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荷為替信用状の譲渡に関する一考察

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Academic year: 2021

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荷為替信用状の譲渡に関する一考察

福島昌則

はじめに

第1章 信用状の本質 第1節 信用状の当事者 第2節 信用状発行銀行 第3節 信用状通知銀行 第4節 信用状受益者 第5節 信用状の本質 第2章 信用状譲渡の必要性

第1節 信用状譲渡の意味 第2節 信用状譲渡の必要性 第3章 信用状譲渡についての諸説

第1節 信用状譲渡の慣行 第2節 信用状譲渡性の否定説 第3節 信用状譲渡性の条件付肯定説

第4節 信用状譲渡性の首定説

第4章 信用状譲渡についての信用状統一規則の扱い 第1節 現在の状況

第2節 過去の経緯′

第3節1983年規則における主要改訂事項

第4節 信用状統一規則の譲渡可能信用状に対する取組姿勢の基本的推移 第5章 信用状譲渡の問題点

第1節 統一規則との関連における信用状譲渡の問題点 第2節 信用状譲渡に関する本邦判例

おわりに

はじめに

いわゆる信用状の歴史は古く,12世紀頃に さかのぼるとされているが,商業信用状とし て,貿易取引に多く活用されはじめたのは,

(lI

19世紀の中頃からである。

貿易取引の盛況に伴ない,取引の実情にあ わせて,信用状の種類もふえ,各国の言語,

風俗,法律,慣習,文化の相異をのりこえて,

信用状は,円滑な取引の推進に貢献してきた。

とくに,荷為替信用状(以下「信用状」と略 称する)がその典型である。その過程におい

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て,信用状の譲渡の必要性が生じ,譲渡が可 能であるとの前提のもとに,発行される信用 状が登場するに至った。

反面,信用状の本来の性質からして,信用 状は,譲渡できる性質のものではないとの説 も登場し,ここにおいて,その解決策が模索 され,今日に至っている。

本稿においては,信用状の譲渡について,

信用状の本質から説きおこし,譲渡の必要性 が生じた商取引形態の誕生,経緯,これに対 する諸説に検討を加え,現行の信用状統一規 則における,当該信用状の位置づけを勘案し たうえで,今後の展望を試みるものである。

大方のご叱正を頂ければ幸いである。

1章 信 用 状 の 本 質

1節 信 用 状 の 当 事 者

まず,もっとも簡単な例を図示しておく。

(輸出業者) (輸入業者)

輸出入業者間で,売買契約が成立し,その 信用状決済条項にもとづいて,輸入業者は自 己の取引銀行に対し,信用状の発行を依頼す る。取引銀行は,依頼人である輸入業者の信 用調査を十分に行ない,将来の手形決済に支 障がないと判断できる場合にかぎり,信用状 を発行し,これを通知銀行へ発送する。通知 銀行は,送付された信用状を,受益者である 輸出業者へ送付,あるいは手交する。輸出業 者は,入手した信用状条件どおりに,商品を

船積し,船積書類を整え,手形を振出して,

自己の取引銀行に買取りを依頼し,代金を回 収する。手形と船積書類は,発行銀行へ送ら れ,発行銀行は手形代り金を,買取銀行へ支 払うとともに,輸入業者から手形の決済を受 け,船積書類を輸入業者へ引渡す。輸入業者 は,船積書類のなかの船荷証券を船会社に呈 示して,商品の引渡しを受ける。この時点で 一連の取引は終了することになる。

2節 信 用 状 発 行 銀 行

輸入業者から,信用状発行依頼を受けた取 引銀行は,輸入業者が輸入手形の支払いに懸 念がないということを確認するために,輸入 業者の業態,取引状況について,十分に調査 を行ったうえで,信用状発行の可否について 判断するが,信用状を発行するということは,

とりもなおさず,発行銀行の信用を,輸入業 者に供与するという与信行為であるからであ る。すなはち,信用状条件が完全に満たされ ている手形・書類が,発行銀行に呈示されれ ば,かならず支払うとL、ぅ確約を,受益者に 与えるということで,万一,発行依頼人が支 払不能に陥った場合でも,発行銀行が支払い の責を負うということである。

3節 信 用 状 通 知 銀 行

発行銀行は,受益者所在地のコルレス先(為 替取引契約を取交している銀行)を選定し,

発行した信用状をその銀行に送付し,受益者 への通知を依頼する。この通知を依頼された 銀行が,通知銀行である。通知銀行の選定に あたっては,発行銀行は,自行とその銀行と の,レシプロ関係を重視する。すなはち,お 互いの取引状況の親密度について検討し仕 向取引,被仕向取引のバランスがとれており,

かつ取引量が多い銀行をえらぶわけである。

通知銀行は,信用状の通知にさいし,なんの

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約束もなく受益者に通知をする。ただし自行 の通知する信用状が,外観上正規に発行され たとみられるかどうかについて相応の注意を 払うことになっている。

4節 信 用 状 受 益 者

信用状取引において,利益を受ける者とい う意味で,受益者と称される。通常の場合は 輸出業者である。信用状条件どおりの書類を 作成し,取揃え,取引銀行に持込めば,輸入 業者が支払いを行う時日のはるか以前に,取 引銀行は,即日輸出代金を,輸出業者に支払 う。このことは,輸出業者にとって,多大の 金融上の便益を与えられるということであ

5節 信 用 状 の 本 質

信用状は,売買契約またはその他の契約に もとづくものであっても,そのような契約と は別個の取引である。銀行は,信用状に,そ のような契約について,参照事項が含まれて いても,なんの拘束もうけない。これを信用 上取引独立の原則と称している。

次に,信用状取引は書類取引であるとされ ている。すなはち,信用状取引においては,

すべての関係当事者は,書類の取引を行うも ので,その書類がかかわる物品,役務および,

またはその他の行為の取引を行うものではな いと統一規則に定め,

r

書類取引」というこ とを強調している。

2章 信 用 状 譲 渡 の 必 要 性

1節 信 用 状 の 譲 渡 の 意 味

前章で述べた信用状の当事者のうち,信用 状受益者(通常は輸出業者)が,なんらかの 事情で,自ら輸出業務を行うことなく,これ

を第三者に行わせたいという事態がおこりう る。この場合,受益者として,もっとも便利 な方法は,自己の持つ受益者の権利を,その まま第三者へ譲り渡すことである。ところが,

買主である信用状発行依頼人は,信用状開設 依頼の前の,売買契約交渉の段階において,

輸出業者の信用状態を入念に調査し取引上 不安がないと確信を得て,はじめて売買契約 を締結し,これにもとづいて,輸出業者を受 益者とする信用状の発行を依頼している。当 然,輸入業者は,信頼に値いする輸出業者が,

信用状条件どおりに,輸出業務を遂行してく れるものと期待しているわけである。ところ が,受益者が,第三者に自己の権利を譲り渡 した場合は,この第三者は,輸入業者にとっ て未知の法人あるいは個人であり,果たして 約定どおりの商品を期限までに入手すること ができるのかどうかという不安にかられるこ とになる。この不安を解消する手段が必要に なってくるのは,理の当然であろう。

2節 信 用 状 譲 渡 の 必 要 性

なぜ,信用状の譲渡を必要とする事態が生 じたのか,本節で概観のこととする。

まず,信用状の受益者が,仲介入の場合に,

信用状の譲渡が可能であれば,仲介入にとっ ては,極めて便利である。通常,受益者は,

メーカーあるいはサプライヤーから,輸出商 品の供給を受ける場合は,ただちに支払資金 を必要とする。このとき,仲介入に資力があ れば問題はないが,銀行融資を受ける信用が ない場合には,当該商品の仕入に困難を来す こととなる。もし,信用状の譲渡が可能であ れば,仕入先にこれを譲渡することで,当該 商品の輸出は,実行されることとなる。その 際,仲介入は,自己の利益分を差ヲ11.,、て,譲 渡することにより,利益確保も可能となる。

具体例としては,海外のバイヤーが,本邦

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の買付委託先を受益者として,信用状を開設 し,貿付先が決定した段階で、当該信用状を 買付先へ譲渡するという事例がある。また,

輸出枠規制がある商品の場合に,輸出枠を使 い切った受益者が,枠余裕のある第三者に,

その信用状を譲渡するということもある。さ らに,国内での譲渡のみでなく,第三国への 譲渡もおごり得る。プラント輸出の場合など,

その一部に第三国の機械を使用する場合など である。

3章 信 用 状 譲 渡 に つ い て の 諸 説

1節 信 用 状 譲 渡 の 慣 行

信用状が,売主を受益者とする商業信用状 の形に発展してから,実際の取引の必要から,

信用状の譲渡が行われるようになった。が,

その時期は,さほど古いものでもなく,また 信用状譲渡についての認識が,各人各様とい うことから,その取扱いもケース・パイ・ケ ースという状況であった。

イギリスでは, Spalding氏著 Bankers' Credits"1930年第3版で,信用状は流通証 券ではないので,裏書等により譲渡すること ができないと警告しており,普遍化していな かったようである。しかしながら,第2次大 戦後は,普及しているという状況である。

フランスでは, 1924年国内信用状規約に信 用状譲渡規定が挿入されている。

ドイツでも, 1930年国内規約に,譲渡規定 が示された。

その他の諸国には,なんの動きもみられな かっf

nion Bank of Scotland )にしたがい,特別 の記載がないかぎり,譲渡することができな いとするものである。 1924年発行の『荷為替 信用状論』において,著者の伊藤和雄氏は,

このように主張し, Dr. Wardsの著書の内 容を紹介しておられる。その要点は,信用状 は,受益者を指名して,発行されたもので,

その名宛人と発行依頼人とは,荷物の売主・

買主という密接な関係にあり,買主は,とく に信頼する輸出商を受益者として指名する。

このことから,この信用状を譲渡することは,

極めて困難であるとの考え方は当然であると いうことである。そして,譲渡が必要な場合 は,当然,発行依頼人の同意がなければなら ないとしている。

3 信用状譲渡性の条件付肯定説 伊津孝平氏は, 1953年発行の『商業信用状論』

で,次のように述べておられる。

信用状の譲渡が実際行われるのは,売主た る受益者が,売買の目的たる商品を有せず,

他の第三者よりこれを求めて,買主に供給す る場合においてである。信用状の発行によっ て,受益者に生じた権利が,売買契約とは,

分離独立した,抽象的権利であることは,あ まねく認められている。したがって,信用状 上の権利の譲渡によって,売買契約が影響を 受けるから,譲渡を許さないとL、う理論には,

承服しがたい。しかし,買主が,信用状の発 行を依頼するにあたっては,受益者中売主と して,手形の振出人たるべき者を特定するも のであるから,この特定された売主以外の者 が振出した手形を,引受・支払うことは,信 用状の要件自体に合致しえない場合が多い。

したがって,売主以外の者が,手形を振出し 2節 信 用 状 譲 渡 性 の 否 定 説 ても差支えないということが,信用状面に,

この説は,信用状は譲渡可能の証券ではな あきらかになっている場合にかぎり,譲渡を いとの判例 0854年・OrrBarber 許すと解するのが正当である。

(5)

要するに,発行依頼人が,譲渡を許すとい いては,全文が「経営と経済」第68巻第2 う意思を,信用状面に明示するよう,発行銀 に掲載済みであるが,説明の便宜上,再度こ 行に依頼した場合に,これにもとづいて発行 れを掲載した。

された信用状の譲渡は許されるということで 1983年信用状統一規則

ある。 54

Dr. Wardsもその著書の第4 (1958年 発 譲渡可能信用状 行 ) に お い て , 同 様 の こ と を 述 べ て お ら れ

o

第 4節 信 用 状 譲 渡 性 の 肯 定 説

この説は,無条件に譲渡できると説く。小 登氏の著書のなかに,次の記述がなされ ている。

ドイツにおいては, I譲渡禁止」の記載が ないかぎり,信用状を譲渡しうるという,無 条件肯定説がある。これは,指図の譲渡と解 しているので,指図取引の規定である, ツ民法第783条以下の規定を準用し, I債権譲 渡」と解する説である。しかしながら,この ドイツの考え方は,同国が信用状統一規則を 採択するまで,存在していたようであるが,

同国の銀行が,当時,この説を遵奉していた かどうかは疑問である。すでに同国の国内信 用状規約においては,フランスの規約と同様,

「委任者の明確な授権によってのみ」譲渡可 能としていたからである o

4章 信 用 状 譲 渡 に つ い て の 信 用 状 統一規則の扱し、

1節 現 在 の 状 況

現行の1983年改訂信用状統一規則において は,第54条に譲渡可能信用状に関する詳細な 規定をおいている。その原文(英文)および 邦訳は次のとおりである。なお,この邦訳は,

C日本国内委員会発表の訳文である。な お,本節における以下の条文および解説につ

Artic154 

.  A transferable  credit  is  a credit  under which the beneficiary has the right to  request the bank called upon to effect pay ment or acceptance or any bank entitled to ef fect negotiation to make the credit avai1able  in whole or in part to one or more other par ties  (second beneficiaries). 

b.  credit can be transferred only if  it  is  expressly designated as  transferable" by  the issuing bank. Terms such as  diiviisible"

fractionableヘ、aSsignaableand transsmisSi ble" add nothing to the meaning of the term 

tamsferable" and shall not. be used.  .  The bank requested to  effect  the  transfer (transferring bank) , whether it  has  confirmed the credit or not, shall be under no  obligation to  effect such transfer except to  the extent and in the manner expressly con sented to by such bank. 

.  Bank charges in respect of transfers  are payable by the first  beneficiary unless  otherwise specified. The transferring bank  shall  be under no obligation to  effect  the  transfer until such charges are paid. 

.  A transferable credit can be transfer red once only.  Fractions of  a transferable  credit  (not exceeding in  the aggregate the  amount of  the  credit)  can be transferred  separately, provided partial  shipments are  not prohibited, and the aggregate of  such 

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transfers wi11 be considered as constituting  only one transfer of the credit.  The credit  can be transferred only on the terms and con ditions specified in  the original credit, with  the exception of the amount of the credit, of  any unit prices stated therein, of the period  of validity, of the last date for presentation of  documents in accordance with Article 47 and  the period for shipment, any or all of which  may be reduced or curtailed, or the percen tage for which insurance cover must be ef fected, which may be increased in such a way  as to provide the amount of cover stipulated  in the original credit, or these articles. Addi tionally, the name of the first beneficiary can  be substituted for that of the applicant for  the credit, but if the name of the applicant for  the  credit  is  specifically  required  by the  original  credit to  appear in  any document  other  than  the  invoice, such requirement  must be fulfilled. 

cepting or negotiating bank has the right to  deliver to  the issuing bank the documents  received under the credit, including the se cond  beneficiary's  invoices  (and  drafts)  without  further  responsibility  to  the  first  beneficiary. 

.  U nless otherwise stipulated in  the  credit, the first beneficiary of a transferable  credit may request that the credit be transfer red to a second beneficiary in the same coun try, or in  another country. Further, unless  otherwise stipulated in  the credit, the first  beneficiary shall have the right to  request  that payment or negotiation be effected to  the second beneficiary at the place to which  the credit has been transferred, up to and in cluding the expiry date of the original credit,  and without prejudice  to  the  first  benefi ciary's right subsequent1to  substitute his  own invoices and drafts (if any) for those of  the second beneficiary and to claim any dif .  The first beneficiary has the right to  ference due to him. 

substitute his own invoices (and drafts if the  credit stipulates that drafts are to be drawn  on the applicant for the credit)  in exchange  for  those  of  the  second  beneficiary, for  amounts not in excess of the original amount  stipulated in  the credit and for the original  unit  prices  if  stipulated in  the credit, and  upon  such  substitution  of  invoices  (and  drafts) the first beneficiary can draw under  the credit for the difference, if  any, between  his invoices and the second beneficiary's in voices. When a credit has been transferred  and the first beneficiary is  to supply his own  invoices (and drafts) in exchange for the se cond beneficiary's invoices (and drafts) but  fails to do so on first demand, the paying, ac

54

a.譲渡可能信用状とは,支払もしくは引 受を行なうことを求められている銀行または 買取を行なう資格のあるどの銀行にたいして 1または2以上の他の者(第二の受益者) が信用状の全部または一部を使用できるよう にすることを受益者が要求する権利を有する 信用状のことである。

b.信 用 状 は , 発 行 銀 行 に よ り trans ferable"と明らかに指定されている場合にか

ぎり,譲渡することができる。 divisible fractionable assignable"および trans missible"のような語は transferable"の語 の意味になにもつけ加えることにならず,こ れらの語を使用しではならない。

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