通訳の収入レベル別分析と報酬に関する通訳者の認識
A Study on the Income Levels of Interpreters and Their Recognition of Compensation
西畑 香里
東京外国語大学 世界言語社会教育センター
NISHIHATA Kaori
World Language and Society Education Centre, Tokyo University of Foreign Studies
はじめに
1. 先行研究と調査方法 2. 研究の意義
3. 通訳の収入レベル別分析 3.1. 年齢
3.2. キャリア年数
3.3. デビュー年齢と通訳者を志した時期 3.4. 通訳者を志したきっかけ
3.5. 通訳する外国語の習得
3.6. 通訳技術の習得
3.7. 英語通訳者が保持する資格 3.8. 経済的自立
3.9. 活動拠点 3.10. 通訳専業・兼業 3.11. 雇用形態
3.12. 自分のスキルに対する認識 3.13. 自分の知識レベルに対する認識 3.14. 数値的データ分析のまとめ
4. 報酬に関する通訳者の認識
4.1. 正当な対価としての報酬に関する一般的な誤解 4.1.1. 通訳の仕事の準備に関する認識
4.1.2. 通訳の専門的スキルに関する認識 4.2. 通訳の仕事の報酬とは
4.2.1.「目に見える報酬」と「目に見えない報酬」
4.2.2. 通訳者が認識している「目に見えない報酬」
4.3. 報酬に関する通訳者の認識のまとめ おわりに
キーワード : 通訳者のキャリア、収入レベル、正当な対価としての報酬、社会的認識の低さ Keywords: interpreters’ career, income level, legitimate compensation, low social recognition
ᮏ✏䛾ⴭసᶒ䛿ⴭ⪅䛜ᡤᣢ䛧䚸 䜽䝸䜶䜲䝔䜱䝤䞉 䝁䝰䞁䝈⾲♧㻠㻚㻜ᅜ㝿䝷䜲䝉䞁䝇䠄㻯㻯㻙㻮㼅㻕ୗ䛻ᥦ౪䛧䜎䛩䚹 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
要旨
本稿は、通訳者のキャリアにおける報酬に焦点をあて、筆者が共同研究を行った質問紙法による 「日 本における通訳者のキャリア開発プロセス実態調査」 (2017年実施) で得られたデータを基に、 通訳 者164人分の収入レベル別の分析を新たに行い、 報酬に関する通訳者の認識について考察を行うもの である。通訳の収入に関しては、体系的なデータに基づいて分析が行われた情報は乏しい現状がある。 また、 通訳の仕事に対する報酬については一般的に誤解されがちであると通訳者は感じている。 本研 究は、 4つの収入レベル別グループに属する通訳者について、 13項目の切り口から各グループの通訳 者像を明らかにし、さらに報酬に関する通訳者の認識について質的データも取り上げることで通訳の報 酬について多角的な視点から捉える試みをし、 キャリア指導に役立てることを目指すものである。
Abstract
This study aims to fulfill a twofold objective. First, it intends to use 13 career processes perspectives to analyze the contexts and income levels of 164 interpreters classified into four groups. In so doing, it expects to extract useful career development information for prospective interpreters as well as for instructors who offer career counseling. Second, it purposes to exam- ine the viewpoints of interpreters regarding compensation to gauge their opinions of legitimate remuneration for the tasks they perform.
The author of this study was a core member of the project team of a previous study con- ducted by the Japan Association for Interpreting and Translation Studies. The project adminis- tered a questionnaire survey in 2017 to interpreters who had received training in Japan and had worked as paid professional interpreters. This survey intended to reveal the process of advancing in interpreting careers. A total of 199 interpreters responded to the questionnaire and their data were analyzed to obtain quantitative information on factors such as age, gender, motivation, and training experience. Further, qualitative data regarding the thoughts and feelings of interpreters were also extracted.
Based on the previous study, this research focuses on interpreters’ compensation by freshly analyzing 164 interpreters who responded to the income question in the earlier survey and delves the interpreters’ recognition of compensation for interpreting tasks.
はじめに
本稿は、 通訳者のキャリアにおける収入に焦点をあて、 筆者が共同研究を行った2017年実施の質 問紙法による「日本における通訳者のキャリア開発プロセス実態調査」 (代表: 新崎隆子) で得られた データをもとに、 通訳者164人分の収入レベル別の分析を新たに行うものである。 質問紙の回答者は 合計199人であったが、 そこから「無回答」、 「無効」、 「欠損」 1)のデータを省いて、 今回分析対象 としたのが164人である。さらに、 数値的なデータに加えて自由記述の質的データも取り上げて、 報酬
に関する通訳者の認識について考察を行う。
収入レベル別の分析にあたっては、主な4つの収入レベル別グループ (時給で①2,001~5,000円、
②5,001~8,000円、③8,001~10,000円、④10,001円以上) に属する通訳者について、①年齢、
②キャリア年数、 ③デビュー年齢と通訳者を志した時期、 ④通訳者を志したきっかけ、 ⑤通訳する外 国語の習得、 ⑥通訳技術の習得、 ⑦英語通訳者が保持する資格、 ⑧経済的自立、⑨ 活動拠点、
⑩通訳専業・兼業、 ⑪雇用形態、 ⑫自分のスキルに対する認識、 ⑬自分の知識レベルに対する認 識の合計13項目のバックグラウンドに関わる切り口から分析することで、 各収入レベルに属する通訳者 像を明らかにしていく。
研究の背景としては、 通訳者の収入に関する情報は、 体系的なデータに基づいて分析が行われたよ うな報告は乏しい現状があり、 ただ単に時給や年収の数値を示すだけでは通訳の仕事についての知識 がない人にとっては誤った解釈を招く可能性がある。 そこで、 本研究では、 164人分の数値的データ の分析を先に挙げた13項目にわたる切り口から詳細に分析することに加えて、数値的データには反映し きれていない通訳者の心情の質的データについても取り上げ、 多角的な視点から実態を捉える試みとし
ている。
1. 先行研究と調査方法
本研究は、 筆者が共同研究を行った日本通訳翻訳学会の 「日本における通訳者のキャリア開発プロ セス実態調査」 プロジェクトを先行研究として、プロジェクトでは扱えなかった点について新たな研究を行 うものである。 当プロジェクトは、 2017年から2019年の約3年間にわたり活動を行った。 発足背景は、 日本において通訳者のキャリア開発についての学術的な研究調査がこれまで行われていなかったことか ら、 通訳者を目指す人に対して適切なキャリア指導を行うことが難しい課題があった。 そこで、 通訳者 を目指す人に対しての適切なキャリア指導に役立てることを目的に、 主に日本で訓練を受け有償で通訳 サービスを行う人を対象に、 募集法・縁故法・雪だるま式標本法の組み合わせにより協力者を募り、 質問紙法による実態調査で199人の通訳者からの協力を得た。
質問紙法による調査研究の実施にあたっては、 当プロジェクトの前身となる 「研究法・論文執筆プ ロジェクト」 で 「質問紙法」 のテーマで専門の講師を招いてのワークショップの開催 (西畑 2017) や、
Charmaz (2006) の輪読によるデータ分析方法の勉強会の開催等、 研究法についてもプロジェクトメン
バーが理解を深める取り組みを行ってきた。また、日本ではまだ通訳者のキャリア調査に関する学術的 な先行研究がなかったため、 海外での先行研究 (Gentile 2013; Katan 2009a, 2009b) も参照した。
質問項目の作成にあたっては、 日本通訳協会 (2007) の通訳の分類等も参照しながら、 日本で通 訳実務にも携わっているプロジェクトメンバーによる話し合いをもとに日本の状況に沿うものとしている。 質問紙の構成は、タイトル・依頼文・調査概要や留意事項を示したフェイスシート(小塩・西口編 2007) 選択式で回答する5つのパート(I. プロフィール、 II. 通訳者になるまでのプロセス、 III. プロ通 訳者としての就業状況、 IV. 通訳の仕事をする上で直面している問題、 V. 通訳の仕事に対する満足 度)、 最後に自由記述欄としている。
自由記述の質的分析については、 通訳者の様々な心情について記述のあった137人分のデータ を、 木下 (1999, 2003, 2007) による修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA: Modifi ed Grounded Theory Approach) を援用して分析を行った。 プロジェクトの研究成果は、 前半の選択式 での回答を数値的データとして分析した調査報告 「日本における通訳者のキャリア開発プロセスに関す る実態調査」 (新崎・石黒・板谷・北間・西畑 2019a) として、また自由記述について質的分析を行 った論文 「キャリア形成に関する通訳者の認識」 (新崎・石黒・板谷・北間・西畑 2019b) として発
表し、 それが本稿の先行研究となっている。
本稿の研究では、 上記のプロジェクトの中では扱えなかった収入に関するデータ分析として、 通訳者 の収入を4つの時給レベルで分類し、 各レベルに属する通訳者のバックグラウンドとの関連を明らかにし ていく。さらに、 質的データの分析研究で明らかになった通訳者の心情の中から「通訳の正当な対価 としての報酬の問題」 に焦点をあて、 通訳者の心情が記述された 分析ワークシート (木下2003: 188)
の事例も提示し、 報酬に関する通訳者の認識について考察する。
2. 研究の意義
通訳者の収入については、 通訳の仕事に興味を持つ受講生からもよく質問が寄せられ、 知りたいと 思う人が非常に多いトピックである。しかしながら、 通訳者の視点からは自分自身の情報を開示するこ とには抵抗を感じる人が多いセンシティブなトピックでもあり、 質問紙調査の中で研究協力者全体の199 人中20人が収入の質問には無回答であったことにも表れている。 ただ単に収入データを提示すること が専門職としての通訳の仕事に対する誤解を助長するようなことがあっては本意ではないため、 データ の提示の仕方は慎重に行う必要がある。
本研究の意義は、 多角的な視点からの実態を捉える試みによりキャリア指導に役立てることができるよ うな情報を提示することである。 通訳者の収入レベルについては、 通訳関連の情報雑誌2)等で通訳 者の収入に関する特集記事が紹介されていることもあり、それも一つの参考情報となる。しかしながら、 これまで公開されている通訳者の収入に関する情報では、 既に通訳者として仕事をしている人向き情報
であることが多く、 100人以上のような規模で通訳者のバックグラウンドに関連付けた詳細な分析は行わ れていないため、 具体的にどのようなバックグラウンドを持つ人がどの収入レベルにあるのか分からず、 またこれから目指す人が自分の状況に当てはめて捉えることが困難である。また通訳教育に携わる人に とっても、 通訳者のキャリアについて受講生が抱く疑問に答える際に参照できるようなデータが乏しいの
が現状である。
本研究では、 各収入レベルに属する通訳者の13項目にわたるバックグラウンド情報を関連付けた164 人分の分析結果の提示を行うことで、 受講生から寄せられる疑問点に対しても参考となる情報を示すこ とができると考える。さらに、 収入データの提示にあたって量的データのみではなく、 通訳者の報酬に 関する認識についての質的データも併せて提示することで、より実態を捉えた視点を提示することにつな がると考える。 通訳の仕事については、 2つの言語が話せれば誰でもできる、 通訳は単に言葉を置き 換えているだけと思われているような誤解等、 社会的認識の低さの問題については多くの報告がされて いる (例: Allain 2010; Donovan 2011; Kondo 1988; 近藤 2015; 熊谷 2013)。 通訳者が感じている報 酬に関する問題の視点の分析も取り入れることで、より実態が明らかになり通訳者を取り巻く社会的認識 の低さの問題の改善に少しでも役立つような研究となることを目指している。
3. 通訳者の収入レベル別分析
通訳者の実態調査プロジェクトで収入についての質問を行うにあたり、本調査を行う前の予備調査で、 月収や年収を答えることには抵抗があるという意見が複数聞かれた。 そのため、 質問紙による調査にお いては、 回答したくない場合は 「無回答」も選択できるようにし、 1時間当たりの平均報酬 (時給) を 下記の5つのグループから選択する方式とした。
3. ㏻ヂ⪅ࡢධูࣞ࣋ࣝศᯒ
㛫ᙜࡓࡾࡢᖹᆒሗ㓘ࢆڧ܇ࢆධࢀ࡚ᅇ⟅ (ࠕ↓ᅇ⟅ࠖڧ)
1.ڧ2,000௨ୗ 2.ڧ2,001㹼5,000 3.ڧ5,001㹼8,000 4.ڧ8,001㹼10,000 5.ڧ10,001௨ୖ
図1. 時間当たりの平均報酬の質問項目
回答の中で、 登録先のエージェントにより異なるなどの理由で2箇所以上にチェックを入れている8人 は「無効」としてデータ分析対象から排除した。さらに「無回答」の20人と「欠損」の4人を除く「有 効回答」 は167人であった。 「有効回答」 の内訳は、 2,000円以下が2% (3人)、 2,001~5,000円 が29% (48人)、 5,001~8,000円が22% (36人)、 8,001円~10,000円が32% (54人)、 10,001円 以上が16% (26人) となった (図2)。
0 20 40 60 2,000௨ୗ
2,001䡚5,000
5,001䡚8,000
8,001䡚10,000 10,001௨ୖ
(ਕ) (26ਕ)
(54ਕ) (36ਕ)
(48ਕ) (3ਕ)
図2. 時間当たりの平均報酬 (n=167)
時給2,000円以下の回答の3人については、 通訳は本業ではないという趣旨のコメントがあり、 3人
とも「自立はできていない」と回答していたため、 本稿では、 時給 2,001円以上の4グループのみの 合計164人分のデータを分析対象とし、 その結果明らかになったグループごとの特徴を示していく。 図 2の時給データについては、 時給データ単体で解釈するのではなく、 分析に用いた13項目の切り口 (
①年齢、 ②キャリア年数、 ③デビュー年齢と通訳者を志した時期、 ④通訳者を志したきっかけ、 ⑤通 訳する外国語の習得、 ⑥通訳技術の習得、 ⑦英語通訳者が保持する資格、 ⑧経済的自立、 ⑨ 活 動拠点、 ⑩通訳専業・兼業、 ⑪雇用形態、 ⑫自分のスキルに対する認識、 ⑬自分の知識レベルに 対する認識) から、どのようなバックグラウンドの通訳者がどの時給レベルのグループに属しているかと併 せて解釈することで、より実態を把握できる情報となり得ると考える。
3. 1. 年齢
まず平均年齢については、 時給10,001円以上のグループでは57歳と、 60歳近いのに対して、 そ の他のグループの平均年齢は、 いずれも50代前半となっている。また、 50代以上の占める割合が一 番低い時給5,001~8,000円のグループでは47%だが、 時給10,001円以上のグループでは73%と7 割を超えている (表1)。
表1. 年齢 2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26) ᖹᆒᖺ㱋 50ṓ 50ṓ 53ṓ 57ṓ
᭱పᖺ㱋 25ṓ 37ṓ 39ṓ 35ṓ
᭱㧗ᖺ㱋 72ṓ 64ṓ 67ṓ 74ṓ
50௦௨ୖࡢྜ 56% 47% 63% 73%
3. 2. キャリア年数
キャリア年数は、 時給レベルが上がるにつれ平均キャリア年数も長くなり、 時給上位2グループは、 キャリア年数の平均が25年を超えている。 キャリア11年以上の割合で見てみると、 時給上位2グル ープでは8割以上であり、時給2,001円~5,000円グループの約4割とは対照的な結果となっている。 言い換えると、 キャリア年数の長さが時給にも反映されていることが分かる (表2)。
表2. キャリア年数
3. 3. デビュー年齢と通訳者を志した時期
通訳者としてデビュ−した年齢については、デビュー平均年齢が時給2,001~5,000円では約40歳と、 他のグループより10歳程デビュー年齢が高くなっている。 30歳までにデビュ−した割合が時給上位2グ ループでは5割を超えているのに対し、 時給2,001~5,000円グループでは2割未満である。 デビュ−
年齢と関連するデ−タとして、 通訳者になりたいと思った年齢を見てみると、 20代以前になりたいと思っ た割合は、 時給の低いグループから順に、 40%、 58%、 69%、 81%と、 時給が高いグループほど、 通 訳者になりたいと思った時期が早く、 実際のデビュー年齢も低いことが分かる (表3)。
表3. デビュー年齢と通訳者を志した時期 2,001㹼
5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26) ᖹᆒ࢟ࣕࣜᖺᩘ 10ᖺ 18ᖺ 26ᖺ 28ᖺ
࢟ࣕࣜ᭱▷ 1ᖺ 7ᖺ 4ᖺ 8ᖺ
࢟ࣕࣜ᭱㛗 32ᖺ 40ᖺ 50ᖺ 42ᖺ
࢟ࣕࣜ11ᖺ௨ୖࡢྜ 40% 56% 94% 85%
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001 ௨ୖ
(n=26) ࢹࣅ࣮ࣗᖺ㱋ᖹᆒ 40ṓ 31ṓ 29ṓ 30ṓ ࢹࣅ࣮ࣗ᭱పᖺ㱋 24ṓ 20ṓ 21ṓ 20ṓ ࢹࣅ࣮ࣗ᭱㧗ᖺ㱋 57ṓ 51ṓ 50ṓ 42ṓ 2010ᖺ௨๓vs 2011ᖺ௨㝆ࢹࣅ࣮ࣗ 28:20 30:3 53:1 26:0 25ṓࡲ࡛ࢹࣅ࣮ࣗࡋࡓேࡢྜ 6% 11% 30% 31%
30ṓࡲ࡛ࢹࣅ࣮ࣗࡋࡓேࡢྜ 19% 39% 57% 54%
35ṓࡲ࡛ࢹࣅ࣮ࣗࡋࡓேࡢྜ 40% 58% 74% 69%
20௦௨๓㏻ヂ⪅ࢆᚿࡋࡓேࡢྜ 35% 58% 69% 81%
3. 4. 通訳者を志したきっかけ
通訳者を志したきっかけについては、 ①語学が好き、 ②帰国子女、 ③専門職につきたかった、 ④ 誰かに勧められた、 ⑤通訳者の活躍を見て自分もやりたくなった、 ⑥イメージにあこがれた、 ⑦他に仕 事がなかった、 ⑧転職、 ⑨その他からの選択式とし、 複数回答可とした。 そのうちの①②⑦⑧につい て取り上げ、 以下に特徴を列記する。
表4に示すように、 ①の 「語学が好き」 が理由で通訳者を目指した人の時給レベルに着目すると、 時給2,001~5,000円では71%の人が 「語学が好き」 で通訳者を目指したと回答している。 一方で、
時給10,001円以上においてはその割合は54%であった。 いずれのグループでも過半数の人が 「語学
が好き」 だったことを理由に挙げているが、 時給が低いグループほどその割合が高い。 時給10,001円 以上では、 その割合が最も低く、 言い換えれば、 50%近くの人が 「語学が好き」 が理由ではなく通訳 者になったという捉え方も可能である。
次に②の 「帰国子女」 であったことを理由に挙げた人の割合に着目した。 一般的に、 通訳者になる には 「帰国子女」 であることが有利であるというイメージを持たれることが多いが、実際に 「帰国子女」 であることは、通訳者の収入レベルと関連しているのだろうか。プロジェクトの質問紙調査では、「無回答」 の1人を除く回答者198人中、 「帰国子女」 の回答は23% (45人) であった。 収入レベル別で見ると、
時給下位2グループでは、 10%前後の人が 「帰国子女」 である。これに対して、 時給上位2グルー
プでは、 その割合は30%以上であった。 両者の間で約3倍の差が見られたことから、 やはり、 「帰国 子女」 であることは、 通訳者として高い収入レベルに到達するうえで、比較的有利であることが伺える。
⑦の 「他に仕事がなかった」を通訳者になった理由として挙げた人の割合は、 時給2,001~5,000 円では4%であるのに対して時給10,001円以上では15%と、 ここでも4倍弱の差が見られる。 比較的 キャリアが長くデビューした年齢も若い10,001円以上のグループに属する通訳者が通訳者を志した時代 には、 女性が働き続けて自立するための職業的選択肢が近年ほどには豊富ではなかったことや、 帰国 子女で語学ができることから通訳の仕事を始めたことなども理由の一部ではないかと推測される。
⑧の 「転職」を回答した人は、 約2割~3割であった。 前職の記述があったものをまとめると、 「会 社員」 や 「講師業」 の回答が複数あり、その他 「団体職員」、 「大学職員」という回答もあった。 「会 社員」 の業種については、 「金融・証券・保険」、 「小売」、 「メーカー」、 「航空」、 「エネルギー」、 「マ スコミ」、 「ホテル業」 等で、職種の切り口で見ると、 「銀行員」、 「秘書」、 「事務職」、 「テレビ局員」、
「SE (システムエンジニア)」、 「ホテルフロント係」、 「パラリーガル」 であった。 講師業を挙げた人は、
「英語講師」と回答した人が複数あり、 その他には 「音楽講師」、 「日本語講師」 の回答もあった。
表4. 通訳者を志したきっかけ
3. 5. 通訳する外国語の習得
通訳する外国語をどのように習得したのかについて、その方法を見てみると、 「日本での教育のみ」、
「国内インターナショナルスクール」、 「留学」、 「海外生活」 の順に表5に示すような結果であった。 「国 内インターナショナルスクール」 で外国語を習得したという回答は、 下位2グループは0%であったのに対 し、上位2グループでは、それぞれ6%、8%であった。 1割以下ではあるものの、上位2グループでは、
国内のインターナショナルスクールで英語を身につけた人もいたということが分かる。
「海外生活」 経験の有無についても尋ねた。 時給が高いグループほど海外生活経験者の割合も高く なっており、 10,001円以上では過半数が海外経験があるという回答であった。 「国内インターナショナル スクール」 や 「海外生活」 は本人の意志に関わらず親の教育方針や仕事の都合などが要因であったと も考えられるが、 本人の意志が大きく影響すると考えられる「留学」 経験を持つ人の割合が、 時給が
低いグループほど高いという結果が出ていることは興味深い。
表5. 通訳する外国語の習得
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26)
᪥ᮏ࡛ࡢᩍ⫱ࡢࡳ 23% 36% 28% 27%
ᅜෆࣥࢱ࣮ࢼࢩࣙࢼࣝࢫࢡ࣮ࣝ 0% 0% 6% 8%
␃Ꮫ 44% 39% 35% 35%
ᾏእ⏕ά 38% 42% 46% 54%
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001 ௨ୖ
(n=26)
ձ ㄒᏛࡀዲࡁ 71% 64% 59% 54%
ղ ᖐᅜᏊዪ 13% 8% 35% 31%
ճ ᑓ㛛⫋ࡘࡁࡓࡗࡓ 42% 42% 48% 54%
մ ㄡ່ࡵࡽࢀࡓ 13% 11% 19% 8%
յ ㏻ヂ⪅ࡢά㌍ࢆぢ࡚ 23% 25% 26% 27%
ն ࣓࣮ࢪ࠶ࡇࡀࢀࡓ 13% 14% 11% 12%
շ ࡀ࡞ࡗࡓ 4% 11% 7% 15%
ո ㌿⫋ 19% 28% 24% 23%
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3. 6. 通訳技術の習得
通訳訓練をどこで受けたかについて、 表6に示すように、 通訳学校に通った経験を持つ人は、どの グループにおいても約8割から9割近くを占めた。 時給グループ別での平均通学年数は、 約2年~4 年である。 中には通訳学校と大学・大学院の両方で訓練を受けたという人もいた。 日本では、 通訳 訓練は民間の通訳学校で行われるのが主流であり、 大学や大学院レベルでの通訳訓練のみで通訳の プロとして自立することはかなり難しいという実態がある。 時給10,001円以上グループでは9割近くが通 訳学校で通訳技術を習得している。 大学及び大学院で通訳訓練を受けた割合は、 時給10,001円以 上のグループのみ1割以下であり、他のグループは2~3割であった。時給10,001円以上のグループは、 平均年齢も高く、 キャリアも長く、 デビュー年齢も低いという特徴が明らかになっている。
染谷他 (2005) の実態調査から、 少なくとも105以上の大学・大学院で通訳関連クラスが開講され
ている状況と比較すると、 時給10,001円以上のグループに属する通訳者がデビュー前当時の30年程 前に通訳訓練を行っていた大学・大学院の数は限られていたことも一つの可能性として考えられる。 た だ、 日本における通訳の歴史の中で、 石黒 (2007) によると日本で本格的な通訳訓練を最初に実施し たのは大学である。 1964年の東京オリンピックを前に、 多くの通訳者需要が見込まれる中、 国際基督
教大学 (ICU) が本格的な通訳教育を行った。 現状では、 通訳関連クラスが開講されている数は多い
とはいえ、 「語学力強化」 のためや、 「異文化コミュニケーション教育」、 「一般教養・学問」 など、 必ずしも「通訳者養成」 が目的ではないことも多く、 大学・大学院での通訳教育を受けてすぐプロデビ ューできるケースは多くないと思われる。 本調査においても、 「帰国子女」 でもなく、 「留学」 「海外経験」 もなく、 「通訳学校」 へも行かずに、 「大学・大学院」 で通訳教育を受けただけでプロ通訳として自立 した例は、 わずかに2例のみであった。 今のような海外旅行もインターネット環境も身近ではなく、 国内 で生きた英語に接するチャンスは日常ほぼ皆無の1960年代にICUでプロ通訳者を育てることが出来た のは、 目的が 「通訳者養成」 にあったことと、 その頃通訳者を目指した人の中に帰国子女が多かった ことも一因であり、 時給上位2グループに帰国子女が多く見られるのも、 そのような時代背景と関連して いる可能性が考えられる。 日本の大学の通訳教育の実態については、 染谷他 (2005) が初めて調査を 実施してから約15年が経過しており、 今後大学による通訳教育の割合がさらに増えてくることも考えられ るが、 現状では、 表6に示す通り、 通訳学校で通訳技術を習得している状況が大半を占め、 主流と なっている。
表6. 通訳技術の習得 2,001㹼
5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26)
㏻ヂᏛᰯࡢ㏻Ꮫ⤒㦂 77% 86% 80% 89%
㏻Ꮫᖺᩘ ᭱▷ 0.5ᖺ 1ᖺ 1ᖺ 0.5ᖺ
㏻Ꮫᖺᩘ ᭱㛗 10ᖺ 10ᖺ 12ᖺ 5ᖺ
㏻Ꮫᖺᩘ ᖹᆒ 4ᖺ 4ᖺ 3ᖺ 2ᖺ
Ꮫ㸩Ꮫ㝔ᅇ⟅⪅ࡢྜ 21% 28% 30% 8%
3. 7. 英語通訳者が保持する資格
各グループの通訳言語の英語の割合及び英語関連の資格については表7の通りであった。 今回の 調査回答者には、英語以外の言語通訳者もいたが、表7に示したように英語通訳者の割合が最も多く、
4グループの中で英語通訳者の割合が一番低い時給2,001~5,000円グループであっても90%、 他の
グループでは95%前後を占めている。 英語通訳者が大半を占める調査対象者の英語資格状況につい て見ていくことにする。
表7. 英語通訳者および英語資格保持者の割合
まず、 実用英語技能検定 (英検) の資格の有無については、 英検1級・準1級・2級いずれか の資格があるとの回答が、どの時給グループでも60%以上を占めており、 時給5,001~8,000円のグル ープでは約80%であった。 英検1級に絞って見てみると、 時給5,001~8,000円グループでは75%、
その他の時給グループでも60%前後が英検1級の資格を持っていると回答した。
TOEICについては、スコアの記載があった回答による各時給グループの平均値は940点から960点
であった。 非常に特徴的なのは、 TOEIC資格有無の状況が時給グループによって大きく異なる点であ
る。 TOEICの資格を持っていない割合は、 時給の低いグループ順に、 25%、 42%、 61%、 77%と増
えていき、 時給10,001円以上のグループにおいては、 75%以上がTOEICの資格を持っていないこと
が明らかになった。 「通訳者になるのに資格は必要か?」とよく聞かれる問いについて、一般的に、 「経 験と実力の世界」と言われることがあるが、 TOEIC資格を持っていない、もしくはTOEIC/TOEFL資 格のいずれも持っていない割合の高さを見ても、 「経験と実力の世界」 の実情を表していると考えられる。 また、 キャリア年数が長い時給上位グループほどTOEIC資格を持っていない割合が高いことから、 これには時代的な背景も絡んでいる可能性があるのではと考えた。 表8に示す通り、 日本でTOE-
IC Programの実施・運営を行っている国際ビジネスコミュニケーション協会の情報によると、 日本で
TOEICの第1回目の試験が実施されたのは、 1979年であり、 その時の受験者数はわずか3千人余
りであったとされる。 その後、 経済のボーダレス化やIT化の進展により企業活動のグローバル化が一 気に加速したことで受験者数も年々増加し、 1985年度に8万8千人だった受験者は1990年度には
⾲ ヂ⪅ ⪅ ྜ
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26)
ⱥㄒ㏻ヂ⪅ࡢྜ 90% 94% 96% 96%
ⱥ᳨㈨᱁ಖᣢ⪅ (1⣭/‽1⣭/2⣭) 69% 81% 69% 62%
ⱥ᳨㈨᱁ಖᣢ⪅ (1⣭) 58% 75% 63% 58%
TOEICᖹᆒ ⣙945Ⅼ ⣙960Ⅼ ⣙940Ⅼ ⣙945Ⅼ TOEIC㈨᱁↓ࡋ 25% 42% 61% 77%
TOEIC/TOEFL㈨᱁↓ࡋ 25% 36% 57% 77%
33万2千人に、さらに2000年度には100万人を突破した。 個人受験だけではなく、 企業が英語研 修を行う際に導入したり、 昇進や昇給の要件としてTOEICを活用したりするなど、 2017年度において は、 個人受験に加えて約3千6百の企業・団体・学校が採用し、 年間約248万人が受験してい る。 今でこそ普及率も認知度も非常に高いTOEIC試験ではあるが、 平均キャリア年数が28年の時
給10,001円以上の通訳者にとって、 キャリアをスタートさせた時期に、 38年前に始まったTOEIC試験
は今ほど浸透していなかった。このことが、このグループに見られるTOEIC資格保持率の低さに関係 していると考えられる。 一方で、 英検については、 第1回目の検定試験が文部省後援のもとに実施さ れたのが1963年と、 その歴史はTOEICより16年も長い。 受験者数も、 第1回目で3万8千人と、
第1回目のTOEIC受験者数の約13倍の規模であった。 歴史も長く、 文部科学省の後援ということも
あり、 英検については、 実施開始当初から認知度や普及率も比較的高かったと考えられる。 それが、 どのグループにおいても英検の資格保持者の割合が半数以上と高い状況に反映されたのではないかと
考えられる。
表8. TOEICと英検の比較
3. 8. 経済的自立
通訳の仕事で自立できているかどうか、 自立できている場合はそれまでに要した年数を1~5年、 6~10年、 10年以上の区分で尋ねた。 自立できている人の割合は、 時給レベルが上がるほど高くな
っている。 時給2,001~5,000円のグループでは、 自立できている割合は46%で半数以下であるのに
対して、 時給10,001円以上では自立できている割合がその2倍以上の96%であり、 1人を除いて全
員が自立している (表9)。
表9. 経済的自立
TOEIC ⱥ᳨
ᐇ࣭㐠Ⴀ ୍⯡㈈ᅋἲே
ᅜ㝿ࣅࢪࢿࢫࢥ࣑ࣗࢽࢣ࣮ࢩࣙࣥ༠
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᪥ᮏⱥㄒ᳨ᐃ༠
ᐇ㛤ጞᖺ 1979ᖺ 1963ᖺ
➨1ᅇཷ㦂⪅ᩘ ⣙3༓ே ⣙38༓ே
2017ᖺᗘ ⣙270ே (ཷ㦂⪅ᩘ) ⣙366ே (ᚿ㢪⪅ᩘ)
2017ᖺⅬ 38࿘ᖺ 54࿘ᖺ
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26)
⮬❧࡛ࡁ࡚࠸ࡿ 46% 75% 87% 96%
⮬❧せࡋࡓᮇ㛫 1㹼5ᖺ 27% 53% 57% 77%
6㹼10ᖺ 13% 11% 28% 19%
10ᖺ௨ୖ 6% 11% 2% 0%
3. 9. 活動拠点
活動拠点となる住所を、 東京圏 (本調査では東京都、 神奈川県、 千葉県) とそれ以外の地方で 見てみると、 東京圏の占める割合は表10に示す通りであった。 時給2,001~5,000円のグループでは 東京圏に住む人が40%であったが、 その他のグループでは約70%~80%が東京圏在住者であった。
表10. 活動拠点
3. 10. 通訳専業・兼業
次に、 通訳を専業としているか、 兼業であるか、 兼業の場合はその職種についての時給グループご との回答を表11に示した。 専業の割合は時給レベルが上がるに従って増えており、 時給下位2グルー プでは専業の割合は半数以下であるが、 上位2グループでは過半数が通訳を専業としている。 時給 2,001~5,000円グループでは兼業として 「翻訳」 が圧倒的に多くを占めているのに対し、 時給10,001 円以上では 「大学教員」 の割合が一番高い。また時給2,001~5,000円グループは他のグループに 比べて「事務職」 や 「その他」 の兼業の割合が高いことが分かる。
表11. 通訳専業・兼業の割合と兼業の職種
3. 11. 雇用形態
表12に示す通り、どの時給グループにおいてもフリーランスが圧倒的多数である。 時給上位3グル ープでは、フリーランス通訳者として働く人の割合が80%以上であるのに対し、 時給2,001~5,000円 グループでは約65%と比較的割合が低い。またこのグループでは、 派遣の割合が他のグループよりも
非常に多くなっている (一部複数回答有り)。
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26) ᮾிᅪࢆάືᣐⅬࡍࡿேࡢྜ 40% 69% 83% 73%
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001 ௨ୖ
(n=26)
ᑓᴗࡢྜ 23% 44% 56% 58%
වᴗࡢ⫋✀: ⩻ヂ 48% 39% 11% 15%
: ㏻ヂ࣭ㄒᏛᏛᰯㅮᖌ 13% 25% 15% 19%
: Ꮫᩍဨ 6% 14% 15% 23%
: ົ⫋ 13% 6% 0% 4%
: ࡑࡢ 23% 11% 13% 8%
表12. 雇用形態
3. 12. 自分のスキルに対する認識
自分のスキルに対する認識の比較を①外国語から日本語 (以下、 外日とする) への逐次通訳、 ② 日本語から外国語 (以下、日外とする) への逐次通訳、 ③外日同時通訳、 ④日外同時通訳それぞれ における比較を見ていく。まず外日逐次通訳における自分のスキルに対する認識 (表13) では、 時給 下位2グループは約80%が 「大幅に改善したい」もしくは 「改善したい」と考えており、 時給上位2グ ループにおいては、 その割合は50%弱であった。 「非常に満足」または 「満足」と答えた人は、 時給 2,001~5,000円グループで8%であったのに対して時給10,001円以上のグループでは44%で、 2つの グループ間では5倍以上の差があった。 時給が高いグループほど自身のスキルに対する満足度も上が っていると言える。
表13. 自分のスキルに対する認識 外日逐次
日外逐次通訳スキルに対する認識 (表14) においては、 時給2,001~5,000円グループでは90%が 改善したいという認識を持っているのに対し、 時給10,001円以上グループでは、 「改善したい」と感じ ている人は約50%であった。日外逐次通訳のスキルについての満足度についても時給が高いグループ ほど高くなっていることが分かる。
表14. 自分のスキルに対する認識 日外逐次
እ᪥㏲ḟ 2,001㹼 5,000 (n=48)
5,001㹼 8,000 (n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001 ௨ୖ
(n=26)
ࠕᖜᨵၿࠖ㸩ࠕᨵၿࡋࡓ࠸ࠖ 80% 78% 49% 48%
ࠕ㠀ᖖ‶㊊ࠖ㸩ࠕ‶㊊ࠖ 8% 19% 32% 44%
ࠕࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠖ 12% 3% 19% 8%
⾲ ⮬ศ ㄆ እ
᪥እ㏲ḟ 2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26)
ࠕᖜᨵၿࠖ㸩ࠕᨵၿࡋࡓ࠸ࠖ 90% 66% 58% 52%
ࠕ㠀ᖖ‶㊊ࠖ㸩ࠕ‶㊊ࠖ 6% 17% 25% 32%
ࠕࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠖ 4% 17% 17% 16%
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26)
ṇつ⫋ဨ 8% 11% 2% 12%
ᑓᒓዎ⣙ 8% 3% 0% 0%
ὴ㐵 17% 3% 2% 0%
ࣇ࣮ࣜࣛࣥࢫ 65% 83% 93% 81%
ࡑࡢ 6% 0% 4% 12%
ࠕ↓ᅇ⟅ࠖ 0% 0% 2% 0%
外日同時通訳スキルに対する認識 (表15) では、 「大幅に改善したい」または 「改善したい」と答え た人の割合は時給が低いグループほど高くなっており、 「非常に満足」または 「満足」と答えた人は、 時給2,001~5,000円グループでは5%であったのに対して時給10,001円以上グループでは36%と約7 倍の差があった。
表15. 自分のスキルに対する認識 外日同通
日外同時通訳スキルに対する認識 (表16) についても、 「大幅に改善したい」または 「改善したい」 と答えた人の割合は、時給が低いグループほど高く、「非常に満足」または「満足」と答えた人の割合は、
時給が高いグループほど高い結果となった。 満足度について、 時給2,001~5,000円グループでは5%
であったのに対して、 時給10,001円以上では24%であり、 約5倍の差があった。
表16. 自分のスキルに対する認識 日外同通
3. 13. 自分の知識レベルに対する認識
逐次通訳・同時通訳のスキルだけではなく、 知識レベルについての満足度にも着目すると、 表17の ような結果であった。 「大幅に改善したい」または 「改善したい」と回答した人の割合は、 時給が低い グループほど高いものの、 時給が高いグループにおいても、 過半数以上が改善したいと認識している。
「非常に満足」または 「満足」と回答した人は、 時給上位2グループにおいてもそれぞれ13%、 8%と、 通訳スキルにおける満足度の割合と比較するとかなり低くなっている。 これは、 様々な分野での背景知 識が求められる通訳の仕事の特徴を表しているのではないかと考えられる。
表17. 自分の知識レベルに対する認識
እ᪥ྠ㏻ 2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001 ௨ୖ
(n=26)
ࠕᖜᨵၿࠖ㸩ࠕᨵၿࡋࡓ࠸ࠖ 88% 74% 62% 44%
ࠕ㠀ᖖ‶㊊ࠖ㸩ࠕ‶㊊ࠖ 5% 21% 15% 36%
ࠕࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠖ 8% 6% 23% 20%
᪥እྠ㏻ 2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001 ௨ୖ
(n=26)
ࠕᖜᨵၿࠖ㸩ࠕᨵၿࡋࡓ࠸ࠖ 88% 73% 61% 56%
ࠕ㠀ᖖ‶㊊ࠖ㸩ࠕ‶㊊ࠖ 5% 18% 20% 24%
ࠕࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠖ 8% 9% 20% 20%
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26)
ࠕᖜᨵၿࠖ㸩ࠕᨵၿࡋࡓ࠸ࠖ 96% 92% 70% 62%
ࠕ㠀ᖖ‶㊊ࠖ㸩ࠕ‶㊊ࠖ 2% 3% 13% 8%
ࠕࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠖ 2% 6% 17% 31%
3. 14. 数値的データのまとめ
各時給グループの比較を様々な角度から行ってきたが、 相対比較で各グループに顕著に見られた主 な特徴を、 前項で説明した順に表18にまとめた。
表18. 時給グループ比較の主な特徴のまとめ
時給レベルが最も低いグループと最も高いグループの比較において、 顕著に見られた特徴は以下のよ うになる (表19)。
表19. 時給レベルの最低グループと最高グループの特徴比較
キャリアの築き方やバックグラウンドは人それぞれではあるものの、 時給グループごとの特徴が浮かび 上がった。 通訳者は、どの時給グループも50代以上の占める割合が高いが、 キャリア年数の長さが 時給レベルに反映されているところからも、通訳という職業は、比較的息の長い職業だと言えそうである。 キャリアの長さだけではなく、 雇用形態、また活動拠点なども収入レベルに影響する要素であることも分 かった。
2,001㹼 5,000
(n=48)
5,001㹼 8,000
(n=36)
8,001㹼 10,000
(n=54)
10,001
௨ୖ
(n=26) ᖹᆒ࢟ࣕࣜᖺᩘ 10ᖺ 18ᖺ 26ᖺ 28ᖺ ࢹࣅ࣮ࣗᖹᆒᖺ㱋 40ṓ 31ṓ 29ṓ 30ṓ ࠕㄒᏛࡀዲࡁ࡛ࠖ㏻ヂ⪅࡞ࡗࡓྜ 71% 64% 59% 54%
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වᴗࡢࠕㄒᏛㅮᖌࠖࡢྜ 13% 25% 15% 19%
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また、 帰国子女であることは必須ではないが、 時給上位2グループの帰国子女の割合が比較的高 かったことからも、 高い収入レベルに到達する上で有利だと言えそうである。 一方で、 通訳者には、 英検1級保持者やTOEIC高得点保持者が少なくないが、 そうした資格を保持していなくても、トップレ ベルの通訳者として活躍している人も多い。つまり、「通訳は実力の世界」ということが示された。ただし、
TOEICの事例で言及したように時代背景の影響もあるため、 今後は変わってくることも考えられる。
さらに、 キャリア年数も長く、 比較的自分の通訳スキルに対する満足度が高い時給上位グループであ っても、 自分の知識レベルに満足している傾向は見られなかった。この結果は、 常に知識の習得が必 要となる通訳という職業の特徴を示していると同時に、 現状の自分の知識レベルにも満足することなく、 向上心を持ち続けられることがレベルの高い通訳者になる一つの要件であることを示唆している。以上、 通訳者のバックグラウンドに関わる13項目から収入レベル別の数値的データを表示してきたが、 次節で は通訳の報酬に関する質的データの分析を行っていく。
4. 報酬に関する通訳者の認識
4. 1. 正当な対価としての報酬に関する一般的な誤解
本稿の先行研究であり、 筆者が共同研究を行った新崎他 (2019b) では、 質問紙の自由記述欄の 137人分の記述をもとに、 木下 (1999, 2003, 2007) による修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ
(M-GTA) を援用して分析を行い、 通訳者がどのような思いで仕事に向き合っているのかについて報告
した。 通訳者の心情についての自由記述の分析結果としては、通訳者が感じている「やりがい」 「問題」
「不安」 「期待」 の4つのカテゴリーが生成されている。 各カテゴリーの関係性は、 下記のように示すこ とができる (図3)。
図3. 通訳者の心情:「やりがい」「問題」「不安」「期待」
まず、時間軸として、左が現在、右が未来となっており、通訳者は現在様々な 「問題」を抱えていて、 それがまだ起こっていないことに対する「不安」、 今後実現を願う「期待」 につながっている。また通 訳者の動機付けと支えとなり、 「問題」と対立する関係でありながらも通訳者の仕事を支えているのは、
「やりがい」 である。 それぞれ4つのカテゴリーの下には構成要素の 「概念」 があり、 通訳者が感じて 4. ሗ㓘㛵ࡍࡿ㏻ヂ⪅ࡢㄆ㆑
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いる「問題」を構成する10の 「概念」 は 「①社会的認知度の低さに対する不満」 「②外国語ができ れば通訳ができるという誤解」 「③正当な対価としての報酬に関する一般的な誤解」 「④国家資格・認 定制度の必要性」 「⑤クライアントへの不満」 「⑥エージェントの仲介機能の不足に対する不満」 「⑦エ ージェントが仕事の環境整備を十分にしていないことへの不満」 「⑧エージェントの報酬基準への不満」
「⑨仕事の難しさ」 「⑩同業者への不満」 である (新崎他 2019b)。
本稿では、 その中で、 「正当な対価としての報酬に関する一般的な誤解」 に着目し、 実際に通訳 者はどう感じているかを、 分析時に作成した分析ワークシートの事例として表20に示す (下線は筆者に よる)。 ヴァリエーション (木下2003: 188) は、 「正当な対価としての報酬に関する一般的な誤解」 に
関連した通訳者の実際の記述の具体例である。
表20. 分析ワークシートの事例
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表20に見られるように、 通訳者は、 通訳の仕事の事前準備に労力と時間が必要なことが理解され ていない、 通訳サービスを受ける側が通訳に対してお金を払う意識を持っていない、 通訳にかける事 前準備も含めた労力を考えると報酬が見合っていない、と感じている。また、 通訳料金が不当に高い と思われていることが残念だと感じている。なぜ世間一般では通訳料金が高いとの認識をもたれるのか、 なぜそれを通訳者は誤解であると感じているのかについて、 通訳に必要な準備、 専門的なスキルや知
識の観点から考えてみたい。
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4. 1. 1. 通訳の仕事の準備に関する認識
通訳の仕事に対する一般的な誤解の要因として、 通訳の仕事には必須の事前準備が認識されてい ないと通訳者は感じている。 数値的なデータとして、 図2に通訳者の時給レベルを示しているが、これ には準備時間は含まれていない。 時給が10,000円と聞けば、 高いと思う人も多くいるかもしれない。し かしながら、 通訳の仕事には事前準備が必要であるため、 仕事の種類、 内容や状況により異なるもの の、 例えば、 1時間の仕事に対して10倍の10時間をかけて準備をした場合、 本番の現場で稼働す る1時間分以外の10時間に対して報酬が支払われることはないのが通常である。 時給を、 準備時間 も含めてその仕事にかけた時間全体の11時間で割ると、実質的には1,000円以下となる。 そのため、
事前準備を必要としない他の仕事と時給レベルだけをみた単純比較はできないことになる。
質問紙調査を実施した時には、 通訳の仕事の準備時間はどのくらいかけているのかの質問を含めて いなかったことが残念な点であったが、 ある会議通訳者はインタビューの中で、 1時間の通訳のために 30時間~40時間準備していて、 何がでてくるかわからない通訳の仕事にそなえて日々ニュースを追う 等の勉強に毎日4、 5 時間かかり、 「ペイしないですよ」と語っている (NIKKEI STYLE 2016)。 世間 一般では、 実際の通訳業務をしている現場での稼働時間しか認識されていないことから、 「現場でお 金をたくさんもらうように見える」 「時間給を見れば、 一見効率よさそう」 「通訳料金が不当に高いと思わ れている」 等の声に見られるような世間一般の認識と、 「通訳料がその努力と時間に見合わない」 の声 に見られるような通訳者の認識との乖離が生じている。
4. 1. 2. 通訳の専門的スキルに関する認識
通訳は2つの言語ができれば誰でもできると誤解されていることが多いが、 それだけでは務まらず、 専門的な知識・スキルの習得が必要である。 通訳学校に通って通訳技術を身につけた通訳者の割合 が圧倒的に多く、 通訳の仕事に就くまでの段階でも通訳学校や留学など自己投資を行っている通訳者 は多くいることが明らかになっている。 通訳学校に通う期間は人それぞれであるが、 実態調査では、 最短が半年、 最長が12年、 平均値は3.5年、 中央値は3年であった (新崎他 2019a)。
通訳技術を身につけるために必要な自己投資について、 通訳学校の費用は学校の種類やどのレベ ルのクラスかにもよるが、 大手の通訳学校のホームページ4)の情報を参照にすると、 週2回約半年間 通って30万円前後かかり、 通学期間の平均値の3.5年間で計算すると、 約210万円はかかる。 多く の通訳者がそれだけの自己投資を行い通訳技術や知識習得のために費やす時間や労力は一般的には あまり認識されていないと考えられる。
さらに、 通訳者は通訳の仕事に就いてからも、 スキルの向上や知識レベルの向上のために、 自発的 な勉強が継続的に求められる職業である。 3.12.、 3.13.に示したように、 平均キャリア年数が28年の 最上位の収入レベルに属する通訳者であっても、 自身のスキルや知識レベルに対してまだまだ満足して
いないことにも、 継続的な勉強が求められる特徴が表れている。 世間一般では、 通訳者が仕事に就く までにも通訳学校に通うなどの自己投資を行って専門技術を身につけ、 通訳者としてのキャリアを積む中
でも常に自己研鑽を行っていることが認識されていないところがあり、 それが通訳者から寄せられた声に ある 「専門職にも関わらず報酬レベルは低い」 「通訳専門職ならばあり得ない低レート」 「プロの通訳に 有料で仕事も発注するという認識が不足している」 のような状況につながっている。
4. 2. 通訳の仕事の報酬とは
4. 2. 1. 「目に見える報酬」と「目に見えない報酬」
通訳者は通訳のキャリアにおいて、 何を重視しているのだろうか。 仕事における報酬とは何かについ て、 田坂 (2008) は、 「目に見える報酬」と「目に見えない報酬」 について述べている。目に見える報 酬は、 収入や地位等を指し、 目に見えない報酬は、 能力、 仕事、 成長であるとしている。 報酬とい えば一般的にはまずは収入や地位を想起されるが、目に見えない報酬として、 能力が身につくこと、 良 い仕事を残すこと、自分が成長することにこそ仕事の本当の喜びがあると語っている。 4.1.で挙げた「正 当な対価としての報酬に関する一般的な誤解」 の 「報酬」 が意味しているのは、 主に 「収入」と同 義で捉えられている。
4. 2. 2. 通訳者が認識している「目に見えない報酬」
収入については、 実際の業務量を考えると見合わないと感じている通訳者が多くいる中で、 通訳者 にとっての目に見えない報酬は何だろうか。 M-GTAを援用した分析結果から図3で示した通り、 通訳 者を支えている原動力は 「やりがい」 であることが明らかになっている。 仕事のやりがい ( 「目に見えな い報酬」) と、収入を含めた経済面 (「目に見える報酬」) の両方に言及した通訳者の記述の中には、「報 酬よりも人や企業に役に立つ思いが大事」 「お仕事の為の勉強や努力が自己啓発につながり、 お金だ けではない満足感があるから続けている」 「社会保障的な面では夫の扶養家族となって無収入の方が はるかに有利だったかもしれませんが、 それを補って上回るものを得ていると思っています」 のように、 や りがいが、 収入を含めた経済面を上回る認識も見られた。 その一方で、 やりがいだけでは経済的な自 立は望めず、 数値データの経済的自立についての項目 (表9) では、 最も時給レベルが低いグループ の過半数が経済的自立ができていないことが明らかになっている。さらに、 「私のように趣味のようにやっ ている者には、 大変やりがいのある仕事ですが、これで家族を養ってゆくというのは考えられないほどむ ずかしい」 の声のように、 通訳者の収入レベルや扶養家族の有無等にも左右される。 必ずしもすべて の通訳者にとって、 やりがいが収入を含めた経済面の問題をしのぐわけではないことも伺え、 個人の置 かれている立場や状況によっても、より重視するものが異なることが確認される。
新崎他 (2019b) の分析結果では、 「やりがい」 は①仕事のやりがいと満足感、 ②強い向上心、 ③ 職業的使命感、 ④同業者からのポジティブな影響の4つの概念で構成されている。 データを切片化せ ずに文脈に注意を向けてデータの読み込みを行った分析プロセスにより、 通訳者が感じている 「仕事の やりがいと満足感」が、「仕事の難しさ」や 「経済的な不満」 とセットで語られている傾向が確認された。 具体的な通訳者の声として、 「日々いろいろな分野の勉強は本当に大変で、自分でワークライフバランス をうまくとらなければやりすぎてしまうということもありますが、 常にやりがいがあり、 常にまだまだ自己の改善 をめざし、努力できるということろが好きです」 「通訳料がその労力と時間と見合わないことも多くあります。 しかし、 いろいろな分野にかかわることができること、 自分が努力すればするだけ報われることが、 やり がいに繋がるのだろうと思います」 「日頃の準備・勉強時間等を考慮すると世間で考えられているほど経 済的に恵まれた職業ではないかもしれませんが、 通訳者の選ぶ言葉や伝え方ひとつで印象が大きく異な るなど、 非常にやりがいのある仕事だと思います」 等がある。 経済面の不満や仕事の大変さは感じて いながらも、 それと同等に、もしくはそれ以上にやりがいを感じている通訳者の心情が見られる。
先に紹介した1時間の仕事に30時間~40時間の準備をするため通訳者の報酬はペイしないと語っ ていた会議通訳者のインタビューにおいても、 「喜んでもらえればありがたいし、 何か役に立っているとい う実感がこの仕事の原動力」、 「自分の緊張よりも話し手のプレッシャーの方が100倍大きいと思いますか ら、その人をできるだけ助けてあげたい、という気持ちも原動力の一つになっている」と語られており、 「や りがい」 に包括される 「仕事のやりがいと満足感」、 「職業的使命感」 が仕事の原動力にあることが見 られる。
4. 3. 報酬に関する通訳者の認識のまとめ
通訳者にとっての目に見える報酬の例としては収入と専門職としての地位、 目に見えない報酬の例に はやりがいがある。 収入に関しては、 世間一般から誤解されていると多くの通訳者は感じていて、 その 要因として、 通訳の仕事の準備に関する認識、 専門的スキルに関する認識がされていないことが挙げ られる。 通訳者にとってやりがいは、 通訳の仕事の原動力になっており、 収入に対する不満を上回る ほどの強いやりがいを感じている通訳者は多くいる。 言い換えれば、 通訳の仕事において、目に見えな い報酬をより重視していると言える。 一方で、 やりがいは感じていながらも、 通訳の仕事では経済的な 自立が難しいと思っている通訳者もいる。 通訳者の中でも個人差があるその背景には、 通訳の仕事で 経済的自立が必要な立場にあるか、 扶養家族がいるか、または自分が被扶養者か等の経済面で置 かれている状況や、通訳者自身の収入レベルの違いがある。 通訳の正当な対価は何かを考えるには、 このような 「目に見える報酬」 「目に見えない報酬」 を包括した視点に加えて、 通訳に求められる準備 や専門性に対する理解も必要であると考えられる。