JSL
漠字学習 研究会誌第3
号非 漢 字 圏
日
本 語 学 習者
に
お け る漢
字学
習
への
意識
一
フ ラン ス の大学
生を対 象
に一
柳
田
しのぶ 筑 波 大 学 大 学 院 生要 旨
非
漢字圏学習者
が学
習
の中
で どの よ うに漢字
を捉 えて い るのかを 明 らか にさせ るため に、 フ ラン ス 人の大学
生 を対象
とし て漢字学習
に対す
る意識調
査 を行
っ た。本調
査で は選 択 式の アンケー
ト と自
由 記述
式の ア ンケー
トを合
わせ て行
い、大学
1
年
生か ら4
年
生に 至 るまで120
名の情
報 を得
た。
その結
果か ら、学
年 を 問わず最
も学
習が難
しい のは漢字
の読
みで あ るこ と が 明 ら か に なっ た。
さ ら に 学 年 が 上 が るごとに 学習
が 難 しい と され る漢 字の特 徴 は、
単 漢 字 か ら漢 字 語彙
ま た は 漢 字の 意味
へ と変 動 してい た。
これ らは、
学 年 が 上 がる ごとに導
入 漢 字 や語彙
がよ り複雑
になっ たこ と、
また学習漢
字 が増
加 したこと に よ る記憶保
持 が問
題になっ て い る と考
え られ る。 さ ら に、学
習 時 に使 用し てい る漢字
の 特 徴 につ い て は、
既に知っ て い る日本 語の語彙
を 関連
付 け る傾
向が見 られ た。
キー
ワー
ド非
漢字
圏・漢字学習 ・学習
法・
学習
ス トラ テ ジー
1.
は じ め に 日本 語 を 習 得 す るた めに は、
漢 字 は 避 けては 通 れ ない学 習 項 目である。
上 級 レベ ル まで に2000 字
近 くの漢字
の字 形、
さ ら に は お よそ4000
に も な る漢 字の読 み を 覚 えるだ け な く、
個々 の読
みか ら運 用まで習 得 す るこ とは、
特 に 漢 字の知 識 を持 た ない非 漢 字 圏の学習
者に とっ て 大 変 な 負 荷 と なっ ている。 近 年、
非 漢 字 圏 学習
者 を対象
とした 漢字学習
に関す
る研究
が され 始 めてい る が、
その多
くが英
語 を母語
とす
る学習者
を 対象
と して い る(
大北 1995 ・
中鉢
2006)
。学習
ス トラ テ ジー
の使用
は、学習者
の置かれて い る言 語 環境 、
取 得の度合 、学習
ス タ イル、
文 化 等で変化
すること が考
え られる ことか ら も、英
語圏
の学習者
だ けでな
く他
の地域
の学習
者 も 対 象にする ことは意義
の ある こと と考
える。
そ こで本
調 査 は、
フ ラン ス人の 日本 語学
習 者 を 対 象 とし て漢
字学習
に対す
る意識
調 査 を行っ た。
2
.
目的非漢字圏学習者
で あるフランス 人 の大学
生 が新規
の漢字
を学習す
る時
、漢字
の ど んな
特徴
を難 し い と感 じてい るの か、
また漢字
の ど んな 特徴
に注意
して い るの か、
どん な 学 習 法 を使 用 し てい るの か を明ら か に し てい くこ とで、
漢宇
学 習の指 導の提 案 を するこ と を 本調
査の 目 的 とした。調
査にあ たっ て、4
っ の研究
課 題 を 設定
した。
課 題 は 以 下の4
点で ある。・
漢字
に 対して難 しい と感 じ てい る点 ・ 学習
方 法・記憶時
、 再生時
に使
用して い る漢字
の特 徴・
漢 字 に 対 す る 意 識3
.
調 査本
調
査は調
査と し て選
択
式のアンケー
ト、
調 査と して 自 由 記 述 式の ア ン ケ
ー
トという
2
つ の 調 査で構成
されて い る。3.1.
で は学習者
の 背景
、3.
2
.
では 調 査の方
法 にっ いて述べ る。3
.
1
.
学 習 者の背 景調 査 を
依頼
したの は、 フ ランス の グル ノー
ブル に あ るスタンダー
ル・
グル ノー
ブル第
3
大
一8 一
Japanese as a Second Language Kanji Research Group
NII-Electronic Library Service Japanese as a Seoond Language Kan コl Researoh Group
JSL
漢字 学 習研究会 誌第3
号学
の 大 学 生であっ た。調
査協
力者
は経済学
/法律 学
と2
ヶ国
語 を専
攻
する大学
生であ り 、2
ヶ国
語 と し て は英
語と日本 語 を選 択 してい る学
生であっ た 。 日本
語の授業
は主に文 法・
演 習・
文 化で構 成 されてお り、1
コ マ120 分
の授業
を週3
回受
講し ている。 大 学1
年 次 にのみ、
こ れ ら に加 えて漢 字 と聴解
の 授業
が ある。
漢
字にっ い て はBasic
Kanji
Book
vo1.
1vol .2
を 使 用 し、
毎 週1
課の ペー
ス で漢
字 が導
入され てい る
。
大学 1
年 次は漢字
の 授 業 内で導 入 されるが、
2年 次
以降
は演 習
の授業
内で一
字
一
字導
入され る。
その場合、
漢 字にあて られる時間
は20
分
か ら30 分
であ る。
3
.
2
.
方 法調 査
は
2008 年 12
月に実施
した。 授 業 終 了 後 に 実 施 し、
回 答の得 られ た調
査紙
は漢 字圏
の留 学
生 を除
い て1
年 生45
名、2
年 生31
名、3
年 生25 名 、
4
年
生19
名
の合計
120
名
であっ た。
表1
は 調 査の質 問 と選 択 項目 である。 表
1
調 査選 択ア ンケ
ー
ト質問
項目質問
選 択 肢 1.
あなたの国の言 語で漢 字 を使 用し て いますか はい い いえ 2.
漢 字 を勉 強し て何年ですか 1 年 未 満 1 年 2年 3年 4年以上 3.
漢 字 学 習で難しいものを1位か ら5位 まで順位 を 付 け て く だ さい 字 形 読み 〔音 〆訓1) 意味 書 き順 漢 字 語彙 同 首 意義 そ の 他 4 漢 字を覚え る 時、
まず注 意 す る 漢字の特徴は 何です か 字 形 読み (音 /訓) 漢 字 語 彙 既知 語彙 そ の他 5.
あ なたの漢 字 学 習方 法 に最 も近い ものを 選 んでくだ さい 書 き順 意 味 グルー
プ 化 字 形 クルー
プ 化 読み グルー
プ 化 個 別 その他調査
は
2009
年6
月に実施
し た。
大 学3
年生 で優 秀 成 績 者、2
名 中 程 度の 成 績 者2
名 を 対象
と し、 自
由 記述
ア ンケー
トを 行っ た。
表2
は、
調 査2
の 自 由 記 述ア ン ケー
トの 質 問 項 目で ある。 これ らの項
目をフ ラン ス 語 に 翻 訳 し た もの を使 用 した。
ゆ え に 調 査協
力 者 は 母 語 にて 回答
して い る。 表2
調
査自 由
記
述アン ケー
ト質問項
目1 .漢字
は好 きですか5 .
学 習で問 題 に なっ て い るの は何ですか2 .漢字
の学習
は どうで すか6 .
質 問5
の 問 題の解
決 法は何ですか3 .
どの よ うに学 習 をし て い ま すか7 ,
漢字
を 書 く時 何 をヒ ン トに し て い ま すか4
.学習
で 工夫
し てい るとこ ろ は何
です
か4
.結果
調 査
の
結
果にっ い ては 学 年 全 体 と各 学 年 とに分 けて提 示 し、
その 両 方 か ら考 察 を 試 み る。 ま た研
究課
題に合 わせ て調
査及
び 調 査の 結
果
を 合 わせ て提
示す
る ことで結果
を明確
に し て い き たい。
4
.
1
.
漢 字 に 対 して難 しい と感
じて いる 点図
1
及 び 図2
は、
調 査の質 問
3
の結
果で あ る。
漢 字 学 習の 中で難 しい と思 う点 を選 択 肢 の 中で順位
づ けて も らっ た とこ ろ、
以 下の よ うな 結 果 が 得 られ た 。 グラフが左 高で あれ ば 難 しく感 じ てい る。右高
であ れ ば、
もっ と も難
しい と感 じ てい るもの よ り難しく感 じ てい ない と解
釈
で き る。
一9 一
N工工一
Eleotronlo LlbraryJSL
漢字 学習研究会 誌 第3
号 回 答 数 80706050403020100 (全 学 年:120
名)匸
乱
∬
、
臨
鬧
字形 読み 意 味 書き順 語 彙 同音 異義 図1
調 査漢字
に対 し て難
しく感
じ てい る点(
全 体 ) 回答 数 353e252015105o 〔1年 生:
45名 } 字形 読み 意 味 書き順 悟彙 同膏異義 回答 数 1年 12le8fi4ze (3年生:25名 ) 字形 読み 意 味 書 き11fi 語 彙 同 音 異義鬮
鏖
数 答 回 8642086420 〔2年生:31名〕 宇 形 読 み 意 味 書き順 語彙 同音異 羈 回答 数 12108642o (4年 生:
19名 ) 字 形 読 み 意味 唇き順 語 桑 同音異 義鬧
鬮
図2
調 査漢
字学習
に対し て難
しく感
じ てい る点(
学年
別)
学年
を 通 し て漢宇
の読
みが難
しい とい う点、
ま た 「書 き 順」 にっ いては 全 学 年で共 通の傾 向 が 見 られた が、 「宇
形」 「意
味」 「語彙
」 「同音意義
」 に おいて変動
が見 られた。学
年が 上 が るごと に これ らの項 目の難 易度
が 上位 に なっ て い くのは、
習 得 漢 字 数の増
加 に伴
う同 音 異 義 語、
語彙等
の整理 の難しさがア ンケー
トに 反 映 した もの と考 え られる.
次の表
3
及 び 表4
は 調 査の 結 果である。 表
中
のS1
・
S2
・S4 ・S5
(1)は調
査協
力者
を表す。
質
問 5・
6 も調査と同 様に漢
字
学 習に対 す る 困 難 な 点 を 質 問 項目としている。
表
3
調
査質
問5
・
漢 字 を学習す
る上で問題
となっ てい るの は何
です
か一
10
一
Japanese as a Second Language Kanji Research Group
NII-Electronic Library Service Japanese as a Seoond Language Kan ゴi Researoh Group
JSL
漢 字学習 研 究会誌第3
号表
4
調査質 問
6
:質 問5
の問 題の解 決 法 は 何ですか自由
記述
の結果
か らも
、漢
字の読
みが難
しい という
傾
向
が見 られ た。 こ の読
みに関
する問
題へ の対策
として は 「文 を書
く」 「何度
も書
く」 「読
み方
を書
く」等学習者
の 工夫
が見られた 。4
人 とい う少 人 数のた め 学 習 者の傾 向 としては 見 られ ない が、
問 題に対して何 らかの対策
を し てい るとい うこ とは分かっ た。
以 上の結
果
を踏
ま えて、漢
字に対 し て難
しい と感じ てい る点 を ま と めると 学 年 を 通して漢字
の読
み が難
しい、
単 漢 字 よりも漢 字の 語 彙 を 難 しい と感 じ てい る、
学 年が 上 が るにつ れて 漢字
語彙 、意
味、
同音意 義
を難
し く感 じ てい る という
こ とが 言 えそ うで ある。
4
.
2
.学習方法
表
5
は、
調 査、表 6
及び表
7
は調
査の
学習
方法
に関す
る質
問 項 目の結 果 を 示 す、
表5
調
査質
問5
:漢 字 を どのよ うに 学 習 して い ま すか書
き 順意
味 グルー
プ化字
形 グルー
プ化読
み グルー
プ 化 個 別 その 他 全 体 :120
名8
(6
%)16
(11.8
%)16
(11.8
%)
4
(
2.9
%)
肖
广
肖
…哂
鄲
轟14
(10
.
4
%)1 年
生 :45
名6 (11.3
%)
5 (
9.4
%)
6 (11.
3%) 1 (1.
8%)il
鑛
…難鑢韈
艨
4
(7.5
%) 2年
生 :31
名1
(3.1
%)7
(21.9
%)3
(9.4
%)0 (
0
%)
…i
灘
囀鑞
囎鑿
3
(9.4
%)3 年
生 :25
名
1
(3.6
%)3
(10.7
%)4
(14.3
%)2 (
7,1
%)
5
(17,9
%)
4 年
生 :19 名
0
(0
%)1
(4.5
%)3
(13.6
%)1
(4.5
%)霾
鐵麟
織
覊
義
2 (9
%)
表6
調 査質 問
3
:どうやっ て漢字
の勉強
をし てい ま すか 表7
調 査質問 4
:漢字
の学習
で 工 夫し て い る ところ は何ですかSl
S2
S4
S5
部 首 別、
意 味別 (同義語・
反義語)に漢 字 をグルー
プ分け しま す。 そ れから、
これ らの グルー
プ に当ては ま る 既 習の 漢字はない かを探しま す。
日本語 を書く機 会 が あ れば、
必ず鱸
よ うに し てい ま す。
これ が漢 字 を覚え るの に役立っ て います。 私 は 十年前からアマ チュ ア の翻 訳 グルー
プ に 入っ てい ま す。
で も、
今は もっ とたくさん 日本 語の 文 を 訳 すこ とが出来 ま す。 そ のお陰で 日本 語の文 を た くさん読み、
新しい語 彙を た く さ ん 知るこ とが出 来ました。
翻 訳は 本 当 に 役 に 立 ち ま す。
覚え に くい漢 字とい うの は あ り ま す か ら、
そ うい う漢 字は新しい課に入る前にも う一
度嬲
鑞
練 習しま洗 書き順を覚えるまで ま す。
そし て そ の横に読み方 と意 味 を 書 き ま す。
一
11
一
N工工一
Eleotronio LibraryJSL
漢字 学 習 研究会 誌 第3
号学年
を 通し て個 別 に漢 字 を 学習
し てい る傾 向 が 見 られ、
学習
方 法 とし て は何 度 も書 く、
何 度 も 読 む とい う繰 り返 す 学 習 方 法 を使 用して い る傾
向が見 られ た。
一
つ一
つ覚
えるとい う学
習
方 法は 「授業
で導
入 され た漢
字 を1
頂
に覚
える 」 と解 釈
さ れ た 可 能 性 も あ り、
比較
的 受 動 的 な学習法
と捉
える ことがで き るが、 自
由記
述で は書 く学習
と読
む学習
を連
結 させ るよう
な 学 習 法 も 見 られ た。
学 習者
は字
形、
読 みの よ うに 独立 させて学
習 す るのでは な く、漢字
を総合
的 に 捉え学 習 して い るよ うで あ る。
4
,
3,
記憶
する時
、 再 生す
る時
に使
用 し て いる漢字
の特徴
次
に、漢宇
の再 生、 再 認時
に 注意
し てい る漢字
の特徴
につ いて見てい く。表 8
は調 査、
表 9
は調 査の
結
果 を 示 す。 表8
調
査質
問4
;漢 字 を学習す
る際
、 ま ず 注意す
る漢 字の特徴
は何です
か字
形読
み (音
) 読 み (訓 )漢 字
語彙
既 知 語彙
その他 全体
:120
名 影鑼 麓嬲37
(12.3
%)37
(12.3
%)43
(14.3
%).
配
14
(5
%)1
年
生 ;45
名 毳一
靉F…
12
(11
%)13
(11.9
%)17
(15.6
%)” W
購…
5
(5
%)耐
2
年生 :31 名
擁 議靈 難.
8
(11
%)8
(11
%) エ1
(15
%) 魏配
2
(3
%)3
年生 :25
名肖
匸
壌,
嬲一
蝉7
(11
%)7
(11
%)10
(15
%)”
鑼3 (5
%)4
年生 :19 名
嬲『
5顎
纓胛 10 (189
%)
9 (17
%)
5 (
9%)
囎難
4 (
8%)
唇
表9
調 査 質 閥7
:漢 字 を 書 く時、
何 をヒ ン トに し てい ます
か漢字
を記 憶 する時の きっ かけ とし て は 「字形
」 と 「既知
の語彙
」使
用 して い る傾
向が全
学 年か ら見
られた。 既知
の語彙
と は、
日本 語 と し て既 に 知っ てい る 語 彙 とい う意 味である。
学習
者は、 知っ てい る 日本 語の語彙
か ら意味
を推
測 し、字
形 を 注 意 しな が ら学習
を進め てい る よう
である。
ま た、漢字
を 書 く時のきっ か け と しては 部 首 を 使 用し てい るよ うである。
4
.
4
.漢字
に対 す る 意 識最
後に調査の 漢 字に対しての
意
識に関 する結
果 を表10
及び表11
に 示 す。
表10
調 査質
問1
:漢
字は好
きです
かS1
はい、
と て も 好 きです。
S2
私 は漢 宇が好きですが、
漢 字は私がきらいです。
S4
はい、
好 きです。S5
漢 字は ま あ ま あ 好 きです。 漢 字を知っ てい れば便 利だ と思い ま す。
で も すべ ての漢 字 を 覚えるの は難しい です。
表11
調
査質問 2
:漢字
の勉強
は ど うですかS1
難しい で すが、 とて も面 白い です。S2
私 は 目本 人 と 同 じ ように 日本人 と 同じやり方で漢 字を学ぶの がい い と思っ てい ます。
S4
漢字の学習は、
かなり大 変で す。 時間 と根気 が 必要です。 でもとても面 白い ですし 漢 字 仮 名 交じりのテ キス トを 読 め る よ うに な るのは嬉 しい ことです。
一12 一
Japanese as a Second Language Kanji Research Group
NII-Electronic Library Service Japanese as a Seoond Language Kan ゴi Researoh Group
JSL
漢字 学 習 研究会 誌 第3
号S5Basic
Kanji
Book
とい う漢 字の本で勉 強 す るのは 楽 しかっ たです。 こ の本は、
漢 字の書き 方 や漢字の 意 味を分か りやすく説明し て く れ ます
。
ま た授 業で1
週間に1
課の漢 字を使っ て文 を作る 練 習は、
漢字を 使 う よい機 会 だ と 思い ま す。
4
名
という
少 人数
で はあっ た が、漢
字 や漢
字学習
に対
し て は前
向 き な意
見 が 見 られ た 。成
績優秀
の学習
者と中程
度の学習
者で記 述に違い は見 られず
、学習
者は前向
き に漢字学習
に臨
んで い る様
子が見 られた。
5
.
ま と め学年
に関係
な く漢 字の読 みの 学習
が 難 しい とい う結
果 が 得 られ た。 ま た 学 年 が 上 がる ごと に、単漢字
か ら漢字語彙
、漢字
の意
味、 同音意 義
の漢
字 も難
し い と感
じ る傾向
が見
られ た。 これ は学習漢字
が増
えたこ と に よ る記憶保持
の問
題に起
因す
るもの と考
えられる。
さ ら に
漢字
を学
習 す る 際、学
習者
は何度
も書
くこ と、
既 知の 日本
語の語彙
を 関連
付 けて い るこ とが分かっ た。漢 字
の運 用の観点
か ら見 た 場合 、字
形や部首
の よ うな漢字
の 「形
」 は漢
字 を 再 認、
再 生 す る 際のきっ か け に なっ ているこ と が分かっ た。 漢 字の読み にっ い ては、
文 脈 内で使 用 す る、
送 り仮 名 と共 に 提 示 す る な ど、
学 習の初 期の 段階
か ら教
示 の配
慮 が必要 と 思 わ れる。
これ らは、
学 年 が 上 がる につ れて問 題になっ て く る漢
字の記憶
保 持の た めにも 有 効であ ろ う。
6
.今後
の課題
今
回の調
査は、
フ ラン ス の 大 学 生の 漢 字 学習
の 実 態 にっ いて質 問 紙 を使 用 して明 らかに す る とい う もの であ
っ た が、質問項
目は ごく
大 まかなも
の であ り、漢
字学習
の詳
細 まで は明 ら か にする こ と が出来
なかっ た。質問項
目の詳
細化
の必 要 が ある。SILK
(2)の よ うな既存
の調 査 法の採
用 も検 討 し たい。
さら に自由記述
に 至っ て は4
名
と少人数
であ り、学習傾
向の一
般化
は 難 しい。
よ り多
くの学
習者
へ の横
断的
調 査、
ま た学 習
者の縦
断 的 な調
査 を行 うことで漢 字習
得 を 観 察 して い くことも今
後の調 査の課 題 と し たい。
注 1)S1・
S2は成績優 秀の学 習 者、
S3 ・S4
は成績 中程 度の学 習 者であっ た。
2)
Strategy
imverrtory for Learning Kanjiの略で B.
Bourke氏 に よっ て 開 発され た漢 字 学 習ス トラ テ ジー
に関 する調 査 法で ある。
参考 文 献 1) 大 北葉子 (1995)「漢 字 学習ス トラテ ジー
と学生の漢 字 学 習に対 する信 念」『世 界の 日本 語 教育』5, pp.
105−
124.
2) 加納千恵子 (1997)「非 漢 字 圏 学 習 者の 漢 字 力 と習 得 過 程1 『日本 語 教育論 文集 小 出 詞 子先生退職記念 』 pp.
257−
268,
凡 人社 3) 中鉢 惠一
(2006)「漢 字 学 習ス トラ テ ジー一
漢 字学 習 成功 者 と未 成 功 者の違い につ いて一
」『東洋 大学人 間科 学 総 合 研 究 所 紀要』5,
pp.
75−
93.
4)B