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OJC教職活動報告・研究組版 2011.indd

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Academic year: 2021

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■自由論考 Pūnana Leo を通して 「言語保持」 について考える 夫 明美 0. 序論  先般発行された当センターのニュースレター第 6 号において、 「ことばは生きている」 という拙稿内で 「言語保持」 について短 く報告しました。

 本稿では 2007 年発行の中学校検定教科書 New Crown [1] の4章 「Pūnana Leo」 ( 直訳すると 『声の巣』 ) に関連して、 ハワ イで行われている言語保持活動について紹介したいと思います。 当該箇所ではALT教師 Kalei Kealoha 氏が自分の出身地であ るハワイについて紹介しています。 地理や民族構成の紹介に続いて、 英語の占める社会的役割と位置づけ、 そしてハワイ州で はもう一つの公用語と制定されている 「ハワイ語」 へと話は展開していきます。 1970 年代に盛んになった 「Pūnana Leo」 の活動 内容が紹介され、言語が歴史や文化を映す鏡であること、人間のアイデンティティであることについて考えさせます。 日本では 「み なが日本語をはなす」 ことが当たり前のように思われているので、 多くの言語が消滅の危機に瀕していることについてテキストと関 連付けて話すことは新たな学習になると同時に、 環境保護などと同様にグローバル社会に伴う変化についても考える契機となると 思われます。 また、 授業の準備にあたり、 ハワイの近現代史、 ハワイ語等の言語保持についてふれる機会にお役立ていただけ ればと思います。 本稿では、 以下の 2 点に焦点をあて、 紹介します。 ・ 19 世紀後半にハワイ王朝が覆されて、 アメリカ合衆国へ併合されていく歴史 ・ ハワイ州におけるハワイ語保持の取り組み 1. ハワイ王朝からアメリカ合衆国ハワイ州へ  このセクションではハワイ王朝から二人の人物の時代、 カラカウア大王時代とリリウオカラニ女王時代を取り上げて、 ハワイ王朝 がアメリカへ併合されていく経過を紹介します。 1-1. カラカウア大王 (在位 1874-1891) カラカウア大王が即位した頃に、 ハワイは外来の免疫系の病気により、 人口の減少が大きな課題になっ ていました。 人口が大きく減少すると、 貿易の体制や、 島内の主たる産業であるサトウキビ産業を維持す ることが難しくなるためです。 1881 年に、 カラカウア大王は世界周遊へ出発します。 ハワイ内で拡大しつ づけるアメリカ系白人勢力を懸念し、アジア・太平洋地域内で「同種族」の連携を形成するという目的をもっ ていました (中嶋 1993)。  周遊中の王は日本にも立ち寄り、 当時の明治政府より歓待を受けます。 また、 当時の外務や明治天皇 にも謁見し、 以下の3点を申し入れいました (中嶋 1993)。 1. 日本からの移民を実現させること 2. ハワイ王朝を継承する王女と日本皇族の婚約 3. 日本とハワイの友好関係を将来の太平洋の発展に寄与させること  歴史に 「もしも」 はありませんが、 2 点めと 3 点めの項目が実現していたら、 その後の日 本とハワイ、 ひいてはアメリカの歴史は大きく異なっていたかもしれません。 実際には、 1 点めの項目だけが、 1885 年に 「官約移民」 により現実のものとなりました。 移民たちはサ トウキビ畑で他国からの移民たちとともに労働にあたりました。 労働環境は大変苛酷な上に 賃金も微々たるもので、 労働者たちは名前でよばれることはなく、 国籍、 年齢、 性別という 情報が色や形で示された 「バンゴー」 という札で厳しく管理されていました。 ホノルル市内 のビショップ博物館にも一部展示があります。  また、 「ホレホレ節」 という歌の中に、 日系移民のおかれた困難な状況や、 生まれた土地への郷愁をよみとることができます。 ホレホレとは、 サトウキビの茎から葉を切り落とす作業で、 主に女性労働者が担当していました。 その中には 「写真花嫁」 として ハワイに渡ってきた人も多くいたようです (矢口 2002)。 沖縄系移民 100 周年を記念して2000年にホノルルで開催された 「のど 自慢」 で、 日系4世の女性が歌ったことでも話題になったので、 記憶にある方もいらっしゃると思います。 写真② バンゴー ( 著者撮影, 2011) 写真① カラカウア大王 (Stone,S-2003)

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ホレホレ節 行こうかメリケンよ、 帰ろか日本 ここが思案のハワイ国 ハワイハワイとよ、 夢見てきたが 流す涙もキビのなか 雨は降り出すよ、 洗濯物は濡れる 背中の子は泣く、 まんまは焦げる 横浜出るときゃ涙出たが 今は子もある孫もある       (矢口 2002)  言語面でも特筆すべきことがあります。 労働者を管理するのは白人であることがほとんどで、 管理される側はハワイ人、 中国系 移民、 日本系移民、 フィリピン系移民、 ポルトガル系移民、 と多種多様でした。 そのような環境で 「ピジン英語」 が生まれます。 ピジンとは 「混声語」 とよばれ、 貿易や商用などで多言語が使用される状況において、 1 種の言語をベースにしてその他の言語 の語彙や文法がミックスされて生まれる言語をさします。 日本語からも多くの語彙が定着しており 「ベントー (弁当)」 や 「バチ (罰)」 など、 元々の意味と同じように使用されます。 ハワイ英語の大きな特徴であるこの話題については、 別稿で改めてご紹介したいと 思います。  このように、 現在の日本とハワイの関係にも大きな影響を及ぼしている、 カラカウア大王の周遊はアメリカ政府に大きな疑念を生 じさせます。 ハワイ諸島は北太平洋における戦略的支配において重要な役割を果たすためです。 一方、 ハワイ王朝側は 「太平 洋諸島連合」 を構想しており、 アメリカ政府とハワイ王朝、 両者の緊張感は高まります。 そのような情勢の中、 1887 年に砂糖の 市場価格が急下落して、 ハワイは財政難に苦しみます。 米布互恵条約を締結し、 アメリカ船舶の真珠湾独占使用権を認める代 わりに、 アメリカ側の完全非関税待遇を得ます。 また、 同年、 王権の弱体化をはかる 「1887 憲法」、 別名ベイオネット憲法 (武 力による強制憲法) も制定され、 アメリカ系白人の政治的影響力は拡大をたどります。 (中嶋 1993)。 ハワイ人系グループもこの ような状況を変革させようと政治的な活動を行いますが、 1891 年にカラカウア大王は世を去ります。 1-2. リリウオカラニ女王 (在位 1891-1893)  カラカウア大王の死後、 妹のリリウオカラニ女王が即位します。 女王の王政は、 それまでに残されてい た財政赤字と、 緊迫するハワイ人の権利回復運動など、 課題が山積していました。 上述したベイオネット 憲法により、 王権が弱体化する一方で、 アメリカ系白人の政治的権力が強化したために、 内閣を組閣す るにも多くの苦労を要しました。 組閣後に新法律の制定や新憲法の発布を試みますが、 いずれも白人勢 力に阻まれます。 1893 年には白人による暫定政府がひかれ、 女王に退位を迫ります。 女王は土地の人 間を守るために、 武力衝突を回避しようと、 「一時的」 に権限を放棄します。 暫定政府のもとで新憲法が 発布され、 ここでは、 政治的権力を一部の白人が掌握できる仕組みが構築されます。 同時に、 ハワイ 人やアジア人は政治的中枢にいたる道を絶たれます (中嶋 1993)。  翌 1894 年には 「共和国政府」 が樹立され、 ドール氏が共和国大統領に就きます。 多くのハワイ人が共和国に抗議と抵抗を示 し、 リリウオカラニ女王もアメリカ政府やイギリス政府に抗議を表明しますが、 同年中に諸外国によって 「ハワイ共和国」 が正式に 承認されます。 (中嶋 1993)  さらに翌 1895 年に一部のハワイ人が共和国崩壊を目的に武装蜂起を起こしますが、 事前に計画が察知され、 鎮圧されます。 首謀者として反逆罪に問われたリリウオカラニ女王は罰金判決を受け、 現在のホノルル市庁近くにあるイオラニ宮殿に幽閉生活を 余儀なくされます。 そこで、 共和国政府への忠誠を誓って、 一般市民として暮らすという誓約書に署名します。 これは、 事実上 の廃位を意味するのですが、このようにしてハワイ王朝は終焉を迎えました (中嶋 1993)。 その後、米西戦争、二度の世界大戦、 朝鮮戦争を経て、 1959 年にハワイ州はアメリカ合衆国 50 番目の州となります。  女王の悲劇的なエピソードと関連付けられる有名な曲があります。 皆さんの中にもお聞きになったことがある方も多いかも知れま せん。 「アロハオエ」 です。 1番とコーラス部分を以下に引用します。 Aloha ‘Oe (He Mele Aloha より) Ha‛aheo ka ua i nā pali Proudly swept the rain by the cliffs Ke nihi a‛ela i ka nahele As on it glided through the trees 写真③リリウオカラニ女王 (Stone,S-2003)

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E hanai ana paha i ka liko Still following ever the liko Pua ‛āhihi lehua o uka The ‛āhihi lehua of the vale (hui) (chorus) Aloha ‛oe, aloha ‛oe Farewell to thee, farewell to thee E ke onaona noho i ka lipo Thou charming one who dwells in shaded bowers A fond embrace a ho‛i a‛e au A fond embrace ‘ere I depart Until we meet again Until we meet again  もう一曲紹介したい曲があります。 ハワイ王朝がアメリカ政府に併合されることに反対を示したロイヤルハワイアンバンドのメンバー が作曲したものです。 タイトルにある 「Kaulana nā pua」 とは、 花 (pua) をこども (keiki) に例えて 「有名なハワイの子供たち」 を 意味します。 この曲は別名 「Mele ‛Ai Pōhaku」、 「石を食べる歌」 とも呼ばれて、 アメリカ政府が用意した書類に署名して併合さ れるくらいならば、 石を食べてでも生きていく道を選ぶ、 という強い意志が表現されています。 上述したビショップ博物館内でも、 この歌の一節が取り込まれたストーリーテリングの上演 (英語で約 30 分) がありますが、 演者の優れた技量もあり、 見る者に非 常に強い印象を与えます。 1番と 4 番を以下に引用します。

Kaulana Nā Pua (He Mele Aloha より)

Kaulana nā pua a‛o Hawai‛i Famous are the children of Hawai‛i Kūpa‛a ma hope o ka ‘āina Loyal to the land

Hiki mai ka ‛elele o ka loko ‛ino The evil hearted messenger comes Palapala ‛ānunu me ka pākaha With a document of extortion and greed

‛A‛ole mākou a‛e minamina We do not value

I ka pu‛u kālā o ke aupuni The heaps of money of the government Ua lawa mākou i ka pōhaku We have enough wit stones

I ka ‛ai kamaha‛o o ka ‘āina The remarkable food of the land

 本セクションではハワイ王朝の最後の統治者であるカラカウア大王とリリウオカラニ女王に焦点をあて、 ハワイ王朝がアメリカ政府 との緊張関係から併合されていく歴史について触れました。 また、 移民政策を中心として日本との関りについても、 サトウキビ産 業や言語面に関連付けて紹介しました。 今日、 アジア太平洋関係の中でも重要な役割を果たしているハワイの政治 ・ 経済 ・ 文 化的な役割について、 教員 ・ 学生ともに考えるヒントになっていればと思います。 2. ハワイ語保持の取り組み : Pūnana Leo とは  アメリカ合衆国ハワイ州は、 1978 年に州憲法で英語とハワイ語を公用語として制定しました。 全米で唯一英語以外の言語が公 用語として制定されている州です。 実際の生活においては、 多種多様な移民やその次 (次々) 世代が英語と第一言語を併用し ていたり、 Heritage language とよばれる移民第一 ・ 第二世代の言語は使用せず、 英語を主に使用して生活していることが大半か と思われます。  また、 州政府の方針として Ua Mau Ke Ea o Ka ‛Āina i ka Pono (Life of the land is preserved in the righteousness) という文言 が制定されています。 1970 年代にハワイアンルネッサンスと呼ばれる文化復興運動が盛んになりました。 特に言語面では Pūnana Leo、 直訳すると 「声の巣」 と呼ばれる幼児向けのハワイ語プログラムが 1984 年にカウアイ島の preschool で導入されました。 翌 1985 年にはハワイ島とオアフ島にも同様のプログラムがスタートして、 その後、 拡大していきます。

 私は 2011 年 2 月にハワイ大学マノア校 (オアフ島) で開催された International Conference on Language Documentation and Conservation という学会に参加しました。 その学会のプログラムの一部で、 ハワイ大学ヒロ校 (ハワイ島) の主催により、 同じハ ワイ島にある Nāwahīokalani ‘ōpu ‘u という幼稚園から高校までハワイ語のイマージョン教育を行っている学校を見学する機会を 得ました。 学校内での授業見学については、 以前のニュースレターで短く報告したとおりです。

 Nāwahīokalani ‘ōpu ‘u の ホ ー ム ペ ー ジ 内 で 「Ke Kula ‘O Nāwahīokalani ‘ōpu ‘u is designed for families, teachers and staff who have chosen to speak Hawaiian as the first and main language of the home, and also those who are in the process of

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establishing Hawaiian as the dominant language of the home. The goal is to develop, enhance and maintain the Hawaiian language through education in the home and school.」 と明言されているように、 教員 ・ 保護者 ・ 同校卒業生である大学生や大学院生が 一丸となって教育環境をサポートしていることがあらゆる活動から感じられました。 特に、 「言語の文化的背景も保持する」 という 側面について印象深かったことを 2 点紹介します。  1 点めは、 私たち見学者が学校へ入る前に、 玄関前にホスト側の教職員 ・ 学生と、 ゲストが対面形式で立ち、 「Ho okipa」 と いう儀式で迎えられたことです。 (写真④) まずはホスト側の代表が、 自分たちの 成り立ち、 学校の役割や意義などについてハワイ語で述べます。 次に、 ゲスト側 の代表としてハワイ語が堪能なボランティア学生が、 自分たち集団についての紹 介と訪問の目的について述べます。 (私たち見学者は小グループで行動し、 各 グループには通訳を兼ねるハワイ大の学生がついてくれています。) 両者の挨拶 が終わると、 学校側の代表者が一列になり、 私たちゲストを一人一人、 ティーリー フのレイで迎えてくれました。 見学者は 70 人程度いましたので、 一人ずつにハ グや握手をして、 レイで迎えるのには、 時間も手間もかかることです。 日ごろから 時間や効率を優先させて仕事に取り組むことに慣れきっている私たちには、 非常 に新鮮な体験でした。  2 点めは、 ハワイ語の教材作成とその蓄積に関してです。 学校内図書館での資料をそろえるにあたり、 当初ハワイ語で書かれ た本や絵本が少なかったので、 スタッフや保護者が英語の本の上にハワイ語でテキストを貼り付けていたそうです (写真⑤)。 大 変な時間と労力をかけて、 少しずつハワイ語での資料を作成し続けた結果、 充実した書物が揃うようになったそうです。 現在では 学校で使用するテキストのほかにも補助教材やポスター類も大量に揃っており、 ハワイ大学ヒロ校内の大きな資料室に蓄積されて います。 世界地図における東アジア地域で日本は 「Iāpana」 と表記されています (写真⑥)。   3. おわりに  本稿では、 2011 年に学会プログラムで学校見学をしたことを契機に、 現在検定教科書として使用されている New Crown と関連 付けてハワイ州の近現代史と 「ハワイ州における言語保持運動」 について紹介しました。 太平洋の中心に位置するハワイが独 自の王朝を築いていた頃からアメリカ合衆国ハワイ州へと併合される歴史的経過、 また日本もハワイと 19 世紀末から労働移民を 中心に密接な関係を持っていたことについても、 興味を持ち、 授業内容の理解を深めることに役立てていただけたらと思います。 最後に、 私たちの耳に最もなじみのあるフレーズ 「アロハ」 が何を意味しているのかを紹介して、 本稿を締めくくります。 南国の 陽気なイメージを表層的に意味するだけの単語ではなく、 生きていくうえでの知恵や哲学的な要素がこめられていることを感じ取っ てもらえれば、 と思います。 写真⑤ 写真⑥ 写真④ Ho okipa ( 著者撮影, 2011) ( 著者撮影, 2011) ( 著者撮影, 2011)

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ALOHA: love, affection, compassion, mercy, sympathy, pity, kindness, sentiment, grace, charity, greeting, salutation, regards, sweetheart, lover, loved one, beloved, loving (Pukui & Elbert, 1986) A: Akahai (Kindness, expressed with tenderness) L: Lōkahi (Unity, expressed with harmony) O: ‛Olu ‛olu (Agreeable, expressed with pleasantness) H: Ha‛ aha ‛a (Humility, expressed with modesty) A: Ahonui (Patience, expressed with perseverance) 参考文献 Pukui, M.K., and Elbert, S.H. (1986). Hawaiian Dictionary. University of Hawa‛ii Press. Stone, S. (2003). Yesterday in Hawa‛ii. Island Heritage. Wilcox, C., Hussey, K., Hollinger, V., and Nogelmeier, P. (2003). He Mele Aloha. ‛Oli ‛Oli Productions. 池澤夏樹 (2000) 『ハワイイ紀行』 新潮文庫 中嶋弓子 (1993) 『ハワイ ・ さまよえる楽園』 東京書籍 矢口裕人 (2002) 『ハワイの歴史と文化 悲劇と誇りのモザイクの中で』 中公新書 矢口裕人 (2011) 『ハワイ王国』 イカロス出版 参考ウェブサイト Nāwahīokalani‛ ōpu‛ u http://www.nawahi.org/

参照

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