NDC 549.92
小規模なマイクロプロセッサ応用装置の開発手順と援助装置
岡 田 正*岸本俊祐**
(昭和55年4月30日受理)
Development Steps and Support Tools for Small Scale Microprocessor−based System Tadashi OKADA and Shttnsuke KisHiMoTo
(Received April 30, 1980)
Developing the microprocessor−based system, particular design steps and various support tools are necessary.
However, for some small scale system, it is possible to simplify these steps and tools.
正n this paper, simple design steps are proposed for developing dedicated・system with microprocessor. Then, the small microcomputer system with the hand皿ade P−ROM writer is explained as a support tool. Moreover, two devel・
oped systems are reported for the applicability ef this method.
1 ま え が き
マイクロプロセッサ(MPU)の応用形態の一つに,ハ ードウェア部品として,応用装置の中に埋め込んで使用す る方法があるD。この場合のMPUは,コントローラ用L SIとして扱っているので,このような装置の開発にあた っても従来のディジタル回路に関する知識が要求されるの はもちろんである。しかし,コンピュータとしての側面も 持っているので,プログラム開発も含めて考える必要があ
り,特別な開発手順・開発援助装置が必要となる。
MPUを応用した装置は多岐にわたり,その開発手順は 一般化すると非常に複雑となり,開発援助装置にも種々の ものが必要となる2)。しかし,ハードウェア部品として小 規模な装置に応用するような特別な場合には,開発手順も 単純化でき,少ない援助装置で開発が可能である。このよ うな用途では,MPUの低価格性を考えれば,高価で複雑 な援助装置を使うことは,かえってMPU使用の利点をそ こなうおそれがある。
本報は,MPUを応用した小規模な装置を,少量開発す る場合の手順と留意点をまとめた。さらに,簡易P−RO Mライタの構成方法と,それを中心とした必要最:小限の援 助装置を自作し,2例の小規模な装置を開発した実例につ いても報告する。
*電気工学科
**応用物理
2 開 発 手 順
小規模な汎用MPUを使用した装置の開発手順を,
Fig.1に示す3)。まず, MPUを使用することでどのよう な利点が生ずるかを明らかにした上で,具体的なCPUの 選択をしなければならない。CPUの選択にあたっては,
特に低消費電力や高速動作が要求されるのでなければ,広 く情報が蓄積されており,手もとで扱v一]たことのあるCP Uがよいとされている。今目的としている程度の応用であ れば,どのようなCPUでも,まず装置は設計できる。な かでも,8ビット系のCPUが最もコストパーフォーマン スがよく,ソフトウェア等の情報が豊富である。また,新 しいCPUは種々の改良が加えられており,機能的に必要 以上と思われる場合もあるが,CPUの性能に余裕がある
と全体の構成が容易になるので,高性能化は望ましい。
続いて,全体の設計を行なうが,MPU応用装置特有の 問題点として,全体の機能をハードウェアとソフトウェア でどう分担するかということを考えなければならない。特 に,ほとんどのCPUが専用の周辺LSIを持っており,
これらを使用すれば,ソフトウェアの負担を軽くできる。
しかし,機能が不必要に多くなるときは,必要な機能のみ をTTL IC等で構成した方が,小型・低価格で製作で きる場合が多い。また,後で変更が考えられる箇所は,多 少無だになってもハードウェアに余裕を持たせておき,ソ
フトウェアの変更で封応できるようにしておくとよい。
一69一
津山高専紀要第18号(1980)
START
1. Aim of the design
2. Device character−
istics
3・ System design r一一曹一一『一『
4. Hardware
design 5.Sottware
design
一[(Assembter)
6. Wri tes
EP−ROM
{P ROM Writer
7. Test
run
Eatisfy 2
No Yes
END
Fig.1 Development steps of a small scale microprocessor−
based system
設計が終れば,ハードウェアの製作,プログラム開発を 行なう。プログラムの開発では,ある程度汎用性をもった マイコン装置で,基本的な動作を行なわせることが望まし い。また,アセンブラや裏方プログラム(Utility)が使え れば開発時間が短縮できる。ハードウェア・ソフトウェア が完成すれば,P−ROMライタによってプログラムをE
P−ROMにファームウェア化して,試験的に実行させて みる。これによって誤り箇所を発見し,必要なところにも どって修正を加える。
以上の手順で応用装置が完成するが,MPUを使用して いるのでプログラムの変更で機能の追加が可能である。こ のため,ハードウェア(回路図,タイミング図),ソフト
ウェア(プログラムリスト,フローチャート)の情報を整 理して残しておき,変更の場合に対応できるようにしなけ ればならない。
Fig.1の4〜7の手順において,ハードウェアとして完 成した基板の段階から購入したり,他系・自系の開発援助 装置を使用すれば,時間的な面で大幅に短縮できる?)。し かし,ここで目的としているような小規模な応用装置にと っては,これらは相対的に高価で多機能すぎる。したがっ て,最低限,簡単なマイコン装置と,それに付加した手軽 に扱えるP−ROMライタ,必要ならアセンブラ程度で,
直接基板段階から開発できるし,このような方法のほうが MPUの低価格性を生かせる。
3 開発援助装置例
2で述べたように,MPUを使用した装置では,最終的 にプログラムはファームウェア化してROMに書き込むの で,開発援助装置としてP−ROMライタは不可欠であ る。高価なROMライタも市販されているが,幸い紫外線 や電気的に内容が消去でき,特別な電源と簡単なプログラ ムパルスで書き込めるE P−ROMが多数入手できる4)。
これらのプログラムパルスの制御は,CPUによって入出 力ポートを経由して簡単に行なえるので,マイコンで容易 にROMライタが実現できる。
たとえば,広く使われている FAMOS (Floating gate Avalanche injection MOS)タイプのEP−ROMのうち,
2708(1024×8ビット構成)の書き込みはじS/WEピンを
+12Vにして, PROGRAMピンに+ 26Vのプログラムパ ルスを1バイトにつき1mS×100回加えることで可能で ある5)。したがって,電源回路と,TTLレベルの電圧で 制御できるプログラムパルス発生回路を出力ポートを通し て接続し,簡単な制御プログラムを書けばP一一ROMライ タとして使える6)。同様に2708に比べて2倍の容量を持つ 2716(2516)の書き込みパルスは,Fi9.2に示すように,
TTLレベルで1バイトにっき50mS加えるだけでよい5)。
Vpp=25V , CS.V,,
ADDRESS
@ n
ADDRESS
@ n+1
p 脚 ¶
VVVv
DA丁A 9ATA
Vzu(2,2V一一)
Ae一・te
ViL(一〇.1 一」O.8V)
V二H De−n
v【し VLH 〈一45.
PDIPGM i s 55mS
VZL
Fig.2 Programming waveforms of the EP−ROM 2716
一 70 一一
小規模なマイクロプロセッサ応用装置の開発手順と援助装置 岡田・岸本
このため,2716用のP−ROMライタは,ハードウェア・
ソフトウェアともさらに簡単に実現できる。
26V sV
MPU応用装置として,学生実験用の二つの統計分布測定 装置を説明する。一つは,.放射線源からの放射粒子数を計 数し,ポアソン分布を求めるもので,CPUに8080Aを使
RAMR ogramming da ta
CPU 8080A
ROM(RAM>
Control prograrn
PPI
丁wo 24−pin zero−force
insertion sockets
12V
嬬,.
2708 PGM
825 5
一輔一一一sK−80一用■一『一一一一一一
ご§1WE
10Ao−g
8D。碑
25V e−0
5V
2716 11
PDt PGM Ae−w
s D。副
v?p
R/WSW
Fig.3 Simple P−ROM writer which interfaces with the TK−80
Fig.3は,最:も簡単なマイコンの一つであるTK:一・80 に,4Kバイト以上のRAMを増設して, P−ROMライ タとして使えるようにした場合の構成を示す。このよう に,基本的な書き込みは,数十バイトのプログラムと簡単 なハードウェアでできるが,P−ROMライタとしては書 き込みのほか,書き込みの確認・消去チェックが必要であ る。これらは,Fig.3に示したように書き込みを汎用入出 力ポートを通して行なえば,各ポートの入出力の方向の制 御と電源の切換えだけで,一般の入出力機器のように扱う
ことでできる。
以上で,開発援助装置として不可欠なP−ROMライタ の最も簡単な構成を述べたが,さらに使いやすくするため には,ROMに書き込む種々の形態のデータを取り込み,
効率よく加工することが必要である。この機能は,一般の マイコンのモニタブnグラムの機能と共通するところが多 いし,マイコンの一部として,P−ROMライタが使えれ ば便利な点が多い。我々は,特にP−ROMライタ用に種 々のくふうを加え,上記以外のROMにも書き込めるP−
ROMライタを含むマイコン装置を開発している。これに ついては,別の機会に発表したい。また,他のアセンブラ 等の援助装置一般,あるいは大量に製作する場合に有利な
ワンチップマイコン用開発装置等についても触れない。
4 小規模な応用装置例
以上述べてきた手順・装置によって開発した,小規模な
渇している7)。.今一っは,X−Yオシロスコ ープ上で行なう模擬測定から正規分布を求め るもので,CPUにZ80を使用しているs)。
これらは,Fig.1で述べた手順に加えて,
簡単なマイコンTK−80で同様の内容を試行 し,色々な問題点をあらかじめ解決してから 専用化したため,比較的容易に専用装置がで きた。いずれもRAM2.56バイト, ROM O.5/1Kバイト.と,簡単な入出力ポート等を TTL ICを主にして構成したもので,マ イコンとしては最小構成に近いものである が,MPUを使用しなければこのような小型 でありながら,多機能で柔軟性に富んだ装置 は実現できない。
統計分布測定装置の個々の詳細は別に発表 したので,ここでは中心となるCPUの違い について,専用装置化の点からまとめておく。Z80は8080 Aの上位コンパチブルなCPUとして登場したため,アー キテクチャ上各種の改良が加えられており9),このよう な小規模な応用には一見無だのように思える。しかし,
CPUは多くの機能を制限して使うほうが,周辺回路の設 計やプログラム開発が容易である。特にZ80は,ハードウ ェア面で進んだ構成であり,ビット操作命令などととも に,制御用の用途にふさわしいものと思う。ただ,ソフト ウェア的には8080Aの延長上にあるので不十分な点があ り,ソフトウェア重視の応用装置には,68系のCPUのほ うが適していると思われる。
5 む す び
低価格化・小型化・多機能化・インテリジェント化のた め,MPUを応用した装置が多数出現している。ζのた め,MPUをベースにした装置の開発手順が議論され,多
くの援助装置が発表されている。しかし,小規模な応用装 置で,汎用MPUをコントローラ用LSIとして使用する ような場合,これらの手順や援助装置が,価格や機能の点 で必ずしもふさわしいとはいえない。
これら小規模な応用装置の開発は,簡単なP−ROMラ イタを含むマイコン装置を用いて,開発したプログラムを EP一一ROMに書き込み,実行させながら修正するという
:方法でもできる。
この方法によれば,MPUの低価格性をいかした応用装 置が開発でき,そのような例として,統計分布測定装置に つい述べた。
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津山高専紀要第18号(1980)
MPU応用装置が,大量大規模になれば,それに応じた 手順・援助装置を使用しなければならない。しかし,専用 機化した装置でMPUをコントローラ用として使っている と,細かいタイミングなどは実際に動作させなければわか らない点が存在する。このような場合には,本報で述べた 方法は簡単で有効な手毅となり得る。
最後に,急逝された近藤只雄先生には何かと御指導御 援助願っておりましたが,この場を借りて厚くお礼を申し 上げるとともに,御冥福をお祈り致します。
文 献
1)正田ほか,産業用マイクロコンピュータの基礎と応
用,(昭54),70,オーム社.
2) 森,マイクロコンピュータハンドブック,(1979),
145,朝倉書店.
3) D. Zissos, System Design With Microprocessors,
(1978), 53, Academic Press lnc..
4)森,マイクロコンピュータハンドブック,(1979),
63,朝倉書店、
5) 猪飼,最新メモリーC規格表,(昭53),CQ出版.
6) 山本,インターフェース,3−4(1977−8),158.
7)岡田・岸本,トランジスタ技術,17一 3(1980一 3),
332.
8) 岡田・岸本,トランジスタ技術,17一一 4(1980−4),
347.
g) SHARP, Microcomputer Z80 Handbook (Part 1 ),
(1979) , 55, Electronics Digest Company.
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