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真宗研究14号 002片岡融悟「現代の青年像と宗教教育について――高校生を対象として――」

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Academic year: 2021

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現代の青年像と宗教教育について

ー l 高校生を対象として!|

︵ 仏 光 寺 派 ︶ は じ め に 現今、わが国における青少年に関する問題は、極めて深刻になって来ていることは、周知のところである。 現実の高校では、知識偏重から、受験準備教育が重視され、人格の陶冶も十分になされず、生活行動の指導も不徹 底になっているような実状にある。従って、多くの生徒が学習意欲を失い、思春期だけに悩みも大きく、反発心が強 く 出 て 来 て 、 いろいろと問題を起している。 このような問題を解明するために、高校三年生を対象にして実態調査をし、問題点をあげ、実例により検討を加え、 今後のあり方について考察してみることにした。

主怠企、 面開 まず、昭和四十四年五月に実施した、

K

高校の実態調査について述べよう。 現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て

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現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て ﹂ れ は 、 対 象 生 徒 、 。 普 通 科 。 農 業 科 男 男 子 子

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名 名 女 女 子 子 37 Jl2 名 名 A 口 計

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名 (A) 勉強に関して 好 き で あ

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好 理 き 解 な し 科 や 目 す の い 場 時 I』 日 嫌 で あ

71 % 勉 理 強 解 方 困 法 難 が な 不 た 明 め な た め また、家庭での学習時聞が、 一 日 平 均 三

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一時間が幻%あり、受験生徒でも四時間という者は、 わずか

3%

と い う 実 状 で あ っ た 。 しかも、勉強する時には、音楽を聞いたり、ラジオをかけたりするという﹁ナガラ族﹂になって いるのがお%となっていた。 まとめてみると、真剣に学習に取りくむ気持が不十分で、安易に考え、単純に表面を整え、学習はエチケットのよ うに、身につけるものの如く考えている生徒が、 かなり多くあるように感じとられる。 な お 、 (B) 余暇・趣味に関して 。テレどを見るのが好きである・:回% 一 日 平 均 二

J

三 時 間 ・ : 羽 % ︵ 品 % ︵ 男 子 ︶ 。 映 画 を 見 る の が 好 き で あ る ・ : + ︵ 担 % ︵ 女 子 ︶

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。漫画・週刊誌を読む:・6% 。 流 行 歌 が 好 き で 、 ︵ 侃 % ︵ 男 子 ︶ よ く 口 ず さ む : ・ + ︵ 団 % ︵ 女 子 ︶ とかく刺戟を好み、娯楽的な内容には非常な関心をもち、その雰囲気に浸って、人生を謡歌しているように観察で きる。この中で、欲求不満を解消しているようでは、青少年も悪化する恐れが十分にあると思われる。 以上のことから、学習と余暇には、強くアンバランスが出ていることが感じとられ、従って、現代っ子には、視覚 型・感覚振が多くなり、浅く広くいろいろのことを知ってはいるが、人間として持っている知恵を、どのように伸ば し、生かせばよいかを知らないように考えられる。 しかも、無思考型が多く、困った時には、条件反射的に逃避する傾向が強くなって来ている現状であるように感じ られるのも、当然の結果であるようである。 一 方 、 (C) 家庭生活に関して 。親子で話し合いを殆んどしない・:お% その理由づけとして、年代のずれから起る意見の対立や、親の期待が大き過、ぎることに対する反発心、親と子の生 活内容の相違から、ということがあがっていた。 親は生活程度をあげるために、多忙な職業をもつことから、親子のすれ違い生活が始まり、ゆっくりと団らんした り、話し合う時間もないことは、相互にちぐはぐの生活を展開していることになっている。 たとえ、テレビを一緒に 見ていても、それだけのことで対話にはなっていないのである。 現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て

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現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て 四 な お 、 。親に望みたいことがある:−m% その内容としては、子供を信頼してほしい、意見を聞いて自分をもっと知ってほしいとか、話し合ってお互に親し く し た い 、 という希望が強くなっていた。 更 に 、 倒人生に関して、どのように考えているか。 。 生 き 甲 斐 が あ る ・ : 日 % 。生き甲斐がないと解答しているのが圧倒的に多かった。 ﹁ 友 達 ・ ・ ・ お % 。悩みの相談相手にはト親:::日% 一 ひ と り で 解 決 す る ・ : 却 % 経験の乏しい者が自分一人で、 または、友人同志でうまく解決出来るであろうかと、考えさせられた。また、 将 来 希 望 ぢ 、 も て

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44 33 % % r、' r「、 女 男 子 子 ¥ J ¥ J ︵ 能 力 に 自 信 が な い か ら : − m % それはよ ︵ 生 活 目 標 が な い か ら : − m % と 出 て い る 。 そのような生徒は、現代は、政治や社会機構・秩序・管理体制・対人関係の面において、矛盾が多いので、進路に

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関しても不安な気持ちがすると、 ﹂ の よ う な 問 題 は 、 複 雑 で 、 意 見 を 出 し て い た 。 先ず、根本的なガイダンスが必要であることを痛感させられる。 こ こ で 、 (E) 宗教に関して 。 家 の 宗 教 ・ : 仏 教 : ・ 臼 % その他、天理教、キリスト教、神道が見られる。なお、 。 自 分 が 信 じ て い る 宗 教 : ・ 仏 教 : ・ 8 % キリスト教・創価学会・世界メシヤ教等が極く少数あり、 。宗教は嫌いですと言っている者も、数名出ていた。 これから見て、仏教は、家の宗教であって、青年個人の信仰にまで及んでいない、形式的なものに過ぎないと言え マ 心 。 そ の 他 、 アンケートに示された意見から考察してみると、彼等は、単純で打算的にして、物質至上主義に落ち入つ ていて、忍耐力が乏しく、安易な享楽を好む傾向が強く、思索力が弱く、都合のいい感情をもって衝動的に行動する 傾向が伺われる。だから、 H −

R

や学校行事等の集団活動においても、自主性に欠け、無責任である者が多く、協力 性が著しく不足していると推察できる。 好ましくない面のみが、顕著に出されて来たわけであるが、 一方、体育クラブの活動面においては、積極的・意欲 的に活躍し、高校生活をエンジョイしている者も、 かなり多く出ている現状で、彼等にとっては、健康的なエネルギ ーの発散をしていると言える。従って、自主的に高校生活の計画を立て、生活の目標を確実にもって、楽しく有意義 現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て

L

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一 ノ に送って来ている生徒には、白ら開拓し、伸ぼしていく実力が認められるが、問題生徒を如何に指導していくかが、 現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て 大きな課題となって残っているわけである。 次 に 、 いろいろな指奪事例をあげると、 ①座談会の事例︵女子生徒加名︶ 両親とよく話すという者は少数で、その理由は、意見が違い、自分の考えが間違っていると一言われるから、何とな く 話 し に く い 、 というように、実態調査と同じような発言であった。 また、進路に関する悩みが多く、その解決として、家族の者に強く当ったり、 ノートに書くことで欲求不満を解消 するというような、衝動的で単純な行動をしていることがわかった。 従って、何かにすがりついてみたいという要求が、宗教的雰囲気にひたりたいという気持を起して来ているように 感 じ 取 ら れ た 。 ②非行生徒の指導例 次 に 、 カンニングや公共物破壊で、家庭謹慎になっていた非行生徒の指導例を示す。 問題点は、両親が農業を営み、多忙であったことと、家族との対話がほとんどなかったことや、弱い性格で、将来 の希望を持っていないようなことであった。 毎 晩 一

J

二時間話し合い、学習を見てやることから始め、 日常茶飯事の内容を気楽に話しながら、彼の立場をよく 理解し、同情していくことで安心感を与えてやった結果、数日後には反応を示し、二十日程たつと活気を持ち、素直 に自分の行動の軽卒を認め、 ﹁誤った無責任なことをしたことを反省している L

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等と口ばしるようになって来た。 その後、明朗な気分で何でも話すようになって来たし、進路についての決め方など、相談にのってやり、二カ月の 指導期聞を終えて、就職もやっと決まり、立ち直って来たことを報告する。 ③

H

− R での指導 毎週の水曜日の

L

H

・ R の 時 に 、 いろいろ形を変えて指導を進めてみた。 。 全 体 指 導 で は 、 一年時に、高校生活の音、覇、人生の意義や目的をみつけ出すように、三年時では、充実したやり 甲 斐 の あ る 学 習 や 、 クラブ活動を展開するように努力させ、三年時で、志望進路の達成をめざして、相互に努力 さ せ る よ う に し た 。 。 そ の 他 、 H − R 活動の推進について、討論会を自主的に開催させたり、小グループで討議をさせたりしてみた。 しかし、保護者の協力も必要なので、次のような懇談会を実施した。 A 個別懇談会︵

H

R

− T と 保 護 者 ︶ B 相互懇談会︵保護者同志︶ 各学期末に実施した結果、保護者とは密接なつながりもできて、気楽に相談するようになり、困った事も、早期に 対策を考えるようになっていきました。 また、進路相談では、生徒・保護者・教師との一二者懇談を行い、自信を Jぬって目的が達成できるように進めていっ 7こ 結局、高校三年間に、こうした系統的な指導を行うことが、良い成果を生むことは、確信できるが、 高校生の自覚と、自主性と、実行力をつけるためのアドバイスに、重要な意義があるように思われる。 しっかりした 現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て 七

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等と口ばしるようになって来た。 その後、明朗な気分で何でも話すようになって来たし、進路についての決め方など、相談にのってやり、二カ月の 指導期聞を終えて、就職もやっと決まり、立ち直って来たことを報告する。 ③

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− R での指導 毎週の水曜日の

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・ R の 時 に 、 いろいろ形を変えて指導を進めてみた。 。 全 体 指 導 で は 、 一年時に、高校生活の音、覇、人生の意義や目的をみつけ出すように、三年時では、充実したやり 甲 斐 の あ る 学 習 や 、 クラブ活動を展開するように努力させ、三年時で、志望進路の達成をめざして、相互に努力 さ せ る よ う に し た 。 。 そ の 他 、 H − R 活動の推進について、討論会を自主的に開催させたり、小グループで討議をさせたりしてみた。 しかし、保護者の協力も必要なので、次のような懇談会を実施した。 A 個別懇談会︵

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− T と 保 護 者 ︶ B 相互懇談会︵保護者同志︶ 各学期末に実施した結果、保護者とは密接なつながりもできて、気楽に相談するようになり、困った事も、早期に 対策を考えるようになっていきました。 また、進路相談では、生徒・保護者・教師との一二者懇談を行い、自信を Jぬって目的が達成できるように進めていっ 7こ 結局、高校三年間に、こうした系統的な指導を行うことが、良い成果を生むことは、確信できるが、 高校生の自覚と、自主性と、実行力をつけるためのアドバイスに、重要な意義があるように思われる。 しっかりした 現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て 七

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現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て 八 ここに、宗教の必要性を認め、どのように具体的に進めて行けばよいかを、考えていきたいと思う。 現代人は、忙しいあせりのために、表面は充実しているように見えていながら、健康な生命を失った、うつろな一 大空白感があるようである。殊に世相に敏感なのは青少年であり、大人の姿勢を反映し、環境の影響を受けないとい うことは、あり得ないことである。 よく考え、地道に歩む若人が如何に少いことであろう。 中流以上の家庭の青少年の犯罪がふえ、心のよりどころを失って、自殺する者が数多いことを、全国統計は示して い る 。 中央教育審議会の最終答申で、期待される人間像、日本人に特に期待される人間像第一章、個人として︵チ︶ の と こ ろ で 、 ﹁われわれには精神的な生命がある。このような生命の根源、すなわち聖なるものに対する長敬の念が真の宗教的 情操であり、人間の尊厳と愛もそれに基づき、深い感謝の念も、そこからわき、真の幸福もそれに基づく﹂ と 言 わ れ て い る 。 ﹂ の 人 間 像 の 発 想 に は 、 ﹁物を軽視することになってはいけない﹂という批判もあるが、卒直に見て、そのような 精神面の手ぬかりが、現代社会組織の中には見られる。同時に、 マス・コミによる悪影響が、青少年の非行化の大き な原因となっているようにも考えられる。 現代人は、宗教に無知識な者が多く、外面の絢欄たる科学の発達のかげにかくれて、人間性の進歩をおろそかにし て来た欠陥を、認めざるを得ない時期に当面している。 現代の社会機構の中において、没個性的に、機械的に、自己喪失の状態に落ち入っていて、生の深い感激・感動の 体験に極めて乏しくなっているから、彼等、が、白分をごまかして、現実に妥協せず、人生を真剣に考え、菩提心を発

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すように、仏教を、現代の日常語、庶民の言葉で語る機会をつくり、白他の仏性にめざめ、人間の生命の尊さを向覚 さ せ な け れ ば な ら な い 。 それと併行して、普因善果・悪因悪果の因果の道理を、宇宙の法則等と共に話し、物事の成り行きが、 こ の よ う に なっていることを、十分に理解させることによって、 ままならぬ世の中であることを知らせたいものである。 戦 後 、 アメリカの自由主義の教育を取り入れて来た過程において、 わ が 国 民 性 か ら し で も 、 かなり無理のある不十 分な、適切なものではなかったことを反省しなければならず、もっとわが国民の生活態度や、慣習などにマッチした ものを打ち出していかねばならない。 現在の小・中学校においては、道徳教育を取り入れたカリキュラムの改訂がなされているが、高校においては、 四 十八年度に、教育課程の改訂がなされる。その際に、特別教育活動として、その中に、宗教的情操教育をするための 指導体制を整え、制度化する必要がある。 従って、学校教育の中にも、人生の価値観を知らせるような修養講座を毎週もうけたり、個人のガイダンスにおい ても、人生の意義をしっかりと教える人生相談を実施したりして、積極的な方向へ実際に歩んでいくべきであると思 う 結 ひ 王 以 上 るる述べて来たが、今後に与えられる課題は多く、非常な困難を予測する。教育の現場の中で、或は、地域 団体・保護者の方達の協力を得て、実現出来るように努力を傾注したいと思う。 現 代 の 青 年 像 と 宗 教 教 育 に つ い て 九

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