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博士(農学)三木慎介 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)三木慎介 学位論文題名

イネいもち病菌の非病原性遺伝子4 VR ー尸励の クローニング及び励グぬto 発現解析

学位論文内容の要旨

   本論文は,全7 章からなる総頁数 177 ページの和文論文である.論文には図 41 , 表 61 , 引 用 文 献 101 が 含 ま れ , 別 に 参 考 論 文 2 編 が 添 え ら れ て い る .    い も ち病 は イネ の 最重要 病害であり ,子嚢菌に 分類される イネいもち 病菌 (Magnaporthe oryzae) によって引き起こされる,いもち病防除は主としていもち病 抵抗性遺伝子を持つ抵抗性品種と農薬の利用によって行われているが,圃場に導入 した抵抗性品種の罹病化は,依然として阻止すべき重要課題として残されている,

本菌の宿主特異性は,遺伝子対遺伝子説に基づき,宿主の保有する抵抗性遺伝子と それに特異的に対応する病原菌の非病原性遺伝子により決定されている.これまで に,40 以上のイネいもち病菌の非病原性遺伝子が発見されているが,クローニング に至った非病原性遺伝子は7 遺伝子と少ない.そこで本研究では,日本産イネいも ち病菌 Ina168 株から,イネ品種愛知旭の持っイネいもち病抵抗性遺伝子Pia に対応 した非病原性遺伝子イVR‑Pia のクローニングを行い,突然変異機構,およぴ宿主植 物内(加planta) での発現・機能の解明を目指した,

1 .非病原性遺伝子A VR‑Pia のクロ一二ング

   イVR‑Pia 遺伝子を含むと考えられる,Ina168 株由来コスミドクローン46F3 から,

本遺伝子のクローニングを行った. 46F3 の細分化を行い,これをイVR‑Pia 欠損変

異 株 (Ina168m95‑1) に導入し,相補試験を行ったところ,最終的にVR‑Pia 遺伝子

は 255 bp のORF (open reading frame) であることが分かった.本遺伝子のコードす

る 予測アミノ酸配列のうち N 末端側19 アミノ酸が分泌に関わるシグナル配列であ

ると予測され,成熟イ VR‑Pia タンパクは 66 アミノ酸,予想分子量7 ,382.33 の低分

子量タンパクとして細胞外ヘ分泌され機能していることが示唆された,また,Ina168

株はイ VR ーPia 遺伝子を3 コピー,同一染色体上に保有する一方,Ina168m95 ー1 株に

はイVR‑Pia 遺伝子が存在せず,全てのコピーを失う欠損変異が起こったと考えられ

た.さらに,圃場分離株では抵抗性遺伝子 Pia に非病原性を示すいもち病菌株にお

いてのみ1 〜2 コピー存在し,さらにイネ以外を宿主とするいもち病菌にもそのホモ

ログが存在することが分かった.

(2)

2 .非病原性遺伝子A VR ―F 怕のmp 艪nfa 発現解析

   イ 職一 P ぬ 遺 伝 子 の 発 現 を 確 認 する た め に , 液 体 培 養 し た Ina168 株 の菌 体及 ぴ Ina168 株 を 感 染 さ せ た イネ 葉 身 か ら RNA を 抽 出 し , RT ‐ PCR 解 析 を 行 っ た , そ の 結果 ,液 体培養 時で は発 現は 確認 でき なか った が, いも ち病 菌感染イネ葉身では発 現が 確認 され, イ艨 ‐P 級遺 伝子 はイネ感染時特異的に発現する遺伝子であることが 明 ら か と な っ た , さ ら に , 本 遺 伝 子 の 転 写 領 域 を 明 ら か に し た .    次に遺伝子発現時期にっいてqRT ーPCR (quantitativeRT −PCR )により解析した.遺 伝子発現は菌株・イネ品種の組合せに関係なく18 〜24hpi (hourspostinoc .ulation , 接種 後経 過時間 )の 間に 転写 開始 され ,そ の後 ,親 和性 の組 合せでは少なくとも60 hpi ま で 発 現 す る こ と が 分 か っ た .一 方 で ,非 親和 性の 組合 せで は30hpi か ら発 現 量が 低下 し,36hpi には 発現 が確 認で きなく なっ た, 後者 にっ いては,イ職‐P ぬ遺 伝 子 によ っ て P ぬ抵 抗性 遺伝 子に よる 過敏 感反 応が 誘導 された ため ,い もち 病菌 が 死滅したのが原因と考えられた.

   最 後に ,AVR 一Pia タン パク の発 現部 位を ,非 切断 葉鞘 裏面 接種法を用いて解析し た, その際,イレ賀―P ぬ遺伝子,スベーサー配列,eGFP (enhancedgreennuorescent protein ) レポ ータ ー遺 伝子 を連 結した融合遺伝子を固有プロモーターにより発現さ せ た ,螢 光 顕 微鏡 観察 の結 果,イ 珊一 P ぬ 遺伝 子は ,イ ネ感染 後18 〜24 時間 後か ら 転写され,そのタンパクは侵入菌糸においてBIC (biotrophicinterfacialcomplex )部位 に局在後,宿主細胞ヘ分泌されているものと示唆された.

   以上の結果から,イレR −P 級はトランスポゾンなどの反復配列に富む領域に存在し,

欠失 変異 を受け るこ と, また イネ 感染 時特 異的 に転 写さ れ, そのタンパクは宿主細

胞中 に分 泌され てい るこ とが 示唆 され た. 本研 究成 果は ,日 本産菌株から初めて非

病原 性遺 伝子を クロ ーニ ング した 例で あり ,さ らに その 突然 変異,遺伝子の発現及

びそ のタ ンパク の局 在に っい て明 らか にし た. 抵抗 性崩 壊の メカニズムの解明など

の, 今後 のいも ち病 研究 に対 して 大き く貢 献で きる と考 えら れる.よって審査員一

同は ,三木慎介が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認めた.

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学位論文審査の要旨

主 査    准 教 授    曾 根 輝 雄 副 査    教 授    淺 野 行 藏 副 査    教 授    上 田 一 郎 副 査    客 員 教 授 今 井 亮 三 副査   特任准教授田中みち子

学 位 論 文 題 名

イネいもち病菌の非病原性遺伝子 A VR‑Pia の クローニング及び励 planta 発現解析

  本論文は,全7章からなる 総頁数177ぺージの和文論文 である。論文には図41,表61,引用 文献101が含まれ,別に参考論文2編が添えられている。

  いも ち病 はイ ネの 最重 要 病害であり,子嚢菌に分類されるイネいもち病菌(Magnapor the oryzae)によって引き起こされる,いもち 病防除は主としていもち病抵抗性遺伝子を持つ抵抗 性品種と農薬 の利用によって行われているが,圃場に導入した抵抗性品種の罹病化は,依然と して阻止すべ き重要課題として残されている.本菌の宿主特異性は,遺伝子対遺伝子説に基づ き,宿主の保 有する抵抗性遺伝子とそれに特異的に対応する病原菌の非病原性遺伝子により決 定されている .これまでに,40以上のイネいもち病菌の非病原性遺伝子が発見されているが,

クローニング に至った非病原性遺伝子は7遺伝子と少たい,非病原性遺伝子の変異機構や,ま たそれらに共 通する特徴・機能を解析するには,数多くの非病原性遺伝子をクローニングする 必要がある.

  そこで本研 究では,日本産イネいもち病菌Ina168株から,イネ品種愛知旭の持っイネいもち 病抵抗性遺伝 子Piaに対応した非病原性遺伝子AVRーPiaのクローニングを行い,突然変異機構,

および宿主植 物内(in planta)での発現・ 機能の解明を目指した.

1.非病原性遺伝子AVR‑Piaのクローニング

  VR‑Pia遺伝子を含むと考えられる,Ina168株由来コス ミドクローン46F3から,本遺伝子の クローニング を行った.46F3は38.6 kbの インサートを持ち,その中には多数のトランスポゾ ン などの反復配列が存在していた.そこで,これらを除 けるように領域をIからVIの6っに分 け ,各領域をPCRを用いて増 幅し,クローニングした.イVR‑Pia欠損変異株(Ina168m95‑1)に 導 入し,相補試験を行ったところ,領域Vだけが抵抗性遺伝子Piaに対する非病原性を相補し た.本領域を さらに細分化し,遺伝子存在位置を絞ったところ, VR‑Pia遺伝子は702 bpの領     ー1305−

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域 (領 域Vq)に存在することが明らかとなった.その領 域に対して1塩基挿入変異を 導入し,

非病原 性相補実験を行った結果, VR‑Pia遺伝子は255 bpのORF (open reading frame)であるこ とが分 かった,本遺伝子はバクテリアが持つcytochromec family proteinの1部の配列と弱い相 同 性(33%) を持ち,予測アミノ酸配列のうちN末端側19アミノ酸が分泌に関わるシ グナル配 列 であ ると 予 測さ れた .従 って ,成 熟VR‑Piaタンパク は66アミノ酸,予想分子量7,382.33 と推定 され,低分子量タンパクとして細胞外ヘ分泌され機能している可能性が高いことが示唆 された .また,サザン解析の結果,Ina168株はイVR‑Pia遺伝子 を3コピー保有しており,これ ら は全 て同 一 染色 体上 に位 置し てい た一方,Ina168m95‑1株にはVR‑Pia遺伝子が存 在せず,

全ての コピーを失う欠損変異が起こったと考えられた.さらに,圃場分離株では抵抗性遺伝子 Piaに非病原性を示すいもち病菌株に・おいてのみ1〜2コピー存在し,さらにイネ以外を宿主と するいもち病菌にもそのホモログが存在することが分かった.

2.非病原性遺伝子AVRーPiaのin planta発現解析

  VR‑Pia遺 伝子の発現を確 認するために,液体培養したIna168株の菌体及ぴIna168株を感染 さ せた イネ 葉 身か らRNAを 抽出 し,RT‑PCR解析を行った.その結果,液体培養時で は発現は 確認で きなかったが,いもち病菌感染イネ葉身では発現が確認 され, VR‑Pia遺伝子はイネ感 染時特 異的に発現する遺伝子であることが明らかとなった.さらに,本遺伝子の転写領域は,

イント ロンを含まず遺伝子上流‑115〜‑84の塩基から始まり,終止コドンの63〜88塩基下流に 亘 っ て い る こ と がRACE (rapid amplification of cDNA ends)法 に よ り 判 明 し た ,   次に遺伝子発現時期にっいてqRT‐PCR(quantitativeR.T―PCR)により解析した.遺伝子発現は 菌株・イネ異品種の組合せに関係なく18〜24hpi(hourspostinoculation,接種後経過時間)の間 に転写 開始され,その後,親和性の組合せでは少なくとも60hpiまで発現することが分かった,

一 方で ,非 親和性の組合せ では30hpiから発現量が低下 し,36hpiには発現が確認で きなくな っ た. 後者 にっいては,m便やぬ遺伝子によってPぬ抵抗性遺伝子による過敏感反応 が誘導さ れたため,30hpi以降いもち病菌が死滅したのが原因と考えられた.

  最後に,ハ限‐Piaタンパクの発現部位を,非切断葉鞘裏面接種法(KogaH.efロZ.,2004)を用 いて解 析した,その際,イレ賀やね遺伝子,スペーサー配列,eGFP(enhancedgreennuorescent protein)レポーター遺伝子を連結した融合遺伝子を固有プロモーターにより発現させた.形質 転換体 の胞子は,発芽し付着器を形成した後,27hpiには付着器から葉鞘細胞へ侵入,初期侵 入菌糸 を形成し,その後30hpiには 球状菌糸を形成した.その後,48hpiには隣接の第2細胞,

60hpiに は第3細胞 へと 繊維 状侵 入菌 糸を伸ぱしていた .eGFP融合タンパクは,27hpiにおい て初期侵入菌糸の先端に局在したが,30hpiには球状菌糸のBIC(biotrophicinterf託ialcomplex) 部 位に 局在 した.同様の現 象が60〜64hpiにおいて,第3感染細胞の繊維状侵入菌糸 の先端及 び球状 菌糸のBICで観察された.以 上から,イ鰡やぬ遺伝子は,イネ感染後18〜24時間後から 転 写さ れ, 侵 入菌 糸に おい てBICに 局在 後;宿主細胞ヘ分泌されているものと予想 された.

  以上 の結果から,非病原性遺伝子m儷‐P辺はトランスポゾンなどの反復配列に富む領域に存 在し, 欠失変異を受けること,またイネ感染時特異的に転写され,そのタンパクは宿主細胞中 に分泌されていることが示唆された.

本研究 成果は,日本産菌株から初めて非病原性遺伝子をクローニングした例であり,さらにそ     ー1306―

(5)

の突然変異,遺 伝子の発現及びそのタンパクの局在について明らかにした.抵抗性崩壊のメカ ニズムの解明な どの,今後のいもち病研究に対して大きく貢献できると考えられる.よって審 査員一同は,三 木慎介が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有 するものと認めた.

1307

参照

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