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Academic year: 2021

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理科の主張

著者 井出 祐介, ?橋 政宏

雑誌名 研究紀要 : 共に創りあげる授業

巻 20

ページ 44‑45

発行年 2020‑03

出版者 静岡大学教育学部附属静岡中学校

URL http://doi.org/10.14945/00027145

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静岡大学教育学部附属静岡中学校 研究紀要(第20号)

-44-

理科の主張

井出祐介 髙橋政宏

1 教科で育みたい人間像

自然の事物・現象のしくみや原因には驚きがあり,これまで気にとめなかった自然の事物・現象を,科学 的な角度から眺めてみると,それ自体が神秘的であり,魅力的でおもしろいことであると気づくでしょう。

科学者たちは,自然の事物・現象のしくみや原因を解き明かす過程を積み重ねてきました。その科学者たち が解き明かした過去の科学的な「事実(真実)」を,知識として取り入れていくことは大切なことです。し かし,自分たちの経験や観察・実験で得られた科学的な根拠を基に,自分たちのもつ疑問から事実を生み出 していく過程が,より大切なことではないかと私たちは考えています。

今,事実とされている自然の事物・現象のしくみや原因は,身のまわりの自然の事物・現象に疑問をもっ た科学者たちが,様々な科学的な根拠から矛盾のない説明をしようとした結果,暫定的な到達点として突き とめられたことです。このような科学的なアプローチは,人類がより豊かな社会を築いていくための大きな 原動力にもなっています。「自然の事物・現象のしくみや原因に目を向け,科学的な根拠をもって構築した 自分たちなりの見方や考え方」を「科学のまなざし」と私たちは捉え,より豊かな社会を築いていくことが できる「科学のまなざしをもつ人」を育んでいきたいと考えています。「科学のまなざし」をもつ人を育む ために,子どもたち自身が自然の事物・現象のしくみや原因に疑問をもち,その答えを自分たちなりに導き 出していく過程を私たちは大切にしています。その過程こそが「科学する」理科ならではの学び合いである と考えているからです。このような学び合いを積み重ねた子どもたちは,人柄だけで判断したり,単なる多 数決で決めたりするのではなく,客観的な根拠や事実に基づいた議論を重ね,根拠に基づいて道徳的な価値 判断をすることのできる人に育つでしょう。

子どもたちが理科という教科を通して,「なぜそうなるのか」「どのようなことが起こりそうか」「それ を生かして何ができるのか」といった視点で自然の事物・現象を見つめ,未来へ向けて生活や社会をよりよ くしようとする人になることを私たちは願っています。

2 教科ならではの文化

「科学のまなざし」をもった人々は,経験や他の自然の事物・現象との比較などから自分なりの仮説をた て,観察・実験を計画し,そこから得られた結果を基に,自分なりの考えを構築していくでしょう。自然の 事物・現象に対して,科学的なアプローチをすることで,人類は豊かな社会を築いてきたことからも,科学 的な根拠を基にした捉え方が重要であることがわかります。「自然の事物・現象に対して疑問をもち,その しくみや原因を解き明かすために,様々な観察・実験の結果や資料などの科学的な根拠を基に,自分の考え を深めたり,広げたりすること」が,「理科ならではの文化」であると考えます。より洗練された考えを構 築し,より深く「理科ならではの文化」を味わうためには,一人で科学的なアプローチをするだけでなく,

以下の三つの要素をふまえた仲間との「科学的対話」が大切であると考えます。

・実証性(観察・実験の結果を通して,正しい考えであるか明確にすること)

・再現性(同じような観察・実験を行った仲間と意見を比較したり,繰り返し行ったりしても同様の結果が 得られること)

・客観性(異なる観察・実験であっても共通している部分があったり,疑いようのない事実であったりする こと)

「理科ならではの文化」を味わうためには,疑問を解き明かすために主体的に観察・実験に打ち込むこと が必要です。同時に,三つの要素をふまえた仲間との「科学的対話」を通して,自分の考えが誰にとっても 納得のできる妥当なものであるのか,矛盾のない説明になっているのかを子どもたち自身が確かめていく ことも必要です。「子どもたち自身が問い,考えをつくりあげようとする学び合い」が起こったときには,

「理科ならではの文化」を子どもたちがより深く味わうことができるのではないかと考えます。

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静岡大学教育学部附属静岡中学校 研究紀要(第20号)

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3 授業づくりで大切にしていること

私たちは,仲間との「科学的対話」を引き出すことができるような「題材の工夫」をすることが,「理科 ならではの文化」を味わう授業を実現することにつながると考えています。また,身近な自然の事物・現象 に着目した題材を用いることで,子どもたちが自分たちなりの「疑問」や「視点」をもつようになります。

すると,子どもたちは自らの抱く疑問点や論点を焦点化し,課題を発見していきます。そして,自分たちな りに観察・実験を計画し,意欲的に自然の事物・現象のしくみや原因を解き明かそうとするでしょう。

時には観察・実験を通して,子どもたちは誤った結論を導いてしまうこともあります。しかし,工夫され た題材における学びからは,得られた結果や理論が妥当なものであるのか,矛盾はないのかといった,互い の論を検証し合うような姿が表れます。このように,自分たちなりの考えをもつことで,仲間との「科学的 対話」が活発になり,自分たちの考えを自分たちの力で修正していくことができるようになります。私たち 教師は,子どもたちがより多くの仲間とつながることで,互いに「科学する」ことのできる場面を設定して います。「科学する」ことを繰り返すことで切実感をもって対話をする姿や,多様な考えを共有するような 姿を増やし,クラス全体での「科学的対話」をより充実させ,「理科ならではの文化」を味わう授業をめざ します。

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