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ドィッ,デンマーク生産学校のデッサン

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(1)

ドィッ,デンマーク生産学校のデッサン

一学校中退者・失業青年に職業訓練を一

大串 隆吉

はじめに

 この二年ほどドイッの生産学校を訪問した。カッセル,ハンブルク,シュト ラーズンド,オッヘンバッハ,モルッブルクの生産学校である。その過程で,

ドイッの生産学校がデンマークのそれの影響を受けて生まれたことを知った。

ただし,後述するように,1920年前後の改革教育運動,ケルシェンシュタイ ナーの労作学校の流れとして考える向きもある。

 昨年の10月にデンマークの生産学校を訪ねる機会を得た。以下述べることは,

これらの見聞をもとにした,両国の生産学校のデッサンである。

 ちなみに,ドイツの生産学校にっいては,rドイツにおける不利益青少年の 職業的自立調査報告1』(平成16年度科学研究費補助金(基盤B)「日独社会教 育学における青少年自立援助システムの比較研究」グループ,2005)でカッセ ル生産学校を紹介し,日本産業教育学会の紀要でも紹介しているが,私の紹介 までその存在は我が国に知られることはなかった。また,デンマークの生産学 校も,これまで知られることはなかった。

 ドイッの生産学校は,ドイ.ッ国内でも広く知られているわけではなかったが,

この数年いくっかの本が出版され,また,ケムニッツ工科大学のLorand

Schoene(ローランド・シェーネ)がドイッ政府の依頼で,ドイツ,デンマーク,

オーストリアの生産学校を調査し,報告書 Vergleichende Studie zum aktuellen Entwicklungsstand von Produktionsschulen in Daenemark,

Oestreich und Deutschland (Technische Universitaet Chemnitz,2004)<デ

ンマーク,オーストリア,ドイッにおける生産学校の発展状況にっいての比較

(2)

研究〉を出しており,関心が高くなっている。残念ながら,デンマークにおけ るデンマーク生産学校の研究状況は,デンマーク語が分からないため,紹介で きない。なお,デンマーク訪問の際には,ロスキレ大学に留学中の伊藤優美さ んにお世話になった。

 ドイッには,2003年の時点で21校あったが,その後モルッブルクにでき,

メッケルンブルク・フォアポメルンに4校できたという情報があり,増えてい る。デンマークには2003年の時点で97校存在した。同時期,オーストリアは2 校であった。これらの国に共通しているのは,職業教育でデュアルシステムを

とっていることである。

デンマーク生産学校 生産学校法

 デンマークに生産学校の数が多いのは,生産学校法(lov om produktion−

sskoler,1985年公布1)があり,公教育制度の一部となっているからである。

この生産学校法第一章(目的,分野)の第一条の冒頭に,この学校の性格が端 的に述べられている。すなわち,「生産学校は,実習と生産経験を土台とした 職業訓練プログラムを提供する。事業は,青年職業教育を修了していない,職 業訓練開始のために必要な資格を持っていない,あるいはそのような職業訓練

を中断した25歳以下の青年を対象とする」。

 この目的によれば,対象は基礎的な青年教育未修了か,職業訓練を受けてい ない若者である。デンマークの学校制度は次のようになっている。9年の義務教 育のあと(10年の場合もある,)普通後期中等教育と職業後期中等教育にわかれる。

普通後期中等教育は,3年間のギムナジウムと,高等教育予備試験(Higher Preparatory Education)コース,及び商業系ギムナジウム,技術系ギムナジ

ウムからなる。職業後期中等教育には,社会福祉・健康系職業学校,農業系職業学

校,技術系職業学校,商業系職業学校があり,『これらはデュアルシステムをとって

いる。これ以外に教育・訓練コース(the vocational education and training

programs)があり,これもデュアルシステムをとっている。このコースを技術専

門学校,商業専門学校,総合職業専門学校が担当している。これらの専門学校は,

(3)

ドイツ,デンマーク生産学校のデッサン  3

同時に前記の商業系高等学校,技術系高等学校のプログラムも行っている。

 デンマークのデュアルシステムは,技術系職業学校と教育・訓練コースでは,

図のようになっている。教育・訓練コースのBasiccourseは,つぎの職種に分 かれている。建築・建設,手工技術,機械技術・運送,サービス関係,情報技 術,調理・仕出し,商業・事務・会計。この分野の理論教育および実践教育を 受けて,自分の職業訓練分野を決めて,Maincourseに進む。

 Maincourseは,次のような職業資格273のためのコースからなっている。 Web インテグレーター,建築技師,風力タービン技師,自然保全助手(Greenkeeper

assistent),保健福祉師(Social and health secretery), ITサポーター,メディ ア・グラフィックデザイナー,メディア・グラフィックデザイナー助手,家具製作,

CNC技術助手,パン職人,パン職人助手,自転車工,自転車工助手,イベント助 手,販売助手(Shop assistent)などである。

 ところで,このような中等教育制度で,生産学校が必要なのは,ドロップア ウトが生まれているからである。政府は,2005年2月に2010年までに中等教育 修了率を85%に,2015年までには95%にすることを決めた2。統計をしめすこ

とはできないが,Korsoer生産学校訪問の際の説明では,後期中等教育への進 学率は95%だが,修了率は83%に下がり,この差がドロッラ゜アウトである。こ

の部分と後期中等教育非進学者を合わせれば,20%近くが後期中等教育未修了 となる。生産学校法の第一条はこれらの若者を対象とすることをうたっている わけである。

 生産学校は,民間財団運営であり,国・自治体立ではない。そのことは,第 四条,第五条に規定されている。

第四条 生産学校は,民間財団として設立される。その規程は,学校に基礎的  補助金を全額あるいは一部,支出する市町村あるいは県当局によって認可さ  れる。(第九条第一項参照)基礎的補助金が郡政府により支出されるところ  では,学校施設は,開校される市の地方行政により認可される。

② 規程は,市あるいは郡当局からの許可に適応した獲得可能な収益にふさわ

 しい用途関係の使用規則を含んだ学校契約締結の基本方針を含まなければな

(4)

技術系職業学校のデュアルシステム 0      1

       2        3      4年

S

P P 木工旋盤工

P P

,フライス盤工

S

P P ねP機械工

金属・機械工

P P P S  P    S P

S プラスティック機械工

P P P S  P    S P

Sは,学校。Pは,現場実習

 出展:Ausbildungen an Beruflichen Schulen in Daenernark, http://www.es−c.dk/dts/udd/

・職業教育・訓練コースデュアルシステム   Baslc course      Maln course

    S .  、P S P S P S

資格試験

10  20   40,  60週

期間は変わりうる   期間は変わりうる 典型20週       典型3年〜3年半

出典:The Danish VET System,http://pub.uvm.dk/2005/VET/

(5)

ドイツ,デンマーク生産学校のデッサン  5

 らない。

③ 教育省は,さらに規程の内容に関係して特別な基本方針を確定する。

④学校が適切な教室を所有するよう努力することは地方自治体の任務である  という規程は認められる。(第二条第七項参照)そして,学校は現実的な財  政的基礎の上にその活動を始めなければならない。

⑤ 生産学校のための規程の認可は,学校が独自の活動を遂行することを止め  る場合には,あるいは,学校の活動がこの法律ないしそれに規定された方針  に沿わない場合には,取り消されなければならない。取り消しは,予告なし  に行うことが出来る。

第五条 民間財団として,生産学校は独立していなければならない。そして収  益の余剰は,教育活動と生産活動のみに支出される。一略一

 ここには,生産学校は自治体或いは国の経営する学校ではなく,民間の法人 が設置,運営し,それを自治体が財政的に援助するしくみをとっており,日本 の私立学校にあたるが,基礎的補助金の規定などは,むしろ地方独立行政法人

との比較の対象になるのではなかろうか。

 しかし,地方独立行政法人と決定的に異なるのは,独立性を承認しているこ と,授業料が無償であるだけでなく,教師の報酬を国がもち,生徒に対し政府 が奨学金のために補助金を出すことが規定されていることである。先の Kolsoerの訪問の際には,最短在学期間が三ヶ月のため,奨学金の支出のため に三ヶ月毎に政府の監査が入ることになっていると説明があった。また,生徒 の出身自治体は,生徒の在学している学校の職員の賃金のために,国が定めた 一定の割合で国に保険料なるものを納めなければならないことになっている。

 こうした,財政援助の方式が,デンマークの教育制度の中で共通しているの か,また特別なことなのかが,検討課題となる。

 法人の理事会は,5名以上の奇数名置かれる。その中には,地域の市場組織

の代表と市と郡の議会の代表がいなければならない。そして,生徒評議会の代

表も理事になる。1(01soerでは,この理事会に労働組合の代表,雇用主の代表

が入っている。

(6)

国民大学(Folkehoejskolen)との関連

 ところで,生産学校という民間の学校に対する運営方式は,いわゆる国民大 学(Folkehoejskolen)の運営方式とどのように関係するのであろうか。佐々 木正治は,「国民大学は,国家との関係に於いて逸早く学習の自由を基底にし

た統制なき助成,専門職としての視学による民主的な指導行政などの原則を確 立し」たと指摘している3。

 生産学校は,この評価に照らしてみると,国民大学と同様に国家から独立し た存在として認められているが,教育内容にっいては,例えば職業訓練法によ る規程の実現,あるいは教育内容の基準を教育省が定めるなど,規制を受けて いる。その点で,異なっている。

しかし,Roland Schoeneは,生産大学が国民大学の創始者であるNikolaj Frederik Severin Grundvig(1783−1872)の社会改革的願望を受け入れている

ことを指摘している。すなわち,「学校銀行型圧力」(Schulbank−Druecken)が 堅苦しい学校,職業訓練から離れる原因となっており,Grundvigは,この退屈

さを生み出している「陰諺な学校」(schwarzen Schule)の反対者として学校を

「生活の学校」(Schule des Lebens)とすることを意図していた,という4。

 このような,国民大学の教育理念を生産学校が意識していることは,Korsoer の生産学校が,Korsoer produktionshoejskoleという名称を使っていることに現 れている。ということは,1892年に制定された国民大学法が,Grundvigの教育理 念を認め,その教育理念が,デンマークの教育制度の理念として認められてきたこ

とになる。

 デンマーク生産学校協会の役員Verner Ljungによれば,生産学校の学校形 態は,デンマークの自由学校をとり,それは19世紀後半から発展してきたデン マーク国民教育の伝統に根ざし,その出発点は,Grundvigの「生活の学校」

にある5。この点で,我が国の研究として,佐々木正治の『デンマーク国民大 学成立史の研究』(1999)は貴重である。同時に,この理念が生産学校にまで 及んできた経過の検討も必要になろう。

 その研究の重要性は,次の点からも確認できるであろう。すなわち,国民大

学法による国民大学への国による補助は,定額補助と教師の報酬,教育資材に

(7)

ドイツ,デンマーク生産学校のデッサン  7

対する補助,生徒の奨学金の支払いからなっていた6。この形式は,生産学校 法に見ることができる。また,法にその金額も書かれている点も共通している。

この財政補助の在り方を含め,国民大学の理念と方式がデンマーク生産学校に 受け入れられていった経過は興味を呼ぶのである。

目的・理念・方法

 目的は,生産学校法第一条第二項,第三項に書かれている。

②事業は,次のことを意図している。受講者の人格的成長を強めること,そ  して,教育制度の中,及び第一労働市場(通常の労働市場)での彼らの可能  性を改善すること,すなわち,これは,柔軟な雇用関係と公に保護された仕  事などの中に彼らの労働を入れることである。さらに,受講者の仕事の能力  と関心の発展のための事業は,民主的社会において積極的に行動することに  貢献する。

③事業は,特別の注意を職業青年教育を得ることに導く,資格の獲得にむける。

 第二項における第一労働市場とは,正規雇用の労働市場のことである。修了 後,直接就労することも目的とされている。教育制度の中とは,青年教育一後 期中等教育に復帰するか,第三項にあるように,デュアルシステムである VETコースに進学できる,あるいは職業高校に進学できる資格を得ることで

ある。したがって,職業訓練準備教育という面と職業訓練教育とを併せ持って いることになる。

 入学者および修了者の状況は,Korsoer生産学校の場合,次のようになって いる。このなかには,職業青年教育を修了したが,何らかの理由で就職できな かったものも相当いる。この層が,ここでの生活を通じて,就職の機会を得る 場合がある。

入学時の学歴2006年

く基礎教育レベル〉

(8)

 8年生まで:10%,9年生まで:58%,10年生まで二32%(8年生までが義 務教育未修了)

〈青年教育中退してきた者〉

 普通高校:5%,技術系・商業系学校:51%,非退学者:44%

注:非退学者には,「義務教育未修一?者と義務教育修了後仕事に就いた者あるい  は進路指導で来た者が含まれる

 教育目的は,職業訓練だけではなく,人格の完成,民主社会の担い手になる ことも盛り込まれている。これらの目的は,職業訓練あるいは生産学校の生活 により達成される。

 次に生産学校の生産の意味である。

 生産学校第二条と第三条に次のように述べられている。

第二条 生産学校の計画は,実践的活動,生産活動そしてそれに関係した理論  学習からなる。理論学習は,重要な範囲を対象とし,出来るだけ広く実習に  結びっけられるべぎである。

②職業訓練指導あるいは職業指導が提供されなければならない。

③事業は,まず第一に職業青年教育内の分野に関係づけられなければならな

 い。

④ これを利用する生徒のために,基礎学力を強める企画が組織されなければ  ならない。

⑤さらにこの計画は次のことを含むことが出来る。

 一,民間企業あるいは公営企業における短期実習期間,

 二,修学旅行と交流プロジェクト  三,健康診断と他の特別な教育的支援

⑥ 生産学校の計画の三分の一までは,職業訓練法に応じて,決められた教育  内容である,授業,訓練と講習からなることが出来る。

⑦生産学校の訓練企画は,学校の行動計画と一致している作業所と施設を

 伴った,訓練にふさわしい環境の中で行われなければならない。(第6条7

(9)

ドイッ,デンマーク生産学校のデッサン  g

 項を参照)     °

⑧文部大臣は,どの計画の活動範囲,組織と内容がふさわしいか,規則を定  めることができる。(1項から6項参照)どの設備と道具類が7項にふさわ  しいかという,追加要求もできる。

第三条 生産学校は,民間企業との不公正な競争を引き起こさない条件の下で  生産品を市場に出すことができる。

 これによれば,デュアルシステムと同様に実践活動,生産活動と理論学習と が結合される。その場合,生産活動に軸があって,その範囲内の理論学習であ

る。その際に,生産活動とは何を指すのかが問題である。

 まず,第三条にあるように生産物を販売することが必須になっている。した がって,生産は,使用価値のあるものを生産することが前提で,日本の職業訓 練校のように技能獲得のたあだけに生産されるのではなく,現実の生産である。

「作業のプロジェクトは,販売を前提にして行われ,生産物は通常の市場の要 求を満たす質と水準を保たなければならない」7。生産学校が,通常の職業学 校と異なるのはまずこの点にある。

 次に,生産の内容,すなわち職業訓練分野からみてみよう。

家政関係 木工・建築

熨ョ加工 事務職

メディア・

﨣 技術

自然・

?? 創造活動 他

デンマーク

21% 29%

1%

19% 12% 11%

7%

ドイツ

15% 46% 10% 10%

10%    1% 8%

Roland Schoeneによる

 家政関係には料理,調理ケイタリング,福祉関係ヘルパー,織物が含まれ,

創造活動は,音楽,演劇である。この分け方は,大まかな分類であり,コース

には学校による特色があるようである。Korsoer生産学校では,メディア・情

報技術,木工・船大工,金属加工,建設,塗装,事務,織物,保育,調理,農

業の分野がある。伝統的な物作りという意味での生産は,木工,建築,金属加

工であるから,生産学校の生産は,物作りという意味での生産より広く,精神

(10)

活動も含めている。

 この生産活動を経済学的・技術学的に規定するのは,ここでは差し控えてお・

きたい。指摘しておきたいのは,教育学的観点があることである。

 生産物を売ることの意義は,その収益が生産学校の収入になるというだけで はない。教育的には,次の点が指摘されている。

 第一に,実際に使用されるものを作ることにより,彼らが必要とされている ということにきつくことにある。

 注文を受けて生産する過程がグループで行われることにある。すなわち,注 文品生産のためのプログラムを共同で作り,生徒は経験と能力におうじて,部 分を担当する。分業と協業が行われる。生徒はその中で,自分の課題を全体の 中で見ることが出来るようにする。それらの過程が,新人を作業に引き入れる ことになるという。そして,.その課題に答えることが出来る事が要求され,ど うじに自主的に解決できるようにする課題が与えられる。

 この経験により,生徒が将来の自分の在り方を管理でき,積極的な共同活動 をできるようになることが期待されている。

 このことは,生産学校に来るまで,彼らが本の上の知識が要求され,しばし ば,職業訓練,自分にあった分野を見っけることが出来ないままに,外からの 要求にさらされて来たため,自分に何が出来,向いているかを認識することが 出来ないままでいたことを変えていくことを目的としている。したがって,生 徒は,生産学校内の訓練分野を様々経験することが出来るようにする8。

 この点をKorsoer生産学校の校長は次のように表現する。ちょっと肩を押 してやれば,進むのに,立ち止まっている人とか,教科の成績が悪くても,こ こで自分にあったものを発見できるように,作業所で様々な選択肢を与えて,

後押しをする。

 そこで,注文を受け生産するグループは3人ないし4人くらいの小グループ で構成され,そこに一人の職業訓練指導員がつく。我々が訪問したときには,

金属加工ではベランダの,情報技術ではある自治体のHPの作成の注文を受け て製作していた。      

 この学習について,Korsoer生産学校の校長は次のような見方を示した。木

(11)

ドイツ,デンマーク生産学校のデッサン II

を削るようなことを,ひとっひとっするのではない。実際の学習は,ひとっの 作業に様々なことが起こっている。木を削る場合も,そのこととともに,重さ を量るとかがおこなわれ,学習はひとつの場で総合的に行われている。教師は,

とかくそれぞれの能力,たとえばデンマーク語の能力を抽出して,それだけの 能力獲得を分析しがちだが。

 この見方を前提にして,すぐれた技術を持っている人のそばでまねる,見て 学ぶことが有効であることは歴史が示している。(徒弟制度のように)師匠の

もとで学ぶという形態から非常に示唆を受けている,という。

 そのため,先述のグループは,経験者一先輩と新人,訓練指導者で構成され,

新人は先輩指導員と協働で作業して学んでいく。すなわち,指導員と先輩は 新人に対しドイッ語で言うbeglieten(同伴する)をするわけである。指導員

は先輩と新人にbegleitenすることになる。金属加工作業所では,先輩と新人 が指導員とともに鉄板の切断に取り組んでいた。

 このようなグループ学習の仕組みを可能としているのは,生産学校には普通 の学校のような入学時期,卒業時期が一斉に決まっている学期がないからであ る。すなわち,生徒は何時入ってきても良いし,次の進路が決まれば何時出て 行っても良いのである。その期間は,原則的に3ヶ月以上1年間までであるが,

許可を得れば例外もある。訪問の際に,船大工・木工の作業所にいた若者は,

小学校の時から,学校に不適応をおこし,生産学校にいるという。したがって,

先に入学した若者と新人がチームを組めるわけである。

 したがって,』教育目標やプログラムは,個人別にその若者の同意を得て作ら れる。若者が共通の期間に共通に達成するためのカリキュラムは存在しない。

各作業所の壁には,縦の欄に若者の名前,横の欄に社会的能力,技術能力など の能力が書かれた表があり,それぞれの能力別に,何が出来,何が課題かが,

個人別に示され,さらにその横に,その日の作業目的と行ったことが書かれる 余白がある。若者も指導員もこれをみて,それぞれの課題をめざすのである。

そのなかに知的な基礎的学力の学習が組み込まれている。

 2005年度中に出て行った若者の進路先は,次のようである。

(12)

<修了後の進路>2005年

 教育:39% 基礎学校:9%,就職:23%,失業(18歳以下):9%,Acti−

vation(18歳以上):11% その他:9%

注:「教育」は普通後期中等教育に進むこと,rActivation」とは,中等教育学  校以外の国民高等学校などに行くこと。

 〈修了後の進路〉のうちで,就職者は次の事情で就職できる。生産学校では 資格が取れないため,学校がその若者ができる能力証明書を出すことによって 就職できるようになる。しかし,それは資格を取った者よりもレベルが低いこ

とも意味している。

 これを見れば分かるようにじゅうぜんに移行しているわけではない。そこで,

建築や調理では,先述した資格の出せるデュアルシステムを生産学校の内部に,

今まで述べてきた職業訓練準備的な面に接続して作る計画がある。これは,す でにドイツで試みられている。

学校ならざる学校一ジーン・レイブ

 『状況に埋め込まれた学習一正統的周辺参加』(ジーン・レイブ,エティエン ヌ・ウェンガー,佐伯ゆたか訳,産業図書1997)の著者のひとりであるジー

ン・レイブはKalundborg生産学校を半年観察し, Leraning in Practice:

The Kalundborg Produktion School (University of California, Berkeley,

April 2001)という, A4判8頁の報告を書いている。この報告で,生産学校 で行われている学習を正統的周辺参加の学習としてとらえている。

Ibegan by illustrating a few of the many ways in which the KPS provides rich possibilities for learning throuth legitimate peripheral participation in several overlapping communities of practice.

注:KPS=the Kalundborg Production School

彼は,生産学校を学校ならざる学校一the school that is not a schoo1とい

(13)

ドィッ,デンマーク生産学校のデッサン 13

う。なぜか?そこでは,伝統的にかっ現在も学校にある教育方式に学習の基盤 が置かれてないからである。

 すなわち,「職業訓練指導員の活動は,新人以外の若者が生産学校を修了で きるようになりっっある一方で,新人の「労働者達」が年中異なった時期に参 加する作業所で,生産の目標と期限をうまく調節することとその生産に初めて 参加した若者の新たな可能性を開発することを同時に行うやりかたで,生産を 取り扱うことである。もし,このやり方が矛盾に陥る場合には,職業訓練指導 員は若者のためにそのバランスを変えるやり方を探すのである。一中略一この 意味で,生産学校は真の「学校」である。」という。

 生産学校は,訓練そのものより若者の変身に成功しているという。学校は,

知性のある技能を獲得しながら若者同士の関係を変え,他者との関係を変え,

労働生活の展望,デンマークにある様々な方式を持った学校との関係性を変え ることに於いて,真の深い教育の先見性に取り組んでいるとも評価している。

 周知のように,正統的周辺参加の学習は,状況に埋め込まれた方法での学習 として徒弟制における学習を再評価している。同時に,新参者の「習得」にっ いての共通に測定可能なレベルを求める完全参加ではなく,共同体の成員同士 の多様に異なる形態に含まれる多様な関係を意味する十全的参加という概念を

もちいる。

 したがって,彼が,生産学校に正統的周辺参加の学習を発見したのも当然で ある。なぜなら,生産学校は徒弟制の形態を受け継ぎ,かつ共同体への多様な 参加,それは10人いれば十種類あるような,を保証しようとしているからであ

る。

 彼は,生産学校のジレンマを指摘している。ひとっは,学校を拒否,軽蔑し,

自分自身を子どもと軽蔑している若者,落ちこぼれ,資格を持たないマージナ ルな参加者を,社会的に可能性と未来を作る者に変えていくこと自体がジレン マであるという。若者は学校でそうする能力がないと言われ,ダメージを受け てきている。そうした若者に,生産学校が,クラスや授業がある「本当の」学・

校の代わりとして,彼ら若者を客として受け入れる学校と見られたら,それは

生産学校の目的の挫折である。なぜなら,生産学校は,財政的にも若者に追う

(14)

ところが大きいから,そうみられる危険性がある。

 他のジレンマは,販売のために生産していることにっいてである。販売する には,生産物が使用され利益を上げなければならないが,一般企業と競合して はならないというジレンマがある,という。しかし,これはジレンマであろう

か。

 競合しない製品は,地元の商工会議所などの事業主団体と相談して決められ る。そのためにも,法人の理事にそれらの団体の代表がなるのである。同じ製 品を作ってはならないという意味ではなく,競合しないという意味で,同じ製 品でも,地元で不足しているものなら作ることを認められるのである。先述の 制作していたベランダやHPを地元の企業が作っていないことは考え多れない。

逆に言えば,そうした求められる製品だから生産学校でも作って売れるのである。

 そのうえ,地元の自治体から注文のあったソフトはそれほど複雑なものでな いという話であったから,地元が生産学校に配慮していると考えられる。

Korsoer生産学校では,子ども向けのぬいぐるみや洋服を作り,その販売所を 持っていた。我々が訪問したときに,地元の住民が買いに来ていた。ようする

に地元の住民の生産学校への目というものが考慮されなければならないと思う。

 Verner Ljungは前掲論文で,生産の販売を通じて,地元の企業や住民団体 と結びっきができ,それが若者の就業に結びっくことを指摘している。かれら が,どのように生産学校を評価しているか,が関心を呼ぶところである。地域 に根ざさない生産学校は立ちゆかないのであろう。先述したように地元自治体 は,基礎補助金を出すことになっている。職業訓練校やジョッブカッフェが,

都道府県自治体の仕事である日本とは,地元,地域の役割が明らかに違う。

デンマークからドイツヘ デンマ」クを参考に

 私の生産学校の旅は,ドイッから始まり,文字通りデンマークに飛んでいっ たわけだが,この論考ではデンマークから始めた。その理由は,ドイッの生産 学校はデンマークの影響を強く受けているからである。

 例えば,カッセル生産学校にっいて次のように言われている。この学校は,

(15)

ドイツ,デンマーク生産学校のデッサン 15

社会的不利益青年のために1984年に設立された,社会的不利益青年のデュァル システムへの移行と社会的同一化を目的としていたが,1990年代初めにヨー ロッパセミナーを催した際に,デンマーク生産学校との検討に刺激され,それ を参考にして補充学校(Ersatzschule)として国の認定を受けた9。

 ハンブルク生産学校アルトナの関係者は,デンマークの生産学校を訪問した 際に,学校が家庭的で,若者がこの学校にいることを好んでおり,生徒,教師 が熱心であることに感銘を受けた。そして,多くのハンブルクの職業学校で行 われている職業準備教育でみられる高い欠席率,学校拒否はデンマークでは 見られなかったと指摘して,生産学校アルトナがデンマーク生産学校から影響 を受けたことは明らかだと述べている10。

 これに対し,Andreas Hammer(アンデレアス・ハマー)は,生産学校の 理念は,ドイッにおける1920年代の改革教育(die deutsche Reform−

paedagogik)から生まれたと主張している11。

 この見解の対立については,ハンブルク・アルトナ生産学校の校長Thomas Johansen(トーマス・ヨハンセン)の次の見解が,ほぼ共通した見解になっ

ている。

 すなわち,ドイッの生産学校の起源は,パウル・エスタライヒ(Paul Oestreich),

ゲオルク・ケルシェンシュタイナー(Georg Kerschensteiner)らが提唱した労作 学校にある。ふたりは,学習あるいは書籍学校(Lern−oder Buchschule)を批判し,

学校における作業所の実践活動を強調した。

 しかし,現在の生産学校は,これとの歴史的っながりは希薄であり,デン マークの生産学校を参考にしてL)る。それは,ドイッの生産学校における教育 的基本原則が,デンマーク生産学校のそれに従っていることに見いだされる。

そして,ドイッの関係者は,それから,若者といかに丁寧に取り組むか,いか にして援助の雰囲気が作られるか,快適に作られた部屋の中でどんな効果が生 まれるかを学んだ12。

 結局,「この数年,デンマークの模範にインスピレーションを得て,ドイッ

においても生産学校が作られ,職業の学校に生産に方向付けられた活動の形

態が実践されている」のである13。

(16)

 以上のようにデンマーク生産学校の影響がドイッに於いて強い。が,生産 活動の教育的意義の基本理念は古典的なところにある。2000年にハンブルクに

おいて開催された第11回職業教育大学会議(i1. Hochschultagen Berufliche Bildung)は,生産学校を取り上げた。その記録書には,興味深い仮想座談会 が収録されている。

 そのテーマは,学校,労働と生産の結びっきである。司会は,Martin Kipp

で,Thomas Johanssenが現在の生産学校を紹介し,それを受けてKarl

Marx, Georg Kerschensteiner, John Deweyが議論している。その結論は,

この三者には対立点はなかったである14。

デンマークとの違い

(1) ドイッには生産学校法はない

 ドイッの生産学校とデンマークのそれとの決定的な違いは,ドイッには生産 学校に関する法律がないことである。基礎的な交付金が無く,あった場合も法 的裏付けがないため財政的に不安定であることである。

 生産学校は,国の学校ではなく,いわゆる(ドイッでの)「独立担い手団体」

(freie Traegerschaft)による学校であるが,私立学校法の意味での私立学校 であるかどうかは,あいまいである。カッセル生産学校が認定を受けた Ersatzschule(代替学校)について説明しておこう。

 Ersatzschule(代替学校)は,学校修了資格を出すことができる。例えば,

夜間ギムナジウム,夜間基幹学校もこれにあたる。これに認定されることは,

生産学校では重要である。なぜなら,基幹学校未修了者が在学の若者に多く,

基幹学校修了資格がないとデュアルシステムに乗ることが出来ないため,基幹 学校修了資格を充たすことができるからである。

 この代替学校は,「独立担い手団体の学校」(Schulen in freie Traeger−

schaft)として州あるいはハンブルクのような特別市(日本の政令指定都市に

あたる)が定めた学校法に規定され,そのうえでそのたあの独自の法律が制定

されている。ヘッセン州のように独立の法律を持たない場合もある。代替学校

の代替という意味は,公立学校の代替という意味で,わかりやすく言えば,私

(17)

ドイツ,デンマーク生産学校のデッサン 17

立学校である。

 生産学校が,/この代替学校認可の対象になる可能性は,職業訓練を個人に促 進する連邦法という題のついた連邦職業訓練促進法(Bundesausbildungs−

foerderungsgesetz−BAfoeG)によっている。この法律は,職業訓練生が生計 と職業訓練のために効果的な手段を持たない場合に,適切な職業訓練のための 権利請求権が個人にあることを定めている。そして,代替学校が職業訓練促進

にあたれることを定めている。

 代替学校の認定を受けなければ,生産学校が政府・自治体から補助金を受け られないわけではない。ハンブルク・アルトナ生産学校の場合,1997年に社会 民主党と緑の党との連合ハンブルク市政が,生産学校を試行することを協定し

たが,学校行政が生産学校の職業準備教育に抵抗し,結局1999年の発足時にハ ンブルク市の学校法の枠外,すなわち代替学校としてではなく,行われること になった。そのことは,行政の態度からだけではなく,運営者の中でも認定を 受けることによる,行政からの束縛を嫌うこともあった。

 しかし,そうであっても,ハンブルク・アルトナ生産学校の場合は,社会民 主党・緑の党の連合政権の下で,財政的には市からの補助金が予算の70%を占 めている。それにたいし,カッセルのBuntstiftによる生産学校の場合は,職 業教育準備年や AufKurs という学校不登校者の職業訓練のプロジェクト

に対する州,市の補助金や,市からの青年援助,EUの社会ファンドなどから の補助金が多くの部分を占めており,単純に代替学校に認定されたからといっ て,それにかかわる補助が出るわけではなさそうである。ッァーレンドルフ生 産学校の場合は,職業教育準備年や中等学校生徒へのインターシップのプロ

ジェクトに対する市と州の補助金は予算の四分の一を占めているに過ぎず,6 割近くが付属する青年宿舎事業に対する補助金である。ということは,この両 者の場合事業補助による援助だということである。

 事業による補助だと言うことは,その事業が行われる根拠法があるのである。

それには,先述した職業訓練促進法のほかに,児童・青年援助法(Kinder−

und Jugendhilfe Gesetz)の特に13条,職業教育法(Berufsbildungsgesetz)

第2部第4章の職業訓練準備規程などである。

(18)

 いくっかの事例で財政の特徴を紹介した。この状況は,デンマークの生産学 校と明らかに異なっている。デンマークでは,法により基本補助金(日本で言 う運営交付金のようなもの)が出されているからで,そのような安定性はドイ ツの場合はない。ハンブルクの場合,市から基本補助金が出ているので安定し ているように見受けられるが,これも市の政治次第という面をもっており,安 定しているといいきれない。そのため,ツァーレンドルフでは,成人の失業者 も受け入れ,そのための補助金を得ており,経営者にとっては,毎年,補助金 を得るための活動が重要な仕事になっている。

 とはいえ,それらの補助金の算出の場合に,事業に必要な人員数と毎年全国 の産業別労働組合と使用者との間で協定される基本賃金を基準にしていること は,我が国のNPOへの補助金との違いを示している。余談になるが,カッセ ルの生産学校で聞いた話では,社会教育専門職と職業訓練指導員との賃金基準 に差があるため,それが果たして正しいのかどうかぎうんになるという。

 例外的なのは,ミュンヘンの生産学校である。ここでは生産学校は市立であ

る。

(2)職業訓練準備事業とデュアルシステムとの結合

 ドイッの生産学校の事業は,いくっかのタイプがあるが,対象になっている のはデンマーク生産学校と同じく,正規の職業訓練一デュアル・システムに乗 ることの出来なかった青年である。この若者をドイッでは不利益青年と呼んで いる。学校中退者,成績不振者,あるいは学習・職業訓練意欲喪失によって,

職業訓練の機会,就業機会を得ることのできなかった者である。その教育目的 は,基本的にデンマークの生産学校とは変わらない。生産と販売のよる労働の 現場が,学校である。授業料は無料で,若者には手当が支給される。

 まず共通している事業は,職業訓練準備事業である。これは,職業訓練法第

2部第4章の職業訓練準備と職業促進法第61条の職業準備訓練事業に規定され

ている。前者は,認定職業訓練に適応できない学習疎外者,社会的不利益者に

たいする事業である。後者は,職業訓練の参入に失敗した青年を対象に,学校

法によらず職業訓練への参入を目指す事業である。そのたあに,基幹学校未修

了者にその資格を与えることもあげている。また,外国人も対象にしている。

(19)

ドイツ,デンマーク生産学校のデッサン Ig

 この職業訓練準備事業と職業準備訓練事業は,対象者が同じであり,重なる が,正規の職業訓練に移行することを目的としている。ハンブルク・アルトナ 生産学校,ツァーレンドルフの生産学校は,この事業のみであるが,カッセル の生産学校,オッフェンバッハ生産学校,ブレーメンハーフェンの生産学校で は,このうえにデュアルシステムを接続させている。厳密に言うと,生産学校 を経営する法人が,生産学校とデュアルシステムの職業訓練を持つのであり,

生産学校はデュアルシステムの前段階を指す。

 ハンブルク・アルトナとツァーレンドルフで聞いた話では,職業訓練準備を 生産学校で終わっても,デュアルシステムに受け入れてくれるとは限らないと いう。そこで,修了後,数は少ないが生産学校の職員として受け入れている若 者も生まれてくる。

 若者にとってみると,デュアルシステムが接続されている場合には,自分の 展望を見ることができやすいという利点がある。ドイッでは,デュアルシステ ムのための事業所での訓練の場が不足していることから,普通の企業以外で行       l

われる訓練の場が作られている。例えば,カッセルではヤフカと呼ばれる公益 有限会社がある。生産学校め場合にも,それに当てはまる。したがって,生産 学校を経営する法人自体が,事業体と見なされ,職業訓練の場を提供すること

になる。

 カッセルのBuntstiftの場合には,このデュアルシステムの訓練の場と生産 学校のそれとが同じになっている。オッフェンバッハの場合には,これが分離

されており,同じ敷地の中に生産学校の訓練場とデュアルシステムの訓練場が 分かれている。

(3)多様な事業

 ッァーレンドルフの生産学校は,青年宿舎(Wohngemeinschaft)を持って いる。この宿舎には,家庭での虐待や親の離婚などにより,家庭にいられなく なり,不登校になった若者が入り,共同生活を営みながら生産学校に参加する。

共同生活をして,自分で生活を管理できるようになると,同じ宿舎の中の個室

にはいることができる。寄宿生は,全国から来る。寄宿生が住んでいた自治体

の青年局の紹介で来るわけである。この補助金は当該の自治体から出される。

(20)

 職業訓練の分野は,先の表のように,デンマークと比べて手工業が多い。そ の理由は,デュアルシステムの分野に対応していると考えられるが,根底には 手工業にっいての歴史的に作られた文化があるかもしれない。デュアルシステ ムは無くなるかもしれないと言われながらも,今のキリスト教民主同盟と社会 民主党の連立政権は,デュアル制度の維持を政策協定にしている。

 次の事例も特色がある。カッセルの生産学校は,市と協定を結んで,家庭か ら廃棄された電化製品を集め,リサイクルする技術を身に付けると同時に,リ サイクルした製品を販売する。この中から,電気技術の部門が生まれている。

ツァーレシドルフの家政・調理部門では,敷地の農地で栽培した農作物を材料 に使用している。モルッブルクの生産学校では,昔の水車小屋を改造して,水 力発電装置を作り,生産学校で使用するとともに,余った電気を周辺に販売し

ている。

 生産技術の身の付け方は,基本的に注文生産で,デンマークと同様にチーム を組んで行っている。しかし,それとは別に,金属加工では,金属を削る,事 務部門では電話の受け方,かけ方などの技術的指導を行っている。

 この注文生産には,ジーン・レイブがデンマークについて指摘したジレンマ がある。生産品にっいては,地元の手工業会議所や商工会議所と協議する機会 を設けてはいるが,ツァーレンドルフでは軋礫が生じた。

 ッァーレンドルフの生産学校には,自動車整備の部門がある。この部門は,

若者に人気があり,彼らの意欲を引き出す適切な部門である。しかし,地元の 事業所にとっては仕事を奪われることになるため,彼らから注文生産にクレー ムがっいた。そこで,生産学校では,この部門を会社組織にすることによって,

そのクレームをかわしている。

 こうした多様さがあるが,デンマーク.と同様に,生産の場が学校である。そ

れは,ツァー一 激塔hルフ生産学校の校長が説明したように,「学校では,生徒

が製作したたとえば塀だと,それを壊してその材料を次の訓練に使うが,ここ では壊さずに販売する」という現実の生産である。現実性をより獲得するため

に週一日は事業所に実習に行っている。

 参考のために,ハンブルク・アルトナ生産学校の標準的な週時間割を示して

(21)

ドイツ,デンマーク生産学校のデッサン 21

時間 月曜日  火曜日 水曜日 木曜日 金曜日

8:00−10:00

一般教養の教授 一般教養

ウ授

英語/作

ニ所

10:00−10:30 会食(朝食)

校外実習

会食(朝食)

10:30−12:30

作業所 英語/作業所

12:30−13:15 会食(昼食) 会食(昼食)

13:15−5:00 作業所 作業所

    注:一般教の教授は,ドイツ語,数学,社会科などで英語の授業       とともに,基幹学校修了資格取得試験準備科目になる。

おこう。

(4)社会教育専門家の配置

 ドイッの生産学校がデンマークと異なるのは,社会教育専門家を配置してい ることである。ドイッの法律では,青年援助や職業訓練援助に社会教育専門家 の必要性を規定している。(ドイッの社会教育概念にっいては,『人文学報』

370,2006を参照されたい)

 児童・青年援助法第13条は,社会的不利益の平等化あるいは個人の損害の克 服のために,学校,労働世界,職業教育への統合を援助するが,適切な社会教 育活動を伴った職業訓練/教育,就業措置が必要であることを規定している。

職業促進法第61条では,職業訓練生には社会教育の援助が必要なこと,第241 条では職業準備訓練事業では言葉と教育の損害の回復,職業実践と職業理論の 促進とならんで,職業教育/訓練には社会教育の参加/援助が必要であること を定め,この種の職業教育/訓練を「社会教育に方向付けられた職業教育/訓 練」(die sozialpaedaogischerorientierte Berufsbildung)と呼んでいる。ま

た,職業教育法第50条は職業訓練準備事業では「社会教育的世話と援助」は必 要なことを規定している。

 したがって,職業学校,商工会議所が行う職業訓練,青年作業所などに社会

教育家が配置されている。生産学校も例外ではない。それでは,「社会教育に

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方向付けられた職業教育/訓練」とは,なんであろうか。これは,職業訓練の 際に,人格の全面的な発展を促進するために職業訓練及び学習にそれを位置づ け,職業訓練と社会環境に問題が生じた場合,若者の相談に応じ,学習拒否,

意欲欠如などの重要な問題に若者が自ら解決できるように取り組むことである。

 Ute Schlewski(ウテ・シュレブスキー)は不利益青年の職業訓練における 社会教育家の役割を調査した15。それにによれば,不利益青年の職業訓練施設 での社会教育家の役割は,ひとっは全体の学習計画の作成,補助金をもらうた めの労働局や青年局との折衝,生徒の評価を含んだ報告書の作成という経営に 関することから,薬害対策,労働生活の援助などの個人に対する生活指導,グ ループ活動の援助,課外活動の組織化,さらにドイッ語や数学の授業の担当な ど多岐にわたっている。

 シュレブスキーは,社会教育専門家と職業訓練指導員とのチームワークが大 切なことを指摘している。そこには,職業訓練指導員と社会教育専門家の訓練 生の状況・意見の交換から,両者が参加した若者への個別の助言がある。しか し,社会教育専門家が,職業訓練の内容を熟知していないことが,問題だと指 摘している。

 しかし,社会教育専門家の位置づけは,各生産学校で違いがある。ハンブル ク・アルトナ生産学校では,社会教育専門家はおらず,教員資格を持っている だろう教育職員が1名いる。オッフェンバッハの生産学校にはおらず,そのう えのデュアルシステムの部門に,職業訓練指導員が7人,教師が1.5人,社会 教育専門家が2.5人いる。教務主任は,職業訓練指導員と社会教育専門家との 協力が必要であること,生産学校では職業訓練指導員が社会教育の資格を得る ことが望ましいが,デュアルシステムの方では,職業訓練の質が高いから,そ れに専念する必要があるという意味のことを言っていた。

 カッセルの生産学校では,ドイッ語の授業は外国人のためもあって専任教師

をおき,基幹学校終了を目指す授業には,基幹学校教師の協力を得ている。訓

練生の生活指導・助言には,社会教育家の力が必要だと認めており16,社会教

育家が訓練指導員とともに若者の指導に当たっている。しかし,労働生活を通

じての社会的能力,人間同士の,個人のそして集団生活の振る舞い,態度にっ

(23)

ドイッ,デンマーク生産学校のデッサン 23

いての援助という社会教育家の役割をs全職員の会議をっうじて皆の者にしよ うとしている。特に職業指導員への期待が大きい。社会教育的技術/知識,

「Know−how」が職業訓練指導員の社会的能力と経験に培われた教育能力に統 合されなければならないとしている17。職業訓練指導員が社会教育的能力を身

に付けることが望ましいと考えていることになる。

 そうすると,社会教育家のディプロマ(大学卒業資格)と何らかの職業訓練 資格をもった者が良いことになる。例えば,ツァーレンドルフの生産学校の専 門職員配置は次のようになっている。

A:法人の責任者,自動車整備工,社会教育専門家,社会福祉運営修士,グ  ループ活動の指導と助言も担当

B:スポーッ・教育科学修士,Mediator,スポーッセラピーおよび青年宿舎責  任者

C:生産学校で販売を学ぶ。ガストロ・ケアテリング指導,職業訓練指導員適  性試験合格

D:社会教育専門家,青年宿舎担当

E:社会教育専門家。教育科学修士,青年職業援助のコーディネイト F:保全機械工,治療教育者,職業訓練指導員適性試験合格,作業所調整 G:社会教育専門家,社会集団における危機介入,グループダイナミックス過  程の助言とコーチング,青年宿舎担当,

H:銀行員資格,社会教育専門家,紛争・葛藤助言者,メディアトア,青年宿  舎担当

 (見学したところでは,自動車整備工場や調理にこれ以外にも職員がいたが,

 その人たちの資格は今のところ不明である)

 このように,社会教育専門家には自動車整備工,銀行員という他種の職業資 格を持っているものがいることには注目して良いだろう。シュレブスキーは,

若者を理解し,援助するために社会教育専門家の資格を取った職業訓練指導員 に注目している。ツァーレンドルフは,青年宿舎があるために社会教育専門家 が多い。それは,ドイッの社会教育が社会福祉の側面を持っていることの表れ

でもある。

(24)

 以上のように,社会教育専門家の位置づけは,生産学校により異なっている。

しかし,青年を指導・援助する必要性は認められている。問題は,それと職業 訓練指導との関係である。社会教育専門家と職業訓練指導員との協力関係で行

くか,それともダブル資格で行くかが課題である。

 なお,あわせて『日独社会教育学における青少年自立援助システムの比較研 究一平成16〜18年度科学研究費補助金(基盤B)成果報告書』(代表者大串隆 吉),2007年3月も参照、されたい。

1 生産学校法は,たびたび改正されており,この論文で引用する生産学校法は2001年時  のドイッ語訳からの重訳である。最新の改正は,2005年6月である。なお,ドイッ語訳  で不明確なところは,原文を参考にした。

2 Retention in Vocational Education in Denmark l Backgrund,2005, Under−

visinings Ministeriet,デンマーク教育省.         F     \.

3 佐々木正治『デンマーク国民大学成立史の研究』風間書房,1999,445p

4 Roland Schoenner:Vergleichende Studie zum aktuellen Entwicklungsstand von  Produktionssghulen in Daenemark, Oestreich und Deutschland, Technische

 Universitaet Chemnitz,2004, S.36,37

5 Verner Ljung:Die Daenischen Produktionsschulen−Eine Beschreibung, Mai  1997.Herausgeben von Foreiningen for Produktionssckoler og Produktion−

 shoejskoler. S.2.この文書は, Ljung氏よりいただいたものである。1999年7月9日に  職業専門教育のための会議で報告された。

 http://us.uvm.dk/erhverv/produktion/internationalt/にも収録されている。

6 佐々木正治前掲書,483,484p 7 Verner Ljung前掲稿       8 Verner Ljung 前掲稿

9 Martin Mertens/Marion Guempe1:Die Kasseler Produktionsschule, Cortina  Genter/Martin Mertens(Hg.)Null Bock auf Schule?,2006, Waxmann Muenster  S.191

10 Thomas Rapp:Das Herz der Schule ist die Produktion,2004 Berlin, S.13

11Andreas Hammer:Relevanz produktionsorientierter Paedagogik im SpanningS−

 feld sich veraendernder oekonomischer Bedingungen, Martin Kipp/Rhomas Rapp

 (Hg.), Produktionsschule,2004, Bilefeld, S.139

12 Ein kurzer Blick auf die Geschichte von gestern bis heute, 2006,

(25)

ドイッ,デンマーク生産学校のデッサン z5

 http://www.produktionsschule −altona.d6/konzept.html

13Martin KipP:Produktionsorientierung und Produktionsschuleh−eine Ein−

 fuerung, Martin Kipp/Joergen Luetjens/Guenter、Spreth/Gabriele Wise(Hg.)

 Produktionsorientierung und Produktionsschulen,2000, Bielefeld, S.5

14 Thomas Rapp:Zur Kombination von Schule, Arbeit und Produktion−Ein

 (leider)nie gefuehrtes Str臼itgespraech zwischen Karl Marx, Johll Dewey undd

 Georg Kerschensteiner,前掲書S.12〜27

15 Ute Schlewski:Handlungsstrategien von Sozialpaedagoglnneh in der beruflichen  Qialifizierung benachteilger JU gendlicher, Peter Lang,2001

16前掲:Null Book auf Schulle?, S.201

17 前掲:Null Book auf Schule?, S.252.

参照

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523/8 727/11 1739/26 1284/19 764/11 2726/39 1220/17 1412/19 134/2 814/12 1099/16

平均 4月分 5月分 6月分 7月分 8月分 9月分 平均 1. 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28

朝活動・朝の会 8:05 ~  8:25 1 限目 8:30 ~  9:20 2 限目 9:30 ~ 10:20 3 限目 10:30 ~ 11:20 4 限目 11:30 ~ 12:20 昼食(給食)

順位 男性 女性 1 デンマーク ニュージーラン ド 2 ポルトガル オーストラリア 3 オーストラリア 英国 4 英国 ポルトガル 5 ドイツ デンマーク 6 カナダ カナダ 7 スペイン 米国

30 2 回数 日程 授業形態 1 10月4日 演習 2 10月11日 演習 3 10月18日 演習 4 10月25日 演習 5 11月8日 演習 6 11月15日 演習 7 11月22日 演習 8 11月29日 演習 9 12月6日 演習

10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35   36   37   38   39   40   41  

10−11時 11−12時 12−13時 13−14時 14−15時 15−16時 16−17時 17−18時 18−19時. 10−11時 11−12時 12−13時 13−14時 14−15時 15−16時 16−17時