厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業)
既存添加物の品質確保のための評価手法に関する研究
(H29-食品-一般-007)
平成31年度(令和元年度)研究分担報告書 既存添加物の定量用標品の合成に関する研究
〜化学合成による既存添加物の定量用標品の供給に関する研究〜
研究分担者 出水庸介 国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部 部長
研究協力者
辻厳一郎 国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部 主任研究官
A. 研究目的
本研究では,既存(天然)添加物の規格試験 設定をおこなうために「化学合成による既存添 加物の定量用標品および内部標準物質の供給 に関する研究」を目的とした.特に,①食品添 加物の着色料として広く使用され,機能性表示 食品にも含有されるカロテノイド類を中心と した標品の合成を行う.カロテノイドは自然界 に広く分布する天然色素であり,現在までに 700 種類以上が発見されている.これらの添加 物は天然原材料から得られ分析用の標品入手 が困難であり,定量分析法においてはクロマト グラフ法と比較して正確性に欠ける比色法,色 価測定法が設定されている.また現在において も,解析が不十分な機能や未知の機能が多々あ り,その有用性を研究するためにも化学合成に よるカロテノイドの標品を高純度で供給する ことは重要である.さらに,②指標成分の部分 骨格を持つ代替化合物の合成と,定性用又は定 量用標準品としての分析法の開発を行い,簡便 且つ精確な規格試験法の設定を具現化する.本
年度は,②のテーマに焦点を絞り,クチナシの 果実などに含まれるクロシン(crocin)およびカ ロテノイド類縁化合物を対象とした合成ルー ト確立に関して検討を行った.
B. 研究方法
クロシンにおいては,入手容易な出発原料 1 を利用した合成ルートを計画した.カロテノイ ド 類 縁 化 合 物 お よ び ク ロ シ ン は そ れ ぞ れ
Scheme 1〜6 に示すルートで合成する計画を立
てた.Scheme 1のルートでのクロシン合成を目
標として前年度に引き続き,立体選択的なクロ シン合成のためのモデル反応を検討した.同時 に別の合成法として,ジカルボン酸を中間体と した縮合反応によるクロシンおよびその類縁 化合物の合成に関しても検討した.
C. 結果及び考察
1 を出発原料として,アルデヒド部を還元す ることでジアルコール体である 2,酸化するこ とでジカルボン酸3をそれぞれ1段階で得るこ とができた.さらに3からは縮合剤を用いたカ ップリング反応によってメチルエステル体4を 得た(Scheme 2 ).3からは対応する多種のカ ルボニル化合物を容易に合成することができ 研究要旨 既存添加物の品質確保のためには,高精度な分析・評価手法を開発することで成 分規格試験を確立することが重要である.本研究では,従来の分析化学の手法では含量規格の 設定が困難な添加物について,指標成分と同一の若しくは代替物質の定性用又は定量用標準品 の全合成ルートを確立することで新たな分析法の開発を行い,簡便且つ精確な規格試験法の設 定を具現化することを目的とした.本年度は,カロテノイド類縁化合物を対象とした合成ルー トの確立を行った.また,カロテノイド系色素であるクロシン(crocin)の立体選択的な化学合 成に関しても検討した.
154
るため,カロテノイド化合物の代替物質の合成 に有用であると考えられる.
一方、立体選択的なクロシンのモデル反応に 関して,試薬等の反応条件を検討した.検討の 結果,ルイス酸としてBF3-OEt2を用いてモデル 化合物7を合成できることがわかった(Scheme 3).次に上記の検討で得られた条件を用いて化 合物8の合成を試みた.すなわち,化合物6と クロセチンのモデル化合物3を,BF3-OEt2を用 いて反応させることで化合物8を合成できると 考えた.しかしながら化合物3の反応溶媒に対 する溶解性が低いために,反応が進行せず目的 物を得ることはできなかった(原料回収).そこ で化合物溶解のために DMSO などの溶媒を使 用して反応を実施したが,この場合には反応そ のものが進行しなかった(Scheme 4).これは 使用した溶媒がルイス酸を使用した反応には 不適であるためと考えられた.そこで次に,ジ カルボン酸化合物である3から縮合剤を用いた 反応によって 8 を合成することを検討した.
DCC を縮合剤としてアセチル基で保護した糖 化合物9を3に対してカップリングすることで 8の前駆体である化合物10を得た(Scheme 5). 縮合剤を利用した反応でモデル化合物が合成 できたため,同様にしてクロセチンに対しても
単糖9,もしくは二糖13を用いた縮合反応を行
うことで,それぞれクロシン誘導体(アセチル 保護体)14およびクロシン前駆体(アセチル保 護体)15 を合成することができた(Scheme 6)
本研究において今回単離できたクロシン前駆 体の構造をFigure 1に示す.構造の決定は論文 で報告されているクロシンおよびクロシン類
縁体3の1H NMRとの比較により行った.得ら
れた化合物 15のカロテノイド部に近い 2 つの 糖(A-1’およびC-1’)のアノマー位における立 体は,それぞれb, aであった. 反応に用いた二 糖 13のアノマー位水酸基の立体はaとbの混合 物であり,反応はその立体を保持したまま進行 したものと予想される.このことから,今回実 施した縮合剤を使用した反応においては,アノ マー位に関して立体の規定された糖をカップ リングさせることで,所望の立体を有するクロ シン誘導体を得ることが可能であると考えら
れる.
以下に,それぞれの合成工程について記載す る.
C-1) カロテノイド誘導体の合成(Scheme 2-6) 化合物2の合成
(2E,4E,6E)-2,7-dimethylocta-2,4,6-trienedial (1)
(82 mg, 0.50 mmol)のTHF(1 mL)/ MeOH(1 mL)溶液に水素化ホウ素ナトリウム(57 mg,
1.50 mol)をゆっくりと加えた.室温にて8時間
攪拌した後,反応液に飽和塩化アンモニウム水 溶液を加えて反応を停止した.反応液を酢酸エ チルで抽出し,有機層を飽和塩化ナトリウム水 溶液で洗浄した.硫酸ナトリウムで乾燥,濾過 し,濾液を濃縮後,シリカゲルカラムクロマト グラフィーで精製(ヘキサン:酢酸エチル = 2 : 1 to 0 : 1)することで,化合物2を52%(44 mg)
の収率で得た.
1H NMR (600 MHz, CD3OD) d 6.45 (dd, J = 7.2, 6.6 Hz, 2H), 6.13 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 4.00 (s, 4H), 1.78 (s, 6H).
化合物3の合成
化合物2(0.82 g, 5.0 mmol)と2-メチル-2-ブ テン(5.3 mL, 50 mmol)のアセトン溶液(15 mL)
に,0℃にて亜塩素酸ナトリウム(2.26 g, 20.0 mmol)のリン酸二水素ナトリウム(3.36 g, 28.0 mmol)水溶液(15 mL)を滴下した.反応液を 室温で 12時間攪拌した後,0℃にて反応液に2M 塩酸を加えて反応を停止させた.反応液をジエ チルエーテル(30 mL)にて3回抽出し,合わせ た有機層を硫酸ナトリウムで乾燥,濾過し,濾 液を濃縮した.残渣にジエチルエーテルに懸濁 させ,生じた固体をろ取し,ジエチルエーテル で洗浄,高真空下で乾燥させることで,化合物
3を72%(710 mg)の収率で得た.
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) d 7.24 (d, J = 9.9 Hz, 2H), 6.99 (dd, J = 9.9, 7.8 Hz, 2H), 1.91 (s, 6H) ; [ESI(-)-TOF]: m/z [M-H]- 195.
化合物4の合成
化合物3(39 mg, 0.2 mmol)のジクロロメタ ン(1 mL)/THF(0.5 mL)溶液にN,N-ジシクロ
ヘキシルカルボジイミド(DCC)(90 mg, 0.44 mmol),4-ジメチルアミノピリジン (DMAP)(4.9
mg, 0.04 mmol)を加えて,室温で 10分間攪拌し
た.反応液にメタノール(81 µL, 2.0 mmol)を 加えた.室温で 8時間攪拌した後,沈殿物を濾 過し,濾液を濃縮後,シリカゲルカラムクロマ トグラフィーで精製(ヘキサン:酢酸エチル = 9 : 1 to 3 : 7)することで,化合物4を52%(51 mg)の収率で得た.
1H NMR (600 MHz, CDCl3) d 7.29 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 6.79 (dd, J = 7.8, 7.2 Hz, 2H), 3.78 (s, 6H), 2.01 (s, 6H); [ESI(+)-TOF]: m/z [M+H]+ 225.
化合物7の合成
trans-2-Methyl-2-pentanoic acid (5)(18 µL, 0.12 mmol)と化合物6(46 mg, 0.10 mmol)のジクロ ロメタン溶液(1.4 mL)に三フッ化ホウ素ジエ チルエーテル錯体 (BF3-OEt2) (18 µL, 0.11 mmol)
を加えて室温で 1時間攪拌した.反応液をジク ロロメタンで希釈し,有機層を水,1M塩酸,水 で洗浄した.硫酸ナトリウムで乾燥,濾過し,
濾液を濃縮後,シリカゲルカラムクロマトグラ フィーで精製(ジクロロメタン:メタノール = 100 : 0 to 83 : 17)することで,化合物7を20%
(8.7 mg)の収率で得た.
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 6.87 (dtd, J = 24.6, 7.4, 1.4 Hz, 2H), 5.74 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.30-5.21 (m, 2H), 5.15 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 4.11 (dd, J = 12.4, 2.1 Hz, 1H), 3.87 (qd, J = 4.9, 2.2 Hz, 1H), 3.87 (qd, J = 4.9, 2.2 Hz, 1H), 2.24-2.17 (m, 2 H), 2.08-2.01 (m, 12H), 1.81 (s, 3H), 1.04 (t, J = 7.6, 3H).
化合物10の合成
化合物3(49 mg, 0.25 mmol)と化合物91(183 mg, 0.53 mmol)のジクロロメタン(1.2 mL)/N,N- ジメチルホルムアミド(0.6 mL)溶液にN,N-ジ シクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(113 mg, 0.55 mmol),4-ジメチルアミノピリジン (DMAP)
(6 mg, 0.05 mmol)を加えた.反応液を室温で 8 時間攪拌した後,ジクロロメタンで希釈し,
沈殿物を濾過して濾液を濃縮後,残渣をシリカ ゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ヘキサ ン:酢酸エチル = 9 : 1 to 2 : 8)することで,
化合物10を44%(95 mg)の収率で得た.
1H NMR (600 MHz, CDCl3) d 7.38-7.33 (m, 2H), 6.97-6.84 (m, 2H), 6.45-6.44 (1’-b)(m, 1.2H), 5.81- 5.79 (1’-a)(m, 0.8H), 5.55-5.51 (3’-a)(m, 1.2H), 5.33-5.23 (4’-a, 4’-b)(m, 2H), 5.20-5.14 (2’-a, 2’-b, 3’-a)(m, 2H + 0.8H), 4.33-4.29 (6’-a, 6’-b)(m, 2H), 4.18-4.10 (6’-a, 6’-b, 5’-b)(m, 2H + 1.2H), 3.91- 3.89 (5’-a)(m, 0.8H), 2.12-2.01 (m, 30H).
化合物12の合成2
酢酸ナトリウム(53 mg, 0.65 mmol)と無水酢 酸(473 µL, 0.65 mmol)の混合物に室温にて Gentiobiose (11)(86 mg, 0.25 mmol)を加えた後,
反応液を120℃にて 6時間撹拌した.反応液を
0℃に冷却後,氷水 (15 mL)を加えて室温にて30
分間撹拌した.生じた沈殿をろ取し,水で洗浄,
高真空下にて乾燥することで,化合物12(1’-a : 1’-b = 8 : 2の異性体混合物)を94%(160 mg)
の収率で得た.化合物 12 はそのまま次の反応 に用いた.
化合物13の合成
化合物12(136 mg, 0.20 mmol)との無水N,N- ジメチルホルムアミド(0.4 mL)溶液に酢酸ア ンモニウム(31 mg, 0.40 mmol)を加えた.反応 液を室温で 24時間攪拌した後,酢酸エチル (15 mL)で希釈し,水,飽和塩化ナトリウム水溶液 で洗浄した.硫酸ナトリウムで乾燥,濾過し,
濾液を濃縮後,シリカゲルカラムクロマトグラ フィーで精製(ジクロロメタン:メタノール = 99 : 1 to 90 : 10)することで,化合物13(1’-a : 1’-b = 7 : 3の異性体混合物)を72%(92 mg)の 収率で得た.
1H NMR (600 MHz, CD3OD) d 5.53 (dd, J = 10.2 Hz, 0.7H), 5.44 (dd, J = 3.6 Hz, 0.7H), 5.24-5.19 (m, 1.3H), 5.13 (dd, J = 9.6 Hz, 0.3H), 5.09 (dd, J = 9.6 Hz, 0.7H), 4.99-4.96 (m, 1H), 4.91 (dd, J = 9.6 Hz, 0.7H), 4.87-4.84 (m, 1H), 4.71 (dd, J = 10.2 Hz, 0.3H), 4.61-4.57 (m, 1H), 4.27-4.23 (m, 1.7H), 4.21- 4.15 (m, 1H), 4.08 (d, J = 9.0 Hz, 0.3H), 4.00 (d, J = 3.6 Hz, 0.7H), 3.94 (dd, J = 10.8, 2.4 Hz, 0.3H), 3.86 (dd, J = 10.8, 2.4 Hz, 0.7H), 3.73-3.69 (m, 1.3H), 3.63-3.58 (m, 1H), 2.10-1.98 (m, 21H).
156
化合物14の合成
Crocetin(33 mg, 0.10 mmol)と化合物91(73 mg, 0.21 mmol)のジクロロメタン(0.75 mL)
/N,N-ジメチルホルムアミド(0.25 mL)溶液に
N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド (DCC)
(46 mg, 0.22 mmol),4-ジメチルアミノピリジ ン (DMAP)(2.5 mg, 0.02 mmol)を加えた.反応 液を室温で 12時間攪拌した後,ジクロロメタン で希釈し,沈殿物をアミノシリカゲルカラム (Chromatorex NH-DM1020, 富士シリシア,F = 2 cm, h = 2 cm)で濾過,ジクロロメタンにて洗浄 することで化合物 9 を除去し,濾液を濃縮後,
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー で精製(ヘキサン:酢酸エチル = 9 : 1 to 2 : 8)
することで,化合物14を8%(8 mg)の収率で 得た.
1H NMR (600 MHz, CDCl3) d 7.37 (d, J = 12.0, Hz, 1H), 7.34 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 6.76-6.73 (m, 2H), 6.67 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 6.61-6.52 (m, 2H), 6.46- 6.42 (m, 4H), 5.78 (1’-a)(d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.54 (3’-a)(d, J = 10.2 Hz, 1H), 5.32-5.25 (4’-a, 4’-b)(m, 2H), 5.20-5.15 (2’-a, 2’-b, 3’-a)(m, 2H + 1H), 4.31 (6’-a, 6’-b)(dd, J = 12.0, 4.2 Hz, 2H), 4.15-4.10 (6’- a, 6’-b, 5’-b)(m, 2H + 1H), 3.90-3.89 (5’-a)(m, 1H), 2.10-1.99 (m, 36H).
化合物15の合成
Crocetin(16 mg, 0.05 mmol)と化合物13(67 mg, 0.11 mmol)のジクロロメタン(0.4 mL)/N,N- ジメチルホルムアミド(0.2 mL)溶液にN,N-ジ シクロヘキシルカルボジイミド (DCC)(23 mg, 0.11 mmol),4-ジメチルアミノピリジン (DMAP)
(1.2 mg, 0.01 mmol)を加えた.反応液を室温で 12 時間攪拌した後,ジクロロメタンで希釈し,
沈殿物をアミノシリカゲルカラム (Chromatorex NH-DM1020, 富士シリシア,F = 2 cm, h = 2 cm) で濾過,ジクロロメタンにて洗浄することで化 合物9を除去し,濾液を濃縮後,残渣をシリカ ゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ヘキサ ン:酢酸エチル = 9 : 1 to 2 : 8)することで,
化合物15を3%(2.4 mg)の収率で得た.
1H NMR (600 MHz, CDCl) d 7.36 (d, J = 11.4
Hz, 1H), 7.34 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 6.75-6.73 (m, 2H), 6.79 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 6.60-6.52 (m, 2H), 6.46- 6.43 (m, 2H), 6.39 (C-1’)(d, J = 3.0 Hz, 1H), 5.75 (A-1’)(d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.51 (C-3’)(t, J = 9.6 Hz, 1H), 5.28 (A-3’)(t, J = 9.6 Hz, 1H), 5.23-5.17 (D-3’, A-2’, B-3’)(m, 3H), 5.11-4.96 (C-2’, C-4’, D-2’, D- 4’, A-4’, B-2’, B-4’)(m, 7H), 4.55 (B-1’)(d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.55 (D-1’)(d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.26 (B-6’, D-6’)(td, J = 12.0, 4.8 Hz, 2H), 4.13-4.07 (B-6’, D- 6’, C-5’)(m, 3H), 3.94 (A-6’, C-6’)(br. d, 2H), 3.85- 3.82 (A-5’)(m, 1H), 3.70-3.68 (D-5’)(m, 1H), 3.66- 3.62 (B-5’)(m, 1H), 3.61-3.56 (A-6’, C-6’)(m, 2H), 2.09-1.98 (m, 54H).
D. 結論
従来の分析化学の手法では含量規格の設定が 困難な添加物について,指標成分と同一の若し くは代替物質の定性用又は定量用標準品の全 合成ルートを確立することで新たな分析法の 開発を行い,簡便且つ精確な規格試験法の設定 を具現化することを目的とした.本年度は,立 体選択的なクロシン合成のためのモデル反応 用化合物を合成し,反応の検討を行った.今回 は基質の溶解性の問題で立体選択的な合成法 に適用することはできなかったが,均一な成分 の含量規格の設定のためには,立体化学を制御 可能な合成法は重要であるため,継続して検討 を行う必要がある.またクロシンの化学合成の ための別の方法として,クロセチンの部分構造 を有するジカルボン酸化合物に対して,縮合剤 を用いたカップリング反応による種々のカロ テノイド誘導体の合成も検討した.検討した方 法を利用することで,クロシンの前駆体として の類縁体を合成することができた.化合物の立 体化学の制御や反応条件の検討による収率な どに改善の余地があるものの,この方法におい ては,試薬の当量数などの反応条件を調節する
ことでFigure 2に示すようなクロシンの類縁化
合物の他,様々な誘導体も合成が可能と考えら れる.
完全化学合成によるカロテノイドの安定供 給ルートが確立された後は,研究目的②に関す るProof of Concept (POF) Study Designとして,
トリエン,ペンタエン骨格を持つカロテノイド の代替化合物を合成し,クロマトグラフ法によ る定性用又は定量用標準品としての規格設定 を行う.
E. 参考文献
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Chem., 2006; 3, 35-38.
2) Chatterjee S, Moon S, Hentschel F, Gilmore K, Seeberger P-H: J. Am. Chem. Soc., 2018; 140, 11942-11953.
3) Uekusa Y, Sugimoto N, Sato K, Yun Y-S, Kunugi A, Yamazaki T, Tanamoto K: Chem.
Pharm. Bull., 2007; 55, 1643-1646.
F. 研究業績 1. 学会発表
なし
G. 知的財産権の出願.登録状況 なし
158
Scheme 1. Chemical synthetic route of crocin.
Scheme 2. Synthetic route of carotenoid compounds.
160
Scheme 3. Model reaction 1 for a stereoselective synthesis of crocin.
Scheme 4. Model reaction 2 for a stereoselective synthesis of crocin.
162
Scheme 5. Synthesis of carotenoid derivatives.
Scheme 6. Synthesis of crocin and crocin derivatives.
164
Figure 1. Structure of acetylated crocin derivative 15 obtained in this study.
Figure 2. Crocin and crocin derivatives.
166
Fig. 1 1H NMR spectrum of compound 2 in CD3OD.
abundance 01.02.03.04.05.06.07.08.0
X : parts per Million : Proton
10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 -1.0
6.465 6.460 6.454 6.448 6.141 6.128 4.862 3.995 3.302 3.300 1.778 6.02
4.06
2.02 2.00
Fig. 2 1H NMR spectrum of compound 3 in DMSO-d6.
abundance 01.02.03.0
X : parts per Million : Proton
10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 -1.0
9.469 7.249 7.233 7.000 6.995 6.987 6.982 3.364 2.492 2.490 2.487 1.945 1.907 1.8096.00
2.14 1.94
168
Fig. 3 1H NMR spectrum of compound 4 in CDCl3.
abundance 01.02.03.04.05.06.07.08.09.010.011.012.013.014.015.016.017.018.0
X : parts per Million : Proton
9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 -1.0
7.301 7.298 7.287 7.285 7.283 7.272 6.807 6.802 6.794 6.790 3.782 2.012 2.010 1.669 -0.000
6.08
6.00
2.19 2.03
Fig. 4 1H NMR spectrum of compound 7 in CDCl3.
abundance 00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.11.21.31.41.5
X : parts per Million : Proton
10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0
8.028 7.265 7.260 6.893 6.891 6.852 6.849 6.839 5.757 5.750 5.743 5.288 5.273 5.246 5.232 5.154 4.323 4.302 4.294 4.126 3.883 3.873 3.870 2.962 2.956 2.889 2.086 2.039 2.027 2.012 1.838 1.817 1.254 1.064 1.059 1.051 1.047 0.005 0.000 -0.006
12.49 5.88
4.17 2.952.70
2.08
1.87 1.11
1.071.06
1.00
0.99 0.22
170
Fig. 5 1H NMR spectrum of compound 10 in CDCl3.
abundance 00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.11.21.31.41.51.61.71.81.92.02.12.22.32.4
X : parts per Million : Proton
10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0
7.372 7.369 7.366 7.362 7.351 7.332 7.330 7.269 6.966 6.914 6.902 6.453 6.447 6.441 5.808 5.795 5.533 5.181 5.173 5.164 5.156 4.314 4.306 4.293 4.136 3.908 3.899 3.895 3.891 3.887 2.101 2.097 2.092 2.070 2.053 2.050 2.046 2.021 1.612 -0.000
31.30
3.69 3.662.29
2.13
2.00 1.95
1.39 1.34 0.87
0.86
Fig. 6 1H NMR spectrum of compound 13 in CDCl3.
abundance 00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.11.21.31.41.5
X : parts per Million : Proton
9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 -1.0
7.279 5.543 5.526 5.510 5.449 5.443 5.437 5.215 5.091 4.972 4.581 4.567 4.237 4.232 4.000 3.994 3.718 3.611 3.601 2.969 2.100 2.083 2.073 2.058 2.046 2.031 2.022 2.008 1.983 0.000
21.65
1.77 1.33
1.32
1.29 1.03
1.00 0.99
0.99
0.99 0.73
0.73 0.73
0.700.70 0.31
0.26 0.24
172
Fig. 7 1H NMR spectrum of compound 14 in CDCl3.
abundance 00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.11.21.31.41.51.61.71.81.92.02.12.22.3
X : parts per Million : Proton
9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 -1.0
7.382 7.364 7.353 7.333 7.263 6.742 6.734 6.668 6.429 6.423 5.790 5.778 5.535 5.303 5.179 5.169 5.162 4.314 4.307 4.136 4.115 3.904 3.901 3.898 3.891 3.887 2.097 2.090 2.068 2.046 2.037 2.028 2.014 1.577 0.000
39.30
9.15 3.18
3.01 2.26
2.20
2.00 1.13
1.12 0.91 0.29
0.26 0.16
Fig. 8 1H NMR spectrum of compound 15 in CDCl3.
abundance 00.010.020.030.040.050.060.070.080.090.10.110.120.130.140.150.160.170.180.190.20.210.22
X : parts per Million : Proton
9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 -1.0
7.433 7.286 7.283 7.264 7.261 7.240 7.236 7.233 7.084 6.754 6.742 6.730 6.402 6.397 5.757 5.743 5.509 5.212 5.196 5.186 5.058 4.568 4.554 4.254 4.111 3.932 3.648 3.635 3.613 3.603 3.594 3.585 2.022 2.019 2.014 2.005 1.999 1.993 1.677 1.626 1.573 1.550 1.528 1.525 -0.000
54.00
11.09
8.09 4.94
3.08
2.07 2.14
1.92 1.83
0.98 0.99
0.80
174