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Ⅰ 課題分析 学校の課題解決に向けた組織的協働の展開 Ⅱ 課題解決

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Academic year: 2021

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(1)

学校の課題解決に向けた組織的協働の展開

−生徒の目的意識醸成を軸に−

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 久 我 直 人 教職実践力高度化コース 実習指導教員 大 林 正 史 有 澤 拓 也

Ⅰ 課題分析

1.課題設定の理由

(1)置籍校の現状と課題 1)概要

置籍校は生徒数 171 名,教職員数 26 名の全日 制普通科高校である。市内5つの中学校が1つ に統合されたことを機に,置籍校は平成

26

年度 より連携型中高一貫校として新たなスタートを きった。英国数や芸術教科での相互乗り入れ授 業が実施されているほか,つなぎ教材の開発,

学校行事の連携に向けた準備が進められている。

2)可視化された課題と実践研究の目的 教職員・生徒・保護者対象に実施した学校ア セスメントアンケートの結果から,置籍校に内 在する課題が明らかになった。そしてそれらは

「生徒の課題」,「教師の指導の質的課題」,「教 職員組織の課題」の3つに大別された(表1)。

本実践研究では,これらの課題に対し,それ ぞれ個別の対応策を講じるのではなく,生徒が 抱える教育課題解決に照射した教育活動を組織

的に展開することで,学校に内在する諸課題の 解決につながると考えた。つまり,生徒の目的 意識醸成を学校課題としてとらえ,その解決に 向けた取組を教職員の協働によって展開するこ とを通して,生徒の変容と教師の指導の質的改 善,さらに教職員の組織化を同時に具現化する ことを本実践研究の目的とした。

2.実践研究の課題

この研究の目的に接近するために,次の4つ を本実践研究の課題として設定した。

①置籍校の教育課題の可視化

②組織化と教育改善を実現する教育改善 プログラムの構築

③構築したプログラムの展開による組織化と 教育改善に向けた実践

④プログラムの効果性の検証 3.実践研究の枠組み

(1)課題の構造的理解に基づく取組の生成 久我(2014)は,子どもの意識と行動の構造 を解明し,その構造に適合した効果のある指導 を組織的に展開する教育改善プログラムの構築 をした。本実践研究はこの知見に基づき,置籍 校の教育課題の構造をとらえ,効果のある取組 を生成することとした。

共分散構造分析により明らかにした置籍校の 生徒の学びの構造を踏まえ,「①生徒の目的意識 醸成に向けた教育活動」,そして「②お互いのよ さ,頑張りを認め合う学校文化の形成」を基軸 とし,具体的取組を生成した(図1)。

①生徒の課題 ・目的意識の低さ

・自分に対する信頼の低さ

②教師の指導の 質的課題

・出口指導に傾斜した指導

・統制型視座による 一斉画一型の指導

③教職員組織の 課題

・課題への個別的対応,

個業化の進行 表1 可視化された課題

(2)

まず生徒が自己と向き合い,夢や目標を生成 する場と時間を設定するとともに,その実現に 向けた具体的努力を促すツール(学びのポート フォリオ,学びのアクションプラン,定期考査 計画表)を導入することとした。そして生徒の 主体的学びに向け,初期指導,Question Week を計画した。また主体的な学びを生み出すため の教師の取組として授業力向上週間を計画した。

お互いのよさ,頑張りを認め合う学校文化の形 成を目指した取組としては,自分のよさ確認ワ ークショップ,良情報交換システム,面談週間,

ボイスシャワーを実施することとした。

(2)取組の組織的展開のための枠組み 生成した取組を組織的協働により展開してい くために,久我(2011)「教師の主体的統合モデ ル」を援用し,実践研究の基本的枠組みを作成 した(図2)。

Ⅱ 課題解決

1.実践研究の実施

(1)Research期

置籍校の課題を可視化し,学校組織として共 有するために,アセスメントアンケートの結果 を報告し,久我教授による「生徒の実態に基づ く組織化による教育改善の可能性」と題した講 演を踏まえ,全教職員によるワークショップ型 の組織的省察を行った。これにより生徒の実態 に基づいた教育課題の焦点化が促された(図3)。

(2)

Plan

1)プロジェクトチームの枠組み

置籍校の生徒が抱える教育課題解決に向けた 取組を総称し,「未来プロジェクト」と名づけた。

また,プロジェクトが協働的に展開されるよう,

未来プロジェクトチームを編成し,ファシリテ ート機能を持たせた。プロジェクトチームは進 路指導部,教務部,生徒指導部の各校務分掌か ら1名,生徒会担当1名,そして管理職(教頭)

1名で構成した。

2)プロジェクトの組織的展開イメージ

プロジェクトの展開イメージを組織で共有し,

各月の重点取組事項を意識化し,実践できるよ う工夫した。1年間の教育活動を2ヶ月毎のス 図1 具体的取組の生成

図2 実践研究の基本的枠組み

図3 組織的省察により焦点化された教育課題

行事取り組み

取り組みは 真面目

さまざまな活動に 興味、挑戦

言われたこと はやる 授業態度 運動能力

意外に高い 低学力でも 努力する

試験前には 勉強する 目的意識ある

徒もいる

ペア・グループ 活動

素直

学校

楽しんでいる 地元が好き

あいさつ

清掃

問題行動 ない

保護者との 会話

朝食

おじしない

従順 先輩後輩関係

友達関係

教員との 距離感が近い

夢・目標 持ってない 他律的

他者依存

自分のことが 自分でできない 目標が

具体的でない

規範意識の 低さ 指導に対して

言い訳、

ふてくされ

話を聞けない

授業への 遅刻 時間・期限を

守れない 友だちを

注意できない 恣意的 友人関係

言葉遣い 将来への

危機感ない

競争心に 欠ける

自己中心的 言動

幼稚さ 勉強より

アルバイト優先 基礎学力 身についていない

現 状

満足

テスト範囲示し ても勉強しない 勉強の仕方

知らない

的学習 がない 家庭学習 がない

学び

よさ

課題

自己の良さ 自覚化 できていない

すぐあきらめる 課題②

課題③

自分への信頼 低い 課題①

課題④

自分に対する 信頼の低さ

課題①

 目的意識の弱さ

課題②

学習の 欠如

課題③

規範 意識の

低さ

課題④ 初期指導

定期考査計 学びのアクションプラン

学びの ポートフォリオ

面談週間 Ques on Week

良情報交換システム

自分のよさ確認WS ボイスシャワー 授業力向上週間

自分への信頼 学習意欲

夢目標への 努力

夢目標の 設定

被受容感

①「生徒の目的意識醸成に向けた教育活動」

②「お互いのよさ,頑張りを認め合う学校文化の形成」

A(改善)

 

 

 

成果と 課題  

来年度への 改善

C(評価)

 

 

教職員 保護者 アンケート

(学習・

活)

D(実践)

授業力向上週間 Question Week

自分のよさ確認WS 学びのポートフォリオ 学びのアクションプラン

ボイスシャワー

良情報交換システム 定期考査計

P(計)

具体的な取組の計  

 

   R(リサーチ)

 

 

 

 

 

 

               WS型研修

  学習   

 

良さ  

 

 

課題  

 

        

 

学校アセスメント

アンケート 全教職員による 課題の共有と組織的省察

面談週間

② お互いのよさ,頑張りを 認め合う学校文化の形成

徒の目的意識醸 成に向けた教育活動

初期指導

(3)

テージに区切り,ストーリー性を持たせて展開 した(図4)。

(3)Do期 1)初期指導

生徒の学びと生活の基盤を形成するため,学 年ごとに全体指導の時間を設定し,初期指導を 行った。

2)目的意識醸成に向けた取組

① 学びのポートフォリオ(図5)

生徒の自己認識を深め,自分のよさや特性を 生かした目標設定を促し,将来の見通しを持っ た自律的な学びを生み出すためのサポートツー ルとして導入した。

② 学びのアクションプラン,定期考査計画表 学びのポートフォリ オの機能を補完し,中

期・短期的な目標設定と具体的努力計画の設定 ツールとして導入した。

3)自分への信頼醸成に向けた取組

① 良情報交換システム(図6)

日常生活における生徒のがんばりや優しさを 組織的に見取る仕組みとして導入した。

② 自分のよさ確認ワークショップ(図7)

生徒の自己のよさの自覚化と,生徒相互の承 認文化形成をねらいとして,全学年で実施した。

③ 全教職員による朝の立哨指導

生徒に対するボイスシャワーを目的とした全 教職員による朝の立哨指導を実施した。

4)生徒の主体的学びのための取組

① Question Week

各定期考査前の1週間を「Question Week」と して設定し,放課後の個別学習指導を実施した。

② 授業力向上週間

「主体的な学びを促す一工夫」をテーマに公 開授業週間を設定し,教師相互の参観授業が行 われた。参観者はその授業のよかった点を授業 者にフィードバックした。

③ 学び方ワークショップ

効果的な学習方法について,ワークショップ を通して意見交流することで,学級全体の学習 力を向上させることをねらいとし,全学年で実 施された。

5)組織化推進のための枠組み

① 未来プロジェクト通信

プロジェクトの各取組のねらいや,事後の振 図4 組織的展開のイメージ

図5 学びのポートフォリオ

目標(短期目標)   (長期目標)  

   3年 組      2年 組      1年 組     

年間目標 定期考査1中間1期末 2中間2期末 学年末 評定 1学期2学期学年末 出欠

1期末 2期末 学年末 目標達成に向けた努力事項

    欠席 1学期

遅刻 早退

2学期 3学期

学力診断テスト第1回 国語(GTZ) ( ) 数学(GTZ) ( ) 英語(GTZ) ( )

学内順位 クラス役員の活動

合計得点 ※GTZ→学習到達ゾーン(A1~D3を記入する)

平均 平均

順位 順位

 

年間目標 定期考査1中間1期末 2中間2期末 学年末 評定 1学期2学期学年末 出欠

1期末 2期末 学年末 目標達成に向けた努力事項

    欠席 1学期

遅刻 早退

2学期 3学期

学力診断テスト第1回 第2回 国語(GTZ) ( ) ( ) 数学(GTZ) ( ) ( ) 英語(GTZ) ( ) ( )

学内順位 クラス役員の活動

合計得点 ※GTZ→学習到達ゾーン(A1~D3を記入する)

平均得点 平均

総合順位 順位

年間目標 定期考査1中間1期末 2中間2期末 学年末 評定 1学期2学期学年末 出欠

1期末 2期末 学年末 目標達成に向けた努力事項

  欠席 1学期

遅刻 早退

2学期 3学期

学力診断テスト第1回 第2回 国語(GTZ) ( ) ( ) 数学(GTZ) ( ) ( ) 英語(GTZ) ( ) ( )

学内順位 クラス役員の活動

合計得点 ※GTZ→学習到達ゾーン(A1~D3を記入する)

平均得点 平均

総合順位 順位

在の自分(よさ,長所) 第1学年 第2学年 第3学年

部活動・ボランティア・校外

資格取得目標・

部活動・ボランティア・校外

部活動・ボランティア・校外

授業や学校行事で頑張ったこと

資格取得目標・

学びのポートフォリオ・シート

 名前 

授業や学校行事で頑張ったこと

授業や学校行事で頑張ったこと

資格取得目標・

図6 良情報交換システム 図7 自分のよさ確認 WS

10

11

12

夢目標 づくり

(進路)

規範 づくり

徒指導)

学び づくり

(教務)

学校 文化 づくり

徒会)

学習・ ルール徹底 ステージ

学び充実 ステージ①

イベント 実行 ステージ

学び充実 ステージ②

感謝,

再出発 ステージ チャレンジ

ステージ

     ボイスシャワー     良情報交換システム         学び ポートフォリオ 学び アクションプラン 定期考査計

自己 成長目標と行動計 価値づけ勇気づけ

体育祭を 成功させよう

先輩へ 感謝(1,2年) マナーを

身につけよう

自学 習慣を 身につけよう 学習規律と

活規範 徹底

的な

学び① 定期考査に

向けて 1学期

振り 返り

2学期 目標 設定

1年間 振り返り,

目標再設定

私 一人 大切な人間(自己肯定感)

規範意識 醸成

得意・技能を   伸 そう

的な 学びを進めよう

資格・検定へ   準備,挑戦

的な学び② 資格・検定に向けて

学校へ 感謝(3年) 仲間づくり

夢・目標

自分のよさ

努力の履歴

(4)

り返りを通信として発信し,情報の組織的共有 を図った。

② 未来プロジェクトチーム会

プロジェクトの取組の振り返りと,翌月の取 組について検討をするため,チーム会を月1回 設定した。

2.実践研究の総括

(1)生徒の変容

本実践研究を通して,生徒の授業認知の向上 や,教師への信頼についての変容が確認された

(図8)。重点課題であった目的意識や,自分へ の信頼についても高まりが確認された。

(2)教師の変容

個別の学習指導の実施や,生徒の要望を取り 入れた授業などの寄り添い型の学習指導,生徒 への成長期待,教師の協働性等で変容が確認さ れた(図9)。これまでの教師主導型の指導が,

生徒の自立支援型の指導へと転換しつつあるこ とが読み取れた。また,組織としての協働意識 の高まりもとらえられた。

(3)実践研究の成果

本実践研究の成果として次の5点が挙げられ る。①学びのポートフォリオ等のツール活用を 通して,生徒の目的意識が醸成され,自律的な 学びが一定程度具現化したこと。②生徒の自己 成長を促す根源的なエネルギーとなる「自分へ の信頼」が醸成されたこと。③教師−生徒間相互 の信頼関係が向上したこと。④教師の指導の質 的改善が図られたこと。⑤教職員の組織化が促 進され教育改善が具現化したこと。以上のこと から,当初想定した本実践研究の目的は,一定 程度達成されたととらえられる。

(4)今後の課題

現在,本市において中高が連携して自分への 信頼を高め,目的意識を醸成する仕組みを導入 している。この取組は現在も実践過程であり,

複数年継続して評価・改善を積み重ねていく必 要性がとらえられる。また,本実践研究の枠組 みやサポートツールの他校への汎用可能性を感 じている。今後の自校での進化と他校への汎化 が課題ととらえる。

29%

35%

33%

44%

29%

17%

9%

4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H25.11 H26.11

私は自分の夢や目標を実

するための努力をしている

そう思う 大体そう思う あまりそう思わない そう思わない

図8 生徒アンケート結果

図9 教師アンケート結果

35%

35%

36%

42%

18%

16%

11%

7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H25.11 H26.11

私は一人の大切な人間である

そう思う 大体そう思う あまりそう思わない そう思わない

8%

14%

39%

48%

41%

28%

13%

11%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H25.11 H26.11

私は授業がよくわかる

そう思う 大体そう思う あまりそう思わない そう思わない

19%

28%

39%

43%

29%

18%

13%

11%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H25.11 H26.11

学校には,信頼できる先 がいる

そう思う 大体そう思う あまりそう思わない そう思わない

自分への 信頼 教師への

信頼 授業理解

目的意識

4%

21%

58%

46%

27%

33%

12%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H25.11 H26.11

学級経営や授業の問題点について,同僚の先

から

直な指摘や意見がなされている

そう思う 大体そう思う あまりそう思わない そう思わない

4%

8%

56%

67%

36%

25%

4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H25.11 H26.11

学習の遅れがちな

徒に対して,個別指導等の

別な 指導を行っている

そう思う 大体そう思う あまりそう思わない そう思わない

20%

25%

60%

67%

16%

8%

4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H25.11 H26.11

私は

徒の成長を感じている

そう思う 大体そう思う あまりそう思わない そう思わない

寄り添い型の 学習指導

生徒への 成長期待

協働性 16%

21%

40%

63%

40%

17%

4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H25.11 H26.11

授業の進め方や内容について,

徒の意見や要望を 聞いている

そう思う 大体そう思う あまりそう思わない そう思わない

参照

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