経営 と経済 第
8 6
巻 第3
号2 0 0 6
年1 2
月日本企業における連結経営
‑ グローバ リゼーシ ョンと経営意思決定 ‑
1 45
藤 野 哲 也
Abs t ract
Thepur po s eo ft hi spa pe ri s ,ba s e do nt her e s ul to fmyf i e l ds uⅣe y c a r r i e do uti n1 9 9 9a nd2 0 0 0 ,t oe xa mi net hec o ns o l i da t e dma na ge me n t a ndt hee vo l ut i o no fg lO ba l i z a t i o ni nJ a pa ne s ema j o rc o r po r a t i o ns ,r e v‑
i e wi ngbo t hi n2 0 0 3a ndi n2 0 0 6t oc he c kupo na ndt a kei nt hec ha nge s ha ppe nl n ga f t e rt heba s i cs uⅣe y.
J a pa ne s ec o r po r a t i o nsha dma i nt a i ne dt he i rdi vi s i o na la p pr a i s a ls ys ‑ t e mo nl ywi t ht hed i vi s i o l l SWi t hi nt hepa r e ntc o mpa ny, buti nt hemi ddl e o f' 9 0 St he yha vea do pt e dCo ns o l i da t e dDi vi s i o na lAppr a i s a lSys t e m whi c ha i mst ome a s ur et hef i na nc i a lpe r f o r ma nc eo fe a c hpr o d uc tdi vト s i o nwi t hi t ss ubs i d i a r i e si nc o ns o l i da t e dba s i s .
Fur t be r mo r e ,t he壬 l uma nr e s o ur c e sma na ge me ntS y s t e m i nJ a pa ne s e c o r po r a t i o nsha sbe c o meal i t t l edi f f e r e nts t yl ef r o m J a pa ne s et ypi c a l s ys t e m,ado pt i ngs oc a l l e d ̀ ̀ pa yf o rj o b"s ys t e m.The n,s omeo f J a pa ne s ec o r po r a t i o nsha vea do pt e dCo ns o l i da t e dOr ga ni z a t i o na lCha r t a st hege ne r a lc o nc e pto ft hepr o d uc ts t r a t e gy.
Keywor ds:J a pa ne s eCo r po r a t i o n,Gl o ba l i z a t i o n,Co ns o l i da t e d Or ga ni z a t i o na lCha r t ,Co ns o l i da t e dMa na ge me nt
第
1
章 日本企業のグ ロ‑パル事業展 開今 日,市場のグローバル化 に伴 って,企業 における連結経営 もまたグロー バルであ ることが求め られている。まず, 日本企業のグローバル事業展開に
ついてみてお くと, 日本企業の多国籍化 とト、うりは
,1 9 6 0
年代の米国多国籍 企業の事業展開に奇妙 にも似ている。1 9 6 0
年代の米国企業 が抱 えていた問題 に,当時のEEC
への対応 とい う問題 があぅた。EEC
が1 9 5 0
年代後半 に設立 され,1 9 6 0
年代 にその経済活動 を開始 して ヨーロ ッパが地域経済圏 として 自 立 を始めた ときに,米国多国籍企業は巨大な米国国内市場 以外の海外市場 に どう対応す るかを迫 られた。概 ね, この頃か ら米国企業の多国籍化が始 まっ た と考 え られ る。注1)それか ら
3 0
年 を経 て,市場のグ ローバル化 が1 9 9 0
年代あた りか ら急速 にい くつかの要因で展開す るようにな り,それに伴 って,+日本 においては企業の 多国籍化 とグロ二パル化が9 0
年代 に同時に起 きたのであ る。注2)
工業用 フ ァスナーの メー カーである
YKK
(吉 田工業)は世界市場 で5 0 %
以上のシ ェアを持つが,5 7
ヶ国に有す る海外子会社の 自立経営を奨励 し, 日 本の本社 への配当送金 を後 回 しに して も進 出先 国に投資 し,現地の社会 に溶 け込み,現地人社員 を登用す ることな どを積極的に進 めて きた ことで知 られ ている (吉 田忠雄 [1 9 8 6 ]
「わが社の海外展開の基本理念」
『経 団連月報』N0 .
9
な ど)。ところが
,9 0
年代 にな る とグローバ リゼーシ ョンの進展の結果,顧客であ る リーバ イスやアデ ィダスな どが各国子会社 レベルで個別 に取引す るのでは な く,親会社 レベルでのグローバルな供給契約の締結 を求めるようになって きた。衣料業界で製品の世界市場 での同一化 ・一体化が進 んだため,フ ァス ナー も各 国仕様 でそれぞれ調達す るよ り,親会社 がグローバル に価格 ,納期 な どを決 めて購入す る方が合理的 になって きたのであ る。 この要請 に対応す るためには親会社 がグローバルなマーケテ イングを担当 し,各国子会社 の最 適な組み合わせ によ り価格,納期 な ど顧客のニーズに対応 する必要 がある。各国子会社 もその戦略の下で同一 の仕様 で製品を供給す ることが何 よ りも重 要 にな って きたのであ る。注3)
日本企業 におけ る連結経営 ‑ グローバ リゼーシ ョン と経営意思決定 ‑
1 47
この ように,経営のグローバ リゼーシ ョンを推 し進めてい くためには, 冒 本市場をグローバル市場の中で正 しく位置付け,世界市場を対象 にした経営 資源配分の最適化 を計 り,単 に 日本市場や各国市場の特殊性 に適応するのみ な らず,世界共通の仕様,品質な どを 目指す生産体制 ,組織構造,人事シス テムな どを構築 してい く必要がある。
米国企業の場合は,多国籍企業化が
1 9 6 0
年代 に進展 してお り,地域のマネ ジメン トへの対応は1 9 6 0
年代以降,貯余 曲折あ りなが ら,9 0
年代のグローバ ル化 に対応 したO この面でフ ェーズの違 いはあるが,市場のグローバル化 に 対応 している とい う点では,現時点で 日本企業 も米国企業 も同 じであると言 えよう。 この点では, 日本が単純 に米国か ら3 0
年遅れている とい うことはなく注
4)
,言わば 「同じ土俵」で競争が行なわれている と言える。もともと企業は,国内市場 に集中 して設計,生産,販売な どの企業活動 を 営む方が経営効率が高 く,恐 らく,それは 日本企業 も欧米企業 も同様であろ う。 国内で研究開発 し,製品化 して販売する,そ して製品 として完成度の高 い ものを海外へ持 ってい く。米国企業 もその ように製品事業展開 している訳 で注
5)
,一般的な イメージ として定着 してい る 「国内市場 中心型である」い うことは必ず しも日本企業の特色ではないのではないか。海外市場へのアプローチ とい う面か ら言 えば,一般 に三つの選択肢が考 え られ る。ひ とつは,自国内で生産 を行い,製品を輸 出するアプローチであ り, 第二 に,ライセンスを供与 して相手国企業に生産 を認め,特許料や実施料を 得 るとい うアプローチである。第三のアプローチ として,海外投資をして現 地生産をする とい う方法があ る。結果か ら見れば,欧米企業は早 い時期か ら 海外生産 を, 日本企業は可能な限 り輸 出で対応 して貿易摩擦な ど相手に トリ ガーを引かれる と,渋 々出て行 くとい う事実がある。注6)
この背景には,企業の合理性か らみて,まず国内で足元を固めてそれか ら 海外 に出るとい うこと以上 に, もう少 し異なる要因が考 えられ る。
企業の多国籍化 に関する研究ではいろいろな調査 があるが,米国企業が欧
州市場へ進 出する場合 と, 日本へ進 出するの とでは差があ るとい う指摘があ る。同じ企業が海外展開するときに,欧州に進 出する時には現地生産 を志 向 するq)に対 し, 日本への進 出の際にはライセンス供与を志向するとい う調査 結果があ る。注
7 )
これは企業の ビヘ イビアか ら説 明され るのではな く,市場 の要因, 日本の規制な どが主だ とされる。一方, 日本企業が海外進 出する際 には どうなのか と言 うと,前述の通 り, 欧米企業 も日本企業 も国内の方が経営 し易い し,必ず しも海外事業展開 した い訳ではない。それにも拘わ らず,欧米企業 と日本企業 に違 いが生 じる背景 としては,ノウハウの持ち方が明示的か,あるいは暗黙的か とい う違 い も関 係 して くる。特 に,生産 ノウハウに係わる部分が, 日本企業の場合は どち ら か●とい う と労働者 に対 す る依存度が高 く,注
8 )
現地 の人材 を うま く使 えないと成果が上が らない とい う面がある。
勿論,装置産業型の場合,ある種の設備を導入 して しまえば,各企業の経 営成果 に極端な差は出ない とい う側面 も考 えられ よう。 しか し,組立加工産 業の場合 には,海外進 出先の現地採用社員であ るブルーカラー
( l oc a lna ‑ t i ona l s :LNs )
を うま く使 い こな し,生産 ノウハ ウを伝授 しなければ,なか なか生産性が上が らない とい う面がある。そ うなる と, どうして も日本企業 の ノウハウは,「や ってみせ る」 とい う形で しかなかなか伝達 で きない とい う特徴 もあ り,注9)
次 々 と入社 して くる新入社員たちがその企業の 「企業特 殊的な」仕事の仕方 に慣れるとい う形 で,職場 ご とに継承 されてい くことに なる。従 って, 日本企業が海外進 出する場合,欧米多国籍企業 と違 う形で顕著 に 現われるのは,大量の現地採用のワーカー
( LNs )
を 日本に連れて きて3
ヶ 月か ら6
ヶ月の訓練を し,逆 に 日本か ら大量の海外駐在員,それ もホワイ ト カラーではな くて現場の班長 レベルの従業員を も含めて大量 に送 り込む こと が多い。江 1 0 )
「手取 り足取 り」 とい う形 で,固有のノウハ ウを伝達するので ある。日本企業 における連結経営 ‑ グローバ リゼーシ ョン と経営意思決定 ‑
1 4 9
こうした手法を,世界市場の,例 えば5
0
カ国で同時に行な うとい う事態を 迎 えれば,人材の量の面で も質の面で も困難 を伴わざるを得ない。 こうした 企業文化,あ るいは 日本企業の特殊性 と言われるものが, 日本企業のグロ‑パル事業展開の特徴 に絡 んでいるのではないか と思われる。
日本企業のグローバル事業展開が始 まった当初は, 日本企業は現場主義で あ り,む しろ欧米企業が現地法人 に任せないような範囲まで現地 に任せてい た と言 える面 があるO「赤字でなければいい」「配 当で もして くれれば御の字 だ」 という現地任せの経営が,初期の 日本企業の海外事業展開だったのでは ないか と考 える。それは,北米を除けば,東南アジアや台湾,および中南米 地域で行われていたが ,注
11 )
所謂,発展途上国が輸入障壁 ・輸 入代替政策 を 採 っていて,関税障壁で国内市場を守 っていたのである。従 って,輸 出では現地国市場 に参入で きないので,海外 に現地法人を設立 せざるを得ない とい う形で,海外進 出せざるを得なかったケースが多かった と考 えられる
。7 0
年代初頭 においては,それ ら地域 における各国の一国の国 内市場規模は比較的小さ く,さらに,各 々の国で関税障壁があ り,地域間で の取引 もや り難 く,それぞれの国に工場 を建設 しなければな らない とい うス タイルを採 らざるを得なかったのである。そ うした国では規模の経済性 も働 かない し,ローカル価格で売れればいい とい うスタイルでやってい く経営方針 が採 られることにな り,ほ とん ど親会 社の事業経営 と関係がな くなる。親会社 としては リスクも取 りた くない し, 所有政策 において も1
00 %
出資子会社ではな く,現地の商業資本な どとの合 弁形態を志向 し,「技術は出すか ら,また生産 も人材を出して指導す るか ら, 売 る方は任せ る」 とい うスタイルを採 っている ところが多 かった。注12) こうした面か ら言 うと,経営の現地化 とい うのは実は,かつての方 が進んでいた とも言 えよう。もともと海外進 出先現地での子会社経営について関心 も薄 く, 合弁形態を採 っていた訳であ り,海外進 出先での現地採用社員 か ら登用 され た役員
( Di r e c t o r )
な どが数多 くいたケース もある。注1 3 )
しか し,それが ここ
1 0
数年,.市場経済化 ・グローバ)I/化が進 んで きた状況 下 で,各国が市場経済化 を図ることの方 が経済発展 に とってプラスである とし,関税障壁 を下 げ る とい う経済モ デルが主流 にな って きた。注
1 4)
こうして 規模の経済性 が働 くようにな る と,企業 に とって海外事業が重要 な問題 とな って くる。 また,マーケ ッ トが大 き くな るので,国や地域 をまたがるような 海外子会社が出て きて,そ こで赤字を計上す るこ とにな った りす る と,単独 決算の時代であった として も資金援助や借 り入れ保証 は しなければな らない 事態 に陥 るケース もあ る。注15)この ように, 日本企業 において海外事業が親会社 の経営の土台 に影響 を及 ぼす ような規模 になって きている。 また,経済のグローバル化の中で 日本経 済 が円高下 にあ り, 日本市場でコス ト競争力を失な った ことに対応 して,そ れを逆輸入の形 で海外子会社 に生産 させ る とい うケースが
1 9 9 0
年代 に少なか らず生 じた。そ うな る と今度はむ しろ,親会社 に とって海外子会社 が調達先 になって しまい,そ こで品質 に問題のあ る部品や製品を作 られ る と日本での 品揃 えや組立て に影響 を及 ぼ して しま うため,あま り現地側 に子会社経営を 任せてはおけな くな って きた。従 って,ローカ リゼ‑シ ョソ,現地人社長の比率や現地人社員マネージ ャー の比率な どは,必ず しも単純 に段階的 に増加 して きた とい う訳ではな く,逆 に初期の方が高 くて,上記の要因か ら一度低下 し,現在 は違 う質の ローカ リ ゼ‑シ ョソ とい うフ ェーズ において再び上昇 させなければな らない とい う辛 態 を迎 えてい る と言 える。注16)
[注]
1)藤野
[1 99 8 a]
,第9
章「
『日本型多 国籍企業』 のゆ くへ一 日本企業 にみ られ る変化‑
」,Pa r ksl 1 9 69 ]
," sur vi va lo ft heEur o pe a nHe a dq ua r t e r s" ,Ha r v ay dBu s i ne s sRe v i e w
,Ma r c h‑ Apr
il,St o pf o r d/, We l l s[1 9 7 2
],Mana gi ngTheMul t i nat i o nalEnt e r pr i s e ,Ba s i c Boo kl nc.
(邦訳 山崎清訳[1 9 7 6
],
『多 国籍企業 の組織 と所有政策 ‑グ ローバル構造を超 えて ‑』ダイヤモン ド社)ほか。
日本企業 におけ る連結経 営 ‑ グローバリゼーションと経営意思決定‑
1 51
2
)藤野[1 9 9 8a
]を参照 されたい。3
)朝 日新聞,20 0 0
年5
月13
日記事な どを参照。4
)入城政基 シテ ィバン ク在 日代表 (当時。元 エ ッソ石油社長 ,新生銀行前会長)は,1 99 7
年5月3 0
日の筆者q)インタビュー調査 において「(
日本企業が欧米多国籍企業 よ り3 0
年 くらい後 れてい るとい うのは)感覚的に合致する」 とい う見解を示 した。5)Ve r no n,Ra ymo nd[ 1 9 7
1],So u e r e t gnt yatBa y:TheMul t i nat i o nalS p7 1 e a do fUS. E nt e r ‑
♪r i s e s ,Ba s i cBoo ks
(審見芳浩訳[ 1 9 7 3
],
『多国籍企業の新展開』,ダイヤモン ド社), 実践経営学会編 『実践経営辞典』20 06
年,楼門書房な どを参照。6)藤野[1 9 9 8a] pp. 7 7 ‑81
を参照の こと。 また,マル コム ・トレバーは 日本企業の多国籍 企業 を「 r e l uc t a ntmul t i na t i onal s
」 と呼んでいる.Tre vor ,Ma l c o m[ 1 9 83 ] ,Ja Pan' s Re l uc t antMul t i nat i o nal s :J a l ) ane s eMa na ge me ntatHo mea ndAb r o ad" Fr a nc e sPi nt e r
( Publ i s he r s ),Lo ndo n
を参照 されたい。7)Dunni ng,J o hnH. [ 1 9 96
],"Expl a i ni ngf o r e i gndi r e c ti nve s t me nti nJ a pa n:s o met he o
‑r e t i c a li ns i g ht s " ,M.Yo s hi t o mia nd
E.M, Gr a ha m , Fo r e i gnDi r e c tI nv e s t me nti nJ a pa n
,U.
K. ,Edwa r dEl ga r
を参照の こと。8)whi t e,Mi c haer u,a ndTr evor ,Mal com[1 985
],Unde rJa pane s eMana ge me nt
,HEI NEMANN DUCATI ONALBOOKS
(猪原英雄[1 9 8 6
],『ジャパニーズ ・カンパニー 外国人労働者 が見た 日本式経営』,光文社)を参照 されたい。9
)林吾郎[ 1 9 8 5
],
『異文化 インターフ ェイス管理海外 における 日本的経営』有斐閣,林吾 郎[1 9 8 5
],
『異文化 インターフ ェイス経営国際化 と日本的経営』 日本経済新聞社な どを 参考 にしている。1 0)本 田技研・
工業はその典型的な例 と考 え られる。 この点については,安保保夫,板垣博 ほか[1 9 91
],
『アメ リカに生 きる 日本的生産 システム現地工場の 「適用」 と 「適応」』東洋経済新報社,安保保夫編著
[1 9 9 4
],
『日本的経営 ・生産システム とアメ リカ‑ シス テムの国際移転 とハ イブ リッド化‑ 』 ミネルヴ ァ書房な どを参考 にしてい るはか,筆 者 自身の同社 に対す るインタビュー調査 に基づいている。ll )
通産省 「我 が国企業の海外事業活動」調査」 によれば,70
年代初めの 日本の製造業の 海外直接投資先 は 「アジア,中南米 とい う発展途上国に北米を加 えた3
地域 に集中 し てお り, 1件あた りの投資金額が小 さ く, 日本側 出資比率が95 %以上のケースは少な
く,5 0 %未満のケースが 3
分の 1以上あった」。 この点については,藤野[1 9 9 8a
],序 章 「日企業 (製造業)の海外事業の原点‑1 9 7 0
年代初頭の断面図 ‑」を参照 されたい。1 2)藤野[1 9 9 8a
],第5
章 「事業部組織 と連結業績評価 システム1
.事業部組織 と出資 比率」を参照の こと。1 3 )
藤野[1 9 9 8a] pp. 1 3 2 ‑1 3 3.
1 4 )
東南アジア諸国で こうした傾向がみ られるほか,例えばブラジルでは,19 9 0
年のコロー ル政権発足 と同時 に,従来の輸入代替政策を転換 し,国際競争力強化 に踏み出した。1 5 )1 9 9 7
年のアジア経済危機の際に,各社が子会社貸付金の負担軽減や出資比率の引き上 げを余儀なくされた事例はよく知られている。詳細は,藤野哲也[ 2 0 0 2 C]
,「 ASEAN
進出企業の現状と課題」,『経営者』,γo l . 5 6 ,No. 6 6 0
を参照のこと。1 6 )
経営のグローバリゼーションと経営の現地化については,藤野[ 1 9 9 8a]
,第6
章 「人材の登用と連結経営」を参照されたい。
第
2
章 連結経営のスタイル連結経営の進 め方 とい う意味で,日本企業の取 り組みについてみてみ ると, 例 えば,連結事業部あるいはグローバル製品別事業部の採用が早 いのは松下 電器産業であろう。松下は戦前か ら事業部制を採 っていた企業で, 日本企業 の基本的な流れ とは全 く異な っている。 この ような突 出した企業以外で言 え ば,東 レが
1 9 8 8
年頃に 「世界事業部制」 として,各事業部が国内市場だけを みているのではな く,世界市場をみることにした。 しかし,1 9 8 0
年代 にそ う した組織形態を公式 に採 っていたのは松下 と東 レ,ソニー くらいではなかっ た と思われる。注1)日本企業の場合,経営のグローバ リゼーシ ョンは
1 9 9 0
年代に一斉 に始まっ た と考 え られる。少な くとも,海外事業 に関 して,海外事業部 (国際事業部) を解体 して海外生産子会社あ るいは海外版売子会社を製品別事業部 の統括下 に置 くとい う試みについてはそ う言 える。国内関係会社 について も同様で, 国内外を貫 くグローバルな製品別事業部制の採用 とい うのは,1 9 9 0
年代の半 ば以降にみ られ るケースが多 く,キヤ ノンの場合 も,御手洗社長 (当時。現 会長)が 「連結事業部」 とい う発言 を したのが1 9 9 6
年であ り,注2 )
公式組織 としてグローバル製品別事業部制が,旭硝子,ソニー,東芝, 日立製作所,≡
菱電磯,キヤノン,デソソーな ど多角化 された製品事業を持つ主要 な 日本企 業で採用 されるようになったのは
9 0
年代の半ばである と考 えられ る。注3 )
こうした事実 と実態面で連結経営が実現 しているか とい う問題 とは別の問 題であって,例 えば,ソニーの場合,経営の仕組みの面の如何 に拘 わ らず,
日本企業 における連結経営 ‑ グローバ リゼーシ ョン と経営意思決定 ‑
1 5 3
連結経営が行われている とい う面がある。但 し経営者の資質や,経営者のグ ローバル性,企業の風土な どとは別 に,組織構造 に代表 されるような公式の システム ・制度面 でグローバル性 を持 ってい るか とい う観点 に立 てば, ソ ニー も連結経営システムの導入が早かった とは決 して言 えない。
しか しなが ら,「制度が整 っていないか ら連結経営が うま くいかない」 と い うのは, トップ ・マネジメン トの言い訳 に過 ぎないのであって・,ソニーの
ように, トップ ・マネジメン トがグローバルな考 え方の持ち主であれば,経 営の仕組 みが不十分で もグローバルな経営はで きると言 える。経営の結果 を 実態で測 るのか,システムや制度の側面でみるのか とい う違いによって,評 価 に違いが出るのだ と思われる。勿論,非上場企業や よ り規模の小 さな企業 では,早 くか ら連結経営の実態を伴 っていた企業 として,矢崎総業や ミネベ アな どを挙げることがで きる。注
4)
また,経営システム も仕組み もない ところか ら,連結経営を全社プロジ ェ ク トとして推 し進めたケース としてデンソーを挙げることがで きるが, この ために逆 に,デソソーは他社 よ りもシステム面 ・仕組みの面で進んでいる と
も言 える。例 えば,キヤノンの場合は,確かに御手洗社長 (当時)が
1 9 9 6
年 か ら連結経営 とい うことを言 っているものの,実務 として,特 に海外 を含め たシステム化 には時間が掛か り,「連結事業本部別業績評価 システム」(フ ェー ズ1)が導入 されたのが1 9 9 7
年,同システム ・フ ェーズ2
がスター トしたの は2 0 0 0
年 であった。注5)
従 って,連結経営をシステム として作 り上げるか,経営者の思想 として進 めるか, という違 いがあるのであ り,後者の意味では,確 かにキヤノンは比 較的早 かった と言 えるが,デソ ソーは
3
年計画で何をなすべ きかを詰めなが ら実行 した とい う点で,極めてシステマテ ィックなアプローチが採 られた と 思われ る。 日本企業の場合,む しろ経営者の トップ ・マネジメン トとしての グローバル経営 とい うケースの方が多いのではないか と考 える。各企業 も,汎用連結会計パ ッケージを入れ ようか迷 った り,導入 した もの
のそれだけでは うま くいかず,試行錯誤 しているケース もみ られる。 また, 経営計画は連結ベースで作成 しているが,月次の連結ベース業績把握は
21
世 紀 に入 ってか ら整備 された という企業 もあ る。比較的進 んだ企業で も,連結 ベースの業績評価 が月次でで きているかについてみる と,2 0 0 0
年前後 によう や くコンピュータ ・システム化で きた とい うレベルだ と思われる。 この よう に,経営理念の話 と仕組みや制度でかな り様相が異なっているのである。一日本企業の場合は, トップ ・マネジメン トの掛け声 ひ とつで急速な変草が 実現す る場合があ る。例 えば,年俸制な どの所謂,成果主義賃金は,導入 し た ものの,あま り拙速に導入 して しま̲つたために問題 を抱 えているケース も 報告 されている。注
6 )
[注]
1
)但 し,ソニーの場合 も,事業単位別 に社 内資本金が割 り振 られたのは,1994
年4
月の1 9
事業本部 を8
つのカンパニーに括 り直す組織改編 を行ない,一定の投資決裁権限や 人事権な どをカンパニーに委譲 した ときである。2)『日経 ビジネス』 ,1 9 96
年8
月5‑12
日号,吉原英樹,板垣博,諸上茂登編[2 00 3 ]「 Ca s e 1 8
キヤノン グローバル経営」な どを参照。3
)藤野[199 8
a] pp. 1 01 ‑1 1 6
のはか,吉原英樹[20 0
1],『国際経営 新版』な ど。4
)矢崎総業については筆者の 「東南アジア 日系製造業の経営課題調査」(1 99 6
年7‑8
月), ミネベアについては199 9
年8
月の訪問調査結果に基づいている。5
)吉原英樹,板垣博,諸上茂登編[ 20 03 ]「 Ca s e 1 8
キヤノン グローバル経営」 p.3 01
を参照。6
)高橋俊夫[ 2 00 4
],『虚妄の成果主義一 日本型年功制復活のスス メ』 日経BP
社,城繁華[ 2 00 4
],『内側か ら見た富士通 「成果主義」の崩壊』,光文社はか。第
3
章 製品軸 と地域軸連結経営を展開する中で,企業グループ全体のマネジメン トを製品軸で括
日本企業 におけ る連結経営 ‑ グローバ リゼーシ ョンゝと経営意思決定 ‑
1 5 5
る組織構造 と,地域軸で括 る組織構造,お よび両者を合わせたマ トリックス 組織構造がある。各企業の置かれている状況 によって異なる面があるが,一 般論で言えば,経営のグローバル化で世界事業部制,グローバル製品別事業 部制に移行する方 向性が 日本企業だけではな く,欧米多国籍企業 にも認め ら れ,最近の懐向 として,・製品別の統括軸が主 となっている。
例 えば,マ トリックス組織で知 られた
ABB
がマ トリックス組織 を製品事 業別 に改めたの と同様 に,Pr o c t o r & Ga mb l e ,Al l i e d Si g n a l ,S he l
lな どの欧 米多国籍企業において,従来地域軸 を重視 していた り,マ トリックス組織 を 採 っていた企業が,地域統括会社 を解体 して製品軸を優先するとい う形 に改めるケースがみ られ る。注1)
こうしたケースでは,地域統括会社の役割 に変化が生 じ,コンサルティン グ機能が無 くなる訳ではないが,損益責任や事業責任は製品軸 に移 って きて いる。本来,組織 とはタテ (製品)にもヨコ (地域)に も責任があ るマ トリ
ックス関係によって成 り立 っているものであるが,損益責任や売上責任 につ いては,製品軸 を統括軸 とす る方 向性 が強 まって きてい る。 しか し, ヨコ (地域)の調整が必要な くなる という訳ではないので, ヨコの調整は人事や 地域な どの機能別部門が担 う̀ことになる。顧客別 ・製品別 ・地域別 とい う三 次元マ トリックス経営を行なっている
IBM
にして も同様 の流れ と考 えられる。
従来 ,組織 を製品軸で括 って きた企業では
d i v i s i o n a l i z a t i o n
が進展 し,カ ンパニー制や分社化 といった方 向に進んでいるもの と考 え られる。これ ら伎, いずれ も広い意味での事業部制組織である と言えよう。
これまでは分権化度 の低い製品別事業部制 という側面 が強かったが, 自主的に管理 してい く本来 の事業部制 に近づいてい くのではないか と思われる。地域 との関係は,製品別事業の幅 と関係 している。 トヨタ自動車の ように 製品事業 が主 として 自動車であるという製品多角化度の低 い企業では,やは り事業の括 りが製品軸ではな く地域軸 にな らざるを得ない。製品別事業の幅
が広い企業 は,グローバル製品別事業部 を採用 して,それぞれの事業部長 に 権限を委譲 しなければ,事業経営 に困難をきたす。親会社の トップ ・マネジ メン トの立場 か らも,マ トリックス組織な どは範囲が広過 ぎるが,製品別事 業の幅が小 さい企業は,機能別組織や職能別組織のままでは全体の統制が と れないので,「ヨー ロッパの ことは ヨー ロッパ に任せ る」な ど,地域 に権限 を委譲す る方向へ向か うもの と考 える。 この場合,地域統括会社は, ヨーロ
ッパ事業部 を意味する。所謂,地域事業部である。
地域事業部の下では, 日本国内 と海外市場で製品が異なるか と言 えば,必 ず しもそ うとは限 らないであろう。 自動車を例 に取れば,世界モデル串でい くか,地域限定車 とす るか とい う問題である。アメリカ事業部 と日本事業部 でモ ノが同 じ場合で も,仕様が異な る場合 も考 え られる。
地域統括会社 と製品事業別子会社の関係は,進 出した国の市場の大 きさに よって異なって くる。例 えば,巨大市場のアメ リカへ製品別事業の大半 が進 出する場合, どうして も製品別事業子会社の規模が大 き くなる。一方,タイ にある製品別事業を全部 ま とめて も,一人の トップ ・マネジメン トがみるこ とがで きるスコープに収まる。勿論 ,アメ リカにおける製品別事業の様 々な 部分を調整 して結論 を出す ことを,地域統括会社の立場で統括責任を持 って 親会社に対 して交渉で きるパワーを持つ トップ ・マネジメン トが必要 とされ るが, 自ず とそれは社長 に対抗で き,製品別事業全体がわかる (副社長) ク ラスでなければな らない。
地域統括会社 を損益責任のない,形式上のホールデ ィング ・カンパニー (持株会社) にするか否 かの問題 については, 日本企業 q)中には,「地域 に ある各製品事業別子会社を統括す るためには,地域統括会社 にそれ ら子会社 の株式を所有 させ る形式を採 る必要がある」 とい う錯覚があるように思わわ る。
旭硝子 を例 に挙げる と,連結経営 において他社 に比べて進 んでいる点は, 以下の図に示す ように,単体 としての組織 図 とは別 に,連結ベースの
SBU
日本企業 における連結経営 ‑ グローバ リゼーシ ョン と経営意思決定 一
因 旭硝子の戦略 ビジネスユニ ・ソト (概念図)
新セグメン ト
2 001
年3
月以降SBU
ガラス 硝子 ・建材事業部 加工硝子事業本部
AFG
インダス トリーズ社 グラバーベル社旭 ファイバーグラス社 旭 テクノグラス社 デ ィスプレイ ・電子 デ ィスプレイ事業本部
電子部材事業本部
(光通信,情報関連部材)
化学 化学品事業本部
伊勢化学工業社 その他 ・セラミックス セラミックス事業部
(出所)旭硝子事業報告書 よ り。
1 5 7
( st r a t e gi cBu s i ne s sUn i t
,戦略 ビジネスユニ ット)の概念図を持 ってお り, そ こで親会社の製品事業別 と事業子会社である旭 テクノグラス,伊勢化学工 業社な どを並列 に置いている点である。注3 )
日本企業の場合は,子会社を 自社の組織図か ら消 しているケースが多いが, 上図に見 るように,旭硝子の組織図はまさに 「連結組織図」 になっている と
言 えよう。
米国企業の場合,当然の ことなが ら, どうい うマーケ ッ トで, どうい う ド メインで, どうい うモ ノを生産 ・販売 してい くか とい う概念図を描 く場合, 組織図にそれぞれ子会社 ・孫会社 が,必要 に応 じて含め られる。「これが我 が企業グループのビジネスの概念図である」 と言い切れるか どうかが問題 と なる。勿論 ,公認会計士や税務当局向けな ど,外部報告用 としてはホールデ ィング ・カンパニーの存在 について法的な説 明が必要な場合 もあるが,あ く までそれは連結納税のメ リットを享受するな どの 目的に限定 されてお り,所
謂
「 r e po r tt o」
の問題 とは何の関係 もない。また,別 の面 か ら言 えば,親会社の製品別事業部 と
1 0 0%
出資子会社 との 関係 において,従来,親事業部長 と子会社社長が一対一でや っていた ところ に,間に地域統括会社 が入 り込む ことにな り,「余計な経営階層( e xt r al a y‑
e ro fma na ge me nt ) 」
が一つ増 え、る とい う弊害 を もた らす。注4)
経営の意思決 定 における調整 コス トが増 え,意思決定 自体が遅 くな る可能性があ る。そ う な って くる と,地域統括会社 を作 る意味が酸味 にな って くる。欧米多国籍企 業の場合,地域統括会社の役割は,財務面 の活動や人材開発な どを中心 にし てお り,製品事業戦略 におけ る意思決定 には関与 していない。 日本企業 も欧 米多国籍企業のプラクテ ィスか ら学ぶ必要 があろう。
[注]
1
)具体的な事例 については,藤野[ 2003 b]
,「欧米多国籍企業 におけ る組織 ・人事 システ ムのキー ・フ ァクター ーシンガポール .タイの実態調査 か ら‑」,
『東南 アジア研究 年報』第4 4
集 を参照 されたい。2
)藤野[ 2003 a
],『日本企業 におけ る連結経営 一製造業1
1社の実態調査 か ら‑』第2章 「連 結経営の視点 1. 日本企業 におけるdi vi s i o na l i z a t i o n
」 お よび 同書第4
章以下の事例 を参照 されたい。3)旭硝子の組織 図については,藤野[ 2003 a]
を参照の こと。4) EEC
の成立 を受けて,1 9 6 0
年代 に米国企業が欧州地域統括会社 を設立 したケースでは, 欧州地域統括会社の 巨大な維持費の負担 問題 と並 んで, このe xt r al a ye rofma nage 一 me nt
の存在 が問題 となった。Pa r ks , F. Ne wt o n[ 1 9 6 9 ]
," Sur vi va lo ft heEur o pe a nHe a dq ua r t e r s" ,Har v ar dBus i ne s s Re v i e
uJを参照の こ とO第
4
章 連結経営の課題連結経営 については,製品軸 と地域軸 の関係のほかに, もうひ とつ親会社 とグループ会社の関係 も存在す る。連結経営における親会社 とグループ会社
日本企業 におけ る連結経営 ‑ グローバ リゼーシ ョン と経営意思決定 ‑
1 5 9
の関係が どうあるべ きかは非常 に難 しい問題である。「仕組みを作 って も魂 が入 らない(と効果が上が らない)」 と言われ ることがある。 この ことは,敢 えて言 えば,結局,マネジメン トのプロセスを管理することを止めることが で きるか否か, とい うことに尽 きるのではないか と考 える。
何 と言 って も, 日本企業 においては,「任せ る」 とい うことの意味が極め て暖味である。例 えば, 日本企業の社長が海外子会社の新設や新工場の開設 式典な どで現地訪問す る機会 に,「私はみなさんに "任せ る"経営を したい と思 う」な どとスピーチすることがある。それを 「エンパ ワーメン ト (権限 委譲)」と訳す と,誤解 される可能性があるのではないか と思われる。
一般 に, 日本企業 においては 「任せる」 とい う言葉を軽 々に使い過 ぎる傾 向があ る。「任せ る」 とい うのは,任 された人 が 自分で決 めていい と受け取 る方が 自然である。 しか し, 日本企業の場合は,「任 された」マネージャー が 自分で意思決定す る と叱責 を受けるケースがある。「上司に事前 に相談 し ろ」,「逐次報告 しろ」 と言 うのである。これは,西欧的な意味では 「任せ る」
とは言 えない。む しろ,「任せない」 とい う意味 に近い。 これは,非常 に大 きな問題であると考 える。
日本企業の社長 の言葉 を よ り正確 に翻訳 す るな らば,「私たちは経営 につ いては任せません。 しか し,皆 さんか らの提案は大歓迎です。例 え平社員で あろうとも, どん どん上司に言いなさい。そ してそれを私たちにもどん どん 言 って きなさい。私たちはそれをきちん と検討 し,判断 します。下か ら意見 が上がって くることはいつで も大歓迎です。 どうかこの ことを我が社のポ リ シー として理解 して欲 しい」 とい うことではないか。それを, 日本人 ビジネ スマンは 「任せ る」 とい う言葉で表現 して しまう。
しか し, この 「任せ る」 とい う言葉 を 日本人以外が耳 にす る と,「任せ る とい うのは, 自分で判断 しろ とい うことなのだ」 と受け取 られる可能性が高 い。任 せ る とい うのは,端的 に言 えば, 口を出さない とい うことであ る。
「任 された」マネージ ャーが意思決定 した後 になって,「そんな ことは聞い
ていない」 とい う'のは禁句であろう。そ うした発言をす るのであれば,む し ろ,初 めか ら任せ ることはせず,何で も 「ホウ・レン ・ソウ」 (報告 ・連絡 ・ 相談)で遂行するように指示すべ きではないのか。
「任せ る」 とい う意味を暖味 にしてお くと,いつまでたって も分権化は進 展 しない。「欧米企業の意思決定は トップダウンである」 と言われるが,本 当に何 で も トップ ・マネジメン トが知 っているか と考 える と,多角イヒされた 製品別事業の細 かい事象な どについては, トップ ・マネジメン トとしては よ ほ どの事情がない限 り,知 る筈 もないのである。勿論,企業グループ全体の 経営数値 な どについては 日本企業の トップ ・マネジメシ トと違 って,比較的 精通 している場合が多いが,製品別事業の個別案件な どは案外知 らないので はないか と思われる。何故な ら,それは一定の基準 に基づいて,予め,信頼 する部下 に任せているか らであ る。仮 に,任せ られている仕事 について,悲 定外の事象が発生 した訳で もないのに, トlyプ ・マネジメン トに相談 な どし た場合,その人材 には問題解決能力がない と判断される リスクがあ る。そ う した仕組 みの下では,任 されるに至 った条件下では,任 された人は,企業が 定めた理念や手続 きに従 って,ただ結果を示せば よい。
トップ ・マネジメン トが知 る必要 があるのは,任せた事業の結果が どうな ってお り,その事業を今後 どの ような方向で進 めてい くのか とい うことであ る。それ も,
Ma na ge me ntb yOb j e c t i ve s( MB
O,目標管理制度)に基づい て,予め議論 して確定 した 目標の進捗状況をヒア リングす るとい う方法でフ ォローする仕組みに基づいて,中間見直 しを行な うことで足 る。 これに対 し て, 日本企業の トップ ・マネジメン トは何で も知 りたがる (よ り多 くの情報 量を得 ようとする)傾 向に陥 り易いように思われる。 この点を改めることがで きなければ,連結経営に 「魂が入 らない」のではないか と考 える。
最後 に,連結経営 において最 も重要だ と考 えられる点 について,総括的に 述べてみたい。
日本企業 におけ る連結経営 ‑ グローバ リゼーシ ョン と経営意思決定
1 1 61
まず ,所謂 「約束
( commi t ment ) 」
について考 えてみ よ う。注1)約束( c o mmi t me nt ) 」
は, しば しば,t a r ge t
(あ るいは,goa
l)で もあ る。例 え ば,
「総資産利益率( ROA)
を何% にす る」 とい うような 目標( goa
l)が考 え られ るが,その 目標 を達成す るための条件 として,「何億 円以下の案件 は 誰 に任せ る」 とい うように分権 し,その代わ りに 「何%のROA
を達成で き るか」 とい うことを約束 させ る。「 ROA
±何%」
とい う目標が達成で きなけ れば (結果が出せなかった とした ら)∴その権限を委譲 された ものを交代 さ せ るか,別の手を打つ (別の手段を選択す る) ことが必要 となろう。勿論 , こうした手法だけでは単なる 「丸投 げ」 (責任逃れ) になって しま うので,前述の ような 「中間フ ォロー」を行ないつつ,打てる手は適宜打ち なが ら,他方で,専門の監査部門が当該部門な どへ出向 くな どの措置を採 り, コンプライアンス (遵法性)の問題な どを徹底的に調べ ることになる。注
2)
やは り,プロセス管理やゝら結果管理 になる とい うことに伴 って,制度 ・シ ステムに止ま らず,コーポ レー ト ・カルチ ャー (企業文化)が変わ らざるを 得ない。権限の委譲 に伴 う意思決定プロセスに関する報告 がない ことにイラ イラす るの も, トップ ・マネジメン トの仕事であると考 えなければな らない であろう。その上 で, 目標管理制度
( MBO)の中で, 目標 を達成で きるの
か否かについては,その都度,報告( r e po r t )
を受ければいい。そ して,望 ましい結果が出せそ うになければ,やは り,その任せた人を替 える とい う選 択肢が生 まれる。このサ イクルが実行で きなければ,どんな経営システム ・制度を作 って も, 企業経営 に支障が生 じよう。特 に,世界 と日本の関係, とりわけM &Aで買 収 した ような海外子会社 に対 しては,このサイクルが うま く回転 しなければ,
さまざまな トラブルを喚起するであろう。勿論,事前報告 ・報告を求めない とい うのは非常に難 しい ことであろう。あたかも,親が子供 に対 して干渉せ ずに見ているのがつ らいの と同 じである。子供の不始末を全て親が負 うの と 同様 に,場合によっては, トップ ・マネジメン ト自身の責任問題 にまで発展
しかねない状況で,事前相談 ・報告 を受けない とい うこ とを どこまで実行で きるか。
換言すれば, 日本企業の場合は,「ホウ・レン ・ソウ」 (報告 ・連絡 ・相談) とい う,日本企業 に特有の意思決定過程 における干渉 を止めることとなろう。
これを実際に行な うことは,企業経営の大 きな変革 にな るように思われ る。
しか し, 日本企業のあ らゆ る経営階層 において,上述の ような意識 を根付 か せ るこ とが其の連結経営の実現 における最重要課題であ ろう。
[注]
1) カル ロス ・ゴーン,ル ノー ・日産 自動車兼任
CEO
は,経営の意思決定プロセスに関 し て,
「コミッ トメン ト」 ( c ommi t me nt o)
という言葉 を しば しば用いている。 日経新聞,日経 ビジネス,NHK特集な ど。
2)欧米多国籍企業の場合,監査は,単なる会計監査 に止 ま らず,業務監査 を含み,かつ 親会社 内に限定することな く,原則 として子会社 も対象 となる。その場合,国内子会 社に限 らず,海外子会社 も監査の対象 となる。
藤野哲也
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