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都市モノレールの導入が周辺地域に与える影響に関する研究
― 沖縄県を事例として ―
政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU15611 仲里 太一
1 はじめに
自動車交通の増加に伴い激しさを増す道路混雑に対応 するため、各都市においてはその規模や人口に応じた都市 内公共交通機関を導入し、自動車交通から公共交通への転 換を促すことで交通量の分担を図っている。鉄道等の交通 インフラの導入は道路混雑を緩和させるだけでなく、その 周辺地域の住環境を改善し、土地建物の利用形態や沿線地 域への立地促進等にも影響を及ぼすことになる。交通イン フラの整備、導入が周辺地域に及ぼす影響を分析する研究 は幾つかあるが、首都圏や比較的規模の大きな都市を対象 としたものが多く、地方都市において導入が検討されるこ との多い中量軌道システム単独の整備効果を分析した例 は少ない。そこで、本研究では2003年に都市モノレール が導入された沖縄県を事例とし、都市モノレールの導入が 周辺地域にどのような影響を与えているのかを分析する とともに、その効果をより高めるためにはどのような政策 を行うことが効果的であるのかを検証する。
2 背景
2.1 都市モノレールの概要
都市モノレールの整備の促進に関する法律(昭和47年 11月17日法律第129号)において、都市モノレールとは
「主として道路に架設される一本の軌道桁に跨座し、又は 懸垂して走行する車両によって人又は貨物を運送する施 設で、一般交通の用に供するものであって、その路線の大 部分が都市計画法第 5 条の規定により指定された都市計 画区域内に存するもの」と定義されている。
都市モノレールの特徴として、道路や河川、公共用地等 の上空に占有軌道を設けるため道路交通の影響を受けず に運行することができ、定時・定速性に優れていることが ある。また、カーブや急勾配にも対応できるため、既に都 市化が進んでいる地域においても柔軟な路線の選定が可 能となる。その他にも、公共空間の上空を利用するため新 たな用地取得が少なくて済むこと、電気動力であるため大 気汚染がないこと、ゴムタイヤを使用することにより騒音、
振動等の周囲に与える影響を小さくすることできること 等の特徴がある。他方、輸送力や速達性はそれほど高くな いため、都心部と郊外部の間や市内の各拠点を連絡する等、
中距離程度の移動に適しているとされている。
2.2 沖縄県における都市モノレールの利用実態
沖縄県では慢性的に発生する交通渋滞に対応するため、
2003年8月に都市モノレールを導入している。
図 1 沖縄都市モノレールの路線図
出典:沖縄県土木建築部都市計画・モノレール課 HP
都市モノレールの1日あたりの平均乗客数は2003年の 31,905 人から2014年には41,447人まで増加している。
また、那覇空港を利用する者の4分の1が都市モノレール を利用しているとされており、観光目的での利用が多いこ とも沖縄都市モノレールの特徴である。
沖縄県が実施した利用実態調査によると、都市モノレー ルの利用者は出発地、目的地ともに駅から600mの駅勢圏 内からの利用が全体の約70%を占めているとされている。
これに対し、駅勢圏外や隣接市町村からの利用は少なく、
都市モノレールは沿線からの利用が中心になっているこ とがわかる。
3 都市モノレール導入が地価に与える影響 3.1 都市モノレールの導入による影響
都市モノレールの導入により都市内の交通需要がモノ レールと自動車に機能的に分担されるため、道路混雑の緩 和が図られる。また、都市モノレールは道路交通の影響を 受けないため、慢性的な道路混雑が発生する地域において は移動時間の短縮効果がある。このような効果は「利用者 便益」として費用便益分析でも計上されているものである。
利用者便益以外にも、都市モノレールが整備されること によって都市内の移動や駅に直結する空港、病院、商業施 設等へのアクセスが良くなる等、地域住民の交通利便性が 向上する。また、居住者の移動手段や居住地選択の範囲が 広がること、駅利用者や観光客等の人の流れが増加するこ とによって商業施設等の立地や集積が進む等、その地域の 利便性を向上させる効果があると考えられる。
他方、都市モノレールの運行に伴う騒音や振動等の発生、
道路等の上空に高架橋や駅舎等が設けられることによる
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景観や日照の悪化等の側面もある。また、都市モノレール の利用者の増加や商業施設等の集積によって駅周辺では 騒音や交通量が増加するなどの影響も考えられる。このよ うな影響は都市モノレールの外部不経済であると言える。このように都市モノレールの導入には利用者便益の他 に地域利便性の向上や外部不経済の効果があり、これらの 効果の合計が総合的な外部効果として周辺地域に発生す ると考えられる。社会資本整備により発生する便益が最終 的には地価に帰着するとするキャピタリゼーション仮説
(資本化仮説)を前提とした場合、都市モノレールの導入 が地域の魅力を向上させているのであれば、周辺地域の地 価は上昇することになる。
図 2 都市モノレールの導入による影響
3.2 都市モノレールの効果が及ぶ範囲に関する仮説 沖縄県において都市モノレールが導入されてから既に 10 年以上が経過しており、現在では住民や観光客の移動 手段として定着し、その利用者数も年々増加傾向にある。
その一方、都市モノレールの利用実態として、沿線外から の利用が少ないことやモードの転換が十分に進んでいな いことが課題とされている。都市モノレールの導入により 周辺地域では交通アクセスが良くなる等、地域の利便性が 向上していると考えられるが、その反面、利便性向上の効 果が及んでない地域では都市モノレールの利用価値が相 対的に低くなり、その利活用が進んでいない可能性がある。
また、沖縄県のような自動車依存型の社会においては自 動車交通と比べて公共交通の利用価値が相対的に低く、新 たに導入された公共交通の利用価値を住民が正確に認識 し、実際に利用されるようになるまでには一定の期間を要 することが考えられる。そうすると、都市モノレールの導 入による利便性向上の効果が周辺地域の地価に反映され るまでには時間的なラグが発生している可能性がある。
キャピタリゼーション仮説を前提とした場合、都市モノ レールの導入による利便性向上の効果(便益)は、周辺地 域の地価に反映されることになる。そうであるならば、都 市モノレール駅周辺の地価への便益の帰着状態を推計す
ることによって、都市モノレールの導入による利便性向上 の効果がどの範囲にまで及んでいるかを分析することが できると考えられる。
上記の問題意識に基づき、本研究においては以下の仮説 を定立する。
4 実証分析
4.1 分析の対象と方法
分析対象は、都市モノレールが導入されている沖縄県那 覇市全域とし、土地の利用現況が住宅地となっているもの を使用する。分析に用いる地価について、那覇市内の地価 公示価格のみではサンプル数が少なく十分な検証が行え ないため都道府県地価調査価格も併用している。地価や土 地に関する情報は、国土数値情報ダウンロードサービスか ら取得した。最寄駅から各地価調査地点までの距離につい ては、座標情報を元にArcGISを用いて計測している。地 価調査地点の最寄りの都市モノレール駅から県庁前駅ま での所要時間については、沖縄都市モノレール株式会社の ホームページに掲載されている所要時分を利用している。
都市モノレールの導入による周辺地域への影響につい ては、キャピタリゼーション仮説を前提としたヘドニッ ク・アプローチにより、その影響を受ける前後の地価関数 の変化を観察することとする。ただし、単純に導入前後の 比較を行ってしまうと、地価の変化が都市モノレール導入 の効果であるのか、景気変動等の社会全体のマクロ的な影 響によるものなのかが判別しがたい。本研究の目的は都市 モノレールの導入による影響のみを観察することである ため、今回はDID(Difference-in-Difference)推定を用い て地価の変動を計測することとする。
4.2 使用する変数
トリートメントグループには都市モノレールの各駅を 中心とした半径2km圏内の範囲を、コントロールグルー プにはそれ以外の那覇市全域を設定している。今回の分析 では駅からの距離が周辺地域の地価に与えている影響に 着目するため、半径2km 園内に500m 刻みの円を描き、
4つの距離区分(0~500m、500~1000m、1000~1500m、
1500~2000m)のグループを作成している。また、タイム ダミーとして都市モノレールが導入された2003年以降を
1、それ以前を0とするダミー変数を作成し、当該変数と
仮説 1 都市モノレールの導入による利便性の向上が、
駅周辺の地価に反映されている。
仮説 2 都市モノレールの効果は駅からの距離に依存し ており、モノレールの利用圏域内においてはその 効果が強く表れている。
仮説 3 都市モノレールの導入による地価への影響は、
供用開始後の経過年数により次第に大きくなる。
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各トリートメントグループの交差項を設けている。なお、使用するデータは2000年から2013年までの各年におけ るデータで構成されるパネルデータを用いており、変量効 果モデルによる推計を行っている。
4.3 実証分析 1
4.3.1 推計モデル 1(都市モノレール導入後の変化)
推計モデルは次式を用いる。
ln(地価)it=a+β1(距離ダミー1)it+β2(距離ダミー2)it
+β3(距離ダミー3)it+β4(距離ダミー4)it
+β5(タイムダミー×距離ダミー1)it
+β6(タイムダミー×距離ダミー2)it
+β7(タイムダミー×距離ダミー3)it
+β8(タイムダミー×距離ダミー4)it
+β9(ln地積)it +β10(ln容積率)it
+β11(最寄駅から県庁前駅までの所要時間)it
+β12(都道府県地価調査ダミー)it
+駅ダミー+年ダミー+εit
4.3.2 推計モデル 1 の推計結果 表 1 推計結果 1
都市モノレールの導入後、駅から500m圏内で約8%程 度の統計的に有意な地価の上昇が見られる。これに対して、
駅から500mを超える範囲については、500m~1000mの 圏内で約 2%程度、1000m~1500m 圏内で約 3%程度、
1500m~2000m 圏内で約 2%程度の地価の上昇傾向が見 られるが、いずれも統計的に有意な結果は得られなかった。
分析の結果から、都市モノレールの導入によって周辺地 域の利便性が向上しており、それが地価にも反映されてい ると考えられる。また、都市モノレールの導入による利便 性向上の効果が及ぶ範囲は駅からの距離に強く依存して おり、主たる利用圏域である駅から500mの範囲内ではそ の影響が強く表れているが、500mを超えるとその影響が さほど及んでいないものと考えられる。
4.4 実証分析 2
4.4.1 推計モデル 2(導入後の時間経過による変化)
推計モデルは次式を用いる。
ln(地価)it=a+β1(距離ダミー1)it+β2(距離ダミー2)it
+β3(距離ダミー3)it+β4(距離ダミー4)it
+β5~8(供用開始年ダミー×距離ダミー1~4)it
+β9~48(供用開始1~10年目ダミー×距離ダミー1~4)it
+β49(ln地積)it +β50(ln容積率)it
+β51(最寄駅から県庁前駅までの所要時間)it
+β52(都道府県地価調査ダミー)it
+駅ダミー+年ダミー+εit
4.4.2 推計モデル 2 の推計結果。
表 2 推計結果 2
図 3 都市モノレール駅周辺の地価関数の変化
変数名 推定値
距離ダミー1(最寄駅から500m圏内) 0.1950 (0.0469) ***
距離ダミー2(最寄駅から500m~1000m圏内) 0.1530 (0.0390) ***
距離ダミー3(最寄駅から1000m~1500m圏内) 0.1320 (0.0535) **
距離ダミー4(最寄駅から1500m~2000m圏内) 0.0583 (0.0498) 交差項1(タイムダミー×距離ダミー1) 0.0822 (0.0304) ***
交差項2(タイムダミー×距離ダミー2) 0.0177 (0.0255) 交差項3(タイムダミー×距離ダミー3) 0.0324 (0.0374) 交差項4(タイムダミー×距離ダミー4) 0.0217 (0.0318)
ln地積 0.1890 (0.0288) ***
ln容積率 -0.0241 (0.0713)
最寄駅から県庁前駅までの所要時間 -0.0339 (0.0147) **
都道府県地価調査ダミー -0.0013 (0.0267)
駅ダミー 省略
年ダミー 省略
定数項 11.4200 (0.3120) ***
観測数 532
決定係数(within) 0.9273
***、 **、*はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を示す。
( )内は不均一分散頑健標準誤差を示す。
変数名 推定値
距離ダミー1(最寄駅から500m圏内) 0.1950 (0.0491) ***
距離ダミー2(最寄駅から500m~1000m圏内) 0.1530 (0.0403) ***
距離ダミー3(最寄駅から1000m~1500m圏内) 0.1330 (0.0542) **
距離ダミー4(最寄駅から1500m~2000m圏内) 0.0591 (0.0514) 供用開始年ダミー×距離ダミー1 0.0268 (0.0264) 供用開始年ダミー×距離ダミー2 -0.0071 (0.0278) 供用開始年ダミー×距離ダミー3 -0.0056 (0.0274) 供用開始年ダミー×距離ダミー4 -0.0030 (0.0282) 供用開始1年目ダミー×距離ダミー1 0.0320 (0.0260) 供用開始1年目ダミー×距離ダミー2 -0.0258 (0.0237) 供用開始1年目ダミー×距離ダミー3 -0.0253 (0.0336) 供用開始1年目ダミー×距離ダミー4 -0.0163 (0.0279) 供用開始2年目ダミー×距離ダミー1 0.0465 (0.0265) * 供用開始2年目ダミー×距離ダミー2 -0.0203 (0.0217) 供用開始2年目ダミー×距離ダミー3 -0.0086 (0.0324) 供用開始2年目ダミー×距離ダミー4 -0.0126 (0.0287) 供用開始3年目ダミー×距離ダミー1 0.0752 (0.0330) **
供用開始3年目ダミー×距離ダミー2 0.0010 (0.0280) 供用開始3年目ダミー×距離ダミー3 0.0172 (0.0391) 供用開始3年目ダミー×距離ダミー4 0.0107 (0.0325) 供用開始4年目ダミー×距離ダミー1 0.0881 (0.0372) **
供用開始4年目ダミー×距離ダミー2 0.0171 (0.0319) 供用開始4年目ダミー×距離ダミー3 0.0328 (0.0439) 供用開始4年目ダミー×距離ダミー4 0.0230 (0.0363) 供用開始5年目ダミー×距離ダミー1 0.0954 (0.0417) **
供用開始5年目ダミー×距離ダミー2 0.0249 (0.0371) 供用開始5年目ダミー×距離ダミー3 0.0445 (0.0492) 供用開始5年目ダミー×距離ダミー4 0.0274 (0.0414) 供用開始6年目ダミー×距離ダミー1 0.1000 (0.0424) **
供用開始6年目ダミー×距離ダミー2 0.0304 (0.0380) 供用開始6年目ダミー×距離ダミー3 0.0531 (0.0507) 供用開始6年目ダミー×距離ダミー4 0.0347 (0.0437) 供用開始7年目ダミー×距離ダミー1 0.1010 (0.0448) **
供用開始7年目ダミー×距離ダミー2 0.0337 (0.0405) 供用開始7年目ダミー×距離ダミー3 0.0544 (0.0545) 供用開始7年目ダミー×距離ダミー4 0.0359 (0.0471) 供用開始8年目ダミー×距離ダミー1 0.1060 (0.0447) **
供用開始8年目ダミー×距離ダミー2 0.0428 (0.0406) 供用開始8年目ダミー×距離ダミー3 0.0592 (0.0576) 供用開始8年目ダミー×距離ダミー4 0.0453 (0.0468) 供用開始9年目ダミー×距離ダミー1 0.1130 (0.0425) ***
供用開始9年目ダミー×距離ダミー2 0.0475 (0.0388) 供用開始9年目ダミー×距離ダミー3 0.0638 (0.0634) 供用開始9年目ダミー×距離ダミー4 0.0471 (0.0455) 供用開始10年目ダミー×距離ダミー1 0.1200 (0.0443) ***
供用開始10年目ダミー×距離ダミー2 0.0506 (0.0417) 供用開始10年目ダミー×距離ダミー3 0.0706 (0.0713) 供用開始10年目ダミー×距離ダミー4 0.0467 (0.0482)
ln地積 0.1880 (0.0299) ***
ln容積率 -0.0256 (0.0736)
最寄駅から県庁前駅までの所要時間 -0.0340 (0.0151) **
都道府県地価調査ダミー -0.0014 (0.0279)
駅ダミー 省略
年ダミー 省略
定数項 11.4400 (0.3190) ***
観測数 532
決定係数(within) 0.9309
***、 **、*はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を示す。
( )内は不均一分散頑健標準誤差を示す。
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都市モノレールの導入後、駅から500m圏内では供用開 始後2年目から10%水準、3年目から5%水準、9年目から1%水準で統計的に有意な地価の上昇がみられる。これ
に対して駅から500mを超える範囲では、いずれの年にお いても統計的に有意な結果は得られなかった。また、経過 年数毎の地価関数の推移をみると、供用開始3年目(2006 年)頃から目立った上昇傾向が見られる。
この結果から、都市モノレールの導入による利便性向上 の効果が地価に反映されるまでには 1~2 年程度のラグが 発生していること、そして供用年数が経つほど利便性向上 の効果が強く表れていることが考えられる。
5 分析結果を踏まえた考察 5.1 都市モノレールの一般化費用
交通による移動は、基本的にそれ自体から効用を得るこ とはないので、費用であると理解される。経路の所要時間、
運賃、快適度、乗換えの利便性等、移動に要するあらゆる 費用を一般化費用と呼び、交通利用者は一般化費用が最も 小さくなるような交通手段を選択する。
都市モノレールは道路交通の影響を受けないため移動 時間の短縮効果や快適性等のメリットがあるが、アクセス 性やバス等からの乗り継ぎに際しては、必ずしも利便性が 高いとは言えない面がある。
ケース① バスからモノレールへのアクセス
現状においては都市モノレールに連結するバス路線や 便数が少ないため、バスから都市モノレールに乗り換えよ うとする場合、「待ち時間」が発生することになる。この 待ち時間が見えない移動時間として上乗せされており、乗 車時間やアクセス時間だけを見た場合には時間短縮が図 られているように見えても、実際には所要時間が増加する 例がある。また、現在は都市モノレールとバスを乗り継ぐ 場合に割引運賃等の設定がされていないため、乗り換えに よって移動時間が短縮されるとしてもそれにより運賃が 上昇することになることから、時間費用を低く評価する人 にとっては都市モノレールを利用するメリットが小さく なっている。
ケース② 都市モノレールの駅間距離と走行速度の関係 沖縄都市モノレールの平均駅間距離は0.9kmとなって いる。駅の間隔を短くすることでより多くの沿線住民の利 用を見込むことができるが、その反面、駅間距離が狭まる ため走行速度を上げることが難しくなる。つまり、沿線の 利用圏域と走行速度がトレードオフの関係になっている。
どちらを選択することが社会全体としてみた場合の総効 用の最大化に資するかという問題はあるが、一般化費用の 縮減という観点からすると、駅間距離が短く都市モノレー ルの走行速度が遅い場合、駅間の移動時間が自動車やバス 等による移動と比較して優位性に乏しくなる。そのため、
乗車駅から目的地までの距離が短い場合には移動時間の 短縮効果が低くなってしまう。
図 4 平均駅間距離と表定速度の関係
5.2 まとめ
現在の都市モノレールの運用においては発地又は着地 の一方又は両方が駅から近距離にある等、都市モノレール へのアクセスが容易である場合や、自動車やバスからの乗 り換え利便性が高く、かつ、乗り換え時に利用する駅から 目的地までの距離が長い場合でなければ一般化費用の短 縮効果が低い状況にある。その結果、都市モノレールの沿 線外では交通手段として都市モノレールを選択する可能 性が低くなっている。このことが、都市モノレールの導入 による周辺地域の地価への影響が、駅周辺の限られた範囲 にのみ強く表れている理由であると考えられる。
6 政策提言
都市モノレールの導入が駅周辺の地価を上昇させるが、
その効果の及ぶ範囲は駅から 500m 程度であることが実 証分析により明らかとなった。このことから、モノレール というインフラ施設を整備するだけでは、駅周辺の限られ た範囲にしか利便性向上の効果が及ばないと考えられる。
そこで、端末交通の充実や乗継運賃の割引制度の導入等に より、都市モノレールの利用圏域を拡大させることが望ま しい。また、一般化費用の縮減を図るという観点からは、
利用者の多い駅のみを通過する快速運行の実施や、運行本 数を増加させることにより都市モノレール利用時の所要 時間を短縮させる等の対策が有効であると考えられる。
7 今後の課題
今回の分析ではサンプル数の関係で駅からの距離を 500m 単位で区分したが、より正確に推計するためには、
更に細かい地域毎の地価の変動を把握する必要がある。
以下は今後の課題である。今回は地域利便性の向上とい う側面から分析を行ったが、都市モノレールのそもそもの 導入目的は道路混雑の緩和とされており、現状ではこれら の効果についての分析が十分に行われているとは言えな いため、その効果が実際に得られているかの検証が必要で ある。また、沖縄都市モノレールでは路線の延伸が計画さ れているため、モノレールネットワークの拡充が周辺地域 に与える影響の計測についても、今後の課題になると考え られる。