きてしまった運動による発作の対処法は、休む、水を飲むなどする などの具体的な方法があります。お子様や学校のお友だちにわかるように図にしてありますのでご活 用ください。 4、セルフモニタリング(ピークフロー、喘息日記) 喘息の自己評価は、どうしても甘くなりがちといわれています。ピークフローは気道の状態を数字で 示してくれます。一見元気そうに見えていても実は軽い発作が起きていたりする状態を、数値で確認 することが出来ます。十分な薬を事前に飲むことなどで行事に参加できるようにするなどの役に立ち ます。又、一年通して喘息日記をつけることによって、季節で調子が悪くなりそうな時期や、体調を 崩すきっかけを見つける助けになります。今つけているけど、ちょっとめんどうくさい、と思ってい る方、是非、読んでください。とっても便利なことが分かります。薬の量を減らすことを医師に相談 する時には大変有効なアイテムとなります。第6章 喘息のない子どもたちと同じような生活をおくるために
1、ライフサイクル 「喘息」があることによって、どんな年令の時にどんなことが起こりうるのか?それぞれの年令にお ける予想される出来事を参考に、子どもへの配慮、準備をしましょう。表には、学校生活においてそ れぞれの年齢で注意することがあります。詳しいライフサイクルの表がありますので是非ご参考下さ い。 2、年齢別の喘息の特徴 乳幼児から成人まで 自分で苦しさを表現できない乳幼児は、親が注意することが大切です。大きくなるにつれて、自分の 状態を自分で感じ、それを大人に伝えられるようにしていく。又中高生になると自分で情報を探した り、直接医師や周囲の大人に相談できるようになることが大切など、年令に応じた対応をすることで 発作を事前に予防したりすることも出来ます。 3、安心して学校生活をすごすために 一日の三分の一を過ごす幼稚園学校などの教育機関で安全に過ごすための年令に応じた知恵を集めま した。喘息のないお子さまと同じ学校生活が出来ると言っても、発作が起きたときは出来ないことが あります。より理解してもらうためにも「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」を、 家庭・学校・医療の連携のためのコミュニケーションツールとして活用してまいりましょう。学校で注意することには、掃除や動物の飼育があります。ホコリの出る掃除は避けたほうがよいこと、 ハムスターなどの毛のある動物は教室内で飼うことはできるだけ避けたいことなど、クラスメイトに 理解してもらうことはとても大切です。お友だちに説明するためのツールとして図をご利用下さい。 5、学校で注意すること② 運動 運動することで、軽い発作が起こることがあります。運動し始めて、少したつと呼吸が苦しくなりま す。それを運動誘発喘息といいます。特に、運動の種類としては長距離走、気候では、空気が乾燥し ていたり、冷たかったり、風が強いときになりやすいようです。予防として、準備運動を十分にする、 マスクをするなどの方法があります。苦しくなったら少し休んで腹式呼吸や水分の補給をすることで、 また運動を続けられるようになることが多いものです。運動する前に吸入をするのも効果があります が、吸入しないと発作が出てしまうようなら、今の治療が足りないことも考えられます。かかりつけ の医師に、どんな運動をするとどうなる、ということをメモして相談してみましょう。水泳は、運動 誘発喘息が起こりにくいので、喘息の人に適しているといわれています。 6、学校で注意すること③ 学校行事への参加 遠足も宿泊行事も修学旅行も、大切な思い出です。ぜひ、参加できるように、そのためにどんなこと をしたらよいかを考えていきましょう。十分な準備をすることは大切です。学校の打ち合わせ、医師 への相談、そして、お子さまに、いつもと違う感じがしたら、「出来るだけ早く先生に知らせようね。 先生も応援してくれているよ」ということを伝えましょう。 7、さまざまな場面で注意することー医療機関・災害・海外への持ち出し 学校生活、日常生活の中で気をつけていくことをまとめました。アレルギー体質というのは、とても 広い範囲のいろいろな症状がいろいろな原因で起こります、そしてそれは、人によってさまざまです。
るなどは、知られていないようです。また、学校生活でも重い症状のお子さまを受け持ったことがあ る先生はとても用心深くなっています。また、軽い症状しか知らないと、大人になれば治る、鍛えた ほうが早く治る、など、経験の範囲で判断してしまうことがあります。そのため、必要以上の制限を したり、がんばらせすぎたりしてしまうこともあります。私たちは、今自分の子どもを取り巻く社会 が、アレルギーについてどのくらいの理解度なのかを知った上で、周りの方々に必要な情報を伝える ことによって、お子さまの楽しい学校生活、日常生活を、周りの方々と一緒に支えていきましょう。 エピペンの海外持ち出しについても前もって準備と手続きをすることで可能になります。 お母さん、一人で悩まないで ぜんそく、と診断されると不安になります。周りにぜんそくの方がいると、あの苦しみを自分の子どもが 経験するかと思うと辛くなりますし、周りにはいなくても、長期慢性疾患であるために、長い付き合いが 始まるかと不安になるかもしれません。でも、今は多くのお子さまが「ぜんそくのないお子さまと同じ生 活が出来るようになる」所まで、治療が進んでいます。インターネット上には「アレルギー学会」「小児ア レルギー学会」「難治小児喘息・アレルギー疾患学会」などのアレルギーの専門家やアレルギー疾患に関心 のある医師の研究や勉強の場があります。HP 上のそこからの情報で、まずは正しい治療の情報を集めま しょう。また、同じような経験をした親の集まりである患者会があります。それぞれHP を作ったり、勉 強会や講演会、日ごろの不安を話し合う集まりや電話相談をしているところもあります。 診断されたときにはたった一人と思えても、又隣近所に同じ病気の方がいらっしゃらなかったとしても、 ちょっと足を伸ばすと「同じような経験」をしている方がたくさんいます。又、保健所や都道府県や市町 村、病院や患者会でも講演会をしています。一緒にがんばれる仲間との情報共有は、長期の治療の継続や 今の治療の振り返りの役に立ちます。まだまだこのハンドブックの中に書かれている治療が十分にいきわ たっているとはいいがたいので、この本を参考に、自分の治療の見直しや、より良い治療環境のために一 緒にがんばって