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小学生の自己調整学習に関する研究

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

小学生の自己調整学習に関する研究

著者 藤田 正, 岩田 充宏

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 37

ページ 55‑64

発行年 2001‑03

その他のタイトル A Study of Self‑Regulate Learning in Elementary School Children

URL http://hdl.handle.net/10105/7095

(2)

小学生の自己調整学習に関する研究‡

藤田  正・岩田 充宏    (心理学教室)

要旨:小学校6年生91名を対象に、家庭や学校で子どもたちが日常よく直 面する五つの学習場面(1.テストに備えて復習する場面、2.学習に集 中できない場面、3.学習課題を自力で解決困難な場面、4.テストの復 習をする場面、5.一般的な学習場面)で使用される学習方略について自 由記述させれ結果は・産出された学習方略を・先行研究の枠組みに従っ て自己調整学習を構成する自己調整学習方略と認知的学習方略に分類・整 理した。前者にはHe1p−seeki㎎方略、モニタリング方略、努力調整方略、

プランニング方略、後者には精緻化方略、リハーサル方略、体制化方略、

その他の方略が含まれていた。場面ごとに学習方略の特徴を分析した。結 果は、先行研究と関連づけて考察された。

キーワード:自己調整学習、自己調整学習方略、認知的学習方略

 近年、教育界のキーワードに「自己学習能力」、「自己教育力」といった「自ら学び考える力」

があげられている(速水,1995;速水・西田・坂柳,1995)。

 小学校高学年になるとメタ認知(meta−CognitiOn)などの認知能力が発達し、自分の周りの状 況や自己の能力・知識などの内的状況に関しても客観的な見方が出来るようになる(Cross&

Paris,1988;岡本,1991.1992)。メタ認知は、「認知についての知識」といった知識的側面と、

「認知のプロセスや状態についてのモニタリングおよびコントロール」といった活動的側面とに 大別される。このようなメタ認知の発達は、学習者である子どもが勉強をしていく上でつまずい た時、自分はなぜ失敗したのかを考えながら学習に取り組むことを可能にする。また、学習に取 り組む前にどのような点に重点をおいて学習すれば、より効果的に学習できるかを考えながら学 習することも出来るようにな孔このように・小学校高学年の時期には・いわば自己との対話が ある程度出来るようになり、学習に取り組む際の自己調整能力が形成される時期である。

 心理学では・このような「自ら学び考える力」や「自己学習」に関しては、自己調整学習

(Se1f−Regu1ate Leaming)の研究領域において検討が行われてきた。佐藤・新井(1998)によ ると、自己調整学習とは、学習を効率よく行うために学習方略の選択や使用を学習者自身が調整 して進めていく学習であると述べている。このような自己調整学習がどのように生じ、維持され、

達成されるかにっいて初めて検討したのは、Corono&Mandinach(1983)である。

 Corono&Mandinach(1983)の研究以来・自己調整学習に関するさまざまな研究が行われて きている。それらの研究においては、自己調整学習の規定要因を検討するものや、自己調整学習 方略の使用と動機づけ要因や学業達成との関連について検討するものなどがみられた。

A Study of Se1f−Regu1ate Learning in E1ementary Schoo1Chi1dren

sadashi FUJITA(Dξραrε肌em o!Psツ。ん。Zo8ツ,Nαrασπ{Uers北ツ。/亙ducαれ。η,Nαrα)

 Mitsuhiro IWATA(γo々。肋肌α一。伽Ce枕rαJ C舳d G〃妃απce Ce耐er,γo冶。んα肌α)

(3)

 自己調整学習を構成する学習方略の分類に関しては多様な分類がなされているが、その中には いくつかの共通する要素が含まれている。たとえば・モニタリングやプランニングなどのメタ認 知的学習方略や、精緻化、リハーサル、体制化などの記憶に関する認知的学習方略がそれに該当 す孔さらに一部の研究では、学習上の困難に直面した時、積極的に求緩行動を行うヘルプシー キング(He1p−Seeking)方略や、学習に集中できないときに気分転換をしたり、学習に集中出来 るように工夫したりする学習方略である努力調整方略なども自己調整学習方略に関連する学習方 略として取り上げられてい孔

 さらに、上記の様に分類された学習方略の使用と自己効力感などの動機づけ要因、及び学業成 績との関係について検討した研究からは、以下のようなことが明らかにされた。Pintrich&De Groot(1990)は、中学生を対象に自己調整学習に関連すると考えられる学習方略の項目につい て日常の学習状況での使用頻度を評定させた。因子分析の結果から、「自己調整学習方略」と

「認知的学習方略」の2因子を抽出している。なお、これら2つの学習方略の間には有意な正の 相関が見いだされている。また、これらの学習方略と動機づけ要因(自己効力感及び内発的価値)、

及び学業成績との間には有意な正の相関が見られた。相関の程度は、認知的学習方略よりも自己 調整学習の方で高かっれっまり、これらの学習方略を使用する頻度が高い程・自己効力感や内 発的価値が高く、学業成績も良かったという結果である。そして、この傾向は、自己調整学習方 略において大きいというものであった。       

 わが国では、伊藤(1996)が国語の学習に関して中学校1年生を対象にPintrich&DeGroot

(1990)が作成した項目を用いて学習方略尺度を作成し・動機づけ要因(自己効力感及び内発的 価値)との関連を調べている。学習方略尺度を因子分析した結果、「一般的認知(理解・想起)

方略」、r復習・まとめ方略」、「リハーサル方略」、r注意集中方略」、「関係づけ方略」の5因子を 抽出している。また、これらの方略と動機づけ要因(自己効力感と内発的価値)との問には有意 な正の相関があることを見いだしてい乱

 さらに伊藤(1997a b)においては、数学に関して中学校1〜2年生を対象に伊藤(1996)で 作成された項目を用いて学習方略尺度を作成し、項目について使用頻度を評定させた。因子分析 の結果、Pintrich&DeGroot(1990)と同様に自己調整学習方略と認知的学習方略の2因子を 抽出している。そして、これら2つの学習方略と動機づけ要因(自己効力感と内発的価値)、及 び学業成績との関連を調べた。その結果、自己調整学習方略は、自己効力感、内発的価値と有意 な正の相関を、認知的学習方略は内発的価値と有意な正の相関があることを見いだしている。さ らにパス解析を用いた因果モデルによる検討の結果、自己調整学習方略は自己効力感を介して学 業成績を予測していることも明らかにされた。つまり、自己調整学習方略は、自己効力感の高い 生徒の場合には高い学業成績を予測するが、自己効力感の低い場合には高い学業成績を必ずしも 予測できないというものであった。

 Yamauchi&Tanaka(1998)は、小学校5,6年生を対象にNiemivirta(1996)で使用され た学習方略尺度の項目を用いて、日常の学習状況での学習方略の使用頻度を評定させた。因子分 析の結果、深い過程(Deep Process)、浅い過程(Surface Process)、セルフハンディキャップ

(Se1f−handicapping)の3因子を抽出している。そして、4つのタイプ(内発的動機づけと自律

性の程度に基づいて3つのタイプに分類された外発的動機づけ)に分類された動機づけ要因との

関係を調べた。その結果、自律性の高い動機づけは深い過程と有意な正の相関、セルフハンディ

キャップとは有意な負の相関を示した。しかし、自律性の低い動機づけはセルフハンディキャッ

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プと有意な正の相関、深い過程とは有意な負の相関を示した。これらの結果から、より自律的に 動機づけられている学習者ほど自己調整的な学習方略をより多く使用しており、自律性の低い学 習者セルフハンディキャップ方略などを多く使用していることを明らかにした。

 これらの研究の他、大学生を対象にした研究(熊谷・山内,1999;田中・山内,1999)も行わ れているが、ここでは省略する。

 先行研究では、自己調整学習が動機づけの要因などと関連しており、自己調整学習が学業達成 において重要な役割を果たすことが明らかにされつつある。しかし、従来の自己調整学習の多く の研究は中学生以上を対象としたものが多く、小学生を対象としたものは少ない。また、先行研 究の質問項目の中には小学生の生活状況に合っていないものもある。また、学校の教科科目を限 定して調査項目を作成したものが多く、日常の学習場面における使用頻度を評定する際に科目の 特性に影響される可能性も考えられる。

 以上のような問題点を踏まえて、本研究では自己調整学習尺度を作成するための基礎資料を得 るために、小学生の生活実態に合った五つの学習場面を設定し、自由記述法により、小学校6年 生がさまざまな学習場面での問題に直面した時、どのような学習方略を使用するのかを調査する

ことを目的とした。

方    法

調査対象 奈良市内の公立小学校6年生91名(男子43名、女子48名)であった。

調査材料 自己調整学習に関する自由記述質問紙は、表1に示すように小学校高学年児童が自己 調整学習を行うと考えられる日常生活での学習場面を4場面、及び家庭や学校でどのような学習 方略を用いているかを問う質問の合計5場面が設定されていた。

 調査に使用した質問紙には、各質問文の下の回答欄に思いついた学習方略を記入できるように 罫線が引かれていた。

 表紙には、「今からしていただくことは、皆さんが学校や家などで勉強している時にどんな工 夫をしているのか、どんな注意をしているのかを調べるものです。これは、テストではありませ んので、学校の成績とは関係ありません。思ったことをそのまま書いてください。」と調査に関 する説明が書かれていた。

 手続き 調査は、1999年6月下旬に筆者らを含め3名の調査者が各クラスに出向いてクラス単 位で集団実施した。調査は、「説明事項」、「注意事項」、「質問事項」の順で読み上げ、一斉に回 答させた。各質問についての回答時間は、1場面につき5分間に限定したので全体として約25分 間を要した。

結果と考察 1.学習方略の分類基準

 場面ごとに子どもが産出した学習方略は、表2に示したPintrich&DeGroot(1990)と伊藤

(1997c)を参考にして作成した学習方略の分類基準に基づき分類、集計、整理した。全学習場面 で産出された学習方略の総合計は、1437個であった。場面ごとの産出個数をみてみると、場面1

(241個)、場面2(289個)、場面3(372個)、場面4(287個)、場面5(248個)であった。産出

された学習方略の個数は、場面3の「学習課題場面を自力で解くことが困難な場面」で最も多く

回答されており、以下場面2の「学習に集中できないような場面」、場面4の「テストの復習を

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表1 自己調整学習に関する自由記述質問紙

(学習場面 1) テストに備えて復習する学習場面

 先生は来週の社会の時間に今まで勉強したことのテストをするといいました。授業で習っ たことを勉強したり思い出したりするときにはどのようにすれぱいいですか。思いっくこと を全部書いてください。

(学習場面 2) 学習に集中できない場面

 明日までに漢字を覚える宿題があります。けれども、テレビを観だり他に面白いことがあ るので、集中することが出来ずなかなか終わらせることができません。このような時に、あ なたはどうすれば良いと思いますか。思いっくことを全部書いてください。

(学習場面 3) 学習課題を自力で解くことが困難な場面

算数の文章題が難しくて、全部出来そうにありません。このようなとき、あなたはどのよ うにすればいいと思いますか。思いっくことを全部書いてください。

(学習場面 4) テストの復習の場面

 昨日あった算数のテストをかえしてもらいましれ次のテストでもこの問題と同じような 問題が出ます。あなたはどのようにすればいいと思いますか。思いっくことを全部書いてく ださい。

(学習場面 5)一般的な学習場面

 学校や家で勉強する時に・工夫したり気をつけていることがありますか。思いつくことを 全部書いてください。

表2 学習方略の分類基準

(自己調整学習方略)

・HeIp−Seeking

・モニタリング

・努力調整 プランニング

・学習目標設定

親や先生や友達などに助けを求める求緩行動を行う学習方略など 自分がどの程度学習内容に関して理解できているか考えたり、自分が学 習課題に取り組むうえで、正しく出来ているかチェックする学習方略な

ど。

学習に対する意欲を調整するための学習方略など。

学習に取り組む前に学習の言十画を立てたり、学習に取り組みやすいよう に学習環境を整え学習を効率よく行うための学習方略など

学習する際に目標を設定する方略など。

(認知的学習方略)

・精緻化

・リハーサル

・体制化

・その他

学習課題を自分の知識や言葉に置き換え情報処理を行ったり・自己流に まとめるなどの能動的に情報処理を行う学習方略な巴

学習を効率よく行うために学習課題を繰り返したり、反復したりする学

習方略。

学習するときに学習課題を何らかの類似性や関連性にもとづいて一連の 項目をまとめる学習方略など。

上記に該当しない学習方略

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行う場面」、場面5のr一般的な学習場面」、そして場面1の「テストに備えて復習するような場 面」の順にさまざまな学習方略が産出されていた。

2 学習場面ごとの産出された学習方略の種類

 最初に、各学習場面で産出された学習方略を自己調整学習方略と認知的学習方略に分けて分析

した。

(1〕自己調整学習方略について:

 五つの学習場面より産出された学習方略の内、自己調整学習方略に分類されたものは、全産出 個数の60.3%にあたる867個であった。

 産出された個数を自己調整学習方略の分類別にみると・表3に示すとおりプランニング方略

(275個)が最も多く、以下He1p−Seeking方略(268個)、努力調整方略(186個)、モニタリング          表3 各学習場面で産出された自己調塾学習方略(数値は産出個数)

N皿 方  略  の  種  類 場面1 場面2 場面3 場面4 場面5 合計 H81P−S86king方略

1 わからないところを家の大人の人に聞く。 8 O 63 6 1o 87

2 大人の人に問題を出してもらう。 4 O O 7 2 13

3 わからなところをきょうだいに聞く。 3 O 9 o o 12

4 わからないところを友達に聞く。 11 0 53 6 6 76

5 友達と一緒に勉強をする。 4 5 4 o 2 15

6 わからないところを先生に聞く。 o 2 36 12 6 56

7 ヒントを出してもらう。 o O O 9 o 9

小 計 30 7 165 40 26 268

モニタリング方略

8 問題が難しいとあきらめる 1 3 11 3 O 18

9 正しく出来ているか確かめながらする。 3 7 4 11 18 46

10 自分が何がわかっていないか確かめながらす孔 3 1 5 O O 9

11 自力で出来る範囲で適当にする。・ 1 o 6 5 O 12

12 文章がよくわかるように考えながら読む。 1 2 10 O 2 工5

!3 自分の考え方で問題をといてみる。 o o 11 6 4 21

14 他に出来そうな問題があれば先にやってみる。 o 1 15 2 O 18

小 計 9 14 62 27 24 136

努力帽整方略

15 問題が解けるまでがんぱる。 O o 4 1 O 5

16 楽しいことを後回しにして勉強をする。 0 36 O 6 1 43

17 勉強した後で何か好きなことをしようと考える。 O 11 O 2 3 18

18 時々休憩して気分転換をする。 O 3 o 1 5 9

19 楽しいことをしてしまってから勉強をがんぱ孔 O 18 0 9 O 27

20 わからなくても答えを見ないようにする。 1 1 O 0 O 2

21 勉強に集中出来るようにがんばる口

20 1 3 9 34

22 楽しいことを我慢して勉強をする。 O 36 o 3 1 40

23 反省する。 O o 2 1 o 3

24 先生の説明をしっかり聞く 2 o 0 0 5 7

小 計 4 125 7 26 24 186

プランニング方略

25 教科書の練習問題や問題集を解いてみる。 19 6 9 23 12 69

26 勉強がしやすいように周りの現境を整える。 5 66 3 4 29 107 27 どのようにすれば分かるようになるか考えて勉強す乱 15 3 2 2 6 28 28 勉強のやり方が自分にあっているかどうか考えてする。 1 o 3 2 4 10

29 勉強をするときに順番を決める。 0 30 2 1 7 40

30 勉強する時間を決める 3 0 0 7 1I 21

小 計 43 105 19 39 69 275

学習目標設定方略

31 どのくらい問題が出来るか予想してみる。 o o 1 o 0 1

32 1日何ぺ一ジするか決めて勉強する。 0 0 O o 1 1

小 計 o O 1 O 1 2

合 計 86 251 254 132 144 867

(7)

方略(136個)、学習目標設定方略(2個)の順で産出されていた。

 次に、自己調整学習方略がどのような場面で多く産出されているかにっいて調べるために、産 出された自己調整学習方略の個数を場面ごとにみてみた。表4に示すとおり場面3(254個)が 最も多く、以下場面2(251個)、場面5(144個)、場面4(132個)の順で産出されていた。こ の結果は、自己調整学習方略は場面3のような学習課題を自力で解くことが困難な状況や、場面

2のような学習に集中できない状況で使用する学習方略であると子どもたちが認識していること を示している。

 さらに、産出された方略について場面ごとに産出数を比較した。

 1)He1p−Seek1㎎方略について   表3に示すように産出数268個は、多い順に場面3(165 個)、場面4(40個)・場面1(30個)・場面5(26個)・場面2(7個)の順で産出されてい㍍

この結果は、He1p−Seeking方略を、場面3のような、自分の力で問題を解くことが困難な場面 で用いる方略として、子どもたちが認識していることを示している。

 2)モニタリング方略について   表3に示すように産出数136個は、多い1順に場面3(62 個)、場面4(27個)、場面5(24個)、場面2(14個)、場面1(9個)の1順で産出されていた。

この結果は、モニタリング方略を、He1p−Seeking方略と同様、自力で解答することが困難な学 習場面、もしくは解答する上で注意が必要とされる場面で用いる方略として子どもは認識してい

ることを示している。

 3)努力調整方略について   表3に示すように産出数186個は、多い1順に場面2(125個)、

場面4(26個)、場面5(24個)、場面3(7個)、場面1(4個)の順で産出されていた。この 結果は、努力調整方略を場面2のような学習に集中できないような何らかの要因がある時に用い

る方略として子どもたちが認識していることを示している。

 4)プランニング方略について   表3に示すように産出数275個は、多い1順に場面2(105 個)、場面5(69個)、場面1(43個)、場面4(39個)、場面3(19個)順で産出されていた。こ の結果は、プランニング方略を場面2のような学習課題に集中出来ないような時に用いる方略と

して子どもたちが認識していることを示している。

 5)学習目標設定方略について   学習目標設定方略は場面3と場面5でそれぞれ1個ずつ 産出されていただけであった。この結果は、子どもたちにとっては、この方略はほとんど使用さ れていないことを示してい孔

(2麗知的学習方略について

 全場面の認知的学習方略の産出数の総計は570個であった。表4に示すとおり、リハーサル

(417個)が最も多く、体制化(54個)、精緻化(36個)の1順に産出されていた。また、その他の 学習方略は63個あっれ特に、リハーサル方略に関しては、場面1の「テストに備えて復習する 学習場面」と場面4の「テストの復習の場面」で多く産出されてい㍍

 次に、どのような場面で認知的学習方略が多く産出されているかを調べるために、産出された 認知的学習方略の個数を場面毎に見てみた。表4に示すとおり、場面1と場面4が最も多く155 個であり、以下場面3(118個)、場面5(104個)、場面2(38個)の1順で産出されていた。この 結果から認知的学習方略は、場面1のような社会科などのテストで重要用語を覚えるような学習 場面や、場面4のようなテストの復習の時に用いる方略として子どもたちが多く使用しているこ

とが明らかになった。

(8)

 さらに、認知的学習方略として産出されたこれらの方略が、どのような場面で多く産出されて いるかにっいて比較した。

 1)精級化方略について   妻4に示すとおり産出個数36個は、多い順に場面1(14個)、

場面5(12個)、場面2と場面3(5個)でそれぞれ産出されていた。この結果から、精緻化方 略は、場面1のように社会科のテスト勉強のような重要用語をおほえるというような学習場面で 使用する方略として子どもたちに認識されていることを示している。

 2)リハーサル方略について一表4に示すとおり産出数417個は、多い順に場面4(140個)、

場面1(112個)、場面3(86個)、場面5(55個)、場面2(24個)の順で産出されていた。この 結果から、リハーサル方略は、場面4や場面1のような復習の場面で使用する方略として子ども

たちに認識されていることを示している。

 3)体制化方略について   表4に示す通り、産出個数54個は、多い1順に場面1(20個)、

場面4(11個)、場面2(9個)、場面5(9個)、場面2(5個)の順に産出されている。この 結果から、体制化方略は、場面1や場面3のような復習を必要とする場面で使用する方略として 子どもたちに認識されていることを示してい孔

 4)その他の認知的学習方略について   妻4に示すとおり産出個数63個は、多い1順に場面

表4 各学習場面で産出された認知的学習方略(数値は産出個数)

H皿 方  I各 の 種 類 場面1 場面2 場面3 場面4 場面5 合計 糟級化

33 新しいことをするときに自分が今までした経験を思い出す。 0 2 1 0 o 3 34 新しいことを勉強するときに・自分の言葉でいうとどういう意味 o 2 1 o o 3

なのか考える。

35 大事なところを線を引いたり、色をつけて覚え乱 13 o O o 11 24 36 新しく習ったことや問題を絵のように思い浮かべることがある。 1 1 3 O 1 6

小計 14 5 5 O 12 36

リハーサル

37 今まで習ったことや先生の言ったことを思い出す。 3 0 12 O 7 22

38 ノートを見なおす。 36 O 19 11 10 76

39 教科書を見なおす。 46 5 44 21 20 136

40 間違えた問題をやり直す。 4 4 o 15 1 24

41 繰り返し声に出して覚える。 4 1 3 12 o 20

42 繰り返し書いて覚える。 8 7 O 4 2 21

43 テストを見なおして勉強する。 4 7 1 46 6 64

44 学校で習ったことを復習する。 5 o 7 26 8 46

45 大切だと思うところを見なおす。 2 o O 5 1 8

小計 112 24 86 140 55 417

体制化

46 習ったことをノートにまとめる。 8 o o 1 3 12

47 わからないところをノートにまとめる。 6 4 1 9 2 22

48 授業で習ったことをノートにまとめなおす。 6 1 O 1 4 12

49 わかるように図にまとめてみ孔 0 0 8 o O 8

小計 20 5 9 11 9 54

その他の翻知的学習方略

50 記号などを使い簡単にする。 O o 1 O O 1

51 いろいろな式で計算する。 O o 2 0 o 2

52 わからない言葉を辞書で調べる。 3 3 0 1 4 11

53 資料や参考書などをみて勉強をする。 6 1 14 3 1O 34

54 ノートをきれいに書く。 O O o O 11 11

55 問題を自分で作って解いてみる。 O O 0 0 3 3

56 図書館にいってわからないところを調べる。 O O 1 o O 1

小計 9 4 18 4 28 63

合計 155 38 118 155 104 570

(9)

5(28個)、場面3(18個)、場面1(9個)、場面2(4個)、場面4(4個)の順に産出されて いる。この結果から、その他の認知的学習方略は、学習場面を限定せず、一般的な学習の工夫を する上で用いる方略として子どもたちに認識されていることを示している。

3.場面ごとの学習方略の特徴

 産出された学習方略を場面別に見てみた。自己調整学習方略が最も多いのは学習課題を自力で 解くことが困難な場面(場面3)であった。認知的学習方略に関しては、テストに備えて復習す

る学習場面(場面1)とテストの復習の場面(場面4)で多く産出されてい㍍

 さらに・場面ごとの特徴について詳しくみると・以下のような特徴がみられた。

 場面1のテストに備えて復習する学習場面においては、以下の傾向がみられた。自己調整学習 方略(平均産出個数1.07)よりも認知的学習方略(平均産出個数2.65)の方が多く産出されていた。

このことは、学習場面が社会科の今まで勉強した内容に関することをテストをするという内容で あり、調査対象となった小学校6年生の学習内容である歴史の分野での重要年代、重要人物、そ

して重要語句を覚えるという学習経験の影響があったことも考えられ飢

 産出された学習方略の内容については、以下の特徴がみられ㍍自己調整学習方略では・「25  教科書の練習問題や問題集をといてみる」などの学習言十画をたてるプランニング方略は21.9%

と最も多く産出され、続いて「11わからないところは友達に聞く」などのHe1p−Seeking方略

(10.7%)が多く産出されていた。また、認知的学習方略ではr39教科書をみなおす。」、「38 ノートをみなおす。」といったリハーサル方略は全産出数の40,5%と最も多く産出されていた。

続いて「35大事なところに線をひいたり、色をっけておぼえる。」などの用語をおぼえる方略 が11.6%産出されていた。

 場面2の学習に集中できない場面においては・以下の傾向がみられ㍍この場面では、自己調 整学習方略(平均産出個数2.8個)のほうが、認知的学習方略(平均産出個数0.4個)より多く産 出されていた。この結果は、場面が学習課題である漢字をおぼえることよりも学習に集中出来な いことの方に重点が置かれていたために生じた結果であると思われる。

 産出された学習方略の内容については、以下の特徴がみられ㍍自己調整学習方略は「16葉 しいことを後回しにして勉強する。」などの努力調整方略が全回答数の45.8%を占めていた。ま た、「29 勉強をするときに順番を決める。」などのプランニング方略は全回答数の37.9%を占め ていた。また、認知的学習方略は、r43 テストをみなおして勉強する。」、「42繰り返し書いて おぼえる。」などのリハーサル方略が最も多く産出されており全産出数の63.2%を占めていた。

 場面3の学習課題を自力で解くことがむずかしい場面においては、以下の傾向がみられた。

 自己調整学習方略(平均産出個数2.9個)のほうが、認知的学習方略(平均産出個数1.3個)よ り圧倒的に多かった。学習課題が難しくて困難になってきたら、子どもたちは自己の学習状況を コントロールする自己調整学習方略を重視するため、このような傾向が現れたと思われる。

 産出された学習方略の内容については、以下の特徴がみられた。自己調整学習方略では、「1 わからないところは家の大人の人に聞く。」などのHe1p−Seeking方略が全回答数の44.8%占め ており、「14他に出来そうな問題があればやってみる。」などのモニタリング方略は、全産出数 の18.6%であった。認知的学習方略は、「37今まで習ったことや先生が言ったことを思い出す。」

などのリハーサル方略が24.2%で多くみられた。

 場面4で呈示されたテストの復習の場面では、他の場面に比べて平均産出個数は、自己調整学

(10)

習方略(1.34個)と認知的学習方略(1171個)であり、産出個数の平均値の差は小さかった。

 産出された学習方略の内容については、以下の特徴がみられた。自己調整学習方略では「25 教科書の練習問題や問題集を解いてみる。」などのプランニング方略が全産出数の1119%であり、

「6 わからないところを先生に聞く。」などのHe1p−Seeking方略は15.9%であった。また、認 知的学習方略は、「43 テストをみなおして復習する。」などのリハーサル方略が最も多く54,0%

であった。

 場面5は、学校や家庭での学習についての一般的な質問であったが、以下のような傾向が見ら れた。自己調整学習方略の平均産出個数は、1.66個であったのに対し、認知的学習方略は1.1個 で、やや自己調整学習方略の方が多かった。

 産出された学習方略の内容については、以下の特徴がみられた。自己調整学習方略では、「26  勉強がしやすいように周りの環境を整える。」などのプランニング方略が、全産出数27.8%を

占めており、最も多く産出されていた。認知的学習方略では、「39教科書を見なおす。」などの リハーサル方略が全産出数の22.17%を占めており、最も多く産出されていた。

 本研究では、子どもの日常生活の中でのさまざまな学習場面に応じて、どのように学習方略を 使用しているのかについて把握するために五つの学習場面を設定し、学習方略を自由記述させた。

結果は、これまでの自己調整学習の研究で扱われていた枠組みに当てはめて分類、整理した。そ の結果、(1)自己調整学習方略として、Heユp−Seeking、モニタリング、努力調整、プランニン グに分類される学習方略が産出された。また、(2)認知的学習方略として、精緻化、リハーサ ル、体制化、その他の方略が産出された。

 このような本研究の結果を伊藤(1997c)の結果と関連づけて考察しれ伊藤(1997c)では、

小学校4年生を対象に、家庭や学校でどのような学習方略の知識があるか調べている。その結果、

自己調整学習方略を産出した子どもは36.6%であり、認知的学習方略を産出した子どもは53.3%

であっれ調査で設定された学習場面や数が異なるので、単純には比較できないが・本研究の調 査では自己調整学習方略も、認知的学習方略も全員が産出しており、学習方略についての知識に 発達差が認められた。

 本研究では、五つの学習場面を設定しそれぞれの学習場面に対応した学習方略を産出させた結 果、学習に集中できない場面である場面2と学習課題を自力で解くことが困難な場面である場面

3において自己調整学習方略が特に多く産出された。場面2では、楽しいことは後回しにして勉 強する、楽しいことを我慢して勉強するなどの努力調整方略や、勉強しやすいように環境を整え

る、勉強をする順番を決めるなどのプランニング方略などが多く使用されていた。また、場面3 では、家の大人の人、友達、先生にわからないところを聞くというHe1p−Seeking方略の使用が 大半を占めていた。これらの結果から、子どもたちが学習に集中できない場面や自力で学習困難 な場面では、自己調整学習を共通してより多く行っていることが明らかにな・った。

 したがって今後の研究においては、場面2と場面3の両者の要素が含まれる学習場面を設定し、

場面2と場面3で産出された自己調整学習方略の上位項目をもとにして自己調整学習尺度を作成す

る予定である。その際、その項目の使用頻度を評定させ、その結果について因子分析を行い自己

調整学習方略の構成要因を検討すること計画している。さらに、自己調整学習の使用と動機づけ

要因(自己効力感及び内発的価値)及び学業成績との関連を検討する予定である。

(11)

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謝辞:本研究の実施に際しご理解とご協力をいただきました奈良市立明治小学校の校長先生、6 年生担任の先生方、熱心に勉強の仕方について回答してくださった6年生の児童の皆さんに心よ

り厚くお礼申しあげます。

参照

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