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棚 町 知 彌

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Academic year: 2021

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(1)

加能連歌壇史彙草・その二︵中︶

要旨本誌n号に発表した﹁能順伝資料﹂のその五

加能連歌壇史藁草.その二︵前︶

ならびに︑後記する各稿を承けての︑文字通りの﹁続稿﹂であるが︑本稿ではとくに︑大阪大学文学部国文研究室所蔵

・含翠堂︵土橋︶文庫資料により︑延宝年間の能順を中心とする北野宮仕中の好士の修錬の一端をうかがう︒

北野天満宮の連歌資料として別にとりまとめらるべき慶安五年・元禄十五年両度の万句には︑能順の参加が顕著である︒その余の能順の作品は続稿・その二︵後︶において︑ほぼ全容をまとめる見込承にある︒ l能順伝資料・その八1

棚町知彌

− 1 7 5 −

(2)

能順伝資料翻刻一覧

H北野学堂連歌史資料集︵貞享年間︶

︵昂部資料と考証﹄7号︑昭鯛年2月刊︶

口能順伝資料・その二︵預坊時代・前︶

︵﹃有明高専紀要﹄n号︑昭帥年1月刊︶

日能順伝資料・その三︵預坊時代・後︶

︵﹃有明高専紀要﹄哩号︑昭証年1月刊︶

四宗因点﹃延宝五年北野三吟連歌﹄

︵晶離資料と考証﹄加号︑昭開年2月刊︶

国加能連歌壇史藁草・その二︵前︶

︵﹃国文学研究資料館紀要﹄n号︑昭帥年3月刊︶

八作品一V明暦2年9月筋日玉何﹁松に菊﹂利常等

八〃二V明暦3年8月弱日何田﹁千世の秋﹂利常等八〃三V寛文2年n月8日初何﹁庭やこれ﹂宗因等八〃四V寛文4年5月吉日夢想﹁夢はいつくそ﹂元林等

八〃五V寛文8年9月正的独吟白山法楽﹁花の名を﹂

八〃六V寛文9年正月吉日夢想﹁玉松も﹂能順・春林等

八〃七V﹇延宝初頃︺何路﹁五月雨は﹂能順・政長等

八〃八V元禄4年6月7日何衣﹁雪遠く﹂元故・瑞順・能順三吟

八〃九V元禄4年7月何路﹁下荻の﹂政右・応信等

八〃一○V元禄4年︑月5日追悼﹁は入き木の﹂能順・瑞順両吟 八〃二V元禄5年正月岨日何船﹁晨明の﹂能順・直忠等八〃一二V元禄皿年正月山何﹁夕月夜﹂日祥・快全両吟八〃二一V元禄妬年9月蛆日花何﹁村薄﹂踞道・能順等八〃一四V宝永4年n月朋日能順一周忌追善独吟︵自注︶﹁氷るなよ﹂歓生

八〃一五V正徳4年哩月飢日何人.村の﹂瑞順・慶阿両吟

八参考一V﹃燕台風雅﹄抄

︵一︶今枝近義︵宗二・直恒・直方︶

︵二︶奥村徳輝︵三︶竹田︵忠種・︶忠張

︵四︶津田孟昭︵五︶本田政敏︵六︶脇田直能

八能順一V﹇能順天和三年より発句書留﹈

内能順時代人の連歌史観・参考資料

︵﹃連歌研究の展開﹄昭帥年8月︑勉誠社刊︶

二十四人連歌仙︵金沢市立図書館・藤本文庫本︶

能順師北山之記︵同右︒神宮文庫本﹃歌道聞書﹄の別本︶

㈲翻刻・聯玉集︵乾・坤︶

附・能順交遊人名索引︵稿︶

︵﹃国文学研究資料館紀要﹄哩号︑昭田年3月刊︶

他に﹃白山万句I資料と研究﹄︵昭帥年5月︑白山比嘩神社刊︶所収

加能連歌壇史藁草.その一

があり︑その内容の概要は本稿末尾︵二四六・ヘージ︶に収める︒

(3)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

八作品︵中︶一V

東北大学狩野文庫所蔵︑写本﹃連歌集﹄

八狩四一○九五一一Vによる︒

明暦四年六月廿八日

︵ママ︶岩岡験校興行

﹇岩舟検校﹈︵句上︶うれしさの宿よりあまる泉哉昌程茂りて松のかけふかき庭城泉卯花はふりをける雪の詠にて昌陸月に程なくあけぼの上空昌隠秋風やかりねの夢を誘ふらん長眼はしゐせし夜に雁の来る声城空白妙に真萩の上の露承えて連弥野辺にいつれは晴る朝霧正的

ゥ日のかけや小沢の水にうかふらん城湖 板津正的作品抄・つづき

l﹃白山万句﹄p柵I柵・

︿作品︵前︶七﹀p川l川参照I 氷なかる上田つらはるけし萌そむる草村毎の青やかに

︵ママ︶春駒とやいさ承行道

雪の後山立ならすかりころも

あけてあらしのたゆむ篠はら

蕊や岩ねの松のうす煙

磯屋にあまのもしほたくらし

長雨も晴れはなきし浦の波

くれひや上かに住吉の月

又もこん祭近つくおとこ山

大宮人の霧わくるゑち

かさしにと折は挟も花の露

春おしまる入藤の誰彼

二いさまちてやょひに聞ん口烏

音つれすてし窓の鶯

冴回こすの外山に日は入て

をく霜しろき菌のくれ竹

仕業とて夏苧や賤か晒すらし

執 安 守 眼 泉 陸 一 程 湖 治 弥 的 眼 空 陸 隠 程 泉 筆 一 治

(4)

たゆるあつさはさそな草茨

心から情ぎは玉の承きりにて

にほひや露に残る橦

暴風たつ跡はのとけぎ月の下

むなしぎやとりおもひやる秋

妹とひし里はあれつ上冷しゑ

わか泪をもそふる鹿の音

今朝まても木葉散しく旅衣

こゆへきかたや霜の山道

ニゥ冬来れは柴取運ふ手を寒承

度j︑酒をくむ市の場

濁世としるは心のかくれ家に

時にしうつる人のかしこさ

春秋をたれとしてよむ和寄

山もとくる上このみなせ川

側かなる霧間の月は影淋し

露ふく音もかはる初風

鳴虫をとめよりぬれは袖凉し

湖 泉 空 一 程 眼 的 陸 隠 程 泉 治 一 的 湖 空 弥 隠

積 独 露 深 打 し 傍 あ い あ 問 そ こ こ 葛 雪 里 た

呈字毒勇琴薑鑿蕊蟇孟星二呈壼婆茱〈f

ふ ま 重 お く り 霧 に る 命 を 雫 別 の み す の こ 枕 は て も 芦 い や つ は も 恨 も を と ね ゑ さ し の か う の の ら へ ら 親 た て ま 慕 秀 け は の か 野 塵 つ つ 色 ほ し た ね の の 歎 さ ふ 、 ‑ / ぎ え 柳 ひ 上 を き る に な う つ 出 す ゑ く る 寺 行 な い や 跡 は て 夜 な ゑ ら る る 上 な 此 雨 ふ ひ ら く 雲 は ら も 半 る の の 明 こ む き ゆ の り の ぬ む の る ひ う の 比 村 秋 石 と る 中 ふ 日 て 声 花 ら 埋 か

く 風 潟 の 学 盛 む 也

か し 月

葉 に

隠 程 的 空 弥 陸 泉 湖 程 治 眼 的 一 程 陸 隠 治 弥

(5)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

はかなょはひもしるき落髪

三ゥ例ならぬ身とて退く宮仕

左遷ぬるはいかにかなしき

見わたせは花もなけなる沖つ島

はてはかす承に遠き海つら

別行雁は雲ゐに飛消て

明かたふかくざはく友鶴

真砂地にうち散雪のいかはかり

吹しく風に残るしら菊

小薄も雛となりて陰高永

外面のむしははたをおる声

露か上る草の戸さしはかため置

すて上浮世の月も見ぬ人

おもひ出て忍はしいか入身の昔

色このむ名の立てくるしき

名いと入しきもの疑はいか上せん

こなたはしらぬうらゑなりけり

誰か今乱せる国のまつりこと

程 湖 的 泉 隠 陸 一 程 治 的 空 弥 湖 隠 程 眼 陸 一

かへりゑもせぬおこりあやしぎ

ならへぬる道の車も先立て

痩ぬる駒や重荷おふらし

草苅のそても濡そふ夕時雨

かの岡こえにまよふ八重霧

月遅き末のかけはし行やらて

ふまんはあたらかけの紅葉上

酔ぬるや円ゐにたえぬ小松原

跡たれし野にあふく神事

こちたきは今日の小汐の行幸にて

君と臣のちぎり久しき

名ゥ望むこそ其程j︑の位なれ

あけも承とりもましる衣手

このくれに催し出しまりの友

やかて小弓や引すてにけん

所えて蝶烏遊ふ春の野に

かす承のまかぎ日は静か也

咲花も大内山はとぎはにて

隠 的 陸 的 程 一 湖 空 的 程 治 陸 弥 隠 泉 一 陸 治

− 1 7 9 −

(6)

八参考・その1V右の百韻につづけて︑左の百韻が収めら

れている︒﹁序的﹂あるいは正的と同一人欺︒

﹁鳴雁の月をみせたるね覚かな昌隠﹂昌隠焔他阿︑祖白田覚阿辺安一︑聴意8序的7城空8︵覚阿︶弥阿9

祖阿7執筆1

興行年時なし︒句上なく︑句数は編者補︒ 梅散ぬれはかほる山ふき

昌程岩舟検校城泉

昌陸

昌隠

長眼城空

十 十 七 八 十 一 九 三

松坂検校連弥

正的城湖

守治

安一右勃

一 九 八 八 九 七

八参考・その2V﹃国文学﹄闘号︵昭和印年︑月︶

田中隆裕両氏により紹介された

頼政神社蔵﹁諸大家連歌帖﹂の伽に

寛文四年四月廿六日

賦唐何連歌

忍ひ音や待人はつる雲公

初卯の花をめてはやす暮

山里の垣ねに夏の月出て

水のをとそふ雨は暗けり

竿とりて行舟はやき滝津浪

明離れたるむらの中川

そよき立竹や烟をはらふらん

霜ふむとりのねくらさる声

ウ分出し野は冴さゆる朝ぼらけ

咲ぬと冬もとむる梅か上

かせわたる太谷のおくは杳にて

﹇以下省略﹈ に鶴崎裕雄︒

伝 昌 由 随 能 宗 昌 正 昌 吉 祖 才 程 純 珍 碩 治 勃 的 隠 深 白 1 1 2 8 9 9 9 1 0 1 0 1 0 1 0 1 2

(7)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

八作品︵中︶二V

﹇延宝三年四月二十日﹈

﹁江守値孝身まかり給ふ時

江守是屑追善独吟

の︵聯︶知人もなきや忍音子規

短ぎ夜半の夢の暁

月宿る仮疾の袖は露に濡て

山路の秋の風の寒げさ

陰行は落る木葉の色ノーに

苔地の片辺水そ流る上

岩伝ひか上れる橋は幽にて

里一村の遠き河上

ウ呉竹の烟灰めく夕日影

しばし雲の酒ぬる跡

絶す猶すさふ嵐の音はして

行衛も同し空の浮雲 小松天満宮・北畠宮司家所蔵︑写本﹃﹇快全・能順等百韻連歌集旨による︒

独吟一こ

︵﹃聯玉集﹄畑詞書︶

明日は又越なん峰と詠やり

花故旅に春送る道

若草をあかぬ枕に引結ひ

夜も長閑なる春日野の月

音聞は佐保の川波更渡

哀千鳥の妻問てなく

あはてしも悲しき里の帰るざに

しほる挟も人は思はし

数ならぬ身の歎こそはかなけれ

いつも恵を頼む世間

二邪のなさを知らし神慮

つらねさらめや大和言の葉

豊なる大宮人の交りに

今日の物見は殊更の庭

桜花又白雪と打散て

帰る山辺の夕昏の春

狩残す片岡遠み鳴維子

霞の中の道は知れす

(8)

曙に誰か先達旅の空

目覚せとてや鐘響らん

手枕にかたらひ顔の月澄て

独悲しむいにしへの秋

住ま入に里は露けき浅茅原

間もやすると待そくるしき

ニゥ他人の契りも思ひ捨兼て

恨ても又いひよれる中

難面も頼れぬへく成けらし

世をしらしやはおよすけし袖

政あつかる道の学ひして

民を憐む心深しも

寒さをや夜のおましに覚ゆらん

簾も白く月そ傾ふく

露は霜に移る剛の閑にて

残れる虫の声幽か也

認来れは起て鶉の跡もなし

小笹むらノ︑打座く陰 花落る太山の水の音さひて霞の底に遠き谷川三消果ていつこの余波雪の色

野はかけろふのもゆる末ノー

烏声聞ならしつ奥行道に

夜は灰にも明る関の戸

杉村の梢に雲の棚引て

時雨をのこす嵐吹らし

雄鹿鳴山陰くらき夕月に

更て嵯峨野の秋の淋しさ

萩薄乱れて色も一盛

離の露の消行は惜

立凉む庭に朝日の早指て

近ぎ外面の空蝉の声

楢葉の片枝も繁ぎ下陰に

いつ木綿かつらか坐る神山

三ゥ君か代やさそな久しく祈るらん

老の末ともなれる法師

(9)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

御仏の迎計を思ひにて

寺は心のすむ所なる

松風を聞添つ上も見月に

来ぬ人故の長き夜なj︑

憂泪払ひ侘てもうつ衣

うかれ果ぬは哀れ古郷

流石にも親の徒や思ふらん

ともに位をゆつる陸しさ

絶ぬこそ其名もしるぎ家の道

笛の調は猶ぎかままし

立よれよ雲の上人花の本

かさしに折らん藤も咲けり

名閑なる多枯の浦浪霞む日に

富士の高根は朝明の空

咲暮す昨日の風や雪ならん

問帰りぬる跡の松の戸

うさそ添云さらましを身の昔

留めかねたる泪はつかし わりなくは恨しと思ふ別路に

︵ママ︶さの承心の何若ひぬる

くり返し猶はたうたふ酔の内

明るもしらぬ月の伴ひ

木隠に紅葉莚を敷馴て

残りすぐなき秋おしむ山

冷しく曇かちにも打時雨

消しかたゑや夕なるらん

名ゥ間来れは野は深草の物淋し

冬達渡る木枯の風

白雲の入日を薄みた人よひて

水遠ぎ江のかたはらの山

等閑に雁な帰りそ花の時

また春雨に明ぬ半天

三月唯今夜一夜を頼にて

小弓も奇も世は夢の程

− 1 8 3 −

(10)

l﹃白山万句﹄所収八参考作品一九VH四

pⅧlⅧ参照

八作品︵中︶一二一V霊轆銅轌鍾酵号

天理図書館所蔵︑写本﹃連歌集宗養等

百韻外﹄八れいl釦Vによる︒ 横山左衛門忠次︵如心︶追悼作品

如心公はいにし年の夏︑なや承の程すさゑにと

てもとつぎし道のつらねうた度ノーなりしか

は︑敞盧にてもと催せしに︑いといくはくもな

くて︑右の上句をくり給へるに悦ひつ上︑かく

例の連衆をめくらし︑寄仙の数にも及けるに︑

いと暑き比ほひ︑あっしざも俄に重りぬるに

や︑あへなく夏野の露とぎへ給ひぬ︒かれこれ

の残多さもいへともさらなり︒此程其草書見出

し侍るに︑有為転変の理り観するにも猶あまり

あり︒六十四句を彼の梵音の数にもたくへて︑

けかしき口なから百韻に綴りなし︑一めくりの 夕立は袖にわき出る泉哉むかへん夏の月をまつ庭我宿に花見し春を送り来て聞なれぬるは軒のうぐひす閑なり霞む外山の朝なj︑尾上の雪も隙やそふらん旅人のたとりこそゆけ岩根道水やを求て駒やかはまし

へへゥ秋来てもはつかり衣暑日に

また月出ぬ野への杏けさ

八重降て霧や隔る鐘の音

暮ぬる山の寺は淋しき

摘置し樒や友と焼ぬらし

戒あれはとらぬさかつき

籠れるは親のおもひの日数にて 手向にもとおもひ侍るものなり︒

千時延宝八年六月上群

如心昌陸

昌純

城弥

呑了

昌敦

栄出周旋

昌程

執筆

(11)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

涙の色もうぎ朱の袖

す上むにも短き位歎くらし

ょ承伝へたる大和言のは

蔦楓茂りを分る細道に

入もて行は凉し谷合

川上は下津瀬よりも音添て

水やひた上く長雨の空

二国士となりし始をおもひやり

うちなかめぬる淡路島山

住吉の里を朝気に立出て

いかに置らしかた削の霜

夜や寒き松風落る注連の内

更て庭火の消つくす跡

百敷も忍ふあたりはしめやかに

おもひうかれて響く琴の音

今来むと下待にげる夕つ方

よそにこひんの文は恨めし

雨雲や背子か栖もかくすらん

敦 純 弥 心 陸 旋 程 敦 出 弥 了 陸 純 程 心 出 旋 了

月より後の枕さひしも

なからへはなれもよはるや虫の声

霜露をへて住る蓬生

﹇以上三六句︑延宝七年夏興行︒

以下六四句︑昌陸独吟︒︺

ニゥ主なき卿もたえぬ秋の水

とへはあはれの深き宇治山

郭公難面妻に音を鳴て

五月雨近し物おもふころ

立花の薫る夜も憂丸臥に

見つるむかしの夢のはかなさ

書置や壁に残れる筆の跡

聖の道は仰いもなし

しるし得る類ひ数多の行ひに

やせおとろへし姿あやしも

心た入我にもあらぬ病して

ゑたる生酒の酔の度ノく〜

月花の折をたかへぬ交りに

出 旋 了

− 1 8 5 −

(12)

夜さへ梅を愛はやすらし

一一一長閑さにおろさぬ窓や北南

降も小雨の霞む江の村

夕かけの芦火の煙たヘノ︑に

干侘ぬらし難波女の袖

植るてふ比は田面にいとまなゑ

行も帰るも嚥な岡こえ

我庵に残れる年は只一夜

老のね覚の哀そふ床

さらにたにもろき泪を秋の月

物なげけとや天つ雁かね

たらちねの隔つる中の身入て

いかにすへけん通路の関

皇の御代こそ讓る折ならめ

小田のざかひや畔のかたはら

三ゥ一本の古木の陰にさし柳

巣を出て猶遊ふ雛鳥

春風は鶴の毛衣吹すさひ 霞の洞やむへかすむらん誰しかも惜ゑて月を水瀬山夕の露に菊そうつるふ定ぬは秋の胡蝶の舎にてまつ虫のなく野こそ広けれ別してかなしき道の程ならしざそはて妹かなと渡川我落す涙の滝は増る世に猶うぎ事の絶ぬ山住咲はとく散や待れし花の嶺松の永さほは幾春の陰

名震いを池の心の水広み

奇にもきけと蛙なく声

舟人の棹取なかれ杏にて

淀野をゆけは曙の空

おもふこそ月の都の名残なれ

つかぬ旅ねの夢は冷し

萱刈ておほふ丸屋も洩霜に

(13)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

軒はの萩はうら枯ぬめり

問来ぬにかことかけんもはかなしや

他し形見の帯は何そも

衣ノ︑の後の朝に帰る雁

ひとり春日をくらさんはうし

あたらしや人にしられぬ山桜

三輪の檜原はいかに木深き

名ゥ侘しらにましらなく也雪の中

なつめる馬はす上みかねつ上

勝負のまたかたつかぬ戦に

いたく心をいるか乱碁

夏なしと簾をまきの板庇

菌は若葉の花も色こぎ

忍へとや世に埋もれぬ名取草

情ありしか跡もとふ道 八作品︵中︵三二︶露窄銅唾舘酵号

天理図書館所蔵︑写本﹃連歌集宗因

大神宮法楽等﹄八れぃl肥Vによる︒

横山氏忠次いにし年草庵にての会に﹁ぎかし

かし都ならすは時烏﹂といふ上句を給れる後

程なく無成給ひしをおもひ出し

ぎかしかしきけはうぎ世の郭公昌程したふかひやは短夜の月昌陸枕かる木の下風に花散て昌純分残したる道のわか草昌敦村消の雪ふむ野への離駒呑了

梺の里の朝日閑けし周旋門田行水や灰々けふるらん陸

竹の葉伝ひ霧なひくらん

ゥ色々の小鳥やわたる園の内虫の鳴音のょはる明方純

目覚せは月漸寒き小筵に 延宝八年六月十三日

− 1 8 7 −

(14)

かたしぎ衣濤しぎるらし

橋姫や妻待侘る袖の波

逢せはいつの我思ひ河

書なかす中の水茎度ノーに

もろき泪は名をもくたさん

埋木の身は人しれす年古て

松を友とや住谷の蓄

聞は只床の物なる猿の声

ねられいま上にうぎ岩枕

関守も都の夢路ゆるさなん

波の音のみすまのうら船

二汐風やくもりもはらす一時雨

夕日のもるも寒き笘葺

軒の内に神烏鳴よる小田の庵

垣ねの道は人かよふらし

かこつこそ他なる妹か心なれ

うはへの契あやなことのは

神かけて思かはすはたかはめや

了 敦 純 陸 程 了 旋 純 敦 程 陸 旋 了 敦 純 陸 程 了

かたは有ともよしやあはなん

小車をくたくはかりの前渡り

くれぬにかへる里の炭うり

苦しむはよるも専の宮仕

とのゑの月に嵐ふく也

山のは上いかに見つらし秋の霜

空冷しきかさ生きの声

ニゥうら枯る洲崎の芦は波越て

傾く陰の淋し浜松

幽なる西日に干や海士衣

真柴ひろひてかへる室の戸

山合の菓なからに朽けらし

さけふましらや冬を侘らし

忍はる上雪の御幸の跡暮て

よしの入春や残す花の名

隠家のやぬしは露と消し世に

くまて氷やとけぬいさら井

道とをきあら田は去年のま上ならし

旋 純 敦 程 陸 旋 了 敦 純 陸 程 了 旋 純 敦 程 陸 旋

(15)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

しけぎ蓬はひこはへし陰

月やとる浅茅か露の玉添て

更るひかりはいつか稲妻

三□りにし名残身に入天津人

恋の烟やたくふ富士のね

清見潟波の立ゐに物思ひ

泪もざそな啼村衞

霞ふる夕侘しき泊舟

木陰はわきて冴る松風

一夏を結ひてやよる石の床

悟得んとて蝉を聞山

ともしけつ螢はかなく明る夜に

軒端に白き月の薄霧

夕顔は何の花そと秋かけて

美豆野の薄誰まねくらん

あるし無淀の住ゐは物淋し

さし捨舟や岸のかたはら

三ゥ鷺ねふる流の光沈むらし

了 敦 純 陸 程 了 旋 純 敦 程 陸 旋 了 敦 純 陸 程 了

波のまにj︑あそふ鱗

風も猶ひ生かす琴は唐めきて

舞のかさしの紅葉散場

欄をさやかにてらす入日影

牛もなやむやいと暑き比

草刈の休らぬ野路は杳にて

しとろもとろや分しかや原

けたもの上岡へにかよふ月の暮

外面もある上村の露けさ

八重霧を頼もしけなる雛にて

朝なノ︑ょふ池の友鶴

花またて汀の雁は帰るらし

春雨過し真砂地の末

名催すは雲井の庭の賭弓に

国の司をゆつりぬる人

賢くもをふしたてたる心にて

おこりならは入学ひをもせし

法を聞為とやきぬる墨衣

旋 純 敦 程 陸 旋 了 敦 純 陸 程 了 旋 純 敦 程 陸 旋

− 1 8 9 −

(16)

やつれいとはて薪こる袖

ふる雪やいそく小家の冬籠

難波田舎と嵐烈しも

心あらはおしまん梅の紅葉にて

起出る野の月の明灰

重れる霜にひえけり寺の前

男鹿もこえぬ岨の梯

秋されは賤か山畑守るらし

︵力︶こはるれは又かこふ笹の屋

名ゥ承それをや払ひ侘たる旅衣

たとる木曾路の遠き行末

能順・北野宮仕仲間との修錬抄

I能順伝資料・その四・宗因点﹃延宝五年仲秋北野三吟連歌﹄参照I

︵﹃近世文芸資料と考証﹄︑号所収︶ 純 敦 程 陸 旋 了 敦 純 陸 程 了

間よらん舎りもあらす暮日に

あふてふことはいかに占方

ょなjく︑の夢の悌あやしゑて

出しや花にあかぬ玉しゐ

うたふ詩は三月のとちか歎らし

今はとなきを送る春の野

昌 昌 昌 昌 敦 純 陸 程

十七

十七

十七

十六

景 周 呑 允 旋 了

十六

十六

允 旋 陸 程 了 旗

(17)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

八作品︵中︶四V

遅桜うれしき春の名残哉

帰らてそ啼庭のうぐひす

霞む野を笛の内の雪消て

明る朝気の風しつか也

さ入波に行舟ゑゆる浦伝ひ

泉良の栖はいつこなるらし

暮る夜の芦火も月も幽にて

時雨冷し遠の山もと

ゥ承たれ散紅葉や分る鹿の声

いつしか秋も末になる比

風寒承古郷思ふ旅の袖

かり寝は夢を結ふともなし 延宝八庚申年三月

﹁年経て都にのぼり旧友にあひて﹂

︵﹃聯玉集﹄郷詞書︶ 大阪大学文学部国文研究室所蔵・含翠堂︵土橋︶文庫本︑弓連歌集旨八H8.四Vの仰のうち

随 能 能 順 珠 通 順 弥 通 弥 通 順 珠 通 順

待侘ぬとばすはいかて明さまし

うぎに堪しの哀とをしれ

人も身も恨果ぬる世中に

跡絶ぬへしふかき奥山

惜むこそた上一もとの花の陰

我蓄に承る梅をな手折そ

へへ避遁に問もやすらん春の友

雨のうちには啼ほと上きす

月すめは悲しき猿の声聞て

峰のあらしに夜こそ長けれ

こ隠家のね覚は秋の物なれや

露のやとりとなる苔の袖

忘草摘ぬるかひもなき跡に

絶し人ゆへ立名物うき

相思ふ中にこそ身も惜からね

遠きさかひもともに行かはや

飛烏はいつくとまりの山桜

春より後の峰のしら雲

珠 通 順 順 弥 通 順 弥 通 珠 通 順 弥 通 順 弥 通 通

(18)

更にまた去年の嵐や帰る覧

入江にはるかにひたす夕浪

︑へ影うかふ汀の月のほのかにて

薄霧なひきそよぐ芦原

秋もはや置霜寒ぎ朝朗

門田の雁の友したふ声

ニゥ山里に侘とも人やしらさらん

おもはすも身のか上る長命

こ上ろ只とむへぎゆへもあらぬ世に

哀の添やすくせなるらん

二道も頼む方にや定めまし

真ならぬこそうたかはれぬれ

聞法や心さしにも寄ぬらん

仏のちからた上ねかひてょ

身に重き罪はのかれぬん物ならて

︑︽筑紫の海の月や見果む

まとろまて秋の夜すから行舟に

千鳥数啼霧の遠方

弥 通 順 弥 通 順 弥 通 順 弥 通 順 珠 通 順 珠 通 順

深山木の梢のいつち花ならん

夕の空の鐘は長閑し

三したふかひ有て加る春の日に

をくらされても野路の伴ひ

誰とてもか他し烟にもれなまし

へ︑恋には胸のをくるしむとしれ

︷へいへはえにいはいを浅くなすもうし

空おぼれする人のつれなさ

筋もなき事ならましや我恨

出ていにしともとぎをそおふ

頼ぬるゆかりも思ひ捨る世に

いつ迄か身を侘てをくらん

春秋を哀と見るもこ入ろにて

雪の上なる月はあやしき

陰に散花をは風も払ふなょ

人もこそ来れ藤の黄昏

三ゥ霞をも忍る里のたよりにて

思ふにあは入雨もいとはし

弥 通 順 弥 通 順 弥 通 順 弥 通 順 珠 通 順 弥 通 順

(19)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

果しらす袖の承ぬれて憂泪

身はうぎ舟のなかれてそゆく

今は只よるへなぎ迄衰て

あてはかなるや猶こ上ろはへ

姿さへた上にはあらぬやはある和歌

へへへへへへへへけふはかりとそ出る御狩場

萩薄秋の盛や思ふらむ

嵯峨の入露にむしもこそなけ

ふり行を月に憐む塚の本

いかに見えつる旅人の夢

憂契空おそるしく歎く夜に

ふたかる方もいゑかねてとふ

名頼まれぬあすの心を思ひ侘ひ

ざそふにつるL身はあちきなし

貞にはまた誰としもいさしらて

面ぎらひこそいはけなきさま

むなしぎを忍ふ涙のと入まらす

秋も過来てまた年のくれ

珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 弥 通 順 弥 通 順 珠 通 順

帰らぬを待そくるしぎ遠津人

住やうかれん荒増るさと

此比の野分にしほる袖もうし

露をかたゑの花の草ノく〜

七夕をまつる阿の跡さひて

月は入つ上宵過る空

あかて只しはしと思ふかたらひに

帳の奥まる人はつらしも

名ゥけ近くは馴しとするや恥ぬらん

さすか情を見する玉章

忘るやとおもほゆる迄問絶て

共に住んと契りつるやま

春は花冬の詠は雪の時

光をいは上明ほの上月

身にしめて尚声そへよ神々楽

千世もと祈る我君の□□

︹句上︑編者補︺能順三十二随弥三十三

丸 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 弥 通 順

(20)

八作品︵中︶五V

大阪大学文学部国文研究室所蔵・含翠堂︵士橋︶

文庫本︑弓連歌集旨八H8・蛆Vの側のうち

朝夕にうつるこ上ろや花盛

窓のむかひに霞む山の端

春の雪た入一村を余波にて

下萌渡る野は緑なり

︵力︶行水や末遙にも澄ぬらん

音も更ぬる川風の月

友よふや夜寒の空に啼衞

旅寝に秋の霜払ふ袖

ゥ笹の葉の深き山路に日はくれて

梢は雲のまよふ松かけ

柴の戸はいかに閑けき住所

塵を離る上こ上ろゆかしも 能通三十四午丸

能 随 能 順 弥 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通

身を替て仏の国に生るらん

拙ぎも尚法はたのまん

灯のひとつの影も闇からて

稀に逢夜は面はゆき中

情をもしらすと人やかこつらんし

へへおもひと入むな世もかりの巷

貧しさは侘るにつけてうからまし

いやしぎ業をならひやはする

月に袖秋の夕部はしほたれて

雁かね間は都こひしぎ

二山風も漸身にしゑて吹空に

野は深草の色かわり行

里とへは砧音して物寂し

末もつ上かい道かすかなり

白雪の分るまにj︑降添て

摘にも袖の若菜すぐなぎ

家つとにいさかさしてん梅の花

来ぬ人おもふ春の山踏

順 珠 通 通 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 弥 通

(21)

加能連歌壇史彙草・その二(中)(棚町)

古寺の霞む夕は静にて

鐘折j︑に打ならす音

久しくも寝覚おほゆる小夜枕

月はかりこそ身にそへる友

何事も秋となしつ上捨し世に

露なか入りそ墨染の袖

ニゥひろひ行爪木の道は寒からし

奥尚ふかきすさふ谷の朝かせ

一一へくへへ村j︑に山立のほる雲浮て

里や有らし松高きかけ

夕波に舟さしょする江を遠承

沖津塩路そかきくもりぬる

半空に鶴の翅の跡きえて

しはしひかりののこる遠かた

暮て行秋の形見や月ならん

閨の板間の霜やは冷し

︑︑きりjく︑す声哀なる暁に

思へはよわる老か身そうき

通 称 通 順 弥 通 順 弥 通 順 弥 通 順 珠 通 順 珠 通

花ちりぬ頼むは遠し後の春

なと音信ぬ藤の誰彼

三夏近き空としもしれ時烏

草の蕾に雨そ上くなり

いつはあれと尚さひしぎは夕間暮

帰らて語れまれに来し友

悔しさは尽せぬ物を身のむかし

うきを二度何頼ま坐し

実ならぬ使ゆくこそ立名なれ

またかりにても我や逢承し

徒にやゑねといふは難面なしや

恋に命もおしからんやは

身の程のかへり象すれは数ならて

人にゆつるもあはれゑとりこ

麻衾かくつも寒き床の月

霞降夜や更増るらむ

三ゥ打乱れうたふ神楽の声澄て

手向の幣に落る松かせ

通 弥 順 通 珠 順 通 弥 順 通 弥 順 通 称 順 通 珠 順

− 1 9 5 −

(22)

紅葉上も秋も限の立田やま

いつくなるらん男鹿啼暮

露時雨分て行野は物侘し

有にまかする霧の下道

残れるを月に折とる萩か花

とひ来て主を忍ふ古跡

中絶し程を思へは憂契

つな引にけるこ上ろはかなや

とめ兼て浪になかる入海士小舟

早ぎ瀬なれや行湊川

暮て尚音そふ花の山下風

春の別を鐘や告らん

名酒酌て長閑なりぬるける伴ひに

へ︽ヘヘ言の葉尽せしたふ古事

いふかしく思はるLこそ人の上

か入る憂身はさもあらはあれ

恋すてふそしりおふともいか入せん

心をかはせ年若きほと

通 珠 順 通 弥 順 通 珠 順 通 弥 順 通 弥 順 通 弥 順

才有にしたかひてこそ道もうれ

もとめさらめや君か後見

世中の事うつりつ上定まらて

春を思へはまた秋のいる

薄霧に夕詠する水無瀬山

ひや入かなれや滝浪の音

影情ぎ月は木の間の松の風

おかみするより宮居たうとき

名ゥ跡垂し神代やさそな遠からん

御所生の野へはものさひにけり

草j︑の茂りいつしか冬かれて

床に臥猪や霜を侘らん

人すまぬ蕾は荒たる山隠

道そことなき岡越のすへ

しのひとめかねぬいつくの花の匂らん

へへへへへ︑風もかすみにゆるき明ほの

﹇句上︑編者補︺能通三十五能順三十一

丸 通 称 順 通 弥 順 通 弥 順 通 弥 順 通 弥 順

(23)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

八作品︵中︶六V

大阪大学文学部国文研究室所蔵・含翠堂︵士橋︶

文庫本︑目連歌集旨八H8.四Vの何のうち

したはる上春のとまりはこ上ろ哉

馴こし花をおもかけのやま

白雲に有明の月や霞むらん

啼ほと上きすほのかなる空

急雨の降行里の遠方に

くれぬといそく道の旅人

声j︑に間なくもよはふ渡し舟

幾瀬の波のたちざはくらん

ゥ川かせに木葉むらノ︑散乱れ

茅原かすゑの入日寒けし

片山の陰野を見れは霜置て

れもかれj︑に松虫の啼 随弥三十三午丸一

随弥能順

能通

﹇無記﹈ 小夜ふかき秋のね覚は物悲し隠れよ月も思ひそふ床もしやとも雨には待む人ならて雲井隔つる中のはかなさ忘るなよとは契りしも徒に忍ひつる名をなともらしけん沈む身の世に在物と知もうし罪にまよばぬ玉としもなれ御仏の姿ならすや墨の袖うらやましくも住る室の戸二静けさやこ上ろにも似ぬ空の月

はらひ侘ぬる別路のつゆ

君を置思ひ身にしむ古郷に

恋しき文の便過すな

折袖の匂ひとも見ん花の枝

色もことなる梅の怪しさ

いつはあれと薄雪かすむ曙に

間そめはやなうぐひすの声

通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 詑

L 」

(24)

老か身も春を待こそ頼なれ

哀は草の冬かれの竜

寂しさや事間嵐夕時雨

妻とふ鹿のひとりなく山

いつしかに紅葉も秋も跡絶て

盛久しぎ園のしら菊

ニゥ冷しぎ朝気の月は霜の上

やとりを出て野にか上る道

末しらて心細ぎは旅ならし

︵力︶亦逢んとはちぎり置友

酌捨る名残有へぎ盃に

狩場にけふは暮らし果まし

避遁にざそわれ来る山桜

檜はら吹こす遠の春かせ

永日もかたふく影や曇るらし

消つ上跡も見えぬかけろふ

世の中は昨日の人の忍はれて

面かはりする白髪はうし

莞 弥 通 順 珠 通 順 珠 通

順 珠

いかはかり心に物を思ふらん

歎の承こそ筆にか上るれ

三をのつから口ふたかれる独居に

なすわざもなく眠る折︐I〜

暑き日は暮しかたくも苦しゑて

あなかましきる蝉の声ノー

山里の外面の梢夏ふかみ

楢の戦ぎに秋そ覚ゆる

分ならす交野の露に袖沽て

朝霧まよふ淀の川つら

指舟は月のいつくに音すらん

哀一ふしうたふたわれめ

かり初の契りなからも打解て

たのむけしぎはいとも物憂

世に逢をへつらはぬ社心なれ

道なぎ時そ下にうらむる

三ゥ亀山の物閑なる陰しめて

ざそなゑとりの洞のたのしゑ ﹇無記︺

通 順 弥 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通

(25)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

合つ上もて遊ひぬる和歌

長ぎ菖蒲の根こそしらるれ

五月雨は浮藻なかる上沼水に

末かけつ上もあら小田のはら

︵ママ︶都には立もあらぬ布留の里

侘ぬる身にも年は越けり

此春も花待かほの我命

馴し勘と蝶も来ぬらし

露しけふむしの声する古跡に

誰なかめよと月澄るくれ

秋風のす上吹渡る山のおく

岩かね枕夢たにもなし

名千鳥啼磯寝侘しき暁に

うしほを浪のよる清見潟

緑なる松原凉し三穂か崎

夕日ほのかに雨はれぬめり

霞さへともにさひしき軒の露

春も春かはあれし笹の屋

通 順 弥 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠

鋤かへす跡たにもなき小山田に

深くなりたる道の草々

︵力︶鶉臥野を遙にもたとり来て

秋かせ侘し片敷の袖

今夜もやあはて明さん月の下

うさの承見ゆる夢そかひなき

亦帰るためしもしらぬ別にて

千世もいつきの宮のことふき

名ゥ木高さの猶も添へぎ松の陰

雲なかくしそ初雪の山

明果る程待空のしの上めに

駒の音する関の戸の道

水清く落行岩のかたつ方

苔のむしろにおり居そよぎ

いざざらは髪にくらさん花の陰

かすみの酔をす上めいる宿

通 弥 順 丸 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠 通 順 珠

− 1 9 9 −

(26)

八作品︵中︶七V

大阪大学文学部国文研究室所蔵・含翠堂︵土橋︶

文庫本︑弓連歌集置八H8.四Vの仰のうち

花に月光をちらす木の間哉能順霞む山路の静なるくれ能東鳴烏も春と上もにや帰るらむ能拝園生いつしか茂りぬる陰随珠

栽つれは竹の難と成けらし小野のかたへの一むらの里順濡て来し時雨干はや旅衣珠かたふぎなから残る日の影拝ゥ顧る山は雲間にあらわれて順

嵐よをくれ峰の紅葉上

幽にておほつかなしや鹿の声目覚す月は入かたの空弥堪てやは雨も涙も秋の床東尚とひかたゑ葎はふ宿順したはる上昔は遠く身は老て珠 末いかならんかわる世中事にふれうつる心は果もなし歌のなかめをおもふあやしさ白雲にまかふよしの入桜花滝のうへより明ほの上春雪消の水に筏や急くらん岩越て行波のすヘノく︲二夕附日嵐の遠に影晴て

寝ぬや鴉のひとり飛空

市人の立別たる跡さひし

ひち笠雨の降しきる音

た生きよる門はこたへもあえいまに

いとひかほなる気色ねたしも

今迄に裏表もなく契り来て

なをさりことは何かうらゑん

思ひやれこ入るにあまる我歎

世のうきに社語る身の上

やつしたるゆへははつかし苔衣

順 拝 弥 順 東 弥 拝 東 順 拝 弥 順 東 弥 拝 東 順 拝

(27)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

照らし見るらしれかふ御仏

法の師の暁月におこなひて

露けさ馴る室の哀さ

ニゥ稀に来てみ山の奥は秋深承

木葉うち散り松風そ吹

侘しぎは我住蓄の夕にて

と生めてしかな立帰る友

争もまけてややまん囲碁の□

眠りもよほす灯のかけ

鐘の音聞そふる夜や更ぬらん

さりともとの永待そはかなし

うつりぬる人の心もまたしらて

恋にならひぬ秋のかなしゑ

おもひなき袖には露も置さらし

さそなうかれて月を承るくれ

簾の内の匂ひもそはん花盛

住よそほひも藤つぼの春

三長閑にも聞ゆる琴の調にて

拝 順 東 拝 弥 順 東 弥 拝 東 順 拝 弥 順 東 弥 拝 東

酒をたのしむ人のましはり

命には何しかめやと思ふらし

逢せ絶しと契りをく中

つらぎをも尚今しはし待てみん

無名ぎよむる折もこそあれ

祈るてふ神の恵の深き世に

松のょはひを君そあへまし

豊なるはこやの山の陰しめて

ざま殊さらに作る釣殿

凉しさも月も心の池の水

こぼれすもあれ蓮葉の露

蠣の秋またて吹夕かせに

柴の戸さしはものそさひしぎ

三ゥ侘る此身はいにしへの春ならす

霞を見ても消を社思へ

そのま上に袖の氷の年越て

別し日よりやまぬ恋しさ

古郷は遠くなる社悲しけれ

順 弥 拝 順 東 拝 珠 東 順 珠 拝 順 東 拝 弥 東 順 珠

− 2 0 1 −

(28)

たとる野山の末のかりふし

草枕幾夜か月を頼むらん

雁か音さへに秋寒きそら

色かはる鳥羽田の面の朝朗

吹むすふらし風の下露

あれにける里の哀はいかはかり

花のあるしもた上夢の春

客人のけふの三月や惜むらん

小弓あそひはまれのたはふれ

名心た上つ上し承馴る学ひして

おそるへきこそ猶天の道

鳴神にしはし体らへ中宿り

雲立まよひ明のこるやま

時鳥た上一声に跡たえて

うつふとなれる夢のみしかざ

憂人を思ふ昼ねの手枕に

今朝の別のなゑたひぬ袖

黒髪の乱れし末もつくろはて

珠 東 順 珠 拝 順 東 拝 弥 東 順 珠 拝 順 東 拝 弥 東

まめノーしぎを心とやする

あつめぬる文の教の品j︑に

親にまされとおふし立らし

都には帰らて月の明石潟

夢路冷し浦風の音

名ゥ海士衣うつや夜深き空ならん

芦火かすかになれる露霜

秋暮る難波渡りの里さひて

あらし果たる小田のかたj︑

狩場とて千人の分し山の陰

雪のうへにもゑちは有けり

花にのゑ間は心の深からて

猶もしたしめ春の伴ひ

﹇句上︑編者補﹈能順二十五能拝能東二十五随弥 二十五

二十五

弥 拝 順 東 拝 珠 東 順 弥 拝 順 東 拝

(29)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

八作品︵中︶八V

大阪大学文学部国文研究室所蔵・含翠堂︵土橋︶

文庫本︑弓連歌集︺﹄八H8.四Vの①のうち

花に影月に色ある夕かな

雨の名残の露霞む庭

きのふまて垣根に見えし雪消て

ゑとりもいまた浅き草むら

せきなかす水はかたへの小田の原

かた山本の道あらはなり

散つもる木葉を風の吹分て

柴の戸さしはとふ人もなし

ゥ秋深き寒さはいかに送るらん

露も時雨も猶旅のそて

荒果し宿に夜長き仮ねして

月こそ残れいにしへの夢

一声にかたらひあへぬほとふぎす

花橘の陰のやすらひ

能 随 能 能 東 順 拝 弥 順 東 弥 拝 東 順 拝 弥 順 東

夕間暮凉しき風はふれあかて

折ノー浪のょする川っら

髪かしこ白きやさらす布ならん

残る入日かけそはれたる

ゑそれせし雲は見るj︑峰越て

こ高ぎ松やひ入ぎ添らん

古郷は寂しかれとて秋の暮

衣うち侘誰をまたまし

二鳴雁の涙す上めて更る夜に

夢やは承へん荻の音つれ

独寝の枕悲しぎ月の下

わかれし人も旅や思わん

終に行道ともならん首途して

今はとて世を捨るあはれさ

手を折は経にけるとしの数ノ︑に

つくノーとしも歎く左迂

終夜あらき浪風聞侘て

茨そへまほし笘の屋の内

弥 拝 東 順 拝 弥 順 東 弥 拝 東 順 拝 弥 順 東 弥 拝

− 2 0 3 −

(30)

麻絹を冬のまうけはおろそかに

程につけてや春を待らん

埋木の朽行身こそはかなけれ

誰かはとはん浅茅生の陰

ニゥ露にかく沽て忍ふを思へた上

月なき空にまとふ別路

吹からに涙猶そふ秋の風

虫の音にさへ物おもふくれ

里はた上古果るまて人待て

まきる些事もあらぬつれj︑

つ上むとも老の思ひや顕れん

よわりもて行玉の緒はうし

身におはい道に望をかけて来て

昇るたよりもいざ位山

時をしもうしない果し君か代に

をのれのみ澄心あやしも

花にたにとふ袖いとふ室の内

苔の衣にやつれにし春

東 拝 順 東 弥 順 拝 弥 東 拝 順 東 弥 順 拝 弥 順 東

一一一去年まては仕来ぬるや思ふらん

めしにも遠きあかたにそ住

聞えなき其名はおしき学ひにて

末に成世の和言の葉

照日にはいかて酒かむ天津空

泉結ひていさくらさまし

口深き陰いさきょき苔莚

風もさわぐなまくらかる山

夢にもと都を忍ふ月の夜に

妹か形見は袖のうは露

身にしめる勿ひも情し馴衣

思へはうすき情なりけり

末とけぬ契はかなく頼来て

庵りくたしぬ有増の山

三ゥ引捨し谷の杣木はそのま坐に

岩間の雪の跡たにもなき

花の後小笹戦めく陰寂し

烏の音絶て打霞む暮

拝 弥 東 拝 順 東 弥 順 拝 弥 東 拝 順 東 弥 順 拝 弥

(31)

加能連歌壇史藁草。その二(中)(棚町)

狩衣春のすそ野や帰るらん

また醒やらぬ酔はしるしも

古事をかたれは語るましわりに

うらゑ歎きの誰身にかなき

あやにくやに逢夜はまたぎ鐘鳴て

へ︑いか上はせまし解かたき中

慰めん思ひならねばむすほ上れ

か上る涙のうぎみたれ髪

をとろへぬ月もむかはし朝鏡

身にいとわる上風は冷し

名白菊の露もさなから折取て

こ入ろはへこそ奇に見えぬれ

ゆるされぬ司や下に恨むらん

年は四十にあまりぬる人

愚にてまとふはあやな文の道

徒からこそ国もおさまれ

思え猶天の御神のその恵

いたらぬくまもあらぬ日の色

弥 順 拝 弥 東 拝 順 東 弥 順 拝 弥 東 拝 順 東 弥 順

誰筆のうつし絵島そ春霞

雁の別る上須磨の明ほの

長閑なる波の上行舟みへて

木の間晴たる松のむら立

明果る月に時雨や過ぬらん

あらしの末の雪はめつらし

名ゥ浮雲に気色かわれる富士の嵩

夕に成ぬ遠ぎ箱根路

いつくより照射の袖の出つらん

中にしむるか夏草の蓄

外に見ゆる垣ほの梢花過て

そことしられぬ鶯の声

立こむる霞の野への朝朗

山もゆたかに風たゆむ春

﹇句上︑編者補﹈能東二十五能拝二十五能順二十五﹇無記︺一

随弥二十四

「−1

莞 拝 東 順 拝 東 弥 順 拝 弥 東 拝 順 東

L 」

(32)

八作品︵中︶九V

正﹇延ヵ﹈宝九年

三六番前句附連寄合

一番

左春かすむ梢のみゆる明ほの

春といへは先面影の花咲て

今日といへは花の面影立春に

山里は雪の内より春立て

春は先花を心の初夢に

梅か香の薄雪寒き年立て

音羽山去年の雪けの雲晴て

うす雪も梅の匂ひに春立て

右只なをさりに春な思ひそ ︵表紙︶

三六番前句附連嵜合 大阪大学文学部国文研究室所蔵・含翠堂︵土橋︶文庫本八H2.5Vによる︒

三上令直

能 能 能 随 能 政 能 二 東 拝 弥 通 右 順

L一 L一

岩戸より出しも同し日の始

岩戸明し其神の代の朝霞

待ノ︑て今朝こそ見つれ宿の梅

草も木も恵閑けき世に逢て

今日こそは花見る年の始なれ

年立て長閑にそなる人こ上ろ

花に又あわんと頼む年越て

こ番

左軒端は月も霞むとそゑる

︵力︶春寒き浦の塩屋の夕烟

さく梅の匂ひや空に満ぬらん

梅か香の空に満ぬる朝戸出に

梅か香の袖に満ぬる心ちして

定をく梅かほる夜の明ほのに

梅咲て雪気の風もかほる夜に

梅かほる夜半の嵐のは寒からて

へへ右朧月夜はさたかにもなし

雪をとめて折はやおらん梅の花

東 二 拝 弥 通 右 順

L一 二 東 拝 弥 通 右 順

L一

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