Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
2.5
ガウス
(Gauss)
の法則
2.5.1ベクトル場の面積分と流束
(flux) 各点での速度がv
(r)
(
ベクトル場)
で与えられるような流体を考 える. 小さな面∆S
を考え,その法線方向の単位ベクトルをn
とする. 単位時間に∆S
を通って流れる流体の量は,v
n をv
のn
方向成分 として,v
n∆S = v · n ∆S = v · ∆S,
n
∆S ≡ ∆S.
(1) となる.n
v
∆
S
n
v
∆
S
電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 1/30一般の面
S
について,単位時間にS
を通って流れる流体の量は,S
を多数の小さな面∆S
i に分割して考えれば,lim
∆Si→0X
iv
(r
i) · ∆S
i=
Z
Sv
(r) · dS.
(2) これをS
を通る流束(flux)
と言う. S ∆SMinoru TANAKA (Osaka Univ.) 2.5.2
ガウスの法則
(積分形
)•
流束の考え方を電場にも当てはめてみる.(
実際には何も流れていないけれども.)
•
正の点電荷q
が1
個ある場合.S
S
E
Er
r
1 1 2 2 2 1q
図のような半径r
1 とr
2 の球 面の一部で挟まれた領域の 表面S
(
閉曲面)
を考える.S = S
1+ S
2+
側面 (3) 側面を通る電場は明らかにゼロ.Z
SE
(r) · dS =
Z
S1E
(r) · dS +
Z
S2E
(r) · dS
(4) 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 3/30閉曲面の場合,法線ベクトルは外向きにとる.
Z
S1E
(r) · dS = −
q
4πε
01
r
12Z
S1dS
(5)Z
S2E
(r) · dS =
q
4πε
01
r
22Z
S2dS
(6)R
S1dS
R
S2dS
=
r
2 1r
22 (7) ゆえ,−
Z
S1E
(r) · dS =
Z
S2E
(r) · dS
(8) すなわち,Z
E
(r) · dS = 0
(9)Minoru TANAKA (Osaka Univ.) 次に,中心部分の角度が小さいとして,
S
1,S
2 が動径について“
傾いて”
いる場合を考えよう.S
S
E
r
r
1 1 2 2q
n
θ∆
∆
∆S
i の面積は傾いていないと きの1/ cos θ
倍になる.∆S
i は小さいからE
の値はその 上で一定とみなせ,E
の法線 成分はE
n= E·n = E cos θ
. よって,− E · ∆S
1= E · ∆S
2 (10) 式(9)
が成り立つ. 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 5/30内部に電荷
q
を含まないような一般の閉曲面S
についても, 図のような小錐体の集まりを考えれば, 下面と上面で流束は打ち消し合う. S qZ
SE
(r) · dS = 0,
S
はq
を含まない閉曲面. (11)Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
S
がq
をその内部に含む 場合,明らかにS
1 とS
2 の寄与は打ち消さない. q S S E E 1 1 2 2 そこで,q
を囲む小さな 面S
′ を考え,S
の内部 からS
′ の内部を取り除 く. S S’ q n n n S i e 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 7/30この
S
とS
′ に挟まれた領域については,(
q
を含まないから)
Z
S+S′E
· dS = 0,
(12) が成り立つ.(
このとき,S
′ の法線ベクトルは内向きのn
i.)
S
′ の法線ベクトルを外向きのn
e にとることにすれば,Z
SE
· dS =
Z
S′E
· dS.
(13)(
すなわち,S
を通る流束はS
′ を通る流束に等しい.)
S
′ の形は任意だから,半径r
の球面を考えることにすると,Z
S′E
· dS =
1
4πε
0q
r
24πr
2=
q
ε
0(= N ⇐
電気力線の本数).
(14)(
うまく,r
に依らない数になっている.)
Minoru TANAKA (Osaka Univ.) 式
(13)
より,Z
SE
· dS =
q
ε
0,
S
はq
を含む閉曲面.
(15) まとめると,Z
SE
· dS =
0,
q
がS
の外部にあるときq/ε
0,
q
がS
の内部にあるとき (16)(
S
は任意の閉曲面.)
電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 9/30•
点電荷が複数あるとき.E
=
X
iE
i (17) から,Z
SE
· dS =
X
iZ
SE
i· dS =
X
i∈ 内部q
iε
0=
Q
int.ε
0,
(18)Q
int.≡
X
i∈ 内部q
i= S
の内部にある電荷の和.
Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
•
連続的な電荷分布の場合.(
和を積分に置き換えればよい.)
Z
SE
· dS =
Q
int.ε
0,
Q
int.≡
Z
Vρ(r) dV
(19) ただし,V
はS
の内部の領域.•
まとめ 積分形のガウスの法則Z
SE
(r) · dS =
Q
int.ε
0Q
int.≡ S
の内部の電荷 (20)1/r
2 則の帰結 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 11/30•
例1:
一様な球状電荷分布 原点O
を中心とする半径a
の球の内部に電荷が一様に 分布しているとする.全電荷 をQ
,r ≤ a
での電荷(
体積)
密度をρ
とすると,Q =
4π
3
a
3ρ .
(21) 中心O
,半径r(> a)
の球面 をS
としてガウスの法則を 適用すると,r
a
O
Z
SE
(r) · dS =
Q
ε
0 (22)Minoru TANAKA (Osaka Univ.) 対称性から,
E
(r)
は動径方向を向き,S
上では一定の大きさE(r)
を持つから,Z
SE
(r) · dS = E(r)
Z
SdS = 4πr
2E(r)
(23) よって,E(r) =
Q
4πε
01
r
2,
r > a .
(24)(
中心に点電荷Q
があるときと同じ.)
r < a
のときは,ガウスの法則は,Z
SE
(r) · dS =
1
ε
04
3
πr
3ρ .
(25) 左辺は上と同じで, 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 13/30Z
SE
(r) · dS = 4πr
2E(r) .
(26) よって,E(r) =
ρ
3ε
0r =
1
4πε
0Q
a
3r .
(27) まとめると,E(r) =
Q
4πε
0r
a
3,
r < a
Q
4πε
01
r
2,
r > a
(28) EHrLMinoru TANAKA (Osaka Univ.)
•
半径a
のうすいい球殻上に一様 に分布した電荷の場合は,E(r) =
,
r < a
,
r > a
となる.(
全電荷Q
.)
a
Q
電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 15/30•
例2:
一様な直線状電荷分布(cf. §§ 2. 3. 3
例2)
電荷の線密度をλ
とし,直線電荷を中心と する半径R
,長さL
の円柱の表面S
を考 える.E
(r)
は中心軸に垂直で,軸対称性 より,中心軸からの距離R
のみの関数のは ず.ガウスの法則より,Z
SE
(r) · dS =
λL
ε
0,
(29) 左辺= E(R)
Z
S の側面dS = 2πRLE(R) .
よって,E(R) =
λ
2πε
01
R
.
(30)(§§ 2. 3. 3
例2
と同じ結果)
.L
R
S
E(R)
Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
•
例3:
一様な平面状電荷分布 無限に広い一様な平面電荷分布(
電 荷の面密度σ
)
を考える.電場は面に 垂直で面の上下で反対向き.また, 面上の位置に依らない.面を垂直に 貫く円柱(
底面積A
)
を考え,その 表面S
についてガウスの法則を用 いると,E
E
A
Z
SE
(r) · dS =
Aσ
ε
0.
(31) 側面は積分に寄与しないから,底面での電場の大きさをE
とす れば,E A(
上面) + E A(
下面) =
Aσ
ε
0.
(32) 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 17/30よって,
E =
σ
2ε
0.
(33)
Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
•
静電場内での釣り合い 静電場内でクーロン力が釣り合う点P
0 を考え る.このような点が安定がどうか,すなわち, この点に正の試験電荷(test charge
,静電場を 変えないような仮想的な点電荷)
を置き,すこ し位置をずらしたときに復元力が働くかどうか, を考える.P
0 を囲む仮想的な小さな面S
を考え ると, もしP
0 が安定な釣り合い点ならば,S
上では常にP
0 方向(
内向き)
の電場E
があるは ず.このとき,Z
SE
· dS < 0 .
(34) つまり,ガウスの法則よりS
内には負の電荷が なければならない.S
を無限小にとると,P
0 に 負の電荷がなければならない.従って, 電荷のない場所では安定な釣り合い点はない.-q
-q
-q
P
0
P
0E
S
電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 19/30E
= −∇φ
であったから,安定な釣り合い の点P
0 では,E
= −∇φ = 0
で,φ
は極小 値または極大値をとる. あるいは,φ(P ) = −
R
PP 0E
· dr
で,安定な 釣り合いの点からどの方向に向かってこの 積分をしても,P
0 の近傍ではφ
は増えるだ けか減るだけである.E
· dr < 0 ⇒ φ(P ) > 0 .
(
φ(P
0) = 0
とした.)
つまり,安定な釣り合いの点では極小値ま たは極大値をとる.P
0E
E
φ
P
0
E
P
dr
電荷のない場所では安定な釣り合いの点がないということは,ポ テンシャルの言葉でいうと, 電荷のない領域ではポテンシャルは極小値も極大値もとらない, ということになる.Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
2.5.3
ガウスの法則
(微分形
)•
ベクトル場の発散ベクトル場
A
(r)
について∇
· A(r)(= divA) =
∂A
x∂x
+
∂A
y∂y
+
∂A
z∂z
(
スカラー量)
(35) をA
の発散(divergence)
という.•
ガウスの定理◦
図のような小さい直方体V
0 を考える.この直方体の表面S
0 を通るベクトル場A
の流 束を考えよう. n n ( ) ( ( ( ) ) ) x0, x0 x0 y 0 y 0 y 0 z0 z0 z0 x0 y 0 z0 , , , , +∆ +∆ +∆ z , , x , y Sz0+∆z Sz0 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 21/30まず,
z
軸に垂直な面S
z0(
下面)
とS
z0+∆z(
上面)
について考える.S
z0 を通る流束は(
法線ベクトルの向きに注意して)
,−
Z
Sz0A
z(x, y, z
0) dxdy .
(36)S
z0+∆z を通る流束はZ
Sz0+∆zA
z(x, y, z
0+ ∆z) dxdy .
(37) これらの和は(
∆V
0 を小直方体の体積として)
,Z
{A
z(x, y, z
0+ ∆z) − A
z(x, y, z
0)} dxdy
(38)≃
Z
∂A
z(x, y, z
0)
Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
x
軸,y
軸に垂直な面についても同様. よって,小直方体の表面から出る流束は,Z
S0A
(r) · dS ≃
∂A
x∂x
+
∂A
y∂y
+
∂A
z∂z
∆V
0 (39)= (∇ · A)|r
=(x0,y0,z0)∆V
0.
ある点での∇
· A
はその点の近傍での単位体積あたりの外向きの 流れ(
わき出し)
を表わす.◦
流束の分割:
図のような2
つの小直方体V
1, V
2 を考える.V
1(2) の表面S
1(2) の流束は,Z
S1A
· dS = ∇ · A ∆V
1,
(40)Z
S2A
· dS = ∇ · A ∆V
2.
(41)V
1
V
2
n
1
n
2
電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 23/30V
1 とV
2 を合わせたものをV
1+2,その表面をS
1+2 とすると,V
1 とV
2 の境界面での面積分は打ち消し合うから(
n
が逆向き)
,Z
S1A
· dS +
Z
S2A
· dS =
Z
S1+2A
· dS .
(42) よって,Z
S1+2A
· dS = ∇ · A ∆V
1+ ∇ · A ∆V
2.
このことから, 一般の(
小さくない)
領域V
を小直方体に分割すると,V
の表面をS
として,(
∆V
i はi
番目の小直方体の体積)
Z
SA
· dS =
X
i∇
· A ∆V
i=
Z
V∇
· A dV
(
体積積分)
(43)Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
◦
まとめると,ベクトル場A
(r)
について, 領域V
とその表面S
(
あるいは閉曲面S
とそれに囲まれた領域V
)
を考えると,Z
SA
(r) · dS =
Z
V∇
· A(r) dV
(44) これを ガウスの定理 という. 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 25/30•
微分形のガウスの法則◦
積分形のガウスの法則はZ
SE
(r) · dS =
Q
int.ε
0=
1
ε
0Z
Vρ(r) dV .
(45) これは,閉曲面S
上の電場とその内部の電荷との関係を表わす. 一般に電荷と面は離れていてもよいから(§§2. 5. 2
の例)
,近接相 互作用の考え方になっていない.◦
ガウスの定理を用いると,Z
SE
(r) · dS =
Z
V∇
· E(r) dV .
(46) 従って,式(45)
は,Z
∇
· E(r) dV =
1
Z
ρ(r) dV .
(47)Minoru TANAKA (Osaka Univ.)
V
は任意の領域だから,これが成り立つためには,∇
· E(r) =
ρ(r)
ε
0 微分形のガウスの法則.
(48) 点r
での電荷密度が同じ点r
での電場の“
微分”
を決定していると 考えられるから,近接相互作用の考え方になっている. 例えば,E
x の変化だけを考えると(
E
y, E
z= const.
)
,E
x(x + ∆x, y, z) − E
x(x, y, z) ≃
∂E
x∂x
∆x
(49)= ∇ · E(x, y, z) ∆x =
ρ(x, y, z)
ε
0∆x .
すなわち,E
x(x + ∆x, y, z) ≃ E
x(x, y, z) +
ρ(x, y, z)
ε
0∆x .
(50) 電磁気学 I(2012), Sec. 2. 5 – p. 27/30◦
例1: §§2. 5. 2
の例1
の電場が微分形のガウスの法則を見たして いること.ρ(r) =
ρ, r < a
0, r > a
(51)E
(r) =
ρ
3ε
0r
,
r < a
Q
4πε
0r
r
3,
r > a, Q = 4πa
3ρ/3
(52)r < a
では,∇
· E =
ρ
3ε
0∇
· r =
ρ
3ε
0∂x
∂x
+
∂y
∂y
+
∂z
∂z
=
ρ
ε
0 (53)Minoru TANAKA (Osaka Univ.)