大 村 湾 南部 水域 海 水 に よ る赤潮 プ ラ ンク トン Gymnodiniurn sp. ('65年 型 種)の 培 養―Ⅰ
1977,1978,1979年 夏 期 の 海 況 と生 物 学 的 分 析 結 果
平 山 和 次 ・川 端 豊 喜*
Growth of Gymnodinium sp. (type - '65) Cultured in the Seawaters Sampled at the Southern Part of Omura Bay— I
Bioassay Results and Environmental Condition during
Summer seasons of 1977, 1978 and 1979.
Kazutsugu HIRAYAMA and Toyoki KAWABATA
In summer of 1977, 1978 and 1979, the seawaters collected at the southern part of Omura Bay at weekly intervals were examined if the water had the ability to support the growth of Gymnodinium sp. (type- '65) . Bioassay was carried out by two ways, one of which was axenic cultivation of Gymnodinium type- '65 in the sample waters at 10 m depth sterilized by filtration, to compare the growth with that in the artificial culture medium (control) . The other method was to maintain the unfiltered sample waters without any treatment under laboratory condition to compare the population change of Gymnodinium type- '65 with natural population change in situ at the sampling station.
In three years, the visible red tide by Gymnodinium type- '65 had occurred four times. Three to eight days before the bloom, every red tide had a heavy rain and/or strong wind which might cause the environmental change.
The extreme low level (under 1 m l / l ) of oxygen content at 1 m above of bottom layer (18 m) was reflected in the waters at 10 m depth, most of which in such cases could not support the growth of Gymnodinium type- '65.
In bioassay of the waters at 10 m depth by culturing axenically Gymnodinium type- '65, the ability of the seawater to support the growth tended to change abruptly at the sampling day of the occurrence of visible red tide, i. e. in two cases of four red tides, the seawater sampled at 10 m depth became suddenly unsuitable for the growth of Gymnodinium type- '65 at the sampling day of the occurrence while the seawater had been able to support the growth till the previous sampling day.
In one case, the seawater which had not had the ability to support the good growth till the sampling day before red tide, became suddenly suitable for the growth at the sampling day of the occurrence.
The bioassay to check the population change of Gymnodinium type- '65 in the unfilterd test water
*現 所 属:広 島市 南 区大州4丁 目4番32号 中 国電 力 株 式会 社 技 術研 究 所
under laboratory condition showed that only in 2 to 3 weeks just before occurrence of red tide, the results of bioassay on upper layer water were similar to the population change in situ at the sampling station.
This study was the first step to find the premonitary symptoms of red tide occurrence by the bioassay methods. The results obtained connected directly neither prediction of the occurrence nor discovery of any trigger of the development of causative organisms. The results were, however, suggestive to improve the bioassay method for the aim of this study.
大 村湾 で は1965年 以 来,Gymnodiniumの1種(以 下 Gymnodinium '65年型 種 と仮 称 す る)に よ る赤 潮 が 毎 年 の よ う に発 生 し,長 崎 大 学 で は その 赤 潮 発生 機 構(1), 本 種 の増 殖 生 理(2)などにつ いて の研 究 が 続 け られて い る.そ の 結 果,本 種 赤 潮 の うち に は,大 村 湾 の海 底 水 が 低 酸 素 化 す る こ とに関 連 して発 生 す る ものが あ る こ
とが 指 摘 され た.
一 方,内 湾 の赤 潮 発 生 誘 因 を現 場 海 水 の 生物 学 的 分 析 に よ って 追究 し よ う とす る試 み は上 野 ら(3)によ り伊 勢 湾 で,平 山 ら(4)によ り大村 湾 で行 な わ れ て い る.し か し,平 山 らの行 な った 大 村 湾 に つ いて の分 析 は,海 水 を濾 過 滅菌 せ ず,加 熱 滅 菌 した な ど幾 つ かの 不 備 な 点 が み とめ られ た.本 研 究 で は,そ れ らの点 を改 善 し, あ らた め て,1977年 か ら3年 間 にわ た り,夏 期,大 村 湾 の赤 潮 発 生水 域 の 海 水 につ い てGymnodinium'65年 型 種 を供試 生 物 として 生 物学 的分 析 を行 な った.ま た, そ の 結 果 を現 場 水 域 で の 赤潮 発 生 状 況,海 況 と対 比 し て,大 村湾 での 本 種 赤潮 発 生 機 構 解 明 の一 助 とす る と と も に発生 予 知 方 法 の検 討 を試 みた.
材料 お よ び方 法
観 測 方 法
観測 地 点 はFig.1に 示 した堂 崎 と長 崎 空港 の間,水 深 約18mの 水 域 の3点 で あ る.
3ヶ 年 と も6月 か ら9月 まで 週 に1度 の 間 隔 で午 前 10〜11時 頃 に採 水 した.な お1977年 にはFig.1に 示 し たSt.Bの10m層 と表 層 で の み 採 水 した が,1978年 と 1979年 は採 水 方法 を あ らた め,St.A,B,C,の3点 よ り 採 水 した.す な わ ち,3観 測 点 の 表 層,2.5m層,5m 層 の海 水 を等 量 ず つ混 合 した もの を5m以 浅 層海 水 と し,10m層 の 海水 を3地 点 等量 混 合 した もの を10m層 海 水,海 底 直 上1m層 の 海 水 を混 合 した もの を底 層 海 水 と した.
各 海 水 は,採 水 後,船 上 で 定性 濾 紙(東 洋濾 紙No1) で濾 過 し,1lの ガ ラス ビ ンに入 れ,最 夏期 に は携 帯 用 ス トッカ ー で冷 却 しな が ら実験 室 に持 ち か え った.
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0 10 Km
Fig. 1. Map of sampling station
これ とは 別 に濾 過 も冷却 もせ ず,そ の ま まの 海 水 を も 持 ち か えっ た.な おSt.Bの 各 層 の 水 温,溶 存 酸 素
(1977年,1978年 は底 層 の み,1979年 は底 層,10m層) お よび透 明度 は毎観 測 時 に測 定 した.採 水 後,約2時 間 を要 して 実 験 室 に持 ち か え った 海 水 は直 ち に 孔 径 0.22μmの ミ リポ ア フ ィル タ ー で濾 過 し,生 物 学 的分 析 や水 質 分 析 に供 す る まで 一20℃ に凍 結 保 存 して お い た.ア ン モニ ウム態 窒 素 は二 村(5)の方 法 また は海 洋 観 測 指 針 の常 法 に よ り,亜 硝 酸 態窒 素,硝 酸 態 窒 素,燐 酸 態燐 は海 洋 観 測指 針 の 常 法 に よ って 分 析 した.
生 物学 的 分 析
2つ の方 法 に よ って 行 な っ た.そ の1つ は濾 過 滅 菌 した10m層 海 水 に よ るGymndinium'65年 型 種 の 培 養 試験 で あ り,も う1つ は現場 海 水 をそ の ま ま培 養 室 に 数 日間放 置 し て プ ラ ン ク トン組 成 の 変 化 をGymnodi‑nium
'65年型 種 の 変 動 を 中心 に観 察 す る方 法 で あ る .
濾過滅菌による培養試験 凍結保存 しておいた10m層の濾過海水を解凍 後,pHを7.8(1977年は8.0)に調節 した.この海水を2つにわけ,1部 はそのまま,他方は栄養塩として K,HPO,・12H20を3mg/尼,NaNO3を 120㎎〃添加した後,両者とも孔径 0.22μmのミリポアフィルターで濾 過滅菌した.これとは別に人工海水 培養液NH−15(Table 1)に1iver extract(Difco製)20mg/ eを添加し た培養液をも用意した.これら3種 の培養液は各々200me容平底フラス コ5本(1977年は3本)に100meずつ 無菌的に分注した.栄養塩添加海水
と無添加海水はフラスコ分注後7日 間,人工海水を分注したフラスコは 高圧滅菌後10日間静置した後,
Table 1. Chemical composition of artificial culture medium (NH
−15).
NaCl KCI MgC12・6H20 MgSO,・7H,O CaC12 Sulfidesi K,HPO,
24.O g KNO,
O.6g Tris (pH 7.8)
4.5g EDTA−2Na
6.O g Metals T2 0.7g Thiamin−HCI
5.0 me Biotin 10.O mg Vitamin Bi2
Triple disilled water
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O.4 g 10.0 mg S.O m尼
10.0 mg 10 ptg 1.0 ptg 925 m2
1 ) Sulfides mixture per 1000 m2 triple distilled water ; N H4Cl O.2g,
K2HPO, O.lg, NaHCO30.2g, MgSO,・5H200.04g, Na2S.9H200.lg,
2 ) Metals mixture T per 100 mg triple distilled water
FeC13 5.O mg MnC12 1.O mg H3BO3 5.O mg ZrOC12 2.O mg NH4VO3 O.5 mg BaC12 1.O mg K2CrO4 O.2 mg
This is adjusted to pH 7.8 in a stock solution.
あらかじめ人工海水
(NH−15十liver extraCt 20㎎/2)で培養しておいた Gynznodinium 65年忙種を60cells/meになるように同 時に無菌的に接種した.培養は照度約15001uxの 蛍光灯下(昼光色)で14L−10Dの断続照明により温度 23℃で静置培養した.なお,培養期間中はどのフラス
コも培養条件が同じになるように毎日その静置場所を かえた.接種後,5,10,20,および30日目の計4回 増殖濃度を測定した.測定は培養液を十分擬拝して,
無菌的にそのS meを取り,濾過海水で5倍に希釈した 後,コールターカウンターZB型を用いて10回計測し,
その平均値を求めることによって行なった.
現場海水中のGymnodinium 65年型種の濃度変化 採 水後濾過せず,そのまま持ちかえった海水について,
まずプランクトン組成を観察後,直ちに5m以油層海 水,10m層海水とも200m2容平底フラスコにIOOmeずつ 分注し,培養室(約ユ,5001ux,14 L−10D,23℃)に 静置した.5日後(1978年)または3日後(1979年)
に再びフラスコ内のプランクトン組成を調べ,静置中 の組成の変化をGymnodinium 65年型種を中心に求 めた.プランクトン組成の観察は海水100m2を孔径0.8 μmのミリポアフィルターを用いてIOm尼に濃縮した後,
そのO.lm尼中のプランクトンを計数する方法(6>によっ て行なった.なお1977年にはこの実験は行なわれな かった.
主要鞭毛藻出現状況および赤潮発生状況
採水域での主な鞭毛藻の出現状況はFig.2に各年
ごとに示した.図の基準線より上段は表層(1977年)
または5m弾倉層(1978,1979年)を示し,下段は10 m層を示している.図には各鞭毛藻の出現状況を各観 測日ごとに1 me当りの出現細胞数の対数値によって示
してある.
1977年: 7月5日のi採水日には,大村市地先で Gymnodinium 65年型種による赤潮がみとめられた
(以下に記載した月日は観測月日を示しており,必ず しも記載した現象の最盛期とは一致しない).しかし,
7月12日には消滅していた.7月28日には大村湾全域 にわたってChaetoceros sp.の群集がみとめられた.8 月11日には津水湾にGymnodinium 65年型種による 赤潮が発生したが,採水域では赤潮は観測されなかっ た.9月6日にはかなり広範囲に高濃度のCeratium fususがみとめられた.以後すべての図には7月5日
と8月11日は赤潮が観測された日として印をしてある.
1978年: Fig.2に記載した以外のプランクトンの出 現状況として特記すべきものは,6月23日に時津沖に Noctiluca milian sによる赤潮が観察されたことであ
ろう.また,8月21日には一時的にGymnodinium A3
(飯塚(7)による仮称)がかなりの濃度(表層水,93 cells/me)で,この採水日にかぎり観察された.
Gymnodininm 65年等時は観測開始時からみとめられ たが,6月23日Noctiluca赤潮がみられた日には10m 層では一時的に消滅した.その後10m層では徐々に増 え,7月11日半は18.7cells/m2に達したが7月17日に は突然消滅していた.7月31日には再び出現し8月7 日には5m以浅層(285cells/m2),8月14日には10m層
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Fig. 2.
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で全観測期間中の最高濃度(131cells/me)が観測された.
Gymnodinium 65年型種による赤潮は8月14日堂崎沖 で小規模なものが観測されたにとどまった.以後すべ ての図には,Noctilzaca赤潮が観測された6月23日,観 測地点から突然Gymnodinium 65年型種が消滅した 7月17日,Gymnodinium 65年二種による赤潮が観察 された8月14日に印をつけてある.
1979年: Gynznodinizam 65年型種とともにProro−
centrum comPressumが全観測期間にわたり出現しつ づけ,8月末には津:水門奥で赤潮状態となる程高濃度 であったことが特徴的である.Gymnodiniarm 65年型 種は10m層では6月19日より5m丁丁層では7月3日 より出現しはじめた.7月3日には10m層から
Gymnodinium 65年型種, Z万の・06加 sp.,(】eratizam fuszas, C. furcaが一時的に消滅した.以後Gymnodi−
nium 65年亜種は5m二三層,10m層とも出現しつづ けたが,8月13日には5m以浅層で消滅していた.こ の日はD2 clyocha sp., Gymnodinium A3とも5m以浅 層から消滅しており,何らかの海況変化があったこと が推察される.Gγmnodinium 65年二種による小規模 赤潮が9月3日に観測域で観測され,全観測期間中の 最高濃度(5m以耳茸,496.5cells/me;10m層,1655 cells/m2)が記録されたが,9月10日には,5m以浅 層,10m層とも消滅していた.以後,すべての図には,
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June juty Avgust Septernber 1979
0ccurrence of main flagellates at the upper layer
(O−5 m deep) and the middle layer (10 m deep) at the southern part of Omura Bay. Double circle and star represent the day of occurrence of visible red tide of Gymnodinium type一 65, and remarkable change in the environmental condition, respectively.
10m層から一時的に(;:ymnodinium 65年亜種などが 消滅した7月3日,5m以浅層で消滅した8月13日,
および小規模なGymnodinium 65年門門赤潮が観測 された9月3日は印をつけて示してある.
3年間にわたる夏期の各プランクトンの出現状況の うち,特記すべきものとしては,Gymnodinium 65年型 種とDi ctyocha sp.の出現状況の類似性であろう.1977 年の1万の06加sp.の出現は少なく,図には記載しな かったが1978年と1979年の両プランクトンの出現状況 はFig.2に示してある.図にみられるように日を追っ ての両者の増減の様子が比較的よく一致していること がみとめられよう.
気象と海況
気 象
Fig.3には,長崎海洋気象台大村空港出張所でえら れた3年間の記録より,風力,風向,雨量について示 した.風力については,連続した3定時の風力の平均 値をもとめ,その日のうちの最高値を記録した.ただ し最高値が1kt以下の場合は記録しなかった.また 風向については,概略の方向で示した.図にみられる
ように,風向は初夏には南風の日が多く,晩夏になる と北風の日が多くなる傾向があることがわかる.6月
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June July August September
Fig. 3. Changes in daily wind velocity, wind direction and precipitation. Wind velocity is shown as the maximum in the average velocities at three succeeding hourly observation. Daily maxima under 1 kt were omitted in the figure. Explanation of double circle and star is in Fig. 2.
から9月の4ヶ月間の雨量は1977年は720.5㎜,1978年 は417.5㎜,1979年は910.5㎜であり,1978年は雨量が 少なく,空梅雨に近かった.
長崎海洋気象台での毎日の日射量の調査結果を Fig.4に示した.図には日射量を当日と前2日の値の 平均で示してある.長崎海洋気象台は長崎市内にあり 大村湾の観測地点とは約20kmはなれているが,傾向と
しては大きな違いはないであろう.
海 況
3年間の観測地点における水温,溶存酸素,透明度
の推移はFig,5に,1978,1979年の栄養塩の推移は Fig.6に示した.
溶存酸素 1977年目1978年はSt. Bの海底直上1m層 の溶存酸素を,1979年はそれと10m層の溶存酸素を測 定した.図にみられるように,1977年は低酸素化の傾 向が著しく,赤潮が発生した7月5日から8月16日ま で,8月11日を除いて底層では1me/e以下であった.
赤潮が観察された8月11日には一時的に1 me/eの濃 度をわずかに越えた.1978年は1977年にくらべ底層の 低酸素化の傾向はそれ程著しくなく,底層で溶存酸素
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Fig. 4. Average of flux of solar radiation in 3
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June Juty August Septernber
Fig. 5. Changes in water temperature, dis−
solved oxygen and transparency at the sampling station. Explanation of
double circle and star is in Fig. 2.
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June Ju[y August September
Fig. 6. Change in inorganic nutrients at the sampling station. Explanation of
double circle and star is in Fig. 2.
が1m2/e以下になったのは8月14日(赤潮が発生した 日)から8月31日までであった.一方1979年は前2年 の中間的傾向を示し,7月31日から赤潮がみられた9 月3日まで底層で溶無酸素が1 m2/2以下の日が続い た.しかし,以後は急速に溶存酸素は増加した.10m 層では9月3.日から10日にかけて約2 m2/eと低かっ
た.
水温 1977年にはSt. Bの海底直上1m層の水温のみ を,1978年と1979年はSt. Bの10m層,表層について も測定した.Fig.5にみられるように1977年には底層 の水温の上昇はあまり大きくなく,25℃を越えた日は ほとんどなかった.1978年には,7月初旬から上層と 下層の温度差が大きくなりはじめ成層が形成された.
しかし,8月初旬には一時的に成層がくずれる傾向を 示し,9月初旬には完全に成層がくずれた.底層の水 温は6月初旬の約18℃から直線的に増加し,9月2日 には最高27.3℃に達した.また盛夏には表層で30℃に 達した場合もある.1979年もほぼ同様の傾向を示し,
7月初旬から上下の温度差は大きくなり始め,次第に
温度成層は強固なものとなった.幽8月21日頃から解消 の方向にむかい9月11日前はほぼ完全に成層は消滅し た.底層の水温は1978年とほほ伺様に直線的に増加し 6月6日の19.7℃から9月11日には26.7℃まで上昇し
た.
透明度 1977年と1979年はほぼ同様に推移し,5m以 下,10m以上になることはまれだった(Fig.5).しか し,1978年は7月25日まで11m以上の透明度を示し,
その後は低下したが,5.8mを下回ることはなく,3年 間のうちで最も透明度の大きい年であった.
栄養塩 Fig.6には1978年の5m以浅層と10m層,
1979年の海底直上1m層,10m層と8月6日以降の5 m以浅層の値が示してある.無機態窒素は5m以浅々,
10m層では例外を除き10μg・at./e以下でその大部分 はアンモニウム態窒素で占められた.両年とも凹凸は あるが,7月初旬から9月初旬まで漸進的に増大する 傾向がみられた.燐酸態燐はほとんど1μg−at./e以 下であるが5m以浅層では降雨等に関連してか一時的 に2μg−at./ e以上の高濃度が観測された日もある.ま た,1979年の10m層では検出されない日が多かった.
生物学的分析結果
濾過滅菌海水による培養試験(10m層)
3年間の培養試験の結果はFig.7に示した.図には 濾過滅菌海水そのままと,それに栄養塩を添加した海 水とによってGymnodinium 65年総覧を培養した場 合の増殖過程を採水日ごとに示してある.すなわち,
Gymnodinium 65年型種接種後5,10,20,30日目の細 胞数濃度を並行して培養した3本(1977年)または5 本(1978,1979年)のフラスコの平均値で示してある.
人工海水による対照試験はその増殖の傾向が全期間を 通じて大きな違いがなかったので,全部の対照試験に ついて,Gymnodinium 65年型種接種後5,10,20,30
日目の平均濃度を求め,その標準偏差とともに図に併 示した.
また,Gymnodinizam 65年型種接種後5日目の試水 中の細胞数濃度と培養期間中の最大増殖濃度について,
それぞれ対照のそれとの比をとり,Fig.8に示した.な お,図では5日目に接種濃度以上に増殖しなかった場 合は区別し示してある.
1977年: 6月14日の10m層の海水では栄養塩添加海 水,無添加海水とも,対照とほぼ同様な増殖を示した.
特に接種後5日目の初期増殖は全採水期間を通じて最 もよかった.しかし,6月29日以後は採水地点の10m
層の海水はGymnodinium 65年型種の増殖に適した 海水ではなくなり,8月3日の海水まで,6月29日の 栄養塩添加海水,8月3日の無添加海水を除いては接 種濃度以上に増殖しなかった.この間現場水域の10m 層海水では,Gymnodinium 65年型種の濃度は,6月14 日から大村市地先で赤潮が観察された7月5日まで,
徐々に増加した.以後表層では7月28日までは漸次減 少している.柏崎沖にGymnodinium 65年型種の赤潮 が観察された8月11日には,10m層海水での言種の増 殖は極めて良好となり,特に最大増殖濃度では栄養塩 添加,無添加海水とも対照よりも高かった.それ以後,
現場水域の10m層ではGymnodinium 65年魚種は次 第に少なくなっていったが,その10m層海水でも接種
したGymnodinium 65年忌種は増殖可能であった.
1978年= 10m層の海水でGymnodinium 65年型種 を接種濃度以上に増殖させなかったのは,7月17日の 栄養塩無添加海水,8月14日の栄養塩添加海水と無添 加海水,8月21日の栄養塩添加海水のみで,他の日の 海水は初期増殖におくれがみられたものもあるが,い ずれもGymnodinizam 65年託種を増殖させる能力を
もっていた.なお,7月17日は現場水域(10m層)で増 殖しつつあったGymnodinium 65年型種が全く消滅
していた日であり,8月14日はGymnodinium 65年型 種による赤潮が堂廊沖で観察され,かつ底層の溶存酸 素が極度に低下した日でもある.10m層でGγmnodi−
nium 65年型種が徐々に増殖しつつあった7月14日の 海水ではGymnodinium 65年型種の初期増殖が全観 測期間を通じ,対照と比較して最も良好であった.7 月11日は10m層の海水でGymnodinium 65年型種の 増殖濃度が6月8日を除き対照と比較して最も高かっ た.その日は現場水域の10m層で本種が高濃度になっ た日であり,翌週の7月17日は現場水域から煎種が消 滅した日である.
1979年: 底層で溶存酸素が急激に減少した7月10日 からは10m層の海水はGymnodinium 65年型種の増 殖を支えなくなった.すなわち栄養塩を添加した海水 では8月6EIまで,栄養塩を添加しなかった海水でも
7月10日と7月30日を除き8月6日までGymnodi−
nium 65年型種は増殖しなかった.7月10日と7月30 日の海水でも,その最大増殖濃度は対照とくらべ高く はなかった.現場水域の5m以浅層で8月13日には Gymnodinium 65年型種が消滅しており,10m層での 自存酸素は一時的に高くなっていた.その8月13日に は10m層の海水はGy〃znodinium 65年型種を極めて よく増殖させた.すなわち,8月13日の海水では
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June July August September
Growth of Gymnodinium type一 65 culturod axenically in filtered sample water at 10 m depth of sampling statiori under laboratory condition. White and black figures show the experiments with and without the addition of nutrients. Explanation of double circle and star is in Fig.2,
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Fig. 8.
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August September Ratios of the concentration of Gvmno−
diniztm type一 65 cultured in filtered sample water to those in the artificial culture medium (control) at both
$tages of the 5th day after inoculation
and of the maximum growth. DQuble triangle indicates that the growth in the sample seawater could not exceed inoculum concentration at the 5th day after inoculation. White and black figures were explained in Fig. 7.
Explanation of double circle and star
is in Fig. 2.
Gymnodinium 65年型種接種後の初期増殖は対照とく らべて極めてよく,接種後5日目の濃度は対照の2倍 にも達した.この傾向は赤潮が観測地点でみとめられ た9月3日以降まで継続した.
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Fig. 9. Population change of Gynznodinium type一 65 in the unfiltered sample water maintained for several days under laboratory condition and the change of natural population in situ at
the survey interval. Arrow length (C)
and slope (0) represent the magnitude and degree of population change, respec−
tively.
In the case of field survey,
c−ci−co, o−2f(lf{iofC icCo)
and in the case of bioassay,
C−c,一。,,o−2{(SZ!iL2C,2+一cCi)
where Co and Ci represent the concent−
rations in seawaters at the privious sampling day and at the sampling day,
respectively, and C2 reptesents the concentration in the sample water after keeping for several days under labora−
tory condition. Explanation of double circle and star is in Fig. 2.
のまま培養室に3日間(1979)または5日間(1978)
放置した場合のGymnodinium 65年型種の濃度変化 は,現場水域での(;ymnodininm 65年型種の変化とあ わせてFig.9に示した.すなわち,前回の採水日の Gymnodinium 65年月輪の濃度をC。,採水当日の濃度 をCl,さらに,採水当日の海水を培養室に3日または
5日放置した後の濃度をC,として,それぞれの変化 量(C)と変化の程度(θ)を求めた.変化量は矢印 の長さ,程度はその角度で表現してある.すなわち,
生物試験の結果はそれぞれ,
C=C2−Ci tan O=pp(C2;.CH ) C2十Ci で示され,現場での増減は,
2(Ci−Co)
C=Ci−Co tan O=
Ci十CQ で示される.
図にみられるように,10m層の海水については,培 養室での結果と現場水域での(;ymnodinium 65年型 種の増減の結果の間にあまり関連はみられないが,5 m以浅層の海水については,両年度とも多少の関連が あるようにみうけられた.とくに1978年8月14日,1979 年9月3日の赤潮が観察される前の1〜2週間には現 場水域で著しい増殖があり,それと同時に培養室でも 急激かつ大量に増殖する傾向があることがわかった.
考 察
3ヶ年を通じて,Gymnodinium 65年型種による赤 潮が目視的に観察されたのは1977年7月5日,8月11 日,1978年8月14日,1979年9月3日の4回である.
これらの日を中心に海況と10m層海水の生物学的分析 結果をみてみると,1977年7月5日の赤潮1週間前の 6月28日にはかなりの雨量がみられ,それまでは底層 の溶存酸素も1 m2/e以上であったものが,7月15日に は,底層ではほとんど溶存酸素がなくなっていた.一 方,前週までの10m層の海水は栄養塩を添加すれば Gymnodinium 65年型種の増殖を一応支えたが,7月
5日の海水からは接種濃度以上には増殖しなくなった.
また,1977年8月11日の赤潮の3日前(8月8日)に は,約19ktの風がふき,そのための撹拝によるのか今 までほとんどなかった底層の溶存酸素が一時的に1 m2/e以上になった.そして底層水の水温も一時的に上 昇した.生物学的分析結果をみると,7月5日の赤潮 とは逆に前週まで10m層の海水ではGymnodinizam
65年型種が増殖しなかったのに反し,この8月11日の
海水では突然増殖するようになり特に最大増殖濃度で は対照の150%になり,この年最高の増殖を示した.し かし,次の週(8月16日)からは,10m層の海水では 一応の増殖を示すものの,対照とくらべてGymnodi−
nium 65年忘種の増殖に適した海水とはいえなくなっ た.1978年の8月14日の赤潮の8日前(8月6日)に はかなりの雨量があり,8月14日前3日間は風のない 比較的おだやかな日が続いている.また,前週まで底 層でも2 me/9以上あった無論酸素が8月14日には極 度に低下しているのが目立つ.生物学的分析結果をみ ると,前週までGymnodinizam 65年型種の順調な増殖 を支えていた10m層の海水が突然8月14日には,
Gymnodinizam 65年宿馬の増殖に適さなくなってvSる.
次週(8月21日)になって,その傾向は幾分回復して いるが,やはり10m層の海水ではGymnodinium 65年 型種はあまりよい増殖を示さなかった.1979年9月3
日の赤潮の8日前(8月26日)には,大雨と強風があ り,8月31日,9月1日は比較的おだやかで日射量も かなり高い.一方海況は,8月17日の強風以来,強固 であった成層はくずれだし上下層の温度差は少なくな り,10m層の溶溶酸素は低下し,赤潮のみられた9月 3日には,10m層でも,約2 m2/eとなった.底層で は,依然,1m2/E以下であるが,溶存酸素上昇の気配 がみとめられ,次週の9月10日には,2 m2/2以上に なって,完全に成層はくずれていた.生物学的分析結 果をみると,8月6日の大雨の次週から10m層の海水 は,Gymnodinium 65年型種の増殖に適した海水たな り,特に初期増殖は対照と比べ,著しく良好となった.
この傾向はその後,幾分低下しながらも持続し,赤潮 観察日(9月3日)には,10m層海水でのGymnodi−
nium 65年油画の初期増殖濃度は対照の約1.5倍で
あった.
以上のように,4回の赤潮観察日とも,3日乃至1 週間前にはかなりの雨量または強風がみとめられ,湾 水が撹拝されるなどの海況変動があったことが推察さ れる.赤潮観察日には前回の観察日にくらべ,底層の 溶存酸素が急に減少した場合が2回,逆に減少してい た底層の面前酸素が若干増加したり,または増加する 傾向をみせた場合がそれぞれ1回あった.寒水が愈々 されると,低酸素化していた底層水では,一時的にし ろその溶存酸素が増加することが考えられる。以後,
停滞状態が続くならば,撹搾によってまきあげられた 底泥の影響により,底層水の溶存酸素は,撹拝される 前よりも低下することは十分考えられる.例えば,1978 年8月14日の観察日の前にはかなりの降雨のあと,3
日間比較的おだやかな日が続いていた.これが,成層 を発達させ,8月14日には急激に底層の溶存酸素を低 下させたのではないかと考えられる.1979年9月3日 には,底層の溶存酸素が上昇する気配を示している.
一方10m層では逆に前週より溶存酸素は急激に低下し ている.これもまた,湾水の撹絆によって底層には比 較的溶存酸素の多い海水が供給され,10m層には逆に 底層の温存酸素の少ない海水が供給された結果で,成 層がまさにくずれ始めたことを示していると考えられ る.このように,底層の溶存酸素の増減が,赤潮観察 日に,一定の傾向を示さないのは,観測が週に1度と 断続的であったために,観察日がある場合には撹絆直 後,ある場合には導水撹拝後かなりの日数が経過して いたことによると思われる.赤潮観察日の10m層の生 物学的分析結果も,前週までGγnenodiniunz 65年型種 の増殖に好適であったのが不適にかわった例が2回,
それほど好適とはいえない状態であったものが好適に かわった例が1回,好適な状態が継続したことが1回 とまちまちであった.このように,赤潮観察日の10m 層の生物学的分析結果はその直前の観察日の結果とは 著しく変化している場合が多く,その変化の傾向は4 回の赤潮観察日で一致していない.このことも,観測 が週に1度と断続的であったことに起因していると考 えられる.すなわち,観察された赤潮が,初期の赤潮 であったり,終期であったりしたため,Gymnodi−
nium 65年型種の代謝産物の本紙増殖に与える効果が 異なっていたことも1つの原因であると思われる.
Gymnodinium 65年型種の代謝産物の本種の増殖に与 える影響は,代謝産物をえた本心の増殖期によって大 きく異なり増殖の初期には促進的に,終期には抑制的 に働くことが調べられている(8).
St. Bの10m層海水についての生物学的分析結果と 海況との関係のうち,最も密接な関係をうかがわせる ものに,底層(約17m層)の高小酸素があげられる.
3年間の底層での溶存酸素と生物学的分析結果をまと めて示すと,Table 2のようになり,底層の溶存酸素 が1 m2/ e以下になると,その影響が10m層にもおよ び,10m層の海水がGymnodinium 65年型種の増殖を 支えなくなる場合が多い.それが2 m2/2以上の場合に
は,大部分の海水はGymnodinium 65年型種を一応増 殖させることがわかった.
この10m層の海水の生物学的分析は,試水そのまま と試水に栄養塩を添加した場合の2通りの海水につい て行なった.その結果,1978年は8月下旬からは,栄 養塩無添加海水の方がGymnodinium 65年型種の最 高増殖濃度は高く,一方1979年は8月下旬からは9月 21日を除き,栄養塩添加海水の方が最高増殖濃度が高 いという結果がえられ,年により必ずしも一致した傾 向を示さなかった.本実験に用いたGymnodinium 65 年型種は栄養塩濃度の高い培養液で予備培養されてお り,接種時の栄養塩類の試験海水への持ち込み等を考 慮するなら,本試験の結果から,大村湾における Gymnodinizam 65年型種の増殖要因を栄養塩類不足に 直接結びつけるのは,早計であろう.
大村湾の現場海水をそのまま培養室に放置するとい う方法での生物学的分析結果は,赤潮観察日の直前を 除いては,必ずしも現場でのGymnodinium 65年型種 の増減と密接な関係を示さず,この方法についても照 度,温度,その他培養方法などに検討を加える必要が
あると思われる.
本実験で行なった生物学的分析の結果が直ちに,大 村湾での赤潮発生の予知方法または発生・増殖機構を
Table 2. Number of bioassay experiments ranked in 3 categories by the growth of Gymnodinizam type一 65 in !0 m depth water at station B.
Nutritional condition in bioassay
Oxygen contents in bottom layer at sampling station
Growth in 10 m depth watem
*Good mo good * No growth
Total number
With addition Under l m2/g of inorganic 1−2 m2/e nutrients Upper 2 me/e
9 ( 470/.)
4 ( soo/.)
ls (looo/.)
2 (110/,)
3 (380/,)
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8 (420/o)
1 (120/.)
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Without addition Under 1 me/e of inorganic 1−2 me/e nutrients Upper 2 m2/e
12 ( 630/.)
4 ( soo/.)
14 ( 930/.)
1(50/.)
1 (120/.)
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1 ( 7%)
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ls (looo/.)
Maximum growth is more than 3×102 cells/ mE・
@Maximum growthis lower than 3×102 cells/ me一
解明するものとはなりえない.しかし,今後生物学的 分析の方法を改善し,実験を繰り返すならば,大村湾 でのGymnodinium 65年型種の赤潮発生のひきがね 的要因,または前駆現象の解明の一助となりうると思 われる.観測間隔,接種培養液からの栄養塩の持ち込 み,試水の凍結保存中の鉄の形態変化等に留意して検 討を加え,方法を改善して,試験を続行する予定であ
る.
謝辞:本実験の遂行にあたり,御協力いただいた有安 庄市,橋本敬三の両氏に深く感謝致します.
参 考 文 献
1)飯塚昭二・入江春彦(1969).日本プランクトン学 会報,16,99−114.
2)HIRAYAMA K. and K. NuMAGucHI(1972).日 本プランクトン学会報,19,13−21.
3)平山和次・飯塚昭二・米司隆(1972).本誌,33,
11−12.
4)上野福三・長井治(1973).日本プランクトン学会
幸侵, 19, 39−45.
5)NIMuRA Y.(1973).日水誌,39,1315−1324.
6)日本海洋学会編集(1979).海洋環境調査法,恒星 社厚生閣,東京,395−396.
7)飯塚昭二(1972).内湾赤潮の発生機構,水産研究 叢書,23,35−57c
8)平山和次(1980).潜伏期における赤潮原因種挙動 調査研究報告書,1発生機構(K−1〜5),水産 庁,36−42.