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リボ核酸分解酵素類に関する構造機能相関研究

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(1)

― 1 ―

総 説

リボ核酸分解酵素類に関する構造機能相関研究

中村和郎

昭和大学薬学部薬品物理化学教室

要  旨

筆者は1992年(平成4年)10月に本学薬学部薬品物理化学教室へ着任した.その前は,東京大学薬 学部および長岡技術科学大学生物系で研究を行い,主として筆者のライフワークである「リボ核酸分 解酵素類に関する構造生物学的研究」に取り組んできた.

昭和大学に着任後は,酵素科学的基礎研究テーマとしてRNase T2ファミリーに属するクモノスカ ビ由来RNase Rh,トマト由来RNase LEおよびキノコ由来RNase Le2等の立体構造解析を行い,微生 物由来RNase T2型酵素および動植物由来RNase T2型酵素の基本構造を明らかにした.その結果,各々 のサブファミリーに属する酵素が,共通の反応機構・基質認識機構を有することが示唆された.

また,創薬を指向した研究テーマとしてインターフェロン誘導型RNaseであるRNase Lの立体構造 解析に取り組み,RNase LのN末端アンキリンリピートドメインとその生体内活性化物質である2’,5’

-結合オリゴアデニル酸(2-5A)との複合体の立体構造決定に成功した.その結果,RNase Lによる2

-5Aの認識機構が原子レベルで明らかとなり,新規抗ウイルス薬デザインに繋がる知見が得られた.

Key Words :ribonuclease, RNase, RNase T2 family, RNase L

1.はじめに

生体の主要な構成成分であるタンパク質は,ア ミノ酸がペプチド結合で連結することにより生じ る高分子化合物である.タンパク質のアミノ酸配 列はDNAの塩基配列にコードされ,タンパク質 の立体構造はアミノ酸配列により支配される.そ して,タンパク質の機能は,タンパク質の立体構 造によって決定されるのである.したがって,タ ンパク質の立体構造を知ることは,タンパク質の 機能を知る上で欠かすことができない手段であ る.また,今日ではタンパク質の立体構造は,創 薬に欠かせない重要な情報源となっている.

筆者は,東京大学薬学部薬品物理分析学教室(飯 高洋一教授)においてX線結晶学の手法を修得し て以来,数多くの生体関連分子(アミノ酸,タン

パク質,核酸など)の構造機能相関研究に携わっ てきた.本稿では,筆者のライフワークである,

リボ核酸分解酵素類に関する構造生物学的研究に 的を絞って紹介する.

2.T2型リボ核酸分解酵素の構造機能相関研究 ホスホジエステル結合の分解によりリボ核酸

(RNA)を分解する酵素類は,リボヌクレアーゼ

(RNase)と呼ばれている.それらは,RNA鎖の 末端から分解するエキソヌクレアーゼと内部か ら分解するエンドヌクレアーゼの2種に大別され る.各種生化学研究においてRNA切断に利用さ れるエンド型の2’,3’-環状化RNase(反応中間体 として2’,3’-環状化を経て,反応生成物として3’

-ヌクレオチドを生じる)として,牛膵臓由来ピリ

(2)

― 2 ―

RNase Rhの立体構造は,6本のα-ヘリックス と7本のβ-ストランドから成るα+β構造であっ た(図1).分子のサイズは約50Å×45Å×25Åで あり,分子の中央には4本鎖逆平行βシートが存 在し,その奥に最も長いαヘリックスが位置し ていた.RNase Rhの触媒残基はHis46, Glu105, His109であると推定されており,これらを含 む 8 残 基(His46, Trp49, Asp51, Tyr57, His104, Glu105, Lys108, His109)が活性部位に位置してい た.部位特異的置換実験やヌクレオチドとの複合 体の結晶構造解析の結果から,これらの残基の 中で,Trp49, Asp51, Tyr57が「B1サイト」におけ る塩基認識を担っていることが明らかとなった.

また,その後の各種実験により,Gln32, Ser93, Asn94, Gln95, Phe101が「B2サイト」における塩基 認識を担っていることを明らかにした.

2-2.動植物由来 RNaseT2型酵素の基本構造 の解明

上述のように筆者らはRNase RhのX線結晶構 造解析に成功したことから,RNase T2型酵素の 構造機能相関は,RNase Rhの立体構造に基づい て巧く説明できると考えられた.しかし,RNase T2型酵素のアミノ酸配列の比較を行ってみると,

動植物由来酵素のジスルフィド結合の組み合わせ を説明できない等,不可解な点があった.そこ で,動植物由来RNase T2型酵素の基本構造を解 明するため,上述の星薬科大学グループ,日本大 学薬学部微生物学教室の井口法男教授らとの共同 研究により,トマト(Lycopersicon esculentum)

由来RNase LEのX線結晶構造解析に取り組んだ.

ミジン塩基特異的RNase A,Aspergillus oryzae 由来グアニン塩基特異的RNase T1,Aspergillus oryzae由来塩基非特異的RNase T2が良く知られ ている(表1).筆者は,昭和大学着任前は比較的 分子量の小さいRNase Aファミリー酵素(RNase S),RNase T1ファミリー酵素(RNase St, RNase Ms)のX線結晶構造解析に取り組んでいた1-3).昭 和大学着任前後からは,より分子量が大きく立 体構造が不明であったRNase T2ファミリー酵素

(RNase Rh, RNase LE,RNase Le2)のX線結晶 構造解析に挑んだ4,5)

2-1.微生物由来 RNaseT2型酵素の基本構造 の解明

RNase T2ファミリーは,200 ~ 240アミノ酸残 基からなる分子量22 kDa ~ 30 kDa程度のRNase 類により構成される(表1).筆者が本研究に取り 組んだ当時,分子量20 kDa以上のタンパク質の X線結晶構造解析は技術的難易度が高く,RNase T2型酵素の立体構造は全く不明であった.そこ で,RNase T2型酵素の基本構造を解明するた め,星薬科大学微生物学教室の入江昌親教授,扇 和子教授らとの共同研究により,クモノスカビ

(Rhizopus niveus)由来RNase RhのX線結晶構造 解析に取り組んだ.RNase Rhは,222アミノ酸残 基からなる塩基非特異的RNaseである.塩基非特 異的といいながらも親和性には差があり,その優 先性はA > G > C > Uである.ハンギングドロッ プ蒸気拡散法により結晶化を行い,多重重原子同 型置換(MIR)法による位相決定,分子動力学的手 法を用いた立体構造精密化に成功した4)

7

⴫1 2’,3’㧙Ⅳ⁁ൻ࡝ࡏ࠿ࠢ࡟ࠕ࡯࠯㘃ߩಽ㘃

RNase Mw Base specificity

RNase A family

RNase A 13,680 Pyrimidine

RNase S RNase T1 family

RNase T1 G

RNase St ca. 11,000 G

RNase Ms G >> A, C, U

RNase T2 family

RNase T2 Non㧙specific 㧔A > G > C > U㧕

RNase Rh ca. 25,000 Non㧙specific 㧔A > G > C > U㧕

RNase LE Non㧙specific 㧔G > A > U > C㧕

表1 2’,3’-環状化リボヌクレアーゼ類の分類

(3)

― 3 ― 図1 RNase Rhの立体構造

࿑㧝

࿑㧞

図2 RNase LEの立体構造

E 1 E 2

S

N-term.

E 1 E 2

N-term.

S

S S

(a)

(b)

࿑㧟

図3 RNase Rh(a)とRNase LE(b)におけるN末領域の構造差の模式図

(4)

(図6).この芳香族側鎖のクラスターは上述の RNase Rhにも存在し(RNase RhのTrp49, Tyr57, Phe101)かつ他のRNase T2型酵素でも保存され ている(図4)ことから,スタッキング相互作用に よる非特異的塩基認識は,RNase T2型酵素に共 通の塩基認識機構であると結論付けられる.

2-3.他の RNaseT2型酵素の立体構造解析 リボ核酸分解酵素の構造解析をもう一つ行っ た.前述の星薬科大学および日本大学薬学部グ ループとの共同研究によるRNase Le2の解析であ る.この研究は北川康行准教授が中心となって行 われた.この酵素はキノコ由来のRNase T2型酵 素であり,その立体構造は1.7 Å分解能(R=0.22, freeR=0.25)で決定した.基質アナログdApA(2’

-deoxyadenylyl(3’->5’)-2’-deoxyadenosine)

との複合体結晶に関しては1.6 Å分解能(R=0.21, freeR=0.23),dGpG(2’-deoxyguanylyl(3’->5’)-2’

-deoxyguanosine)との複合体結晶に関しては1.45 Å分解能(R=0.20, freeR=0.22)で構造解析に成功 した.

4本の逆平行β鎖よりなるβシートと5本のα へリックスよりなる基本構造は,RNase Rhとよ く似ている(図7).通常活性部位にはHis,Gluとと もに基質リン酸基を静電的に引きつけるLysが存 在するが,RNase Le2ではその部位がLys(K108)

ではなくThrになっており,近傍には代替の塩基 性アミノ酸基が存在しないユニークな酵素であ ることがわかった.活性部位はHis51,Glu115,

Glu111よりなる.構造決定はRNaseRhの座標を もとに分子置換法により決定することができた.

大まかな構造はRNaseRhと類似しており,βシー トがαへリックスでサンドイッチされた構造をし ている.またdApAとの複合体,dGpGとの複合 体の立体構造より,「B1サイト」は,Asp56の側鎖 カルボキシル基がdApAのアデニン塩基と二本の 水素結合を形成しており,またTrp54とPhe62の 側鎖間にアデニン塩基がはさまれた構造をしてい ることがわかった(図8上部の丸で囲った部分).

この水素結合様式が塩基特異性を決定していると 考えられる.「B2サイト」はAsp37が基質塩基を この研究は田中信忠准教授が中心となって行われ

た.RNase LEは,205アミノ酸残基からなる塩 基非特異的RNaseである.塩基非特異的といいな がらも親和性には差があり,その優先性はG > A

> U > Cである.RNase T2やRNase Rhがアデニ ン塩基に高い親和性を示すのに対し,本酵素がグ アニン塩基に高い親和性を示すという点も,立体 構造に基づいて解明すべき謎であった.酵母を用 いて発現させた組換え型RNase LEを精製し,ハ ンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化を行 い,X線回折強度データの収集を行った.アミノ 酸配列の相同性が34%あるRNase Rhの座標を用 いた分子置換法による位相決定を試みたが有意な 解を得ることができなかった.そこで,常法通り MIR法による位相決定を行い,分子動力学的手法 を用いた立体構造精密化に成功した5)

RNase LEの立体構造は,基本的にはRNase Rhの立体構造と類似していた(図2).しかし,N 末端側に有意な差異がみられた(図3).具体的に は,RNase Rhにおいてはβ1鎖よりもN末端領域 にジスルフィド結合を含む長いループが存在し,

β1とβ2間は短いループとなっている(図3(a))

のに対し,RNase LEにおいてはβ1よりもN末端 領域は短く,β1とβ2の間にジスルフィド結合 を含む長いループが存在していた(図3(b)).微 生物由来RNase T2型酵素の基本構造の一例とし てRNase Rh,動植物由来RNase T2型酵素の基本 構造の一例としてRNase LEの両者の立体構造が 出揃ったことにより,RNase T2型酵素の2つのサ ブファミリーにおける「立体構造に基づいたアミ ノ酸配列比較」(図4)が可能となり,各々のサブ ファミリーにおけるジスルフィド結合の保存性な どが明らかとなった.RNase RhとRNase LEの 触媒残基に注目してみると,両者の活性部位にお ける触媒残基の位置関係はきわめて良く一致して おり(図5),共通の反応機構により基質を加水分 解することが示唆された.また,塩基認識に関し て考察してみると,RNase LEの活性部位周辺に は芳香族側鎖のクラスターが2カ所存在しており,

これらがスタッキング相互作用により非特異的 に塩基を認識する部位であることが示唆された

(5)

― 5 ―

図4 RNase T2型酵素の立体構造に基づく一次構造比較

種を問わず共通のS-S結合を太い実線,微生物サブファミリーに特有のS-S結合を細い実線,動植物サブファミリー に特有のS-S結合を太い破線,RNase LEにのみ存在するS-S結合を細い破線で示した.

Fungi

Animals Plants

{ { {

࿑㧠

K96K108

H92H104

H97H109

W42W49 H39H46 E93E105

Wat6Wat56 Wat42 Wat9

K96K108

H92H104

H97H109

W42W49 H39H46 E93E105

Wat6Wat56 Wat42

Wat9

࿑㧡

図5 RNase RhとRNase LEの活性部位の構造比較 RNse Rhをグレー,RNase LEを黒で示した.

(6)

Y17 F89

Y172 Y50

W42 Y175 H92 Y8

H39 H97 E93

K96

Y17 F89

Y172 Y50

W42 Y175 H92 Y8

H39 H97 E93 K96

図6 RNase LEの疎水性塩基結合ポケット

࿑㧢

図5で示した触媒残基(黒)の両側に塩基結合ポケットが存在し,芳香族アミノ酸(白)が局在している.

࿑㧣

図7 RNase Le2の立体構造

࿑㧤

図8 RNase Le2による塩基認識

(7)

― 7 ―

の名の通り2',5'-ホスホジエステル結合により連 なっている11)

筆者らは数年間の試行錯誤の末,ヒトRNase L のANK(残基番号1 ~ 333)と2-5Aとの複合体の 結晶化に成功し,その立体構造を1.8 Å分解能で 決定した12).結晶構造解析の結果(図12),ANK は8回繰り返しアンキリンリピートから成り,リ ピート4(R4)と5(R5)の間に挿入へリックスαI が存在し,2-5Aはリピート2(R2)から4(R4)の 範囲に結合していた.リピート全体の顕著な湾曲

(図12)は,2-5Aの結合と関連している.すなわち,

2-5A非存在下でANKの構造はこれほど湾曲して おらず,2-5Aの結合により構造変化が起こるこ とを示唆するデータが共同研究者によって得られ ている13).しかし,2-5A非存在下では結晶が得 られていないため,2-5A存在下・非存在下の両 者の構造比較は未だできていない.

ANKによる2-5Aの認識機構に注目すると(図 13(a)),2-5Aの1番目(図13(b))と3番目(図13(c))

のAMP部位(2-5Aは,2',5'-結合による5'-AMPの 3量体とみなせる)が,ANKのリピート4とリピー ト2によって,全く等価な結合様式で認識されて いた.すなわち,塩基性側鎖(Arg155, Lys89)が リン酸基(Phos1, Phos3)と相互作用し,芳香族側 鎖(Phe126, Trp60)が ア デ ニ ン 環(Ade1, Ade3)

とスタッキングし,親水性側鎖(Glu131, Asn65)

がアデニン環(Ade1, Ade3)と水素結合していた.

さ ら に,Ade1お よ びAde3は, そ れ ぞ れ,4重

(Arg155-Phe126-Ade1-Ade2)および3重(Lys89

-Trp60-Ade3)のスタッキング相互作用によりそ のコンフォメーションが固定されていた.また,

これまでに蓄積されている各種2-5A誘導体の構 造機能相関データも,1番目と3番目のAMP部位 が必須骨格であり,その部位への官能基導入は活 性を低下させるが,2番目のAMP部位への官能基 導入はそれほど悪影響を及ぼさないという結果を 示している7).なぜ2-5Aは,3',5'-ではなく,2',5'-

ホスホジエステル結合を採択しているのかという 疑問に関しては,モデリングの結果から,図13(a)

に示した結合様式を成し遂げるためには,2-5A 中の2箇所のホスホジエステル結合の両方が2',5'-

認識しており,これら2つのアスパラギン酸残基

(Asp56, Asp37)が塩基の基質認識を決定してい る重要な残基であることが分かった(図8下部の 丸で囲った部分).

3.インターフェロン誘導型リボ核酸分解酵素の 立体構造解析

上述の古典的RNase類に加え,2000年頃から 自然免疫に関与するRNaseの構造機能相関研究 を開始した.自然免疫の切り札の一つである インターフェロン6)(IFN)誘導型抗ウイルス機 構 と し て「2-5Aシ ス テ ム 」7),「PKR」8),「Mx proteins」9)の3つの系が知られている.我々が 注目した「2-5Aシステム」(図9)とは,(1)IFN により誘導される2',5'-結合オリゴアデニル酸

(2-5A)合成酵素(2-5OAS)がウイルス由来2本 鎖RNA(dsRNA)により活性化され,(2)活性 型2-5OASがATPか ら2-5Aを 合 成 し,(3)2

-5Aが 不 活 性 型 単 量 体 リ ボ ヌ ク レ ア ー ゼL

(RNase L)を 活 性 化 し,(4)活 性 型RNase L/2

-5A複合体(2量体)がウイルスのmRNAを分解し,

蛋白質合成の阻害によりウイルスの増殖を抑制す るという仕組みになっている.生体内において安 定でかつ高いRNase L活性化能を有する2-5A類 似体は新しいタイプの抗ウイルス薬と成り得るた め,各種2-5A誘導体の合成が盛んに行われてい 7).我々は,RNase Lに対する2-5Aの結合様式 や結合によるRNase Lの活性化機構を解明し新規 抗ウイルス薬のデザインに役立てるため,岐阜大 学工学部の北出幸夫教授,中西雅之博士(現・松 山大学薬学部准教授)らとの共同研究により,田 中准教授が中心となって,ヒトRNase Lの立体構 造解析に取り組んだ.

ヒト由来RNase Lは,全長741アミノ酸残基か ら成る蛋白質で,N末端アンキリンリピートドメ イン(ANK),中央部キナーゼ類似ドメイン,C 末端RNaseドメインという3つのドメインにより 構成されている(図10)10).2-5Aは,非常にユニー クな構造をしている(図11).通常のDNAやRNA では,各々のヌクレオチドは3',5'-ホスホジエステ ル結合により連なっているが,2-5Aの場合,そ

(8)

― 8 ― 2-5A system

PKR Mx proteins

IFNs

2-5OAS 2'-PDE

2-5A RNase L

(monomer)

ATP

dsRNA

RNase L (dimer)

mRNA degradation

activation

Inhibition of

protein synthesis Inhibition of viral replication

ATP + 2AMP activation

{

infectionViral

࿑㧥

1 200 400 600 741

1 2 3 4

Ankyrin repeat

(2-5A binding)

Kinase-like

domain RNase domain

1 333 Crystallization

construct

N

5 6 7 89

C

࿑㧝㧜

図10 ヒトRNase Lの一次構造の模式図

O N

N N

O O N

O N P O O O

O N

N N O

O N

O N P O O

O N

N N

O O N

O N P O O

5' 2'

5' 2'

5' 2'

࿑㧝㧝

図11  2’,5’-結合オリゴアデニル酸(2-5A)の構造

(水素は省略)

21

305 R1

R2 R3

R4 R5 R6 R7 R8

D I 5' 2'

2-5A

࿑㧝㧞

図12 ANK/2-5A複合体の全体構造

図9  インターフェロン誘導型抗ウイルス機構「2-5A システム」

(9)

― 9 ―

結合でなければならないことが分かった.

本研究成果の重要な点は,ANK/2-5A複合体 の立体構造解析により両者の結合様式を解明し

12),2-5A分子に関してANKとの相互作用に必須 の部位と修飾可能な部位を同定したことである.

全長RNase Lに関する部位特異的置換実験などか ら,これらの知見の妥当性も確かめられた14).そ の結果に基づき,生体内において安定でかつ高 いRNase L活性化能を有する2-5A類似体(IFNの シグナル伝達経路を介さずRNase Lを直接活性化 するという作用機構)を得ることを目指し,新規 2-5A誘導体のデザイン及び合成が共同研究者に よって進められている.また,海外のグループ からの成果ではあるが,筆者らの研究結果(すな わ ちProtein Data Bank(http://www.rcsb.org)

で公開されているANK/2-5A複合体の原子座標 1WDY)を利用した新規RNase L活性化剤のデザ イン・合成・評価が報告されている15).しかし,

RNase Lの(1)2-5Aの結合による2量体化機構,

(2)活性化機構,(3)RNA切断機構に関しては,

未だ多くの謎が残されている.今後,2-5A存在下・

非存在下の両方においてRNase L全長の立体構造 解析が成し遂げられ,これらの謎が解明されるこ とを期待したい.

4.リボ核酸認識酵素類の構造機能相関研究 上記のRNase類に関する構造機能相関研究以外 にも,リボ核酸認識酵素類の構造機能相関研究を 行った.それらの中から2例を簡単に紹介したい.

一つは,ヒト脳由来環状化ヌクレオチドホスホ ジエステラーゼ(CNPase)16)に関する構造機能相 関研究である.創価大学工学部の栗原正教授らと の共同研究により,CNPaseの触媒ドメインとリ ン酸イオンとの複合体の結晶化に成功し,微小結 晶しか得られなかったが水銀原子の異常散乱効果 を利用した単一重原子同形置換法による構造決定 に成功した.その結果,類縁酵素の基本構造を明 らかにし,反応機構を提唱することができた16) この研究は田中准教授と阪本特別研究生が中心と なって行われた.

もう一つは,酵母由来チロシルtRNA合成酵素

R155F126

E131 Y135

W60 K89 Q68 Ade3 N65

Ade2 Ade1 Phos1

Phos3 Phos2

(a)

D174

(b)

F126 E131 R155

R4

Phos1

Phos2 Phos3

Ade1

Ade2

R5

(c)

K89 W60

N65

R2

Phos3 Ade3 R3

Wat

図13 ANK/2-5A複合体における2-5A結合様式

(a) ANKに結合した2-5Aのコンフォメーション.メッ シュで示した1.8 Å分解能の電子密度から,塩基の配向や リボースのパッカリング構造も曖昧無く決定できた.(b)

2-5Aの5’-側(1番目のAMP)結合部位.(c) 2-5Aの2’-

側(3番目のAMP)結合部位.

(10)

23-25)

6.謝 辞

以上の研究は,筆者着任以後に教職員となった 北川康行准教授(大阪大学蛋白研究所より1996年 4月着任),田中信忠准教授(長岡技術科学大学生 物系より1996年4月着任),角田大助教(東京工業 大学生命理工学研究科大学院出身,いわき明星大 学理工学部より2002年10月着任,現いわき明星 大学薬学部講師),日下部吉男助教(本学薬学部出 身,2001年4月採用), 梅田知伸助教(本学薬学部 出身,2008年4月採用)諸氏等の協力で成し遂げる ことができた.この間,共に取り組んだ大学院生

(博士前期課程)は満間久典(1992年学部卒,以下 同様),渡辺幸久(1994年),新井 潤(1995年),小 牧亜希子(1996年),秋山浩子,日下部吉男,高 田博之(以上,1999年)上村洋史,小野寺 崇(以上 2000年),那波紀子(2002年),島田友希,白岩 桂

(以上,2003年),青木謙一,梅田知伸,黒田美和,

小池ふみ,直枝智恵子(以上,2004年),石原正章,

鈴木美佳,福見千晴(以上,2005年),井上圭悟,

大角地 剛,戸張雄司(以上,2007年),石川喜世人,

玉井章弘,山崎恭平(以上,2008年),下上裕太郎

(2009年)の諸君である(下線は博士後期課程も修 了し,博士号を取得したことを示す).

昭和大学薬学部薬品物理化学教室において18 年6 ヶ月にわたり,有意義に研究を行うことがで きたことは,教職員と共同研究者の皆さんおよび 大学院生による努力の賜である.ここに深く感謝 する次第である.

7.参考文献

1) Torii, K., Urata, Y., Iitaka, Y., et al.: Crystal structure of monoclinic ribnuclease-S at 4 Å resolution. The mode of binding of 4

-thiouridylic acid and a fragment of folic acid, p -aminobenzoylglutamic acid. J.

Biochem., 83, 1239-1247 (1978)

2) Nakamura, K.T., Iwahashi, K., Yamamoto, Y., et al.: Crystal structure of a microbial ribonuclease, RNase St. Nature, 299, 564-

(TyrRS)に関する構造機能相関研究である.岐阜 大学工学部の西川一八教授,大野敏博士らとの共 同 研 究 に よ り,TyrRSとtRNATyrとTyr-AMP 類似体からなる3成分複合体の結晶化に成功し,

Se-Met置換体TyrRSを用いた多波長異常散乱法 による構造決定に成功した.真核生物由来TyrRS に関して初めてtRNAとの複合体の立体構造を明 らかにしたことにより,原核生物由来TyrRSとの 間のtRNA認識機構の違いが明白となった17).こ の知見は,アンバーサプレッサーコドンを利用し た組換えタンパク質への非天然アミノ酸導入に役 立つ知見である.この研究は田中准教授と日下部 助教が中心となって行われた.

5.創薬指向型の構造機能相関研究

これまで記述した各種RNAを基質とする酵素 群に関する構造機能相関研究以外にも,創薬指向 型の構造機能相関研究を展開した.以下に,その 概略を紹介する.

酵素の反応機構を解明し酵素そのものを試薬と して医療現場に役立てるため,長崎大学薬学部の 芳本忠教授(現・摂南大学理工学部教授),伊藤潔 准教授らとの共同研究により臨床検査薬として実 用化されているクレアチニナーゼや酵素試薬とし て市販されているホルムアルデヒド脱水素酵素の 構造機能相関研究に取り組み,反応機構や基質認 識機構などを解明した18,19)

がん転移抑制薬の開発に寄与するため,岐阜 薬科大学の羽賀新世博士,船坂龍善博士(現・金 沢大学フロンティアサイエンス機構),Wayne State Univ.のAvraham Raz教授らとの共同研究 によりがん細胞運動刺激因子AMF(autocrine motility factor)の構造機能相関研究に取り組み,

AMFによるAMF受容体の糖鎖認識機構の一端を 解明した20-22)

抗マラリア薬の開発に寄与するため,岐阜大学 工学部の北出幸夫教授,中西雅之博士(現・松山 大学薬学部准教授)らとの共同研究により熱帯熱 マラリア原虫由来タンパク質群の構造機能相関研 究に取り組み,阻害剤の結合様式の詳細を明らか にし,新規阻害剤デザインに繋がる知見が得られ

(11)

― 11 ―

(2004)

13) Nakanishi, M., Goto, Y. and Kitade, Y.: 2

-5A induces a conformational change in the ankyrin-repeat domain of RNase L.

Proteins, 60, 131-138 (2005)

14) Nakanishi, M., Tanaka, N., Mizutani, Y., et al.: Functional characterization of 2’,5’-

linked oligoadenylate binding determinant of human RNase L. J. Biol. Chem., 280, 41694-41699 (2005)

15) Thakur, C.S., Jha, B.K., Dong, B., et al.: Small

-molecule activators of RNase L with broad

-spectrum antiviral activity. Proc. Natl.

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Structure-function relationship studies on ribonucleases

Kazuo T. Nakamura

Department of Physical Chemistry, School of Pharmacy, Showa University

Abstract

The author started doing research at Showa University in October, 1992 and retired from the university at the end of March, 2011. During the period we determined many crystal structures of various kinds of proteins including a number of RNases. In this article an attempt is made to review the crystal determination work on a number of RNases which is the author’s lifework.

The structure comparison, an amino acid sequence alignment of the RNase T2 enzymes, and comparison of the disulfide-bonding pattern of these enzymes show that the structure of RNase LE is the basic framework of the animal/plant subfamily of RNase T2 enzymes (including a self-incompatibility protein called S-RNase), and the structure of RNase Rh is that of the fungal subfamily of RNase T2 enzymes (including RNase T2). Superimposing the active-

site of the RNase LE with that of RNase Rh suggests that plant RNase LE has a very similar hydrolysis mechanism to that of fungal RNase Rh, and almost all the RNase T2 enzymes widely distributed in various species share a common catalytic mechanism.

Key Words: ribonuclease, RNase, RNase T2 family, RNase L

Received 28 February 2012 ; accepted 12 April 2012

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