わが国の公益企業 の範 囲 ( 5 )
各種法規 に散在 しているものを整理 して・
藤 田 正
目 次
〔1〕はじめに
〔2〕公共の利益 という目的のために私権 を規制 している法律 (1) 土地収用法
(2)独 占禁止法
〔3〕一般公衆の需要 に供するという目的 を明示 している法律 (1) 労働関係調整法 (以上 第21巻第2号)
(2)個別事業法 (以下、第22巻第2号)
① 公衆通信事業系統 1.郵便法 2.電気通信事業法 3.日本電信電話株式会社法 4.国際電信電話株式会社法 5.電波法
6.放送法
7.有線 テレビジョン放送法
(参 市民生活必需用役㈲供給事業系統 (以下、第23巻第2号) 1.電気事業法
2.電気事業争議行為規制法 3.ガス事業法
4.熱供給事業法 5.水道法 6.下水道法
③ 公衆運輸事業系統 (以下、第24巻第1号) 1.鉄道事業法
2.日本国有鉄道改革法
3.旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社 に関す る法律 4.新幹線鉄道保有横構法
5.日本国有鉄道清算事業団法 6.帝都高速度交通営団法 7.軌道法
8.道路運送法 9.通運事業法 10.海上運送法 11.内航海運業法 12.港湾運送事業法 13.航空注
〔4〕公共の福祉 を目的 とす る公営の個別生産経済体 に関す る法律 (以下、本号) (1) 国営企業労働関係法
① 公共企業体労働関係法の制定
② 公共企業体労働関係法か ら公共企業体等労働関係法へ (彰 公共企業体等労働関係法か ら国営企業労働関係法へ
④ 国営企業労働関係法 と公益企業 (2)地方公営企業労働関係法
① 地方公営企業労働関係法の成立背景
② 地方公営企業労働関係法 と公益企業 (2)地方公営企業法
① 地方公営企業法の制定 (診 地方公営企業法 と公益企業
〔5〕むすびにか えて
〔4〕公 共 の福 祉 を 目的 とす る公 営 の個 別 生 産 経 済 体 に 関 す る法 律
(1) 国 営 企 業 労 働 関 係 法
(彰 公 共 企 業 体 労 働 関 係 法 の制 定
占領 政 策 の一 環 と して の労 働 運 動 民 主 化 が 推 進 され る よ う に な り、 この こ と を保 障 す る もの と して、 旧労 働 組 合 法 (昭 和20年12月21日公 布 、 昭 和21年3月 1日施 行 )、 労 働 関 係 調 整 法 (昭 和21年9月27日公 布 、 昭 和21年10月13日施 行 )、 労 働 基 準 法 (昭 和22年4月7日公 布 、 昭 和22年9月1日施 行 )とい う労 働 三 法 が制 定 され 、 全 て の労 働 者 に適 用 され る こ とに な っ た。
3
か くして、上記のような労働運動民主化 の制度保障 を背景 としなが ら戦後 の インフレーシ ョン下で困窮化 した労働者 は、 自らの生活 を守 るため、 自主的に 労働組合 を結成す るようにな り、その数 は飛躍的 に増大 した。 もちろん、各労 働組合 の活動 は昭和21年か ら昭和22年 にかけて活発 とな り、就中、国鉄総連 を 中心 として全官公庁労働組合 は、当時のわが国の労働組合の中で最 も強 く、 そ の活動 も最 も顕著であった。
そ して、昭和21年11月26日には、全官公庁共同闘争委員会が組織 され、賃金 等 に関す る諸要求 を提 出 したが、前進的な回答 を引 き出せなか った。 そこで、
さらに闘争 を強化す る方向へ と進 み、翌年の1月18日のス トライキ決行宣言大 会で は、2月1日零時 を期 して、ゼネス トに突入す る旨の宣言 をした。
か くして、 このような事態 の重大性 に鑑 み、連合国総司令部 のマーカ ッ ト経 済科学局長 は、昭和22年1月22日、勤労者 の権利 を認 めつつ、国家経済 に大 き な損失 を与 えるようなゼネス トを決行 しないように組合 に勧告 したが、受 け入 れ られなかった。 また、発足 して間 もない中央労働委員会 は、同年の1月28日 に調停案 を提 出 し、調停 を試 みたが、不調 に終 った。かか る情勢 の中で、マ ッ カーサー元帥 は、1月31日、ゼネス トを実行 しようとす る指導者 に対 し、現下 の ごとく窮乏 にあえぎ衰弱 した日本の実状 において、かか る致命的な社会的武 器 に訴 えることを許 さない旨を通告 し、‑‑‑‑・これによって必然的 に生ず る マ ヒ状態 は、 日本国民 の大多数 を事実上、飢餓状態 にお とし入れ るので、ゼネ ス トの中止 を指令 LT(注1L‑0)
2・1ゼネス ト中止後 も、労働者 は依然 としてイ ンフレー シ ョン下で窮乏 に 喋 いでいた し、全官公労組 を中心 とす る労働側 の攻勢 もかな り強かった。 とり わ け、全逓労組 の攻勢 は強 く、昭和23年3月31日に全国一斉 ス トを指令 した。
しか し、全国一斉 ス トは、2・1ゼネス トと同様 の意味 をもち、国民 に多大 な 損失 をこうむ らせ ることになる とい う理 由で、連合国総司令部経済科学局長 マ ーカ ッ ト少将 は、同年3月29日、加藤労相 と富吉逓相 を招致 してス ト中止 を通
告 した。
その後 も労働側 の攻勢 は依然 として厳 しい ものであったので、マ ッカーサー 元帥 は昭和23年7月22日付で、当時の芦 田総理 に国家公務員法改正 に関す る主 たる内容 の書簡 を宛 て、事態の打開を図 ろうとした。 その書簡 の意味 内容 は、
国家公務員法 の全面改正 と公共企業体制度 の採用 とい う2つの内容 を示唆す る ものであった。
かか るこの ような情況か ら、政府 は昭和23年7月31日、政令201号 (昭和23年 7月22日内閣総理大 臣宛連合国最高司令官書簡 に伴 う臨時措置 に関す る政令) を発 し、「全ての公務員 (国、地、現業、非現業 を問わない)の争議行為」と「労 働協約 の締結 を目的 とす る団体交渉」 を制限 ・禁止 した。
か くして、マ書簡 と政令201号 の趣 旨に沿 って、 まず、国家公務員法 (以下、
国公法 とい う)が昭和23年12月3日に改正 され、直 ちに施行 された。 その主た る改正内容 は、以下 の とお りである。
‑、一般職員 には労働三法 と船員法が適用 されない こととなった。(国公法附則 16条)
二、一般職員 に団結権 は認 め られた (国公法108条の2の3項)が、争議権 は否 認 された。 (同法98条 の 2項)
三、職員団体 と当局 の交渉 にさい して は、制約が もうけ られ、団体協約締結権 が禁止 された。 (同法108条の5の2項)
四、警察職員、消防職員お よび海上保安庁又 は監獄 において勤務す る職員 には、
団結権が禁止 された。 (同法108条の2の5項、地方公務員法52条の5項) 次 にマ書簡 の中で もう一 つの意味 を もつ公共企業体制度具現化 のために、公 共企業体職員 の労働組合や労働関係 について、公共企業体労働 関係法案が、次 のような事 由に基づ き国会 に提 出 された。
(注'2) (注3)
一、公共企業体労働関係法案 と同時 に提 出 されてい る日本専売公社法案 と日本 国有鉄道法案が成立す る と、 これ らの公共企業体職員 には、国家公務員法
5 が適用 されな くなる。 このため、 これ らの公共企業体職員 には自動的 に労 働組合法や労働関係調整法が適用 され ることになる。 しか し、労働組合法 や労働関係調整法 は一般企業 の職員 には適用 されて も、完全国有 の法人 と して国家の厳重 な管理 と監督 の下 に運営 され る公共企業体 の職員 に適用 さ れ ることは、公共の利益 を擁護す る面か ら不適 当である。 しか るに、公共 企業体職員の労働組合や労働関係 については、公共企業体労働関係法 を必 要 とす る。
二、 日本国有鉄道 と日本専売公社 に、それぞれ別個 の労働 関係 に関す る法制的 措置 を講 じることは適 当でな く、公共企業体 の労働関係 を統一的 に取扱 う
ことか ら、公共企業体労働関係法 を必要 とす る。
三、公共企業体 において無用な紛争議 を極力排除す ることによ り、正常 な団体 交渉 を保障 し、 これによって職員 の地位 の維持 向上 を図 ることによって、
公共企業体 の能率発揮 と正常 な運営 を確保 しようとす る意味か ら、公共企 業体労働関係法 を必要 とす る。
四、国家公務員 に認 め られているように、公共企業体 の職員 には自らの地位 に 関す る保障がないので、 これ にか えて完全 な団体交渉 と適正迅速 な調停 と 厳正 な仲裁制度 を確立す ることによ り、職員の生活 の安定 を保障する必要 か ら、公共企業体労働関係法 を必要 とす る。
上記の ような事 由で国会 に提出 された公共企業体労働関係法案 は、同法案 と 親子関係 にあった 「日本専売公社法案」や 「日本国有鉄道法案」 と同時 に昭和 23年12月20日公布 され、同時 に昭和24年6月1日に施行 され ることとなった。
か くして、国家公務員法 と公共企業体労働関係法 の制定 によ り、国家公務員 と公共企業体職員 の労働組合や労働関係 に関 して は、一般企業従業員の労働組 合や労働関係 に関す る労働組合法や労働関係調整法の枠外 におかれ、明瞭 に区 分 され ることとなった。
しか し、上記 のように法制度 として明瞭 になった とはいえ、国家公務員 の中
で もその業務 の性質か ら、む しろ公共企業体職員 と類似 している現業公務員 (行 政面 に関 しては非権力的であるが、経済活動 に参与 している現業公務負) に対 して非現業公務員 と同様 に国家公務員法 を適用 した ことは、実質的に不合理で あった。
② 公共企業体労働関係法か ら公共企業体等労働関係法へ
そ こで、上記 のように実質的 に不合理 な現業公務員 の労働関係 を、 よ りすっ きりした ものにするため、講和条約 の締結 によ り、わが国が 自主権 を回復 し、
独立国家 として前進せ ざるをえない情勢 を契機 として、政府 は 「労働 関係調整 法の一部 を改正す る法律案」 を昭和27年5月10日、国会 に提 出 した。同法案 は、
労働関係調整法、公共企業体労働関係法、労働組合法 とい う三法の改正点 を内 容が相互 に関連 しているとい う理 由で、一本 に まとめて国会 に提 出 された法案 であった。同法案 は両院で審議 され、同年7月31日に成立 し、法律第288号 とし て公布 され、翌 日の8月1日か ら施行 された。
公共企業体労働 関係法 に関 して改正 された主たる内容 は、同法の適用範囲 を 日本電信電話公社 ・郵便事業 ・国有林野事業 ・印刷事業 ・造幣事業 ・アル コー ル専売事業 の職員 の労働関係 にまで拡大す ることになった ことである。 すなわ ち、④現業公務員 は、一般行政事務担当の非現業公務員 とはその業務 の性質か ら著 し く異 なってお り、国鉄等の公共企業体職員 と類似 しているので、団体協 約締結権 が否認 されている国家公務員法が依然 として適用 され るよ りも公共企 業労働関係法の適用が社会経済環境 か ら判断 して適正 である とい うことと、㊨
日本電信電話公社 とい う公共企業体 の設立 とい う事実か ら、公共企業体労働関
(注4)
係法の適用範囲が拡大 され る改正がなされ たのである。
しかるに、上記の ような改正 によ り公共企業体労働関係法が適用 され る範囲 が拡大 され ることにな り、同法 の名称 も公共企業体等労働 関係法 (以下、公労 法 とい う) に改称 されたのである。
③ 公共企業体等労働関係法か ら国営企業労働関係法へ
7 公労法か ら国営企業労働関係法へ改称 されたのは、1980年代 の一連 の行財政 改革の目玉 としての公企業の民営化、 とりわ け、三公社 の民営化が具現化 され た ことに起因する。 しか るに、公労法が適用 されていた公共企業体等の中で民 営化 された個別生産経済体 を指摘 しなが ら、公労法が国営企業労働関係法 に改 称 された経緯 について考察す る。
公労法が適用 されていた個別生産経済体 の中で、最初 に民営化 された個別生 産経済体 は、アル コール専売事業であった。 アル コール (工業用 アル コール) 専売事業 は政府の貴重な歳入源であるとして も、公企業 として経営 され るべ き 理 由はな く、私企業 として経営 され るべ きものであることか ら、政府 は同事業 を昭和57年10月1日か ら民営化 した。民営化 の根拠法 は 「アル コール製造事業 の新エネルギー総合開発機構への移管のためのアル コール専売等の一部 を改正 す る法律」(昭和57年5月1日公布、法律第37号、昭和57年10月1日施行、以下 同法 をアル コール専売等の一部改正法 とい う)であった。同法 によって、アル コール事業 は新 エネルギー総合開発機構 (石炭鉱業合理化事業団が昭和55年10 月1日か ら衣替 えすることによって成立 した特殊法人) に統合 され ることにな った。 しか るに、当然の ことなが ら公労法の適用範囲か らアル コール専売事業 は除外 され ることになった。法律的 には公労法第2条第1項第2号 の 「ホ、ア ル コール専売事業」が、アル コール専売事業等の一部改正法第3条 「公共企業 体等労働関係法の一部改正」 によって、削除 された。 また、 この削除 によって、
通商産業省 は公労法 と直接的 に関係 しな くなった。 それゆえ、通産大臣が公共 企業体等労働委員会 に調停 や仲裁の請求 をす るような ことがな くな り、公労法 の第39条か ら 「及び通商産業大臣 (同号 ホの企業 に関す るものに限 る。)」が、
アル コール専売事業等の一部改正法第3条 によって削除 され ることになった。
第2に民営化 された個別生産経済体 は、 日本専売公社であった。同公社 もア ル コール専売事業 と同様 に政府 の貴重な財政収入源である として も、一般公衆 の 日常生活 に必要不可欠な財 を継続的 に安全 ・確実 に供給 しなければな らない
という性質の個別生産経済体でないので、公企業 として経営 され るべ き事由は な く、私企業 として経営 され るべ きものであるという事由か ら、政府 は昭和60 年4月1日か ら同公社 を日本たばこ産業株式会社 と改称 して民営化 した。すな わち、民営化の根拠法 の 「日本 たば こ産業株式会社法」 (昭和59年8月10日公 布、施行、法律第69号) に基づ き、 日本専売公社 は日本 たばこ産業株式会社 と して民営化 されたのである。同社 は 「たばこ事業法」 (昭和59年8月10日公布、
法律第68号、昭和60年4月1日施行)の施行時 と同時 に成立 した。 したがって、
同社の成立 と同時 に、公労法か ら日本専売公社が削除 されることになったので ある。具体的には、公労法第2条第1項第1号の 「ハ、 日本専売公社」 と同法 第39条中の 「日本専売公社並びに」という語句が、「たばこ事業法等の施行 に伴 う関係法律 の整備等 に関す る法律」 (昭和59年8月10日公布、法律第71号)の第 49条 「公共企業体等労働関係法の一部改正」 によって削除 され、公労法か ら日 本専売公社が削除 されたのである。
第3に民営化 された個別生産経済体 は、 日本電信電話公社であった。すなわ ち、民営化の根拠法の 「日本電信電話株式会社法」 (昭和59年12月25日公布 ・施 行、法律第85号) に基づ き、 日本電信電話公社 は日本電信電話株式会社 に民営 化 されたのである。すなわち、具体的制度 としては、同社 は「電気通信事業法」
(昭和59年12月25日公布、法律第86号、昭和60年4月1日施行)の施行時 と同 時に成立 した。 しかるに、同社の成立 と同時に公労法か ら日本電信電話公社が 削除 されることになった。法制度的には、公労法第2条第1項1号の 「ロ、 日 本電信電話公社」の削除 と、同項第2号イの中の 「日本電信電話公社 を日本電 信電話株式会社」 に名称変更す ることと同法第39条中の 「日本電信電話公社及 び」という語句が、「日本電信電話株式会社法及び電気通信事業法の施行 に伴 う 関係法律 の整備等 に関す る法律」 (昭和59年12月25日公布、法律第87号)の第57 条 「公共企業体等労働関係法の一部改正」 に基づいて削除 され、公労法か ら日 本電信電語公社が削除 されたのである。
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第4に民営化 された個別生産経済体 は、 日本 国有鉄道であった。民営化 の根 拠法の 「日本国有鉄道改革法」 (昭和61年12月4日公布 ・施行、法律第87号) に 基づいて 日本国有鉄道 は、北海道旅客鉄道株式会社、東 日本旅客鉄道株式会社、
東海旅客鉄道株式会社、西 日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九 州旅客鉄道株式会社、 日本貨物鉄道株式会社、新幹線鉄道保有機構、 日本国有 鉄道清算事業団に分割 ・民営化 された。分割 ・民営化 された各社 は、具体 的に は「鉄道事業法」(昭和61年12月4日公布、法律第92号、昭和62年4月1日施行) の施行時 と同時 に成立 した。
しか るに、 このような 日本国有鉄道 の民営化 は、 これ までの公共企業体等の 個別生産経済体民営化以上 に、社会 ・経済 に与 える民営化 の影響 の大 きさを世 に震感 させ ると同時 に、公労法の大改正 を ともなった。すなわち、 その主たる 改正 とは、 日本国有鉄道改革法等施行法 (昭和61年12月4日公布、法律第93号、
昭和62年4月1日施行)によって、⑦公労法が国営企業労働 関係法 とい う法律 名 に改称 された こと、⑦改称 の国営企業労働 関係法第2条か ら日本国有鉄道が 削除 された こと、㊥改称前 の公労法第39条の中の 「運輸大 臣 (日本国有鉄道 に 関するものに限 る。)」とい う語句が国営企業労働関係法の第39条の中か ら削除 された ことである。 また、その他 に改正 された点 として、次 の ような点が列挙 され よう。
i)「公共企業体等労働委員会」が 「国営企業労働委員会」 に改正 された こと。
ii)「公共企業体及 び国の経営す る企業」が 「国営企業」 に改正 された こと。
iii)「公共企業体等」が 「国営企業」 に改正 された こと。
これ まで公労法が適用 されていた個別生産経済体 の中か ら、民営化 された個 別生産経済体 を指摘 し、公労法の改称 ・改正 について概観 して きた。 ここで特 筆 され る点 は、1980年代 の行財政改革路線 によ り昭和57年10月にアル コール専 売事業が新エネルギー総合開発機構 に統合 された ことを皮切 りに、三公社 も民 営化 され、公労法が適用 され る個別生産経済体 は郵便事業 ・国有林野事業 ・印
刷事業 ・造幣事業 の四現業のみにな り、実質的 に公労法が適用 され る公共企業 体が存在 しな くなったので、必然的 に公労法の名称 が国営企業労働関係法 に改 称 された とい うことである。
④ 国営企業労働 関係法 と公益企業
国営企業労働関係法の 目的 は、同法第1条第 1項 に 「この法律 は、国営企業 の職員の労働条件 に関す る苦情又 は紛争の友好的かつ平和的調整 を図 るように 団体交渉 の慣行 と手続 とを確立す ることによって、国営企業 の正常 な運営 を最 大限に確保 し、 もって公共の福祉 を増進 し、擁護す ることを目的 とす る。」と明 示 されている。すなわち、同条項 は、国民生活 に安定が もた らされ、公共 の福 祉が増進 され、擁護 され るように、国営企業が秩序正 し く、安定 ・確実 に経営 され ることを目的 とした法律 である。 しか るに、同条項 は公益事業法 としての 意味 を十分 に有 しているといえよう。
同条第2項 には、「国家 の経済 と国民の福祉 に対す る関係者 は経済的紛争 を出 来 るだけ防止 し、かつ、主張の不一致 を友好的 に調整す るために、最大限の努 力 を尽 くさなければな らない。」と明示 されている。 しかるに、同項 の意味す る ところは、国営企業 (四現業) は国家の経済 と国民の福祉 に資す るために重要 な役割 を果 た さなければな らないので、その役割が達成 され るように国営企業 の関係者 に対 して、"経済的紛争 の防止''と"主張不一致 に対 しての友好的調整〟
を義務づ けている法律である。 しか るに、同項 もまた、国家 の経済 と国民の福 祉 に資す るということを意味 している法律 であ り、公益事業法 としての意味 を 十分 に有 している。
同法第2条第1項 は国営企業 について、「国営企業 とは、下記の事業 を経営す る国の企業である。」 と定義 している。
④ 郵便、郵便貯金、郵便為替、郵便振替、簡易生命保険及 び郵便年金の事業 (郵政事業)
@ 国有林野事業
if1
0 日本銀行券、紙幣、国債、印紙、郵便切手、郵便 はが き等 の印刷 の事業 (印 刷事業)
㊤ 造幣事業
しか しなが ら、上記の① ㊥ 0㊤ とい う事業 を行 う国営 の個別生産経済体が国 営企業であるとい う法律上 の定義か らだけで、同条項 は公益事業法である と画 定で きない。 それ ゆえ、上記 の④㊥ ㊤㊤の事業 を行 う国営 の個別生産経済体が、
同法第1条第 1項 に明示 されている国営企業 の目的 を遂行す る個別生産経済体 であるか どうか を検証 した上で、上記の国営 の個別生産経済体が公益事業 とし てのステイ‑タスを有 しているか否か を考察 し、かつ、公益企業 としての地位 を有 しているか否か を考察す る。
① 郵政事業
郵政省 とい う行政機関 は、「郵便」「郵便貯金」「郵便為替」「郵便振替」「簡易 生命保険及 び郵便年金 の事業」 とい う郵政事業 と 「電気通信 に関す る事務」 と い う電気通信行政 の2つの部門 によって構成 されている。 したが って、郵政省 の中で国営企業労働関係法 と直接的に関係 しているのは、同法第2条第1号の
⑦ に明示 されているように、前者の郵政事業である。 それゆえ、郵政事業 の内 容 について考察 し、 これ らの内容 の全 てが公益事業 としてのステ イ‑タスを有 しているか否かを考察 し、かつ、公益企業 のステ イ‑タスを有 しているか否 か について も考察す る。
まず、郵政事業 の中の郵便事業 について は、拙稿 の 『文経論叢、わが国の公 益企業 の範囲(2)、第22巻第 2号、昭和62年 3月』 に公益事業 の地位 を有 してい
る とい うことを論証 しているので、 ここでの論証 は割愛す る。
郵便貯金 ・為替 ・振替事業 は、全国津々浦々 に設置 されている郵便局 を通 し て公平 にサー ビスを供給 することによって、国民 の経済福祉 の増進 に寄与 す る ことを目的 として経営 されている事業である。 もち ろん、同事業 と同様 な事業 を銀行 を中心 とする民間の金融機関 も業務 の一部 として担当 してお り、 この事
莱 (業務) に関 して は、郵政事業 と民間の金融機関 は競合関係 にある。 しか し、
前者 は非営利原則 に基づ き主 として家計 を対象 として経営 されているのに対 し、
後者 は営利原則 に基づ き主 として企業 を対象 として経営 されている。 また、郵 便貯金 ・為替 ・振替事業 は、集 めた資金 を財政投融資 を通 じて、産業基盤、生 活基盤、社会資本 の充実等 に活用 し、社会 ・経済 の発展 に寄与 していることか
ら、そのサー ビス業務 の代替 を民間 に負わせ ることは困難である。
しか しなが ら、上記の ように同事業 は、国民の経済福祉 の増進 に寄与す る事 業であるに もかかわ らず、 日常生活 に不可欠 なサー ビスを供給す る事業 とはい えない。 それゆえ、同事業 は公益事業 としてのステ イ‑タスを有 している とは いえない。
簡易生命保険及 び郵便年金事業 は、社会政策的意図の下 に任意 の生命保険や 年金 を安 い保険料や掛金でサー ビス供給す る国営事業 として、国民 の経済生活 の安定 と福祉 の増進 に寄与す ることを目的 として経営 されている事業である。
もちろん、同事業 と同様 な事業 を民間の保険会社 も経営 してお り、競合関係 に ある。 しか し、前者が非営利経営であるのに対 し、後者 は営利経営である。 ま た、同事業 の資金運用 は、余裕金 の運用 (資金運用部預託金及 び預金) と積立 金 の運用 (郵政大臣の管理 ・運用)か ら構成 され、両者 を合計 した運用先 は公
(注5)
共機関への融資が大部分 を占めている。 それゆえ、同事業 のサー ビス業務 の代 替 を民間 に負わせ ることは、国の財政構造か ら不可能である。すなわち、公的 社会保障制度 の質的 ・量的拡大が、財政事情等か ら限度があるに もかかわ らず、
国民の社会保障ニーズが さらに高度化 ・社会化す るようになることや、わが国 の財政 に占める財政投融資の位置づ けか らして も、同事業 は今後 も公有経営 さ れなけれ ばな らない事業である。
しか し、上記 に述べたように同事業 はわが国の経済 に とって極 めて重要な事 業であることは理解出来 るが、 日常生活 に不可欠なサー ビスを供給 している事 業である とはいえない。 それゆえ、同事業 は公益事業 としてのステイ‑タスを
13 有 している とはいえない。
これ まで、郵政事業 の個々の事業内容 について、公益事業 としてのステ イ‑
タスを有す る ものであるか否か を考察 して きた。 これ らの考察か ら郵便事業以 外の事業 は、わが国の経済 に とって極 めて重要 な事業であるが、公益事業 とし てのステイ‑タスを有 していない とい う結論 をえたO
それゆえ、郵政事業 を上記の ように個々の事業内容別 に分離す ることな く、
個別生産経済体 として、経営 され るべ きものである とす るな らば、郵政事業 は 公益企業 としてのステ イ‑ タスを有 していないO ただ し、郵政事業 の中の郵便 事業が独立採算的 に単独事業 として、すなわち、事業部制的 に経営 され ること が可能であるな らば、郵政事業の中の郵便事業 は、公益企業 としてのステ イ‑
タスを有 している といえよう。
㊥ 国有林野事業
国有林野事業 は、i)国土 の保全、水資源 のかん養、 自然環境 の保全形成、
保健休養の場 の提供等森林 の有す る公益的機能 の発揮、 ii)林産物 の計画的、
安定的、持続的 な供給、iii)国有林野 の活用、国有林野事業の諸活動 とこれ に 関連 す る地域 の産業活動等 を通 じた農山村地域振興への寄与等 の役割 を負 って いる非営利経営 を基本 とす る国営の個別生産経済体 である。
(注6)
したが って、上記 の ような重要な役割 を担 っている同事業 を営利経営 を原則 とす る民間の林業者 に担 当 させ ることは、特 にi)の公益的機能 の発揮 とい う 役割が発揮 されな くな りがちになるので、経営主体 について は現行 どお り国営 形態 を維持 してい くことが適当である。
同事業 は、直接 に国民 と取引す ることは少 ない。 しか し、広義 に同事業 内容 を解釈す るな らば、国民 は自然環境 の保全形成や保健休養の場 の提供 とい う必 要不可欠なサー ビスを同事業か ら供給 されている。 しか るに同事業 は公益事業 のステ イ‑タスを十分 に有 していると同時 に、計画的、統一的、合理的、継続 的 にi)やiii)のサー ビス供給 をす る国営の個別生産経済体 であ り、公益企業 の
地位 も有 している。
⑮ 印刷事業
印刷事業 は、 日本銀行券、紙幣、国債、印紙、郵便切手、郵便 はが き等の印 刷 の事業 (これ に必要な用紙類 の製造並 びに官報、法令全書等 の編集、製造及 び発行 の事業 を含む。)を行 う国営の個別生産経済体 である。同事業 の財 は、民 間の印刷業者が生産す る財 と異 な り、直 ちに市場 で取引 され ることが許 されな い財であ り、一旦、政府や 日銀 に納入 してか ら政府や 日銀の管理 の下で、国民 によって必要不可欠な交換手段財 として使用 され る ものである。 しか るに同事 業 は市場 メカニズムを とお して国民経済 に対 して有効 な経済的機能 を発揮 し、
経済福祉 の増進 に寄与 している鉄道事業や電力事業 のような公益事業 で はな く、
市場 メカニズム を とお さない典型的な自家生産経営体 の財政企業 である。
それゆえ、同事業 は、われわれが一般的 に理解 している公益事業で はないが、
国民が社会生活 をす る上で共通 の価値認識 をもつ必要不可欠 な交換手段 を生産 している国営事業であるので、公益事業 のカテゴ リーに属 している と同時 に、
継続的、合理的、計画的、統一的 に個別生産経済体 として生産活動 を している 公益企業で もある。
㊤ 造幣事業
造幣事業 (章 はい等の製造 の事業 を含 む。)は、主 として硬貨 の製造 をしてい る国営の個別生産経済体である。
しか るに、同事業 は、前述 の印刷事業 と同様 な意味 を有す る。 それゆえ、同 事業 は、われわれが一般的 に理解 している公益事業で はないが、国民が社会生 活 をす る上で共通 の価値認識 をもつ必要不可欠 な交換手段 を生産 している国営 の個別生産経済体 であるので、公益事業 のカテゴ リーに属 していると同時 に、
個別生産経済体 として継続的、合理的、計画的、統一的に生産活動 をしている 公益企業で もある。
これ まで、同法第2条第1号 に明示 されている個々の国営 の個別生産経済体
15 が、公益事業 として、 また、公益企業 としてステ イ‑ タスを有 しているか否か について詳細 に論 じて きた。 ここで特筆 され ることは、四現業 の中の郵政事業 の郵便事業のみが公益事業 としてのステイ‑タスを有 し、その他の事業 は、国 民の経済福祉の増進 に とって きわめて重要な事業であるが、公益事業 としての
ステ イー タスを有 していない とい うことを理解 した ことである。
さらに、 ここで国営企業労働関係法の中か ら公益事業 と関連 ある条項 を強 い て兄い出すな らば、同法第17条の争議行為 の禁止 を指摘す ることがで きる。同 法第17条 は次 の とお りである。
「職員及び組合 は、国営企業 に対 して同盟罷業、怠業、 その他業務 の正常 な運 営 を阻害す る一切 の行為 をす ることがで きない。 また、職員並びに組合 の組合 員及び役員 は、 この ような禁止 された行為 を共謀 し、唆 し、又 はあおってはな らない。 (同条第1項)国営企業 は、作業所閉鎖 をして はな らない。 (同条第2 項)」
同条の争議行為禁止 の第1の理 由 は、国営企業 の経営活動 は公共 の福祉 に資 す るものであ り、公衆 (国民) に とって不可欠な財やサー ビスを安全性 を確保 しなが ら継続的 に供給 しなければな らない活動であるとい う理 由か らである。
しか るに同条 は、同法第1条 を具現化 した ものである と理解 してよか ろう。
しか し、上記 の理 由が、同法第2条第1号 に国営企業 として定義 されている 全 てに適合 しているか を理論的 に考察す るな らば、否である。 なぜな ら、第1 号の国営企業の中で 「争議行為 の禁止」 を不可欠 とす る事業 は、四現業の中で
も郵政事業 の郵便事業 だけであるか らである。すなわち、郵政事業 の中で郵便 事業以外の郵便貯金 ・為替 ・振替事業や簡易生命保険 ・郵便年金事業 は、国民 の経済福祉の増進 に とって きわめて重要な事業であるが、供給 サー ビスの随時 性、即時性、貯蔵性 とい うことに緩慢であって も国民の経済生活 にあまり支障 をきたす事業でな く、かつ、代替サー ビス も存在 す ることか ら、公益事業 とし てのステ イ‑タスを有 していない し、争議行為 の禁止 を不可欠 とす る事業で も
ない。 また、国有林野事業、印刷事業、造幣事業 は、国民 の経済福祉 の増進 に とって きわめて重要な事業であ り、 その上、代替 サー ビスの不可能 な公益事業 であるが、供給 サー ビスの随時性 ・即時性 とい うことに緩慢 であって も、国民 の経済生活 に とって支障 をきたさないので、争議行為 の禁止 を不可欠 とす る事 業で はない。 しか るに、争議行為禁止 の上記 の第‑ の理 由は、国営企業 の中で の郵政事業の郵便事業 のみに正当化 され る とい うことである。
第2の争議行為禁止 の理 由 として は、以下 のような ことも指摘 され るであろ う。
三公社 の民営化 によ り、公共企業体等労働関係法か ら国営企業労働関係法 に 改称 された ことを契機 として、漸次、争議行為禁止不可欠の前述 の第一 の理 由 が説得力 を もたな くなって きたにもかかわ らず、依然 として争議行為禁止不可 欠性が国営企業労働関係法第2条第1号 の全ての国営企業 に通用 されている。
その理 由 として は、国家公務員法第98条第 2項 に争議行為 の禁止が明示 されて いる関係上、すなわち、国営企業 の職員 は現業であって も国家公務員であるの で、 もし、国営企業 の職員 に争議行為 の禁止 を解 くような事態が生ず るな らば、
必然的 に非現業 の国家公務員 に も波及す る恐れが生ず るようになるとい う理 由 か らであろうと思われ る。
公益事業 と争議行為禁止 の関係 を国営企業労働 関係法第17条 を とお して理解 した ことは、「代替 サー ビス との競合」や 「サー ビスの随時性 ・即時性 とい う面 におけるある程度 の緩慢性 の許容」が社会的 に顕在化 している公益事莱 (この 場合、国営企業労働 関係法第2条の国営企業) に とって、必ず しも争議行為 の 禁止 を統一的 に法的 に明確 にしてお く必要 もない とい うことである。 なぜな ら、
争議行為禁止 の前述 の第‑ の理 由が実質的 に適合 している公益事業 には必要 と 思われ るが、単純 に国営企業労働関係法第2条の国営企業である とい うことで、
必ず しも争議行為 の禁止 を法的 に填 め込 んでお く必然性 はない と思われ る。
しか るに、争議行為禁止 の同法第17条 は、公益事業法 としての意味 を、多少、
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包含 している程度 の法律 であ り、単純 に公益事業法である と断定 され えない法 律 である。
(2)地方公営企業労働関係法
(D 地方公営企業労働関係法の成立背景
国家公務員法 にな らって、地方公務員 を一般的 に規定す る法律 として、地方 公務員法が昭和25年12月 に公布 された。昭和26年2月13日か らその大部分が施 行 された地方公務員法の特徴 は、非現業地方公務員 と現業公務員 との労働法上 の取扱 いを区分 した ことであった。すなわち、前者 は地方公務員法 によって規 定 され、後者 は別 に規定 され ることになった ことである。 そ して、その別規定 として地方公営企業労働 関係法が昭和27年7月に公布 され、同年10月か ら施行 された。すなわち、地方公務員法 と地方公営企業労働 関係法 の区分 は、国家公 務員法 (昭和23年12月改正) と公共企業体労働関係法 (現在、国営企業労働 関 係法)の区分 と同様 に、「政令201号の制定 による争議行為 の禁止」 を起因 とし て区分 された ものである。また、この ような区分 の前提 として、政令201号が公 務員 を労働関係 に関 して、すでに下記 のように基本的 に3種類 に分 けられてい た とい うことである。
i)団結権、団体交渉権、争議権 の三権 とも保障 されない公務員。 (警察職員、
(注 7)
消防職員、海上保安庁職員、監獄職員)
ii)団結権 は保障 され るが、団体交渉権 と争議権 は保障 されない公務員。 (非現 業 の国家公務員 と非現業 の地方公務員)
iii)団結権 と団体交渉権 は保障 され るが、争議権 は保障 されない公務員。 (公共 企業体等 (公共企業体等労働関係法第2条 に明示 され るであろう公共企業 体等)職員、地方公営企業 (地方公営企業労働 関係法第3条 に明示 され る
であろう地方公営企業)職員)
しか るに、地方公営企業労働関係法の成立 は、上記 の 「団結権 ・団体交渉権 ・
争議権 の保障の可 ・不可 の区分」 と 「国家公務員 と地方公務員の区分」 と 「現 業 ・非現業の区分」の関連性 を適正 に労働 関係法上、整理す るために成立 した 法律である といって も過言で はない。 そ して、国の一般行政 に携わ る職員 は国 家公務員法 に規定 され、公共企業体等 (現在、国営企業)の職員 は公共企業体 等労働関係法 (現在、国営企業労働関係法) に規定 され、地方の一般行政 に携 わ る職員 は地方公務員法 に規定 され、地方公営企業の職員 は地方公営企業労働 関係法 に規定 され るようになったのである。
(注8)
それゆえ、地方公営企業労働関係法 は、企業職員 の身分取扱 いの面か らみれ ば、地方公務員法の特例 をなす ものであ り、労働 関係 に関す る面か らみれば、
労働組合法及 び労働 関係調整法の特別法 とい う性格 をもつ法律 である0 (参 地方公営企業労働関係法 と公益企業
地方公営企業労働関係法の目的 は、同法第 1条 に下記の ように明示 されてい る。
「この法律 は、地方公共団体 の経営す る企業 の正常 な運営 を最大限に確保 し、
もって住民の福祉の増進 に資す るため、地方公共団体 の経営す る企業 とこれに 従事 する職員 との間の平和的な労働関係 の確立 を図 ることを目的 とす る。」すな わち、上記の第 1条 は、地域住民の福祉の増進 に資す ることを目的 とす る地方 公営企業 と当該地方公営企業 に従事す る職員 との間 にお ける労働 関係が円滑で あ り、かつ、円滑 になることを同法の 目的であると明示 している法律である。
しか るに、同条 は地域住民の福祉の増進 に資す るということと密接 に関連 して いることか ら、公益事業法 としての意味 を十分 に有 している法律 である といえ よう。
同法第3条第1項 は地方公営企業 について 「地方公営企業 とは下記 の事業 を 経営す る地方公共団体 の企業である。」 と定義 している。
‑ 鉄道事業 二 軌道事業
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三 自動車運送事業 四 電気事業 五 ガス事業 六 水道事業 七 工業用水道事業
八 前各号 の事業 の外、地方公営企業法 (昭和27年法律第292号)第2条第 3 項 の規定 に基 く条例又 は規約の定 めるところによ り同法第4章 の規定が 適用 され る企業
しか るに、同条第 1項 は、地方公営企業 の範囲 を定義 している法律であ り、
公益事業法 としての性格 を有 していない法律 である。
次 に、地方公営企業労働関係法の中か ら公益事業 と関連 のある条項 を強 いて 兄 い出すな らば、同法第11条の 「争議行為の禁止」 を指摘す ることがで きる。
同法第11条 は以下の とお りである。
「職員及 び組合 は、地方公営企業 に対 して同盟罷業、怠業、 その他 の業務 の正 常 な運営 を阻害す る一切 の行為 をす ることがで きない。 また、職員並びに組合 の組合員及 び役員 は、 このような禁止 された行為 を共謀 し、 そそのか し、又 は あおってはな らない。 (同条第 1項)地方公営企業 は、作業所閉鎖 をしてはな ら ない。 (同条第2項)
同条の争議行為 の禁止 の理 由は、 この小論 の「〔4〕の(1)の④ の国営企業労働 関係法 と公益企業」で論述 した と同様 な理 由であ り、以下 のような理 由である。
第一 の理 由 として、当該企業 の経営活動が、地域住民 の 日常生活 に とって必 要不可欠なサー ビスを供給 しなければな らない不断的活動でなければな らない か らである。
第二の理 由 として、地方公営企業 の職員 に争議行為 の禁止 を解 くような事態 が生 じて くる と、非現業 の地方公務員 に も波及す る恐れが生 じて くる可能性が あるか らである。
さて、 これ までの地方公営企業労働 関係法の考察 を踏 まえて、公益事業や公 益企業のステ イ‑タスを以下 の手順 で考察す る。
一、同法第 3条第 1項 に明示 されている事業が、すでに第23巻第 2号、第24巻 第 1号で考察 した個別事業法で公益事業 として取扱われているか否か、 ま た、取扱われている として も、 どの程度 の ものであるか を再吟味す る。
二、同法第3条第1項 に明示 されている事業 を経営す る地方公共団体 の個別生 産経済体が、同法第1条 (同法の 目的) に明示 されている地方公営企業 の 役割 (住民 の福祉 の増進 に資す る) を遂行す る個別生産経済体であるか ど
うか を検証す る。
三、同法第11条の 「争議行為 の禁止」が、同法第3条第1項 に明示 された事業 を経営す る個別生産経済体 にとって適正か否か を考察す る。
なお、 この場合、争議行為 の理 由 として前述 した第2の理 由 (地方公営企業 職員の争議行為禁止 の解除 に ともな う非現業 の地方公務員への争議行為禁止の 解除波及) を考慮すべ き理論 的事 由はないので、第1の理 由 (地域住民の 日常 生活 にとって必要不可欠 な用役や財の継続的供給) だけを考慮 して考察す る。
か くして、上記 の一、二、三 の手順 による考察 を踏 まえた上で、同法第3条 第 1項 に明示 されている事業が公益事業 としてのステ イ‑タスを有 しているか 否か、かつ、 それ らの事業 を経営す る個別生産経済体が公益企業 としてのステ
イ‑タスを有 しているか否か を考察す る。
⑦ 鉄道事業
同法第3条第1項 の鉄道事業 は、個別事業法 としての鉄道事業法 に規定 され ている事業である。 すでに、われわれ は第24巻第 1号 の同論文 の(4)で鉄道事業 と公益事業 との関係 について論究 した。 その論究か ら第一種鉄道事業 と第二種 鉄道事業 は公益事業 としてのステ イ‑タスを有す るが、第三種鉄道事業 につい て は公益事業 としてのステ イ‑タスを有 していない とい うことを理解 した。
次 に、第一種鉄道事業や第二種鉄道事業 を経営す る個別生産経済体 の経営主
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体が地方公共団体 であるとい うことは、 その個別生産経済体 としての地方公営 企業が地域住民の福祉の増進 に寄与す るものでなければな らない ことを意味 し ている。 なぜ な ら、地方公共団体 は地域住民の 日常生活 に密着 した広義 の行政 を行 い、地域住民 の福祉の増進 に寄与す ることを目的 として存立 しているか ら である。
さらに、第一種鉄道事業、第二種鉄道事業 を経営す る個別生産経済体 として の地方公営企業 に対 して、争議行為の禁止が適正か否か とい うことについては、
けっして適正であると思われない。 なぜな ら、各地域 における輸送 とい う用役 は、地域住民の 日常生活 に とって不可欠 なる用役 であるが、今 日、 自家用車等 の普及 にみ られ るように、代替輸送機関が多 くな り、全輸送機関の輸送量 に占 める鉄道事業 の輸送量 の比率が競争 によって漸減す るようになっている状況か ら推察 して、 けっして適正である と思われない。 それゆえ、上記の ような鉄道 事業のおかれている状況か ら、鉄道事業 の場合、法律上 の争議行為の禁止 は意 味 をもたない。 したが って、同法第11条 に、争議行為 の禁止が適用 されている
とい う基準で地方公営企業 の鉄道事業が公益事業である とはいえない0 しか し、同法第3条第1項 の鉄道事業 (第‑種 ・第二種鉄道事業) は、公衆 の用 に供 す る事業であ り、地域住民の経済福祉の増進 に資す る事業であるので 公益事業 としてのステ イータスを有 しているし、かつ、同事業 を経営す る個別 生産経済体 は公益企業 としてのステイ‑タスを有 している。
㊥ 軌道事業
同法第3条第1項 の軌道事業 は、個別事業法 としての軌道法 に規定 されてい る事業であ り、われわれ は第24巻第1号 の同論文 の(4)で、すでに軌道事業 と公 益事業 との関係 について論究 した。 その論究か ら軌道事業 は一般公衆の用 に供 す る交通事業であ り、それゆえに同事業 は公益事業であることを理解 した。 ま た、経済性 を指導原理 として、同事業 を合理的、継続的、計画的、統一的 に経 営す る個別生産経済体 は公益企業であることも理解 した。
次 に、上記 の軌道事業 の個別生産経済体が地方公営企業 として経営 され ると い うことは、地域住民 の経済福祉 の増進 に資する ものでなければな らない こと を意味す る。 なぜな らば、同法第1条 に地方公営事業 の役割が、住民 の福祉 の 増進 に資す るものであることを明示 しているか らである。
さらに、上記の軌道事業 の個別生産経済体 に対 しての争議行為 の禁止が適正 か否か とい うことについて は、⑦の鉄道事業で言及 した と同様 な理 由か ら適正 である とは思われない。すなわち、代替可能 な用役が供給 されている軌道事業 の場合、法律 (同法第11条)上 の争議行為 の禁止 は、意味 を もたない、 したが って、法律上、軌道事業 に争議行為の禁止が適用 されている とい う基準で、地 方公営企業 としての軌道事業 は公益事業 としてステ イ‑タスを有す るもので は ない。
しか し、同法第3条第1項 の軌道事業 は、公衆の用 に供す る事業であ り、地 域住民 の経済福祉 の増進 に資す る事業であるので公益事業 としてのステイ‑タ スを有 しているし、かつ、同事業 を経営す る個別生産経済体 は公益企業 として のステ イ‑タスを有 してい る。
⑮
自動車運送事業同法第3条第1項 の 自動車運送事業 は、個別事業 としての道路運送法 (主 と して第2条第2項、第2章 (第3条〜第46条)) に規定 されている事業である。
われわれ は、すでに第24巻第1号の同論文 の(4)で 自動車運送事業 と公益事業 と の関係 について論究 した。 その論究か ら、 自動車運送事業の全 てが公益事業 と してのステイ‑タスを有す るので はな く、路線 を定めて、定期的 に運行す るこ とによって旅客や貨物 を運送す る自動車運送事業のみに公益事業 としてのステ イ‑タスが与 えられ ることを理解 した。
次 に、上記の自動車運送事業の個別生産経済体が地方公営企業 として経営 さ れ るということは、前述 の⑦の鉄道事業や㊥の軌道事業で も論究 したように、
当該個別生産経済体 が地域住民 の福祉 の増進 に資す るものでなければな らない