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札幌大谷短期大学紀要01号 柴田 泰「無量壽經本願の一考察」

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Sapporo Otani University & Junior College of Sapporo Otani University SapPoro  Otanl  Unlverslty & Junlor  College  of SapPoro  Otanl  Unlverslty

81

無 量

考 察

                       

1

 

土 教 思 想の 根 幹

彌 陀 如 來の本 願と し て 示 さ れ る

念佛

に よ る衆 生の淨 土 往 生と 云 う事が出 來 よ う。 今同 は

如來

の本 願を

を 主要と して形 成さ れ

,今

H

に 於い て最 も大 き な 比 重を占め る無 量 壽 經

げ,

その で も 中 心となる本 願 文に つ い てえて み る こ とに し たい

 

初め に無 量 壽經諸 本につ い て の概 要を述べ る必 要があろ う。 無 量 壽 緯の支 那譯は古

よ り 五存ヒ 缺十二 譯と言はれ

, 十

二の 譯 出がなされ

その うち五 本が 現 存 し七本が失な わ れて 傅わつ てい な い

と言われてい る。 1)

十二 譯を示 すと次の如 くで ある。

1.

無 量 壽 經二 巻

 

後 漢 桓 霊 帝の時

 

國 沙 門安 世

和二年 (

AD

 

148

年 ) 建 寧年 (

AD .170

 の 譯  七缺の

2.

無 量 清

平 等覺 經

 

後 漢

 

月支 國 沙 門 支 婁 迦

 147 年

よりユ

86

年の聞に譯 す 五有の第

(以 後 平 等 覺經 と略稱)

3.

佛 論 阿 彌 陀

F

耶三佛

薩櫻佛櫓

過 度 人 道 經 呉

 

月 支 國 優 婆 寒 支 謙 譯

 

黄 武

中 (

223年一228

年 )

 

に譯 す

 

二 (大阿 經 と略 稱 ) 4

無量 壽經二 巻

 

 

陽 白 馬 寺に於い て印 度

沙門

康 僣 鎧譯

 

平四

壬 申 (

252

年 )五 存の第三 (大 經 と略 稱 )

5 .

無 量 清 淨 平 等 覺 經二巻

 

 

洛 陽 白 馬

い て西域 沙 門 白 延 譯

 

戊 寅 (

258年

)七歓の

6

無量壽 經二巻

 

西 晋

 

沙 門竺法 護 譯

 

永 嘉二 年 戊 辰

308年

)七 缺の

7.無

量 壽 至眞 等正覺 經

 

 

西 域

沙門

竺法

 

元 熈 元 年 己 未 (419 年 )七 缺の

8.

新 無量 壽經二巻

 

東 晋

 

道 場 寺に於い て沙 門覺

 

永 初二年 辛 酉 (42ユ年 )七 缺の 第五

9.

新 無 量 壽 經二巻

 

東 晋

 

道場

に於い て涼州

沙門

賓 雲譯

 

永 初二 年 辛酉

 

七歓の

10

新 無量 壽經二 巻

 

劉宋

 

沙 門 曇 摩 蜜 多 譯 宋元嘉元年 (424 年)よ り元嘉

1

八年 (

441

年 )に 至る間の 譯 七 缺 の 七 11

大 寶

經 無量壽 如 來 會 第五 之

二 二 巻

 

 

南 印 度 菩 提 流 支 譯

 

706

年〜713

 

五存の 四 (如 來 會 と略 稽 ) ユ

2.

大乗 無 量 莊 嚴 經三 巻      

 

 

西 天沙 門 法 賢 譯

 

982

〜1001

 

五存の

經 と略 稱

 

此 等の うち第

一・

の 安 阯高譯は 譯 出者の か ら考えて も その 出 典 目録 か らも實 際に ぽ 存 在

1、

なか つ た とて お り

第 十

譯の 如來 會

第 十二譯の莊 嚴 經の みが成立

代が 明 らかに め ら れて い

(2)

82

泰 るが

第二譯か ら第 十 譯ま で は實 際に譯 出された の か どうか

或い は現 存せ る譯 本が缺 本に る も の で は ない だ ろ うか

等々 , 成 立年

代 ・

譯 出 者に

し て種 々 の見 解が述べ られ 定 説は 無い。 2) 此れ はその

料とな る開元録

歴 代三寶

紀 ・

出三藏 記

録 の信 憑性に 依るわ けで る が 今囘 は その 譯 出 者

立年 代に對 する問 題は論 究せず

現 存せ る 五譯のみ を對 象と して各 本の本 願 思 想 につ い て考え て み たい 。 尚

景 壽 經に は

,藏

本も

存在

し てい る。

 扱

て今日迄に考 え られてい る無 量 壽 經の現 存せ る諸 本の成 立 過 程につ い て は お S よそ三系 統の 見 解に

けられ る。 〔1 〕 大阿 經→ 平 等 覺經→

嚴 經→

如 來

大 經。 〔

2

〕大阿經→ 平

覺經

如 來 會→ 荘 嚴 經 。 〔

3

〕 荘 嚴經の みを異 系

と し他は 〔

1

〕 〔

2

〕とする。 尚

本 藏 本に 關して も四 十八願 群の の 二 論がある。 木 村 泰 賢

望 月 信 亨

薗田香 勲

・森

二郎 氏は 〔

1

〕 諡を

鈴 木 宗 忠

池 本 重 臣 氏は 〔2 〕 説

南 條 文雄

・荻

原 雲 來 氏並 びに 宗 學 者の 諸 師は 〔

3

〕説とする 見方 が多い様で ある。 3)

2

 

以上略 逑した無量壽經に は 彌 陀 如 來の 因位に 於 ける誓願が ある。 平 等 覺經

大阿 經は 二 十四 願

大 經

如 來 會は 四十八願

莊 嚴 經三十六願

梵 本 四 十六願

藏 本四十 九 願と し て 示 さ れ るっ 夫 7r の 願 文に つ い ての 名 稱は今 日最 も流 布 してい る大 經に

して は 淨 影 寺 慧 遠 を 初め として中 國

鮮 ・

日本へ と展 開されるその時々 の宗 學 者に よりその註 釋 書に種々 の名 稱を用い てい るが, 4) 他 譯 に關し ての 註 釋

な く

願 文の 名 稱

まつ てい る わ けでは ない

つ て大 經に於 ける名 稱を 基 準とし て他 譯の各 願 文を相 應させ る

に よ り各 本の特 色を考え て行こ う と思 う。

 

各經 願

の 基

な檢

を行つ た

に5)その 照表を 大 經 四十八 願を基

と し て擧 く

る と株

くで ある。 (1)  無三悪 趣願 (2) 不更 悪 趣願 (3) 悉皆 金色 願 (4)  無 有好 醜 願 (5) 宿 命 智通 願 (

6

) 天 限智通願 (

7

) 天 耳智通 願 (8) 他心智通 願 (

9

)  神足智 通 願 (エ0)  漏 盡 智 通 願 (1D  住 正 定 聚 願 〔12) 光 明 無 量 願 (13) 壽 命無 量願 (14) 聲聞 無 數願 (15)  眷 属 長 壽 願 (

16

) 無諸不 善 願 (17) 諸 佛 稱 揚 願 (18)  念 佛 往生 願 (19) 來 迎 引接願 (20)  殖 諸 徳 本 願 (21) 三十二 相 願

− 23456978mu

      無量 毒經諸本 本 願 比 較 對照表 大阿 大 經 莊嚴 梵藏 經 如 來會   1  

815

前   9  22  

17

 17  10  17  1弖 24前  19  20  21 4前 4後   7   515 後 12345678910n12131415161718192021 經 1 2後 475

0327 1112 本 1234678951011131512141617     19後  13  

18

 14 19前 15前  (20) (22) 必至補 處 願 (

23

) 供 養 諸 佛 願 (24) 供 具如 意願 (25) 読

切智願 (26) 那 羅 延身願 (27) 所 須嚴淨願 (

28

) 見 道 場 樹 願 (29)  得辯才 智 願 (30) 智辯無窮願 (

3D

  國土清淨 願 (32 )  寶香 合 成願 (33) 觸光 柔顧 願 (34)  聞 名得 忍願 (35) 女 人 往 生願 (36)  常 修 梵 行願 (37)  人 天 致 敬 願 (

38

) 衣 服隨念 願 (39) 受樂無染願 (40) 見 諸佛土 願 (41) 諸 根具 足願 (42) 住 定 供佛願 平 等 盤  2022 前 22後  

24

大 阿 大 經 莊 嚴 經  如來會 経 13前 13後

16

13彳蹇  

24

寉麦     (2中 ) 後 1715

8

ほ ー

霞  

2

 

2

) 32 ( 匚 ノ 4

6 222 ) 72 (

29 の 31

後 34   3       2   (      

n

∠ 222324252627282930313233343536373839404142 梵 藏 本  21  22  23  24  26  27  

28

 29 (30) 124r フ

6

3

3333 (37 )

89012

Q

334

4

4

44

(3)

Sapporo Otani University & Junior College of Sapporo Otani University SapPoro  Otanl  Unlverslty & Junlor  College  of SapPoro  Otanl  Unlverslty

(43) 生 尊貴家 願 (

44

) 具足 徳 本 願 (45) 住定見 佛 願 (46)  隨 念 聞 法 願 (47) 得不 退轉 願 (

48

) 得三法忍願 (49) 飲 食自然願 (50) 無有女 人願 (51) 轉女 成 男願 (

52

)  悉 皆 化 生 願 (

53

) 資具自然願 (54)  諸 行 往 生願 (55)  敬 愛無…嫉願

23

   

14

34

67

〔 6 4

4

44

4

4

2

前 2 中 (

35

2

後  3  

6

2

無 量壽經本 願の

考 察 3233

36

27

4

378Q

4

4

4

4

4

4

※以 下に記 される ( )は本表の願 名 を 示 す

(56) 読經 殊勝願 (57) 眷 属 光 明願 (58)  善 根 周偏 願 (

59

) 二乘 佛願 (60) 佛 カロ教 イ匕願 (

61

) 往 他供佛願 (

62

) 不往 供 佛 願 (

63

) 佛 加 供 佛 願 (

64

) 二佛 願 (65) 作服 往 生 願 (66) 隨 意 修 習 願 (67) 華雨樂 雲 願 此の配 列 し た場 合

お 玉 よ そ見 當と して 次の

が 判明する。 8312 (22後 ) 108916192021283035

25

33

 

先 ず 大 經と如 來 會は思 想の

は別 とし て配 列順

が全 く同

である事が判 明 する。 同樣に 梵本 と藏 本とは梵 本に 三十二相 願

・智

辯無 窮 願

・常

行 願 が缺 け てい る

で 他はすべ て 同配 列であ る。 また大 經

如 來 會 と 梵 藏 本 は 内 容 的に類 似と云う點で 二 三の移 動を認め た場 合に は

5

(10 )は六

通で あるか ら

群と考 え

12

15

)は如 來 ・ 眷 騰 並び 光 壽 點で , (42 )

(45)は 住 定の點で配 列の順逆は認め られ る か ら

問 題は 梵 藏 本 第二十五願

第三十三願 の 二願と(

18

)〜 (

20

)の 二 點 に しぼ られる。 特に生 因 願と して念 佛

生 願

・來

引接

・殖

本願 の 四 十 八願 群 に

け る支 那 譯 と梵 藏 本の 相 違は留 意 すべ き點で ある。 此 の點 に關し て

芳 環氏 は CC 大 經よ り判 斷 して現

存梵

本 第 十九願は梵 文

筆 者の 二回の脱 漏と

回の誤 寫に よ る” と解 釋さ れてい る。 そ の 反 論 として西 尾 京 雄 氏は 支 那 譯 諸 本及 び

悲華

經 等の關 係經 典を對 照とし て現 存 梵 本はその ま まの 形が 正 しい

てい る。

氏は 夏に そ れに

えて大經を標 準とし た 自己の解 釋 を主張 さ れてい る。 比較 的 新 しい もの で は池本 重 臣 氏は梵 本の形 態を最 新 と

定 し た上で 大 経 第 十

二十 願を梵 本 第 十 九 願は 包 攝 した形

釋さ れてい る。 6) 經 ・ 如 來 會 と 梵 戯 本 とは此の檬難 點殘 すは 嵩 つ て も他の各 願

致 し てい る と

え ら れ る か ら

統の經 典 と規 定 して間 違い は無い しい ず れが形 態 的に先んずるか は願 文の み で判 斷 する事は 出

ない

 

此の樣に大 經

如 來 愈

藏 本は

應四十八 願群と

做 す 事は可 能である が

そ れで は 二 十 四 願を 読 く大阿經

平等 覺 經につ い て は どの樣 な事が 明するで ろ うか。 両 經の 願の 名 稱 を

見して大 經 との 關 連性 が よ り

い と気 付 くの は平 等 覺 經である。その 配 列は ほ x

大經 と 同 じで あり

f

八願 中の前 半に當る第二十五 願迄に

め られて い る。 然るに大 經に於い て は獨 立 し てい る願

が 平

覺 經で は併 合 願と し て 三願 示さ れ

本 經 獨 自の願

二十三

飲食

自然 願の み で ある事 を 考 えてイ,大 經

如 來 會の 未 發 達の 形

である事は明

で ある。 同 じ二十四願を説い て も大 阿 經は四十八 願 群 と 異な る所は大 きい し獨 自の 願

も多く

,僅

か に飲 食 自然 願 並びに併 合 願の内 容に於い て平 等 覺經 と の 相似 性がめ られ る。

 

嚴 經に つ い て は

別に發 表 し た如 く

四十八願 群との 關

性 はみ ら れ る が二十 四 願 群との關 連 性 は

平 等 覺 經二十四願が莊 嚴 經 第 十八願 迄に しか収め ら れてい ない 黜か ら

四 十八願群の

形 態 え ら れる。 T)

 

以上 の 全 體 的 見地か らの 推 論と し て概 略で は あるが夫々 に

性が られ る事に より同

の 經典と看 做し

先 ず 大 阿 經が最 も古い 形 態であ り

次い で 平等 覺 經

更に 飛 躍 的 に 展開 さ れて大 經

如 來 會

梵 蔵 本が

成さ れ

,莊

嚴經 が

しい 形 態とし て形 成された と考え ら れ る。

83

(4)

3

 

そ れで は各 經 典の 本 願 思 想特 色は何で あり

どの な展 開を 示 し てい るの かを各 願 文につ い て 檢 討を進め て い く。 此の黜に

し て は 各經 獨 自の願 文は比

の對 照 を他に

つ べ き 外の何 もの もな い か ら

先 ず 各 經 共 通の願 文につ い て取り上 げよ う。

 

先 ず 願 文に於 ける法 藏 菩 薩の誓い を 示 す 冒 頭 と最

は 「

使某作

佛 時

不得 是 願 終 不作 佛」(大 阿 經 ) 「我

我不作 佛」(平

覺經)「設 我

不取 正 覺」(大 經 )「

我成 佛

不取 正 覺 或い は不取

提 」

會 )[

世 尊

得菩

提 成正覺巳

悉 皆

得 阿 耨 多 羅三

提 」 (

i

嚴經 )

 

ctSacell

 me  

bhagavan

 

bodhipr2ptasya

ma  tavad  aham   anuttararh  sathyaksarbbodhim abhisalhbhudhyeyam ” (梵 本 )と莊

經の 最 終

が衆 生の 成 佛を論い てい る外

他はすべ 法 藏 菩 薩の誓 願と し て 示 さ れ る。

 

誓 願の

に よ り

慧 遠は 大経四 十 八願を 攝

身願

土願

攝 衆 生 願に分 類し て い る が S) 此の點 を 考 慮に入 れて考え る と

先 ず (

1

4

)の各 願 文を見るに大 阿 經は

一 ・

十五前 半

九 願 と全 く離 れて示 されてお り

1

) (

2

) 共 「泥 犁 禽 獣

薜i茘

」の

を用い

(2

)〜 (

4

)は 「我 國 中 諸

薩」 を誓 願の對 象と して説い てい る。 平 等 覺經 は 四十八願 群 と同列である が

1

) (

2

)「地 獄 禽 獣 餓 鬼 娟 飛 蠕 動 之 類」の 詒 を用い

2

4

)「我 國 中 人 民」を 誓 願の對 象と し, 大 經

・如

は明確に 「地 獄 餓 鬼 畜 生 (趣 )

1

「三悪 道」 の語 を 用い

「國 中 人 天 (衆 生

」を 對

と し て い る。 六

通に 關し て は大阿經は

・一

ー ・

十七

二十二 願と分

さ れ, 特に 第 十七願は如 來を 對

と し

,他

は 「我 國 中諸菩 薩 阿羅 漢」 を對 象とし て説

れるが

平 等

經では 六願共 tt

土に來 生 する人 民

さ れ

四十八 願群も 同 様 で あ る。 (

11

)は大阿經に見ら れず

平 等 覺 經に於い て 初め て 「住二止盡 般 泥

湛 .

」と述べ られ

大 經に至つ て 」住二定聚

_

必 至二

度司 と展 開 されてい る。 此の 正)定 聚を淨 影 寺 慧 遠の 「三賢 と十 聖」の 階 位とするな ら

如 來 會 は 「決 定成=等正覺

證 ・大 浬槃

_

」と

め られ

経で は 「住二正 信 位

_

離二顛 倒 想

_

」 と階 位を間はない

t 正

定 聚

” の

表現

を 用い てい る。 (12 ) (13 )は 如 來の 光 壽 無 量の特 相を明かす 願 文で ある が

大 阿 經で は第 十 九

二 十 四 (前 半 )願と離 れ

更に第二十四後 半に光 明の勝 相 を 説 く。 平 等 覺 經に な ると第 十三

十四願と

両 經とも 「諸 天 人 民

動 之 類」 に よ る如 來の特 相 を表 現 するが, (尚,両 經 共 成 就 文で は如

の 入

く) 大経

如來

會は攝 法 身 願 と して如

を對

と し

その表

は簡 潔であり

如 來の入

か れ てい ない

嚴經

生の

量の特 相と して説か れる。 (

14

) (

15

)の眷 麟に關し て は眷 矚 長 壽 願で平 等 覺 經

大 經

如 來 會に

 

「除二其 本 願 修 短 自在

_

」 (大 經 )の點で共

點 が見 られ る。 無 諸不善 願は 大 阿 經 無 く

平 等 覺 經

大 經

如 來 會 共 短か い表 現で ある が沿

i

經は その表 現が 複

である。

 

扨て

諸佛 稱 揚

・念

佛 往 生

來迎 引 接

殖 諸 徳 本 願の 四願に つ いて で ある が

此 の 四願は本 願

の中で も生 因 願とし てその占め る比 重は 最 も大 き く

また念佛往 生 願を中心 とし て 今 日 に至 る迄の

土 教 思

想史

は此の 生 因 願に 解 釋が しぼ られて展 開された と考えて も過 言で は無い 位 種々 の 見 解が な されて い る個 所である が

,今

は無量 壽經 諸本の み を 問題と して考え る。 此 の點に關して古くは荻 原 雲 來 氏

近 年で は 池 本重臣 氏

薗田香 勲 氏の 著 書が あ る

J)そ れ ら を參 考に 私 見を逑べ よ うと思 う。 先

二十四 願 經 につ い て見れば 両 經 共

諸 佛 稱 揚

念 佛 往 生 願

ej

 

願として 示されて い る。 大 阿 經では 第 四 願 「令三我名 字 皆 聞二

佛 國

_

皆 令三諸 佛

説二我 功 徳 國土之 善

_

諸 天 人 民 娟 飛蠕動 之類 聞二我名字

_

莫下不二慈心歓 喜 踊 躍

_

者上皆 令 來二生 我 國記 平 等 覺 經は 第 十七願 「令三我 名 聞ニ

佛 國

_

諸 佛

歎二我 功 徳國 土之 善

_

諸 天 人民 蠕 動之 類聞二 我 名字

_

皆悉 踊 躍來二生我國

_

」 と同じ内 容 表 現であ る。 更に 両 經共 此 の願

と成

文は存

しない。 此處で注

は こ

佛の稱

する

來の

(5)

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無 量 壽經 本 願の

考 察

85

の 字を聞い て踊 躍し來 生 する と言 う 「聞 名」の を 示す 事である。 聞 名

生の 思 想は四十八願 經に は 多 く示 さ れ る思

であるが, 明確では ない に して もその萠 芽が初め て示 される個 所で あり, と同時 に四十八願 經に表わ さ れ る

生思想は 全 く 汲み取る事は出 來 ない 大 阿 經で は 引 續 き第五願 (t 天人 民及

飛 蠕 動 之 類で 若し前 世で悪を作 す 者

第六願 Ct

若善男

女 人で

俗の 七 願 Ct 沙 門 と作れる者” の 往 生 即ち 三輩 往 生の

を 示す が, 平 等 覺 經で は 第 十八願 (C 菩 薩 道 を

1

乍す

十 九 願 t

前 世に悪を爲 す

” の

二種の

を読い て い る。 そし て両 經と も下

願 文に 「聞 我 名

」の 語 が示 さ れ る。 尚

此 等 願 文の成 就 文は三輩 往 生 として 明確に 非

な長 文で 読かれてい る。 以上 び)諸 點に よ り二十 四 願 經に於い て は生 因 願とし て重

なの は大 阿 經 第五 ” 六

七願

平 等 覺 經 第 十八

十 九 願なの で あり

18

)に

當 する願 文には生 囚の

が 殆ん ど示 さ れて い ない事が判 明し よう。 此 れが四

卜八願 經にな る と諸

揚 ・念佛

往 生 願は

々獨立 した願 文 を 形 成 する。大 經で は聞 名の 語は見 え ず「至 心信 樂 欲

生二我

國_

乃 至十

」と 言 う念 佛

生を説 き,如

會は 「

我名_

巳所

有善根

心 心廻 向 願 V 生二我 國

乃 至 十 念 」 と聞 名を示 しつ X

念佛

い て い る。 両 經に は 二十四願に は 詭かれな かつ た両 願 文の 成

就文

が示 さ れて い る が

い ず れ も併 合 願 的 色 彩を 帶びた文

を示 し て お り

願 文と成

文と は その 展開に い て多 少の違いがある事が判 明 する。 箆 十 九

二十 願は両 經 共 平 等

經の 色

を その まX 受けて い る が

明 確 な二 輩の差 別は平 等

經程

じ られ ない るに両

願文

成 就 文は二 卜四 願 經 と同じく三輩 往 生の 思 想が読か れ,

に大經に は 「上

」「

「下

」の 語があ り

如 來

會 ・梵 (

藏 ) 本は

生に

して詭かれてい る。 以 上の如 く生 因 願に

して は大 阿經で は

七願で その内 容は 三種の機 類の夫々 の

行に よ る往 生て あり, 平等 覺 經では

十九

二十 願 と二種の機 類の往 生となり, 大 經

如 來

に 於い て 新た に第

1

八願 が生因

とし て の様 相を

く表わ し

,第

十九

二十 願に

い て も諸 行 往 生を誂 くと言つ て し二 十 四 願 經に見 られるが如 き 明確な

類の 差 別

れて

てい る

が知ら れ よ う。

 

三十:二相 願に つ い て ぽ大 阿 經の み悉

金 色願 との桝 合 願で あり

他 譯は差 異は 無い 必 至

靂 願 は 住 正定 聚 願 と同様に大 阿 經に み られ ず

平 等

經で は 「不三

生 ; 等”ンテ

晝是ノ 餘 願

功徳

(淨 土 宗 全 書

63

頁 )こ

な らず

是の餘 願の功 徳を置 く. (浄 土 教 之 研 究

148

頁 )と訓 讀が異な り

生 等 」の

が 大 經

・如

來 會に示す 「

生 補 處」で ある の か ど うか 明 確さを 缺い て い る。 こ 菩 薩の 中で 衆 生

化 する者を除 く. と言 う文

は 四

卜八願 經に

い て初め て示 さ れ

本 願 思 想の 單 に如 來の みで ない 他の 諸 菩 薩に も認め る多樣 性が窮はれる。 (

23

25

)は併 合 願と獨 自の願

表 現 の 違い のみで 大きな

異 は

ら れ ない 。

 

以上で各經

に共 通せ る願 文の 考 察が終つ た の であるが

四 十八願 經の

半 部を占め る願 文に

し て は 二十四願に は全 く見 られ ない 大 經

如 來

會 ・

梵 (藏 )本に共 通 する特 色を

え る丈に 留め よ う。 第

に 前に も逑べ た

く聞 名思想の

調で ある。 大 經

如 來 會共第三十四

三十七

四十

十 七

四 十 八 願に示され

「聞 我 名

」 (大 經 )「聞 我 名 已 」 (如 來

・一

願 ずつ ず れて ミ嘩

mama  namadheyarh  

6rutva

梵 本

嚴の 要因 と し て聞

い てい る。 次は二十四願維に

於い て本 願の對 象とし て全 く表わ れ な かつ

の 諸

菩薩

に 對 しての 願 文が 示 さ れて い る 事で る。 此 の黒占につ い て池本重 臣氏は

初 期大 經 の に は未だ菩 薩 思 想が

達 し てい な かつ た と 考え られ

,後期

大 経の 頃に は 多 數の菩 薩を認め る般

經 典の出 現に よ る大 乘 菩 薩の運 動が白覺 さ れ た後の こ

10)ら れて い る が 般若 經

は 大 乘 經

の 最

と言 う定 読か ら

え る と,再考の 餘 地 がある に し て も

本 願 思 想の 展 開と して

の對 象 が 單

な もの か ら多様 性 を

び て來た事は 明 らかで あ る。此の 部 分は全てが具 體 的 な 淨 土の功 徳 甫

i

嚴で あり,思 想 的に は 決し て重 要 な 願 文が台ま れてい るわけで はない 本 願 思想の 展開と し て單 純で少 數の 願文か ら複 雑で多 數の 願 文と 移 行 る發 展殷階が當 然 そこ には

え ら れ ようが

單にそ れ 丈で は な く倫 理 學 的 見 地か ら

て も衆 生 全て

(6)

自有 する自己の有 限 性 を 認 知 し

相 對 的 有 限 的此 土 か ら理

土へ

る をい よ う な 衆 生の 願い

土 を 釜々

嚴 し展 開させ る と言う人 間の 内

的要

の 必然 的 過 程が

推察

さ れる。

4

 

最後

經願 文の 特 色を考え

併は せ てその成立過程に つ い て 述べ 。 大阿 經に

し て は願

の 配 列は他 譯に 比 して 最 も統

さ れて お らず

ま た 併 合 願 等 多 少の類 似 點

ら れ る とは言え獨 自の 願 文 も多い。 思 想 的に は住 正 定 聚 願

必至 補 處願

・無

諸不

願と言 う

度な願 文が 缺 け て お り

三 輩 往 生の思 想に代

される

く此 土

,淨

土 を 閥はず 衆 生の

に よ る差 別が見 られ,

切 平 等の

め られ ない 形 態 的に は無 量 壽 經

る事が判 明 する。 その 點 平等

經は

二 卜三願を 除き

他は殆んど同 配 列で四 十八願 經に 引 き繼が れ

僅かに

合 願に 於い て 大 阿 經と 共 通 性を持つ 。 思 想 的に は念 佛 往 生 願は未だ示 されてい ない が

三輩

生と し て で はな く二輩の機 類 を 論 く點で よ り新 しい

行 し てい る事が判 明 する。 し か し成 就 文は願 文とは相 應 しな く 大 阿 經と 同 じ く三

を読い て い る。 四十八願經に

い ては 願 文の 配 列は 全 く同

と見て よ く, 思 想 的に は 三

輩往

生の

念 佛 往 生 願が明 確に 示 され

,一

生 平 等往 生へ と展 開さ れ る。 更に本 願 思 想の 必 然

發展に よ り願 文 も増 え, 菩 薩の 多樣 性 と 聞 名 思 想が新た に加 え られ

各 願 文の 内 容 もは 明 快で 高 度る。 四 十 八願 經 中

大經

如 來 會に

し て は大 經が表 現が簡

であ り

,如來會

は詳 細である違い で願 文か らはその 形 態新 舊を知る

は出

ない

し成 就 文 と の關 係

經 典の初め に示 される過 去 佛の遠近

五悪 段の有

無 ・各章節

動 等を

え る と大 經 が 最 も 二十四願 經に 關

性が強 く

,從

つ て如 來 會

(藏 )本の方が新しい 形 態と考え る

が妥 當の 如 く思 わ れる。 莊 嚴 經に 關しては 全 願が攝

生願とし て示 さ れ

生因 願と し て は

十三

十 四願の外に四

卜八願 經に わ れた 「聞 名」の語が 三十六願 中八願 (第ニ

ト七

二 十 九

三十

一〜

三十四

三十六 願 ) と多 く聞 名 往 生 思 想の色 彩が濃 く

支 那 譯 經 典で は最 も新 しい

く思わ れ る 日に至つ た

教史

量壽 經に關 して は大經の み を對 象と して展

さ れ

他 譯は偶 々その

參考

の 爲に用い られる丈で

その經 典 その もの の解

は少 ない。 今回 は

朝 鮮

日本へ と展 開さ れ た

土教 史 以 前の立 場で無 量 壽 經の中心をなす 本 願 文を取り上げ

その 内 容を檢 討し た次 第である。 成 立 過 程に

し て は 本 願 文の みで 斷 定 出來 得る事で はな く, 經 典 全 体か ら檢 討 し なけ れば な らない

もあ

ま た他の 經 典 (般 若 思 想

連 性を主 張 される諸 氏 もあり) との 影 響に つ い て も考 慮 すべ き 故

そ れ ら

し て は 他の

機會

に述べ Q   (

91

1

) 此の根據は開元縄 教録 巻十 四

此經前後經十

譯 四本 在 藏 七 本 闕

(大 正 大 藏 經五十五巻

626

頁 )に無 量壽 莊   嚴經が 加え られ る事にる。

2

)諸本の成 立 年 代

譯出 者につ い て は

推 尾辨匡

望 月 信 亨

境 野 黄 洋

鈴 木 宗 忠 等 種々論 議は多い

「淨土三   部經 概説」 (坪 井 俊 映 著 )21

〜30

頁に は諸説が紹 介されて いる。 3)「本 願 思 想の開展 とその道徳的

文 化的

宗 教的意 義に就て 」木村 泰 賢 (大 乗佛教 概 論

470〜490

頁)    「佛教經典 成 立 史論」望 月信 亨200頁e     「無 量壽 級

i

諸 異 本の研 究 」 薗田香 勲    「無量 壽經の研 究」森二 郎 (印度 学佛教 学研 究 第4巻 第1号 )    「淨土佛 教」鈴 木 宗 忠 73 

 100

   「大 無 量壽 經の教 理 史 的 研 究」池本重 臣    「支那五譯 對 照梵文和 譯 佛 説無 量壽徑序」南 條 文 雄    「荻 原 雲來 文 集」230

238頁

   「淨三部 經 概読」

33〜37

4)「淨土 教 之研 究」 望 月信 亨 20S頁etは大 經四十八願 名需比較と して, 義寂

法位

一 ・

環 興

了慧

聖 聡

 道 隠の諸師を擧げて お られ るe

(7)

Sapporo Otani University & Junior College of Sapporo Otani University SapPoro  Otanl  Unlverslty & Junlor  College  of SapPoro  Otanl  Unlverslty

無 量讙 脛本願の

考 察

87

5

) 流布広い大 經は兎角, 他 譯の文 字

訓讃にっ いて は諸 本に よ り大い に異 なつてい る所がある

その例 とし て

 

「淨 土 教 之研 究」

 

145〜180

頁)の信亨氏の 訓讃と 「淨土 宗 全 書第

巻 」に記 された訓讀並びに大正大藏經  の各々に示 され た 同

經 典で も多くの違いが判明する

そ れ を梵 本よ り類 推 すると釜々の差は 明瞭にな るが校  訂 すべ き数 個 所は省 略 する

6

)「梵本無 量 壽 經に第 十八願有無の問題」泉 芳 環 (佛教研究 第七巻 第三 号

 

大正 十 五年)

  

「梵本 無 量壽 經に於 ける第十八願の取 扱 と其解釋 」

 

西尾 京 雄

 

(宗 學研 究 第五 号

 

昭 和 七年)   厂梵文無量壽經の因願にっ い て」 泉 芳 曝 (大 谷 學 報 第 十五巻二巻 昭和九年)   「大 無量壽經の 理史的 研 究 」

229〜232

頁。 7) 「無 量壽莊嚴經 本願 文に つ い て」拙論 (印度學佛教學研究 第十

巻第

号 )

8

) 「無 量壽經 義疏」(淨土宗全書五) 

27

頁。

9

) 「荻 原 雲來文 集 」

260〜284

  

F

大 無 量壽 經の教 理 史的研 究」   「無 量 壽經諸 異 本の研 究」 lO)「大 無 量壽經の教理史 的研究」 240頁

参照

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(評議員) 東邦協会 東京大学 石川県 評論家 国粋主義の立場を主張する『日

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