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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

日本人英語学習者における明示的文法知識の役割 : 自動化した明示的知識と口頭運用能力の関係

岡田, 美鈴

https://doi.org/10.15017/1654606

出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(比較社会文化), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

日本人英語学習者における明示的文法知識の役割

-自動化した明示的知識と口頭運用能力の関係-

岡田美鈴

(3)

本論文の要旨

本研究は、日本人英語学習者における明示的知識、特に自動化した明示的知識の役割を明 らかにし、口頭運用能力との関係を探ることを目的としている。

これまでの日本の英語教育では、口頭運用能力の向上や測定方法について活発な議論が 行われてきた。学習指導要領の変遷や2008年度版の指導要領及び近年の英語教育に関する 議論からも明らかである。しかしながら、日本人英語学習者の持つ文法知識の性質、性質ご との口頭運用能力との関係性について調査や議論が十分に行われているものの、一致した 見解には至っていない。したがって、本研究では、日本人英語学習者を対象に、複数のテス トを組み合わせた多角的な調査を行い、彼らの持つ文法知識の性質を項目ごとに明らかに し、さらに、性質と項目ごとに見る口頭運用能力との関係について調査することとした。

本研究の軸となる知識の性質については、第二言語習得研究や認知心理学の分野におけ る明示性と暗示性を取り上げ、意識、注意、気づき、アウェアネス、情報処理モデルといっ た関連する諸概念を概観した。次に、これらの諸概念を基に、文法知識の性質を多角的に調 査した過去の実証研究について内容の詳細を紹介した。これらの実証研究から明らかにな ったことは、言語を学んだ環境によって、得られる知識の性質に違いがある可能性が考えら れること、学習者の持つ知識の明示性と暗示性について、テストによって一定の傾向は見ら れるが、厳密に区別することは実際には困難であるということであった。明示性と暗示性の 区別を困難にしている要因の一つとして、インターフェイスの問題について一致した見解 に至っていないことが考えられる。

一方で、日本人英語学習者を対象とした調査が少ないことや、外国語環境における明示的 知識、特に自動化した明示的知識の役割についての議論が十分ではないことも同時に判明 した。その上で、日本人英語学習者の持つ知識の間には強いインターフェイスの関係がある と考え、統制的且つ明示的な文法知識が暗示的状態へと変化していく前に自動化した明示 的知識が存在することを想定した。どのような項目でどのような性質の違いが見られるの か、さらに口頭運用能力は、性質ごとに分類された知識とそれぞれどのような関連性がある のかについて、以下の課題に沿って調査分析し、考察していくこととした。

研究課題①

日本人英語学習者が持つ文法知識は、項目ごとに統制的な明示的知識や自動化した明示

(4)

的知識として分類することができるか。

研究課題②

日本人英語学習者の持つ文法知識において、統制的な明示的知識や自動化した明示的知 識はメタ言語知識との関連性が認められるか。

研究課題③

日本人英語学習者の持つ自動化した明示的知識は、口頭模倣能力と関連性が認められる か。

研究課題④

自動化した明示的知識と口頭模倣能力によって、口頭運用能力を説明することができる か。

調査方法は、60問からなるspeeded多肢選択型文法テスト、17問からなるメタ言語知識 テスト、36問からなる文法性を判断するリスニングテストを伴う口頭模倣テスト、テスト 開始前に行う英語学習背景調査、テスト終了後に行うテストを振り返るためのアンケート である。

まず、speeded多肢選択型文法テストによって明示的知識と自動化した明示的知識を区別

するために、同テストにおけるネイティブスピーカーの反応時間を測定し、平均値を算出し た。日本人英語学習者の同テストにおける反応時間と比較すると、すべてにおいて有意差と 効果が見られたことから時間的指標として採用した。通常の採点と、日本人英語学習者の反 応時間と指標を比較しながら行った採点によって、明示的知識を多く含むスコアと、自動化 した明示的知識を多く含むスコアの算出に成功した。さらに、採点から項目ごとの正答率も 判明したため、平均値を用いた時間的指標を作成することによって、研究課題①は立証され たと思われる。

メタ言語知識と文法知識の関連性については、予備調査における時間制限を設けない多 肢選択型文法テストのスコアとメタ言語知識テストのスコアに相関が見られた。さらに文 法テストのスコアから上位群と下位群に分けたところ、上位群では相関は見られず、下位群 では相関が見られた。さらに、speeded多肢選択型文法テストによる明示的知識とメタ言語 知識テストの間にも弱い相関が見られた。一方、自動化した明示的知識はメタ言語知識テス トとの間には相関が見られなかったため、時間をかけて解いた場合や、学習が進んでいない 場合にメタ言語知識と関連性があることが判明した。

研究課題③における、自動化した明示的知識と口頭模倣能力の関連性については、両者の

(5)

間に強い相関が見られた。また、speeded多肢選択型文法テストにおける対象文法項目が多 いので、文法性を判断するリスニングテストを伴う口頭模倣テストで扱った文法項目に合

わせ、speeded多肢選択型文法テストから対応のない文法問題を抜いて分析を行った。その

結果、全体的なスコアで分析した場合の結果と変わらなかった。そのため、口頭模倣能力と 幅広い文法項目が自動化されていることには、強い関連性があることが判明した。さらに、

口頭模倣テストに含まれる文法的な文と非文法的な文を分類し、明示的知識と自動化した 明示的知識との相関を見たところ、文法的な文は自動化した明示的知識と強い相関が、非文 法的な文は自動化した明示的知識と相関が見られた。このことからも、自動化した明示的知 識と口頭模倣については強い関連性が認められると考えられる。研究課題④については、口 頭模倣テストだけでは、自由で即時的な産出力を見ることは困難であり、インタビューや別 の口頭テストを用いる必要があることが、今後の課題として残った。

本研究の目的のひとつである文法項目ごとの性質については、明示的知識であるもの、自 動化した明示的知識であるもの、自動化した明示的知識であり口頭模倣で使用できるもの など、複数のテストによってそれぞれの内在度が明らかになった。

(6)

目次

本論文の要旨 ... ii

図表一覧 ... viii

第1章 序論 ... 1

1.1 研究の背景 ... 1

1.1.1 資料から見る日本の英語教育の現状 ... 1

1.1.2 実証研究からの示唆 ... 6

1.2 研究の目的 ... 7

1.3 研究方法 ... 9

1.4 論文構成 ... 11

第2章 明示性及び暗示性に関する諸概念...17

2.1 テスト理論の言語コミュニケーション能力から見る言語知識 ...17

2.2 認知的アプローチから見る言語知識の性質 ...19

2.2.1 明示的知識と暗示的知識 ...19

2.2.2 宣言的知識と手続的知識 ...24

2.2.3 自動化した知識 ...25

2.2.4 規則的知識と事例的知識 ...26

2.3 言語学習に関連する概念 ...27

2.3.1 明示的学習と暗示的学習 ...27

2.3.2 意識と無意識 ...31

2.3.3 気づき・アウェアネス・注意 ...32

2.4 情報処理モデル ...35

第3章 文法知識の性質や測定に関する実証研究 ...39

3.1 テストで測定する明示的知識と暗示的知識 ...39

3.2 明示的及び暗示的学習や指導の効果から見る知識の発達 ...54

第4章 研究課題と調査方法論 ...61

4.1 研究課題 ...61

(7)

4.1.1 研究課題① ...61

4.1.2 研究課題② ...65

4.1.3 研究課題③・④ ...65

4.2 調査方法論 ...66

4.2.1 参加者 ...67

4.2.2 英語学習背景調査 ...67

4.2.3 文法テスト ...68

4.2.3.1. 文法テストに関する議論 ...68

4.2.3.2. 本研究におけるspeeded多肢選択型文法テスト ...70

4.2.4 解答時間の設定方法 ...71

4.2.4.1 時間設定に関する議論 ...71

4.2.4.2 本研究における反応時間を基準にした時間設定 ...72

4.2.5 メタ言語知識テスト ...75

4.2.5.1 メタ言語とは ...75

4.2.5.2 本研究におけるメタ言語知識テスト ...76

4.2.6 口頭模倣テスト ...77

4.2.6.1 口頭模倣テストに関する議論 ...77

4.2.6.2 本研究における口頭模倣テスト ...79

4.2.7 テストを振り返るためのアンケート ...80

第5章 調査結果 日本人英語学習者における明示的文法知識の役割...81

5.1 調査の目的 ...81

5.2 調査方法 ...82

5.3 結果 ...83

5.3.1 英語学習背景調査 ...83

5.3.2 テストスコアの分析 ...86

5.3.2.1 すべてのテストにおけるスコアの分析 ...86

5.3.2.2 海外経験とスコアの関連 ...87

5.3.2.3 speeded多肢選択型文法テストにおける分析 ...88

5.3.2.4 口頭模倣テストにおける分析 ...96

5.3.3 相関分析 ...98

(8)

5.3.4 テストを振り返るためのアンケート ...101

第6章 考察 日本人英語学習者における明示的文法知識の役割...104

6.1 研究課題① ...104

6.2 研究課題② ...108

6.3 研究課題③ ... 110

6.4 研究課題④ ... 114

6.5 テストを振り返るためのアンケートから見えてくること ... 115

第7章 結論 ... 118

7.1 本研究の要約 ... 118

7.2 本研究の意義 ...125

7.3 今後の課題 ...127

参考文献 ...129

付録 ...142

<付録1> 英語学習背景調査 ...142

<付録2> speeded多肢選択型文法テスト...145

<付録3> speeded多肢選択型文法テスト解答用紙...160

<付録4> メタ言語知識テスト ...161

<付録5> 口頭模倣テスト英文一覧 ...165

<付録6> リスニングテスト解答用紙 ...167

<付録7> テストを振り返るためのアンケート ...168

<付録8> ネイティブスピーカーの1問ごとの反応時間の記述統計 ...171

<付録9> 日本人英語学習者の1問ごとの反応時間の記述統計 ...174

謝辞 ...177

(9)

図表一覧

表1.1 学習指導要領の変遷 ... 2

表2.1 明示的及び暗示的知識の鍵となる特徴 ...24

表2.2 明示的及び暗示的学習の特徴 ...30

表2.3 「意識」と「無意識」という用語の基本的な使用における概念の対比 ...31

表2.4 情報処理と注意の焦点の関係 ...36

表2.5 情報処理と言語特性への注意における第二言語パフォーマンスの可能性 ...37

表2.6 第二言語の知識の交差的連続体 ...38

表3.1 習熟度別文法項目 ...44

表3.2 IELTSと明示的及び暗示的知識との間に相関が見られた文法項目 ...46

表3.3 テストで測定する明示的知識と暗示的知識の実証研究 ...49

表3.4 明示的及び暗示的学習や指導の効果から見る知識の発達を見た実証研究 ...58

表4.1 明示的及び暗示的知識の鍵となる特徴 (表2.1再掲) ...61

表4.2 第二言語の知識の交差的連続体 (表2.6再掲) ...63

表4.3 標準英文法テスト第7f版の文法領域と項目 ...69

表4.4 反応時間の平均値とt検定結果 ...73

表5.1 複数テストにおけるスコア平均と標準偏差 ...86

表5.2 海外経験の違いによるスコア平均と標準偏差 ...87

表5.3 領域ごとの明示的知識と自動化した明示的知識の平均正答率 ...88

表5.4 文法的な文及び非文法的な文の平均正答率と標準偏差 ...96

表5.5 複数のテストと明示的及び自動化した明示的知識における相関分析 ...98

表5.6 海外経験の有無による自動化した明示的知識と他テストとの相関分析 ...99

表5.7 メタ言語知識・口頭模倣・リスニング間の相関分析 ...99

表5.8 文法テストと口頭模倣テストで共通する文法項目 ...100

表5.9 共通の文法項目間での相関分析 ...100

表5.10 文法的な文・非文法的な文と他知識との相関分析 ...100

表5.11 Likert scaleによるアンケート結果 ...101

(10)

表6.1 文法領域ごとの学習が進んだ明示的知識と思われる項目 ...105

表6.2 文法領域ごとの自動化した明示的知識と思われる項目 ...106

表6.3 明示的文法知識の内在度 ... 113

表7.1 明示的文法知識の内在度 (表6.3再掲) ...126

図1.1 学校で実際に行われている指導や学習 ... 6

図2.1 言語コミュニケーション能力の下位分類である言語知識の構成要素 ...19

図2.2 言語のインプットとアウトプット: フィードバックにおける3つの知識 ...22

図2.3 アウェアネスのレベル ...34

図4.1 外国語環境における学習者の知識の変化 (仮説) ...64

図4.2 領域AにおけるNSとNNSの反応時間 ...74

図4.3 領域BにおけるNSとNNSの反応時間 ...74

図4.4 領域CにおけるNSとNNSの反応時間 ...74

図4.5 領域DにおけるNSとNNSの反応時間 ...74

図4.6 領域EにおけるNSとNNSの反応時間 ...75

図4.7 領域FにおけるNSとNNSの反応時間 ...75

図5.1 外国語環境における学習者の知識の変化 (仮説, 図4.1再掲)...81

図5.2 中学校と高等学校で受けてきた指導 ...84

図5.3 C 混合指導における指導タイプの比重 ...84

図5.4 1週間当たりの英語学習時間 ...85

図5.5 領域Aにおける明示的知識 ...89

図5.6 領域Aにおける自動化した明示的知識 ...89

図5.7 領域Bにおける明示的知識 ...91

図5.8 領域Bにおける自動化した明示的知識 ...91

図5.9 領域Cにおける明示的知識 ...92

図5.10 領域Cにおける自動化した明示的知識 ...92

図5.11 領域Dにおける明示的知識 ...93

図5.12 領域Dにおける自動化した明示的知識 ...93

図5.13 領域Eにおける明示的知識 ...94

(11)

図5.14 領域Eにおける自動化した明示的知識 ...94

図5.15 領域Fにおける明示的知識 ...95

図5.16 領域Fにおける自動化した明示的知識 ...95

図5.17 口頭模倣テストにおける文法的な文の正答率 ...97

図5.18 口頭模倣テストにおける非文法的な文の正答率 ...98

図7.1 外国語環境における学習者の知識の変化 (仮説, 図4.1再掲)...121

(12)

第 1 章 序論

1.1 研究の背景

1.1.1 資料から見る日本の英語教育の現状

日本における英語教育の研究は、明治時代にはすでに始まっていた (山家, 1982; 江利川,

2008)。文法指導や訳読の是非はもちろんのこと、4 技能の向上、殊に「英語を使って話す

ことができる」能力を育成するための議論は、教育者や研究者のみならず政治家までもが加 わり (平泉・渡部, 1975)、現在に至るまで活発に行われてきた。中でも文法は、必要な言語 知識のひとつとして捉え、その学習プロセスや効果的な指導法、新たな学習文法の構築など、

常に議論の中心となり研究が進められてきたが、未だ一致した見解に至っているとは言い 難い。

学習指導要領では、1947年の試案から口頭運用能力の向上を目的とし、文法は帰納的に 指導することを推奨してきた。文法事項については述べられていても、具体的な文法指導の 指針について曖昧な学習指導要領も過去には存在している。急速なグローバル化の発展や 2020年の東京オリンピック誘致の成功など、日本における環境の変化は、学習指導要領の 改訂を含め日本の英語教育に影響を与えてきた。表1.1は、学習指導要領の改訂ごとの変遷 をまとめたものである。

(13)

表1.1 学習指導要領の変遷

1947

オーラルメソッド

1. リスニング 2. スピーキング → 第一次的技能 3. リーディング 4. ライティング → 第二次的技能

 作文や解釈の技能は、上記の技能の上に築かれる

1951

 文法については、中学校において、基礎的な運用能力を養う目的から、

これを独立に取り上げないで、聞き方・話し方・読み方・書き方の中 において、学習するのが望ましい

1958

オーラルアプローチ

 文法事項がしだいに複雑になってくるが、ある程度用例に親しませた 後に帰納して指導し、運用する能力を伸ばすことに役だたせる

 文法は、聞くこと、話すこと、読むことおよび書くことの中で指導し、

ある期間の終りごろに既習の文法事項を整理させることなどは必要 である

1969-1977  (取り扱う文法事項についての記述)

1989  教員は外国語活動においてコミュニケーションへの生徒の積極的な

態度を育成することが大切である

1998

 中学校において外国語を必修科目とし、場面を通じて聞くこと、話 すこと、読むこと、書くことの順に重点を置いた指導をする

 コミュニケーション活動に必要となる基本的な文型や文法事項など を理解し、実際に活用すること

国立教育政策研究所 学習指導要領データべース

2008年版では「コミュニケーション能力の育成」が中心課題に据えられ、小学校ではそ の素地を、中学校では基礎を養い、高等学校ではコミュニケーションへの積極的な態度の育 成とともに、的確に伝えることが可能となるコミュニケーション能力の完成系を養うこと を目的としている。その上で、文法の取り扱いを以下のように推奨している。

文法については、コミュニケーションを支えるものであることを踏まえ、

(14)

言語活動と効果的に関連付けて指導すること。

(中学校, 2008, p. 54; 高等学校, 2009, p. 42)

「聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能 力の基礎を養う」とは、単に外国語の文法規則や語彙などについての知 識を身に付けさせるだけではなく、実際のコミュニケーションを目的と して外国語を運用することができる能力の基礎を養うことを意味してい る。

(中学校, 2008, p. 8)

文法の指導はコミュニケーション能力の育成を図る指導と対立するもの ではなく、円滑にコミュニケーションを行うとともに、豊かな内容を伴 うコミュニケーションを行うためには正しい文法の基盤が必要不可欠で ある。

(中学校, 2008, pp. 54-55)

…文法事項の取り扱いについては、用語や用法の区別などの指導が中心 とならないよう配慮し、実際に活用できるように指導すること。また、語 順や修飾関係などにおける日本語との違いに留意して指導すること。

(中学校, 2008, p. 55)

文法は基盤として必要であるが、文法をコミュニケーションと切り離し て考えたり、この二つを対立的な事項として捉えたりしないことが大切 である。実際の指導においては、文法の用語や用法等に関する説明は必 要最小限としつつ、当該文法を実際に用いて言語活動を行うことについ て慣れ親しむことができるよう、当該文法を用いた多様な文を聞いたり 読んだりする活動を行ったり、話したり書いたりする活動の中で、新し い文法事項を積極的に用いることを奨励したりして、文法をコミュニケ

(15)

ーションに活用することができるための授業を行うことが重要である。

(高等学校, 2009, p. 43)

文部科学省は、2008年度版及び 2009年度版において、文法が重要な言語的要素である ことは認めつつも、用語や用法などによる指導を最小限にし、言語活動の中で繰り返し触れ ることによって、学習者が文法を学習、習得できるように授業を構成することを推奨してい る。このような指針に至る背景には、Focus on FormやTask-Based Language Teaching など、言語活動の中で文法に気づかせることが効果的な指導法であるとして紹介する研究 が増えていることが考えられる (Long,1991; Long & Robinson, 1998; Doughty & Varela, 1998; Doughty & Williams, 1998; Muranoi, 2001; 村野井, 2006)。

上記のような指針のもと、日本人英語学習者の英語力測定については、文部科学省による 有識者会議で審議が行われ、英語教育の在り方に関する資料 (2014) にまとめられた。これ までに出された「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(2003) 及び「国際共通 語としての英語力向上のための5つの提言と具体的方策」(2011) での提言を踏まえ、以下 のように基本的な考えを示している。

このような環境の中で、総合的な英語力を向上するためには、世界標準 を視野に入れた目標設定を行うとともに、小・中・高等学校を通じてコミ ュニケーション能力に必要な「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び

「書くこと」の 4技能が総合的に育成され、その各技能が適切に評価さ れることが必要である。

学習指導要領を踏まえた中学校・高等学校における英語教育と、大学及 び高等学校入学選抜との整合性を確保しつつ、コミュニケーション能力 の育成に必要な4技能をバランスよく伸ばすことができるよう、各大学・

高等学校の教育理念・内容等に応じた入学者受け入れ方針 (アドミッシ ョン・ポリシー) を踏まえつつ、既に広く認められている資格・検定試験 を活用することは意義のあることと考える。

(16)

今後、英語力の評価及び入学者選抜において、コミュニケーション能力 に必要な 4技能を総合的に測る資格・検定試験の活用が、次のような具 体的な方策1を通じて英語教育の改善の促進につながることを期待する。

(pp. 2-3)

知識量を測定していると言われてきた従来の入学試験制度から、学力評価テストやプレ ゼンテーション、ディベート能力、TOEFLの活用2など、4技能の総合的な能力の測定へと シフトすることによって、これまで以上に知識量や、それらが与える口頭運用能力への影響 が問われることになると思われる。また、小池ら (2008) の研究では、社会からの要求を満 たすためには、今までうまく機能していなかったといえる小学校・中学校・高等学校・大学 における英語教育のつながりについて、一貫した連携が必要であるとの研究結果を発表し ている。

しかしながら、日本は外国語環境であり、日常生活において英語による実践的なインプッ トを得ることは難しい。したがって、教室の中で行われる言語活動とは、ロールプレイング の要素を持った疑似的な活動にならざるを得ない状況である。Benesse (2009) は、中学校 で実際にどのような指導や学習が行われているのかについて大規模な調査を行っている (図1.1参照)。独立した文法説明や練習は、ほとんどの学校で行われている一方で、言語活 動は公立におけるペアワークの活動を除いて、文法説明などと比べて少ないことが見てと れる。これは2009年のデータであるため、現在では言語活動の機会が増えていることが予 想される。しかしながら、高等学校においては、現在でも独立した文法の授業が行われ、コ ミュニケーションⅠやⅡなどでは、リーディングの授業が行われている学校もある。ティー ムティーチングによる言語活動の授業も行われているが、他の授業との連携は見られず、簡 単なフレーズを用いた単独の言語活動となっているところもある。

1 CEFR (Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching,

assessment「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」) との関連を考慮した、

国際的に広く受け入れられている試験、及び国内で開発され広く受け入れられている試験 (英検、

GTEC、TOEFL iBT、IELTS、TOEIC、TOEIC SWなど)。

2 朝日新聞 2014年10月25日付

(17)

図1.1 学校で実際に行われている指導や学習 (Benesse, 2009, 筆者編)

1.1.2 実証研究からの示唆

英語教育は、学ばれる環境によって学習や習得のレベルが左右される。日本のように日常 的に外国語を必要としないような環境では、EFL (English as a Foreign Language)、いわ ゆる外国語としての英語を学ぶことになる。インプットの量や質が、ESL (English as a

Second Language) での実践的なものとは異なり、formal instructionが学習者に与える影

響が強くなる。口頭運用能力を高めるためには、文法的知識やテキスト的知識、発話内能力、

社会言語学的能力など様々な能力が必要であるだけではなく (Bachman,1990; Bachman

& Palmer, 1996; バックマン & パーマー, 2000)、それらの知識が流暢に且つ即時的に引き 出せなければならない。そこで、第二言語習得研究や認知心理学では、知識の性質を明示性 と暗示性とに二分し、学習者の持つ文法知識の性質と関連性を明らかにすることで、口頭運 用能力の測定を試みている。

これまでに行われてきた外国語環境における実証研究では、フランスやスペイン、イギリ ス、ドイツ、オランダなど、母語と目標言語間にある言語的距離の近いものが多かった。一 方、第二言語環境で行われた実証研究も多いが、参加者の多くがアジアからの留学生、特に 中国語母語話者が多く含まれた調査が目立っている。本研究に関連する調査として、テスト で測定する明示的知識と暗示的知識の観点から、Hulstijn & Hulstijn (1984)、Green &

71.4

92.6 94.1

97.1

39.1

65.4

96.3 97.8

0 20 40 60 80 100

グループワーク ペアワーク 文法の練習 文法指導

(%)

私立(n=266) 公立(n=3387)

(18)

Hecht (1992)、Han & Ellis (1998)、Macrory & Stone (2000)、R. Ellis (2009b)、Erlam (2009)、Loewen (2009)、Elder (2009)、R. Ellis (2009c)、Elder & Ellis (2009)、Bowles (2011)、Gutiérrez (2013)、Spada, Shiu, & Tomita (2015)、Suzuki & DeKeyser (2015) を 取り上げた。これらの調査結果では、明示的知識が暗示的知識へ変化したというよりもバリ エーションが増加した、時間制限や焦点を向ける方法によりパフォーマンスが変化する、産 出の際のメタ言語の使用ははっきりしていない、口頭模倣テストによって学習者の文法項 目の発達段階を知ることができる、言語熟達度には明示的及び暗示的知識と関連がある、第 二言語環境での学習は暗示的知識が先行し、外国語環境での学習は明示的知識が先行して いる、時間制限よりもタスクの刺激の方が文法知識測定に影響を与えている可能性がある、

口頭模倣テストは自動化した明示的知識を測定している、など様々な考察が加えられてい る。しかしながら、明示的及び暗示的知識の測定やその結果について、一致した見解に至っ ているとは言い難い。

また、明示的及び暗示的学習や指導の効果から見る知識の発達の観点から、DeKeyser (1994)、Robinson (1996)、Erlam, Loewen, & Philip (2009)、Spada, Jessop, Tomita, Suzuki,

& Valeo (2014) を取り上げた。これらの調査からは、暗示的学習と明示的学習の効果に違

いが見られない場合がある、インプットよりアウトプットでの指導の方で効果が高い場合 がある、条件が整えばインプットもアウトプットも知識の発達に効果があるが違った経路 で影響を与えている、産出テストのタスク内容によっては手続化された明示的知識を測定 している可能性がある、といったように様々な結果が示されている。テストで測定する明示 的知識と暗示的知識の観点からの実証研究と同様、一致した見解に至っているとは言い難 い研究結果と言えるであろう。実証研究の詳細は、第3章で取り上げる。

1.2 研究の目的

学習指導要領や審議資料では、コミュニケーション能力の育成に必要な 4 技能をバラン スよく身につけることが必要であることを指摘しており、指針としては口頭運用能力の向 上を第一の目的としている。しかしながら、外国語環境におけるインプットの量や質を考え ると、文法指導と言語活動を効果的に関連付けることは必ずしも可能ではない。なぜなら、

文法の難易度が上がっていくスピードと口頭運用能力が向上していくスピードに違いがあ るからである。日本における英語教育において formal instruction が行われていることは

(19)

Benesse (2009, 2014) の調査でもわかっており、外国語環境における formal instruction が知識の性質の変化に影響を与えていることは実証研究からも明らかである。つまり、明示 的知識が暗示的知識へと変わっていく前に、自動化した明示的知識が存在することによっ て、明示的に知識を学習してから流暢に知識が使用できるようになるまで、第二言語環境に 比べ時間がかかることが予測される (DeKeyser, 2009)。しかしながら、先行研究における 明示的及び暗示的知識について、両知識に接点があるかどうかについては未だ明らかにな っていない。いわゆるインターフェイス論争である。ノンインターフェイス、強いインター フェイス、弱いインターフェイスと、接点の度合いが異なっており、多くの実証研究におい てどのインターフェイスを支持するのかは研究者によって様々である3。これは、知識の性 質が明示的であるか暗示的であるかという二分された概念を基にしているが、自動化した 明示的知識が存在するとすれば、学習者の知識は連続的な変化をしている可能性があるこ とが考えられ、暗示的知識に近い明示的知識や、明示的知識の処理状態に近い暗示的知識な ど、様々な性質が存在すると考えられる (DeKeyser, 2009)。その概念は、McLaughlin, Rossman, & McLeod (1983)、McLaughlin (1990)、McLaughlin & Heredia (1996) による 情報処理モデルで説明されている4。したがって本研究では、教室で明示的指導を受けるこ とや、プリントやテキストなどで様々な問題形式を解答する記述的な練習などを繰り返す ことによって、学習者の持つ明示的知識が次第に自動化していくという仮説を基に、強いイ ンターフェイスを支持することとする。

また審議資料では、英検やGTEC、TOEFL iBT、IELTS、TOEIC、TOEIC SWなどを英語 の総合的な能力を測定するテストとして取り入れることを提案している。しかしながら、実証研 究においてTOEFLやIELTSなどは、暗示的知識だけでなく明示的知識も必要であり、能力の 基盤となる文法や語彙などの知識が豊富でなければならない。さらに、speaking パートに よって高いスコアを獲得するためには、学習によって得られた豊富な知識が流暢に引き出 される段階になければならない。日本の中学校や高等学校において、これらのテストを視野

3 インターフェイス論争には、3 つの段階があるとされている。学習した知識 (learned

knowledge) と習得した知識 (acquired knowledge) の間には接点がなく、学習した知識が習得

した知識に変わることはないとされているものをノン・インターフェイスの立場という。一方、

両知識には接点があるとする考え方が、強いインターフェイスの立場と弱いインターフェイス の立場である。前者は学習した知識が習得した知識に変わるとするものであり、後者は、学習者 が習得できる段階に到達しているときに、学習した知識が習得した知識に変わるとするもので ある。詳しくは2.2.1参照。

4 2.4参照。

(20)

に入れて学習や指導を変化させていくのであれば、日本人英語学習者にとってどのような 項目でどのような性質の違いが見られるのか、さらに口頭運用能力は、性質ごとに分類され た知識とそれぞれどのような関連性があるのかについて考察する必要があるであろう。こ れらの点について調査を行い、これまでの実証研究の結果と比較することによって、外国語 環境における日本人英語学習者の持つ明示的知識、特に自動化した明示的知識の役割が明 らかになってくるのではないだろうか。Spada, Jessop, Tomita, Suzuki, & Valeo (2014) に よるESLにおける調査や、Suzuki & DeKeyser (2015) によるJSL (Japanese as a Second

Language) の調査においても、自動化した明示的知識は、スピーキングなどアウトプット

において幾分役立つ知識となるとしており、学習者によっては、最終的に暗示的知識として コミュニケーション上で自由に使用できる知識へと変化していく可能性が考えられる。

しかしながら、実証研究をレビューしていくと、日本で学んでいる日本人英語学習者のみ を対象にした複数のテストによる量的調査が少なく、データが不足していることがわかる。

したがって、日本人英語学習者の持つ文法知識について、項目ごとのデータや、反応時間を 基にした性質の分類、それらが与える口頭運用能力への影響を調査することが必要であろ う。

1.3 研究方法

本研究における調査では、大場 (2008) の標準英文法テスト第 7f版を採用することとし た。予備調査として九州大学の大学生66人に参加してもらい、時間制限を設けずにこのテ ストを受けてもらったところ、標準英文法テスト第7f版における信頼性を調査したクロン バック検定で α=.82 であったため、信頼性は保証されていると考えられる。このテストは 多肢選択型問題であるが、この種類の問題は多くのテストに含まれており、学習者にとって も馴染みのある問題形式である。また、英語の基礎力測定や文法力測定として大規模な調査 が可能なことや使用方法が簡便であることなどから、実証研究において新たな開発が進め られ使用されるなど、現在でも多用されているテスト方法であるといえる (浅野, 2009; 熊 澤, 2010; 田島, 2012, Álvarez, 2013)。明示的及び暗示的知識の概念から考えると、多肢選 択型は明示的知識を測るものであるとされている (根岸, 2011; 根岸・村越, 2013)。これま での実証研究において、学習者の内部には明示的知識と自動化した明示的知識が存在する 可能性があること、暗示的知識を測定していると言われる口頭模倣テストなどにおいて自

(21)

動化した明示的知識が関わっている可能性があることが指摘されている。つまり、自動化し た明示的知識が、日本のような外国語環境における学習者の言語能力にとって有効である ことが予想されるため、大場 (2008) の標準英文法テスト第7f版をLingua Tools (坂本・

安永, 2010) というソフトをダウンロードしたコンピューターでプログラミングし、

speeded且つ時間制限を設けた多肢選択型テストとして調査に加えることとした。Loewen

(2009) でも取り入れられているが、speeded とは「できるだけ早く」という文言で指示が

与えられ、判断を急ぐよう設定されているタイプの手法 (草薙,2012) である。さらに、ネ イティブスピーカーの問題解答における反応時間をコンピューターで計測し、問題ごとに 平均値を出して指標を作成した。その指標を基に、日本人英語学習者がその時間内に問題を 解答できているかを 1 問ごとに比較することによって、解答にかかった時間を制限し、デ ータに反映する方法をとった。問題は、コンピューターのスクリーンに映し出されるスライ ド1枚ごとに1問ずつであり、解答用紙に記入してからEnterキーを押して次に進む方法 をとった。データ収集が完了した後、採点を2回行った。1回目は通常通りの採点を行い、

明示的知識と自動化した明示的知識が混在したスコアを出した。次に2回目の採点を行い、

自動化した明示的知識をできるだけ多くスコアに反映させるため、時間的指標の範囲内で 反応し且つ正解しているものを1点としてスコアを出した。

speeded 多肢選択型テストにおける時間設定については、Ellis, Loewen, Elder, Erlam,

Philip, & Reinders (2009) のプロジェクトにおける反応時間の平均値に基づく方法を参考

にした。R. Ellis et al. (2009) は、平均値ではなく20%加算した値を採用しているが、反応 時間の平均値にどれくらいの時間を加算することが適切なのかについては、一致した見解 に至っていない。項目ごとにどれくらいの時間を平均値に加算するべきかについては、平均 値における比較をしたのちでなければならないため、本研究では平均値を時間的指標とし て採用し、スコアを算出して分析することとした。指標を作成するために、まずは予備調査 として、speeded多肢選択型文法テストにおけるネイティブスピーカー (以下 NS) と日本 人英語学習者 (以下NNS) の反応時間を測定し、比較を試みた。t検定や効果量から、両者 の反応時間に有意差があることが確認された。

他の外国語環境同様、日本においても明示的な文法指導やプリント、テキストを用いた記 述式の学習などが教室で行われているが、そのような指導で使われるメタ言語は、学習者の 知識構築に何らかの関連性がある可能性が考えられる。本研究における調査では、R. Ellis

et al. (2009) による17問からなる多肢選択型のメタ言語知識テスト (日本語に訳したもの)

(22)

を採用し、明示的及び自動化した明示的知識とメタ言語知識との関連性について調査分析 を行った。

さらに、口頭運用能力とリスニング力を測定するため、また、speeded多肢選択型文法テ ストで測られると思われる自動化した明示的知識との関連性を見るため、文法性を判断す るリスニングテストを伴う口頭模倣テストを独自に作成した。テスト作成に当たっては、R.

Ellis et al. (2009) の口頭模倣テストや、Vinther (2002) や Tomita, Suzuki, & Jessop

(2009) のマニュアルに沿って、日本人英語学習者に馴染みがあると考えられる石黒 (2008)

の例文を参考にした。取り扱う文法項目については、大場 (2008) の標準英文法テスト第7f 版 (speeded多肢選択型文法テスト) に含まれている文法項目とできる限り対応させるよう 注意を払った。しかしながら、口頭模倣テストは集中力に対し大きな負荷がかかるため、R.

Ellis et al. 同様、文法テストに比べ問題数を抑えなければならなかったことから、すべて

の文法項目を対応させることは困難であった。テストには、文法的な文と非文法的な文、そ れぞれ18問ずつ計 36問をランダムに配置した。次に、選定した文について英語のネイテ ィブスピーカーにそれぞれ読んでもらい、IC レコーダーで録音した。speeded多肢選択型 文法テストの際にも用いたLingua Toolsにプログラミングし、コンピューターを使用しな がらテストを行えるよう準備を整えた。参加者にはテスト前に、文法的な文と非文法的な文 が含まれていること、文法的な文はそのまま模倣し、非文法的な文は訂正して模倣するよう 指示をした。単純なリピートをさせないため、またリスニング力の測定も兼ね、聞いた文が 文法的に正しかったか否かを、模倣する前に解答することも指示し、解答用紙を準備した。

参加者の口頭によるデータは、IC レコーダーで録音した。口頭模倣についての採点は、目 標の文法項目について模倣もしくは訂正の後模倣ができていれば 1 点とし、模倣もしくは 訂正ができていない、または回避した場合は0点とした。採点は信頼性を高めるため、期間 を2週間ずつあけて3回行ったところ、結果はすべて一致した。

学習者の英語学習背景を調査するためのアンケート調査をテスト開始直前に、さらにテ スト終了直後に、どのようにして課題を遂行したかについて振り返るためのアンケート調 査を行った。

1.4 論文構成

本研究は、日本人英語学習者における明示的知識、特に自動化した明示的知識の役割を明

(23)

らかにし、口頭運用能力との関係を探ることを目的としている。

第1章では、これまでの学習指導要領の変遷と2008年度版の指導要領及び近年の英語教 育に関する議論を概観し、日本人英語学習者における文法知識の性質や、性質の違いによっ て現れる口頭運用能力への関連性について、一致した結論に至っていないにも関わらず、口 頭運用能力の向上や測定方法の検討が進められていることを指摘した。さらに、第二言語習 得研究における実証研究を概観することによって、日本人英語学習者における複数テスト を実施した多角的な調査が少ないこと、DeKeyser (2009) や Suzuki & DeKeyser (2015) が自動化した明示的知識の存在を示唆しているにもかかわらず、暗示的知識に関する議論 の方が活発に行われており、その役割についてあまり焦点が当てられていないことなどを 明らかにした。したがって、日本人英語学習者における知識は、強いインターフェイスの関 係があり、多くの文法項目が明示的知識から徐々に自動化した明示的知識へと変化すると 仮定し、研究課題を設定した。さらに、研究課題を解明するための複数からなる一連のテス トについて順に解説した。

第 2 章では、明示性及び暗示性に関する諸概念に関して先行研究を概観する。まず、

Bachman (1990) の言語コミュニケーション能力に関する研究を概観し、口頭運用能力に

は様々な知識や能力が必要であり、文法的知識も重要な役割を果たしていることを紹介す る。その上で、文法を知識として捉えた場合のその性質について、認知的アプローチから明 示的及び暗示的知識、宣言的及び手続的知識、規則的及び事例的知識を概観し、日本人英語 学習者における自動化した明示的知識の役割と口頭運用能力との関係について考察するた めの重要な概念として示す。さらに、実証研究における概観では、テストによる調査だけで はなく、学習や指導の影響から知識の変化を調査した実証研究も参考にしているため、言語 学習に関する概念について、明示的及び暗示的学習を概観していく。さらに、これまでの実 証研究においても調査に至る概念として注目されてきた意識、注意、気づき、アウェアネス について、先行研究における議論を見ていく。また、注意が払われた知識がどのように処理 されるのかについては、McLaughlin, Rossman, & McLeod (1983)、McLaughlin (1990)、

McLaughlin & Heredia (1996) による情報処理モデルを概観し、知識は明示性と暗示性に

二分されるだけではなく、自動化した明示的知識や統制的な暗示的知識があることを示し、

インターフェイスの問題は複雑であることを確認する。

第 3章では、第2章における概念を基にした実証研究を概観していく。学習者の持つ文 法知識の性質について、テストによる調査と学習や指導の効果から調査した研究に分け、調

(24)

査方法や結果を示していく。

外国語環境で学ぶ日本人英語学習者には、知識間に強いインターフェイスの関係があり、

明示的知識から内在化5を経て徐々に自動化した明示的知識へと変化していくと仮定する。

したがって、本研究の目的は、日本人英語学習者にとってどのような項目でどのような性質 の違いが見られるのか、さらに口頭運用能力は、性質ごとに分類された知識とそれぞれどの ような関連性があるのかについて考察する必要があることから、第 4 章では、これまでの 実証研究から判明していない課題を導き出し、仮説と共に本研究における研究課題を設定 する。研究課題①日本人英語学習者が持つ文法知識は、項目ごとに統制的な明示的知識や自 動化した明示的知識として分類することができるか。研究課題②日本人英語学習者の持つ 文法知識において、統制的な明示的知識や自動化した明示的知識はメタ言語知識との関連 性が認められるか。研究課題③日本人英語学習者の持つ自動化した明示的知識は、口頭模倣 能力と関連性が認められるか。研究課題④自動化した明示的知識と口頭模倣能力によって、

口頭運用能力を説明することができるか、の4つである。

次に、その研究課題を解明するための調査方法論について、先行する実証研究で行われて きた方法を参考に、日本人英語学習者に適した調査方法を導き出した経緯を説明する。行っ た調査は、60問からなるspeeded多肢選択型文法テスト、17問からなるメタ言語知識テス ト、36問からなる文法性を判断するリスニングテストを伴う口頭模倣テスト、テスト開始 前に行う英語学習背景調査、テスト終了後に行うテストを振り返るためのアンケートであ る。複数のテストにより、日本人英語学習者の持つ文法知識の性質を項目ごとに分類するこ と、分類された文法知識と口頭運用能力との関連性を探ることを試みている。また、アンケ ート調査により、日本人英語学習者の持つ知識と指導の関係について示唆を与えることが できると思われる。

第5章では、本研究における調査結果を順に説明していく。最初に、テストを開始する直 前に行った英語学習背景調査について、参加者のデータ (年齢、所属、出身、母語)、学校外 での英語学習経験の有無、具体的な学習方法、学校で受けてきた指導、明示的な指導とコミ ュニケーション活動の比重、海外経験の有無や滞在先、年数、1週間の英語学習時間、具体 的な学習方法やその目的について、参加者の回答の詳細を説明する。次に、speeded多肢選 択型文法テスト、メタ言語知識テスト、文法性を判断するリスニングテストを伴う口頭模倣

5 2.3参照。

(25)

テストについての全体的なスコア分析について説明する。海外経験の有無がスコアに与え る影響を確認した後は、speeded多肢選択型文法テストにおける文法項目の性質を、反応時 間による指標を基にスコアとして算出した結果について報告する。また、文法性を判断する リスニングテストを伴う口頭模倣テストについても、項目ごとに模倣成功率を見ていく。次 に、相関分析を行い、テストスコアから予測される能力の関連性についての結果を説明する。

この章の最後に、テスト終了直後に行ったテストを振り返るためアンケート調査の結果を 報告する。

第6章では、第4章で設定した研究課題について、第5章の調査結果から順に考察して いく。本研究の重要な目的である、日本人英語学習者にとってどのような項目でどのような 性質の違いが見られるのか、さらに口頭運用能力は、性質ごとに分類された知識とそれぞれ どのような関連性があるのかについて、調査結果の詳細を報告する。

第 7 章では、本研究の全体的考察と意義を述べ、さらに本研究における限界と今後の課 題を明確にしていく。

以下の章は、論文と口頭発表を大幅に加筆修正したものである。

<第1章、第2章>

Okada, M. (2012a). Form-focused instruction for connecting the language activities effectively. The 25th Annual Chapter Conference, JACET Kyushu-Okinawa Chapter.

Okada, M. (2012b). Implicit and explicit instruction in classrooms of Japan. Fukuoka JALT Conference and Educational Materials Expo.

Okada, M. (2013a). What does ‘competence’ mean? Osaka JALT’s Annual Spring Mini- Conference.

Okada, M. (2013b). The importance of awareness regarding knowledge for learners. The 26th Annual Chapter Conference, JACET Kyushu-Okinawa Chapter.

<第4章、第5章、第6章>

Okada, M. (2013c). The relevance of implicit-explicit knowledge of Japanese learners of English in Japan. Fukuoka JALT One-day Conference and Ordinary General Meeting.

岡田美鈴 (2014a).「暗示的・明示的概念から考える大学生の持つ英文法知識の学習・習得経 路」第140回東アジア英語教育研究会.

(26)

Okada, M. (2014b). Japanese physical science students’ knowledge of English – The key of proficiency. JELLA Spring Conference of Korea.

Okada, M. (2014c). Japanese physical science students’ knowledge of English – The key of proficiency. The Proceedings of JELLA Spring Conference of Korea, 61-67.

岡田美鈴 (2014d).「文法テストによる暗示的知識測定法の検討」大学英語教育学会第27回 九州沖縄支部研究大会.

岡田美鈴 (2014e).「暗示性・明示性から考える日本人英語学習者の英文法知識と他知識と の関係性」『Annual Review of English Learning and Teaching』,No, 19, 99-113.

岡田美鈴 (2014f).「反応時間からみる日本人英語学習者の文法習熟度」第43回九州英語教 育学会大分大会.

岡田美鈴 (2015a).「記憶と知識―テストバッテリーで何が測れるのか―」第6回応用認知言 語学研究会.

岡田美鈴 (2015b).「反応時間からみる日本人英語学習者の文法習熟度」『The Kyushu Academic Society of English Language Education』,No. 43, 71-80.

Okada, M. (2015c). The relationship between the qualities of knowledge that EFL learners have and oral ability. The JACET 54th International Convention.

岡田美鈴 (2016a).「口頭模倣テストによる運用力の測定について」第162回東アジア英語 教育研究会.

(27)

<本論文の構成>

第 1 章 序論

研究に至った経緯、問題点と仮説の提起、研究方法

第 2 章 明示性及び暗示性に関する諸概念に関する先行研究概観 第 3 章 文法知識の性質や測定に関する実証研究の概観

第 4 章 研究課題と調査方法論

先行研究において明らかになっていない問題点 日本人英語学習者の調査分析

第 5 章 調査結果

アンケート調査 スコア分析

相関分析

第 6 章 考察

日本人英語学習者における明示的文法知識の役割

―自動化した明示的知識と口頭運用能力の関係―

第 7 章 結論

本研究の要約 本研究の意義 今後の課題

(28)

第 2 章

明示性及び暗示性に関する諸概念

本研究は、第二言語習得研究における明示性と暗示性における諸概念から、日本人英語学 習者の持つ明示的知識の役割、特に自動化された明示的文法知識と口頭運用能力の関係に ついて考察していくことを目的としている。

2.1 テスト理論の言語コミュニケーション能力から見る言語知識

テスト理論の観点からBachman (1990) やBachman & Palmer (1996) が、Canale &

Swain (1980)らの概念をさらに発展させる形で、言語コミュニケーション能力 (CLA:

Communicative Language Ability) を提唱している。Bachman (1990) は、この概念につ いて、「(一般的な) 知識と言語能力 (言語知識) を含んだ概念、また、適切に文脈化された コミュニケーション上の言語使用の中で知識 (能力) を実行・使用することを可能にする能 力」(p. 84) と説明している。Canale & Swain (1980) におけるコミュニケーション能力の 概念を踏襲しながらも、さらに発展した形で言語コミュニケーション能力を定義した。

Bachman (1990) は、言語コミュニケーション能力そのものは、言語能力、つまり言語知

識とストラテジー能力の2つで構成されているとしていて、Bachman & Palmer (1996) や バックマン & パーマー (2000) は、このことについて次のように述べている。

この言語知識とメタ認知的方略 (ストラテジー能力) こそが、言語使用者 に、言語テスト課題または非テスト言語使用において、談話を作り出し 解釈する能力あるいは才能を与えるものなのである。

(バックマン & パーマー, 2000, p. 78)

さらに彼らは、自らの言語能力観について次のようにも述べている。

(29)

こ の 言 語 能 力 観 は 、Widdowson (1983) が 「 意 思 伝 達 能 力 」

(communicative capacity) と呼んだものとも矛盾していないし、言語能

力を 2 つの構成要素 ((1) 能力 (competence) と呼ばれることもある言 語知識、及び (2) その知識を言語使用において実行する認知的プロセス または方略) からなるという見方が一層強まってきた応用言語学研究と も矛盾していない。

(バックマン & パーマー, 2000, p. 77)

さらに言語能力、つまり言語知識とはどのようなものなのかについて Bachman &

Palmer (1996) は、図2.1のような下位構造があると説明している。Bachman & Palmer

(1996) は、言語知識 (能力) について、構造的知識と語用論的知識があるとし、さらに分類

して詳細に概念化している。本研究の目的である文法知識は、この構造的知識のさらに下位、

文法的知識のひとつになる。構造的知識とは、バックマン & パーマー (2000) によると、

文法的に容認可能な発話や文を発表、理解するため、及びこれらの発話 や文を組織して、口頭及び文書のテキストを作り上げるために言語の形 式的構造を調整するのに必要である。

(バックマン & パーマー, 2000, p. 78)

と説明している。さらに文法的知識については、「形式的に正確な発話や文を発表、理解す ることと関係がある」(p. 78) としている。

(30)

(Bachman, 1990; Bachman & Palmer, 1996; バックマン & パーマー, 2000, 筆者図)

2.2 認知的アプローチから見る言語知識の性質

言語知識と運用能力という概念は、Chomsky (1957, 1965, 1986) の知識―能力論から大 きな議論へと発展してきた。知識と運用能力を切り離していたChomskyの概念から、現在 では、両者に密接な関係性があるとする認知的アプローチからの示唆が、第二言語習得や外 国語習得の理論に大きな影響を与えている。Chomsky からBachman & Palmer (1996) ま でのいわゆる「文法知識 (能力)」は、母語話者のそれを想定しているものが多いため、認知 的アプローチでは、母語話者の持つ知識と学習者が学習の中で身につけていく知識とでは 性質に違いがあるとして区別をした。山岡 (2004) における知識の種類分けを参考に、知識 の性質と口頭運用能力に関する議論を順に見ていく。

2.2.1 明示的知識と暗示的知識

認知心理学から持ち込まれた明示的及び暗示的知識の概念は、Bialystok (1981) によっ て以下のように説明されている。

言語知識(能力)

構造的知識(能力)

文法的知識(能力)

語彙 形態論 統語論 音韻論・書記素論 テキスト的知識

(能力)

結束性 修辞的構造

語用論的知識(能力)

発話内能力

観念的機能 操作的機能 学習的機能 創造的機能

社会言語学的能力

方言あるいは変種に対する感受性 言語使用域に対する感受性

自然さに対する感受性 文化的指示および比喩的表現

図2.1 言語コミュニケーション能力の下位分類である言語知識の構成要素

(31)

Just as it is possible to understand any information at a deeper or more analytic level, so it is possible to make apparent the structures underlying linguistic information. When these structures are analysed, then the information is no longer contextually bound to a particular situation; it can be understood as systematic, organized information in its own right. It is this analysed information that we call explicit linguistic knowledge.

(Bialystok, 1981, p. 34)

明示的知識とは、文脈とは関係なく、文の構造を分析するための情報であるとBialystokは 説明している。一方で、暗示的知識については、

The general form in which information is represented allows us to know things intuitively without being aware of the formal properties of that knowledge. For example, we know a great deal about language that defies mental examination, but the knowledge is demonstrated by our ability to produce correct, coherent utterances. This information we have called implicit linguistic knowledge.

(Bialystok, 1981, p. 34)

形式的な部分に気づくことなく、直感的に物事を知ることができるとし、正確で一貫した発 話を生み出すことができる能力によって現れる知識であると説明している。

同様に、N. Ellis (1994) は暗示性と明示性について、以下のように述べている。

We have little insight into the nature of the processing involved - we learn to do them implicitly like swallows learn to fly. Other of our

(32)

abilities depend on our knowing how to do them, like multiplication, playing chess, speaking pig Latin, or using a computer programming language. We learn these abilities explicitly like aircraft designers learn aerodynamics.

(N. Ellis, 1994, p. 1)

言語に置き換えるならば、暗示的知識とは母語のように無意識に獲得した知識であり、明示 的知識とは学習によって得た知識であると言えるであろう。

このように、人が持つ言語知識の性質を二分する考え方を第二言語習得研究に持ち込ん だのは Krashen (1982) であろう。KrashenもBialystokやN. Ellisのように両者を区別 し、教室において学習した言語知識のことを、学習した知識 (learned knowledge) または 明示的知識 (explicit knowledge) と呼び、コミュニケーションの中で自然と身につく言語 知 識 の こ と を 、 習 得 し た 知 識 (acquired knowledge) ま た は 暗 示 的 知 識 (implicit

knowledge) と呼んだ。Krashen (1985, 1994) は、モニター理論のひとつである習得―学習

仮説の中で、両知識には接点がなく、明示的知識が暗示的知識へ変わる、もしくはその逆は ありえないとする、いわゆるノン・インターフェイスの立場をとった。Hulstijn (2002) も また、明示的知識は暗示的知識に変わることはないと主張し、両知識が脳内に貯蔵されると き、その場所が全く別であるため、両知識には接点はないとしている。一方で、両知識には 接点があるとする強いインターフェイスの立場と弱いインターフェイスの立場を主張する 研究者も存在する。Sharwood Smith (1981) は、「意識高揚」6という概念の提唱者である が、明示的及び暗示的知識には強い関係性があるとしている。図2.2のように、Sharwood

Smithは、人間の発話は、明示的知識、暗示的知識、そして両知識が結合した知識、この3

つの知識によって行われるとしている。つまり、人間の発話は3つの知識から始まり、話し 手がそれを暗示的知識に変換するために自らフィードバックを与えることが可能になる。

さらに、相互交流は明示的知識と暗示的知識の間で生み出されるとしている。

6 「意識高揚」とは、教師が特定の言語形式 (文法) に学習者の意識を向かせるといった外国 語学習や第二言語学習を促進するための方法 (白畑・冨田・村野井・若林, 2009)。

(33)

明 示 的 知 識

アウトプット インプット 他者の発話

暗 示 的 知 識

図2.2 言語のインプットとアウトプット: フィードバックにおける3つの知識

(Sharwood Smith, 1981, p. 166, 筆者訳)

このように、明示的知識と暗示的知識がアウトプットに影響を与えていることを示唆し ている。

R. Ellis (2009a) は、強いインターフェイスの立場の特徴を次のように説明している。

‘[N]ot only can explicit knowledge be derived from implicit knowledge, but also that explicit knowledge can be converted into implicit knowledge through practice’

(R. Ellis, 2009a, p. 21).

つまり、明示的知識が暗示的知識から引き出されるだけでなく、明示的知識が暗示的知識へ と、練習を通して変化していくと述べている。

一方、弱いインターフェイスの立場の特徴は、R. Ellis (1994) が以下のようにまとめてい る。

1. Explicit knowledge can be converted into implicit knowledge in the case of non-developmental grammatical rules.

2. Explicit knowledge can be converted into implicit knowledge in the

(34)

case of developmental rules, providing the learner has reached the stage of acquisition that allows for integration of the new rule into the interlanguage system.

3. Explicit knowledge cannot be converted into implicit knowledge in the case of developmental rules, if the learner has not reached the requisite stage of acquisition.

4. Not all knowledge originates in an explicit form – more often than not L2 knowledge begins as implicit knowledge.

5. Formal instruction helps to automatize both explicit and implicit grammatical knowledge.

(R. Ellis, 1994, pp. 89-90)

弱いインターフェイスの立場の特徴的な点は、学習者が知識を獲得できる段階になければ、

明示的知識は暗示的知識に変化することはないということである。

R. Ellis (2008) は、これまでの研究で示唆されてきた明示的及び暗示的知識の特徴につ

いて、その鍵となる特徴を表2.1のようにまとめている。

(35)

表2.1 明示的及び暗示的知識の鍵となる特徴 (R. Ellis, 2008, p. 418, 筆者編・訳)

特徴 明示的知識 暗示的知識

アウェアネス 学習者は言語的規範に意識的に 気づく

学習者は言語的規範に直感的に 気づく

知識の種類

学習者は文法的規則と断片的な 情報に関する宣言的な知識を持 つ

学習者は規則や断片的な情報に 関する手続的な知識を持つ

体系性 知識はしばしば変則的で一貫性 がない

知識は可変的だが体系的でもあ る

アクセス 知識は統制的な処理を通しての みアクセス可能

知識は自動的な処理の手段によ ってアクセス可能

第二言語知識の使用

知識は典型的に、学習者が言語 活動に困難を感じるときにアク セスされる

知識は典型的に、学習者が流暢 にパフォーマンスできる時にア クセスされる

言語構造の説明 言葉で説明できる 言葉で説明できない

学習能力 何歳でも学習可能 潜在的に「臨界期」の間のみ学 習可能

2.2.2 宣言的知識と手続的知識

宣言的及び手続的知識は、明示的及び暗示的知識と同様に、認知心理学から第二言語習得 研究へ持ち込まれた概念である。Anderson (1983) は、言語習得や言語の表出について、車 の運転や数学の解答など、他の認知的技能が発達していくのと同じように、言語も技能習得 のひとつであると考えていた。学習者の内部には、宣言的知識と手続的知識が存在しており、

それらの知識が認知的な発達をしていくことで言語習得が起こるとした。Anderson (1985) によると、宣言的知識とは事実や事物を表すものであり、手続的知識とは様々な認知的活動 をどのように行うかの知識であるとしている。これらの概念を踏まえ、山岡 (2004) は文法 を例にとり、2つの知識と言語学習や習得との関係を以下のように述べている。

参照

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