認知症の理解と
認知症高齢者への関わり方
2014年2月1日(土) 製鉄記念広畑病院 老人看護専門看護師 森山 祐美 第7回 製鉄記念広畑病院市民公開講座認知症とは・・・
何らかの原因によって、
大脳の神経細胞が広範囲に障害され、 本来あった認知機能が著しく低下
生理的加齢によるもの忘れ と
病気からくるもの忘れとの違い
自覚していないことが多い 自覚している 生理的加齢によるもの忘れ 病気からくるもの忘れ 記憶の一部が思い出せない (ヒントがあれば思い出す) 記憶の全部が思い出せない (ヒントがあっても思い出せない) あまり進行しない 徐々に進行する 時間・場所・人は分かる 時間・場所・人が分からなくなる 生活に支障は出にくい 生活に支障が出てくる“家族が作った”
認知症、早期発見のめやす
*もの忘れがひどい 今切ったばかりなのに電話の相手の名前を忘れる 同じことを何度も言う・問う・する しまい忘れ置き忘れが増えいつも探し物をしている 財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う *判断・理解力が衰える 料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった 新しいことが覚えられない 話しのつじつまが合わない テレビ番組の内容が理解できなくなった *場所・時間が分からない 約束の日時や場所を間違えるようになった 慣れた道でも迷うことがある 公益社団法人「認知症の人と家族の会」作成“家族が作った”
認知症、早期発見のめやす
*人柄が変わる 些細なことで怒りっぽくなった 周りへの気遣いがなくなり頑固になった 自分の失敗を人のせいにする 「この頃様子がおかしい」と周囲から言われた *不安感が強い ひとりになると怖がったり寂しがったりする 外出時持ち物を何度も確かめる 「頭が変になった」と本人が訴える *意欲がなくなる 下着を替えず身だしなみをかまわなくなった 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった ふさぎこんで何をするのも億劫がりいやがる 公益社団法人「認知症の人と家族の会」作成「認知症」の診断基準
記憶障害 実行機能障害・失行・失認・失語(いずれか1つ) 実行機能障害:計画を立てたり、順序立てるなど、物事を具体 的に進めていく能力が損なわれる 失行:運動機能が損なわれていないのに、動作を行うことがで きなくなる 失認:視知覚機能が損なわれていないにも関わらず、対象物 などを理解したり把握することができなくなる 失語:発語や言葉の理解の障害 上記のため社会生活に支障をきたす 上記の状態が主に脳の変化によって起こっている 意識障害はない認知症には原因となる病気
が存在します
1.アルツハイマー型の認知症 2.レビー小体型の認知症 3.脳梗塞、脳出血による脳血管性の認知症 4.脳挫傷、慢性硬膜下血腫 5.脱水、ビタミンB12欠乏症 6.甲状腺機能低下症 7.アルコール中毒、薬物中毒 8.正常圧水頭症 などなどなど・・・認知症の診断のための検査
画像診断(CT、MRI、SPECT、PET) 血液検査(一般、ホルモン、ビタミン、感染症) 認知機能検査 行動評価尺度 神経心理検査 などなど・・・アルツハイマー型認知症
記憶障害を中心とする進行性の病気 認知症の50~60%を占める 原因は十分解明されているわけではないが、 「βアミロイドたんぱく」が脳に蓄積し、神経細胞が死ん でしまうことで起こるとされている 神経細胞が死んでしまうことで、脳がどんどん萎縮して いくアルツハイマー型認知症の症状
物忘れ 日にちや時間、場所、人が分からなくなっていく 精神症状 物とられ妄想、幻覚 など 言葉が思い出せなくなっていくレビー小体型認知症
認知症の中で10数%~20%を占める 日本人が明らかにした病気 中枢神経を中心にレビー小体が出現することで起こる 認知症 65歳以上の高齢者に多くみられるが、パーキンソン症 状によって発症する例では、40~50歳代も少なくないもしかしてレビー小体型認知症!?
*5個以上該当すればレビー小体型認知症の可能性あり もの忘れがある 頭がはっきりしているときと、そうでないときの差が激しい 実際にはないものが見える 妄想がみられる うつ的である 動作が緩慢になった 筋肉がこわばる 小股で歩く 睡眠時に異常な行動をとる 転倒や失神を繰り返す 小阪憲司「レビー小体が型認知症」 メディカ出版,2009,p29脳血管性認知症
脳血管障害によって起こり、認知症の中の15%を占め ると言われる 原因は、高血圧や糖尿病など 脳血管障害の発症から2週間~1ヶ月過ぎた後で出 現 脳血管障害の再発を繰り返すことで、認知症が段階 的に悪化することも少なくない 「まだら認知症」・・・知的機能の一部は保たれているこ とも多い アルツハイマー型認知症との合併例も多い脳血管性認知症の進行例
三宅貫夫「認知症全部図解」 メディカ出版,2011,p32
脳血管性認知症の症状
物事を計画立てたり、関連付けたり、順序立てたりすることが できにくくなる・・・的確に、要領よくできなくなる 集中力が切れやすい 思考の切り替えがうまくいかない 物事に対する興味が薄くなり、自発性と意欲が低下する 場違いの場面で起こったり笑ったりする どんな刺激を受けても、同じ反応が出てしまう 病変を特定できる症状、例えば、片麻痺、失語症、などがある 飲み込みにくさ、うまく発声できないこともある認知症の治療について
4.脳挫傷、慢性硬膜下血腫 脳外科的手術など 5.脱水、ビタミンB12欠乏症 水分補充、ビタミン剤投与 6.甲状腺機能低下症 甲状腺ホルモン剤投与 7.アルコール中毒、薬物中毒 点滴投与、解毒剤使用、アルコール禁止 8.正常圧水頭症 頭に溜まった髄液を流す処置3.脳梗塞、脳出血による脳血管性の認知症 ① 再梗塞を防ぐ、再出血を防ぐ →血圧をコントロールする (降圧剤の内服、運動・食事・休息など生活の整え) ② 血流の改善をはかる →動脈硬化に対する薬の投与 ※病前のレベルに回復することは、困難
認知症の治療について
1.アルツハイマー型認知症 2.レビー小体型の認知症 現在日本で使用されているのは、治す薬ではなく 進行をゆるやかにする薬です。 アリセプト® (3mg~10mg)
認知症の治療について
副作用
食欲不振
悪心
下痢
腹痛
まれに対応が難しい症状の出現や悪化
不整脈がある場合は慎重投与
現在承認されている
アルツハイマー型認知症に関する治療薬
アリセプトと働きはおおむね 同じだが、貼り薬である 中等度 イクセロンパッチ® (リバスチグミン) カルシウムイオンの神経細胞 への流入を防ぎ、神経細胞を 守る 中等度以上 メマリー ® (メマンチン) 上記の働きに加え、神経伝達 物質の放出量を増やす 軽度~中等度 レミニール® (ガランタミン) 神経間の伝達を阻害する酵 素の働きを妨害する 軽度~中等度 アリセプト® (塩酸ドネペジル) 働き 対象 田中元「認知症ケアができる人材の育て方」ぱる出版,2011,p51対応が難しい症状について
何が問題となっていますか?
何故起こっていますか?
どのような状況で起こっていますか?
何が引き金となっていますか?
記憶障害・
見当識障害
(人や場所、日時が分からない) 大切なことをメモし、目のつく場所に貼る ものを片付ける場所を定める 話をはじめてのように聞く 安心できる人との関わりを多くする ***してはいけないこと*** 否定・訂正・叱る・責める・無視失語・言語障害
簡潔な声かけをする 筆談を交えながら会話する 馴染みのある話題を出す 話したい内容を察する ***してはいけないこと*** 早口・話題をころころ変える・急かす 会話をおろそかにする実行機能障害
(一人で入浴や着替えが出来ない)
どこまで一人で出来て、何処からが一人でで きないかを観察する 混乱しないよう手伝う ***してはいけないこと*** 叱る・責める・指示・全面介助 乱暴に手を出す幻覚
見えている物に合わせる 恐怖心を抱いていたら、環境や話題を変え るなどして不安の軽減に努める ***してはいけないこと*** 否定・叱る妄想(もの盗られ妄想)
ものを片付ける場所を定める 「ものがない!」と探している時は、自分で見つけら れるよう配慮する ***してはいけないこと*** 見つけてあげる・叱る・無視興奮と攻撃性
安全の確保をする 別の人が対応する 他に気を散らす つかず離れずの位置で見守る 興奮の原因を明らかにする ***してはいけないこと*** 逆らう・無視・制止・抑制徘徊・荷造り行動
一緒に散歩する 気が済むまで荷造りを見守る 緊急用に名前や住所の分かるものを持っ てもらう ***してはいけないこと*** 制止・叱る・逆らう今までお話しした症状が急激に
悪化して出てきたら・・・
体調を崩しておられるのかもしれません 便秘? 下痢? 脱水? 食欲低下? 不眠? ・・・ 気がかりなことや心配なことがあるのかもしれません認知症の人ってどんな人?
大脳の神経細胞が広範囲に障害されたこと
により、
通常の日常生活をおくることに「不自由さ」や
認知症の治療について
日常生活上の「不自由さ」や 「不確かさ」に対
して、可能な治療とは?
↓
★「認知症の人」を治す(変える)の?
★「認知症の人」を取り巻く環境
(人を含む)を変えていくの?
認知症看護/介護の迷路
記憶力の低下 生活動作の失敗 怒り 焦り 不安 自信喪失 何もしなくなる 何もできなくなる 何もしたくなくなる 言い訳をする 相手を責める 「注意する」 「指摘する」 「説明する」 「元に戻そうとする」 「問い正す」 「理由を尋ねる」 「期待しなくなる」 「あきらめる」認知症の人が感じていること
「どんなに頑張って努力しても、物事や言葉は意識 からすぐに消えていく。私のザルのような頭はどんど ん漏らしてしまう。」 「暗闇の中にいて、動くことも何もできなくなったよう な感じがする。」 「私は自分自身を失ってしまうのだろうか?」 「人として崩壊してしまうのだろうか ?」 「認知症の人にとって一番つらいのは、自分が消え ていく、自分が自分としてなくなっていく恐怖です。」 Christine Bryden★断片的な思い出を紡ぎ、新たな思い出を作る 記憶力の低下から、「出来事」を覚えておくことは 困難です。しかし、「楽しい」「うれしい」という
“快感情”は積み重なることで残っていきます。
認知症看護/介護の「いい循環」
記憶力の低下 生活動作の失敗 自信を回復 精神的に安定 何かをしたくなる 何かをしようとする 何かができる 楽しみができる 相手を信頼する 「物忘れの 程度を知る」 「“できる”よう に生活環境を 変える」 「一緒に何かしよう」 「一緒に過ごそう」 「“認知症”の その人を理解 する」 「できる面を見つけられる」 「期待を持てる」出口が見えない“介護”
家族の今までの歴史が影響し、感情的になりやすい しがらみや周りの目、義務感もある 認知症に関する知識不足 頼れる人がいない 介護サービスを受けることに関する抵抗感 主介護家族は身体面より精神面の健康関連QOLが 損なわれている (杉山智子,他:身体合併症を持つ認知症患者の介護家族の負担感の変化,認知症ケア学会 誌,9(2),2010) などなど・・・一緒に作っていく介護
認知症の介護はストレスフル 認知症の介護は先が見えない →大切なことは 1)介護を一人で抱え込まない 2)完璧な介護にこだわらない 3)介護する人が“健やか”であること 4)介護する認知症の人と一緒に生活を作る認知症の相談は・・・
病院の「もの忘れ外来」 精神科 心療内科 脳外科 神経内科 老年病科 などなど・・・ *かかりつけのお医者さんから専門医を紹介してもらうの も良い方法です。認知症の診断を受けることのメリット
治療可能な認知症やその他の病気などとの鑑別 ができ、すぐに治療を開始することができる お年寄りの変化が認知症という病気からくるものだ と分かると、気持ちの向け方や関わり方が変わっ てくる 認知症の種類が分かると、今後の経過の予測が つけられる 介護の方法がみえてくる様々なサポート
公益社団法人・認知症の人と家族の会 *家族の集い、電話相談、会報 が3本柱 *要望活動、調査活動、啓発活動、国際交流なども *兵庫県支部(神戸市) レビー小体型認知症家族を支える会もいくつか 若年認知症サポートの会もいくつか 認知症関連のwebサイトも(認知症ケア学会、日本老年 精神医学会、認知症ラボ・・・) 虐待に関する相談 姫路市福祉総務課・介護保険課、各地域包括支援セン ター、警察など 認知症サポーター100万人キャラバン *認知症に対する正しい知識を持ち、地域や職場で認 知症の人やその家族を支援する人材を増やしています *姫路市でもサポーターやキャラバンメイトを養成中 認知症地域見守り訪問員 *認知症サポーターの中で追加研修(実習含む4日)を 受講した人が行なう *認知症高齢者の話し相手、見守り等を行なう *利用者の負担金は、最初の1時間までは600円。 その後30分につき300円。